説明

電子油圧ブレーキシステム

【課題】汎用のマスターシリンダーを備えてシミュレータ機能を発揮することで、シミュレータ作動の信頼性を向上できる電子油圧ブレーキシステムを提供する。
【解決手段】ブレーキペダル20の踏力を形成するためのシミュレータ50は、オイルを保存するためのシミュレーションチェンバー51,52と、該シミュレーションチェンバーに連結された流路を開閉するためのシミュレータバルブ55とを含んで電子油圧ブレーキシステムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子油圧ブレーキ(Electro‐Hydraulic Brake:EHB)システムに関するもので、詳しくは、シミュレーション機能を行える電子油圧ブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子油圧ブレーキシステムは、図1に示されている。
従来の電子油圧ブレーキシステム(以下、'EHBシステム'という)では、運転手がブレーキペダル1を踏むと、変位センサ2がブレーキペダル1の変位を感知する。この感知結果に基づいて遮断バルブ3を閉鎖し、ペダルシミュレータ4を備えるマスターシリンダー5とホイールシリンダー6との流路を分離させる。そして、ホイールシリンダー6の圧力センサ7からの圧力信号に基づいて、電子制御装置(図示せず)(以下、'ECU'という)がホイールシリンダー6の圧力を計算する。このとき、平常時にポンプ8によってアキュムレータ9に保存された制動油圧は、ホイールシリンダー6側の吸入口及び吐出口に設けられたソレノイドバルブ10,11を通して各ホイールシリンダー6に流出入することで、各ホイールシリンダー6の圧力を独立的にフィードバック制御する。
【0003】
上記のようなEHBシステムでは、運転手の制動意志を感知し、ペダル反力を発生するためのペダルシミュレータ4が必要となる。このとき、EHBシステムの故障時は、遮断バルブ3がノーマルオープン状態であるので、運転手によって発生したマスターシリンダー5の液圧がそのままホイールシリンダー6に流入し、システム故障時に最小限の制動が行われる構造となっている。
上記のような従来のEHBシステムに含まれるマスターシリンダーは、特許文献1に開示されている。前記マスターシリンダーには、ペダルシミュレータが装着され、マスターシリンダーのピストンの変位によって、マスターシリンダーとシミュレータとの間の流路が開閉される構造である。ペダルシミュレータは、シミュレータピストンと、該シミュレータピストンを弾性的に支持する弾性部材とを含んでおり、制動油圧がシミュレータ内部に流入したとき、弾性部材の反発力によるペダル感を造成できる。
【0004】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2004-49404号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなマスターシリンダーは、第1ボアの直径が第2ボアの直径より大きくなって、第1ボアと第2ボアとの接触部に段差が形成され、第2ピストンの外周面に設けられたシール部材が段差を通過して往復運動する構造であるので、シール部材が損傷する恐れがある。さらに、シール部材の損傷によって、EHBシステムの信頼性及び耐久性が低下することになる。
また、先行技術に開示されたEHBシステム用マスターシリンダーは、一般的なマスターシリンダーとはボアの構造が異なっており、シミュレータがさらに装着されるべきである。よって、マスターシリンダーの外部に別途のシミュレータの装着空間が必要となり、空間活用性が低下するという問題点があった。また、EHBシステムでは、一般的なABSまたはESPシステムで用いるマスターシリンダーを装着できないので、マスターシリンダーを汎用化できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、汎用のマスターシリンダーを備えてシミュレータ機能を発揮することで、シミュレータ作動の信頼性を向上できる電子油圧ブレーキシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電子油圧ブレーキシステムは、ブレーキペダルと、ホイールシリンダーと、マスターシリンダーと、該マスターシリンダーの一側に設けられてオイルを保存するリザーバと、前記ホイールシリンダー側に伝えられる制動油圧を調節するための油圧制御装置と、前記ブレーキペダルの踏力を形成するためのシミュレータとを含む電子油圧ブレーキシステムにおいて、前記油圧制御装置は、リザーバのオイルをポンピングして吐出させるポンプと、該ポンプから吐出されたオイルを一時保存するアキュムレータと、該アキュムレータのオイルを前記ホイールシリンダーに流入させる流入バルブと、前記ホイールシリンダー側と前記リザーバ側とを連結するリターン流路と、該リターン流路に設けられ、前記ホイールシリンダー側のオイルを前記リザーバ側に流出させる流出バルブと、前記マスターシリンダーの出口と前記ホイールシリンダーとの間の流路を開閉させる遮断バルブとを含み、前記シミュレータは、オイルを保存するためのシミュレーションチェンバーと、該シミュレーションチェンバーに連結された流路を開閉するためのシミュレータバルブとを含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記シミュレーションチェンバーは、マスターシリンダーの出口側に連通される第1チェンバーと、前記ポンプの入口側に連結される第2チェンバーとを含み、前記シミュレータバルブは、前記第2チェンバーの入口側に設けられることを特徴とする。
また、前記シミュレータは、前記シミュレータバルブを迂回して設けられ、前記第2チェンバーからオイルを排出させて逆流を防止するチェックバルブをさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記油圧制御装置には、前記アキュムレータの出口側と前記流出バルブの出口側とを連結するリリーフ流路が形成され、該リリーフ流路には、前記アキュムレータのオイルを前記リターン流路に流出させるリリーフバルブが設けられることを特徴とする。
また、前記油圧制御装置には、前記ホイールシリンダーの左右側を連結するバランス流路が形成され、該バランス流路には、バランスバルブが備わることを特徴とする。
また、前記シミュレータは、前記油圧制御装置の内部に含まれ、前記油圧制御装置は、単一のブロックを形成することを特徴とする。
【0010】
また、ブレーキペダルと、ホイールシリンダーと、マスターシリンダーと、該マスターシリンダーの一側に設けられてオイルを保存するリザーバと、前記ホイールシリンダー側に伝えられる制動油圧を調節するための油圧制御装置と、前記ブレーキペダルの踏力を形成するためのシミュレータとを含む電子油圧ブレーキシステムにおいて、前記油圧制御装置は、リザーバのオイルをポンピングして吐出させるポンプと、該ポンプから吐出されたオイルを一時保存するアキュムレータと、該アキュムレータのオイルを前記ホイールシリンダーに流入させる流入バルブと、前記ホイールシリンダー側と前記リザーバ側とを連結するリターン流路と、該リターン流路に設けられ、前記ホイールシリンダー側のオイルを前記リザーバ側に流出させる流出バルブと、前記マスターシリンダーの出口と前記ホイールシリンダーとの間の流路を開閉させる遮断バルブと、前記ホイールシリンダーの左右側を連結するバランス流路と、該バランス流路に設けられるバランスバルブとを含み、前記シミュレータは、オイルを保存するためのシミュレーションチェンバーと、該シミュレーションチェンバーに連結された流路を開閉するためのシミュレータバルブとを含み、前記シミュレーションチェンバーは、前記マスターシリンダーの出口側に連通される第1チェンバーと、前記ポンプの入口側に連結される第2チェンバーとを含み、前記シミュレータバルブは、前記第2チェンバーの入口側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電子油圧ブレーキシステムにおいては、ブレーキペダルの踏力を形成するためのシミュレータが、マスターシリンダーの動作とは関係なしに作動するので、マスターシリンダーで発生しうるシーリング部材の摩耗などによるEHBシステムの信頼性及び耐久性低下を防止できるという効果がある。
また、精密度を要する別途のEHBシステム用マスターシリンダーを備える必要がないので、他のブレーキシステムでも使用可能な汎用化されたマスターシリンダーを装着することができ、製造原価を節減できるという効果がある。
また、本発明に係る電子油圧ブレーキシステムにおいては、油圧制御装置内にシミュレータを内蔵することで、マスターシリンダーの配置空間を節約できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るEHBシステムの油圧回路図である。図2に示すように、本発明に係る電子油圧ブレーキシステム(以下、'EHBシステム'という)は、制動時に運転手によって操作されるブレーキペダル20と、このブレーキペダル20から力が伝えられるマスターシリンダー22と、このマスターシリンダー22の上部に設けられてオイルを保存するリザーバ23と、このリザーバ23のオイルが伝えられて各車輪27,28の制動を行うホイールシリンダー24と、マスターシリンダー22とホイールシリンダー24との間に設けられ、各種の流路26,36,38,39,42、多数のバルブ34,35,40,43、センサ33,41、ポンプ30、アキュムレータ32などが含まれた油圧制御装置25(以下、'HCU'という)とを備えている。
【0013】
ブレーキペダル20には、運転手の制動意志を感知するためのペダル変位センサ21aと、ブレーキペダルの作動可否を感知するBLS(Brake light switch)21bとが設けられる。
マスターシリンダー22は、上部側にオイルを保存するリザーバ23が設置され、下部には出口22aが設けられる。マスターシリンダー22の出口22aに流出されたオイルは、HCU25に流入される。また、リザーバ23にも、HCU25にオイルを流出入できるように、後述するポンプ30の入口部に連結されるノーマル流路26が形成される。
HCU25は、内部に流路が備わり、ホイールシリンダー24側に伝えられる制動油圧を調節するための複数個のバルブ34,35,40,43と、アキュムレータ32と、オイルをポンピングするためのポンプ30と、モータ31とを含んで、一つのコンパクトなブロック形態となる。
HCU25に含まれるポンプ30は、リザーバ23から流入するオイルを高圧にポンピングし、制動圧を形成するために設けられる。ポンプ30の一側には、ポンプ30に駆動力を提供するためのモータ31が設けられる。
【0014】
アキュムレータ32は、ポンプ30の出口側と流入バルブ34との間に設けられ、ポンプ30の駆動によって生成された高圧のオイルを一時保存する。アキュムレータ32は、内部にガスが充填されたダイヤフラム構造で設けられ、高圧のオイルが充填可能になることが好ましい。また、アキュムレータ32の出口側には、アキュムレータ圧力センサ33を設けてアキュムレータ32のオイル圧力を測定する。測定されたオイル圧力と設定圧力とを比較した結果、測定圧力が設定圧力より低い場合、ポンプ30を駆動してリザーバ23のオイルを吸入し、このオイルをアキュムレータ32に充填する。
このとき、EHBシステムの異常によってアキュムレータ32に過度の圧力が充填されることを防止するために、アキュムレータ32の出口側と後述する流出バルブ35の出口側とを連結するリリーフ流路36を設け、このリリーフ流路36にリリーフバルブ37を備える。リリーフバルブ37は、平常時には閉鎖状態を維持するが、アキュムレータ32のオイル圧力が設定圧力を超えると開放状態となり、アキュムレータ32に過度の圧力が発生することを防止する。
【0015】
アキュムレータ32の出口側には、流入バルブ34が設けられる。この流入バルブ34は、平常時に閉鎖状態を維持するノーマルクローズ型で備わり、運転手がブレーキペダル20を踏むと、開放状態となり、アキュムレータ32に保存された制動オイルをホイールシリンダー24に伝達する。
また、HCU25には、ホイールシリンダー24側とリザーバ23側とを連結するリターン流路38が設けられ、リターン流路38の中途には、ホイールシリンダー24のオイルをリザーバ23側に流出させる流出バルブ35が設けられる。
また、マスターシリンダー22の出口22aとホイールシリンダー24との間には、EHBシステムの故障時に流路を形成するバックアップ流路39が設けられる。
【0016】
バックアップ流路39の中途には、バックアップ流路39を開閉する遮断バルブ40が設けられ、遮断バルブ40とマスターシリンダー22の出口22aとの間には、マスターシリンダー22のオイル圧力を測定するマスターシリンダー圧力センサ41が設けられる。
また、HCU25の内部には、前輪27及び後輪28の左右側のホイールシリンダー24をそれぞれ連結するバランス流路42が設けられ、バランス流路42の中途には、左右側のホイールシリンダー24の制動圧が不均衡になるとき、これを補償するためのバランスバルブ43がノーマルオープン型で設けられる。このとき、車両にスリップなどが発生し、各ホイールシリンダー24を独立的に制御する必要がある場合、バランスバルブ43は閉鎖状態となる。
【0017】
また、本発明のEHBシステムには、ブレーキペダル20の踏力を形成するためのシミュレータ50が備わる。
シミュレータ50は、オイルを保存するためのシミュレーションチェンバー51,52と、これらシミュレーションチェンバー51,52に連結された流路を開閉するためのシミュレータバルブ55とを含んで構成される。
また、シミュレーションチェンバー51,52は、内部のピストン53によって第1チェンバー51と第2チェンバー52とに仕切られる。すなわち、第1チェンバー51は、マスターシリンダー22の出口側に連通され、第2チェンバー52は、ポンプ30の入口側に連結される流路に連通される。弾性部材54は、第2チェンバー52の内部に備わり、第1チェンバー51に流入するオイルの圧力によって弾性部材54が収縮することで、ピストン53が昇降可能になる。
【0018】
シミュレータバルブ55は、ポンプ30の入口側と第2チェンバー52とを連結する流路の中途に設けられるが、平常時に閉鎖状態を維持するノーマルクローズ型で形成される。また、シミュレータバルブ55を迂回してチェックバルブ56が備わるが、このチェックバルブ56は、第1チェンバー51に保存されたオイルを排出させ、逆流を防止するために設けられる
上記のようなシミュレータ50は、HCU25の内部に含ませて、HCU25を単一のブロック形態に形成することが好ましい。また、シミュレータ50を含むHCU25と、電気的に作動する構成要素を制御するためのECU(図示せず)とを含んで、一つのブロック形態に電子油圧制御装置(HECU)を設けてコンパクト化を図ることができる。
【0019】
上記のように、本発明のEHBシステムは、マスターシリンダーのピストンの変位とは関係なしにブレーキの踏力を形成できるため、既存の精密度を要するEHBシステム用マスターシリンダーから発生しうるシーリング部材の摩耗などによるEHBシステムの信頼性及び耐久性低下を防止できるとともに、シミュレータをHCUに内蔵することで、マスターシリンダーの配置空間を節約できるという効果がある。また、EHBシステムを構成するために、シミュレータを備えたEHBシステム用マスターシリンダーを備える必要がない。したがって、マスターシリンダーを汎用化できるという効果がある。
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るEHBシステムの動作を説明する。
EHBシステムは、正常な動作状況ではノーマルモードで動作し、EHBシステムに故障が発生した場合、バックアップモードを行って車両を制動する。
ノーマルモードでは、運転手が制動のためにブレーキペダル20を踏むと、ペダル変位センサ21a、BLS21bまたはマスターシリンダー圧力センサ41が運転手の制動意志を感知し、それに対応する信号をECUに伝送する。そして、ECUは、ノーマルオープン型の遮断バルブ40を閉鎖状態にし、ホイールシリンダー24に連結されるバックアップ流路39を遮断する。これと同時に、ノーマルクローズ型のシミュレータバルブ55を開放状態にすることで、第2チェンバー52がリザーバ23に連結され、リザーバ23のオイル圧力と同一の圧力が第2チェンバー52内に形成される。また、マスターシリンダー22の出口側と第1チェンバー51とが連通されるので、第1チェンバー51の圧力は、マスターシリンダー22の圧力と同一に維持される。このとき、マスターシリンダー22のオイル圧力、すなわち、第1チェンバー51の圧力と、第2チェンバー52の内部に設けられた弾性部材54の弾性力とがピストン53を境界にして平衡をなす。したがって、運転手がブレーキペダル20を踏むと、マスターシリンダー22内の高圧のオイルが第1チェンバー51に流入して弾性部材54が収縮し、ピストン53が上向移動するようになる。その結果、弾性部材54の弾性力に該当するペダル感を得られる。
【0021】
これと同時に、ペダル変位センサ21a及びマスターシリンダー圧力センサ41によって感知された変位値及び圧力値がECUに伝えられ、運転手の制動意志を判断するようになる。ECUは、流入バルブ34を開放状態にして、リザーバ23のオイルを加圧・保存するアキュムレータ32内で、運転手の制動意志に相応する油圧をホイールシリンダー24に伝達する。このとき、ホイールシリンダー24の制動が短時間に行われ、再びオイルがリターン流路38に沿って流出バルブ35に達すると、ECUは、信号を送って流出バルブ35を開放状態にし、オイルをリザーバ23側に還流させる。この還流されたオイル及びリザーバ23のオイルは、ポンプ30によって加圧されるが、この加圧されたオイルは、アキュムレータ32に保存されてから、再び流入バルブ34を通してホイールシリンダー24に伝えられる。このような過程が反復的に行われながら、ホイールシリンダー24では、短時間に制動が繰り返される断続的な制動を行うようになる。
【0022】
このとき、アキュムレータ32に過度な圧力のオイルが充填されることを防止するために、アキュムレータ32に設定圧力以上のオイルが充填されると、リリーフバルブ37が開放状態になり、アキュムレータ32のオイルは、リリーフ流路36及びリターン流路38を通して還流される。
また、ペダル変位センサ21aによって感知された変位値が設定値より大きい場合、シミュレータバルブ55を閉鎖する。シミュレータバルブ55が閉鎖されると、それ以上第2チェンバー52のオイルが流出されないので、ピストン53の下向移動が停止し、これによって、ブレーキペダル20も前進できなくなる。したがって、運転手の過度な踏力によるマスターシリンダー22及びシミュレータ50の損傷を防止できる。
【0023】
また、ブレーキペダル20に加えられた圧力を解除するか、ノーマルモードの作動中に故障によって電流が印加されない場合、第1チェンバー51に保存されたオイルは、マスターシリンダー22側に還流される。このとき、シミュレータバルブ55がノーマルクローズ状態を維持するため、マスターシリンダー22のオイルは、シミュレータバルブ55を通して第2チェンバー52に流入しない。よって、第1チェンバー51のオイルも、マスターシリンダー22側に還流されなくなる。チェックバルブ56は、このような問題を解決するためのもので、シミュレータバルブ55の閉鎖状態で第2チェンバー52にリザーバ23のオイルを供給することで、第1チェンバー51に保存されたオイルの還流が可能になる。
【0024】
一方、EHBシステムの故障時にバックアップモード動作を行うが、このとき、遮断バルブ40が開放状態を維持し、マスターシリンダー22の出口側とホイールシリンダー24との間にバックアップ流路39が形成される。そして、このバックアップ流路39を通してマスターシリンダー22の制動油圧がホイールシリンダー24側に伝えられ、制動が行われる。すなわち、EHBシステムの故障時にも、運転手が踏むブレーキペダル20の踏力による制動が可能になる。このとき、シミュレータバルブ55は、ノーマルクローズ型であって第2チェンバー52が閉鎖状態となり、ブレーキペダル20の踏力によって形成された制動油圧は、第1チェンバー51に流入せずに全てホイールシリンダー24側に伝えられる。
【0025】
また、本発明のEHBシステムにバランスバルブ43が備わるため、前輪27または後輪28の両側のホイールシリンダー24の制動圧が異なる場合、その差圧を補償して両側のホイールシリンダー24の制動圧を同一にすることができる。
ただし、車輪27,28にスリップが発生する場合は、ホイールシリンダー24を独立的に制御する必要があるため、バランスバルブ43を閉鎖状態にして、一側のホイールシリンダー24の制動圧が他側のホイールシリンダー24に伝えられることを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のEHBシステムの油圧回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係るEHBシステムの油圧回路図である。
【符号の説明】
【0027】
20 ブレーキペダル
22 マスターシリンダー
24 ホイールシリンダー
25 HCU
30 ポンプ
32 アキュムレータ
34 流入バルブ
35 流出バルブ
50 シミュレータ
51 第1チェンバー
52 第2チェンバー
53 ピストン
55 シミュレータバルブ
56 チェックバルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルと、ホイールシリンダーと、マスターシリンダーと、該マスターシリンダーの一側に設けられてオイルを保存するリザーバと、前記ホイールシリンダー側に伝えられる制動油圧を調節するための油圧制御装置と、前記ブレーキペダルの踏力を形成するためのシミュレータとを含む電子油圧ブレーキシステムにおいて、
前記油圧制御装置は、リザーバのオイルをポンピングして吐出させるポンプと、該ポンプから吐出されたオイルを一時保存するアキュムレータと、該アキュムレータのオイルを前記ホイールシリンダーに流入させる流入バルブと、前記ホイールシリンダー側と前記リザーバ側とを連結するリターン流路と、該リターン流路に設けられ、前記ホイールシリンダー側のオイルを前記リザーバ側に流出させる流出バルブと、前記マスターシリンダーの出口と前記ホイールシリンダーとの間の流路を開閉させる遮断バルブとを含み、
前記シミュレータは、オイルを保存するためのシミュレーションチェンバーと、該シミュレーションチェンバーに連結された流路を開閉するためのシミュレータバルブとを含むことを特徴とする電子油圧ブレーキシステム。
【請求項2】
前記シミュレーションチェンバーは、マスターシリンダーの出口側に連通される第1チェンバーと、前記ポンプの入口側に連結される第2チェンバーとを含み、
前記シミュレータバルブは、前記第2チェンバーの入口側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子油圧ブレーキシステム。
【請求項3】
前記シミュレータは、前記シミュレータバルブを迂回して設けられ、前記第2チェンバーからオイルを排出させて逆流を防止するチェックバルブをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電子油圧ブレーキシステム。
【請求項4】
前記油圧制御装置には、前記アキュムレータの出口側と前記流出バルブの出口側とを連結するリリーフ流路が形成され、該リリーフ流路には、前記アキュムレータのオイルを前記リターン流路に流出させるリリーフバルブが設けられることを特徴とする請求項2または3に記載の電子油圧ブレーキシステム。
【請求項5】
前記油圧制御装置には、前記ホイールシリンダーの左右側を連結するバランス流路が形成され、該バランス流路には、バランスバルブが備わることを特徴とする請求項4に記載の電子油圧ブレーキシステム。
【請求項6】
前記シミュレータは、前記油圧制御装置の内部に含まれ、前記油圧制御装置は、単一のブロックを形成することを特徴とする請求項5に記載の電子油圧ブレーキシステム。
【請求項7】
ブレーキペダルと、ホイールシリンダーと、マスターシリンダーと、該マスターシリンダーの一側に設けられてオイルを保存するリザーバと、前記ホイールシリンダー側に伝えられる制動油圧を調節するための油圧制御装置と、前記ブレーキペダルの踏力を形成するためのシミュレータとを含む電子油圧ブレーキシステムにおいて、
前記油圧制御装置は、リザーバのオイルをポンピングして吐出させるポンプと、該ポンプから吐出されたオイルを一時保存するアキュムレータと、該アキュムレータのオイルを前記ホイールシリンダーに流入させる流入バルブと、前記ホイールシリンダー側と前記リザーバ側とを連結するリターン流路と、該リターン流路に設けられ、前記ホイールシリンダー側のオイルを前記リザーバ側に流出させる流出バルブと、前記マスターシリンダーの出口と前記ホイールシリンダーとの間の流路を開閉させる遮断バルブと、前記ホイールシリンダーの左右側を連結するバランス流路と、該バランス流路に設けられるバランスバルブとを含み、
前記シミュレータは、オイルを保存するためのシミュレーションチェンバーと、該シミュレーションチェンバーに連結された流路を開閉するためのシミュレータバルブとを含み、
前記シミュレーションチェンバーは、前記マスターシリンダーの出口側に連通される第1チェンバーと、前記ポンプの入口側に連結される第2チェンバーとを含み、
前記シミュレータバルブは、前記第2チェンバーの入口側に設けられることを特徴とする電子油圧ブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−153309(P2007−153309A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251983(P2006−251983)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(500035764)マンド コーポレーション (15)
【氏名又は名称原語表記】MANDO CORPORATION
【住所又は居所原語表記】343−1,Manho−Ri,Posung−Myon,Pyung Taek−City,Kyongki−Do,451−820,Korea
【Fターム(参考)】