説明

電子機器

【課題】従来技術よりも簡易な構造で、基板に搭載された無線通信モジュールと他部品に設けられたアンテナとを接続する。
【解決手段】電子機器1は、無線通信モジュール24と、この無線通信モジュール24と電気的に接続された給電ライン28とを有した回路基板20と、給電ライン28と電気的に接続したアンテナパターン40と、このアンテナパターン40の近傍に設けられた開口部32とを有した板状部材30とを、備え、板状部材30は、開口部32から回路基板20側に突出した可撓性板部34を有し、アンテナパターン40は、少なくとも一部が板状部材30に設けられたアンテナ部41と、可撓性板部34に設けられた給電部42とを有し、回路基板20および板状部材30を所定の位置に配置することで、可撓性板部34が撓んだ状態で給電ライン28とアンテナ部41とが電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話端末などの電子機器は、その電子機器の高機能化に伴って、電子機器の内部に搭載される無線通信モジュールやアンテナの個数が増えている。このような無線通信機能を有する電子機器の一構成態様として、無線通信モジュールが様々な電子部品が搭載されたプリント回路板に搭載され、アンテナはその他の部品の一部として構成される場合がある。
【0003】
なお、従来文献(特許文献1)には、電子部品を搭載したプリント回路板が示されている。この従来文献に係るプリント回路板では、プラスチックによる構成体が回路基板体上に片持梁状に突出しており、この構成体が電子部品の端子と接続する接続端子部を形成している。但し、この従来文献に係るプリント回路板では、無線通信モジュールやアンテナパターンを備えるものではない。
【特許文献1】特公平5−28917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信機能を有する電子機器を、無線通信モジュールをプリント回路板に搭載すると共に、アンテナをその他の部品に搭載して構成した場合に、プリント回路板上の無線通信モジュールとアンテナを電気的に接続するための特別のコネクタ部品を用意する必要がある。ここで、特別のコネクタ部品とは、例えば、プリント回路板とアンテナとの間に介在する部品であって、プリント回路板とアンテナとの安定した接続を実現するためにスプリングを具備する部材である。
【0005】
しかしながら、このような特別のコネクタ部品を用意することは、電子機器の部品点数の増加を招いている。さらに、このような特別のコネクタ部品を用意することは、電子機器の構造を複雑にするため、コストを上昇させる要因となっている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、従来技術よりも簡易な構造で、回路基板に搭載された無線通信モジュールと他部品に設けられたアンテナとを接続可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、無線通信モジュールと、この無線通信モジュールと電気的に接続された給電ラインとを有した回路基板と、給電ラインと電気的に接続したアンテナパターンと、このアンテナパターンの近傍に設けられた開口部とを有した板状部材とを、備え、板状部材は、開口部から回路基板側に突出した可撓性板部を有し、アンテナパターンは、少なくとも一部が板状部材に設けられたアンテナ部と、可撓性板部に設けられた給電部とを有し、回路基板および板状部材を所定の位置に配置することで、可撓性板部が撓んだ状態で給電ラインとアンテナ部とが電気的に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来技術よりも簡易な構造で、回路基板に搭載された無線通信モジュールと他部品に設けられたアンテナとを接続可能な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
図1〜図5には、本発明の好適な実施形態に係る電子機器1が示されている。本実施形態の電子機器1は、ノートブック型パーソナルコンピュータや携帯電話端末などの携帯型電子機器1である。電子機器1の高機能化に伴い、電子機器1に搭載される無線通信モジュール24およびアンテナパターン40の個数が増えている。図1〜図5には、プリント回路基板20に搭載された無線通信モジュール24が、ケース10,30に形成されたアンテナパターン40に接続される様子が示されている。
【0011】
図1は、無線通信機能付きの携帯型電子機器1の分解図である。図2は、この携帯型電子機器1を側方から見た断面図である。図3および図4は、図2に示される携帯型電子機器1の一部を拡大した拡大断面図である。図5は、この携帯型電子機器1を上方から見た上面図である。図1〜図5では、このような電子機器1の構造を簡略化して示している。すなわち、実際には電子機器1の内部に多数組の無線通信モジュール24およびアンテナパターン40が搭載されているが、発明の理解を容易にするため図1〜図5では1組の無線通信モジュール24およびアンテナパターン40のみが示されている。
【0012】
携帯型電子機器1は、ケース10,30の内部にプリント回路基板20を配置して構成されている。ケース10,30は、上側ケース10および下側ケース30からなる。上側ケース10は、電子機器1の矩形の上面を構成する板状部材である上板部10aと、電子機器1の側面を構成する4つの側板部10b,10c,10d,10eと、を有する(図1参照)。下側ケース30は、電子機器1の矩形の下面を構成する板状部材である下板部30aと、電子機器1の側面を構成する4つの側板部30b,30c,30d,30eと、を有する。
【0013】
上側ケース10の側板部10b,10c,10d,10eの下端縁部と下側ケース30の側板部30b,30c,30d,30eの上端縁部とを重ね合わせて固定することにより、プリント回路基板20の周囲が覆われる。上側ケース10および下側ケース30は、電子機器1を構造的に支持する構造部材である。電子機器1の組立後には、プリント回路基板20および下側ケース30の下板部30aは互いに近接した位置に配置される。
【0014】
上側ケース10および下側ケース30はプラスチック(樹脂)を材質としており、外力を受けると弾性変形する性質を有する。但し、上側ケース10および下側ケース30は、内部にある部品を保護するために十分な厚みを有する構造部材であるため、外力を受けても比較的に弾性変形は小さい。なお、本実施形態では上側ケース10および下側ケース30はプラスチックを材質としているが、他の実施形態では上側ケース10および下側ケース30他の種類の弾性材料を材質としてもよい。
【0015】
プリント回路基板20は多数の回路部品が搭載された多層プリント配線板であるが、図1〜図4ではプリント回路基板20が簡略化されて示されており、プリント回路基板20の上面に無線通信モジュール24のみが搭載された様子が示されている。プリント回路基板20の隅部には2つの貫通穴26A,26Bが形成されている。下側ケース30において、これらの貫通穴26A,26Bに対応する位置には、雌ネジが形成された2つのネジ穴36A,36Bが形成されている。雄ネジが形成されたネジ部材25A,25Bが、プリント回路基板20の貫通穴26A,26Bに挿し込まれ、下側ケース30のネジ穴36A,36Bに螺入される。これにより、ネジ部材25A,25Bが下側ケース30のネジ穴36A,36Bに螺合して、プリント回路基板20が下側ケース30に固定される。言い換えれば、ネジ部材25A,25Bは、プリント回路基板20および下側ケース30を互いに近接した位置で固定するための固定部材である。
【0016】
無線通信モジュール24はプリント回路基板20の上面に搭載されているが、アンテナパターン40はプリント回路基板20の下面側に存在する。よって、無線通信モジュール24をアンテナパターン40に電気的に接続するために、プリント回路基板20の内部に1本の給電ライン28a,28b,28cが延設されている(図2参照)。すなわち、プリント回路基板20において無線通信モジュール24が搭載された位置にはスルーホールが形成されており、給電ライン28aがこのスルーホールを経由してプリント回路基板20の中間層に至る。給電ライン28bは、プリント回路基板20の中間層をアンテナパターン40に向けて延びる。また、プリント回路基板20においてアンテナパターン40付近にはスルーホールが形成されており、給電ライン28cが中間層からこのスルーホールを経由してプリント回路基板20の下面に至る。
【0017】
下側ケース30には、アンテナパターン40が形成されている。アンテナパターン40は、下側ケース30の内側表面に導電性金属をめっきして形成された薄層状のめっき層である。アンテナパターン40は、電波を送信および/または受信するためのアンテナ部41と、給電ライン28cをアンテナ部41に電気的に接続するための給電部42と、で構成されている。なお、本実施形態ではアンテナパターン40はめっき層であるが、他の実施形態ではアンテナパターン40は、下側ケース30の内側表面に導電性金属を印刷して形成された印刷層であってもよい。
【0018】
プリント回路基板20の給電ライン28cをアンテナパターン40の給電部42に接続することにより、無線通信モジュール24はアンテナ部41を介して電波を送受信することが可能となる。本実施形態では、プリント回路基板20の給電ライン28cをアンテナパターン40の給電部42に接続するために特別なコネクタ部材を用意しておらず、これに代えて、以下に説明するように下側ケース30の形状を特別な構造としている。
【0019】
下側ケース30の板面には、アンテナパターン40の近傍に丸みを帯びた矩形形状の貫通穴33が形成されている(図1,図5参照)。この貫通穴33が形成された下側ケース30の一部が、下側ケース30の開口部32である。下側ケース30に貫通穴33を形成することにより、開口部32の貫通穴縁壁32aが露出している(図4参照)。
【0020】
フレキシブルな板状部材である可撓性板部34は、下側ケース30の開口部32の貫通穴縁壁32aから開口部32の中央まで延設されている。可撓性板部34は、プラスチック(樹脂)の射出成形により、下側ケース30と一体的に形成されている。ここで、可撓性板部34は、弾性体であるプラスチックを材質としており、開口部32の貫通穴縁壁32aから延設された片持ち梁状であるため、先端に力が加えられると大きく撓む。なお、可撓性板部34は、開口部32の貫通穴縁壁32aから開口部32の中央まで延びた形状であるため、可撓性板部34の基部34aを除く全ての方向で貫通穴33となっている(図5参照)。
【0021】
図4に示されるように、可撓性板部34は、開口部32の貫通穴縁壁32aに結合される基部34aと、基部34aから貫通穴33の中央に向けて延びる延設部34bと、貫通穴33の中央に位置する当接部34cと、を有している。可撓性板部34の基部34aは、開口部32のアンテナ部41側の貫通穴縁壁32aにおいて下側ケース30に結合している。可撓性板部34の基部34aは、下側ケース30の板面に対して緩やかに可撓性板部34の延設方向を変化させており、下側ケース30の板面に対してプリント回路基板20側に曲がっている。
【0022】
可撓性板部34の延設部34bは、下側ケース30に対して傾斜をもって延びており、下側ケース30からプリント回路基板20に向かうように延びている。延設部34bの基部34a寄りの位置では、延設部34bの下側ケース30およびプリント回路基板20に対する傾斜角は比較的に大きいが、延設部34bは徐々に延設方向を変化させ、延設部34bの当接部34c寄りの位置では、延設部34bは下側ケース30およびプリント回路基板20に対して殆ど平行となる。
【0023】
可撓性板部34の当接部34cは、延設部34bの先端にあり、プリント回路基板20の給電ライン28cに対向する位置にある。当接部34cは、下側カバー30の周辺部位よりもプリント回路基板20側に突出しており、プリント回路基板20と平行に延びている。当接部34cは、電子機器1の組立後にプリント回路基板20に当接し、当接部34c上に形成された給電部42を給電ライン28cに押し付ける。可撓性板部34の当接部34cの上面は、ある程度の広がりを持っているため、給電部42は給電ライン28cに確実に接続される。
【0024】
下側ケース30にプリント回路基板20を固定した後における、下側ケース30の内側表面からプリント回路基板20までの寸法L1は、下側ケース30にプリント回路基板20を固定する前における、下側ケース30の内側表面から可撓性板部34の当接部34cの上面までの寸法L2よりも小さく設計されている(図3、図4参照)。よって、下側ケース30にプリント回路基板20を固定した後の状態において、可撓性板部34の延設部34bは弾性変形して下側に撓み、その撓みによる反力により可撓性板部34の当接部34cはプリント回路基板20の下面に押し付けられる。これにより、可撓性板部34の当接部34cに形成された給電部42は、プリント回路基板20の下面で給電ライン28cに安定した状態で押し付けられ、アンテナ部41および無線通信モジュール24が互いに電気的に接続される。
【0025】
上述した構造の電子機器1によれば、下側ケース30においてプリント回路基板20の給電ライン28cと対向する位置に貫通穴33が形成されており、この貫通穴33の貫通穴縁壁32aから可撓性板部34が延びているため、可撓性板部34は大きく撓むことができる。特に、可撓性板部34が形成される下側ケース30は十分な厚みを有しており弾性変形しにくいが、可撓性板部34を貫通穴33の貫通穴縁壁32aから延設して可撓性板部34の変形を自由にすることにより、可撓性板部34が大きく撓むことを可能にしている。よって、電子機器1の組立後には、可撓性板部34の先端である当接部34cがプリント回路基板20の給電ライン28cに安定した状態で強く押し付けられ、アンテナ部41側の当接部34cと無線通信モジュール24側の給電ライン28cとを安定した状態で接続することができる。
【0026】
なお、下側ケース30の外側表面には、開口部32の貫通穴33を塞ぐようにシール部材44が貼付されている。これにより、下側ケース30に形成された貫通穴33を隠すことができ、塵やゴミなどが貫通穴33を通して携帯型電子機器1の内部に進入してしまうことを防止することができる。
【0027】
本実施形態の電子機器1によれば、従来技術のように無線通信モジュール24とアンテナ部41とを接続するために特別なコネクタ部品を必要としないため、電子機器1の部品点数を削減することができる。すなわち、本実施形態の電子機器1は、プリント回路基板20および下側ケース30を互いに近接した位置に配置することで、可撓性板部34が撓んだ状態でプリント回路基板20に当接し、可撓性板部34に形成された給電部42が給電ライン28cに接続されるという構造であるため、特別なコネクタ部品を用いなくても無線通信モジュール24とアンテナ部41とを接続することができる。
【0028】
次に、図6を参照して、上述した実施形態に係る携帯型電子機器3の変形例について説明する。図6は、変形例に係る携帯型電子機器3を側方から見た断面図を示している。
【0029】
この変形例に係る携帯型電子機器3では、上側ケース10と下側ケース30との間にセンターフレーム50が挿入されている。センターフレーム50は、プリント回路基板20と平行に配置された平板状の部材であり、電子機器1を構造的に支持する構造部材である。センターフレーム50には、可撓性板部54および開口部52が形成されている。センターフレーム50の下面には、アンテナパターン56および給電部58が形成されている。給電部58は可撓性板部54に形成されており、アンテナパターン56は可撓性板部54に近接した位置に形成されている。前述した実施形態と同様に、可撓性板部54が撓むことにより、無線通信モジュール24がアンテナパターン56に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係る無線通信機能付きの携帯型電子機器の分解図である。
【図2】実施形態に係る携帯型電子機器を側方から見た断面図である。
【図3】組立前の携帯型電子機器の拡大断面図である。
【図4】組立後の携帯型電子機器の拡大断面図である。
【図5】実施形態に係る携帯型電子機器を上方から見た上面図である。
【図6】変形例に係る携帯型電子機器を側方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…携帯型電子機器、10…上側ケース、20…プリント回路基板、22…基板体、24…無線通信モジュール、25A,25B…ネジ部材、26A,26B…貫通穴、28a,28b,28c…給電ライン、30…下側ケース、32…開口部、32a…貫通穴縁壁、33…貫通穴、34…可撓性板部、34a…基部、34b…延設部、34c…当接部、36A,36B…ネジ穴、40…アンテナパターン、41…アンテナ部、42…給電部、44…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信モジュールと、この無線通信モジュールと電気的に接続された給電ラインとを有した回路基板と、
前記給電ラインと電気的に接続したアンテナパターンと、このアンテナパターンの近傍に設けられた開口部とを有した板状部材とを、備え、
前記板状部材は、
前記開口部から前記回路基板側に突出した可撓性板部を有し、
前記アンテナパターンは、少なくとも一部が前記板状部材に設けられたアンテナ部と、前記可撓性板部に設けられた給電部とを有し、
前記回路基板および前記板状部材を所定の位置に配置することで、前記可撓性板部が撓んだ状態で前記給電ラインと前記アンテナ部とが電気的に接続されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記可撓性板部は、前記開口部の貫通穴縁壁に結合される基部と、前記基部から前記板状部材に対して傾斜をもって延びる延設部と、前記延設部の先端で前記回路基板に当接する当接部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記回路基板および前記板状部材を互いに近接した位置で固定するための固定部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記固定部材は、前記回路基板に形成された貫通穴を通して前記板状部材に形成されたネジ穴に螺合されるネジ部材であることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記アンテナパターンは、めっき処理または印刷処理により前記板状部材の表面に形成された薄層状のアンテナパターンであることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記板状部材は、弾性材料である樹脂を材質とすることを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記板状部材は、前記電子機器を構造的に支持する構造部材であることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記板状部材は、前記電子機器のケースであることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記ケースの前記開口部にはシール部材が貼り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記板状部材は、前記電子機器のセンターフレームであることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−135696(P2009−135696A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309231(P2007−309231)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】