説明

電子装置および角速度検出装置

【課題】 角速度検出素子と回路基板とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる角速度検出装置において、ボンディングワイヤ間の距離を大きくしなくても、ボンディングワイヤ間の寄生容量を低減できるようにする。
【解決手段】 基板10、および、基板10に設けられ基板10と水平な面内にて振動可能な振動体を有し、該振動体の振動に基づいて基板10と垂直な軸回りの角速度を検出するようにした角速度検出素子100と、回路基板200とを備え、角速度検出素子100と回路基板200とが複数本のボンディングワイヤ70、71により結線されている角速度検出装置S1において、複数本のボンディングワイヤ70、71のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置としては、たとえば、第1の部材としての角速度検出素子と、第2の部材としての回路基板とを備え、角速度検出素子と回路基板とが複数本のボンディングワイヤにより結線されている角速度検出装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のこの種の電子装置としての角速度検出装置の概略断面構成を示す図である。
【0004】
第1の部材である角速度検出素子100は、半導体基板などからなる基板10を有しており、この基板10には、基板10と水平な面内にて振動可能な図示しない振動体が形成した構成となっている。そして、角速度検出素子100は、上記振動体の振動に基づいて基板10と垂直な軸回りの角速度を検出するようになっている。
【0005】
また、この角速度検出装置は、第2の部材として、角速度検出素子100からの信号を処理するなどの機能を有する回路基板200を備えている。ここでは、角速度検出素子100は、回路基板200の上に図示しない接着剤などを介して搭載され固定されている。つまり、両部材100、200が積層されたスタック構成となっている。
【0006】
また、この積層された両部材100、200は、セラミックなどからなるパッケージ300に収納固定されている。このパッケージ300は、図示しない配線を有するものである。
【0007】
そして、両部材100、200間および回路基板200とパッケージ300との間は、複数本のボンディングワイヤ70により結線され、電気的に接続されている。
【0008】
こうして、角速度検出素子100に対して、上記振動体を駆動するための交流の高電圧信号すなわち駆動信号が回路基板200からボンディングワイヤ70を介して入力されたり、角速度検出素子100からの微小な検出信号がボンディングワイヤ70を介して回路基板200、パッケージ300へ出力されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−21647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記図3に示されるように、従来の電子装置では、隣接したボンディングワイヤ70同士が、平行に近い形で接続されている。
【0010】
そのため、上記した角速度検出装置のように、角速度検出素子100を駆動するための交流の高電圧すなわち駆動信号と角速度検出素子100からの微小な検出信号とが、ボンディングワイヤ70間の寄生容量により干渉し、正常に動作しなかったり、ノイズが大きくなり、精度が悪くなるなどの問題がある。
【0011】
この問題を解決するために、ボンディングワイヤ70間の距離を大きくして上記寄生容量を小さくすることが考えられるが、その場合、角速度検出素子のサイズの増大を招くことになり、コストアップなどの問題につながる。
【0012】
なお、このような問題は、上記した角速度検出装置以外にも、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置であれば、発生しうると考えられる。すなわち、そのような電子装置ならば、当該ボンディングワイヤ間の寄生容量は存在し、電子装置の動作や精度に悪影響を与える可能性がある。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置において、ボンディングワイヤ間の距離を大きくしなくても、ボンディングワイヤ間の寄生容量を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、第1の部材(100)と第2の部材(200)とを複数本のボンディングワイヤ(70、71)を介して電気的に接続してなる電子装置において、複数本のボンディングワイヤ(70、71)のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっていることを特徴としている。
【0015】
従来では、上記図3に示したように、複数本のボンディングワイヤが同一形状であり、複数本のボンディングワイヤのうち隣接あるいは近接するボンディングワイヤ同士が、平行に近い形となっていたため、当該ボンディングワイヤ間の寄生容量が大きいものとなっていた。
【0016】
それに対して、本発明では、複数本のボンディングワイヤ(70、71)のうち少なくとも一部を、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なるようにしているため、互いに異なる形状同士のボンディングワイヤ(70、71)同士では、ワイヤ間の距離を大きくしなくても、ワイヤ同士の対向する面積を小さくすることができ、寄生容量も低減できる。
【0017】
そのため、干渉させたくない信号が流れるボンディングワイヤ(70、71)同士において、ワイヤ形状を異ならせば、寄生容量による信号の干渉を低減することができ、電子装置の動作や精度などに悪影響を与えることは抑制される。
【0018】
したがって、本発明によれば、第1の部材(100)と第2の部材(200)とを複数本のボンディングワイヤ(70、71)を介して電気的に接続してなる電子装置において、ボンディングワイヤ(70、71)間の距離を大きくしなくても、ボンディングワイヤ(70、71)間の寄生容量を低減することができる。
【0019】
ここで、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電子装置において、ワイヤ形状の異なるボンディングワイヤ(70、71)同士は、第1の部材(100)および第2の部材(200)に対して、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にしたものであることを特徴としている。
【0020】
ボンディングワイヤ(70、71)同士のワイヤ形状を異ならせる方法としては、このような手法を採用することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明では、基板(10)、および、基板(10)に設けられ基板(10)と水平な面内にて振動可能な振動体(20)を有し、振動体(20)の振動に基づいて基板(10)と垂直な軸回りの角速度を検出するようにした角速度検出素子(100)と、回路基板(200)とを備え、角速度検出素子(100)と回路基板(200)とが複数本のボンディングワイヤ(70、71)により結線されている角速度検出装置において、複数本のボンディングワイヤ(70、71)のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっていることを特徴としている。
【0022】
本発明は、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置として、第1の部材を角速度検出素子(100)、第2の部材を回路基板(200)とした角速度検出装置を実現するものである。
【0023】
つまり、本発明によれば、この種の電子装置としての角速度検出装置において、ボンディングワイヤ(70、71)間の距離を大きくしなくても、ボンディングワイヤ(70、71)間の寄生容量を低減することができる。
【0024】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の角速度検出装置において、ワイヤ形状の異なるボンディングワイヤ(70、71)同士は、角速度検出素子(100)および回路基板(200)に対して、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にしたものであることを特徴としている。
【0025】
また、請求項5に記載の発明では、請求項3または請求項4に記載の角速度検出装置において、角速度検出素子(100)が、回路基板(200)上に接着剤(300)を介して積層されており、角速度検出素子(100)の基板(10)の上面と回路基板(200)とが複数本のボンディングワイヤ(70、71)により結線されていることを特徴としている。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
【0028】
本実施形態では、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置として、第1の部材を角速度検出素子100、第2の部材を回路基板200とした角速度検出装置を実現するものである。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る角速度検出装置S1の概略断面構成を示す図であり、図2は、図1に示される角速度検出装置S1における角速度検出素子100の概略平面構成を示す図であり、同角速度検出素子100を構成する基板10の上面からみた概略平面図である。
【0030】
本実施形態の角速度検出装置S1は、大きくは、図1に示されるように、角速度検出素子100と回路基板200とこれらを収納するパッケージ300とを備え、パッケージ300に回路基板200を固定し、その上に接着剤などを介して角速度検出素子100が積層された構造体として構成されている。
【0031】
まず、第1の部材である角速度検出素子100について、主として図2を参照して説明する。角速度検出素子100は、半導体基板などの基板10を有し、この基板10に対して周知のマイクロマシン加工を施すことにより形成される。
【0032】
たとえば、基板10としては、第1の半導体層としての第1シリコン層上に絶縁層としての酸化膜を介して第2の半導体層としての第2シリコン層を貼り合わせてなる矩形状のSOI(シリコン−オン−インシュレータ)基板を採用することができる。
【0033】
そして、この基板10の表層、たとえばSOI基板における第2シリコン層に対して、トレンチエッチングおよびリリースエッチングなどを施すことにより、図2に示されるように、溝で区画された梁構造体20〜60が形成されている。
【0034】
この梁構造体20〜60は、大きくは、振動体20と各梁部23、40と各電極50、60とから構成されている。
【0035】
振動体20は、基板10と水平な面内すなわち図2中の紙面内にて振動可能なように基板10の中央部に形成されている。本例では、振動体20は、中央部に位置する略矩形状の第1の振動部21と、この第1の振動部21の外周に位置する矩形枠状の第2の振動部22と、これら第1および第2の振動部21、22を連結する駆動梁部23とから構成されている。
【0036】
この振動体20は、基板10の周辺部に設けられたアンカー部30に対して検出梁部40を介して連結されている。ここで、アンカー部40は、基板10のうち当該梁構造体20が形成されている表層の下部すなわち支持基板部に固定され支持されているものであり、振動体20は、当該支持基板部から浮遊している。
【0037】
ここで、図2に示されるように、駆動梁部23は、たとえばy方向に延びる形状をなすものとすることで実質的にx方向のみに弾性変形可能なものであり、検出梁部40は、たとえばx方向に延びる形状をなすものとすることで実質的にy方向のみに弾性変形可能なものである。
【0038】
そして、駆動梁23によって振動体20のうち第1の振動体部が、基板10と水平面内においてx方向(駆動振動方向)へ振動可能となっている。一方、検出梁部40によって振動体20全体が、基板10と水平面内においてy方向(検出振動方向)へ振動可能となっている。
【0039】
また、第1の振動部21と第2の振動部22との間には、第1の振動部21をx方向に駆動振動させるための駆動電極50が設けられている。この駆動電極50は、アンカー部30と同様に上記支持基板部に固定されている。そして、駆動電極50は、第1の振動部21から突出する櫛歯部(駆動用櫛歯部)21aに対し、互いの櫛歯が噛み合うように対向して配置されている。
【0040】
また、第2の振動部22の外周には、検出電極60が設けられている。この検出電極60は、振動体20の振動に基づいて基板10と垂直なz軸回りの角速度を検出するためのもので、アンカー部30と同様に上記支持基板部に固定されている。そして、検出電極60は、第2の振動部22から突出する櫛歯部(検出用櫛歯部)22aに対し、互いの櫛歯が噛み合うように対向して配置されている。
【0041】
また、本角速度検出素子100においては、基板10の上面の適所に、上記振動体20、駆動電極50および検出電極60などに電圧を印加したり、信号を取り出したりするための図示しないパッドが設けられている。
【0042】
本実施形態では、図1に示されるように、このパッドは基板10の周辺部に設けられており、そして、このパッドには、Au(金)やAl(アルミニウム)などのボンディングワイヤ70、71が接続されるようになっている。
【0043】
それにより、角速度検出素子100の基板10の上面と回路基板200とがボンディングワイヤ70、71により結線され電気的に接続される。このボンディングワイヤ70、71は、通常のワイヤボンディング手法により形成できるものである。
【0044】
この回路基板200は、たとえばシリコン基板等に対してMOSトランジスタやバイポーラトランジスタ等が、周知の半導体プロセスを用いて形成されているものとして構成されている。
【0045】
そして、回路基板200は、角速度検出素子100へ振動体20を駆動するための交流の高電圧信号すなわち駆動信号を送ったり、角速度検出素子100からの微小な検出信号を処理してパッケージ300を介して外部へ出力する等の機能を有する信号処理チップとして構成されている。
【0046】
図1に示されるように、この回路基板200は、パッケージ300内に図示しない接着部材などを介して固定されている。
【0047】
ここで、パッケージ300は、内部もしくは表面などに図示しない配線を有するもので、回路基板200とパッケージ300の上記配線とが、ボンディングワイヤ70、71により結線され電気的に接続されている。そして、回路基板200からの出力信号はボンディングワイヤ70、71を介してパッケージ300の配線から外部へ送られるようになっている。
【0048】
このパッケージ300は、たとえばアルミナなどのセラミック層が複数積層された積層基板として構成することができる。このような積層基板は、各層の間に上記配線が形成され、スルーホールなどにより各配線が導通されているものである。また、図1に示されるように、パッケージ300の開口部には蓋310が取り付けられ、パッケージ300の内部を封止している。
【0049】
ここで、図1に示されるように、本実施形態においては、角速度検出素子100と回路基板200との間、および回路基板200とパッケージ300との間を結線する複数本のボンディングワイヤ70、71のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっている。
【0050】
図1に示される例では、ワイヤ形状の異なるボンディングワイヤ70、71同士は、第1の部材である角速度検出素子100および第2の部材である回路基板200に対して、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にしたものである。
【0051】
また、図1では、第1の部材を回路基板200、第2の部材をパッケージ300とした場合において、これら回路基板200およびパッケージ300に対して、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にしたボンディングワイヤ70、71同士も、本発明でいうボンディングワイヤに相当する。
【0052】
なお、ここでは、ボンディングワイヤ70、71としては、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にした2種類の異なる形状を採用しているが、たとえば、ボンディングワイヤのループ高さや、ループ形状を変えるなどにより、さらに多種類のワイヤ形状を実現してもかまわない。
【0053】
また、複数本のボンディングワイヤ70、71のすべてが異なるワイヤ形状であってもかまわない。
【0054】
本実施形態では、ボンディングワイヤ70、71を流れる信号は、角速度検出素子100を駆動するための交流の高電圧すなわち駆動信号、角速度検出素子100からの微小な検出信号などであるが、たとえば、駆動信号と検出信号とは、できるだけ干渉させたくない信号同士である。
【0055】
そのため、たとえば、駆動信号が流れるボンディングワイヤ70と検出信号が流れるボンディングワイヤ71とのワイヤ形状を異ならせている。
【0056】
このような本実施形態の角速度検出装置S1は、たとえば、パッケージ300に回路基板200を固定するとともに、回路基板200の上に接着剤などを配置してその上に角速度検出素子100を接着した後、ワイヤボンディングを行い、さらに、蓋部310を取り付けることにより製造することができる。
【0057】
かかる角速度検出装置S1においては、回路基板200からボンディングワイヤ70を介して角速度検出素子100の駆動電極50に駆動信号(正弦波電圧等)を印加して、上記第1の振動部21の櫛歯部21aと駆動電極50との間に静電気力を発生させる。それにより、駆動梁部23の弾性力によって第1の振動部21がx方向へ駆動振動する。
【0058】
この第1の振動部21の駆動振動のもと、z軸回りに角速度Ωが印加されると、第1の振動部21にはy方向にコリオリ力が印加され、振動体20全体が、検出梁40の弾性力によってy方向へ検出振動する。
【0059】
すると、この検出振動によって、検出電極60と検出用櫛歯部22aの櫛歯間の容量が変化するため、この容量変化を検出信号としてボンディングワイヤ71を介して回路基板200へと検出することにより、角速度Ωの大きさを求めることができる。
【0060】
具体的には、図2において、振動体20がy軸方向に沿って一方向へ変位したとき、図2における左右の検出電極60において、左側の検出電極60と右側の検出電極60とでは、容量変化は互いに逆になるようになっている。そのため、左右の検出電極60におけるそれぞれの容量変化を電圧に変換し、両電圧値を差動・増幅して出力することで、角速度が求められる。
【0061】
ところで、本実施形態によれば、第1の部材100と第2の部材200とを複数本のボンディングワイヤ70、71を介して電気的に接続してなる電子装置において、複数本のボンディングワイヤ70、71のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっていることを特徴とする電子装置S1が提供される。
【0062】
特に、本実施形態では、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置として、第1の部材を角速度検出素子100、第2の部材を回路基板200とした角速度検出装置S1を実現するものである。
【0063】
つまり、本実施形態では、基板10、および、基板10に設けられ基板10と水平な面内にて振動可能な振動体20を有し、振動体20の振動に基づいて基板10と垂直な軸回りの角速度を検出するようにした角速度検出素子100と、回路基板200とを備え、角速度検出素子100と回路基板200とが複数本のボンディングワイヤ70、71により結線されている角速度検出装置において、複数本のボンディングワイヤ70、71のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっていることを特徴とする角速度検出装置S1が提供される。
【0064】
従来では、上記図3に示したように、複数本のボンディングワイヤ70が同一形状であり、複数本のボンディングワイヤ70のうち隣接あるいは近接するボンディングワイヤ70同士が、平行に近い形となっていた。
【0065】
これは、従来では、たとえば角速度検出素子100と回路基板200との間のワイヤボンディングにおいて、角速度検出素子100側を1次ボンディング、回路基板200側を2次ボンディングとしていたためである。そのため、従来では、当該ボンディングワイヤ70間の寄生容量が大きいものとなっていた。
【0066】
それに対して、本実施形態の角速度検出装置S1では、複数本のボンディングワイヤ70、71のうち少なくとも一部を、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なるようにしているため、互いに異なる形状同士のボンディングワイヤ70、71同士では、ワイヤ間の距離を大きくしなくても、ワイヤ同士の対向する面積を小さくすることができ、寄生容量も低減できる。
【0067】
そのため、干渉させたくない信号が流れるボンディングワイヤ70、71同士において、ワイヤ形状を異ならせることで、寄生容量による信号の干渉を低減することができ、角速度検出装置S1の動作や精度などに悪影響を与えることは抑制される。つまり、角速度検出装置S1において、誤動作を防いだり、S/N比を向上することができ、製品性能向上させることができる。
【0068】
したがって、本実施形態によれば、第1の部材100と第2の部材200とを複数本のボンディングワイヤ70、71を介して電気的に接続してなる電子装置において、ボンディングワイヤ70、71間の距離を大きくしなくても、ボンディングワイヤ70、71間の寄生容量を低減することができる。
【0069】
ここで、上記図1に示される例では、角速度検出装置S1において、ワイヤ形状の異なるボンディングワイヤ70、71同士は、第1の部材である角速度検出素子100および第2の部材である回路基板200に対して、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にしたものとしている。
【0070】
具体的に、図1に示されるように、角速度検出素子100側から急峻に立ち上がり回路基板200側へなだらかに下がっている形状を有するボンディングワイヤ70は、角速度検出素子100側を1次ボンディング、回路基板200側を2次ボンディングとしたものである。
【0071】
一方、角速度検出素子100側からなだらかに立ち上がり回路基板200側へ急峻に下がっている形状を有するボンディングワイヤ71は、回路基板200側を1次ボンディング、角速度検出素子100側を2次ボンディングとしたものである。
【0072】
ボンディングワイヤ70、71同士のワイヤ形状を異ならせる方法としては、このような手法を採用することができる。しかしながら、上述したように、ボンディングワイヤのループ高さや、ループ形状を変えるなどにより、さらに多種類のワイヤ形状を実現してもかまわない。
【0073】
(他の実施形態)
なお、角速度検出素子は、基板、および、基板に設けられ基板と水平な面内にて振動可能な振動体を有し、振動体の振動に基づいて基板と垂直な軸回りの角速度を検出するようにしたものであればよく、上記実施形態に示されるような角速度検出素子100に限定されるものではない。
【0074】
また、角速度検出装置としては、上記したパッケージ300を持たないものであってもよい。つまり、角速度検出素子100と回路基板200とが積層された積層体がパッケージ内に収納されていなくてもよい。たとえば、当該積層体をプリント配線基板やセラミック配線基板などに搭載し、ワイヤボンディングなどによる電気的接続を行った構成としてもよい。
【0075】
さらに、回路基板200上に積層されるセンサ素子としては、加速度検出素子、圧力検出素子、温度検出素子、湿度検出素子、光検出素子など、各種のセンサ素子を採用することができる。また、回路基板とこれらセンサ素子とは、積層されていなくてもよく、面配置となっていてもよい。
【0076】
また、上述したように、ボンディングワイヤにて接続される第1の部材、第2の部材は、それぞれセンサ素子、回路基板である必要はなく、たとえば、上記実施形態に述べたように、第1の部材が回路基板、第2の部材がパッケージであってもよい。
【0077】
つまり、第1の部材、第2の部材をボンディングワイヤで接続する電子装置であって、ボンディングワイヤによる寄生容量が問題になるものに対して、本発明を適用することが有効である。
【0078】
そして、本発明は、第1の部材と第2の部材とを複数本のボンディングワイヤを介して電気的に接続してなる電子装置において、複数本のボンディングワイヤのうち少なくとも一部を、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なるようにしたことを要部とするものであり、その他の部分については、適宜設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る角速度検出装置の概略断面図である。
【図2】図1に示される角速度検出装置における角速度検出素子の概略平面図である。
【図3】従来の電子装置としての角速度検出装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0080】
10…角速度検出素子の基板、20…角速度検出素子の振動体、
70、71…ボンディングワイヤ、100…第1の部材としての角速度検出素子、
200…第2の部材としての回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材(100)と第2の部材(200)とを複数本のボンディングワイヤ(70、71)を介して電気的に接続してなる電子装置において、
前記複数本のボンディングワイヤ(70、71)のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記ワイヤ形状の異なるボンディングワイヤ(70、71)同士は、前記第1の部材(100)および前記第2の部材(200)に対して、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にしたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
基板(10)、および、前記基板(10)に設けられ前記基板(10)と水平な面内にて振動可能な振動体(20)を有し、前記振動体(20)の振動に基づいて前記基板(10)と垂直な軸回りの角速度を検出するようにした角速度検出素子(100)と、
回路基板(200)とを備え、
前記角速度検出素子(100)と前記回路基板(200)とが複数本のボンディングワイヤ(70、71)により結線されている角速度検出装置において、
前記複数本のボンディングワイヤ(70、71)のうち少なくとも一部が、残りのボンディングワイヤとはワイヤ形状が異なっていることを特徴とする角速度検出装置。
【請求項4】
前記ワイヤ形状の異なるボンディングワイヤ(70、71)同士は、前記角速度検出素子(100)および前記回路基板(200)に対して、1次ボンディングと2次ボンディングとの順序を逆にしたものであることを特徴とする請求項3に記載の角速度検出装置。
【請求項5】
前記角速度検出素子(100)が、前記回路基板(200)上に接着剤(300)を介して積層されており、
前記角速度検出素子(100)の前記基板(10)の上面と前記回路基板(200)とが前記複数本のボンディングワイヤ(70、71)により結線されていることを特徴とする請求項3または4に記載の角速度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−41298(P2006−41298A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221077(P2004−221077)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】