説明

電子部品の放熱構造

【課題】電子部品の動作に伴い電子部品に発生する熱を効率よく放散させることが可能な電子部品の放熱構造を提供する。
【解決手段】電子部品10の放熱構造は、回路基板12、フレーム14、シールド20、ボルト22及び接着剤24によって構成されている。フレーム14、シールド20、ボルト22及び接着剤24は、回路基板12よりも熱伝導率が高くなっている。フレーム14は回路基板12を支持している。シールド20の第1部分20aは、電子部品10の面Sを覆っており、放射線遮蔽効果を有している。接着剤24は、電子部品10の面Sとシールド20の第1部分20aとを接続している。ボルト22は、フレーム14とシールド20とを熱的に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の動作に伴い電子部品に発生する熱を放散させるための電子部品の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間において電子部品を動作させようとした場合、宇宙空間における放射線(宇宙線)による電子部品への影響を低減するため、放射線遮蔽効果を有するシールドによって、電子部品に照射される放射線のうち少なくとも一部を遮蔽する必要がある。そのため、従来、回路基板(プリント基板)に搭載された電子部品上に耐放射線シールドプレートを載せ、シールドプレートと当接するバネ部と回路基板に固定できるリード部とを有する取付金具をシールドプレート上に載せ、取付金具をシールドプレートに押し付け、リード部を回路基板にはんだ付けする耐放射線シールドプレート取付方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−297587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の方法によって、耐放射線シールドプレートが回路基板に搭載された電子部品に取り付けられた場合、電子部品の動作に伴い電子部品に発生した熱は耐放射線シールドプレート及び取付金具のリード部を介して回路基板に放散される。
【0004】
しかしながら、回路基板は、主として熱伝導性能の悪いGFRP(ガラス繊維強化プラスチック:Glass FiberReinforced Plastics)によって構成されている。そのため、従来の電子部品の放熱構造では、電子部品に発生した熱が放散されにくくなり、電子部品に熱が籠り易くなってしまうという問題があった。特に、宇宙空間は、真空であって空気が存在しないので、宇宙空間では、電子部品に発生した熱が熱伝達によって放散されず、熱が電子部品に非常に籠り易くなっている。
【0005】
本発明は、電子部品の動作に伴い電子部品に発生する熱を効率よく放散させることが可能な電子部品の放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子部品の放熱構造は、電子部品の動作に伴い電子部品に発生する熱を放散させるための電子部品の放熱構造であって、電子部品が搭載された回路基板と、回路基板よりも熱伝導率が高くなっていると共に回路基板を支持する支持部材と、回路基板よりも熱伝導率が高くなっており、少なくとも電子部品の回路基板と対向する面とは反対側の面を覆うと共に、放射線遮蔽効果を有するシールドと、回路基板よりも熱伝導率が高くなっていると共に電子部品の回路基板と対向する面とは反対側の面とシールドとを接続する第1熱伝導部材と、回路基板よりも熱伝導率が高くなっていると共に支持部材とシールドとを熱的に接続する第2熱伝導部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電子部品の放熱構造では、電子部品の回路基板と対向する面とは反対側の面とシールドとが第1熱伝導部材によって接続され、シールドと支持部材とが第2熱伝導部材によって熱的に接続されている。そのため、電子部品の動作に伴い電子部品に発生した熱が、第1熱伝導部材、シールド及び第2熱伝導部材を介して、回路基板よりも熱伝導率が高くなっている支持部材に移動する。その結果、熱が回路基板に籠ることなく、電子部品に発生する熱を効率よく放散させることが可能となる。
【0008】
また、第2熱伝導部材は、回路基板を貫通して支持部材とシールドとを接続するボルトであると好ましい。このようにすると、シールドから支持部材への放熱と、シールド及び支持部材の接続とが、ボルトによって簡便に実現される。
【0009】
また、シールドは、電子部品の回路基板と対向する面とは反対側の面を覆う第1部分と、電子部品を間に位置させるように第1部分から回路基板に向けて延びる一対の第2部分とを有し、ボルトは、一対の第2部分をそれぞれ貫通していると好ましい。このようにすると、シールドとボルトとの接触面積が増大するので、熱がシールドからボルトへと移動しやすくなる。
【0010】
また、第1熱伝導部材は、接着剤であると好ましい。このようにすると、電子部品とシールドとを機械的に接続した場合と比較して、外部から与えられる振動に対する電子部品への影響を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品の動作に伴い電子部品に発生する熱を効率よく放散させることが可能な電子部品の放熱構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る電子部品の放熱構造の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1及び図2に示されるように、電子部品10は、配線(図示せず)が形成された回路基板12に搭載されている。電子部品10は、例えばICチップであって、そのリード端子10aが回路基板12の配線(図示せず)と電気的に接続されている。
【0014】
回路基板12は、例えばGFRPやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂によって構成されている。回路基板12の熱伝導率は、例えば0.2W/(m・K)〜0.7W/(m・K)程度に設定することができる。図1及び図2に示されるように、回路基板12は、支持部材としてのフレーム14によって支持されている。
【0015】
フレーム14は、略方形状を呈する枠体14a内に、複数の梁部材14bが格子状に配列されて構成されている。フレーム14は、例えばAlやMgによって構成されている。フレーム14の熱伝導率は、回路基板12の熱伝導率よりも高くなっており、例えば120W/(m・K)〜160W/(m・K)程度に設定することができる。図1及び図2に示されるように、フレーム14は、筐体18の内部に配置され、複数のボルト16によって筐体18に固定されている。
【0016】
ここで、回路基板12には、図1及び図2に示されるように、シールド20がボルト22によって取り付けられている。シールド20は、例えばAlによって構成されている。シールド20の熱伝導率は、回路基板12の熱伝導率よりも高くなっており、例えば160W/(m・K)〜200W/(m・K)程度に設定することができる。シールド20は、図2において詳しく示されるように、第1部分20a及び第1部分20aから回路基板12に向けて延びる一対の第2部分20bを有しており、側方から見て略コ字形状(略C字形状)を呈している。本実施形態においては、電子部品10が一対の第2部分20bの間に位置するように、シールド20が回路基板12に設けられている。
【0017】
シールド20は、放射線遮蔽効果を有している。ここで、「放射線遮蔽効果がある」とは、シールド20がある場合に電子部品10に照射される放射線量が、許容上限量以下(例えば、シールド20がない場合に電子部品10に照射される放射線量の65%以下)となることをいう。本実施形態においては、電子部品10の第1部分20aの厚みt及び第2部分20bの厚みtを共に5mmに設定しており、この場合、シールド20がある場合に電子部品10に照射される放射線量が、シールド20がない場合に電子部品10に照射される放射線量の60%程度となっている。
【0018】
シールド20の第1部分20aは、接着剤24によって電子部品10の回路基板12に対向する面とは反対側の面Sと接続されている。接着剤24の熱伝導率は、回路基板12の熱伝導率よりも高くなっており、例えば1.1W/(m・K)〜1.4W/(m・K)程度に設定することができる。具体的には、接着剤24として、熱伝導率が1.4W/(m・K)程度であるスタイキャスト2850FT(日本エイブルスティック株式会社エマーソン&カミングカンパニー製)を用いることができる。
【0019】
ボルト22は、図2に示されるように、第2部分20b及び回路基板12を貫通し、フレーム14に達している。ボルト22の熱伝導率は、回路基板12の熱伝導率よりも大きくなっており、例えば16.0W/(m・K)〜120W/(m・K)程度に設定することができる。具体的には、ボルト22として、熱伝導率が16.0W/(m・K)程度であるステンレス製のものや、熱伝導率が120W/(m・K)程度であるアルミ製のものを用いることができる。従って、ボルト22は、自身を介してフレーム14とシールド20とを熱的に接続するものとなっている。
【0020】
以上のような本実施形態においては、電子部品10の面Sとシールド20とが接着剤24によって接続され、シールド20とフレーム14とがボルト22によって熱的に接続されている。すなわち、接着剤24、シールド20、ボルト22及びフレーム14によって、電子部品10の放熱構造が構成されている。そのため、電子部品1の動作に伴い電子部品1に発生した熱が、接着剤24、シールド20及びボルト22を介して、回路基板12よりも熱伝導率が高くなっているフレーム14に移動し、さらにフレーム14から直接又は筐体18を介して周囲環境に放熱される。その結果、熱が回路基板12に籠ることなく、電子部品1に発生する熱を効率よく放散させることが可能となっている。この効果は、熱伝達が行われない宇宙空間において電子部品10を動作させるような場合に、特に顕著となる。
【0021】
また、本実施形態においては、ボルト22が、回路基板12を貫通して、フレーム14とシールド20とを接続している。そのため、シールド20からフレーム14への放熱と、シールド20及びフレーム14の接続とが、ボルト22によって簡便に実現される。
【0022】
また、本実施形態においては、ボルト22が、シールド20の第2部分20bを貫通している。そのため、シールド20とボルト22との接触面積が増大するので、熱がシールド20からボルト22へと移動しやすくなっている。
【0023】
また、本実施形態においては、電子部品10の面Sとシールド20の第1部材20aとが接着剤24によって接続されている。そのため、電子部品10とシールド20とを機械的に接続した場合と比較して、外部から与えられる振動に対する電子部品10への影響を低減することが可能となっている。
【0024】
また、本実施形態においては、シールド20が、放射線の遮蔽機能と熱伝導機能とを有しているので、これらの機能をそれぞれ異なる部材で実現した場合と比較して、部品点数を削減することが可能となっていると共に電子部品10の放熱構造のコンパクト化が可能となっている。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態ではシールド20が第1部分20a及び第2部分20bを有していたが、少なくとも電子部品10の面Sを覆うと共にシールド20による放射線遮蔽効果が得られるのであれば、シールド20が第1部分20aのみを有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る電子部品の放熱構造を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10…電子部品、12…回路基板、14…フレーム、20…シールド、22…ボルト、24…接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の動作に伴い前記電子部品に発生する熱を放散させるための電子部品の放熱構造であって、
前記電子部品が搭載された回路基板と、
前記回路基板よりも熱伝導率が高くなっていると共に前記回路基板を支持する支持部材と、
前記回路基板よりも熱伝導率が高くなっており、少なくとも前記電子部品の前記回路基板と対向する面とは反対側の面を覆うと共に、放射線遮蔽効果を有するシールドと、
前記回路基板よりも熱伝導率が高くなっていると共に前記電子部品の前記回路基板と対向する面とは反対側の面と前記シールドとを接続する第1熱伝導部材と、
前記回路基板よりも熱伝導率が高くなっていると共に前記支持部材と前記シールドとを熱的に接続する第2熱伝導部材とを備えることを特徴とする電子部品の放熱構造。
【請求項2】
前記第2熱伝導部材は、前記回路基板を貫通して前記支持部材と前記シールドとを接続するボルトであることを特徴とする請求項1に記載された電子部品の放熱構造。
【請求項3】
前記シールドは、前記電子部品の前記回路基板と対向する面とは反対側の面を覆う第1部分と、前記電子部品を間に位置させるように前記第1部分から前記回路基板に向けて延びる一対の第2部分とを有し、
前記ボルトは、前記一対の第2部分をそれぞれ貫通していることを特徴とする請求項2に記載された電子部品の放熱構造。
【請求項4】
前記第1熱伝導部材は、接着剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載された電子部品の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−282998(P2008−282998A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126018(P2007−126018)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】