説明

電子部品の製造方法

【課題】端子電極の表面に均一な形状のハンダ層を形成することができる電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】この電子部品の製造方法では、電子部品の端子電極に付着させた溶融ハンダに酸化防止流体を吹き付けることで、溶融ハンダの表面張力に打ち勝つ運動量がハンダに与えられ、端子電極に付着した溶融ハンダの余剰部分が除去される。また、この電子部品の製造方法では、電子部品を上層26の液面26aから引き上げる際に、上層26の液面26a付近で溶融ハンダの融点以上の温度の酸化防止流体を電子部品に吹き付けている。これにより、端子電極に付着した溶融ハンダの温度が保たれると共に酸化が防止されるので、溶融ハンダの部分的な組成変化が生じることが抑制され、端子電極の表面に均一な形状のハンダ層を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造方法には、実装のためのハンダを端子電極の表面に付与する工程が含まれる場合がある。このような工程として、例えば特許文献1に記載の表面処理方法では、飽和脂肪酸を用いた表面処理液からなる上層と、溶融ハンダ液からなる下層とに分離した2層の液を入れた槽に電子部品を浸漬する手法が開示されている。この方法によれば、上層の表面処理液によって端子電極の表面に付着した金属酸化物による汚れが落ち、次いで、下層の溶融ハンダ液によって端子電極の表面に溶融ハンダが付着し、再び上層の表面処理液中を通る際に、溶融ハンダの表面に飽和脂肪酸の膜がコーティングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4203281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の方法では、電子部品を槽から引き上げた後、端子電極の表面に形成されたハンダ層の形状が偏ることが多く、均一のハンダ層を得ることが難しいという問題があった。この問題は、端子電極に付着した溶融ハンダ自体の表面張力に起因するものと考えられるが、槽から電子部品を引き上げた際の温度変化によるハンダ層の粘性の変化や、酸化による部分的な組成変化などによる不均一な条件の変化に起因する部分もあると考えられる。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、端子電極の表面に均一な形状のハンダ層を形成することができる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る電子部品の製造方法は、電子部品に形成された端子電極の表面にハンダ層を形成するハンダ層形成工程を備えた電子部品の製造方法であって、ハンダ層形成工程は、飽和脂肪酸を用いた表面処理液からなる上層と、溶融ハンダ液からなる下層とに分離した2層の液を入れた槽に電子部品を浸漬し、当該電子部品の端子電極を覆うように溶融ハンダを付着させるハンダ付着工程と、上層の液面から電子部品を引き上げる際に、液面付近で電子部品に向けて溶融ハンダの融点以上の温度の酸化防止流体を吹き付け、端子電極に付着した溶融ハンダの余剰部分を除去するハンダ除去工程と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
この電子部品の製造方法では、電子部品の端子電極に付着させた溶融ハンダに酸化防止流体を吹き付けることで、溶融ハンダの表面張力に打ち勝つ運動量がハンダに与えられ、端子電極に付着した溶融ハンダの余剰部分が除去される。また、この電子部品の製造方法では、電子部品を上層の液面から引き上げる際に、上層の液面付近で溶融ハンダの融点以上の温度の酸化防止流体を電子部品に吹き付けている。これにより、端子電極に付着した溶融ハンダの温度が保たれると共に酸化が防止されるので、溶融ハンダの部分的な組成変化が生じることが抑制され、端子電極の表面に均一な形状のハンダ層を形成できる。
【0008】
また、酸化防止流体として飽和脂肪酸を溶媒に溶かした溶液を用いることが好ましい。この場合、余剰部分を除去した後のハンダ層の表面により確実に飽和脂肪酸による保護膜を形成できる。
【0009】
また、電子部品を上層の液面から略垂直に引き上げると共に、酸化防止流体を電子部品に対して斜め上方から吹き付けることが好ましい。この場合、溶融ハンダの余剰部分をより確実に除去できる。また、複数の電子部品を連続的に液面から引き上げる場合には、酸化防止流体によって除去された溶融ハンダが処理済の電子部品に付着することを防止できる。
【0010】
また、ハンダ付着工程とハンダ除去工程とで槽を別々に用意することが好ましい。この場合、除去された溶融ハンダの余剰部分による表面処理液の汚染を防止できる。
【0011】
また、ハンダ付着工程とハンダ除去工程とで同一の槽を用い、これらの槽に入れた液の上層の温度が溶融ハンダの融点以上の温度に保たれていてもよい。或いは、ハンダ除去工程で用いる槽には、溶融ハンダの融点以上の温度に保たれた表面処理液のみが入れられているようにしてもよい。この場合、ハンダ層形成工程の実施に用いる設備の簡単化が図られると共に、酸化防止流体を吹き付ける直前まで端子電極に付着した溶融ハンダの流動状態が維持されるので、精度良く溶融ハンダの余剰部分を除去できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、端子電極の表面に均一な形状のハンダ層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電子部品の製造方法を用いて製造される電子部品の一例を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】本発明に係る電子部品の製造方法に用いるハンダ層形成装置21の構成例を示す図である。
【図4】電子部品を固定する基板の断面図である。
【図5】ハンダ層形成装置によるハンダ付着工程を示す図である。
【図6】ハンダ層形成装置によるハンダ除去工程を示す図である。
【図7】洗浄冷却工程を示す図である。
【図8】図7の後続の工程を示す図である。
【図9】素子集合基板の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電子部品の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る電子部品の製造方法を用いて製造される電子部品の一例を示す斜視図である。また、図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1及び図2に示す電子部品1は、チップ型の積層セラミックコンデンサである。この電子部品1は、例えば長さ2.0mm、幅1.2mm、奥行き1.2mmの略直方体形状をなしている。
【0016】
電子部品1は、複数の誘電体層4を積層してなる素体2と、素体2の両端部を覆うように形成された一対の端子電極3,3とを備えている。素体2は、例えばBaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、又は(Ba,Ca)TiO系といった誘電体セラミックを含むセラミックグリーンシートの積層体を焼結することによって形成されている。素体2では、各誘電体層4は、互いの境界が視認できない程度に一体化されている。
【0017】
素体4の内部には、図2に示すように、第1の内部電極6a及び第2の内部電極6bが設けられている。第1の内部電極6a及び第2の内部電極6bは、例えばCuを含む導電性ペーストを印刷等によってセラミックグリーンシートにパターン形成し、当該パターンがセラミックグリーンシートと共に焼結されることによって形成されている。
【0018】
第1の内部電極6aと第2の内部電極6bとは、少なくともグリーンシート1層分に相当する誘電体層4を挟むようにして積層方向に交互に配置され、第1の内部電極6aの端部は、素体2の一方の端面2aまで伸び、第2の内部電極6bの端部は、素体2の他方の端面2bまで延びている。
【0019】
第1の内部電極6aと第2の内部電極6bとによって挟まれる素体領域は、電子部品1における静電容量を実質的に発生させる部分である。この素体領域は、電歪効果によって機械的歪みが生じる領域でもある。すなわち、素体領域は、第1の内部電極6aと第2の内部電極6bとの間に電圧が印加されると、素体2の積層方向に膨張し、素体2の対向する側面を結ぶ方向に収縮する。
【0020】
端子電極3は、例えばCuを主成分として焼き付けによって形成された下地電極層11と、下地電極層11を覆うように形成されたNi拡散層12とによって構成されている。下地電極層11は、Cuを含む金属成分とガラス成分とを含有する第1電極層11aと、第1電極層11aよりもガラス成分の含有量が高い第2電極層11bとを有している。
【0021】
第1電極層11a及び第2電極層11bは、金属成分とガラス成分とバインダ、分散剤及び溶剤の少なくとも一方とを含む導体ペーストを用いて形成される。第1電極層11aには、Cu粒子に対して2重量%〜15重量%程度のガラス成分が含有されている。第2電極層11bには、Cu粒子に対して1重量%以下のガラス成分が含まれている。なお、第2電極層11bには、ガラス成分が全く含有されていなくてもよい。
【0022】
また、端子電極3の表面には、ハンダ層13が設けられている。このハンダ層13は、例えばSn−Ag−Cu−Ni−Geの5元系鉛フリーハンダによって形成されている。5元系鉛フリーハンダは、例えばSnを主成分とし、Agが1.0重量%〜4.0重量%、Cuが0.1重量%〜2.0重量%、Niが0.01重量%〜1.0重量%、Geが0.005重量%〜0.1重量%含有されている。5元系鉛フリーハンダ中のNi成分は、下地電極層11側に拡散し、上述したNi拡散層12を形成している。本実施形態における5元系鉛フリーハンダの融点は、例えば217℃となっている。
【0023】
続いて、上述した電子部品1の製造方法について説明する。
【0024】
電子部品1の製造にあたっては、まず、素体2の形成を行う(素体形成工程)。この工程では、誘電体層4となるセラミックグリーンシートを準備する。セラミックグリーンシートは、ドクターブレード法等を用いてPETフィルム上にセラミックスラリーを塗布し、これを乾燥させることによって得られる。セラミックスラリーは、例えばBaTiOなどを主成分とする誘電体材料に、溶剤及び可塑剤などを加え、これらを混合することによって得られる。
【0025】
次に、セラミックグリーンシートに内部電極6a,6bとなる電極パターンをスクリーン印刷によって形成し、乾燥させる。電極パターンのスクリーン印刷には、例えばCu粉末にバインダや溶剤等を混合した電極ペーストが用いられる。電極パターンの形成の後、セラミックグリーンシートを所定の順序で積層し、積層体を得る。
【0026】
次に、得られた積層体を切断し、積層チップを得る。チップ化の後、加熱処理によって脱バインダを行う。加熱処理は、例えば180℃〜400℃で0.5時間〜30時間行うことが好ましい。加熱処理の後、積層チップを800℃〜1400℃で0.5時間〜8.0時間程度焼成する。また、バレル研磨によって面取りを行い、積層チップの角部をR状にすることで、素体2が形成される。
【0027】
素体2の形成の後、下地電極層11の形成を行う(端子電極形成工程)。下地電極層11の形成にあたっては、例えば導体グリーンシート用のCuペーストを含有する成分にガラスフリットを加えた導体ペーストが用いられる。次に、素体2の端部を導体ペースト中に浸漬することにより、素体2の端部を覆うように第1電極層11aとなる導体ペーストを付着させる。
【0028】
次に、PETフィルム上に第2電極層11bとなる導体ペーストを所定の厚みで塗布し、これを乾燥して導体グリーンシートを形成する。この後、得られた導体グリーンシートをPETフィルム上で所望のサイズに切断し、PETフィルムを剥離する。続いて、形成した導体グリーンシートを素体2の端面2a,2bに貼り付ける。このとき、第1電極層11aとなる導体ペーストに含まれる有機溶剤が、第2電極層11bとなる導体グリーンシートに浸透し、導体グリーンシートに残留している有機成分を溶解する。この結果、第1電極層11aとなる導体ペーストと第2電極層11bとなる導体グリーンシートが一体化する。これらを乾燥・焼き付けすることにより、下地電極層11が形成された積層チップK(図4参照)を得る。
【0029】
下地電極層11を形成した後、ハンダ層13の形成を行う(ハンダ層形成工程)。ハンダ層13の形成にあたっては、例えば図3に示すようなハンダ層形成装置21を用いる。ハンダ層形成装置21は、槽22と、ポンプ23と、一対のノズル24,24とによって構成されている。
【0030】
槽22には、飽和脂肪酸を用いた表面処理液(酸化防止流体)からなる上層26と、溶融ハンダ液からなる下層27とに分離した2層の液が充填されている。上層26の表面処理液に用いられる飽和脂肪酸としては、例えばパルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などが用いられる。上層26の表面処理液は、例えば240℃に維持され、高温活性状態となっている。また、下層27の溶融ハンダ液は、Sn−Ag−Cu−Ni−Geの5元系鉛フリーハンダの溶融液である。下層27の溶融ハンダ液は、例えば240℃に維持されている。
【0031】
ポンプ23は、高温液用ポンプである。ポンプ23は、図示しない制御手段による制御を受けて、上層26の表面処理液の一部をノズル24,24に供給する。また、ノズル24,24は、上層26の液面に向けて配置されている。ノズル24,24は、ポンプによる表面処理液の供給を受けて、上層26の液面の略同一箇所に向けて斜め上方からそれぞれ表面処理液を吹き付けるようになっている。
【0032】
下地電極層11を形成した複数の積層チップKは、図4に示すように、予め基板31にセットしておく。基板31は、例えば金属によって矩形状に形成された本体部32を有し、本体部32の表面は、耐熱性を有するフッ素系ゴム33によって被覆されている。また、本体部32には、素体2を通す孔部32aが複数設けられており、各孔部32aに積層チップKがそれぞれ嵌め込まれるようになっている。
【0033】
積層チップKを基板31にセットした後、図5に示すように、基板31を槽22に浸漬する。基板31が表面処理液からなる上層26を通る際、飽和脂肪酸の高温活性作用により、下地電極層11の表面が洗浄され、不要な酸化物が除去される。上層26を通った基板31が更に下層27まで到達すると、表面処理された下地電極層11の表面に溶融ハンダが付着し、ハンダ層13が形成される(ハンダ付着工程)。
【0034】
次に、図6に示すように、基板31を槽22から引き上げる。基板31が下層27から再び上層26に到達すると、下地電極層11に付着した溶融ハンダの表面が飽和脂肪酸によってコーティングされる。また、基板31を上層26の液面26aから引き上げる際、ポンプ23を作動させ、ノズル24,24の先端から液面26a付近で基板31に向けて表面処理液を吹き付ける。吹き付けにあたっては、例えばノズル24,24に設けた加熱手段(不図示)によって表面処理液を例えば250℃に加熱する。そして、下地電極層11に付着している溶融ハンダに向けて、1回当たり約10秒間の吹き付けを1回〜3回程度行う。
【0035】
これにより、溶融ハンダの表面張力に打ち勝つ運動量がハンダに与えられ、下地電極層11に付着したハンダの余剰部分が除去される(ハンダ除去工程)。ハンダの余剰部分が除去された後のハンダ層13の表面は、ノズル24,24から吹き付けられた表面処理液によって、飽和脂肪酸でコーティングされた状態が維持される。
【0036】
基板31を槽22から完全に引き上げた後、図7に示すように、アブゾール洗浄液が充填された槽28に基板31を浸漬し、ハンダ層13の洗浄及び冷却を行う(洗浄冷却工程)。溶融ハンダが冷却されて固まる際、ハンダ層13の熱によって下地電極層11とハンダ層13との間でNiが拡散する。これにより、下地電極層11とハンダ層13との間にNi拡散層12が形成される。ハンダ層13の洗浄及び冷却の後、図8に示すように、基板31の孔部32aから素体2を外すと、図1及び図2に示した電子部品1が得られる。
【0037】
以上説明したように、この電子部品の製造方法では、電子部品1の端子電極3に付着させた溶融ハンダに酸化防止流体を吹き付けることで、溶融ハンダの表面張力に打ち勝つ運動量がハンダに与えられ、端子電極3に付着した溶融ハンダの余剰部分が除去される。また、この電子部品の製造方法では、電子部品1を上層26の液面26aから引き上げる際に、上層26の液面26a付近で溶融ハンダの融点以上の温度の酸化防止流体を電子部品1に吹き付けている。これにより、端子電極3に付着した溶融ハンダの温度が保たれると共に酸化が防止されるので、溶融ハンダの部分的な組成変化が生じることが抑制され、端子電極3の表面に均一な形状のハンダ層13を形成できる。
【0038】
また、この電子部品の製造方法では、溶融ハンダに吹き付ける酸化防止流体として例えばパルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などの飽和脂肪酸を溶媒に溶かした溶液を用いている。これにより、余剰部分を除去した後のハンダ層13の表面により確実に飽和脂肪酸による保護膜を形成できる。
【0039】
また、この電子部品の製造方法では、積層チップKを上層26の液面26aから略垂直に引き上げると共に、酸化防止流体を積層チップKに対して斜め上方から吹き付けている。これにより、溶融ハンダの余剰部分が自重によってより確実に除去される。なお、本実施形態では、基板31を用いることにより、複数の積層チップKを連続的に液面26aから引き上げている。したがって、酸化防止流体を積層チップKに対して斜め上方から吹き付けることにより、除去された溶融ハンダが液面26aの上方に位置する処理済の積層チップKに付着することを防止できる。また、未処理の積層チップKは、上層26の表面処理液中に位置しているので、除去された溶融ハンダが付着することを防止できる。
【0040】
また、本実施形態では、ハンダ付着工程とハンダ除去工程とで同一の槽22が用いられており、槽22に入れた液の上層26の温度が溶融ハンダの融点以上の温度に保たれている。これにより、ハンダ層形成工程の実施に用いる設備の簡単化が図られると共に、酸化防止流体を吹き付ける直前まで端子電極3に付着した溶融ハンダの流動状態が維持されるので、精度良く溶融ハンダの余剰部分を除去できる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、電子部品1としてチップ型の積層セラミックコンデンサを例示したが、この電子部品の製造方法は、チップバリスタ、チップインダクタ、チップビーズといった他の電子部品に適用することもできる。また、上述した実施形態では、酸化防止流体として上層26の表面処理液を利用しているが、飽和脂肪酸からなる表面処理液に代えて、Nなどの不活性ガスを用いてもよい。また、上述した実施形態では、同一の槽22でハンダ付着工程とハンダ除去工程とを実施しているが、別々の槽22を用意してハンダ付着工程とハンダ除去工程とを実施してもよい。この場合、除去された溶融ハンダの余剰部分による表面処理液の汚染を防止できる。このとき、半田除去工程を行うための槽22に溶融ハンダの融点以上の温度に保たれる表面処理液のみを入れるようにすれば液温の管理が容易となり、溶融ハンダの除去量を好適に制御できる。
【0042】
また、上述した実施形態では、グリーンシートの積層体を切断して得られた積層チップKを基板31に固定して槽22への浸漬を行っているが、例えば図9に示すような素子集合基板31を槽22に浸漬させるようにしてもよい。この素子集合基板41は、素体2に相当する矩形の本体部42を有しており、本体部42の中央部分には、例えば3列の帯状の溝部43が形成されている。溝部43の内壁には、本体部42の厚さ方向に延びて本体部42の一面側及び他面側にそれぞれ折り返されるように形成された端子電極44が、溝部43の延在方向に沿って複数配置されている。
【0043】
このような素子集合基板41を用いる場合においても、上述した実施形態と同様のハンダ付着工程及びハンダ除去工程を経ることで、端子電極44に付着した溶融ハンダの余剰部分が除去される。また、酸化防止流体によって端子電極44に付着した溶融ハンダの温度が保たれると共に酸化が防止されるので、溶融ハンダの部分的な組成変化が生じることが抑制され、端子電極44の表面に均一な形状のハンダ層13を形成できる。ハンダ層13の形成後、図9に示すように、溝部43,43の間の部分で端子電極44,44を含むように本体部42を切断すると、素体の両端部に端子電極44が形成された電子部品1が得られる。
【符号の説明】
【0044】
1…電子部品、3…端子電極、13…ハンダ層、26…上層、26a…液面、27…下層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品に形成された端子電極の表面にハンダ層を形成するハンダ層形成工程を備えた電子部品の製造方法であって、
前記ハンダ層形成工程は、
飽和脂肪酸を用いた表面処理液からなる上層と、溶融ハンダ液からなる下層とに分離した2層の液を入れた槽に前記電子部品を浸漬し、当該電子部品の端子電極を覆うように溶融ハンダを付着させるハンダ付着工程と、
前記上層の液面から前記電子部品を引き上げる際に、前記液面付近で前記電子部品に向けて溶融ハンダの融点以上の温度の酸化防止流体を吹き付け、前記端子電極に付着した溶融ハンダの余剰部分を除去するハンダ除去工程と、を備えたことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記酸化防止流体として前記飽和脂肪酸を溶媒に溶かした溶液を用いることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記電子部品を前記上層の液面から略垂直に引き上げると共に、前記酸化防止流体を前記電子部品に対して斜め上方から吹き付けることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記ハンダ付着工程と前記ハンダ除去工程とで前記槽を別々に用意することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記ハンダ付着工程と前記ハンダ除去工程とで同一の槽を用い、これらの槽に入れた液の上層の温度が前記溶融ハンダの融点以上の温度に保たれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記ハンダ除去工程で用いる槽には、前記溶融ハンダの融点以上の温度に保たれた前記表面処理液のみが入れられていることを特徴とする請求項4記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−236457(P2011−236457A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107397(P2010−107397)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】