説明

電子部品の製造方法、電子部品、および電子装置の製造方法および電子装置

【課題】 本発明の課題は、基板と基板がそれぞれ備える端子間の電気的な接続を安定的に行うことができ、さらに生産性に優れる、これら基板と基板が接合された基板/基板接合体を得ることができる電子部品の製造方法および電子部品を提供することにある。
【解決手段】 上記課題は、第1の基板/第2の基板積層体を加熱することにより、金属箔を溶融し、第1の基板の第1の端子と前記第2の基板の第2の端子との間に金属箔を凝集させた後、固化させることにより接合部を形成するとともに、前記第1の端子、第2の端子並びに接合部の周縁に樹脂組成物からなる補強部を形成させることにより達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法、電子部品、および電子装置の製造方法および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高機能化要求に伴い、基板と基板を電気的に接続する高密度実装技術の開発が進められている。そのような実装技術の一つとして、リジッド基板とフレキシブル基板を電気的に接続する電子部品が提案されている。この電子部品は、微細な接続部を有するリジッド基板とフレキシブル基板を接続する必要があるため、半田付けによりその接続を実施すると、隣接接続部間で半田がブリッジしてしまい、ショート不良を発生する場合があった。
【0003】
このような電子部品を製造する上での問題点を改善するために、リジッド基板とフレキシブル基板とを、これらの間に異方性導電フィルム(ACF)を介在させた状態で、リジッド基板と、フレキシブル基板とを熱圧着することにより、電気的な接続と接着を行うことが提案されている(特許文献1)。
【0004】
このようなACFを用いたリジッド基板と、フレキシブル基板との接続では、ACF中に含まれる金属粒子と接続部が互いに接触すること、すなわち金属粒子間の点接触により、接続部間の電気的な接続が確保されている。
【0005】
このような状態で、電子部品を駆動すると、リジッド基板/フレキシブル基板接合体から発生する熱や外気温変動により、ACFに含まれる樹脂成分が膨張/収縮することとなる。その結果、接続部間の距離が変動し、場合によっては金属粒子と接続部が非接触な状態となり、接続部間の抵抗値が変動、もしくは導通しなくなる。このようなことから、ACFを用いたリジッド基板と、フレキシブル基板の接続では、接続部間で安定的な導通が得られないという場合があった。
一方、半田ペーストの印刷によりリジッド基板/フレキシブル基板の端子間を電気的に接続する場合、半田により端子間が接続されるが、リジッド基板/フレキシブル基板間の空隙をアンダーフィル材料等で充填しない場合、リジッド基板およびフレキシブル基板間の線膨張係数の違いにより、リジッド基板/フレキシブル基板接合体から発生する熱や外気温変動により、半田で接合された部分に応力がかかり、半田に亀裂が入ったり、端子と半田界面で剥離が発生してリジッド基板/フレキシブル基板間で導通しなくなり、信頼性が低下する場合があった。また、リジッド基板/フレキシブル基板間の空隙をアンダーフィル材料等で充填しない場合、落下などによる衝撃により信頼性が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−268378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、基板と基板がそれぞれ備える接合部同士間の電気的な接続を安定的に行うことができ、さらに生産性に優れる、これら基板と基板が接合された基板/基板接合体を得ることができる電子部品の製造方法および電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(7)に記載の本発明により達成される。
(1)第1の基板と第2の基板とを積層して電気的に接続する電子部品の製造方法であって、第1の基板および第2の基板をそれぞれ用意する第1の工程と、前記第1の基板と、前記第2の基板との間に、樹脂組成物と、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される積層構造を有する導電接続材料を介在させるとともに、前記第1の基板の第1の端子と、前記第2の基板の第2の端子とが対応するように位置決めして、前記第1の基板と第2の基板とが積層された第1の基板/第2の基板積層体を得る第2の工程と、前記第1の基板/第2の基板積層体を加熱することにより、前記金属箔を溶融し、前記第1の基板の第1の端子と前記第2の基板の第2の端子との間に金属箔を凝集させた後、固化させることにより接合部を形成するとともに前記第1の端子、第2の端子並びに接合部の周縁に前記樹脂組成物からなる補強部を形成させる第3の工程と、前記補強部を硬化または凝固させ、前記金属箔が溶融した凝集物の固化物で、前記第1の基板の第1の端子と前記第2の基板の第2の端子とが電気的に接続された、第1の基板/第2の基板接合体を得る第4の工程と、を有することを特徴とする電子部品の製造方法、
(2)前記第1の基板/第2の基板接合体の間隙の断面積をS1、前記補強部の断面積をS2とした場合、S2/S1=0.1〜0.9の関係を満たす(1)に記載の電子部品の製造方法、
(3)前記樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含む、(1)または(2)に記載の電子部品の製造方法、
(4)前記樹脂組成物がフラックス機能を有する化合物を含む、(1)ないし(3)のいずれかに記載の電子部品の製造方法、
(5)前記導電接続材料が、樹脂組成物層/金属箔層/樹脂組成物層からなる積層構造を含む、(1)ないし(4)のいずれかに記載の電子部品の製造方法、
(6)前記導電接続材料が、樹脂組成物層/金属箔層からなる積層構造を含む、(1)ないし(5)のいずれかに記載の電子部品の製造方法、
(7)(1)ないし(6)のいずれかに記載の電子部品の製造方法で製造されたことを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板と基板がそれぞれ備える接合部同士間の電気的な接続を安定的に行うことができ、さらに生産性に優れる、これら基板と基板が接合された基板/基板接合体を得ることができる電子部品の製造方法および電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電子部品の製造方法により製造される電子部品の一例を示す縦断面図である。
【図2】リジッド基板とフレキシブル基板を接合する第1実施形態および第2実施形態を説明するための縦断面図である。
【図3】リジッド基板/フレキシブル基板接合体の補強部の評価方法を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電子部品の製造方法および電子部品を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明の電子部品の製造方法を説明するのに先立って、本発明の電子部品の製造方法により製造された電子部品について説明する。
【0013】
<電子部品>
図1は、本発明の電子部品の製造方法により製造される電子部品の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0014】
図1に示す電子部品10は、リジッド基板20とフレキシブル基板30を電気的に接続および接着した電子部品であり、リジッド基板20と、フレキシブル基板30と、半導体部品40とを有している。半導体部品40とリジッド基板20は、バンプ50を介して電気的に接続されている。また、バンプ50の周辺は、バンプ50を保護する目的で封止材60により封止されている。さらに、リジッド基板20とフレキシブル基板30は、リジッド基板が有する端子21とフレキシブル基板30が有する端子31とが接合部225により電気的に接続されており、さらに、補強部226により、端子と接合部225を外部応力から保護することができるとともに、隣接端子間の絶縁性を保つことができる。
【0015】
リジッド基板20は、絶縁基板であり、例えば、エポキシ、シアネート、ビスマレイミドトリアジン(BTレジン)等の各種樹脂材料を繊維基材に含浸させた材料を主成分とする有機基板、セラミック基板等が挙げられる。このリジッド基板20の平面視形状は、通常、正方形、長方形等の四角形である。
【0016】
リジッド基板20の上面(一方の面)には、例えば、銅等の導電性金属材料で構成される配線パターン(図示しない)が、所定形状で設けられている。
【0017】
フレキシブル基板30は、絶縁基板であり、ポリイミド、ポリエステル等の各種樹脂材料を主成分として構成されており、屈曲性を有する基板である。
【0018】
フレキシブル基板30の下面(一方の面)には、例えば、銅等の導電性金属材料で構成される配線パターン(図示しない)が、所定形状で設けられている。
ここでは、基板にフレキシブル基板を例示しているが、基板としてはリジッド基板、有機基板、セラミック基板、半導体ウエハ、半導体チップ、コンデンサーや抵抗チップなどを使用してもよい。
【0019】
また、特に限定されるわけではないが、リジッド基板20上には、半導体部品40が搭載されており、リジッド基板20と半導体部品40とは、バンプ50を介して電気的に接続されている。また、リジッド基板20と半導体部品40の間隙は、必要に応じて、封止材60により封止されている。これにより、半導体部品40の回路面の表面を保護とバンプ50のクラックを防止することができる
【0020】
このバンプ50は、例えば、半田、銀ろう、銅ろう、燐銅ろうのようなろう材を主材料として構成されている。
【0021】
以下、本発明に係る導電接続材料について説明する。
<導電接続材料>
本発明に係る導電接続材料は、樹脂成分およびフラックス機能を有する化合物を含有する樹脂組成物と、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される。その形態は、樹脂組成物層と金属箔層とからなる多層構造を有する積層体であり、樹脂組成物層および金属箔層は各々一層であっても複数層であってもよい。導電接続材料の積層構造は特に制限なく、樹脂組成物層と金属箔層との二層構造(樹脂組成物層/金属箔層)でもよいし、樹脂組成物層あるいは金属箔層の何れかまたは両方を複数含む三層構造またはそれ以上の多層構造でもよい。なお、樹脂組成物層又は金属箔層を複数用いる場合、各層の組成は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0022】
本発明に係る導電接続材料の一実施形態では、金属箔の表面酸化膜を、フラックス機能を有する化合物で還元する観点から、金属箔層の上下層は樹脂組成物層であることが好ましい。例えば、三層構造(樹脂組成物層/金属箔層/樹脂組成物層)が好ましい。この場合、金属箔層の両側にある樹脂組成物層の厚みは、同一でもよく、異なっていてもよい。樹脂組成物層の厚みは、接続しようとする電極の導体厚みなどによって適宜調整すればよい。
【0023】
以下、本発明に係る導電接続材料を構成する樹脂組成物および金属箔層についてより具体的に述べる。
【0024】
(1)樹脂組成物層
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成分およびフラックス機能を有する化合物を含有する樹脂組成物で構成される。樹脂組成物は、常温で液状、固形状のいずれの形態も使用することができる。本発明において、「常温で液状」とは常温(25℃)で一定の形態を持たない状態を意味し、ペースト状もこれに含まれる。
【0025】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂成分およびフラックス機能を有する化合物を含有するものであれば、特に制限はなく、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂組成物を用いることができる。硬化性樹脂組成物としては、加熱により硬化する硬化性樹脂組成物、化学線を照射することにより硬化する硬化性樹脂組成物などが挙げられる。中でも、硬化後の線膨張率や弾性率等の機械特性に優れるという点で、加熱により硬化する硬化性樹脂組成物が好ましい。
熱可塑性樹脂組成物は、所定の温度に加熱することにより、成形が可能な程度に柔軟性を有するものであれば、特に制限されない。
【0026】
(a)硬化性樹脂組成物
本発明に係る樹脂組成物として好ましく用いられる硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂成分およびフラックス機能を有する化合物を含有し、加熱することにより溶融し硬化するものであれば特に制限されない。
【0027】
本発明の一実施態様では、リジッド基板20と対向するフレキシブル基板30の間に本発明の導電接続材料を配置し、該導電接続材料を加熱することによって、フラックス機能を有する化合物の作用で金属箔の表面酸化膜が除去されて金属の濡れ性が高められる。これにより溶融した半田又は錫が硬化性樹脂成分中を移動して、リジッド基板20の端子21(第1の端子)とフレキシブル基板30の端子31(第2の端子)間に凝集して接合部225を形成することができる。他方、硬化性樹脂成分は端子21、端子31並びに接合部225の周縁に補強部226を形成することができる。
第1の端子21および第2の端子31間が半田又は錫を介して電気的に接続された後は、必要に応じて硬化性樹脂成分を硬化させることにより導通を確保することができる。また、端子21、端子31並びに接合部225を外部応力から保護するとともに、隣接する端子間の絶縁性を確保することができる。
【0028】
(i)硬化性樹脂成分
本発明に係る硬化性樹脂成分は、通常、半導体装置製造用の接着剤成分として使用できるものであれば特に限定されない。このような硬化性樹脂成分としては、特に制限されないが、前記金属箔の融点以上の温度において硬化するものであることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体樹脂)、ビスマレイミド−トリアジン樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹
脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。中でも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるという観点からエポキシ樹脂が好ましい。また、これらの硬化性樹脂成分は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明に係る硬化性樹脂成分の形態は、硬化性樹脂組成物の形態などに応じて適宜選択することができる。液状の硬化性樹脂組成物を使用する場合には、液状の硬化性樹脂成分を用いることが好ましく、必要に応じて後述するフィルム形成性樹脂成分を併用してもよい。また、固形状の硬化性樹脂組成物を使用する場合には、液状および固形状のいずれの硬化性樹脂成分も用いることができ、フィルム形成性樹脂成分を併用することが好ま
しい。
【0030】
本発明においては、前記エポキシ樹脂として、室温で液状および室温で固形状のいずれのエポキシ樹脂も使用することができる。また、室温で液状のエポキシ樹脂と室温で固形状のエポキシ樹脂とを併用することも可能である。硬化性樹脂組成物が液状の場合には、室温で液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、硬化性樹脂組成物が固形状の場合には、液状および固形状のいずれのエポキシ樹脂も使用することが可能であり、フィルム形
【0031】
本発明に係る室温(25℃)で液状のエポキシ樹脂としては、特に制限はないが
、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを併用してもよい。
【0032】
室温で液状のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜300g/eqであることが好ましく、160〜250g/eqであることがより好ましく、170〜220g/eqであることが特に好ましい。前記エポキシ当量が上記下限未満になると硬化物の収縮率が大きくなる傾向があり、反りが生じることがある。他方、前記上限を超えると、フィルム形成性樹脂成分を併用した場合に、フィルム形成性樹脂成分、特にポリイミド樹脂との反応性が低下する傾向にある。
【0033】
本発明に係る室温(25℃)で固形状のエポキシ樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、4官能エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、固形3官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。室温で固形状のエポキシ樹脂の軟化点は、40〜120℃であることが好ましく、50〜110℃であることがより好ましく、60〜100℃であることが特に好ましい。前記軟化点が前記範囲内にあると、タック性を抑えることができ、容易に取り扱うことが可能となる。
【0034】
本発明においては、このような硬化性樹脂成分としての市販品を使用することができ、さらに、本発明の効果を損ねない範囲で、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、無機フィラー、帯電防止剤や顔料などの各種添加剤を配合したものを使用することもできる。
【0035】
本発明に係る導電接続材料において、前記硬化性樹脂成分の含有量は硬化性樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、硬化性樹脂組成物が液状の場合、硬化性樹脂成分の含有量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20
重量%以上がさらに好ましく、25重量%以上がさらにより好ましく、30重量%以上がなお好ましく、35重量%以上が特に好ましい。また、100重量%未満が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下がさらにより好ましく、65重量%以下がなお好ましく、55重量%以下が特に好ましい。
硬化性樹脂組成物が固形状の場合は、硬化性樹脂成分の含有量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上が特に好ましい。また、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下がさらにより好ましく、65重量%以下がなお好ましく、55重量%以下が特に好ましい。
硬化性樹脂成分の含有量が前記範囲内にあると端子間の電気的接続強度及び機械的接着強度を十分に確保することができる。
【0036】
(ii)フィルム形成性樹脂成分
本発明において、固形状の硬化性樹脂組成物を使用する場合には、前記硬化性樹脂成分とフィルム形成性樹脂成分とを併用することが好ましい。このようなフィルム形成性樹脂成分としては、有機溶媒に可溶であり、単独で製膜性を有するものであれば特に制限はない。熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれのものも使用することができ、また、これらを併用することもできる。具体的なフィルム形成性樹脂成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロンなどが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂が好ましい。また、これらのフィルム形成性樹脂成分は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル酸およびその誘導体の重合体、または(メタ)アクリル酸およびその誘導体と他の単量体との共重合体を意味する。ここで、「(メタ)アクリル酸」などと表記するときは、「アクリル酸またはメタクリル酸」などを意味する。
【0038】
前記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2−エチルヘキシルなどのポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチルなどのポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−α−メチルスチレン共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−
N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体などが挙げられる。中でも、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。また、これらの(メタ)アクリル系樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
このような(メタ)アクリル系樹脂のうち、リジッド基板20またはフレキシブル基板30への密着性および他の樹脂成分との相溶性を向上させることができるという観点から、ニトリル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基などの官能基を有する単量体を共重合させてなる(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。このような(メタ)アクリル系樹脂において、前記官能基を有する単量体の配合量は特に限定されないが、(メタ)アクリル系樹脂合成時の全単量体100mol%に対して0.1〜50mol%であることが好ましく、0.5〜45mol%であることがより好ましく、1〜40mol%であることが特に好ましい。前記官能基を有する単量体の配合量が前記下限値未満になると密着性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると粘着力が強すぎて作業性が十分に向上しない傾向にある。
【0040】
前記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、10万以上であることが好ましく、15万〜100万であることがより好ましく、25万〜90万であることが特に好ましい。前記重量平均分子量が前記範囲内にあると製膜性を向上させることが可能となる。
【0041】
本発明においてフィルム形成性樹脂成分としてフェノキシ樹脂を用いる場合、その数平均分子量は、5000〜15000であることが好ましく、6000〜14000であることがより好ましく、8000〜12000であることが特に好ましい。このようなフェノキシ樹脂を用いることにより、硬化前の導電接続材料の流動性を抑制することができる。
【0042】
前記フェノキシ樹脂の骨格は、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、ビフェニルタイプなどが挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。
【0043】
本発明に用いられるポリイミド樹脂としては、繰り返し単位中にイミド結合を持つ樹脂であれば特に限定されず、例えば、ジアミンと酸二無水物を反応させ、得られたポリアミド酸を加熱、脱水閉環することにより得られるものが挙げられる。
【0044】
前記ジアミンとしては、例えば、3,3’−ジメチル−4,4’ジアミノジフェニル、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)―1,1,3,3―テトラメチルジシロキサンなどのシロキサンジアミンが挙げられる。これらのジアミンは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
また、前記酸二無水物としては、3,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。これらの酸二無水物は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明に用いられるポリイミド樹脂は、溶剤に可溶なものでも、不溶なものでもよいが、他の成分と混合する際のワニス化が容易であり、取扱性に優れている点で溶剤可溶性のものが好ましい。特に、様々な有機溶媒に溶解できる点でシロキサン変性ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、特に制限されないが、例えば、6−ナイロン、
12−ナイロン等環状脂肪族ラクタムを開環重合したもの、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させたもの、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させたもの、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とを縮重合させたもの、アミノ酸を縮重合させたもの等が挙げられる。
【0048】
本発明で用いられるポリアミド樹脂の分子量は、特に制限されないが、例えば、5000〜100000が好ましく、8000〜50000が特に好ましい。分子量が上記範囲以下であると、成形性は良好であるがフィルムの機械強度が弱く、上記範囲以上であると粘度が高くなり、それにより半田又は錫の動きが阻害され導通不良となる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、溶剤に可溶なものでも、不溶なものでもよいが、他の成分と混合する際のワニス化が容易であり、取扱性に優れている点で溶剤可溶性のものがより好ましい。
【0049】
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、特に制限されないが、酸成分としてテレフタル酸等の2価の酸またはエステル形成能を持つそれらの誘導体を用い、グリコール成分として炭素数2〜10のグリコール、その他の2価のアルコールまたはエステル形成能を有するそれらの誘導体等を用いて得られる飽和ポリエステル樹脂をいう。
【0050】
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂等のポリアルキレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0051】
前記ポリエステル樹脂は、必要に応じて他の成分を共重合したポリエステル樹脂でも良い。前記共重合する成分としては、特に制限はないが、例えば、公知の酸成分、アルコール成分、フェノール成分またはエステル形成能を持つこれらの誘導体、ポリアルキレングリコール成分等が挙げられる。
【0052】
前記共重合可能な酸成分としては、例えば、2価以上の炭素数8〜22の芳香族カルボン酸、2価以上の炭素数4〜12の脂肪族カルボン酸、さらには、2価以上の炭素数8〜15の脂環式カルボン酸、およびエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。前記共重合可能な酸成分の具体例としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボジフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4−4‘−ジフェニルカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸およびエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0053】
前記共重合可能なアルコールおよび/またはフェノール成分としては、例えば、2価以上の炭素数2〜15の脂肪族アルコール、2価以上の炭素数6〜20の脂環式アルコール、炭素数6〜40の2価以上の芳香族アルコールまたは、フェノールおよびエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。前記共重合可能なアルコールおよび/またはフェノール成分の具体例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、2,2‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール、などの化合物、およびエステル形成能を有するこれらの誘導体、ε−カプロラクトン等の環状エステルが挙げられる。
【0054】
前記共重合可能なポリアルキレングリコール成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよび、これらのランダムまたはブロック共重合体、ビスフェノール化合物のアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびこれらのランダムまたはブロック共重合体等)付加物等の変性ポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0055】
本発明においては、このようなフィルム形成性樹脂成分として市販品を使用することができ、さらに、本発明の効果を損ねない範囲で、可塑剤、安定剤、無機フィラー、酸化防止剤、帯電防止剤や顔料などの各種添加剤を配合したものを使用することもできる。
【0056】
本発明に係る導電接続材料において、前記フィルム形成性樹脂成分の含有量は、使用する硬化性樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、固形状の硬化性樹脂組成物の場合には、フィルム形成性樹脂成分の含有量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることが特に好ましい。また、50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましく、40重量%以下であることが特に好ましい。フィルム形成性樹脂成分の含有量が前記範囲内にあると溶融前の硬化性樹脂組成物の流動性を抑制することができ、導電接続材料を容易に取り扱うことが可能となる。
【0057】
(iii)フラックス機能を有する化合物
本発明に係るフラックス機能を有する化合物は、金属箔の表面酸化膜を還元する作用を有するものである。このようなフラックス機能を有する化合物としては、フェノール性水酸基および/またはカルボキシル基を有する化合物が好ましい。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、カテコール、p−tert−アミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノールなどのフェノール性水酸基を含有するモノマー類、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールFノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのフェノール製水酸基を含有する樹脂が挙げられる。
【0058】
カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸などが挙げられる。前記脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物などが挙げられる。前記脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などが挙げられる。前記芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテートなどが挙げられる。
【0059】
前記脂肪族カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ピメリン酸などが挙げられる。中でも、下記式(1):
HOOC−(CH−COOH (1)
(式(1)中、nは1〜20の整数である。)
で表される脂肪族カルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸がより好ましい。
【0060】
芳香族カルボン酸の構造は特に制限されないが、下記式(2)又は(3)で表される化合物が好ましい。
【化1】

[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜Rの少なくとも一つは水酸基である。]
【化2】

[式中、R〜R20は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、R〜R20の少なくとも一つは水酸基又はカルボキシル基である。]
【0061】
前記芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレートニ酸、ピロメリット酸、メリット酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニ
チル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフ
トエ酸、3,5−2−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;ジフェノール酸などが挙げられる。
【0062】
このようなフラックス機能を有する化合物のうち、硬化性樹脂成分の硬化剤として作用する化合物、すなわち、金属箔と端子とを電気的に接続できる程度に、金属箔および端子の表面酸化膜を還元する作用を示し、且つ、硬化性樹脂成分と反応可能な官能基を有する化合物がより好ましい。前記官能基は、硬化性樹脂成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化性樹脂成分がエポキシ樹脂の場合には、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などのエポキシ基と反応可能な官能基が挙げられる。このようなフラックス機能を有する化合物は導電接続材料の溶融時には金属箔の表面酸化膜を還元して金属箔の表面の濡れ性を高め、接合部を容易に形成し、端子間を電気的に接続することが可能となる。また、端子間の電気的な接続が完了した後においては、この化合物は硬化剤として作用し、硬化性樹脂成分に付加して樹脂の弾性率またはTgを高められる。したがって、このようなフラックス機能を有する化合物をフラックスとして用いるとフラックス洗浄が不要であり、また、フラックスの残存に起因するイオンマイグレーションの発生を抑制することが可能となる。
【0063】
このような作用を有するフラックス機能を有する化合物としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。例えば、硬化性樹脂成分がエポキシ樹脂の場合には、脂肪族ジカルボン酸およびカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物などが挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はないが、脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が2個結合した化合物が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和の非環式であってもよいし、飽和または不飽和の環式であってもよい。また、脂肪族炭化水素基が非環式の場合には直鎖状でも分岐状でもよい。
【0064】
このような脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、前記式(1)においてnが1〜20の整数である化合物が挙げられる。前記式(1)中のnが前記範囲内にあると、フラックス活性、接着時のアウトガスおよび導電接続材料の硬化後の弾性率およびガラス転移温度のバランスが良好となる。特に、導電接続材料の硬化後の弾性率の増加を抑制し、リジッド基板20、フレキシブル基板30との接着性を向上させることができるという観点から、nは3以上であることが好ましく、弾性率の低下を抑制し、接続信頼性をさらに向上させることができるという観点から、nは10以下であることが好ましい。
【0065】
前記式(1)で示される脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸などが挙げられる。中でも、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデンカン二酸が好ましく、セバシン酸が特に好ましい。
【0066】
前記カルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物としては、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)などの安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;ジフェノール酸などが挙げられる。中でも、フェノールフタリン、ゲンチジン酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸が好ましく、フェノールフタリン、ゲンチジン酸が特に好ましい。
【0067】
本発明に係るフラックス機能を有する化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用
してもよい。また、いずれの化合物も吸湿しやすく、ボイド発生の原因となるため、本発明においては、使用前に予め乾燥させることが好ましい。
【0068】
本発明に係る導電接続材料において、前記フラックス機能を有する化合物の含有量は、使用する硬化性樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、硬化性樹脂組成物が液状の場合、フラックス機能を有する化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、1重量%以上が好ましく、2重量部%以上がより好ましく、3重量%以上が特に好ましい。また、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、25重量%以下が特に好ましい。
固形状の樹脂組成物の場合には、フラックス機能を有する化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上が特に好ましい。また、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、25重量%以下が特に好ましい。
フラックス機能を有する化合物の含有量が上記範囲内であると、金属箔及び端子の表面酸化膜を電気的に接合できる程度に除去することができる。さらに、硬化時に、樹脂に効率よく付加して樹脂の弾性率又はTgを高めることができる。また、未反応のフラックス機能を有する化合物に起因するイオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0069】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含むものであることが好ましい。硬化促進剤を添加することによって、前記溶融粘度と前記絶縁抵抗値を有する硬化性樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0070】
このような硬化促進剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒ
【0071】
これらの中でも、硬化性樹脂組成物の硬化が完了する前に半田又は錫が端子の表面に移動することができ、端子間を良好に接続できるという観点から、融点が150℃以上のイミダゾール化合物が好ましい。このような融点が150℃以上のイミダゾールとしては、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。また、本発明においては、このような硬化促進剤を1種単独で用
いても、2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明に係る導電接続材料において、前記硬化促進剤の含有量は、使用する硬化促進剤の種類に応じて適宜設定することができる。
例えば、イミダゾール化合物を使用する場合には、イミダゾール化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、0.001重量%以上が好ましく、0.003重量%以上がより好ましく、0.005重量%以上が特に好ましい。また、1.0重量%以下が好ましく、0.7重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下が特に好ましい。イミダゾール化合物の含有量が前記下限未満になると硬化促進剤としての作用が十分に発揮されず、硬化性樹脂組成物を十分に硬化できない場合がある。他方、イミダゾール化合物の含有量が前記上限を超えると、硬化性樹脂組成物の硬化が完了する前に半田又は錫が端子表面に十分に移動せず、絶縁性領域に半田又は錫が残り絶縁性が十分に確保できない場合がある。また、導電接続材料の保存安定性が低下する場合がある。
【0073】
(iv)その他の添加剤
本発明に係る硬化性樹脂組成物には、硬化剤(フラックスとして作用するものを除く)、シランカップリング剤、可塑剤、安定剤、粘着付与剤、滑剤、酸化防止剤、充填剤、帯電防止剤や顔料等の添加剤がさらに含まれていてもよい。
【0074】
フラックス機能を有する化合物以外の硬化剤としては、フェノール類、アミン類、チオール類などが挙げられる。このような硬化剤は、硬化性樹脂成分の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂との良好な反応性、硬化時の低寸法変化および硬化後の適切な物性(例えば、耐熱性、耐湿性など)が得られる点で硬化剤としてフェノール類を用いることが好ましく、硬化性樹脂成分の硬化後の物性が優れている点で2官能以上のフェノール類がより好ましい。また、このような硬化剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
このようなフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリスフェノール、テトラキスフェノール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などが挙げられる。中でも、溶融粘度、エポキシ樹脂との反応性が良好であり、硬化後の物性が優れている点でフェノールノボラック樹脂およびクレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0076】
本発明に係る導電接続材料において、前記硬化剤の配合量は、使用する硬化性樹脂成分や硬化剤の種類、およびフラックス機能を有する化合物が硬化剤として機能する官能基を有する場合、その官能基の種類や使用量によって適宜選択することができる。例えば、フェノールノボラック樹脂を使用する場合、その配合量は、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることが特に好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが特に好ましい。フェノールノボラック樹脂の配合量が前記下限未満になると硬化性樹脂成分が十分に硬化しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応のフェノールノボラック樹脂が残存してイオンマイグレーションが発生しやすい傾向にある。
【0077】
また、硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂を用いた場合には、フェノールノボラック樹脂の配合量はエポキシ樹脂に対する当量比で規定してもよい。例えば、エポキシ樹脂に対するフェノールノボラック樹脂の当量比は0.5〜1.2であることが好ましく、0.6〜1.1であることがより好ましく、0.7〜0.98であることが特に好ましい。前記
当量比が前記下限未満になると、エポキシ樹脂の硬化後の耐熱性、耐湿性が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応のフェノールノボラック樹脂が残存し、イオンマイグレーションが発生しやすい傾向にある。
【0078】
前記シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤などが挙げられる。このようなシランカップリング剤を添加することにより、リジッド基板20またはフレキシブル基板30と導電接続材料との密着性を高めることができる。また、このようなシランカップリング剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
本発明に係る導電接続材料において、前記シランカップリング剤の配合量は、リジッド基板20またはフレキシブル基板30の界面や硬化性樹脂成分などの種類に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化性樹脂組成物の全重量に対して、0.01重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、0.1重量%以上であることが特に好ましく、また、2重量%以下であることが好ましく、1.5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
【0080】
本発明において、前記硬化性樹脂組成物は、上記各成分を混合・分散させることによって調製することができる。各成分の混合方法や分散方法は特に限定されず、従来公知の方法で混合、分散させることができる。
【0081】
また、本発明においては、前記各成分を溶媒中でまたは無溶媒下で混合して液状の硬化性樹脂組成物を調製してもよい。このとき用いられる溶媒としては、各成分に対して不活性なものであれば特に限定はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)などのケトン類;ベンゼン、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ニ塩基酸エステル(DBE)、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。また、溶媒の使用量は、溶媒に混合した成分の固形分濃度が10〜80重量%となる量であることが好ましい。
【0082】
(b)熱可塑性樹脂組成物
本発明においては、樹脂組成物として熱可塑性樹脂組成物を用いることもできる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂成分およびフラックス機能を有する化合物を含有し、所定温度により軟化するものであれば特に制限されない。
【0083】
(i)熱可塑性樹脂成分
前記熱可塑性樹脂成分としては、特に制限されないが、例えば、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、イソブチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブ
チラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。該熱可塑性樹脂成分は、単一の重合体でもよく、上記熱可塑樹脂成分の少なくとも2種以上の共重合体でもよい。
【0084】
前記熱可塑性樹脂成分の軟化点は、特に制限されないが、導電接続材料を構成する前記金属箔の融点より10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことが特に好ましく、さらに、30℃以上低いことがより好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂成分の分解温度は、特に制限されないが、導電接続材料を構成する金属箔の融点よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことが特に好ましく、さらに、30℃以上高いことがより好ましい。
【0085】
前記熱可塑性樹脂の含有量は使用する熱可塑性樹脂組成物の形態に応じて適宜設定することができる。
例えば、熱可塑性樹脂組成物が液状の場合、熱可塑性樹脂成分の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、25重量%以上がさらにより好ましく、30重量%以上がなお好ましく、35重量%以上が特に好ましい。また、100重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下がさらにより好ましく、65重量%以下がなお好ましく、55重量%以下が特に好ましい。
熱可塑性樹脂組成物が固形状の場合は、熱可塑性樹脂成分の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上が特に好ましい。また、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましく、75重量%以下がさらにより好ましく、65重量%以下がなお好ましく、55重量%以下が特に好ましい。
熱可塑性樹脂成分の含有量が上記の範囲内であると端子間の電気的接続強度及び機械的接着強度を十分に確保することができる。
【0086】
(ii)フラックス機能を有する化合物
フラックス機能を有する化合物は、前記「(a)硬化性樹脂組成物」において説明したものと同じものを用いることができる。好ましい化合物および配合量についても同様である。
【0087】
(iii)その他の添加剤
また、上記の熱可塑性樹脂成分に対し、本発明の効果を損ねない範囲でシランカップリング剤、可塑剤、安定剤、粘着付与剤、滑剤、酸化防止剤、充填剤、帯電防止剤や顔料などを配合してもよい。
【0088】
本発明に係る導電接続材料において樹脂組成物層の厚みは、特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。また、樹脂組成物層の厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。樹脂組成物層の厚みが前記範囲内にあると、接合部の周縁を十分に補強することができ、接合部を外部応力から保護することができるとともに、隣接端子間の絶縁性を確保することができる。
【0089】
本発明の導電接続材料が樹脂組成物層を複数含む場合、各樹脂組成物層の組成は同一で
もよいし、用いる樹脂成分の種類や配合処方の違いなどにより異なっていてもよい。樹脂組成物層の溶融粘度や軟化温度などの物性も同一でもよいし異なっていてもよい。例えば液状の樹脂組成物層と固形状の樹脂組成物層とを組み合わせて用いてもよい。
【0090】
(2)金属箔層
本発明において金属箔層は、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔で構成される層である。金属箔層は平面視で樹脂組成物層の少なくとも一部に形成されていればよく、樹脂組成物層の全面に形成されていてもよい。
【0091】
金属箔層の形状は特に制限されなく、一定の形状が繰り返しパターン状に形成されていてもよいし、形状が不規則であってもよい。規則的な形状と不規則な形状とが混在していてもよい。金属箔層の形状としては、例えば、点線の抜き模様状(a)、縞模様状(b)、水玉模様状(c)、矩形模様状(d)、チェッカー模様状(e)、額縁状(f)、格子模様状(g)又は多重の額縁状(h)などが挙げられる。これらの形状は一例であり、目的や用途に応じてこれらの形状を組み合わせたり、変形させて用いることができる。
【0092】
本発明の一実施態様において、接続しようとする端子がリジッド基板20およびフレキシブル基板30の接続面全体に配置されているようなフルグリッド型の被着体を接続する場合、樹脂組成物層の全面にシート状の金属箔を形成することが好ましい。
【0093】
また、接続しようとする端子がリジッド基板20およびフレキシブル基板30の接続面内で、端子密度の粗密が異なったり、偏在するような場合、金属箔を有効に利用する観点、および、隣接する端子間に金属箔を残存させないという観点から、樹脂組成物層の少なくとも一部に繰り返しパターン状の金属箔を形成することが好ましい。このとき、金属箔の形状は端子のピッチや形態等によって適宜選択することができる。
【0094】
本発明に使用する金属箔は、特に限定されず、錫(Sn)、鉛(Pb)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)および銅(Cu)からなる群から選択される少なくとも2種以上の金属の合金、または錫単体からなることが好ましい。
【0095】
このような合金のうち、溶融温度および機械的物性を考慮すると、Sn−Pbの合金、鉛フリー半田であるSn−Biの合金、Sn−Ag−Cuの合金、Sn−Inの合金、Sn−Agの合金などのSnを含む合金からなることがより好ましい。Sn−Pbの合金の場合、錫の含有率は、30重量%以上100重量%未満であることが好ましく、35重量%以上100重量%未満であることがより好ましく、40重量%以上が特に好ましい。また、100重量%未満であることが好ましい。また、鉛フリー半田の場合の錫の含有率は、15重量%以上100重量%未満であることが好ましく、20重量%以上100重量%未満であることがより好ましく、25重量%以上100重量%未満であることが特に好ましい。例えば、Sn−Pbの合金としては、Sn63−Pb(融点183℃)、鉛フリー半田としては、Sn−3.0Ag−0.5Cu(融点217℃)、Sn−3.5Ag(融点221℃)、Sn−58Bi(融点139℃)、Sn−9.0Zn(融点199℃)、Sn−3.5Ag−0.5Bi−3.0In(融点193℃)、Au−20Sn(融点280℃)、等が挙げられる。
【0096】
本発明においては、接続するリジッド基板20またはフレキシブル基板30の耐熱性に応じて適宜、所望の融点及び組成を有する金属箔を用いることができる。例えば、リジッド基板20またはフレキシブル基板30が熱履歴により損傷するのを防止するために、融点が330℃以下(より好ましくは300℃以下、特に好ましくは280℃以下、さらに
好ましくは260℃以下)である金属箔を用いることが好ましい。なお、金属箔の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0097】
前記金属箔の厚みは、対向するリジッド基板20およびフレキシブル基板30間のギャップ、隣接する端子間の離隔距離などに応じて適宜選択することができ、例えば、金属箔の厚みは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが特に好ましく、また、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。金属箔の厚みが前記下限未満になると金属箔不足により未接続の端子が増加する傾向にあり、他方、前記上限を超えると金属箔余剰により隣接端子間でブリッジを起こし、ショートしやすくなる傾向にある。
【0098】
金属箔の作製方法は、特に制限はないが、インゴットなどの塊から圧延により作製する方法、樹脂組成物層へ直接蒸着、スパッタ、めっきなどにより金属箔層を形成する方法などが挙げられる。また、繰り返しパターン状の金属箔の作製方法は、特に制限はないが、金属箔を所定のパターンに打抜く方法、エッチングなどにより所定のパターンを形成する方法、また、遮蔽板やマスクなどを使用することにより蒸着、スパッタ、めっきなどで形成する方法などが挙げられる。
【0099】
前記金属箔の含有量は、導電接続材料の全重量に対して、5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上が特に好ましい。また、100重量%未満が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下が特に好ましい。金属箔の含有量が上記下限未満になると半田又は錫不足により未接続の端子が増加する場合がある。他方、金属箔の含有量が上記上限を超えると半田又は錫余剰により隣接端子間でブリッジを起こしやすくなる。
【0100】
あるいは、金属箔の配合量を導電接続材料に対する体積比率で定義してもよい。例えば、金属箔の配合量は、導電接続材料に対して1体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがより好ましく、10体積%以上であることが特に好ましい。また、90体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましく、70体積%以下であることが特に好ましい。金属箔の配合量が前記下限未満になると金属箔不足により未接続の端子が増加する傾向にある。他方、前記上限を超えると金属箔余剰により隣接端子間でブリッジを起こしやすくなる傾向がある。
【0101】
(3)導電接続材料の形態
本発明において導電接続材料の形態は、樹脂組成物の形態などに応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂組成物が液状の場合は、金属箔の両面に樹脂組成物を塗布したもの、ポリエステルシート等の剥離基材上に樹脂組成物を塗布し、所定温度で半硬化(Bステージ化)等の目的で乾燥、製膜させた後に金属箔を張り合わせてフィルム状にしたもの等を導電接続材料として供することができる。樹脂組成物が固形状の場合は、有機溶剤に溶解した樹脂組成物のワニスをポリエステルシート等の剥離基材上に塗布し、所定の温度で乾燥させた後に金属箔を張り合わせ、または、蒸着などの手法を使いフィルム状に形成したものを導電接続材料として供することができる。
【0102】
また、本発明の導電接続材料およびこれに用いられる金属箔は、端子との接触を高めるためにエンボス加工を施したものを用いることもできる。
【0103】
本発明の導電接続材料の厚みは、特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが特に好ましく、また、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、1
00μm以下であることが特に好ましい。導電接続材料の厚みが前記範囲内にあると、接合部の周縁を十分に補強することができ、接合部を外部応力から保護することができるとともに、隣接端子間の絶縁性を確保することができる。
【0104】
次に、導電接続材料の製造方法について説明する。
本発明に用いる樹脂組成物が25℃で液状の場合は、例えば、金属箔を液状の樹脂組成物に浸漬させ、金属箔の両面に液状の樹脂組成物を付着させて、本発明の導電接続材料を製造することができる。樹脂組成物の厚み制御が必要な場合は、液状の樹脂組成物に浸漬させた金属箔を一定の間隙を有するバーコーターを通過させる方法や液状の樹脂組成物をスプレーコーター等により吹き付ける方法により作製することができる。
【0105】
また、樹脂組成物が25℃でフィルム状の場合は、例えば、次のようにして導電接続材料を製造することができる。まず、有機溶剤に溶解した樹脂組成物のワニスをポリエステルシート等の剥離基材上に塗布し、所定の温度で乾燥させ製膜させてフィルム状の樹脂組成物を作製する。次に、剥離基材上に製膜させた樹脂組成物を2枚準備し金属箔を挟んで熱ロールでラミネートすることで、金属箔の上下に樹脂組成物を配置した時樹脂組成物/金属箔/樹脂組成物からなる3層の導電接続材料を作製することができる。また、上述のラミネート方式により、金属箔の片面に樹脂組成物を配置することで樹脂組成物/金属箔からなる2層の導電接続材料を作製することができる。
【0106】
また、巻重状の金属箔を使用する場合は、金属箔をベース基材として、金属箔の上下または片側に前記フィルム状の樹脂組成物を熱ロールでラミネートすることで、巻重状の導電接続材料を得ることもできる。さらに、巻重状の金属箔を使用する場合、金属箔の上下または片側に、ワニス状の樹脂組成物を直接塗布し、溶剤を揮散させることにより巻重状の導電接続材料を作製することができる。
【0107】
パターン状の金属箔を使用して導電接続材料を作製する場合は、例えば、剥離基材上に金属箔を配置し、金属箔側から金型で金属箔をハーフカットし、余分な金属箔を除去することによりパターン状の金属箔を作製し、前記フィルム状の樹脂組成物を熱ロールでラミネートすればよい。パターン状の金属箔の両面に樹脂組成物を設ける場合は、前記剥離基材を剥がし、樹脂組成物が形成された面とは反対側のパターン状の金属箔の面に、フィルム状の樹脂組成物をさらにラミネートすればよい。
なお、導電接続材料の製造方法は上記方法に制限されない。導電接続材料の製造方法は、目的や用途に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0108】
以上のような導電接続材料70が、電子部品10が備える接合部225および補強部226の形成に用いられる。
導電接続材料70を用いた接合部225および補強部226の形成に本発明の電子部品の製造方法が適用される。
【0109】
<本発明の電子部品の製造方法>
以下では、まず、本発明の電子部品の製造方法を適用して、接合部225および補強部226を形成する場合について詳述する。
【0110】
図2は、本発明の電子部品の製造方法を用いて、リジッド基板20が備える端子21とフレキシブル基板30が備える端子31を接合部225により電気的に接続し、さらに、端子21、端子31並びに接合部225の周縁に補強部226を形成する電子部品10を製造する方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0111】
以下に説明する電子部品の製造方法は、第1の基板(以下、本実施形態ではリジッド基板20)および第2の基板(以下、本実施形態ではフレキシブル基板30)をそれぞれ用意する第1の工程と、第1の基板と、第2の基板との間に、樹脂組成物と、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される積層構造を有する導電接続材料を介在させるとともに、第1の基板の第1の端子と、第2の基板の第2の端子とが対応するように位置決めして、第1の基板と第2の基板とが積層された第1の基板/第2の基板積層体を得る第2の工程と、第1の基板/第2の基板積層体を加熱することにより、金属箔を溶融し、第1の基板の第1の端子と第2の基板の第2の端子との間に金属箔を凝集させた後、固化させることにより接合部を形成するとともに接合部の周縁に樹脂組成物からなる補強層を形成させる第3の工程と、補強層をを硬化または凝固させ、金属箔が溶融した凝集物の固化物で、第1の基板の第1の端子と第2の基板の第2の端子とが電気的に接続された、第1の基板/第2の基板接合体を得る第4の工程とを有している。
【0112】
なお、接合部225および補強部226を形成するに際し、導電接続材料70が備える樹脂組成物層71が硬化性樹脂組成物で構成される場合と、熱可塑性樹脂組成物で構成される場合とでは、その形成方法が若干異なる。そのため、以下では、樹脂組成物層71が硬化性樹脂組成物で構成される場合を第1実施形態とし、熱可塑性樹脂組成物で構成される場合を第2実施形態として実施形態ごとに説明する。
【0113】
<第1実施形態>
[1A]第1の工程
まず、図2(a)に示すような、半導体部品40がバンプ50により電気的に接続されたリジッド基板20(第1の基板)とフレキシブル基板30(第2の基板)を用意する。この時、リジッド基板20と半導体部品40の間隙は、封止材60で封止されていることが好ましい。これにより、電子部品40の回路面(バンプ50が形成されている面)の保護とバンプ50のクラックを防止するという効果を得ることができる。
【0114】
本実施形態では、図2(a)に示すように、リジッド基板20、フレキシブル基板30は、それぞれ、それらの回路面に設けられ個別回路に接続する複数の第1の端子21および第2の端子31を有している。
【0115】
[1B]第2の工程
次に、図2(b)に示すように、リジッド基板20とフレキシブル基板30の間に、樹脂組成物71と、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔72とから構成される積層構造を有する導電接続材料70を介在させるとともに、リジッド基板20が有する第1の端子21とフレキシブル基板30が有する第2の端子31が対応するように位置決めし、リジッド基板20とフレキシブル基板30が積層されたリジッド基板/フレキシブル基板積層体240を得る。
【0116】
導電接続材料70を第1の端子21側に形成する方法としては、特に制限はなく、ラミネートによる方法、熱圧着による方法等が挙げられるが、リジッド基板20と導電接続材料70の界面に気泡を巻き込むことを防止できる真空ラミネートによる方法が好ましい。
【0117】
なお、本実施形態では、導電接続材料70は、リジッド基板20の第1の端子21側に
単独で設けているが、フレキシブル基板30の第2の端子31側に単独で設けるようにしてもよいし、リジッド基板20の第1の端子21側とフレキシブル基板30の第2の端子31側の双方に設けるようにしてもよいし、樹脂組成物71を金属箔72の片側にのみ積層した導電接続材料70を片側のリジッド基板20の第1の端子21側に設け、フレキシブル基板の第2の端子31側に樹脂組成物71のみを設けたものを貼り合せて導電接続材料70の構成体にしてもよい。なお、電子部品の製造方法における工程の簡略化を図ると
いう観点からは、第1の端子21および第2の端子31のうちのいずれか一方に導電接続
材料70を設けるのが好ましく、形成されるリジッド基板20/フレキシブル基板30接合体250の密着性の向上を図るという観点からは、回路面21および回路面31の双方に導電接続材料70を設けるのが好ましい。
【0118】
次に、図2(b)に示すように、第1の端子21側に導電接続材料70が設けられたリジッド基板20と、第2の端子を有するフレキシブル基板30とを、第1の端子21と第2の端子31とが対向するようにして、リジッド基板20と、フレキシブル基板30を位置決めし、リジッド基板/フレキシブル基板積層体240を得る。すなわち、回路面21と回路面31との間に導電接続材料70を介在させた状態で、リジッド基板20と、フレキシブル基板30を配置させる。
【0119】
[1C]第3の工程
次に、図2(c)に示すように、リジッド基板/フレキシブル基板積層体240を加熱することにより、金属箔を溶融し、リジッド基板20の第1の端子21とフレキシブル基板30の第2の端子31との間に金属箔72を凝集させた後、固化し、さらに、樹脂組成物71が接合部225の周縁部に補強部226を形成することにより、金属箔が溶融した凝集物の固化物で、リジッド基板20の第1の端子21とフレキシブル基板30の第2の端子31とが電気的に接続されたリジッド基板/フレキシブル基板接合体250を得る。この時、リジッド基板20とフレキシブル基板30間には、補強部226と空隙部227が存在する。
【0120】
前記リジッド基板/フレキシブル基板積層体240を加熱する温度は、金属箔の融点より5℃以上高い温度が好ましく、10℃以上高い温度がより好ましく、20℃以上高い温度がさらに好ましく、30℃以上高い温度が特に好ましい。
具体的には、前記加熱温度は、金属箔の構成材料および導電接続材料70の構成材料等によっても異なるが、100〜260℃程度であるのが好ましく、130〜250℃程度であるのがより好ましい。
【0121】
なお、リジッド基板/フレキシブル基板積層体240の加熱は、所定の単一温度で加熱する場合の他、例えば、180℃で100秒加熱した後、250℃で100秒加熱するステップキュアや、180℃で10秒熱圧着した後、240℃で10分オーブン硬化させるポストキュアを行うようにしてもよい。これにより、金属箔と、第1の端子および第2の端子との金属接合により、確実に電気的に接続することができ、接続抵抗が低く、接続信頼性が高い接合部225を形成することができる。
【0122】
また、リジッド基板/フレキシブル基板積層体240を、加熱しつつ、その厚さ方向の間隙が一定となるような制御をすることにより、金属箔をリジッド基板20の第1の端子21およびフレキシブル基板30の第2の端子31の表面に、接触させることによりさらに効率よく凝集させることができる。
前記間隙が一定となるような制御を実施する方法は、特に制限されるわけではなく、フリップチップボンダー等を用いることにより実施することができる。
【0123】
これにより、金属箔を溶融させることができる。その結果、溶融した金属箔が、導電接続材料70中を移動して、第1の端子21および第2の端子31の表面に自己整合的に凝集する。その後、この凝集した凝集物が固化し、この固化した凝集物で構成される接合部225により、第1の端子および第2の端子を電気的に接続することができる。
【0124】
また、導電接続材料70の樹脂組成物71により、金属箔72が溶融した時に、端子間に補強部226と空隙部227とが形成される。前記端子および接合部225の周縁に、補
強部226を形成するために必要な樹脂組成物71の体積算出方法としては、例えば、以下の方法により算出することができる。まず、接合部225の構成材料である金属箔72の体積から第1の端子21および第2の端子31を接続した時の端子間距離、また、導電接続材料70をラミネートした面積からリジッド基板20およびフレキシブル基板30の間隙が形成する体積V1を算出する。次に、端子21、端子31および接合部225の体積の和V2を算出する。次に、前記V1およびV2の差を算出することにより、リジッド基板20およびフレキシブル基板30を接合部225で電気的に接続した後の、リジッド基板20およびフレキシブル基板30の間隙V3を算出する。
補強部226と空隙部227を形成するために必要な樹脂組成物71の体積は、V3を基に算出することができ、V3の体積より小さくなるような厚みの導電材料70を適用する。また樹脂組成物71を加熱することにより発生するガスや水分により、空隙部227を形成することにより、補強部226を形成することができるが、補強部226の形成方法は、特に制限されない。
【0125】
次に、本発明に係る補強部226の評価方法について図3を用いて説明する。
図3(a)に示すように、リジッド基板/フレキシブル基板接合体250の間隙部228の断面積S1、図3(b)に示すように、補強部226の断面積S2とした場合、このS2/S1を算出することにより、補強部226を評価することができる。断面積S1およびS2の算出方法は、図3(c)に示すように隣接する端子21の中心部を結ぶ線(A−A’)の断面観察を行い、さらに、画像処理を実施することにより算出することができる。
【0126】
前記S2/S1は、0.1〜0.9であることが好ましく、0.2〜0.8であることがさらに好ましく、0.3〜0.7であることが特に好ましい。これにより、冷熱サイクル試験後のリジッド基板/フレキシブル基板接合体250の接合部225の亀裂、端子21または31と接合部225の界面で剥離が生じるのを防止することができる。
【0127】
[1D]第4の工程
引き続いて、補強部226の硬化が、金属箔の溶融に遅れて完了することにより、リジッド基板20とフレキシブル基板30との間の金属箔の溶融物が凝集する領域以外の領域に、樹脂組成物71の硬化物または凝固物で構成される補強部226を形成することができ、補強部226により、端子21、端子31および接合部225を外部応力から保護することことがでいるとともに、隣接端子間の絶縁性を確保することができる。
【0128】
補強部226の硬化は、補強部226を構成する樹脂組成物71の組成に応じて適宜設定することができるが、前記加熱工程での加熱温度より少なくとも5℃低い温度であることが好ましく、少なくとも10℃低い温度であることが特に好ましい。具体的には、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることが特に好ましく、150℃以上であることが最も好ましい。また、300℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましく、240℃以下であることが最も好ましい。硬化温度が前記範囲内にあると、導電接続材料70が熱分解せず、補強部226を十分に硬化させることができる。
【0129】
以上のようにして、溶融した金属箔72を凝集させた後、この凝集した凝集物を固化させ、次いで、補強部226を硬化させる。その結果、接合部225および補強部226を介してリジッド基板20とフレキシブル基板30とが固着することとなり、リジッド基板20の第1の端子21とフレキシブル基板30の第2の端子31とが電気的に接続されたリジッド基板/フレキシブル基板接合体250を形成することができる。また、リジッド基板20とフレキシブル基板30の間隙にアンダーフィル材等の樹脂を充填する工程を省
くことができるため、生産性を向上することができる。
【0130】
ここで、本発明では、リジッド基板20の第1の端子21およびフレキシブル基板30の第2の端子間31は、接合部225のような固化物を介して電気的に接続される。そのため、後述する電子部品10の駆動時に、リジッド基板20またはフレキシブル基板30の発熱により、たとえ接合部225が膨張したとしても樹脂組成物71で構成される補強部226がこの電気的接続が切断されるのを好適に防止することができ、リジッド基板20第1の端子21およびフレキシブル基板30の第2の端子31間で安定的な導通を得ることができる。すなわち、リジッド基板20の第1の端子21およびフレキシブル基板30の第2の端子31間で接続信頼性に優れた電気的接続を得ることができる。
【0131】
接合部225の厚さ(平均)は、特に限定されないが、3〜200μm程度であるのが好ましく、5〜150μm程度であるのがより好ましい。このようにリジッド基板20とフレキシブル基板間の間隔を小さくすることにより、リジッド基板/フレキシブル基板接合体250の厚さを薄くすることができる。その結果、この電子部品10を備える電子装置の全体としての厚さをも薄くすることができ、さらに電子装置の軽量化を図ることができる。さらに、第1の端子21および第2の端子31の間隔を小さくすることができるので、信号の高速化を実現することもできる。
【0132】
<第2実施形態>
次に、樹脂組成物71が熱可塑性樹脂組成物で構成される場合について、同じく図2を用いて説明する。
【0133】
[2A]第1の工程
まず、第1実施形態と同様のリジッド基板20およびフレキシブル基板30を用意する。
【0134】
[2B]第2の工程
第1実施形態と同様に、リジッド基板20の第1の端子21とフレキシブル基板30の第2の端子31の間に、樹脂組成物71と、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔72とから構成される積層構造を有する導電接続材料70を介在させるとともに、リジッド基板20が有する第1の端子21とフレキシブル基板30が有する第2の端子31が対応するように位置決めし、リジッド基板20とフレキシブル基板30が積層されたリジッド基板/フレキシブル基板積層体を得る。
【0135】
ここで、導電接続材料70を介在させる方法、リジッド基板20およびフレキシブル基板30を位置決めする方法は、第1実施形態と同様の方法で行うことができる。
【0136】
[2C]第3の工程
次に、図2(c)に示すように、リジッド基板/フレキシブル基板積層体240を加熱することにより、金属箔72を溶融させ、リジッド基板20の第1の端子21とフレキシブル基板30の第2の端子31との間に金属箔72を凝集させた後、固化し、さらに、樹脂組成物71で構成される補強部226を凝固させて、リジッド基板20とフレキシブル基板30とが固着することにより、金属箔72が溶融した凝集物の固化物で、リジッド基板20の第1の端子21とフレキシブル基板30の第2の端子31とが電気的に接続されたリジッド基板/フレキシブル基板接合体250を得る。
【0137】
リジッド基板/フレキシブル基板積層体240を加熱する条件および方法は、特に制限はなく、第1実施形態と同様の条件および方法を用いることができる。
【0138】
[2D]第4の工程
引き続き行なう、樹脂組成物71で構成される補強部226の凝固は、前記加熱工程で加熱溶融した導電接続材料を冷却・固化することによって実施することができる。導電接続材料の冷却・固化は、樹脂組成物の組成に応じて適宜設定することができるものであり、特に制限されないが、自然冷却による方法でもよく、また、冷気を吹きつけるなどの方法でもよい。
【0139】
前記樹脂組成物71の凝固温度は、特に制限されないが、金属箔72の融点より低いことが好ましい。より具体的には、前記熱可塑性樹脂組成物の固化温度は、金属箔72の融点より10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことが特に好ましい。また、前記樹脂組成物71の固化温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることが特に好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。前記樹脂組成物71の固化温度が前記範囲内にあると、補強部226を確実に形成することができ、また、補強部226が所望の耐熱性を有することができる。このため、端子21、端子31および接合部225を外部応力から保護することことができるとともに、隣接端子間の絶縁性を確保することができる。
【0140】
接合部225の厚さは、特に限定されないが、第1実施形態と同様にすることが好ましい。このようにリジッド基板20とフレキシブル基板30間の間隔を小さくすることにより、リジッド基板/フレキシブル基板接合体250の厚さを薄くすることができる。
【0141】
以上のようにして、溶融した金属箔を凝集させた後、この凝集した凝集物を固化させ、次いで、樹脂組成物71から構成される補強部226を硬化または凝固させる。その結果、接合部225および補強部226を介してリジッド基板20とフレキシブル基板30とが固着することとなり、リジッド基板20の第1の端子21とフレキシブル基板30の第2の端子31とが電気的に接続されたリジッド基板/フレキシブル基板接合体250を形成することができる。また、リジッド基板20とフレキシブル基板30の間隙にアンダーフィル材等の樹脂を充填する工程を省くことができるため、生産性を向上することができる。
【0142】
ここで、本発明では、リジッド基板20の第1の端子21およびフレキシブル基板30の第2の端子31間は、接合部225のような固化物を介して電気的に接続される。そのため、電子部品10の駆動時に、リジッド基板20またはフレキシブル基板30の発熱により、たとえ接合部225が膨張したとしても、樹脂組成物71で構成される補強部226がこの電気的接続が切断されるのを好適に防止することができ、リジッド基板20の第1端子21およびフレキシブル基板30の第2の端子間31で安定的な導通を得ることができる。すなわち、リジッド基板20の第1の端子21およびフレキシブル基板30の第2の端子間31で接続信頼性に優れた電気的接続を得ることができる。
【0143】
以上、本発明の電子部品の製造方法および電子部品、電子装置の製造方法および電子装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明に係る導電接続材料の各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
また、本発明の電子部品の製造方法および電子装置の製造方法には、必要に応じて任意の工程が追加されてもよい。
さらに、第1実施形態および第2実施形態では、第1の基板(リジッド基板20)と第2の基板(フレキシブル基板30)とを接合部225および補強部226で固着することにより電気的に接続する際に、本発明の電子部品の製造方法を適用する場合について説明したが、この場合に限られず、第1の基板および第2の基板としては、例えば、リジッド基板、有機基板、セラミック基板、半導体ウエハ、半導体チップ、コンデンサーや抵抗チッ
プ等の基板が挙げられる。
【0144】
なお、本発明の電子部品の製造方法により製造された電子部品10は、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プリンタ等に広く用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の電子部品の製造方法は、第1の基板および第2の基板間を電気的に接続し、第1の基板と第2の基板を固着する際に好適に用いることができる。本発明の電子部品の製造方法を用いることで、第1の基板および第2の基板間の良好な電気的接続を実現できる。また、本発明の電子部品の製造方法を用いることで、電子部品の小型化、薄型化の要求にも対応することが可能である。
【符号の説明】
【0146】
10 電子部品
20 リジッド基板(第1の基板)
21 第1の端子
30 フレキシブル基板(第2の基板)
31 第2の端子
40 半導体部品
50 バンプ
70 導電接続材料
71 樹脂組成物(層)
72 金属箔(層)
225 接合部
226 補強部
227 空隙部
228 間隙部
240 リジッド基板/フレキシブル基板積層体
250 リジッド基板/フレキシブル基板接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とを積層して電気的に接続する電子部品の製造方法であって、
第1の基板および第2の基板をそれぞれ用意する第1の工程と、
前記第1の基板と、前記第2の基板との間に、樹脂組成物と、半田箔又は錫箔から選ばれる金属箔とから構成される積層構造を有する導電接続材料を介在させるとともに、前記第1の基板の第1の端子と、前記第2の基板の第2の端子とが対応するように位置決めして、前記第1の基板と第2の基板とが積層された第1の基板/第2の基板積層体を得る第2の工程と、
前記第1の基板/第2の基板積層体を加熱することにより、前記金属箔を溶融し、前記第1の基板の第1の端子と前記第2の基板の第2の端子との間に金属箔を凝集させた後、固化させることにより接合部を形成するとともに前記第1の端子、第2の端子並びに接合部の周縁に前記樹脂組成物からなる補強部を形成させる第3の工程と、
前記補強部を硬化または凝固させ、前記金属箔が溶融した凝集物の固化物で、前記第1の基板の第1の端子と前記第2の基板の第2の端子とが電気的に接続された、第1の基板/第2の基板接合体を得る第4の工程と、
を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記第1の基板/第2の基板接合体の間隙の断面積をS1、前記補強部の断面積をS2とした場合、S2/S1=0.1〜0.9の関係を満たす請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含む、請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物がフラックス機能を有する化合物を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記導電接続材料が、樹脂組成物層/金属箔層/樹脂組成物層からなる積層構造を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記導電接続材料が、樹脂組成物層/金属箔層からなる積層構造を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の電子部品の製造方法で製造されたことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−187489(P2011−187489A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48094(P2010−48094)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】