説明

電子装置

【課題】放熱対策及びESD(静電気放電)対策を図ることができるとともに、製造コストの低減等を図り、実用により好適な電子装置を提供する。
【解決手段】GND(接地電位)に接続される銅箔層106を有するプリント基板上に半導体デバイス102が設けられている。半導体デバイスを放熱する放熱板104は、固定具105にてプリント基板に固定されている。そして、固定具105には接続用バネ121が巻きつけられており、放熱板104と銅箔層106とは接続用バネ121を介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は放熱板を備えた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルテレビなどのデジタルメディア機器は、高い処理速度の半導体デバイス(例えばCPU)が求められ、動作時の発熱量は年々高くなってきている。過度に高温となった半導体デバイスは誤動作を起こす恐れが高い。従って、消費電力が高く、発熱量の高い半導体デバイスに対しては放熱板を設けることが行われている。放熱板は通常アルミニウム等の熱伝導性の高い金属で作られ、半導体デバイスの上に例えばプラスチック製の固定具にて固定されることが一般的である。
【0003】
ところで、放熱板は上記のとおり導電体であり電荷の経路となり得るため、静電気の放電先となり得る。従って、静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)が生じた場合、逃げ場の無い静電気は放熱板を介して周囲の半導体デバイスの端子等に放電され、当該周囲の半導体デバイスが深刻なダメージ(半導体素子の破壊、誤動作など)を受ける恐れがある。
【0004】
このESDの問題を回避する観点から、放熱板そのものをGND(接地電位)に接続することが行われている(特許文献1参照)。これによれば、放熱板に放電した静電気は半導体デバイスよりも電位の低いGNDに流れるため、半導体デバイスに対してダメージを与え難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−80453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、放熱板を設ける際には放熱対策とともにESD対策が重要となる。そこでこの本発明は、放熱対策及びESD対策を図ることができるとともに、製造コストの低減等を図り、実用により好適な電子装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な特徴は以下のとおりである。すなわち、本発明の電子装置は、接地される導電部を有する基板上に設けられた半導体デバイスと、前記半導体デバイスを放熱する放熱板と、前記放熱板を前記基板に固定する固定具と、前記固定具に巻きつけられて、前記放熱板と前記導電部とを電気的に接続する導電性の第1のバネ部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、放熱板とGND間がバネを介して接続される。従って、放熱板に放電する静電気はバネを介してGNDへと流れ込むためESD対策を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る電子装置の外観を説明するための斜視図である。
【図2】本実施形態に係る電子装置を説明するための断面図である。
【図3】本実施形態に係る電子装置の適用例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の最良の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一例として、放熱板を固定した半導体デバイスがプリント基板上に実装されたプリント基板ユニット(電子装置100)の一部の構成を示す斜視図である。図2は図1のA方向から見た図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、電子装置100は主として、プリント基板101と、このプリント基板101上に実装された半導体デバイス102と、この半導体デバイス102上に熱伝導シート103を介して設けられた放熱板104と、この放熱板104をプリント基板101に固定するための柱状の固定具(柱状固定具)105と、プリント基板101上の固定具105周辺に設けられた銅箔層106と、プリント基板101等が実装されるケース110と、プリント基板101をケース110に固定するための幾つかのネジ111と、銅箔層106を接地電位(GND)に接続するとともにプリント基板101をケース110に固定するためのネジ112とを含んで構成されている。
【0012】
固定具105は柱状であって固定用バネ120及び接続用バネ121が螺旋状に巻きつけられる軸部105aと、軸部105aよりも口径が広い頭部105bと、軸部105aの先端であって軸部よりも口径が広く、プリント基板101に引っかかる突起部105cとを含んでいる。突起部105cは、固定具105がプリント基板101に固定される際にプリント基板101の裏面から突出する。
【0013】
放熱板104の一部には固定具105が挿入される開口部を有する取り付け部115が外側に延在している。なお、本実施形態では、取り付け部115が放熱板104と一体成型されて構成されているが、放熱板104とは別部材として設けられていても良い。
【0014】
取り付け部115の上面と頭部105bとの間には、放熱板104を固定するための固定用バネ120が設けられており、取り付け部115の他方の面とプリント基板101の表面との間には、固定具105と銅箔層106とを電気的に接続する接続用バネ121が配置されている。
【0015】
図示は省略するが、プリント基板101の表面上には、半導体集積回路、抵抗器、コンデンサー等の多数の電子部品が実装され、その部品間が配線で接続されている。
【0016】
プリント基板101上に実装される半導体デバイス(ICチップ)としては、種々の形態のものを用いることが出来る。本実施形態では一例としてBGA(Ball Grid Array)型の半導体デバイス102が実装されている。BGA型の半導体デバイス102は、図2に示すように、プリント基板130と、多数の半導体素子が設けられて樹脂封止された半導体素子部131と、プリント基板130の裏面に複数配置された入出力用であって半田等から成る複数の電極132とを備えている。なお、半導体デバイス102としては、トランジスタ等の単一素子から成るものであってもよい。
【0017】
熱伝導シート103は、絶縁性や柔軟性を有し、熱伝導率の高い材料から成る例えばシリコーンシートやグラファイトシートを含んでいる。このように、放熱板104と半導体デバイス102との間に熱伝導シート103を配置することが、動作時に半導体デバイス102で生じる熱を効率よく放熱板104から放射させる観点から好ましい。なお、熱伝導シート103の表面が接着性を有してもよく、かかる構成では、放熱板104と半導体デバイス102とが熱伝導シートによって仮固定される。なお、熱伝導シート103と放熱板104との間や、熱伝導シート103と半導体デバイス102との間に両面テープ等を配置して、各部を固定してもよい。
【0018】
放熱板104は、熱伝導性の高い金属(例えばアルミニウムやアルミニウム合金)から成り、動作時に半導体デバイス102で生じる熱を拡散冷却するための放熱器具である。放熱効率を向上させる観点から、略四角形状のベース基板104aから複数のフィン104bが垂直方向に並列に突出している。基板104aは、半導体デバイス102と同等もしくはそれよりも面積が大きいことが好ましい。また、放熱板104は、目的とする半導体デバイスの近傍に設けることが放熱効果を高める上で好ましく、さらに言えば、図2に示すように、半導体デバイスの少なくとも一部と重畳させるように設けることが好ましい。本実施形態では基板104aの一部が延在し、当該延在した部分は固定具105が取り付けられる取り付け部115を構成している。
【0019】
更に、本実施形態では、フィン104bの表面や基板104aの表面は酸化処理(例えば、アルマイト処理)が施されて腐食対策がなされている。アルマイト処理は、無色透明な銀白色の酸化皮膜を表明に形成させる処理である。一方、基板104aの裏面(熱伝導シート103側の面)はアルマイト処理が施されていない。従って、基板104aの裏面は表面側に比べて導電性が高い。従って、ESD対策として、取り付け部115の裏面が、接続用バネ121を介して銅箔層106(GND)と電気的に接続され易くなっている。なお、アルマイト処理が一度なされた基板104aの裏面に対して削るなどして、取り付け部115の裏面であって、少なくとも接続用バネ121が接触される部分の金属面を露出させてもよい。つまり、少なくとも取り付け部115の裏面にて接続用バネ121が適切に電気的に接続されるように構成することで、放熱板104の腐食対策とESD対策の両者を図ることができる。換言すれば、腐食対策とESD対策の観点から、取り付け部115の接続用バネ121と接触する領域を少なくも除いて、放熱板104の表面に酸化処理が施されている。
【0020】
固定具105は、放熱板104をプリント基板101上に固定するための柱状の部材であり、例えばプラスチック等の非導電性(絶縁性)の材料から成る。なお、固定具105は鉄等の導電性の材料から構成することも可能である。しかし、プラスチック等の絶縁性材料で構成する方が、金属材料を用いるよりも加工が容易であり製造コストも低く、製造上好ましい。固定具105は、取り付け部115の開口部及びプリント基板101に設けられた開口部に挿入され、プリント基板101の裏面に突起部105cが引っかかることによって固定される。
【0021】
なお、図示はしないが、固定具105は図1の取り付け部115の対向する側にも同様に設けられている。すなわち、本実施形態では放熱板104の中心を挟んで取り付け部115と対向する側にも同様に取り付け部が設けられている。そして、固定具105を2箇所で止めることで放熱板104がプリント基板101上に固定される。
【0022】
銅箔層106は、例えばプリント基板101上に多数の配線を形成する際に同時に形成することが出来る導電層である。銅箔層106の一方の端部は、固定具105周辺に設けられ、接続用バネ121と電気的に接続される。他方の端部はネジ112を介してGNDに接続されている。つまり、銅箔層106はGNDに接地されている。
【0023】
固定用バネ120及び接続用バネ121は鉄やアルミニウム等の金属材料(導電性材料)から構成されている。固定用バネ120は、固定具105の頭部105bと取り付け部115の上面との間であって軸部105aにらせん状に巻きつけられて設けられており、その弾性力で放熱板104をプリント基板101上に固定する。接続用バネ121は、取り付け部115の下面(裏面)とプリント基板101の銅箔層106領域との間に軸部105aに巻きつけられて設けられている。接続用バネ121の一端は取り付け部115の裏面と接触し、他端は銅箔層106と接触している。そのため、取り付け部115の裏面(放熱板104の裏面)は接続用バネ121を介して銅箔層106(GND)と電気的に接続される。
【0024】
また、本実施形態では固定用バネ120と接続用バネ121の弾性力とが異なる。つまり、接続用バネ121の弾性力が固定用バネ120の弾性力よりも小さくなるように構成されている。そのため、放熱板104から半導体デバイス102に圧力がかかって密着し、放熱板104はプリント基板101上に適切に固定される。
【0025】
以上説明したように本実施形態では、放熱板104の裏面(取り付け部115の裏面)とプリント基板101上の銅箔層106(GND)とが、固定具105に巻きつけた接続用バネ121を介して電気的に接続されている。このため、予期せぬ静電気によって、放熱板104に放電した静電気は接続用バネ121を介してプリント基板101上の銅箔層106に流れ込み、そして、当該静電気は銅箔層106及びネジ112を介してGNDに流れ込む。すなわち、過度な静電気が放熱板104に印加された場合、図2の矢印で示したように、放熱板104、取り付け部115の裏面、接続用バネ121、銅箔層106、ネジ112の経路でGNDと短絡するため、静電気はGNDへと逃げ、半導体デバイス102や周囲の半導体デバイスには静電気が印加されない。従って、本実施形態に係る電子装置100は静電破壊を回避し易い構成である。
【0026】
以上のように、放熱板104の固定具105に対して接続用バネ121を追加することでESD対策を図ることが出来る。かかる構成であれば、絶縁体であるプラスチック製の汎用的な固定具を用いても、接続用バネのみの追加でESD対策が実現出来るため、製造コストが低く実用上も好ましい。
【0027】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記した電子装置100は様々な状況に配置することが出来る。例えば、図3に示すように、プリント基板101、放熱板104、半導体デバイス102等が収容される筐体170にスリット171を複数設け、当該スリット171の近傍に放熱板104が配置されるようにしてもよい。かかる構成によれば、放熱板104には外部からの空気がスリット171を介して良く当たるようになり、放熱特性を向上させることができる。
【0028】
また、スリットのような構成が筐体に設けられていると、当該スリットを介して例えば人体に溜まった静電気が内部の放熱板104等に対して放電することがあり得るが、上記のとおり本実施形態ではESD対策が図られている。また、放熱板104の近傍に冷却ファンを取り付けて更に放熱効果を高めることも可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、熱伝導シート103を放熱板104と半導体デバイス102との間に配置しているが、熱伝導シート103を設けずに、放熱板104と半導体デバイス102とを接着剤や両面テープ等で接着固定してもよい。
【0030】
また、本実施形態ではプリント基板101の表面に設けられた銅箔層106を介して放熱板104をGNDに接続しているが、ワイヤー状等の配線を用いることも可能である。また、上記した構成の利用形態の一例を説明する。例えば、上記構成は、テレビジョン放送受信装置に好適に用いられる。すなわち、テレビジョン放送受信装置では、放送波(放送信号)を受信するチューナー部があり、当該放送信号を用いて映像表示部に映像を映し出すための映像信号処理系を構成する回路など多数実装されている。そして、これらの様々な回路部品のうち、特にデコーダ部を構成する半導体集積回路に対しては、デジタルデータの高速処理による発熱があるため、放熱対策、ESD対策が施された本実施形態にかかる構成が極めて有効である。
【0031】
本実施形態にかかる発明は、放熱対策、ESD対策を施したい電子機器に幅広く適用することが可能である。また、本実施形態では、プリント基板上に半導体デバイスと放熱板とが順に積層された構成であるが、半導体デバイスのチップ構造等の設計に応じて積層の順序は適宜変更することも可能である。半導体デバイスと放熱板との間に熱伝導性の良好な部材を別に介在させることで、半導体デバイスと放熱板とを近傍ではなく離間させて配置することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
100…電子装置,101…プリント基板、102…半導体デバイス、103…熱伝導シート、104…放熱板、104a…基板、104b…フィン、105…固定具、105a…軸部、105b…頭部、105c…先端部、106…銅箔層、110…ケース、111…ネジ、112…ネジ、120…固定用バネ、121…接続用バネ、130…プリント基板、131…半導体素子部、132…電極、170…筐体、171…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地される導電部を有する基板上に設けられた半導体デバイスと、
前記半導体デバイスを放熱する放熱板と、
前記放熱板を前記基板に固定する固定具と、
前記固定具に巻きつけられて、前記放熱板と前記導電部とを電気的に接続する導電性の第1のバネ部材と
を備えることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記固定具が挿入される開口部を有する取り付け部を更に備え、
前記固定具は頭部と軸部とを含み、
前記頭部と前記取り付け部の一方の面との間に設けられた第2のバネ部材を備え、
前記第1のバネ部材は前記取り付け部の他方の面と前記導電部との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第1のバネ部材は、前記第2のバネ部材よりも弾性力が小さいことを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記取り付け部は前記放熱板に含まれて構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記取り付け部の前記第1のバネ部材と接触する領域を少なくも除いて、前記放熱板の表面は酸化処理が施されていることを特徴とする請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
放送波を受信するチューナ部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電子装置。
【請求項7】
前記半導体デバイスは、前記チューナ部で受信した放送波をデコードするデコーダ部を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−155166(P2011−155166A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16235(P2010−16235)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】