説明

電子部品の製造方法及び電子部品

【課題】電子部品の導電部の元素がその周辺に設けた絶縁層へ拡散するのを抑制する。
【解決手段】第1絶縁層1上に導電部2を形成して、その導電部2上にバリアメタル層3を形成した後、そのバリアメタル層3上に、非共有電子対を有する官能基を少なくとも2つ備える化合物を含む化合物層4を形成し、その化合物層4上に第2絶縁層5を形成する。導電部2から拡散する元素が、たとえバリアメタル層3を通過しても、そのバリアメタル層3を通過した元素を化合物層4によって捕捉し、導電部2の元素が第2絶縁層5等へ拡散するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線層を有する電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁層内に設けた配線等の導電部を有する回路基板や半導体装置等の電子部品において、導電部の元素が、通電やそれによる発熱等によって、周辺の絶縁層へ拡散するのを抑えるために、導電部の周りにバリアメタル層を設ける技術が知られている。例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法等を用い、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、又はそれらの窒化物をバリアメタル層として形成することが知られている。また、無電解めっき法を用い、コバルトタングステンリン(CoWP)、ニッケルリン(NiP)等をバリアメタル層として形成する方法等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−206905号公報
【特許文献2】特開2001−316834号公報
【特許文献3】特開2004−260106号公報
【特許文献4】特開2007−246978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように導電部周辺にバリアメタル層を設けても、そのバリアメタル層の材質、厚さ、膜質等によっては、導電部から絶縁層への元素拡散を十分に抑えることができない場合がある。バリアメタル層を厚くすれば元素拡散を抑えることは可能である。但し、例えば、隣接する導電部間に設定されているピッチによっては、各導電部に形成するバリアメタル層について十分な厚さを確保できない場合があり、また、バリアメタル層を厚くすることで抵抗が増加する等の問題が生じる場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、第1絶縁層上に導電部を形成する工程と、前記導電部上にバリアメタル層を形成する工程と、前記バリアメタル層上に、非共有電子対を有する官能基を少なくとも2つ備える化合物を含む化合物層を形成する工程と、前記化合物層上に第2絶縁層を形成する工程と、を含む電子部品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
開示の方法によれば、導電部から絶縁層への元素拡散を効果的に抑制し、信頼性の高い電子部品を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】配線構造の一例の説明図である。
【図2】回路基板の一例を示す図である。
【図3】回路基板の一例の要部拡大図である。
【図4】回路基板形成の第1工程の要部断面模式図である。
【図5】回路基板形成の第2工程の要部断面模式図である。
【図6】回路基板形成の第3工程の要部断面模式図である。
【図7】回路基板形成の第4工程の要部断面模式図である。
【図8】回路基板形成の第5工程の要部断面模式図である。
【図9】回路基板形成の第6工程の要部断面模式図である。
【図10】回路基板形成の第7工程の要部断面模式図である。
【図11】回路基板形成の第8工程の要部断面模式図である。
【図12】回路基板形成の第9工程の要部断面模式図である。
【図13】回路基板形成の第10工程の要部断面模式図である。
【図14】回路基板形成の第11工程の要部断面模式図である。
【図15】化合物層による元素捕捉の説明図である。
【図16】半導体装置の一例を示す図である。
【図17】半導体装置の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は配線構造の一例の説明図である。図1において、(A)は導電部形成工程の要部断面模式図、(B)はバリアメタル層形成工程の要部断面模式図、(C)は絶縁層形成工程の要部断面模式図である。
【0009】
まず、図1(A)に示すように、第1絶縁層1上に、配線となる導電部2を形成する。導電部2は、例えば、銅(Cu)やCu合金を主体とする金属材料を用いて形成することができる。
【0010】
次いで、形成した導電部2上に、図1(B)に示すように、バリアメタル層3を形成する。このバリアメタル層3は、導電部2に含まれるCu等の元素がその導電部2外に拡散することを抑制することが可能な、様々な金属材料を用いて形成することができる。更に、形成したバリアメタル層3上に、図1(B)に示すように、非共有電子対を有する官能基を1分子中に2つ以上備えている化合物を含む、化合物層4を形成する。このような化合物層4は、例えば、キレート剤やカップリング剤等を用いて形成することができる。
【0011】
そして、図1(C)に示すように、バリアメタル層3及び化合物層4を形成した導電部2を覆うように、第2絶縁層5を形成する。
このようにして形成される配線構造では、導電部2に含まれるCu等の元素の第2絶縁層5への拡散が、まず、バリアメタル層3によって抑えられる。但し、バリアメタル層3の材質、厚さ、膜質等によっては、バリアメタル層3のみでは、そのような導電部2からの元素拡散を十分に抑えることができない場合がある。そのような場合でも、バリアメタル層3を通過してしまった元素は、その外側に設けた化合物層4により、第2絶縁層5への拡散が抑えられる。
【0012】
化合物層4は、上記のように、非共有電子対を有する官能基を2つ以上備える化合物を含む。このような化合物層4を形成することにより、バリアメタル層3を通過してしまった元素を、化合物層4内の化合物に非共有電子対を用いて配位結合させ、化合物層4内に捕捉する。これにより、導電部2への通電やそれによる発熱、外部からの伝熱等によって導電部2から拡散し、バリアメタル層3を通過してしまった元素が、第2絶縁層5へ拡散するのを効果的に抑制することができる。
【0013】
化合物層4には、例えば、導電部2から拡散してバリアメタル層3を通過してくる元素を捕捉可能な量の化合物(官能基)が含まれる。化合物層4は、任意の厚さで形成可能であり、例えば、化合物分子1層から数層レベルといった薄い膜厚で形成することも可能である。
【0014】
この図1(C)のような配線構造の形成にあたり、図1(B)の工程で形成するバリアメタル層3は、例えば、無電解めっき法を用いて形成することができる。例えば、バリアメタル層3として、無電解めっき法を用い、NiP層、CoWP層等を形成することができる。
【0015】
導電部2に含まれる元素の拡散を抑える性能(バリア性)の観点では、CoWPは、NiPに比べ、高いバリア性を示し得る。但し、CoWPの無電解めっきでは、コバルト(Co)イオン、タングステン(W)イオン等をめっき液中で安定化させることが必ずしも容易でなく、めっき液の管理を精密に行ったとしても、めっき液寿命が比較的短い。一方、NiPは、CoWPに比べると低いバリア性を示し得るものの、無電解めっき時のめっき液が安定性に優れ、めっき液寿命が比較的長く、めっき液管理が比較的容易である。NiPもその膜厚を厚くすればバリア性は高まるが、それにより、配線部分の抵抗増加を招く恐れがある。
【0016】
図1(C)に示したような配線構造では、バリアメタル層3に、形成が比較的容易ではあるが、低いバリア性を示し得るNiPのような材料を用いた場合でも、導電部2からの元素拡散を抑えることができる。即ち、バリアメタル層3をNiPのような材料を用いて形成した場合でも、それにより一定のバリア性は確保できる。たとえこのようなNiPのバリアメタル層3を導電部2の元素が通過したとしても、その外側に設けた化合物層4により、その元素を捕捉し、それより外側への元素拡散を抑えることができる。
【0017】
更に、図1(C)に示したような配線構造では、このような化合物層4を設けるため、バリアメタル層3を、その材質によらず、化合物層4を設けなかった場合に比べ、薄く形成することができる。更に、化合物層4自体も薄く形成することができる。そのため、導電部2とその周りのバリアメタル層3を含む配線パターンの微細化を図ることが可能になる。或いは、配線パターンを同一層内に複数形成する場合には、それら配線パターン間のピッチを狭めることが可能になる。
【0018】
尚、ここでは、バリアメタル層3として、NiP層、CoWP層を例にして説明したが、バリアメタル層3には、その他の材料を用いることも可能であり、その場合も、配線パターンの微細化や狭ピッチ化といった、上記同様の効果を得ることが可能である。例えば、バリアメタル層3として、ニッケルタングステンリン(NiWP)層、ニッケルホウ素(NiB)層、コバルトリン(CoP)層、コバルトホウ素(CoB)層等も形成することが可能である。
【0019】
また、ここでは、バリアメタル層3を、無電解めっき法を用いて形成する場合を例にして説明したが、バリアメタル層3は、用いる材料によっては、CVD法やスパッタ法等を用いて形成することもできる。この場合も、その上に化合物層4を設けることで、導電部2の元素拡散を抑えることが可能である。但し、このようなCVD法やスパッタ法を用いる場合には、上記のような配線構造を形成する基板(ウェハ等)のサイズの大型化により、CVD装置やスパッタ装置も大型化し、コストの増加を招く可能性がある。これに対し、めっき法は、そのような基板の大型化にも対応できる利点がある。
【0020】
図1(B)の工程で形成する化合物層4には、非共有電子対を有する官能基を1分子中に2つ以上備えている化合物であれば、様々なものを用いることが可能である。また、化合物層4には、そのような化合物が少なくとも1種含まれていればよく、複数種含まれていてもよい。非共有電子対を有する官能基としては、例えば、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、アミノ基、イミダゾール基等を挙げることができる。このような官能基を有する化合物としては、例えば、トリアジンチオール類や有機酸(クエン酸等)等のキレート剤、シランカップリング剤等のカップリング剤を挙げることができる。
【0021】
このような化合物を、バリアメタル層3上に形成することにより、化合物層4が形成される。図1(B)の化合物層4の形成時には、例えば、まず上記のような所定の化合物を所定量含んだ溶液を調製し、その溶液を、バリアメタル層3上に、浸漬法、スプレー法、スピンコーティング法等を用いて付着させる。そして、その溶液の乾燥を行うことで、その溶液に含まれる化合物をバリアメタル層3上に付着させる。
【0022】
このとき、化合物に含まれる、非共有電子対を有する2つ以上の官能基のうち、例えば、少なくとも1つの官能基が、バリアメタル層3の表面に直接結合する。バリアメタル層3に直接結合しない官能基がある場合、その官能基が、導電部2から拡散してバリアメタル層3を通過してくる元素の捕捉サイトとなり得る。即ち、バリアメタル層3を通過してくる元素が、その官能基に存在する非共有電子対を介して、その官能基に配位結合する。
【0023】
また、樹脂材料を用いて第2絶縁層5を形成する場合等、第2絶縁層の種類によっては、化合物内の、バリアメタル層3に直接結合しない官能基が、第2絶縁層5と反応し得る。このような反応により、第2絶縁層5の密着性が向上するようになる。尚、このような反応が起こる場合にも、当該反応後の官能基に非共有電子対が存在していれば、この官能基は、導電部2から拡散してバリアメタル層3を通過してくる元素の捕捉サイトとなり得る。
【0024】
尚、化合物層4の中には、バリアメタル層3、第2絶縁層5のいずれとも結合しない官能基を有する化合物が含まれている場合もあり得る。このような場合、その化合物に含まれる、非共有電子対を有するいずれの官能基も、導電部2から拡散してバリアメタル層3を通過してくる元素の捕捉サイトとして機能し得る。
【0025】
非共有電子対を有する2つ以上の官能基を含む化合物は、その分子中の非共有電子対を有するいずれの官能基にも元素(バリアメタル層3表面の元素、第2絶縁層5表面の元素、導電部2からの拡散元素)が結合している場合、化学的に安定な状態になる。このような安定状態の化合物は、当該元素(バリアメタル層3表面の元素、第2絶縁層5表面の元素、導電部2からの拡散元素)から容易に脱離しない。安定状態の化合物に結合されている元素の中に、導電部2からの拡散元素が含まれている場合、その元素は、化合物層4内に留まり、それにより、第2絶縁層5への拡散が効果的に抑えられるようになる。
【0026】
以下では、上記のような配線構造を用いた電子部品として、回路基板を例に、図面を参照して詳細に説明する。
図2は回路基板の一例を示す図である。尚、図2には、回路基板の一例の断面を模式的に図示している。
【0027】
図2に示す回路基板100は、支持基板10、及びその支持基板10上に形成された配線層20を有している。尚、図2には、配線層20として多層配線を例示しており、回路基板100として多層回路基板を例示している。
【0028】
支持基板10には、シリコン(Si)等の半導体基板のほか、ガラス繊維を混入させた樹脂基板等を用いることができる。尚、図2では図示を省略するが、支持基板10の表面には、配線層20と電気的に接続される配線パターンが形成されていてもよい。
【0029】
配線層20は、絶縁層21内に埋設された、配線及びビアを含む配線パターン20aを有している。絶縁層21には、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料を用いることができる。配線パターン20aには、例えば、金属材料を用いることができる。
【0030】
尚、この図2には、支持基板10の両面側に配線層20を形成した回路基板100を例示したが、回路基板100の一方の面側にのみ配線層20を形成してもよい。
図3は回路基板の一例の要部拡大図である。尚、図3は、図2のX部の拡大図である。
【0031】
図3に示すように、下層側の配線パターン20aは、例えば、支持基板10上に形成された第1絶縁層21a(上記絶縁層21の一部)の上に形成されている。ここでは一例として、下層側の配線パターン20aが、Ti等の密着層22a、Cu等のシード層22b、及びCu等の配線22cを含む導電部22、並びにその導電部22の表面に形成されたバリアメタル層23を含んでいる場合を示している。バリアメタル層23には、例えば、無電解めっき法を用いて形成されるNiPが用いられる。バリアメタル層23の表面には、化合物層24が設けられている。化合物層24には、キレート剤やカップリング剤等、非共有電子対を有する官能基を1分子中に2つ以上備えている化合物が用いられる。
【0032】
化合物層24が形成された下層側の配線パターン20aは、第2絶縁層21b(上記絶縁層21の一部)で覆われ、第2絶縁層21b上には、下層側の配線パターン20aに接続された上層側の配線パターン20aが形成されている。ここでは一例として、上層側の配線パターン20aが、Ti等の密着層22a、Cu等のシード層22b、並びにCu等のビア22d及び配線22cを含む導電部22、並びにその導電部22の表面に形成されたバリアメタル層23を含んでいる場合を示している。上層側のバリアメタル層23は、第2絶縁層21bから露出する上層側の導電部22の表面に形成されている。この上層側のバリアメタル層23の表面には、化合物層24が設けられている。
【0033】
化合物層24が形成された上層側の配線パターン20aは、第3絶縁層21c(上記絶縁層21の一部)で覆われている。
続いて、上記構成を有する回路基板100の形成方法の一例について、図4〜図14を参照して、順を追って説明する。ここで、図4〜図14はそれぞれ、回路基板形成の第1〜第11工程の要部断面模式図である。尚、ここでは、図3に示したX部を例にして、回路基板100の形成方法の一例を説明する。
【0034】
まず、図4に示すように、支持基板10上に、第1絶縁層21aを形成する。第1絶縁層21aは、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂を用いて形成する。この場合は、まず、そのような絶縁樹脂をスピンコーティング等の手法を用いて支持基板10上に塗布した後、キュアを行って硬化することで形成する。
【0035】
次いで、図4に示すように、第1絶縁層21a上に、密着層22a及びシード層22bを形成する。ここでは、密着層22aとしてTi層を形成し、シード層22bとしてCu層を形成する。これらTi層(密着層22a)及びCu層(シード層22b)は、例えば、スパッタ法により形成する。次いで、図4に示すように、シード層22b上に、下層側の配線22cを形成する領域に開口部31aを設けた、レジスト31を形成する。
【0036】
レジスト31の形成後は、図5に示すように、その開口部31aに配線22cを形成する。ここでは配線22cとしてCu層又はCu合金層を形成する。Cu層又はCu合金層(配線22c)は、レジスト31の開口部31aから露出するシード層22bを用い、電解めっき法により形成する。電解めっき法による配線22cの形成後は、図6に示すように、レジスト31を除去する。レジスト31の除去後は、レジスト31で覆われていた部分のシード層22b及び密着層22aをエッチングにより除去する。これにより、図7に示すような、第1絶縁層21a上に、密着層22a及びシード層22bを介して配線22cが形成された、下層側の導電部22が得られる。
【0037】
次いで、第1絶縁層21a上に露出する導電部22の表面に、図8に示すように、バリアメタル層23を形成する。ここでは、バリアメタル層23として、NiP層を形成する。NiP層(バリアメタル層23)は、無電解めっき法により形成する。
【0038】
バリアメタル層23の形成後は、その表面に、図9に示すように、非共有電子対を有する官能基を1分子中に2つ以上備える、キレート剤やカップリング剤等の化合物を含む、化合物層24を形成する。その際は、例えば、まず、所定の化合物を所定量含む溶液(水溶液、水を含む溶液等)を調製し、その溶液に、バリアメタル層23の形成まで行った基板を浸漬する処理を行う。或いは、バリアメタル層23の形成まで行った基板に対し、その溶液をスプレーする処理を行う。或いはまた、バリアメタル層23の形成まで行った基板に対し、その溶液をスピンコーティングする処理を行う。このような浸漬処理、スプレー処理又はスピンコーティング処理(溶液付着処理)を行った後、乾燥を行うことで、バリアメタル層23の表面に、化合物層24を形成する。
【0039】
キレート剤やカップリング剤等の化合物は、その形成初期の段階では主に、バリアメタル層3の表面に存在する所定の結合サイト(表面金属や表面水酸基等)に、その化合物内の所定の官能基を介して結合する。その化合物内の、バリアメタル層3の表面に直接結合しない官能基は、導電部22から拡散してバリアメタル層23を通過してくるCu等を捕捉するための捕捉サイトとなり得る。
【0040】
化合物層24を形成する際には、例えば、溶液付着処理に使用する処理溶液の液性(pH、粘度等)、処理溶液中の化合物濃度、処理条件(浸漬時間、スプレー時間、基板回転条件等)、及び乾燥条件(温度、時間、雰囲気等)を制御する。
【0041】
処理溶液のpH等の液性は、キレート剤やカップリング剤等、用いる化合物の種類に応じ、処理溶液の安定性や化合物同士の反応抑制等を考慮して、設定する。液性を調整した処理溶液中の化合物濃度、及びその処理溶液による処理条件を制御することで、乾燥後のバリアメタル層3表面の化合物量を制御することができ、例えば、バリアメタル層3の表面全体にわたって均一性良く化合物を形成することができる。例えば、化合物を、バリアメタル層3の表面全体にわたって、単分子層程度の厚さで形成したり、数分子層程度の厚さで形成したりすることもできる。
【0042】
例えば、処理溶液中の化合物濃度は、0.001wt%〜10wt%に設定することが好ましく、0.01wt%〜5wt%に設定することがより好ましい。処理溶液中の化合物濃度が0.001wt%を下回る場合には、バリアメタル層23の表面を十分に被覆する化合物層24が形成されない可能性がある。また、処理溶液中の化合物濃度が10wt%を上回る場合には、化合物同士の反応が起こり易くなる可能性があり、それにより、化合物層24内でCu等の捕捉サイトとして機能し得る官能基の数が減少してしまう可能性が生じてくる。処理条件は、例えば、このような化合物濃度の処理溶液を用いたときに、化合物が、バリアメタル層3の表面全体にわたって、所定の厚みで均一性良く形成されるような条件に設定することが好ましい。
【0043】
尚、図9には、化合物層24がバリアメタル層23の表面に選択的に形成されている場合を図示したが、化合物層24は、バリアメタル層23の表面のほか、第1絶縁層21aの表面にも形成されていて構わない。この例のように、第1絶縁層21aを熱硬化性ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂で形成している場合には、この化合物層24の形成段階で既に硬化まで終了している。そのため、化合物層24内の化合物が第1絶縁層21a内の分子と反応して第1絶縁層21aに強く結合することは起こり難い。上記のような化合物を含む処理溶液を用いた溶液付着処理で第1絶縁層21a上に付着した化合物は、乾燥の段階で溶媒と共に脱離することがあり、また、脱離せずに残っていても、それ自体は絶縁性であるため、電気的な不具合が生じることはない。
【0044】
上記のようにして化合物層24の形成まで行った後は、図10に示すように、その化合物層24の形成まで行った基板の上に、第2絶縁層21bを形成する。第2絶縁層21bは、例えば、熱硬化性ポリイミド等の絶縁樹脂をスピンコーティング等の手法を用いて塗布した後、キュアにより硬化することで形成する。
【0045】
尚、第2絶縁層21bの絶縁樹脂に用いる材料、及び化合物層24内に含まれる化合物の種類によっては、絶縁樹脂の塗布から硬化までの間に、その絶縁樹脂と化合物層24内の化合物との反応が起こり得る。このような反応が起こると、第2絶縁層21bの密着性は向上するようになる。
【0046】
第2絶縁層21bの形成後は、図11に示すように、第2絶縁層21b、化合物層24及びバリアメタル層23のエッチングを行い、下層側の配線22cに達するビアホール22daを形成する。
【0047】
ビアホール22daの形成後は、図12に示すように、まず、例えばスパッタ法を用い、密着層22aとしてTi層を、更に、その上にシード層22bとしてCu層を、それぞれ形成する。続いて、上層側の配線22cを形成する領域に、ビアホール22daに連通するように形成された開口部32aを有する、レジスト32を形成する。そして、その開口部32aから露出するシード層22bを用い、電解めっき法により、ビアホール22da及び開口部32a内にCu又はCu合金を堆積し、ビア22d及び上層側の配線22cを形成する。
【0048】
このようにしてビア22d及び上層側の配線22cを形成した後は、レジスト32を除去し、レジスト32で覆われていた部分のシード層22b及び密着層22aをエッチングにより除去する。これにより、図13に示すような、第2絶縁層21b上に、密着層22a及びシード層22bを介してビア22d及び配線22cが形成された、上層側の導電部22が得られる。
【0049】
上層側の導電部22の形成後は、図14に示すように、第2絶縁層21b上に露出する導電部22の表面に、バリアメタル層23を形成し、更に、その表面に、化合物層24を形成する。ここでは、バリアメタル層23として、無電解めっき法を用いてNiP層を形成する。また、非共有電子対を有する官能基を1分子中に2つ以上備えている、キレート剤やカップリング剤等の化合物を用い、溶液付着処理及び乾燥を行って、化合物層24を形成する。
【0050】
バリアメタル層23及び化合物層24の形成後は、そのバリアメタル層23及び化合物層24の形成まで行った基板の上に、第3絶縁層21cを形成する。これにより、図3に示したような配線構造が得られ、図2に示したような回路基板100が得られる。第3絶縁層21cは、例えば、熱硬化性ポリイミド等の絶縁樹脂をスピンコーティング等の手法を用いて塗布した後、キュアを行って硬化することで形成する。このとき、第3絶縁層21cの絶縁樹脂と化合物層24内の化合物とが反応すると、第3絶縁層21cの密着性が向上するようになる。
【0051】
上記のような工程により形成される回路基板100において、導電部22に含まれるCu等の元素の、第2絶縁層21bや第3絶縁層21cへの拡散は、まずバリアメタル層23によって抑えられる。たとえその拡散元素が、バリアメタル層23を通過してしまったとしても、その通過した拡散元素は、化合物層24内に捕捉され、それにより、その元素の第2絶縁層21bや第3絶縁層21cへの拡散が抑えられる。
【0052】
図15は化合物層による元素捕捉の説明図である。図15において、(A)は化合物層と絶縁層とが反応していない場合の説明図、(B)は化合物層と絶縁層とが反応している場合の説明図である。
【0053】
図15(A),(B)には、配線22cにCuを用い、バリアメタル層23にNiPを用い、化合物層24内の化合物にアミノ基を有するアミノ系のシランカップリング剤24aを用いた場合を例示している。
【0054】
シランカップリング剤は、水の存在下で加水分解し、シラノール基を生成する。図15(A),(B)のシランカップリング剤24aは、上記の溶液付着処理の際に生成されるシラノール基と、バリアメタル層23との反応(バリアメタル層23の表面水酸基との反応)により、バリアメタル層23の表面に結合している。尚、図15(A),(B)では、シラノール基とアミノ基の間の炭素鎖は簡略化して図示している。また、図15(A),(B)では、このように結合した1分子のシランカップリング剤24aを図示したが、バリアメタル層23の表面には、これと同様に、複数のシランカップリング剤24aの分子が結合している。
【0055】
このようなシランカップリング剤24aを含む化合物層24の外側に、例えば絶縁樹脂を用いて、絶縁層21(第2絶縁層21b又は第3絶縁層21c)が形成される。
図15(A)には、シランカップリング剤24aのアミノ基が、絶縁層21と反応せずに残っている場合を例示している。このアミノ基には、窒素(N)原子上に非共有電子対が存在している。発熱や伝熱等によって配線22cのCu22caが拡散し、NiPのバリアメタル層23を通過してしまったときには、シランカップリング剤24aがそのアミノ基の非共有電子対を使ってCu22caに配位し、それにより、Cu22caを捕捉することができる。
【0056】
図15(B)には、シランカップリング剤24aのアミノ基が、絶縁樹脂の絶縁層21と反応して結合している場合を例示している。絶縁層21がシランカップリング剤24aのアミノ基と反応することで、絶縁層21の密着性は向上する。このように絶縁層21とも結合しているシランカップリング剤24aの場合にも、そのアミノ基には、N原子上に非共有電子対が存在している。配線22cのCu22caが拡散し、NiPのバリアメタル層23を通過してしまったときには、シランカップリング剤24aがそのアミノ基の非共有電子対を使ってCu22caに配位し、それにより、Cu22caを捕捉することができる。
【0057】
尚、この図15には、アミノ系のシランカップリング剤24aを例にしてCu22caの捕捉について説明した。このほか、エポキシ基を有するエポキシ系のシランカップリング剤、メルカプト基を有するメルカプト系のシランカップリング剤等の化合物を用いた場合も、この図15に示したのと同様にして、拡散してくるCu22caをその化合物で捕捉することが可能である。Cu22caの捕捉能を有する官能基を有する様々なカップリング剤を用いて、拡散してくるCu22caをそのカップリング剤で捕捉することが可能である。
【0058】
また、拡散してくるCu22caを捕捉するためには、このようなカップリング剤のほか、所定の官能基を有するキレート剤を用いることも可能であり、この場合も、拡散してくるCu22caをそのキレート剤の所定の官能基で捕捉することが可能である。
【0059】
化合物層24に含まれる化合物は、1種に限らず、複数種であってもよい。例えば、複数種の化合物が混在する単層の化合物層24を形成したり、異なる種類の化合物の層を積層した構造を有する化合物層24を形成したりすることもできる。化合物の組み合わせは、そこに含まれる官能基の種類、結合相手(バリアメタル層23、絶縁層21)の材質等を考慮して、設定することができる。
【0060】
例えば、1分子でバリアメタル層23と絶縁層21との双方に結合してそれらの密着性を高める役割を主に果たす化合物と、拡散してくる元素を捕捉する役割を主に果たす化合物とを、単層の化合物層24内に混在させることが可能である。
【0061】
また、バリアメタル層23側と絶縁層21側とで、異なる種類の化合物の層を形成することも可能である。例えば、バリアメタル層23にNiPを用い、絶縁層21にポリイミド樹脂を用いる場合、バリアメタル層23側にトリアジンチオールを形成し、絶縁層21側にアミノ系のシランカップリング剤を形成する。このほか、絶縁層21にエポキシ樹脂を用いる場合には、絶縁層21側にアミノ系、エポキシ系又はメルカプト系のシランカップリング剤を形成し、バリアメタル層23側にはアミノ系のシランカップリング剤又はトリアジンチオールを形成する。このような化合物の組み合わせにより、化合物層24による拡散元素の捕捉と、化合物層24のバリアメタル層23及び絶縁層21との密着性向上を図ることが可能である。
【0062】
このように異なる種類の化合物の層を積層して化合物層24を形成する場合は、まず、1種類目の化合物を用い、その化合物を含む処理溶液を用いた溶液付着処理、及びその後の乾燥を実施する。次いで、2種類目の化合物を用い、同様に溶液付着処理及び乾燥を実施する。化合物層24を3層以上の積層構造とする場合には、このような工程を繰り返すようにすればよい。
【0063】
尚、同じ種類の化合物を、このように溶液付着処理と乾燥を繰り返し実施することで形成することもできる。溶液付着処理のうち、例えば浸漬処理では、複数ロットの処理等、浸漬処理を繰り返すことで、処理溶液の化合物濃度が変動し得るため、同じ浸漬時間条件では、バリアメタル層23の表面に十分な量の化合物が結合しないことも起こり得る。このような場合でも、浸漬処理を繰り返して実施することで、バリアメタル層23の表面に結合可能な量の化合物を十分に結合させることが可能になる。
【0064】
溶液付着処理と乾燥とを繰り返し実施する方法を用いる場合には、例えば、各回で使用する処理溶液の化合物濃度を低くし、そのような低濃度の処理溶液を用いて溶液付着処理を実施することができる。各回で使用する処理溶液の化合物濃度を低くすることで、バリアメタル層23の表面に化合物が均一性良く結合した化合物層24を形成することが可能になる。また、処理溶液の化合物濃度を低くすることで、処理溶液の長寿命化、管理の容易化等を図ることも可能になる。
【0065】
次に、以上述べたような配線構造に関し、更に具体例を挙げて説明する。
[実施例1]
Si基板上に、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることによって、下側の絶縁樹脂層を形成した後、密着層であるTi層、及びシード層であるCu層を、スパッタ法により、それぞれ100nmの膜厚で形成する。次いで、ポジ型レジストを用い、L/Sが5μmの配線形成用の開口部を形成したレジストパターンを形成する。そのレジストパターンの開口部に、当該開口部から露出するCu層をシード層として用い、電解めっき法により、5μmのCu配線を形成する。レジストを除去した後、そのレジストで覆われていた部分のシード層のCu層を、過硫酸アンモニウム水溶液でエッチング除去し、更に、密着層のTi層を、過酸化水素系水溶液でエッチング除去する。次いで、無電解めっき法により、Ti層、Cu層及びCu配線(導電部)の表面に、バリアメタル層として膜厚0.2μmのNiP層を形成する。このようにしてNiP層の形成まで行ったSi基板を、化合物としてトリアジンチオールを1wt%含むトリアジンチオール水溶液に浸漬し、NiP層表面に、化合物層としてトリアジンチオール皮膜を形成する。そして、トリアジンチオール皮膜及びNiP層を形成した導電部を覆うように、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることで、上側の絶縁樹脂層を形成し、それにより、絶縁樹脂層内に導電部が形成された配線構造を形成する。
【0066】
このようにして形成される配線構造について、温度121℃、湿度85%の条件でバイアス試験を行った後、その断面観察を行ったところ、Cuがポリイミド中に拡散していることは確認できなかった。この配線構造は、エレクトロマイグレーション耐性に優れる構造であることが確認された。
【0067】
[実施例2]
Si基板上に、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることによって、下側の絶縁樹脂層を形成した後、密着層であるTi層、及びシード層であるCu層を、スパッタ法により、それぞれ100nmの膜厚で形成する。次いで、ポジ型レジストを用い、L/Sが5μmの配線形成用の開口部を形成したレジストパターンを形成する。そのレジストパターンの開口部に、当該開口部から露出するCu層をシード層として用い、電解めっき法により、5μmのCu配線を形成する。レジストを除去した後、そのレジストで覆われていた部分のシード層のCu層を、過硫酸アンモニウム水溶液でエッチング除去し、更に、密着層のTi層を、過酸化水素系水溶液でエッチング除去する。次いで、無電解めっき法により、Ti層、Cu層及びCu配線(導電部)の表面に、バリアメタル層として膜厚0.2μmのNiP層を形成する。このようにしてNiP層の形成まで行ったSi基板を、化合物としてアミノ系シランカップリング剤を1wt%含むシランカップリング剤水溶液に浸漬し、NiP層表面に、化合物層としてシランカップリング剤皮膜を形成する。そして、シランカップリング剤皮膜及びNiP層を形成した導電部を覆うように、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることで、上側の絶縁樹脂層を形成し、それにより、絶縁樹脂層内に導電部が形成された配線構造を形成する。
【0068】
このようにして形成される配線構造について、温度121℃、湿度85%の条件でバイアス試験を行った後、その断面観察を行ったところ、Cuがポリイミド中に拡散していることは確認できなかった。この配線構造は、エレクトロマイグレーション耐性に優れる構造であることが確認された。
【0069】
[実施例3]
実施例1のような手順で形成される配線構造について、Ti層、Cu層及びCu配線を含む導電部、並びにその表面のNiP層を覆っている、上側絶縁樹脂層を剥離し、剥離後のNiP層表面、及び上側絶縁樹脂層の剥離面の分析を行った。分析の結果、NiP層表面、及び上側絶縁樹脂層の剥離面に、トリアジンチオールが存在していることが確認された。
【0070】
[実施例4]
実施例2のような手順で形成される配線構造について、Ti層、Cu層及びCu配線を含む導電部、並びにその表面のNiP層を覆っている、上側絶縁樹脂層を剥離し、剥離後のNiP層表面、及び上側絶縁樹脂層の剥離面の分析を行った。分析の結果、NiP層表面、及び上側絶縁樹脂層の剥離面に、アミノ系シランカップリング剤(加水分解後の構造)が存在していることが確認された。
【0071】
[比較例1]
Si基板上に、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることによって、下側の絶縁樹脂層を形成した後、密着層であるTi層、及びシード層であるCu層を、スパッタ法により、それぞれ100nmの膜厚で形成する。次いで、ポジ型レジストを用い、L/Sが5μmの配線形成用の開口部を形成したレジストパターンを形成する。そのレジストパターンの開口部に、当該開口部から露出するCu層をシード層として用い、電解めっき法により、5μmのCu配線を形成する。レジストを除去した後、そのレジストで覆われていた部分のシード層のCu層を、過硫酸アンモニウム水溶液でエッチング除去し、更に、密着層のTi層を、過酸化水素系水溶液でエッチング除去する。そして、Ti層、Cu層及びCu配線(導電部)を覆うように、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることで、上側の絶縁樹脂層を形成し、それにより、絶縁樹脂層内に導電部が形成された配線構造を形成する。
【0072】
このようにして形成される配線構造について、温度121℃、湿度85%の条件でバイアス試験を行った後、その断面観察を行ったところ、Cuがポリイミド中に拡散していることが確認された。
【0073】
[比較例2]
Si基板上に、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることによって、下側の絶縁樹脂層を形成した後、密着層であるTi層、及びシード層であるCu層を、スパッタ法により、それぞれ100nmの膜厚で形成する。次いで、ポジ型レジストを用い、L/Sが5μmの配線形成用の開口部を形成したレジストパターンを形成する。そのレジストパターンの開口部に、当該開口部から露出するCu層をシード層として用い、電解めっき法により、5μmのCu配線を形成する。レジストを除去した後、そのレジストで覆われていた部分のシード層のCu層を、過硫酸アンモニウム水溶液でエッチング除去し、更に、密着層のTi層を、過酸化水素系水溶液でエッチング除去する。次いで、無電解めっき法により、Ti層、Cu層及びCu配線(導電部)の表面に、バリアメタル層として膜厚0.2μmのNiP層を形成する。そして、NiP層を形成した導電部を覆うように、熱硬化性ポリイミド樹脂を形成し、それを硬化させることで、上側の絶縁樹脂層を形成し、それにより、絶縁樹脂層内に導電部が形成された配線構造を形成する。
【0074】
このようにして形成される配線構造について、温度121℃、湿度85%の条件でバイアス試験を行った後、その断面観察を行ったところ、Cuがポリイミド中に拡散していることが確認された。
【0075】
以上説明したように、絶縁層内に埋設されるCu配線等の導電部表面に、バリアメタル層を設け、更にそのバリアメタル層表面に、非共有電子対を有する官能基を1分子中に少なくとも2つ備える化合物を含んだ化合物層を設ける。これにより、導電部からCu等の元素が拡散し、その元素がバリアメタル層を通過してしまったような場合にも、その元素を化合物層内に捕捉し、その外側の絶縁層へ拡散するのを効果的に抑制することが可能になる。このような化合物層を形成することで、バリアメタル層を薄く形成することが可能になる。化合物層自体も薄く形成することが可能であるため、配線パターンの微細化、狭ピッチ化を図ることが可能になる。また、バリアメタル層を、比較的バリア性の低い材料を用いて形成した場合にも、導電部から絶縁層への元素拡散を効果的に抑制することが可能になる。
【0076】
尚、上記の説明では、電子部品として回路基板を例にしたが、上記のような化合物層を形成する手法は、回路基板に限らず、様々な電子部品に同様に適用可能である。例えば、上記のような手法を、半導体装置(電子部品)の配線構造に適用することも可能である。
【0077】
図16は半導体装置の一例を示す図である。図16において、(A)は半導体装置の要部断面模式図、(B)は(A)のY部拡大図である。
図16には、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ510が形成された半導体基板520上に、酸化シリコン等の絶縁層531に埋設されたプラグ530b及び配線パターン530aを有する配線層530が形成された、半導体装置500を例示している。尚、MOSトランジスタ510は、素子分離領域521で画定された素子領域に形成されている。
【0078】
配線パターン530aは、図16(B)に示すように、第1絶縁層531a(絶縁層531の一部)上の第2絶縁層531b(絶縁層531の一部)に設けられた配線溝531baに形成されている。配線パターン530aは、第1バリアメタル層532a及び配線532bを含む導電部532を有する。第1バリアメタル層532aは、例えば、Ta、窒化タンタル(TaN)、Ti、窒化チタン(TiN)、或いはそれらのうちの2種以上を含む材料を用いて形成される。配線532bは、例えば、Cu又はCu合金を用いて形成される。
【0079】
導電部532は、ダマシンプロセスを用いて形成することができる。即ち、まず、第1絶縁層531a上に第2絶縁層531bを形成した後、その第2絶縁層531bに配線溝531baを形成する。次いで、第1バリアメタル層532aをスパッタ法等により形成し、その上に配線532bを電解めっき法等により形成する。そして、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用い、第2絶縁層531b上の不要な部分を除去し、残渣等を洗浄により除去する。
【0080】
導電部532の表面には、図16(B)に示したように、配線パターン530aの一部である第2バリアメタル層533が形成され、更にその第2バリアメタル層533の表面に、所定の化合物を含む化合物層534が形成されている。第2バリアメタル層533は、例えば、無電解めっき法で形成可能なNiPやCoWP等を用いて形成される。また、化合物層534は、非共有電子対を有する官能基を1分子中に少なくとも2つ備える化合物を、1種又は2種以上用いて形成される。化合物層534に2種以上の化合物を用いる場合は、それらの化合物を含む単層の化合物層534、或いはそれらの化合物の層を積層した化合物層534を形成することができる。
【0081】
第2バリアメタル層533は、上記のようにして導電部532を形成した後、無電解めっきを行うことで、形成することができる。化合物層534は、第2バリアメタル層533の形成まで行った基板に、浸漬処理、スプレー処理又はスピンコーティング処理(溶液付着処理)を行い、乾燥を行うことで、形成することができる。
【0082】
第2バリアメタル層533及び化合物層534の形成まで行った基板上には、第3絶縁層531c(絶縁層531の一部)が形成される。
配線層530をこのような配線構造とした場合にも、配線532bのCu等の元素拡散は、第1バリアメタル層532aで抑えられるほか、第2バリアメタル層533でも抑えられる。このとき、たとえ配線532bの元素が第2バリアメタル層533を通過してしまったとしても、その通過した元素は、化合物層534で捕捉することができるため、第3絶縁層531c等への元素拡散を効果的に抑制することができる。
【0083】
図17は半導体装置の別例を示す図である。図17において、(A)は半導体装置の要部断面模式図、(B)は(A)のZ部拡大図である。
図17には、MOSトランジスタ610が形成された半導体基板620上に、酸化シリコン等の絶縁層631に埋設されたプラグ630b及び配線パターン630aを有する配線層630が形成された、半導体装置600を例示している。尚、MOSトランジスタ610は、素子分離領域621で画定された素子領域に形成されている。
【0084】
配線パターン630aは、図17(B)に示すように、第1絶縁層631a(絶縁層631の一部)上に形成された、第1バリアメタル層632a、配線632b及び第2バリアメタル層632cを含む導電部632を有する。第1バリアメタル層632a及び第2バリアメタル層632cは、例えば、Ta、TaN、Ti、TiN、或いはそれらのうちの2種以上を含む材料を用いて形成される。配線632bは、例えば、アルミニウム(Al)又はAl合金を用いて形成される。
【0085】
導電部632は、スパッタ法を用いて形成することができる。即ち、まず、第1絶縁層631a上に、スパッタ法を用いて、第1バリアメタル層632a、配線632b及び第2バリアメタル層632cとなる層を順に積層し、その積層構造をパターニングする。それにより、第1絶縁層631a上に、第1バリアメタル層632a、配線632b及び第2バリアメタル層632cを形成する。
【0086】
導電部632の表面には、図17(B)に示したように、配線パターン630aの一部である第3バリアメタル層633が形成され、更にその第3バリアメタル層633の表面に、所定の化合物を含む化合物層634が形成されている。第3バリアメタル層633は、例えば、無電解めっき法で形成可能なNiPやCoWP等を用いて形成される。また、化合物層634は、非共有電子対を有する官能基を1分子中に少なくとも2つ備える化合物を、1種又は2種以上用いて形成される。化合物層634に2種以上の化合物を用いる場合は、それらの化合物を含む単層の化合物層634、或いはそれらの化合物の層を積層した化合物層634を形成することができる。
【0087】
第3バリアメタル層633は、上記のようにして導電部632を形成した後、無電解めっきを行うことで、形成することができる。化合物層634は、第3バリアメタル層633の形成まで行った基板に、浸漬処理、スプレー処理又はスピンコーティング処理(溶液付着処理)を行い、乾燥を行うことで、形成することができる。
【0088】
第3バリアメタル層633及び化合物層634の形成まで行った基板上には、第2絶縁層631b(絶縁層631の一部)が形成される。
配線層630をこのような配線構造とした場合にも、配線632bのAl等の元素拡散は、第1バリアメタル層632a及び第2バリアメタル層632c、更に第3バリアメタル層633で抑えられる。このとき、たとえ配線632bの元素が第3バリアメタル層633を通過してしまったとしても、その通過した元素は、化合物層634で捕捉することができるため、第2絶縁層631b等への元素拡散を効果的に抑制することができる。
【0089】
このように、半導体装置の配線構造にも化合物層を用いる手法を適用することが可能であり、このような化合物層を形成することで、配線等の導電部から拡散する元素を効果的に捕捉することができる。また、このような化合物層を形成することで、配線パターンの微細化、狭ピッチ化を図ることが可能になる。
【0090】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 第1絶縁層上に導電部を形成する工程と、
前記導電部上にバリアメタル層を形成する工程と、
前記バリアメタル層上に、非共有電子対を有する官能基を少なくとも2つ備える化合物を含む化合物層を形成する工程と、
前記化合物層上に第2絶縁層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【0091】
(付記2) 前記化合物は、キレート剤又はカップリング剤であることを特徴とする付記1に記載の電子部品の製造方法。
(付記3) 前記化合物層は、前記化合物として異なる種類の化合物を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【0092】
(付記4) 前記化合物層を形成する工程は、
前記バリアメタル層に、前記化合物を含む溶液を付着させる工程と、
前記溶液を乾燥し、前記バリアメタル層上に前記化合物を付着させる工程と、
を含むことを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【0093】
(付記5) 前記バリアメタル層に前記溶液を付着させる工程と、前記溶液を乾燥する工程とを交互に繰り返すことを特徴とする付記4に記載の電子部品の製造方法。
(付記6) 前記バリアメタル層を、無電解めっき法を用いて形成することを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【0094】
(付記7) 第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成された導電部と、
前記導電部上に形成されたバリアメタル層と、
前記バリアメタル層上に形成され、非共有電子対を有する官能基を少なくとも2つ備える化合物を含む化合物層と、
前記化合物層上に形成された第2絶縁層と、
を含むことを特徴とする電子部品。
【0095】
(付記8) 前記化合物は、キレート剤又はカップリング剤であることを特徴とする付記7に記載の電子部品。
(付記9) 前記化合物層は、前記化合物として異なる種類の化合物を含むことを特徴とする付記7又は8に記載の電子部品。
【0096】
(付記10) 前記化合物の非共有電子対に、前記導電部に含まれる元素と同種の元素が配位していることを特徴とする付記7乃至9のいずれかに記載の電子部品。
【符号の説明】
【0097】
1,21a,531a,631a 第1絶縁層
2,22,532,632 導電部
3,23 バリアメタル層
4,24,534,634 化合物層
5,21b,531b,631b 第2絶縁層
21c,531c 第3絶縁層
10 支持基板
20,530,630 配線層
20a,530a,630a 配線パターン
21,531,631 絶縁層
22a 密着層
22b シード層
22c,532b,632b 配線
22ca Cu
22d ビア
22da ビアホール
24a シランカップリング剤
31,32 レジスト
31a,32a 開口部
100 回路基板
500,600 半導体装置
510,610 MOSトランジスタ
520,620 半導体基板
521,621 素子分離領域
530b,630b プラグ
531ba 配線溝
532a,632a 第1バリアメタル層
533,632c 第2バリアメタル層
633 第3バリアメタル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層上に導電部を形成する工程と、
前記導電部上にバリアメタル層を形成する工程と、
前記バリアメタル層上に、非共有電子対を有する官能基を少なくとも2つ備える化合物を含む化合物層を形成する工程と、
前記化合物層上に第2絶縁層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記化合物は、キレート剤又はカップリング剤であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記化合物層は、前記化合物として異なる種類の化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記化合物層を形成する工程は、
前記バリアメタル層に、前記化合物を含む溶液を付着させる工程と、
前記溶液を乾燥し、前記バリアメタル層上に前記化合物を付着させる工程と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記バリアメタル層を、無電解めっき法を用いて形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成された導電部と、
前記導電部上に形成されたバリアメタル層と、
前記バリアメタル層上に形成され、非共有電子対を有する官能基を少なくとも2つ備える化合物を含む化合物層と、
前記化合物層上に形成された第2絶縁層と、
を含むことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−15405(P2012−15405A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152082(P2010−152082)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】