説明

電子部品の固定構造および電子部品の固定方法

【課題】接着剤を用いることなく、必要以上に時間を掛けずに電子部品を安定的に固定することができる電子部品の固定構造および固定方法を提供する。
【解決手段】リード線(24)を備えた電子部品(2)を基板(1)に安定的に固定する電子部品の固定構造として、上記電子部品の外周を跨ぐように配置された棒状または板状の固定部材(3)の少なくとも上記電子部品を跨いだ両端部(3a、3b)を、それぞれ半田付け可能な金属によって構成し、固定部材の上記端部を、それぞれ上記電子部品を跨いだ位置に形成された上記基板の固定部材用の貫通孔(13a、13b)内に裏面側から充填されるはんだ(4)によって半田付けし、リード線(24)を、上記基板のリード線用の貫通孔(14)に上記基板の裏面側から充填されるはんだ(4)によって半田付けした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線を備えた電子部品を基板に実装する際に、安定的に基板に固定する電子部品の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、パーソナルコンピュータなどの電子機器には、電子回路を備えた基板が内蔵されており、この基板には、電子回路の一部を構成する電子部品などが実装されている。
特に、近年においては電子機器も小型化が追求されることから、この電子部品が実装された基板の全体的な大きさを小さくする傾向にあり、例えば、図4に示すように、基板1に電子部品用の穴12を形成して、この穴12に電子部品の一部を配置することによって電子部品による出っ張りを小さくする等の改良が為されている。
【0003】
具体的に、この電子部品として、リード線24が備えられた外観視円柱状の電解コンデンサ2を用いた場合には、この電解コンデンサ2は、その周方向の一部が軸方向全長に亘って穴12内に位置するように横向きに配置されて、上記出っ張りを小さくしている。さらに、この電解コンデンサ2は、軸方向に沿って、その外周面と穴12との間に接着剤5を塗布して乾燥させることにより、基板1の取り付け作業時や運搬時などに外れぬように固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基板1には、上記リード線24を半田付けするための貫通穴が形成されており、電解コンデンサ2は、上記接着剤5の塗布前や塗布後または上記乾燥後に、この貫通穴にリード線24を挿通させて、この貫通孔に充填されたはんだによって半田付けすることにより、横実装されている。
【0005】
しかしながら、この接着剤5の乾燥時間により実装に要する時間が必要以上に長くなってしまうため、電解コンデンサ2などの電子部品の接着剤による固定は時間効率が悪いという欠点がある。また、この接着剤5として、速乾性のものを用いた場合にも、リード線24の固定位置などが定まる前に電子部品が固定されてしまうため、リード線24の半田付け作業がし難くなるという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2006−245450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、接着剤を用いることなく、必要以上に時間を掛けずに電子部品を安定的に固定することができる電子部品の固定構造および固定方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、リード線を備えた電子部品を基板に安定的に固定する電子部品の固定構造において、上記電子部品の外周を跨ぐように配置された棒状または板状の固定部材が備えられ、かつ上記固定部材は、少なくとも上記電子部品の外周を跨いだ両端部がそれぞれ半田付け可能な金属からなり、上記固定部材の上記端部が、それぞれ上記電子部品を跨いだ位置に形成された上記基板の固定部材用の貫通孔内に裏面側から充填されたはんだによって半田付けされるとともに、上記リード線が上記基板のリード線用の貫通孔に上記基板の裏面側から充填されたはんだによって半田付けされていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子部品の固定構造において、上記固定部材の上記両端部間の中央部は、少なくとも外周が樹脂によって構成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、リード線を備えた電子部品を、当該電子部品の外周を跨ぐように配置された棒状または板状の固定部材によって安定的に基板に固定する電子部品の固定方法であって、上記電子部品の外周を跨いだ上記固定部材の端部を、それぞれ上記電子部品を跨いだ位置に形成された上記基板の固定部材用の貫通穴に裏面側から充填されるはんだによって半田付けするとともに、上記リード線を上記基板のリード線用の貫通孔に裏面側から充填されるはんだによって半田付けすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜2に記載の電子部品の固定構造によれば、棒状または板状の固定部材を電子部品の外周を跨ぐように配置し、この電子部品の外周を跨いだ固定部材の端部をそれぞれ基板の固定部材用の貫通孔に充填されるはんだによって半田付けするとともに、リード線を基板のリード線用の貫通孔に充填されるはんだによって半田付けすることにより、電子部品を基板に実装して、安定的に固定することができる。
【0012】
従って、リード線の固定と同時に電子部品の固定を行うことができ、別途、接着剤などの塗布乾燥工程を必要とすることなく、時間効率に優れた方法で電子部品を固定することができる。
これに加えて、リード線の固定位置が定まる前に電子部品が固着されてしまうなどの問題もなく、作業効率を高めることができる。さらに、固定部材を、電子部品との間に一定の隙間を設けるように半田付けした場合には、必要に応じて電子部品の位置を多少動かすこともでき、作業の利便性を高めることもできる。
【0013】
従って、請求項3に記載の電子部品の固定方法によれば、より短時間で、電子部品を所望の位置に安定的に固定することができる。
【0014】
特に、請求項2に記載の電子部品の固定構造によれば、固定部材の中央部は、少なくとも外周が樹脂によって構成されているため、上記半田付けの際に直接的に熱が金属から電子部品に伝わることを阻止でき、上記樹脂の熱伝導率が低いことから、電子部品の熱溶解などを防止できる。従って、電子部品の熱溶解などによる機能破壊を防ぎ、安定性能を有する電子部品を固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る電子部品の固定構造について説明した後に、この固定構造による電子部品の固定方法について説明する。
【0016】
本実施形態の固定構造は、2本のリード線24を備えた外観視円柱状の電解コンデンサ(電子部品)2が、その軸方向中央部の外周を跨ぐ1本のジャンパー線(棒状の固定部材)3によって基板1に固定されており、この基板1には、電解コンデンサ2を含む電子回路20が備えられている。
【0017】
この基板1には、電解コンデンサ2を配置する貫通穴12が形成されており、この穴12は、電解コンデンサ2の軸線方向よりも長い長手縁部17a、17bと、電解コンデンサ2の直径よりも短い短手縁部18a、18bとを有して形成されている。
これにより、電解コンデンサ2は、周方向の一部が軸方向全長に亘って穴12内に位置するように横向きに配設されることによって、長手縁部17a、17b間の中央部に軸線が位置して配置されている。
【0018】
さらに、この基板1には、ジャンパー線3が電解コンデンサ2の軸方向中央部の外周を跨いだ位置にジャンパー線3用の貫通孔13a、13bが形成されている。換言すると、基板1には、穴12の短手縁部18a、18b間の中央部を長手縁部17aの外方に向けて跨いだ位置にジャンパー線3用の貫通孔13aが形成されるとともに、穴12の同中央部を長手縁部17bの外方に向けて跨いだ位置にジャンパー線3用の貫通孔13bが形成されている。
さらにまた、この基板1には、一方の短手縁部18aの外方の2箇所に、リード線24用の貫通孔14が形成されており、各貫通孔14の外周縁部には、上記電子回路20を構成する導体パターン21がそれぞれ形成されている。
【0019】
他方、ジャンパー線3は、電解コンデンサ2の軸方向中央部を跨ぐように上記軸線の直交方向に配置されており、この電解コンデンサ2を跨いだ両端部3a、3bがそれぞれ貫通孔13a、13b内に挿入されて、基板1の裏面側から充填されるはんだ4によって半田付けされている。
また、電解コンデンサ2は、2本のリード線24がそれぞれ異なるリード線24用の貫通孔14に挿入されて、基板1の裏面側から充填されるはんだ4によって半田付けされることにより、上記導体パターン21に電気的に接続されて電子回路20に組み込まれている。
【0020】
次いで、上記固定構造による電子部品の固定方法について説明する。
本実施形態の固定方法は、まず、電解コンデンサ2を基板1の穴12に配置する。その際、電解コンデンサ2を、周方向の一部が軸方向全長に亘って穴12内に位置するように横向きに配設する。
これにより、電解コンデンサ2は、短手縁部18a、18b間と同一幅だけ離間している2箇所の外周部が軸方向に沿って長手縁部17aまたは17bにそれぞれ当接して、軸線が長手縁部17a、17b間の中央部上に位置するように配置される。
【0021】
次いで、この電解コンデンサ2の2本のリード線24を、それぞれ異なるリード線24用の貫通孔14に挿入するとともに、ジャンパー線3を、電解コンデンサ2の軸方向中央部の外周を跨ぐように上記軸線の直交方向に配置して、この電解コンデンサ2を跨いだジャンパー線3の両端部3a、3bを、それぞれ貫通孔13a、13bに挿入する。
【0022】
次ぎに、このジャンパー線3の両端部3a、3bやリード線24が貫通孔13a、13b、14に挿入された基板1を、はんだが加熱溶解されて収容されているはんだ槽に導入して、基板1の裏面側から貫通孔13a、13b、14にはんだ4の溶解液を充填した後に、はんだ4を乾燥させるフローはんだ方式によって、ジャンパー線3の両端部3a、3bやリード線24を半田付けした。
これにより、電解コンデンサ2は、リード線24がはんだ4によって導体パターン21に電気的に接続されて電子回路20に組み込まれるとともに、ジャンパー線3によって安定的に基板1に固定されて、穴12内に横実装される。
【0023】
上述の実施形態の電子部品の固定構造によれば、基板1上の穴12内に配置された電解コンデンサ2の軸方向中央部の外周を跨ぐようにジャンパー線3を配置し、この電解コンデンサ2を跨いだジャンパー線3の端部3a、3bをそれぞれ基板1のジャンパー線3用の貫通孔13a,、13bに充填されるはんだ4によって半田付けするとともに、リード線24を基板のリード線24用の貫通孔14に充填されるはんだ4によって半田付けすることにより、電解コンデンサ2を基板1に横実装して、安定的に基板1に固定することができる
【0024】
従って、リード線24の固定と同時に電解コンデンサ2の固定を行うことができ、別途、接着剤などの塗布乾燥工程を必要とすることなく、時間効率に優れた方法で電解コンデンサ2を固定することができる。
【0025】
これに加えて、リード線24の固定位置が定まる前に電解コンデンサ2が固着されてしまうなどの問題もなく、作業効率を高めることができる。さらに、ジャンパー線3を、電解コンデンサ2との間に一定の隙間を設けるように半田付けした場合には、必要に応じて電解コンデンサ2の位置を多少動かすこともでき、作業の利便性を高めることもできる。従って、より短時間で、電解コンデンサ2を所望の位置に安定的に固定することができる
【0026】
さらに、ジャンパー線3は、両端部3a、3b間の中央部が樹脂によって被覆されているため、貫通孔13a、13bに高温のはんだ4の溶解液を充填しても、直接的に両端部3a、3bの金属から電解コンデンサ2に熱が伝わることを阻止でき、電解コンデンサ2の外周部の熱溶解による機能破壊を防ぐことができ、安定性能を有する電解コンデンサ2を固定することができる。
【0027】
なお、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、複数本のジャンパー線3によって電子部品を固定してもよく、また、ジャンパー線3に代えて少なくとも両端部がそれぞれ半田付け可能な金属からなる棒状または板状の固定部材を用いてもよい。従って、この固定部材として金属線や金属板を用いることもできるが、この場合には、金属線などから電子部品への熱伝導を防止すべく、金属線と電子部品との間に隙間を設ける必要がある。
さらに、基板1には、貫通穴12が形成されていなくてもよく、また、はんだ4を、フローはんだ方式以外のリフローはんだ方式やはんだごてを利用したはんだ方式を用いて貫通孔13a、13b、14に充填してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の電子部品2の固定構造の斜視図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】従来の電子部品2の固定構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 基板
2 電解コンデンサ(電子部品)
3 ジャンパー線(固定部材)
3a、3b ジャンパー線の端部(固定部材の端部)
12 穴
13a、13b ジャンパー線用の貫通孔(固定部材用の貫通孔)
14 リード線用の貫通孔
17a 穴の長手縁部
18a 穴の短手縁部
20 電子回路
21 導体パターン
24 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード線を備えた電子部品を基板に安定的に固定する電子部品の固定構造において、
上記電子部品の外周を跨ぐように配置された棒状または板状の固定部材が備えられ、かつ
上記固定部材は、少なくとも上記電子部品の外周を跨いだ両端部がそれぞれ半田付け可能な金属からなり、上記固定部材の上記端部が、それぞれ上記電子部品を跨いだ位置に形成された上記基板の固定部材用の貫通孔内に裏面側から充填されたはんだによって半田付けされるとともに、上記リード線が上記基板のリード線用の貫通孔に上記基板の裏面側から充填されたはんだによって半田付けされていることを特徴とする電子部品の固定構造。
【請求項2】
上記固定部材の上記両端部間の中央部は、少なくとも外周が樹脂によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の固定構造。
【請求項3】
リード線を備えた電子部品を、当該電子部品の外周を跨ぐように配置された棒状または板状の固定部材によって安定的に基板に固定する電子部品の固定方法であって、
上記電子部品の外周を跨いだ上記固定部材の端部を、それぞれ上記電子部品を跨いだ位置に形成された上記基板の固定部材用の貫通穴に裏面側から充填されるはんだによって半田付けするとともに、上記リード線を上記基板のリード線用の貫通孔に裏面側から充填されるはんだによって半田付けすることを特徴とする電子部品の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−246187(P2009−246187A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92024(P2008−92024)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】