説明

電子装置および無線通信端末

【課題】筐体間での伝送データの大容量化高速化にともない消費電力が増加し、信号歪による特性劣化を引き起し、ケーブルやコネクタの信頼性が低下、またコストアップの要因となる様々な課題を取り除く。
【解決手段】第1筐体部と、第2筐体部と、前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、前記第1筐体部に搭載された第1回路部と、前記第2筐体部に搭載された第2回路部と、前記第1筐体部に搭載された第1の内部通信制御部と、前記第2筐体部に搭載された第2の内部通信制御部とを備え、前記第1および第2の内部通信制御部は、前記第1および第2回路部の間で行われる通信を制御し、前記第1または第2の内部通信制御部は、少なくとも情報の一部を前記連結部に受給電する受給電手段を介して通信を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子や撮像素子など高速なデータ転送を必要とする素子を内蔵する電子装置および無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノートブックコンピュータ、デジタルカメラなどの機能の向上は目覚しく、それらの電子機器に内蔵される表示素子や撮像素子の高分解能化および高精細化が求められ、ますます複雑化してきている。特に携帯電話においては、カメラ機能の内蔵化や表示部の大型化および高機能化とともに小型軽量化および低消費電力化が求められ、その筐体構造もクラムシェル型またはフリップ型と呼ばれる折り畳み型が主流になってきている。
【0003】
図13は、表示素子としてアクティブマトリックス型液晶表示体を用いた電子装置の典型的な構成を示すブロック図、図14はそのタイム図である。
図13に示すように、CPU1301は、JPEG形式やMPEG形式などの圧縮画像や動画データの伸張や演算により、表示すべき画像データを生成する。そして、CPU1301は、表示すべき画像データを生成すると、その画像データをビデオメモリ1302に書き込む。液晶コントローラ1303は、液晶表示に必要な各種タイミング、すなわちXドライバ1313のXクロック信号1315および水平同期信号1314ならびにYシフトレジスタ1307の垂直同期信号1318を生成し、またビデオメモリ1302から表示すべき順序に沿って画像データを読み出して、液晶表示体1308のドライバ(Xドライバ1313およびYシフトレジスタ1307)に送出する。ここで、Xドライバ1313は、液晶表示体1308の画素がn行m列で構成される場合、m段のXシフトレジスタ1304、mワードのラッチ1305およびm個のDA変換回路1306から構成される。
【0004】
液晶コントローラ1303は、表示フレームの先頭の画素を読み出すとき、垂直同期信号1318を発生し、Yシフトレジスタ1307に送出する。このとき同時に、液晶コントローラ1303は、液晶表示体1308の1行1列目の画素に表示するデータをビデオメモリ1302から読み出し、表示データ信号1316としてラッチ1305のデータ端子に送出する。
【0005】
Xシフトレジスタ1304は、図14に示すように、液晶コントローラ1303が発生する水平同期信号1314をXクロック信号1315に同期して読み込み(図14(a)、(b))、第一列目の画像データをラッチするための信号X1ラッチを発生する(図14(c))。この信号X1ラッチによって1行1列目の画素に表示されるデータがラッチ1305の1列目にラッチされる。引き続き、液晶コントローラ1303は、ビデオメモリ1302から次の画素に表示すべきデータを読み出し、ラッチ1305のデータ端子に出力する。そして、次の画素に表示すべきデータがラッチ1305のデータ端子に出力されると、Xドライバ1313のXシフトレジスタ1304は、水平同期信号1314を一つシフトさせ、第二列目の画像データをラッチするための信号X2ラッチを発生させて(図14(d))、1行2列目の画像データをラッチ1305にラッチさせる。
【0006】
以下、Xシフトレジスタ1304は水平同期信号1314を順次シフトさせ、1行目に表示するデータをラッチ1305に順次ラッチさせる。1行分のデータをラッチ1305が保存し終わると、次の水平同期信号1314が出力され(図14(a)および図14(h)、なお、図14では(a)〜(f)と同図(g)〜(k)で横軸のタイムスケールが変わっていることに注意されたい。そのため同一信号である水平同期信号は(a)に加え(h)が再掲されている。)、DA変換回路1306はラッチ1305に保持されたデータをDA変換し、列電極1310のi番目(1≦i≦m)に出力する。同時にYシフトレジスタ1307は1行目の行電極1309に選択信号Y1を出力する。
【0007】
以下同様に、Yシフトレジスタ(Yドライバ)1307は、行電極1309のj番目(1≦j≦n)に出力される選択信号Yjを水平同期信号1314が出る度に順次シフトしていく。
図13の一点鎖線で示す円内は液晶表示体1308のマトリックス配置された1画素部分を拡大した図である。アクティブスイッチ素子1311は、行電極1309のj番目が選択されると、列電極1310のi番目に出力されたDA変換回路1306の出力を、j行i列目の画素電極1312に伝える。なお、DA変換回路1306を液晶コントローラ1303側に一つ置いて、表示データ信号1316をアナログ信号で伝送することもできる。この場合は、ラッチ1305はアナログのサンプルアンドホールド回路となる。この方法はDA変換回路1306の数を減らすことができ、従来多く用いられたが、DA変換回路1306といっても最終的に画素電極1312に印加される電圧の平均値が所定値になっていればよく、パルス幅変調などにデジタル回路が使用でき、アナログのサンプルアンドホールド回路が不要となるため、LSIの高密度化に伴い、図13で説明した方法が主流となってきている。
【0008】
ただし、図13の方法では表示データ信号1316はデジタル信号で送られるため、信号線の数が非常に多くなり、表示データ信号1316を送るために、例えば、8ビット×3原色の計24本の信号線が必要となる。
なお、画面の行の右端の表示データ信号1316が液晶コントローラ1303から出力された後、次の行の左端の表示データ信号1316が出力されるまでの時間、また画面の最下行の表示データ信号1316が出力し終わってから、次のフレームの最初の行の表示データ信号1316が出力されるまでの時間は、(水平、垂直)ブランキング期間または帰線期間と呼ばれ、CRTでは、電子ビームを往復させているために0にできないが、液晶表示体1308では、画素電極1312の選択がアクティブスイッチ素子1311のスイッチング動作で行われるため0でもよい。図14では、1画素分の水平帰線期間および1行分の垂直帰線期間をとった場合を例示している。
【0009】
デジタルカメラなどの撮像素子を使用する電子装置においては、ちょうど液晶表示体1308を用いる場合と信号の伝送される向きが逆になり、同様の回路構成がとられる。
このような表示体素子や撮像素子を内蔵する電子装置において、大型表示化、高分解能化、小型軽量化が求められている。このため、図13の電子装置を実装する実装基板は複数に渡ることが多く、その場合、図13の一点鎖線1317−1317´で実装基板を分けることが多い。
【0010】
ただし、実装基板を分けると、CPU1301と液晶表示体1308との間の結線が長くなる。また、図13の構成に撮像素子を搭載した場合にも、液晶表示体1308を用いる場合と信号の伝送される向きが逆になり、同様の回路構成がとられるため、CPU1301と撮像素子との間の結線が長くなる。
また、上記のように、液晶コントローラ1303側から液晶表示体1308側に表示データ信号1316などを送るための信号線は並列に何本も必要であるが、信号線の数を減らすために並直―直並変換を行い、データをシリアル化して伝送することが考えられるが、従来の技術では伝送路1本当たり伝送できるデータ量が少なく、最近の機器の複雑化に伴う高速伝送の要求によってすでに1本あたりの伝送容量を超えている。ゆえに、従来の技術では、シリアル化による伝送路の数を減らすことは非常に困難であり、多くの線路を使って並列伝送せざるを得ない。
【0011】
すなわち、液晶表示体1308や撮像素子などの高分解能化に伴い、それらの線路で送られる信号の周波数が高くなり、CPU1301や液晶コントローラ1303の側との接続が困難になってきている。特に、クラムシェル型構造では、細いヒンジ部分を介して両者が接続される構造となる。このため、液晶表示体1308や撮像素子の高分解能化に伴い、図13の一点鎖線1317−1317´で実装基板を分けた時の両基板間でやり取りされるデータ量も多くなり、多数の線路を使って細いヒンジ部分を介し何本もの伝送路を通すのは困難を極める。この問題を解決するために伝送すべきデータをシリアル化し、少ない本数の伝送線路で高速に伝送する方法が提案されている。高速データ伝送の方式として、たとえば、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)を液晶表示体1308や撮像素子の接続に使うことが提案されている(特許文献1および特許文献2)。特許文献3および特許文献4等では、この方式でも十分な解決が得られないとして、新たな方法も提案されている。
【特許文献1】特許公報3086456(欄44)
【特許文献2】特許公報3330359(欄46)
【特許文献3】特許公報3349426
【特許文献4】特許公報3349490
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これらの従来の技術では、伝送すべきデータ量が多くなってくると、データレートが上がって様々な困難を引き起こす。例えば、伝送すべきデジタルのベースバンド信号はDCから伝送レートの数倍の周波数成分を有し、その比帯域は非常に大きく、伝送路の周波数特性による歪はデータ転送の質に致命的な影響を及ぼすという問題があった。さらに、データの受信端でのロジックレベルを確保するため、送信側で十分な伝送電力が要求されるため、消費電力と不要放射による周囲への干渉を引き起こすという問題があった。
【0013】
すなわち、受電端でのロジックレベルを確保するため、もともと大きな信号電力が必要である。その上、信号を精度よく伝送するためには整合の取れたインピーダンス終端が必要であるが、伝送インピーダンスはせいぜい100オーム位なので、それらの終端抵抗に消費される電力が容認できないほどに大きくなってしまう。さらに、伝送される信号の比帯域は非常に大きいため、伝送路のインピーダンスが帯域内で一定せず、また周波数特性が実装状況や配線の引き回しによっても変化するため、インピーダンスマッチングを正しく取ることも容易でない。特に、半導体集積回路に内蔵される送受信回路の特性は、半導体集積回路が一般に種々の回路に汎用的に使用されるので、個々の回路に固有の伝送インピーダンスにマッチングさせることが難しく、基本的にミスマッチ状態で使用せざるを得ない。このことがさらに高速データ信号を正しく伝送することを困難にしている。
【0014】
さらに、図13の一点鎖線1317−1317´で実装基板を分けると、長い配線によって引き回された線路を通して高速で大量のデータを伝送させる必要がある。このため、線路からの放射電磁界が増えることとなり、他の電子装置あるいは磁気回路への電磁波妨害の要因となる。従来の信号線による信号伝送では、受電端での振幅レベルが規定されており、受電端で十分な品質が確保できても、信号の振幅レベルを下げることができない。すなわち、EMI対策が困難になり、結果として回路デザインへの制約やコストアップを引き起こしている。また、送信側では、受電端の負荷に加え、線路の浮遊容量も同時に駆動することになるため、信号伝達に余分なエネルギーを必要としている。すなわち、消費電力を増大させる結果となっている。
【0015】
また、従来の技術では、1伝送路あたりの転送データ速度に限りがあり、高速データ伝送をするには、線路を並列化する必要があった。データ伝送の高速化に伴って配線数が増大ずると、配線のための物理的スペースが増加し、当然の事ながら回路デザインに対し大きな制約を課すことになる。
特に、クラムシェル型構造などにおいて配線がヒンジ部などの可動部を通る場合は、可動部の折れ曲がり具合により特性インピーダンスが変化するため、状況によってインピーダンス不整合が生じ、折れ曲がり部での反射等により信号劣化を引き起こす。このため、伝送されるデータの速度が制限されたり、実装方法や部品の配置が制約を受けるという問題点があった。
【0016】
また、表示体素子や撮像素子の高分解能化および高速化に対応するには、ヒンジ部を介してやり取りされる信号数が数十本となる上に、配線がヒンジ部を通る場合には、基板上の配線を使用できないので、コネクタを介してフレキシブル基板を接続することになる。フレキシブル基板やコネクタによる接続は、コストが高い上に接続信頼性も低いという欠点を有していた。
【0017】
そこで、本発明は、表示体や撮像素子などを内蔵する携帯電話などの電子装置内のそれらの回路間の信号伝送において、従来の上述のような種々の問題や制約を持つデータの高速度伝送の方法を示し、従来の情報伝送方式の欠点や制約を除去し、低コストで信頼性の高い電子装置、信号伝送装置および無線通信端末を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様に係る電子装置は、第1筐体部と、第2筐体部と、前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、前記第1筐体部に搭載された第1回路部と、前記第2筐体部に搭載された第2回路部と、前記第1筐体部に搭載された第1の内部通信制御部と、前記第2筐体部に搭載された第2の内部通信制御部とを備え、前記第1および第2の内部通信制御部は前記第1および第2回路部の間で行われる通信を制御し、前記第1または第2の内部通信制御部は、少なくとも情報の一部を前記連結部に受給電する受給電手段を介して通信を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の上記構成によれば、クラムシェル構造のように回路が2つの筐体に分割収納される電子装置において、それらの筐体を連結する連結部に通電してその筐体間の信号やり取りの通信を行うため、筐体間を接続する信号線の数を著しく減じることが可能となる。これによって、電子装置の構造が簡略化され装置のコストダウンと信頼性向上に効果がある。
【0020】
本発明の一態様に係る電子装置の前記第1または第2の内部通信制御部は、データをシリアル信号として生成する生成手段と、搬送波を発生する発振手段と、前記搬送波を前記生成手段の信号により変調する変調手段と、前記変調手段の生成する信号を前記連結部に給電する給電手段と、前記連結部に接続され前記変調手段の生成する信号を受信し復調する復調手段とを具備することを特徴とする。
【0021】
本発明の上記構成によれば、搬送波を発生させ、それにシリアル化された筐体間でやり取りする信号で変調をかけることにより、必要な伝送路数を減らすとともに、伝送する信号の比帯域を縮小することを可能として、これによって筐体を接続する接続部の金具のような必ずしも伝送線路として設計されたものでないものまでも、伝送線路として使用することを可能とする。これによって、筐体間を接続する信号線の数を著しく減じることが可能となり、電子装置の構造が簡略化され、装置のコストダウンと信頼性向上に効果がある。
【0022】
本発明の一態様に係る電子装置の前記搬送波を発生する発振手段は、前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係で信号伝送を行った際最適な伝送特性を持つ周波数を発振することを特徴とする。
本発明の上記構成によれば、連結部を通って伝送される信号の搬送周波数はこの発振手段の特性によって自動的に連結部の特性に合わせて最適な周波数に調整されるため、常に良好な通信特性を維持できる。
【0023】
本発明の一態様に係る電子装置の前記受給電手段は、その受給電点の位置がその受給電点の位置で信号伝送を行った際に適当な伝送特性となるような位置に設定されていることを特徴とする。
本発明の上記構成によれば、連結部へ給電する給電位置を適当に設定することにより、良好な伝送特性を確保することが可能となり、これにより良好な通信特性を維持することが可能となる。
【0024】
本発明の一態様に係る電子装置は、第1筐体部と、第2筐体部と、前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、前記第2筐体部に搭載された表示部と、前記第1筐体部に搭載された第1回路部と、前記第2筐体部に搭載され前記表示部の制御回路を含む第2回路部と、前記第1および第2回路部間でやりとりされるデータをシリアル信号として生成する生成手段と、搬送波を発生する発振手段と、前記搬送波を前記生成手段の信号により変調する変調手段と、前記変調手段の生成する信号を前記連結部に給電する給電手段と、前記連結部に接続され前記変調手段の生成する信号を受信し復調する復調手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の上記構成によれば、表示部とその制御部を持ち、その回路部分が2つの筐体に分割収納され、それらが連結部により連結されている伝送装置において、制御部と表示部間の信号伝送を連結部に通電することによって行うことを可能とする。これによって、筐体間を接続する信号線の数を著しく減じることが可能となり、電子装置の構造が簡略化され、装置のコストダウンと信頼性向上に効果がある。
【0026】
本発明の一態様に係る電子装置は、第1筐体部と、第2筐体部と、前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、前記第2筐体部に搭載された表示部と、前記第1または第2筐体部に搭載された撮像素子と、前記第1筐体部に搭載された前記撮像素子の制御回路を含む第1回路部と、前記第2筐体部に搭載され前記表示部の制御回路を含む第2回路部と、前記第1および第2回路部間でやりとりされるデータをシリアル信号として生成する生成手段と、搬送波を発生する発振手段と、前記搬送波を前記生成手段の信号により変調する変調手段と、前記変調手段の生成する信号を前記連結部に給電する給電手段と、前記連結部に接続され前記変調手段の生成する信号を受信し復調する復調手段とを備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の上記構成によれば、撮像素子を持つ電子装置において、その制御部と撮像素子や表示部との間の信号伝送を連結部に通電することによって行うことを可能となる。これによって、筐体間を接続する信号線の数を著しく減じることが可能となり、電子装置の構造が簡略化され、装置のコストダウンと信頼性向上に効果がある。
本発明の一態様に係る電子装置は、位置関係を変えられるように第1筐体部と第2筐体部とが連結部を介して連結された電子装置であって、前記第1筐体部と第2筐体部との間のデータ伝送が前記連結部を介して行われることを特徴とする。
【0028】
本発明の上記構成によれば、クラムシェル構造のように回路が2つの筐体に分割収納される電子装置において、それらの筐体を連結する連結部に通電してその筐体間の信号やり取りの通信を行うことが可能となり、筐体間を接続する信号線の数を著しく減じることが可能となる。これによって、電子装置の構造が簡略化され、装置のコストダウンと信頼性向上に効果がある。
【0029】
本発明の一態様に係る電子装置は、前記連結部を介して送信される送信データの信号帯域を搬送波を中心とする周波数帯域に変換する周波数変換手段をさらに備えることを特徴とする。
本発明の上記構成によれば、表示データのような高速の広い帯域のデータ信号であっても、その比帯域を縮小することによって、連結部のような必ずしも伝送線路として設計されたものでない部品を介しても、データ伝送が可能となるとともに、データ伝送に使用される周波数が高いため、これらを構成する部品は小型化が容易であり、実装スペースの節約も可能となる。
【0030】
本発明の一態様に係る電子装置は、前記搬送波を生成するための基準信号を復調側に伝送する有線伝送路をさらに備えることを特徴とする。
本発明の上記構成によれば、搬送波周波数は送信側と受信側とで完全に一致させることが可能なので、同期検波の位相調整も容易となるとともに、発振回路の発振精度は問題とならず、コストダウン効果を得ることができる。
【0031】
本発明の一態様に係る無線通信端末は、第1筐体部と、第2筐体部と、前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、前記第1筐体部または前記第2筐体部に搭載された外部無線通信用アンテナと、前記第1筐体部に搭載され、前記外部無線通信用アンテナを介して行われる外部無線通信の制御を主として司る外部無線通信制御部と、前記第2筐体部に搭載された表示部と、前記第1筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第1の信号送受信部と、前記第2筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第2の信号送受信部とを備えることを特徴とする。
【0032】
本発明の上記構成によれば、携帯電話機のように外部無線通信制御部を持ち、その回路が2つの筐体に分割収納されているような無線通信端末において、外部無線通信制御部により取り込まれたデータを表示するために、筐体間でやり取りされる信号の伝送を筐体の連結部に通電することにより行うことが可能となる。これによって、筐体間を接続する信号線の数を著しく減じることが可能となり、無線通信端末の構造が簡略化され、装置のコストダウンと信頼性向上に効果がある。
【0033】
本発明の一態様に係る無線通信端末は、第1筐体部と、第2筐体部と、前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、前記第1筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第1の信号送受信部と、前記第2筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第2の信号送受信部と、前記第1筐体部に搭載され、前記連結部を介して行われる内部通信の送受信切り替えおよび制御を司る第1の内部信号伝送制御部と、前記第2筐体部に搭載され、前記連結部を介して行われる内部通信の送受信切り替えおよび制御を司る第2の内部信号伝送制御部とを備えることを特徴とする電子装置。
【0034】
本発明の上記構成によれば、連結部を介して行う内部通信を双方向とすることが可能となり、例えば第1筐体に表示部と撮像部、第2筐体にそれらデータの処理部を有する電子装置において、第1筐体の撮像部で撮像したデータを連結部を介して第2筐体の処理部に送り、該データを処理部で処理した後、連結部を介して第1筐体にある表示部に送って表示させるような動作が可能となる。このように、筐体間で双方向に大量データをやり取りする場合においても、筐体間の連結部に給電することにより通信を行うので、接続する信号線の数を著しく減じることが可能となり、電子装置の構造が簡略化され装置のコストダウンと信頼性向上に効果がある。
【発明の効果】
【0035】
以上述べたように、本発明の上記構成によれば、電子装置の回路内のデータ伝送に必要な配線の数を大幅に減少させることが可能となり、従来の高速データ伝送に伴う種々の問題や実装上の問題を除去することができ、低コストで高信頼性かつ低消費電力の電子装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を使って説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明の無線通信端末の例としてクラムシェル型携帯電話を開いたときの状態を示す斜視図、図2は、本発明の無線通信端末の例であるクラムシェル型携帯電話を閉じたときの状態を示す斜視図である。
図1および図2において、第1筐体部1の表面には、操作ボタン4が配置されるとともに、第1筐体部1の下端にはマイク5が設けられ、第1筐体部1の上端には外部無線通信用アンテナ6が取り付けられている。また、第2筐体部2の表面には、表示体8が設けられるとともに、第2筐体部2の上端にはスピーカ9が設けられている。また、第2筐体部2の裏面には、表示体11および撮像素子12が設けられている。なお、表示体8、11としては、例えば、液晶表示パネル、有機ELパネルまたはプラズマディスプレイパネルなどを用いることができる。また、撮像素子12としては、CCDまたはCMOSセンサなどを用いることができる。
【0038】
そして、第1筐体部1および第2筐体部2はヒンジ3を介して連結され、ヒンジ3を支点として第2筐体部2を回転させることにより、第2筐体部2を第1筐体部1上に折り畳むことができる。そして、第2筐体部2を第1筐体部1上に閉じることにより、操作ボタン4を第2筐体部2にて保護することができ、携帯電話を持ち歩く時に操作ボタン4が誤って操作されることを防止することができる。また、第2筐体部2を第1筐体部1から開くことにより、表示体8を見ながら操作ボタン4を操作したり、スピーカ9およびマイク5を使いながら通話したり、操作ボタン4を操作しながら撮像を行ったりすることができる。なお、ヒンジ3の強度を確保するために、ヒンジ3は金属などの導電体で構成することができる。
【0039】
ここで、クラムシェル構造を用いることにより、第2筐体部2のほぼ一面全体に表示体8を配置することができ、携帯電話の携帯性を損なうことなく、表示体8のサイズを拡大させることを可能として、視認性を向上させることができる。
また、第1筐体部1および第2筐体部2には、変復調回路7、10がそれぞれ設けられている。そして、これら変復調回路7、10の入出力をヒンジ3に接続し通電することにより、ヒンジ3を通して第1筐体部1と第2筐体部2との間のデータ伝送を行うことができる。変復調回路7、10の詳細は後述するが、変調回路と復調回路およびそれらの機能を切り替えるスイッチがそれぞれ設けられ、一方の変復調回路7、10が変調回路として働くとき、他方の変復調回路7、10は復調回路として作動することができる。すなわち、変復調回路7が変調回路、変復調回路10が復調回路として作動するように設定したときは、例えば、外部無線通信用アンテナ6を介して第1筐体部1に取り込まれた画像データや音声データを、このヒンジ3を経由して第2筐体部2に送り、表示体8に画像を表示させたり、スピーカ9から音声を出力させたりすることができる。また、変復調回路7、10の機能をその逆に設定すれば、例えば撮像素子12にて撮像された撮像データを第2筐体部2から第1筐体部1に送り、外部無線通信用アンテナ6を介して外部に送出させることができる。
【0040】
これにより、第1筐体部1と第2筐体部2との間のデータ伝送をヒンジ3の導電部で行うことが可能となり、多ピン化されたフレキシブル配線基板をヒンジ3に通す必要がなくなる。このため、ヒンジ3の構造の複雑化を抑制することが可能となるとともに、実装工程の煩雑化を防止することが可能となり、コストアップを抑制しつつ、携帯電話の小型薄型化および高信頼性化を図ることが可能となるとともに、携帯電話の携帯性を損なうことなく、携帯電話の大画面化および多機能化を図ることができる。
【0041】
なお、外部無線通信用アンテナ6は第1筐体部1に装着されているが、第2筐体部2に装着してもよい。外部無線通信用アンテナ6を第2筐体部2に装着すると、携帯電話の使用時において第2筐体部2によって外部無線通信用アンテナ6が遮られることがなく、能率のよい通信が期待できる。この場合には、第1筐体部1に内蔵される携帯電話の通信制御部から同軸ケーブルなどにより外部無線通信用アンテナ6に給電される。
【実施例2】
【0042】
図3は、本発明の信号伝送制御方法が適用される回転式携帯電話の外観を示す斜視図である。
図3において、第1筐体部21の表面には、操作ボタン24が配置されるとともに、第1筐体部21の下端にはマイク25が設けられ、第1筐体部21の上端には外部無線通信用アンテナ26が取り付けられている。また、第2筐体部22の表面には、表示体28が設けられるとともに、第2筐体部22の上端にはスピーカ29が設けられている。また、第1筐体部21および第2筐体部22には、第1筐体部21と第2筐体部22との間で内部信号伝送を行う変復調回路27、30がそれぞれ設けられている。
【0043】
そして、第1筐体部21および第2筐体部22はヒンジ23を介して連結され、ヒンジ23を支点として第2筐体部22を水平に回転させることにより、第2筐体部22を第1筐体部21上に重ねて配置したり、第2筐体部22を第1筐体部21からずらしたりすることができる。そして、第2筐体部22を第1筐体部21上に重ねて配置することにより、操作ボタン24を第2筐体部22にて保護することができ、携帯電話を持ち歩く時に操作ボタン24が誤って操作させることを防止することができる。また、第2筐体部22を水平に回転させて、第2筐体部22を第1筐体部21からずらすことにより、表示体28を見ながら操作ボタン24を操作したり、スピーカ29およびマイク25を使いながら通話したりすることができる。なお、ヒンジ23の強度を確保するために、ヒンジ23は金属などの導電体で構成することができる。
【0044】
ここで、第1筐体部21および第2筐体部22には、変復調回路27、30がそれぞれ設けられている。そして、これら変復調回路27、30の入出力をヒンジ23に接続し通電することにより、ヒンジ23を通して第1筐体部21と第2筐体部22との間のデータ伝送を行うことができる。なお、変復調回路27、30の詳細は後述するが、変調回路と復調回路およびそれらの機能を切り替えるスイッチがそれぞれ設けられ、一方の変復調回路27、30が変調回路として働くとき、他方の変復調回路27、30は復調回路として作動することができる。すなわち、変復調回路27が変調回路、変復調回路30が復調回路として作動するように設定したときは、例えば、外部無線通信用アンテナ26を介して第1筐体部21に取り込まれた画像データや音声データを、このヒンジ23を経由して第2筐体部22に送り、表示体28に画像を表示させたり、スピーカ29から音声を出力させたりすることができる。
【0045】
これにより、多ピン化されたフレキシブル配線基板をヒンジ23に通す必要がなくなり、ヒンジ23の構造の複雑化を抑制することが可能となるとともに、実装工程の煩雑化を防止することが可能となる。このため、コストアップを抑制しつつ、携帯電話の小型薄型化および高信頼性化を図ることが可能となるとともに、携帯電話の携帯性を損なうことなく、携帯電話の大画面化および多機能化を図ることができる。
【実施例3】
【0046】
図4は本発明にかかる情報伝送方式のより詳細な構成と、それを利用した電子装置の実施例を示すブロック図である。
図4において、一点鎖線427より下の部分が本体の制御部等が収納される第1筐体部、上の部分が表示体を収納する第2筐体部である。そして、これらの第1筐体部および第2筐体部はヒンジ429を介して接続されている。また、第1筐体部には変調回路408が設けられるとともに、第2筐体部には復調回路414が設けられ、変調回路408からの出力はヒンジ429を介して復調回路414に伝送することができる。
【0047】
そして、CPU401は通信(携帯電話の機能なども含む)や周辺入出力装置(図示せず)を経由してデータを取得したり、CPU401自身の演算により表示すべき表示データ419を生成し、ビデオメモリ402に記録する。発振回路426は、CPU401や液晶コントローラ403の動作に必要なクロックパルス列を発生させる発振回路である。液晶コントローラ403は、この発振回路426によって発生されたクロックパルスを分周し、各種タイミングを作り出し、水平同期信号420や垂直同期信号421も作り出す。
【0048】
そして、液晶コントローラ403は表示体に表示させる表示データ419を所定順序に従ってビデオメモリ402から読み出し、垂直同期信号421および水平同期信号420とともに出力する。表示データ419は、通常ビデオメモリ402より画素単位でワード毎に並列のデータとして読み出されるため、並直変換回路404によって並直変換され、ロジック回路407に伝送される。ロジック回路407は、並直変換回路404から出力された信号と、液晶コントローラ403から出力された水平同期信号420および垂直同期信号421を受けて、パケットを生成し、また、ロジック回路407は、同期検波のタイミング等の調整をするためのプリアンブルをパケットに付与する。また、水平同期信号420はPLL409にも供給され、PLL409は、水平同期信号420を逓倍し搬送波を生成する。すなわち、搬送波は水平同期信号420と同期している。
【0049】
そして、ロジック回路407にて生成されたパケットは変調回路408に出力され、PLL409で水平同期信号420を逓倍して発生した搬送周波数により変調回路408にて変調され、ヒンジ429の金属部分に給電され、第2筐体部へ送信される。また、水平同期信号420は有線伝送路428にて別途第2筐体部へ送信され、復調の同期検波やパケット同期の基準として使用される。これによって、パケット内のプリアンブル部を容易に検出できるようになり、また搬送波周波数は送信側と完全に一致させることが可能なので、同期検波の位相調整も容易である。
【0050】
表示データ419は並直変換回路404によってその占有帯域が増大する。この信号は変調回路408によってさらに高い周波数に変調される。しかし、変調の働きによりその比帯域、すなわち、占有帯域幅とその中心周波数の比は縮小される。これによって、表示データ419のような高速の広い帯域のデータ信号であっても、その比帯域を縮小することによって、ヒンジ429の導電部のような必ずしも伝送線路として設計されたものでない部品を介しても伝送が可能となる。また、水平同期信号420のような周波数の低い信号は、ヒンジ429を通り抜けて配線される有線伝送路428を介して容易に伝送することができる。
【0051】
ヒンジ429を介して伝送された変調回路408の出力信号は、プリアンプ412によって増幅された後、バンドパスフィルタ413により不要帯域の成分が除去され、復調回路414に入力される。バンドパスフィルタ413は、例えば携帯電話のように大電力の送信機能を内蔵する場合の妨害を除去したり、送信側の変調回路408の出力電力をぎりぎりまで絞る場合などに回路雑音を除去したりするために用いる。また、有線伝送路428で伝送された水平同期信号420は、PLL415および同期回路416に出力される。
【0052】
そして、水平同期信号420の周波数をPLL415により逓倍し、搬送波周波数を復元し復調回路414に供給する。そして、復調回路414にてPLL415からの出力をバンドパスフィルタ413からの出力に混合することにより、受信信号の復調が行われる。ここで、有線伝送路428を介して水平同期信号420をPLL415に供給することにより、送信側の変調回路408で使用された搬送波と全く同じ周波数および位相の周波数を受信側で復元でき、同期検波が極めて容易になる。同期回路416では、水平同期信号420によって受信信号パケットの境界を検出し、パケット同期を行う。直並変換回路417は、復調された受信パケットの中から表示データ422の部分を抽出し、画素毎に直並変換を行い、表示データ422を生成する。
【0053】
ロジック回路418は、復調されたパケットからパケット内の表示データ422のタイミングに合わせて水平同期信号423、垂直同期信号424、Xドライバの転送クロック425を発生させ、それぞれ液晶表示体のドライバすなわち図13の水平同期信号1314、垂直同期信号1318、Xクロック信号1315に相当する信号として液晶表示体のドライバへ出力し表示を行う。
【0054】
なお、PLL409の発生する信号の周波数は、ラジオ受信機や携帯電話のように電波を利用する電子装置の本来の目的を妨害せず、また妨害を受けないような周波数でかつヒンジ428を通り易い周波数を選択する。この周波数は第1および第2筐体部の位置関係によって変化するかもしれない。このような場合は受信側から通信品質状況をフィードバックしながらダイナミックに搬送周波数を変更する。すなわち、受信側の評価回路405により受信品質を評価し、その評価結果をPLL409、415へフィードバックしながら、PLL409、415の逓倍比を変更することにより、搬送周波数を変更することが可能である。また、通信品質の評価は受信電力やエラーレートを測定することで評価することができる。
【0055】
この場合、2つの筐体間でやり取りする有線伝送路428は水平同期信号420を送る伝送線路とPLL409へのフィードバック情報を送る伝送線路の2本が必要になるが、いずれも低い周波数なので有線による伝送は容易である。また、これらの情報は、時分割多重などの方法で1本の伝送線路で送受することも可能である。
遠隔地の微弱信号を受信する携帯電話などの電子装置においては、PLL409の発生する信号の周波数は受信感度に直接影響を与えるので、周波数の選択は重要である。2GHz以上で受信機に影響のない周波数を選べば、100Mbpsのデータを伝送しても占有帯域は200MHz程度であり、比帯域は1/10以下となる。このため、従来のDCから200MHz以上の何オクターブにも渡る帯域を要する伝送路に比較し、帯域内の周波数特性を平坦化することは容易である。後述するように、携帯電話機に使用される程度の大きさのヒンジ429では、数GHzの周波数帯において200MHz程度の帯域で平坦な伝送特性を持つ周波数はいくつかある。これらの周波数帯では受給電点を終端するマッチング回路の設計も容易となり、性能の良い通信を確保することが可能となる(図4では、マッチング回路は省略されているが、ヒンジ429を伝送線路としたときの両端での反射を抑え、波形ひずみを最小とし、また伝送エネルギーの効率をよくして伝送するために、ヒンジ429の両端にマッチング回路を入れても差し支えないことは説明を要さないだろう。)。さらに、データ伝送に使用される周波数が高いため、これらを構成する部品は小型化が容易であり、実装スペースの節約も可能となる。また、良好なマッチングにより、信号エネルギーの効率を上げることができる。このことは消費電力の節約に効果がある。
【0056】
一般に無線通信において、送信側の変調回路408と受信側の復調回路414は扱う搬送波周波数が一致している必要があり、送信と受信の間の搬送波発振回路の周波数には高い精度が要求され、その2者の誤差は直接通信品質の劣化となって現れる。しかし、図4の構成によれば、変調回路408と復調回路414は、同一の基準信号、すなわち同一の発振回路426によって発生されたクロックパルスに同期した水平同期信号420を基準とした上で、同じ特性を持つPLL409、415を使って逓倍により搬送波を得ているので、送受信間の搬送波周波数の誤差とならない。このため、発振回路426の精度は問題とならず、コストダウン効果がある。
【0057】
なお、PLL415は必須でなく、PLL409の出力を復調回路414に直接送っても良いが、搬送波のような高い周波数の信号を有線で送るのは困難が伴うため、あまり合理的でない。図4の構成のように水平同期信号420のような低い周波数の基準信号を送信し、PLL415で逓倍してPLL409の出力と同一の搬送波を受信側で復元する方が実現性が高い。
【0058】
また、復調回路414の前段にプリアンプ412を設けることにより、非常に微弱な信号でも受信が可能になる。また、プリアンプ412にはヒンジ429を伝送路としたときの特性を補正するようなイコライザ等の機能も持たせることが可能である。これによって、受信信号レベルを所定値に保たなければならない従来の伝送方式に比較し、有線伝送路429から発生する不要放射電力よりもはるかに少ない放射電力で通信品質を保つことが可能となり、根本的なEMI対策となる。また、有線伝送路429のストレージ容量をロジックレベルで駆動しなければならない従来の伝送方式に比較し、消費電力も下げることが可能となる。
【0059】
このように、ヒンジ429を伝送路として利用することによって、高速かつ大量の表示データを表示体に伝送することが可能となり、並列に多数の有線伝送路を要した従来の技術に比較し、配線数を大幅に減らすことができ、装置構造の簡略化が可能となる。また、外部からの雑音や干渉、また外部への妨害に対する対策をとることも容易となる。さらに、表示体の大型化に伴いより顕在化してきた消費電力の増大、配線位置の制約、対雑音、EMI問題、信頼性劣化など有線伝送によって生じる種々の問題を除去できる。
【実施例4】
【0060】
図5は、本発明にかかる他の電子装置の実施例の要部を示すブロック図であり、また同時に、実施例1の変調回路408および復調回路414に相当する部分をより詳述する図である。図面中央のヒンジ507を境に送信側と受信側に別れ、それぞれ別の筐体に収納されるとともに、これらの筐体部はヒンジ507を介して接続されている。
図5において、送信側には搬送波を発生する発振回路502が設けられ、発振回路502は、搬送周波数の矩形パルス列を発生する。なお、この発振回路502は、実施例3のPLL409に相当する。乗算回路501は発振回路502から発生された搬送波と送信データ503の乗算を行うことにより、送信データの信号帯域を搬送波を中心とする周波数帯域に変換する。これが変調操作である。そして、ヒンジ507を経由して乗算回路501の乗算結果を受信側に送出する。
【0061】
なお、実施例3では、同期信号は、発振回路426で発生するパルス列を液晶コントローラ403で分周し発生させ、搬送波は、この同期信号をPLL409にて逓倍して生成しているが、本実施例4のような構成を取っても、発振回路502による搬送波と分周回路504よって発生される同期信号は同期しており、実施例3と同様の動作をさせることができる。
【0062】
乗算回路501は、送信データ503および発振回路502の出力ともデジタル信号であるため、排他的論理和回路で構成することができる。すなわち、論理値“0”のとき値“1”のアナログ値、論理値“1”のとき値“−1”のアナログ値を対応させると、排他的論理和回路の入出力はちょうど乗算回路として作用する。また、このようにデジタル回路によって乗算回路501を構成したときの出力レベルが大きすぎるときは、適宜減衰回路511を通してヒンジ507に接続することができる。通信は受信側で受信できる必要最小限の電力に抑えることができるので、他の機器回路等に与える高調波妨害などが低く、無線通信に用いられる位相変調の場合のように、フィルタなどで変調回路出力から高調波成分を除去する処理などは不要となることが多い。
【0063】
一方、受信側において、PLL508は、有線伝送路510によって伝送されてくる分周回路504の出力を基準として分周回路504の分周比倍に逓倍して搬送波を生成する。ヒンジ507を介して受信した受信データ信号はプリアンプ等を通った後、乗算回路505に入力され、PLL508により再生された搬送波と乗算された後、ローパスフィルタ506で高周波成分が取り除かれ、復調信号509として復調される。ローパスフィルタ506は、乗算回路505の出力の高域周波数成分(乗算回路505により分離された受信データ信号とPLL508の再生クロック波形とのわずかな移相差により生ずる細いパルス成分)を除去し、復調信号509として出力する。
【0064】
図6(a)〜(c)に上記に説明した図4の変調回路408のタイム図を示す。すなわち同図(a)は図5の発振回路502により生ずる搬送波(クロック)、同図(b)は送信データ503、(c)は出力される送信信号を示す。同図のタイム図をデジタル回路と見れば、変調回路408は排他的論理和回路であり、“±1”の値を取るアナログ値と見れば、変調回路408は乗算回路である。
【0065】
図6(d)〜(f)に実施例1による復調回路414のタイム図を示す。すなわち、同図(d)は受信信号、同図(e)は図5のPLL508で再生された搬送波パルス列、(f)は図5の乗算回路505の出力で、ローパスフィルタ506は、この信号から受信信号とPLL508の出力のわずかな位相差により生ずる高周波成分を取り除き、復調信号509を復元する。なお、同図(d)では、受信信号はロジックレベルのパルス列で図示されているが、このように十分な振幅が確保できない場合でも、乗算回路505として排他的論理和回路でなく、アナログの乗算回路を使用することで全く同じ動作をさせることが可能である。
【0066】
同図から明らかなように、搬送波(クロック)(図6(a))と再生搬送波(再生クロック)(図6(e))は周波数が違っていたり、位相がずれていたりすると、復調がうまく作動しない。従来の通信では、送信側と受信側で別々に高精度の発振回路を持ち誤差を最小限に抑えていた。本実施形態のこの構成によれば、受信側の再生クロックは送信側の発振回路502の出力を基準にしているので、受信側では常に送信側と同じ周波数の再生クロックが確保でき、そのため発振周波数の安定度や周波数精度による誤差が生じない。また、安価な発振回路502でも、きわめて安定度の高い回路を構築できる。
【0067】
本発明の本実施例では、十分にSN比の良い通信品質が確保できるため、信号をデジタル値と見て良い程度まで増幅することもできる(なお、図5では、増幅回路は省略されている)。この場合、増幅された信号レベルは論理値レベルまで大きくなるが、該論理値によって駆動される負荷は、CPUから表示体までの伝送路というような大きな浮遊容量を伴う長い距離ではなく、同一半導体チップ内のような極めて短く低負荷であるため、消費電力の増大にはならない。また、受信信号が論理値レベルまで増幅されないアナログレベルであっても、PLL508の出力は(“±1”の値を取る)矩形であるため、乗算は簡単なスイッチ回路で実現できる。すなわち、二重平衡形の乗算回路や増幅度の絶対値が等しく極性が互いに逆の反転増幅回路および正転増幅回路を用意し、PLL508の出力の論理レベル“1”のとき、反転増幅回路の出力をスイッチにより選び、PLL508の出力の論理レベル“0”のとき、正転増幅回路の出力を選択することによって実現できる。このような構成の回路を乗算回路505として用いても良い。
【0068】
上記構成によれば、図4の変調回路408は排他的論理和回路、復調回路414も排他的論理和回路1つまたはアナログ乗算回路、およびローパスフィルタにより、きわめて簡単に実現できる。以上、本実施例では2値搬送波をデジタル信号でバイナリ位相変調(BPSK)する例を示したが、変復調の例としてもっと多相の搬送波を利用する例えばQPSKや振幅変調や周波数変調も用いることが可能である。
【実施例5】
【0069】
図7は、本発明にかかる電子装置の他の実施例の要部を示すブロック図であり、撮像素子を用いる電子装置に応用した例を示す。電子装置は図中の一転鎖線711によって回路が分離され、2つの筐体に収納されている。電子装置には、これら2つの筐体の位置関係が変えられるように接続するヒンジ713が設けられ、これらの筐体部はヒンジ713を介して接続されている。また、一方の筐体部には変調回路705が設けられるとともに、他方の筐体部には復調回路712が設けられ、変調回路705からの出力はヒンジ713を介して復調回路712に伝送することができる。
【0070】
図7において、撮像素子701は、制御回路702から発生される水平同期信号720および垂直同期信号721により駆動され、撮像した画像データ719をロジック回路703に出力する。ロジック回路703は、撮像素子701から出力された画像データ719および制御回路702から発生される水平同期信号720を受けて伝送パケットを構築する。該パケットは、変調回路705に入力され、発振回路706により発生された搬送波を変調し、ヒンジ713に給電され、ヒンジ713を介して受信側に送出される。
【0071】
ヒンジ713に給電された信号は、受電端で受信されると、プリアンプ709で増幅され、バンドパスフィルタ710により不要な帯域外信号が除去された後、復調回路712に入力される。PLL715は、有線伝送路707によって伝送されてくる水平同期信号720を搬送波周波数に逓倍して搬送波を生成し、復調回路712に入力する。復調回路712はまた、水平同期信号720から復調に必要な同期タイミングも利用し、伝送パケットを抽出する。直並変換回路714は、復調された受信パケットの中から画像データ部分を抽出し、画素毎に直並変換を行い、画素データを生成する。
【0072】
ロジック回路716は復調された画素データに合わせてビデオメモリ717に書きこむためのメモリアドレスを発生し、直接またはCPU718を介して画像データをビデオメモリ717の該アドレスに書き込む。CPU718は、ビデオメモリ717にアクセスし、画像データを様々なアプリケーションに使用する。
通常は撮像素子701の起動などのコントロールはCPU718が行うが、この起動に関する情報を同期信号としてCPU718側から撮像素子701の制御回路702へ伝送することも可能である。より詳しい方法は、実施例6に後述する。
【0073】
このように、ヒンジ713を伝送路として利用することによって大量の画像データ719の伝送が可能となり、並列に多数の有線伝送路を要した従来の技術に比較し配線数を大幅に減らすことができ、装置構造の簡略化が可能となる。撮像素子701の大型化に伴いより顕在化してきた消費電力の増大、配線位置の制約、EMI問題、信頼性劣化など有線伝送によって生じる種々の問題を除去できる。また、受信側では、復調に必要な同期タイミングが有線伝送路707にて送られてくるため、同期捕捉の必要がなく、回路が大幅に簡略できる。また、送受間で同一の発振源により発生する搬送波を基準とするため、発振回路706に要求される周波数精度は著しく緩和され、コストダウンや実現性に大きな効果がある。
【実施例6】
【0074】
図8は、本発明にかかるさらに他の実施例の要部を示すブロック図である。なお、本実施例は、液晶表示体801の近くに撮像素子701も有する場合であり、実施例3および実施例5の構成を背中合わせに合成した形をとる。すなわち、図4のCPU401と図7のCPU718が共有されるように、図4および図7の各ブロックが配置される構造をとる。電子装置は、図中の一転鎖線802で示す2つの部分に分離され、2つの筐体に分離収納され、それらはヒンジ806で接続されている。なお、図4および図7で説明に用いられた番号と同じ番号の構成要素はそれぞれ実施例3および実施例5で説明したものと同じであるので省略する。
【0075】
図8において、変調回路408は、ビデオメモリ402に記憶されている表示データ信号419を変調し、高い周波数ではあるが低い比帯域の信号に変換し、ヒンジ806に送出する。なお、変調回路408とヒンジ806の間にあるスイッチ804は、送られる信号すなわち液晶表示体801に表示する表示データ信号419と撮像素子701で撮像した撮像データ719の送出方向を切り替えるスイッチ回路である。ヒンジ806を伝って送出された表示データ信号419は、プリアンプ412等で増幅等の信号処理を行った後、復調回路414で復調され、液晶表示体801へ出力される。
【0076】
撮像素子701は、液晶表示体801の近くに配置され、撮像素子701により得られた撮像データ719は、ロジック回路703により通信パケットが構築され、変調回路705により変調されスイッチ803に送られる。スイッチ803、804は、伝送すべきデータが撮像データ719の場合と表示データ419の場合とで切り替わるようになっている。すなわち、伝送すべきデータが表示データ419の場合、スイッチ804は変調回路408側に切り替えられるとともに、スイッチ803はプリアンプ412側に切り替えられる。一方、伝送すべきデータが撮像データ719の場合、スイッチ804はプリアンプ709側に切り替えられるとともに、スイッチ803は変調回路705側に切り替えられる。
【0077】
表示と撮像が同時に行われるときは、たとえば1フレーム毎あるいは1水平走査線毎のように実質的に同時になるような短い時間で切り替えを繰り返すことにより動作が可能となる。また、水平同期信号420は表示および撮像で共用することが可能であり、有線伝送路805を伝わって相手側に伝送される。すなわち、液晶コントローラ403が発生した水平同期信号420を元に、同期回路416およびロジック回路418によって撮像素子用の水平同期信号720を作り出すことが可能である。この場合、水平同期信号420は液晶コントローラ403の側から同期回路416に送出されているが、撮像データ719は水平同期信号420とは逆の方向に変調回路705からスイッチ804の側に送出される。ロジック回路418はまた、液晶表示体801の駆動回路に正しく信号を送るための表示用の同期信号(水平同期信号423、垂直同期信号424)も作り出す。
【0078】
ヒンジ806によって伝送された撮像データ719は、復調回路712により復調されてからビデオメモリ402に蓄えられる。CPU401は、当該撮像データ719を液晶表示体801に表示させるために、ビデオメモリ402の所定のアドレスに書き込むなどの制御を行う。
図4と図7の構成を比較すると、図4では、変調回路408は搬送波をPLL409から得ている。一方、図7では、変調回路705は搬送波をPLL415から得ている。逆に、図7の受信側において、復調回路712は搬送波をPLL409から得ており、表示データを伝送する場合と撮像データを伝送する場合とでPLL409と発振回路426の位置が送受信間で逆となっている。表示用の送受信系によりPLL415が既に発振回路426に同期しているため、このような構成が可能となる。
【0079】
すなわち、一方向の通信では、受信側で送信された信号に同期するしか方法がないが、送受双方向ならば本実施例のように、受信側のタイミングにあわせて送信側で同期を取ることが可能であり、撮像データ719の送信側は、撮像データ719の受信側から送られてくる水平同期信号420にタイミングを合わせパケットを生成し、また搬送波の位相を合わせ送出する。このように、表示用の送受信系によりPLL415が既に発振回路426に同期している場合、撮像データ719の送信側で同期を取ることができるので、撮像データ719の受信側では同期のための回路は省略できる。
【0080】
以上述べたように、ヒンジ806を介して連結された筐体間で双方向の通信を行うことにより、液晶表示体801へデータを送り、また液晶表示体801の近くに配置された撮像素子701から信号を発信させ受信することが可能となり、回路も共通部分を共用でき簡略化が可能となる。上記構成をとることで、大量の表示データと撮像データの伝送がヒンジ806を伝送路として利用することによって可能となり、並列に多数の有線伝送路を要した従来の技術に比較し配線数を大幅に減らすことができ、装置構造の簡略化が可能となる。液晶表示体801や撮像素子701の大型化に伴いより顕在化してきた消費電力の増大、配線位置の制約、EMI問題、信頼性劣化など有線伝送によって生じる種々の問題を除去できる。また、受信側では、復調に必要な同期タイミング信号が有線伝送路805にて送られてくるため、同期捕捉の必要がなく、回路が大幅に簡略できる。また、送受間で同一の発振源により発生する搬送波を基準とするため、発振回路426に要求される周波数精度は著しく緩和され、コストダウンや実現性に大きな効果がある。
【実施例7】
【0081】
図9は本発明による他の実施例の要部、特に2つの筐体を機械的に接続し、また2つの筐体間の大容量伝送路として電気的に接続するヒンジ部を携帯電話機に応用した場合を例示する。
同図(a)は2つの筐体に分離内蔵される回路素子を搭載する回路基板901、902とヒンジ904の全体図であり、同図(b)はヒンジ部分をより詳しく示すための拡大図である。なお、回路基板901には、携帯電話の送受信に用いるアンテナ903が接続されている。ヒンジ904は、2つの回路基板901、902を機械的に接続するために、ねじまたはリベット等で機械的に固定されている。両回路基板901、902には、誘電体909a、909b上にそれぞれ設けられた金属薄膜910a、910bで配線パターンが形成され、この配線パターンを介して電子部品を接続することにより、電子回路を構成することができる。同図では、金属薄膜910a、910bによる細かい配線パターンは省略し、その代表的なパターンとして接地電位の導体(グランド)を示している。また、誘電体909a、909b上には、金属薄膜910a、910bにて受電点907および給電点908がそれぞれ形成され、これらの受電点907および給電点908はヒンジ904を介して互いに電位的に接続されている。
【0082】
ヒンジ904は両回路基板901、902の位置関係を変えるために、中心軸911−912および中心軸913−914の周りに回転させることができ、位置関係として折り曲げやひねりを与えることができる。この様子を同図(c)に示す。ヒンジ904はこのような可動性に対し十分な強度を得るために、硬い金属で構成され導電性がある。そして、両回路基板901、902の電位を固定するために、円内905、906で示すように電気的にも(直流的に)接続されている。このように、電気的にグランドに短絡されているヒンジ904を通して変調信号を給電点908とその直近のグランド電位間に給電し、また受電点907にて信号を受信する。
【0083】
携帯電話用アンテナ903への給電をポート1、受電点907をポート2、給電点908をポート3としてSパラメータを求めると、図10〜12のようになる。このような特性は例えばFDTD(Finite Difference Time Domain)法のような数値計算により求めることが出来る。
図10はS33、すなわち給電点908での反射係数であり、この給電点908に給電した場合はほぼ2GHz以上の周波数では50%以上のエネルギーが給電点908を通じて空中に放射されるか、ポート2の受電点907へ伝送されていることが分かる。なお、Sパラメータの対称性により、受給電の方向を逆にしても同様の特性が得られる。
【0084】
図11はS23すなわちポート3からポート2へ伝送されるエネルギーの割合を示す。周波数が2GHzから4GHzの範囲では、S23は‐20dB以上であり、3GHzにて距離3cmにおけるパスロス(約−30dB)を上回る量である。すなわち、ヒンジ904を伝送媒体として用いることで、伝送データに変調をかけて十分マッチングを取ったアンテナで空間を伝播させるよりも少ないロスで、筐体間のデータ伝送が可能である事がわかる。
【0085】
以上から、たとえ直流的にグランド電位に接続されているヒンジ904を使っても、伝送する信号を変調し適当な周波数帯に変換すれば、ヒンジ904を使用して信号伝送が可能であることがわかる。本実施形態では、この特性を利用し伝送すべき信号を変調し、ヒンジ904を使って大量のデータ転送を行い、配線の煩雑さを軽減することができる。
図12はS21で携帯電話用アンテナ903から受電点907への妨害の強さを表す。同図では、1.4GHz付近、2.1GHz付近に伝送特性の落ち込んでいるところがあるがヒンジの形状を変更することによりこの周波数をたとえば第三世代の携帯電話の送信に使用される2GHz付近にもってくることが可能である。こうすることにより機器本来の機能である携帯電話機能から内部通信への妨害を軽減することができる。また逆に、S23の特性から、筐体間の内部通信用として選択された周波数帯(例えば3〜4GHz)からの本来の携帯電話機能への妨害も軽減されていることが分かる。
【0086】
S22、S33の反射係数を小さくし伝送されるエネルギーを増やすためには、受給電点907、908の位置、すなわちポート2では図9(b)の916で示す寸法、ポート3では917で示す寸法を調整することにより、受給電点907、908での整合状態を調整することが可能であり、このような位置で受給電するように、回路基板901、902の設計を行う。最適な受給電点907、908は、使用する搬送波周波数によっても変化する。送受信が同一の電子装置内にありしかも同期信号を優先伝送路により送ることにより、搬送波周波数情報を送受で共有できるため、搬送周波数を自由に変更できる。そのため、受給電点907、908の位置に制限がある場合は、搬送周波数を変更して受給電点907、908の位置を調整することも可能である。
【0087】
Sパラメータはヒンジ904の働きによる折り曲げ、ひねりなどの2筐体の位置関係によっても変化する。(図10〜12では代表的な位置関係のときのみを例示している。)受給電点907、908の位置は回路基板901、902が固定されてしまえば変更することが出来ないので、受給電点907、908の位置によるSパラメータの再調整は出来ないが、搬送波周波数を変更して最適な伝送特性の得られるようにすることは可能である。実施例3に述べた方法によって搬送波周波数をダイナミックに選択設定すれば、2筐体の位置関係が変わっても、常に良好な伝送特性を確保することが可能である。
【0088】
以上述べたように、本実施形態によれば、従来困難であった高速のデータ伝送を直流的にグランド電位に接続されているようなヒンジ904を使って伝送することが可能であり、高速化に伴う配線の煩雑さ、EMI、消費電力、実装上のスペースや信頼性、機器デザイン上の制限、通信データの信頼性などの様々な問題を解決できる。しかも、これを実現するための回路はいずれもCMOS集積回路として半導体集積回路上に集積可能であり、従来のフレキシブル基板上の何本もの伝送路を接続するコネクタなどの実装部品を用いる方法に比較し、大幅にコストダウンが可能であり、極めて有用性の高いものである。
【0089】
また、本実施形態では、伝送しようとするデータストリームを変調し、より高い周波数帯に上げることで、比帯域を下げ、特性のフラットな帯域を使用して良好な通信特性を得ようというものである。伝送周波数が高いので、使用される部品の小型化が容易である。また、伝送路が1本であるので、シールドなどの対策も容易で外部への干渉の低減が容易である。また、携帯電話のように同一筐体内に極端に強い電波を送信する送信機が内蔵される様な環境下にあっても、これらへの対策も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
なお、上述した実施形態では、携帯電話を例にとって説明したが、装置の回路が2つ以上の筐体に分離収納され、それらの位置関係が変えられるようにヒンジで結合され一体化されている電子装置、例えばビデオカメラ、PDA(Personal Digital Assistance)、ノート型パーソナルコンピュータなどに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に基づくクラムシェル型携帯電話を開いた時の状態を示す斜視図。
【図2】本発明に基づくクラムシェル型携帯電話を閉じた時の状態を示す斜視図。
【図3】本発明に基づく回転式携帯電話の外観を示す斜視図。
【図4】本発明の電子装置の一実施例の要部を示すブロック図。
【図5】本発明の電子装置の他の一実施例の要部を示すブロック図。
【図6】本発明の電子装置の他の一実施例の動作を説明するタイム図。
【図7】本発明の電子装置の他の一実施例の要部を示すブロック図。
【図8】本発明の電子装置の他の一実施例の要部を示すブロック図。
【図9】本発明の電子装置の一実施例の機構の要部を示すブロック図。
【図10】本発明にかかる実施例の特性を示す特性図。
【図11】本発明にかかる実施例の特性を示す特性図。
【図12】本発明にかかる実施例の特性を示す特性図。
【図13】従来の液晶表示体を持つ電子装置を説明するブロック図。
【図14】従来の液晶表示体を持つ電子装置の動作を説明するタイム図。
【符号の説明】
【0092】
1、21 第1筐体部、2、22 第2筐体部、3、23、429、507、713、806、904 ヒンジ、4、24 操作ボタン、5、25 マイク、6、26 外部無線通信用アンテナ、7、10、27、30 変復調回路、8、11、28 表示体、9、29 スピーカ、12 撮像素子、408、705 変調回路、414、712 復調回路、428、510、707,805 有線伝送路、 402、717 ビデオメモリ、403 液晶コントローラ、801 液晶表示体、701 撮像素子、426、502、706 発振回路、504 分周回路、409、415、508、715 PLL、501、505 乗算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体部と、
第2筐体部と、
前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、
前記第1筐体部に搭載された第1回路部と、
前記第2筐体部に搭載された第2回路部と、
前記第1筐体部に搭載された第1の内部通信制御部と、
前記第2筐体部に搭載された第2の内部通信制御部とを備え、
前記第1および第2の内部通信制御部は、前記第1および第2回路部の間で行われる通信を制御し、
前記第1または第2の内部通信制御部は、少なくとも情報の一部を前記連結部に受給電する受給電手段を介して通信を行うことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第1または第2の内部通信制御部はデータをシリアル信号として生成する生成手段と、
搬送波を発生する発振手段と、
前記搬送波を前記生成手段の信号により変調する変調手段と、
前記変調手段の生成する信号を前記連結部に給電する給電手段と、
前記連結部に接続され前記変調手段の生成する信号を受信し復調する復調手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記搬送波を発生する発振手段は前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係で信号伝送を行った際に最適な伝送特性を持つ周波数を発振することを特徴とする請求項2記載の電子装置。
【請求項4】
前記受給電手段はその受給電点の位置がその受給電点の位置で信号伝送を行った際に適当な伝送特性となるような位置に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の電子装置。
【請求項5】
第1筐体部と、
第2筐体部と、
前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、
前記第2筐体部に搭載された表示部と、
前記第1筐体部に搭載された第1回路部と、
前記第2筐体部に搭載され前記表示部の制御回路を含む第2回路部と、
前記第1および第2回路部間でやりとりされるデータをシリアル信号として生成する生成手段と、
搬送波を発生する発振手段と、
前記搬送波を前記生成手段の信号により変調する変調手段と、
前記変調手段の生成する信号を前記連結部に給電する給電手段と、
前記連結部に接続され前記変調手段の生成する信号を受信し復調する復調手段とを備えることを特徴とする電子装置。
【請求項6】
第1筐体部と、
第2筐体部と、
前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、
前記第2筐体部に搭載された表示部と、
前記第1または第2筐体部に搭載された撮像素子と、
前記第1筐体部に搭載された前記撮像素子の制御回路を含む第1回路部と、
前記第2筐体部に搭載され前記表示部の制御回路を含む第2回路部と、
前記第1および第2回路部間でやりとりされるデータをシリアル信号として生成する生成手段と、
搬送波を発生する発振手段と、
前記搬送波を前記生成手段の信号により変調する変調手段と、
前記変調手段の生成する信号を前記連結部に給電する給電手段と、
前記連結部に接続され前記変調手段の生成する信号を受信し復調する復調手段とを備えることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
位置関係を変えられるように第1筐体部と第2筐体部とが連結部を介して連結された電子装置であって、
前記第1筐体部と第2筐体部との間のデータ伝送が前記連結部を介して行われることを特徴とする電子装置。
【請求項8】
前記連結部を介して送信される送信データの信号帯域を搬送波を中心とする周波数帯域に変換する周波数変換手段をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の電子装置。
【請求項9】
前記搬送波を生成するための基準信号を復調側に伝送する有線伝送路をさらに備えることを特徴とする請求項8記載の電子装置。
【請求項10】
第1筐体部と、
第2筐体部と、
前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、
前記第1筐体部または前記第2筐体部に搭載された外部無線通信用アンテナと、
前記第1筐体部に搭載され、前記外部無線通信用アンテナを介して行われる外部無線通信の制御を主として司る外部無線通信制御部と、
前記第2筐体部に搭載された表示部と、
前記第1筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第1の信号送受信部と、
前記第2筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第2の信号送受信部とを備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項11】
第1筐体部と、
第2筐体部と、
前記第1筐体部と前記第2筐体部との間の位置関係を変えられるように前記第1筐体部と前記第2筐体部とを連結する連結部と、
前記第1筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第1の信号送受信部と、
前記第2筐体部に搭載され前記連結部を伝送路として前記第1筐体部と前記第2筐体部間を内部通信するための第2の信号送受信部と、
前記第1筐体部に搭載され、前記連結部を介して行われる内部通信の送受信切り替えおよび制御を司る第1の内部信号伝送制御部と、
前記第2筐体部に搭載され、前記連結部を介して行われる内部通信の送受信切り替えおよび制御を司る第2の内部信号伝送制御部とを備えることを特徴とする無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−339885(P2006−339885A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160361(P2005−160361)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】