説明

電子回路

【課題】増幅回路の雑音指数の劣化を抑制すること。
【解決手段】送信端子Txから入力された送信信号を前記共通端子ANTに接続する送信スイッチSW1と、前記共通端子から入力された受信信号を増幅し、受信端子Rxに出力する増幅回路90と、前記共通端子から他のスイッチを介さず入力された前記受信信号を前記増幅回路に接続する第1受信スイッチSW2と、前記共通端子と前記受信端子との間で前記第1受信スイッチとは並列に接続され、前記共通端子から入力された前記受信信号を前記増幅回路とは別の経路で前記受信端子に接続する第2受信スイッチSW3と、を具備する電子回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に関し、特に、スイッチを有する電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、アンテナに接続された共通端子と受信端子との間に受信スイッチが接続され、共通端子と送信端子との間に送信スイッチが接続された電子回路が知られている。送信スイッチは送信端子から入力された送信信号を共通端子に接続する。受信スイッチは、共通端子から入力された受信信号を受信端子に接続する。アンテナから送信信号を送信する際は、送信スイッチをオンし、受信スイッチをオフする。一方、アンテナから受信信号を受信する際は、受信スイッチをオンし、送信スイッチをオフする。これにより、受信信号と送信信号との干渉を抑制することができる。これらのスイッチは、例えばFET(Field Effect Transistor)で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−28178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、送信スイッチと送信端子との間に増幅回路と、増幅回路をバイパスする経路を集積化した場合、受信用増幅回路の雑音指数(NF)が劣化する。本発明は、増幅回路の雑音指数の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、送信端子から入力された送信信号を前記共通端子に接続する送信スイッチと、前記共通端子から入力された受信信号を増幅し、受信端子に出力する増幅回路と、前記共通端子から他のスイッチを介さず入力された前記受信信号を前記増幅回路に接続する第1受信スイッチと、前記共通端子と前記受信端子との間で前記第1受信スイッチとは並列に接続され、前記共通端子から入力された前記受信信号を前記増幅回路とは別の経路で前記受信端子に接続する第2受信スイッチと、を具備することを特徴とする電子回路である。本発明によれば、増幅回路の雑音指数の劣化を抑制することができる。
【0006】
上記構成において、前記送信スイッチ、前記第1受信スイッチおよび前記第2受信スイッチのいずれか1つをオンし、他をオフする制御回路を具備する構成とすることができる。
【0007】
上記構成において、前記増幅回路と、前記第2受信スイッチと前記受信端子との間のノードと、の間を接続する増幅回路出力側スイッチを具備する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記増幅回路出力側スイッチは、前記第2受信スイッチが導通した際に非導通となる構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1受信スイッチおよび第2受信スイッチはFETで構成され、前記第2受信スイッチを構成するFETのゲート幅は前記第1受信スイッチを構成するFETのゲート幅より小さい構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記送信スイッチはFETで構成され、前記第1受信スイッチを構成するFETのゲート幅が前記送信スイッチを構成するFETのゲート幅より小さい構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記増幅回路出力側スイッチの段数は前記送信スイッチ、前記第1受信スイッチおよび前記第2受信スイッチの段数より少ない構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第2受信スイッチと前記受信端子との間の前記経路に直列に接続された直列スイッチと、前記第2受信スイッチと前記直列スイッチとの間のノードとグランド間に接続されたシャントスイッチと、を具備する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第2受信スイッチと前記受信端子との間の前記経路に直列に接続された直列スイッチと、前記第2受信スイッチと前記直列スイッチとの間のノードとグランド間に接続されたシャントスイッチと、を具備し、前記制御回路は、前記第1受信スイッチをオンした際、前記直列スイッチをオフかつ前記シャントスイッチをオンし、前記第2受信スイッチをオンした際、前記直列スイッチをオンかつ前記シャントスイッチをオフする構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信用増幅回路の雑音指数の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、比較例に係る電子回路の回路図である。
【図2】図2は、実施例1に係る電子回路の回路図である。
【図3】図3は、比較例および実施例1に係る電子回路の周波数に対するNFを測定した結果を示した図である。
【図4】図4は、実施例2に係る電子回路の回路図である。
【図5】図5(a)から図5(c)は、周波数に対するLNAゲイン、増幅回路のアイソレーションS12および安定係数Kのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、比較例について説明する。比較例は、受信スイッチと受信端子との間に増幅回路と、バイパス経路とを、並列に設けた例である。受信信号が小信号の場合は、増幅回路が受信信号を増幅し、増幅された受信信号が受信端子に出力される。一方、受信信号が比較的大信号の場合は、受信信号は増幅回路をバイパスし、増幅されていない受信信号が受信端子に出力される。
【0017】
図1は、比較例に係る電子回路の回路図である。図1を参照にし、電子回路102は、主に送信スイッチSW1および受信スイッチSW2、バイパススイッチSW5、増幅回路90およびスイッチSW4およびSW6を備えている。送信スイッチSW1は、送信端子Txから入力された送信信号を共通端子ANTに接続する。受信スイッチSW2は、共通端子ANTから入力された受信信号を受信端子Rxに接続する。受信スイッチSW2と受信端子との間には増幅回路90が接続されている。増幅回路90は、共通端子ANTから入力された受信信号を増幅し、受信端子Rxに出力する。バイパススイッチSW5は、受信スイッチSW2と増幅回路90との間のノードN2と、受信端子Rxと増幅回路90との間のノードN1と、の間に増幅回路90をバイパスして設けられている。スイッチSW4は、ノードN1と増幅回路90の間に接続されている、スイッチSW6は、ノードN2と増幅回路90との間に接続されている。
【0018】
送信スイッチSW1は例えば2段のFET10、受信スイッチSW2は2段のFET20、バイパススイッチSW5は1段のFET50、スイッチSW4は1段のFET40およびスイッチSW6は1段のFET60でそれぞれ構成されている。送信スイッチSW1を構成するFET10のゲートは抵抗R1を介し信号V1が印加される。第1受信スイッチSW2を構成するFET20のゲートは抵抗R2を介し信号V2が印加される。バイパススイッチSW5を構成するFET50のゲートは抵抗R5を介し信号V5が印加される。スイッチSW4およびSW6のゲートには、それぞれ抵抗R4およびR6を介し信号V4が印加される。
【0019】
増幅回路90は、ローノイズアンプ(LNA)であり、入力整合回路80、FET84および86、出力整合回路82を備えている。入力整合回路80は、増幅回路90の入力インピーダンスを整合させる回路である。出力整合回路82は、増幅回路90の出力インピーダンスを整合させる回路である。FET84のゲートには入力整合回路によりインピーダンス整合された受信信号が入力する。さらに、FET84のゲートには抵抗Rg1を介しゲートバイアスVg1が印加される。FET84のソースは接地されている。FET84のドレインは、FET86のソースに接続される。FET86のゲートはキャパシタC2を介し接地され、かつ抵抗Rg2を介しゲートバイアスVg2が印加される。FET86のドレインは出力整合回路82に接続される。また、FET86のドレインにはチョークコイルL1を介し電源電圧Vddが印加される。増幅回路90とスイッチSW6との間にはDCカット用キャパシタC1が接続されている。増幅回路90とスイッチSW4との間にはDCカット用キャパシタC3が接続されている。
【0020】
端子T01の信号は信号V1として送信スイッチSW1に印加される。端子T02の信号は信号V2として受信スイッチSW2に印加される。端子T03の信号は信号V4としてスイッチSW4およびSW6に印加される。端子T03の信号は、反転回路88を介し反転されバイパススイッチSW5に信号V5として印加される。各スイッチは、信号がハイレベルの場合オンし、ローレベルのときオフする。
【0021】
表1は、電子回路102の各動作時の各端子の状態を示した表である。
【表1】

【0022】
表1のように、アンテナから送信信号を送信する場合、端子T01をハイレベルとし、端子T02およびT03をローレベルとする。これにより、送信信号は、送信端子Txから共通端子ANTに通過する。端子T02およびT03がローレベルのため、受信スイッチSWはオフする。これにより、送信信号が受信端子Rx側に至ることを抑制できる。さらに、スイッチSW4およびSW6がオフのため、受信スイッチSW2からの漏洩信号や受信端子Rxからの信号が増幅回路90に至ることを抑制できる。
【0023】
アンテナから受信信号を受信する場合かつ受信信号が小信号の場合(受信(LNA)の場合)、端子T01はローレベル、端子T02およびT03はハイレベルとなる。送信スイッチSW1がオフするため、受信信号が送信端子Txに至ることを抑制できる。受信スイッチSW2、スイッチSW4およびSW6がオン、バイパススイッチSW5がオフする。これにより、受信信号は増幅回路90で増幅され、受信端子Rxから出力される。
【0024】
アンテナから受信信号を受信する場合かつ受信信号が比較的大信号の場合(受信(バイパス)の場合)、端子T01およびT03はローレベル、端子T02はハイレベルとなる。送信スイッチSW1がオフするため、受信信号が送信端子Txに至ることを抑制できる。受信スイッチSW2およびバイパススイッチSW5がオン、スイッチSW4およびSW6がオフする。これにより、受信信号は増幅回路90をバイパスし受信端子Rxから出力される。スイッチSW4およびSW6がオフのため、受信信号が増幅回路90に漏れることを抑制できる。
【0025】
比較例においては、増幅回路90の雑音指数(NF:Noise Figure)が悪いという課題がある。図1のように、増幅回路90と共通端子ANTとの間に受信スイッチSW2およびスイッチSW6が直列に接続されている。このため、受信スイッチSW2およびスイッチSW6がオンした場合、受信スイッチSW2のオン抵抗とスイッチSW6のオン抵抗が直列に増幅回路90と共通端子ANTの間に接続される。これらの抵抗成分により受信信号成分が減衰され、熱雑音などのノイズ成分との相対的な比が劣化する。これにより、雑音指数が悪くなってしまう。
【0026】
以下に、上記課題を解決する実施例について説明する。
【実施例1】
【0027】
図2は、実施例1に係る電子回路の回路図である。図2のように、電子回路100では、共通端子ANTと受信端子Rxとの間に並列に第1受信スイッチSW2と第2受信スイッチSW3とが接続されている。第1受信スイッチSW2は、共通端子ANTから他のスイッチを介さず入力された受信信号を増幅回路90に接続する。第2受信スイッチSW3は、共通端子ANTから入力された受信信号を増幅回路90とは別の経路でバイパスし受信端子Rxに接続する。第1受信スイッチSW2および第2受信スイッチSW3は、それぞれFET20および30から構成されている。第1受信スイッチSW2は、複数のFET20のソースとドレインが直列に接続し、初段のFETのソースに信号が入力し、最終段のFETのドレインから信号が出力する。FET20のゲートは抵抗R2を介し信号V2が印加される。送信スイッチSW1および第2受信スイッチSW3のそれぞれFET10およびFET30も同様に接続されている。FET30のゲートは抵抗R3を介し信号V3が印加される。
【0028】
実施例1の電子回路100には、バイパススイッチSW5およびスイッチSW6は設けられていない。電子回路100は、デコーダ70、バイアス回路72および74を備えている。その他の構成は、比較例の図1と同じであり説明を省略する。
【0029】
デコーダ70には端子T1およびT2からデジタル信号が入力し、信号V1〜V4をそれぞれスイッチSW1〜SW4に出力する。端子T1はバイアス回路72および74にも接続される。バイアス回路72および74は、端子T1の状態に応じ、ゲートバイアスVg1およびVg2をそれぞれFET84および86のゲートに印加する。
【0030】
表2は、各動作時のデコーダ70の入力および出力を示している。
【表2】

【0031】
表2のように、端子T1の信号は、受信信号を増幅回路90で増幅させる経路を選択するか、それ以外の経路(送信あるいは受信(バイパス)の経路)を選択するかを示している。端子T1がハイレベルの場合は、その論理により、デコーダは信号V2およびV4をハイレベルにするとともに、端子T1の論理がバイアス回路72および74へも入力される。バイアス回路72および74では、端子T1のハイレベル入力を受けることで、活性化され、ゲートバイアスVg1およびVg2を出力する。以上の動作により、増幅回路90が導通状態となり、第1受信スイッチSW2を通る受信信号が増幅回路90で増幅され、受信端子Rxから出力される。なお、端子T1がローレベルの場合は、バイアス回路72および74は不活性となる。このように、増幅回路90を通る経路を選択する場合のみバイアス回路72および74が活性化されるため、増幅回路90の消費電力が低減できる。また、端子T1の論理を、受信信号を増幅回路90で増幅させる経路を選択するか、それ以外の経路(送信あるいは受信(バイパス)の経路)を選択するかを示す論理にしたことで、バイアス回路72および74に対しては、端子T2の論理を必要とすることなく、端子T1の論理だけで、活性化制御を行うことができる効果を奏する。
【0032】
端子T2の信号は、送信信号を送信するか受信(バイパス)を経由して信号を受信するかを示している。端子T2の信号がハイレベルの場合、送信信号を送信する。端子T2の信号がローレベレの場合、受信(バイパス)を経由して信号を受信する。
【0033】
アンテナから送信信号を送信する場合、端子T1はローレベル、端子T2はハイレベルとなる。デコーダ70の出力は信号V1がハイレベル、信号V2〜V4がローレベルとなる。これにより、送信スイッチSW1がオンし、第1受信スイッチSW2、第2受信スイッチSW3および増幅回路出力側スイッチSW4はオフする。よって、送信信号が受信端子Rx側に至ることが抑制される。
【0034】
アンテナから受信信号を受信する場合かつ受信信号が小信号の場合(受信(LNA)の場合)、端子T1はハイレベル、端子T2はローレベルとなる。デコーダ70の出力は信号V2およびV4がハイレベル、信号V1およびV3がローレベルとなる。これにより、送信スイッチSW1および第2送信スイッチSW3がオフし、第1受信スイッチSW2およびスイッチSW4がオンする。よって、受信信号は第1受信スイッチSW2を通過し、増幅回路90で増幅され、スイッチSW4を通過し、受信端子Rxから出力される。
【0035】
アンテナから受信信号を受信する場合かつ受信信号が大信号の場合(受信(バイパス)の場合)、端子T1はローレベル、端子T2はローレベルとなる。デコーダ70の出力は信号V3がハイレベル、信号V1、V2およびV4がローレベルとなる。これにより、送信スイッチSW1および第1受信スイッチSW2およびスイッチSW4がオフし、第2受信スイッチSW3がオンする。よって、受信信号は、第2受信スイッチSW3を通過し、増幅回路90を通過することなく、直接受信端子Rxから出力される。このように、デコーダ70(制御回路)は、送信スイッチSW1、第1受信スイッチSW2および第2受信スイッチSW3のいずれか1つをオンし、他をオフする。
【0036】
以上のように、実施例1によれば、比較例と同様に、受信信号が小信号の場合は、増幅回路90が受信信号を増幅し、増幅された受信信号を受信端子Rxに出力させることができる。一方、受信信号が比較的大信号の場合は、増幅回路90をバイパスし、増幅しない受信信号を受信端子Rxに出力させることができる。
【0037】
さらに、第1受信スイッチSW2と第2受信スイッチSW3とが、共通端子ANTと受信端子Rxとの間に並列に接続されている。これにより、増幅回路90と共通端子ANTとの間に接続されるスイッチは、第1受信スイッチSW2である。よって、比較例に比べスイッチSW6のオン抵抗分、増幅回路90と共通端子ANTとの間の抵抗を低減できる。よって、雑音指数を向上させることができる。図3は、比較例および実施例1に係る電子回路の周波数に対するNFを測定した結果を示した図である。図3のように、実施例1ではNFが比較例に対し向上している。
【0038】
さらに、スイッチSW4が増幅回路90と、第2受信スイッチSW3と受信端子Rxとの間のノードN1と、の間を接続する。スイッチSW4を第2受信スイッチSW3がオンした際にオフさせることにより、受信信号が増幅回路90に逆流することを抑制できる。
【0039】
実施例1において、各スイッチSW1〜SW3を構成するFETのゲート幅は同じでもよい。しかしながら、スイッチSW1〜SW3を構成するFETのゲート幅は以下のような関係で有ることが好ましい。ここで、FETのゲート幅とは、1つのFETが複数単位FETの並列構造(例えば、ソース、ゲートおよびドレインの並列構造)で構成されている場合、各単位FETのゲート幅の和、すなわちゲート幅の総延長を示す。
【0040】
FETはオフしても若干のリーク電流が存在する。よって、ゲート幅を小さくすると、スイッチのアイソレーション特性を向上することができる。しかし、ゲート幅が小さいと、オン抵抗が高くなり、挿入損失が大きくなってしまう。
【0041】
第1受信スイッチSW2がオンする場合の受信信号は、増幅回路90を用いるような小信号の場合である。よって、第1受信スイッチSW2のオン抵抗は、挿入損失を小さくするため、小さくすることが好ましい。一方、第2受信スイッチSW3がオンする場合の受信信号は比較的大信号の場合である。よって、第2受信スイッチSW3のオン抵抗は、第1受信スイッチSW2よりは大きくてもよい。そこで、第1受信スイッチSW2のゲート幅Wg2は、オン抵抗を低くするため大きく、第2受信スイッチSW3のゲート幅Wg3は、アイソレーション特性を向上させるため小さいことが好ましい。このように、第2受信スイッチSW3を構成するFETのゲート幅Wg3は、第1受信スイッチSW2を構成するFETのゲート幅Wg2より小さいことが好ましい。実施例1では、ゲート幅Wg2は1mm、ゲート幅Wg3は0.5mmである。
【0042】
送信スイッチSW1は、受信信号に比べ非常に大きな信号を取り扱う。よって、挿入損失を小さくするため、送信スイッチSW1のゲート幅Wg1は大きいことが好ましい。すなわち、第1受信スイッチSW2を構成するFETのゲート幅Wg2は送信スイッチSW1を構成するFETのゲート幅Wg1より小さいことが好ましい。実施例1では、ゲート幅Wg1は1.2mmである。
【0043】
さらに、送信スイッチSW1、第1受信スイッチSW2および第2受信スイッチSW3は、共通端子ANTに直接接続されるためアイソレーションが大きいことが好ましい。よって、多段構成とすることが好ましい(実施例1の図2では2段構成としている)。一方、スイッチSW4は、第2受信スイッチSW3からの受信信号が増幅回路90に侵入することを抑制する程度のアイソレーション特性でよい。よって、スイッチSW4の段数は送信スイッチSW1、第1受信スイッチSW2および第2受信スイッチSW3の段数より少ないことが好ましい。なお、スイッチを多段構成とする場合、各段でゲート幅が異なると、ゲート幅の小さい段に電圧が集中するため、格段のゲート幅は同じであることが好ましい。本来、アイソレーションを考慮した場合、比較例のような構成(送信スイッチ、受信スイッチSW2)が好ましい。なお、実施例1の電子回路では、前述のように送信スイッチSW1、第1受信スイッチSW2、第2受信スイッチSW3それぞれのゲート幅を所望の大きさに設定(Wg1>Wg2>Wg3)することにより、比較例と同等のアイソレーションを得ることができ、かつ受信用増幅回路の雑音指数の劣化を抑制することもできる。
【実施例2】
【0044】
実施例2は、直列スイッチおよびシャントスイッチを有する例である。図4は、実施例2に係る電子回路の回路図である。図4のように、スイッチSW7(直列スイッチ)が第2受信スイッチSW3と受信端子Rxとの間の経路に直列に接続されている。スイッチSW7は、FET62から構成されている。FET62のゲートには抵抗R7を介し信号V3が印加される。スイッチSW8(シャントスイッチ)が第2受信スイッチSW3と直列スイッチSW7との間のノードN3とグランド間に接続されている。スイッチSW8は、FET64から構成されている。FET64のゲートには抵抗R8を介し信号V2が印加される。その他の構成は、実施例1の図2と同じであり説明を省略する。
【0045】
スイッチSW7に印加される信号V3は第2受信スイッチSW3と共通である、スイッチSW8に印加される信号V2は第1受信スイッチSW2と共通である。このため、表2のように、デコーダ70は、第1受信スイッチSW2をオンした際、スイッチSW7をオフかつスイッチSW8をオンする。第2受信スイッチSW3をオンした際、スイッチSW7をオンかつスイッチSW8をオフする。
【0046】
図5(a)から図5(c)は、周波数に対するLNAゲイン、増幅回路90のアイソレーションS12および安定係数Kのシミュレーション結果を示す図である。第1受信スイッチSW2がオン、第2受信スイッチSW1がオフの場合のシミュレーションである。シミュレーションを行ったパラメータは以下である。送信スイッチSW1は、ゲート幅Wg1が1mmのFET10が2つ直列に接続されている。第1受信スイッチSW2は、ゲート幅Wg2が1mmのFET20が2つ直列に接続されている。第2受信スイッチSW3は、ゲート幅Wg3が0.5mmのFET30が2つ直列に接続されている。スイッチSW4は、ゲート幅Wg4が0.5mmのFET40が1つで構成されている。スイッチSW7は、ゲート幅Wg7が0.5mmのFET62が1つで構成されている。スイッチSW8は、ゲート幅Wg8が0.2mmのFET64が1つで構成されている。各FETは、AlGaAsを電子供給層、InGaAsを電子走行層とするHEMT(High Electron Mobility Transistor)であり、ゲート長は0.5μmである。実施例1においては、図2のように、スイッチSW7とスイッチSW8が設けられていない。
【0047】
図5(a)のように、実施例1と実施例2とでは、LNAのゲインはほとんど変わらない。図5(b)のように、実施例2は実施例1に比べ、ノードN1から第1受信スイッチSW1への帰還を示すS12が小さくなっている。図5(c)のように、実施例2は実施例1に比べ安定度kが小さくなっている。
【0048】
実施例1においては、例えば周波数が高くなると、第2受信スイッチSW3がオフしていても、オフ容量によりアイソレーションが悪化する。このため、図5(b)のように、第1受信スイッチSW2がオン、第2受信スイッチSW1がオフの場合に、ノードN1から第2受信スイッチSW3を介し第1受信スイッチSW2の入力側に信号が帰還されてしまう。よって、図5(c)のように、実施例1では、安定係数kが悪化してしまう。
【0049】
実施例2によれば、スイッチSW7およびスイッチSW8が設けられることにより、図5(b)のように、第1受信スイッチSW2がオンしている際は、ノードN1から第1受信スイッチSW2の入力側への帰還信号を抑制できる。これにより、図5(c)のように、安定係数kを向上させることができる。一方、第2受信スイッチSW3がオンしている際は、直列スイッチSW7をオン、シャントスイッチSW8をオフすることにより、第2受信スイッチSW3の出力をノードN1に出力することができる。
【0050】
実施例1および実施例2において、増幅回路90として、FET84および86を用いる回路を例に説明したが、増幅回路は他の構成の回路を用いてもよい。スイッチとしてFETで構成されるスイッチを例に説明したが、他のトランジスタ等を用いた構成でもよい。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
SW1 送信スイッチ
SW2 第1受信スイッチ
SW3 第2受信スイッチ
SW4 増幅回路出力側スイッチ
SW7 直列スイッチ
SW8 シャントスイッチ
90 増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信端子から入力された送信信号を前記共通端子に接続する送信スイッチと、
前記共通端子から入力された受信信号を増幅し、受信端子に出力する増幅回路と、
前記共通端子から他のスイッチを介さず入力された前記受信信号を前記増幅回路に接続する第1受信スイッチと、
前記共通端子と前記受信端子との間で前記第1受信スイッチとは並列に接続され、前記共通端子から入力された前記受信信号を前記増幅回路とは別の経路で前記受信端子に接続する第2受信スイッチと、
を具備することを特徴とする電子回路。
【請求項2】
前記送信スイッチ、前記第1受信スイッチおよび前記第2受信スイッチのいずれか1つをオンし、他をオフする制御回路を具備することを特徴とする請求項1記載の電子回路。
【請求項3】
前記増幅回路と、前記第2受信スイッチと前記受信端子との間のノードと、の間を接続する増幅回路出力側スイッチを具備することを特徴とする請求項1または2記載の電子回路。
【請求項4】
前記増幅回路出力側スイッチは、前記第2受信スイッチが導通した際に非導通となることを特徴とする請求項3記載の電子回路。
【請求項5】
前記第1受信スイッチおよび第2受信スイッチはFETで構成され、前記第2受信スイッチを構成するFETのゲート幅は前記第1受信スイッチを構成するFETのゲート幅より小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の電子回路。
【請求項6】
前記送信スイッチはFETで構成され、前記第1受信スイッチを構成するFETのゲート幅が前記送信スイッチを構成するFETのゲート幅より小さいことを特徴とする請求項5記載の電子回路。
【請求項7】
前記増幅回路出力側スイッチの段数は前記送信スイッチ、前記第1受信スイッチおよび前記第2受信スイッチの段数より少ないことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の電子回路。
【請求項8】
前記第2受信スイッチと前記受信端子との間の前記経路に直列に接続された直列スイッチと、
前記第2受信スイッチと前記直列スイッチとの間のノードとグランド間に接続されたシャントスイッチと、
を具備することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の電子回路。
【請求項9】
前記第2受信スイッチと前記受信端子との間の前記経路に直列に接続された直列スイッチと、
前記第2受信スイッチと前記直列スイッチとの間のノードとグランド間に接続されたシャントスイッチと、
を具備し、
前記制御回路は、前記第1受信スイッチをオンした際、前記直列スイッチをオフかつ前記シャントスイッチをオンし、前記第2受信スイッチをオンした際、前記直列スイッチをオンかつ前記シャントスイッチをオフすることを特徴とする請求項2記載の電子回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151771(P2011−151771A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169834(P2010−169834)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】