説明

電子部品封止用エポキシ樹脂組成物、及びそれを用いた電子部品装置

【課題】金属ケース材を有する大型の電子部品に使用してもクラックや剥離が発生することがない、封止性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置を提供する。
【解決方法】(A)30質量部〜100質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂の少なくとも一種と、(B)70質量部〜20質量部の可撓性エポキシ樹脂からなる樹脂成分と、(C)80質量部〜120質量部の酸無水物硬化剤と、(D)80質量部〜350質量部の無機充填材としての結晶性シリカとを具え、(D)結晶性シリカは、(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカ及び(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカを含むようにしてエポキシ樹脂組成物を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品封止用エポキシ樹脂組成物、及びそれを用いた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パワートランジスター、パワーICなどの動作している際に多量の熱を発生する半導体素子は、通常結晶性シリカを多量に配合したエポキシ樹脂組成物で封止されている。また、パワートランジスター等においては、従来の封止方法とは異なり、放熱板ごと樹脂封止するフルモールドタイプの樹脂封止が盛んに用いられている。
【0003】
このような状況において、樹脂封止後の半導体素子の放熱性をより一層向上させるため、いままで以上の高熱伝導性を有するエポキシ樹脂組成物が封止材として要望されている。エポキシ樹脂組成物に例えば結晶性シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ等の無機充填材を配合すると、エポキシ樹脂組成物の熱伝導性を向上させることはできるものの、電子部品装置が大型化すると、半導体素子の動作時の発熱に伴う封止材の膨張及び半導体素子の停止時の冷却に伴う封止材の収縮によって、封止材中に熱応力が生成され、クラックが生じたり、金属ケース材と封止材との界面が剥離したりしてしまうなどの問題があった。
【0004】
このような観点から、特許文献1においては、エポキシ樹脂中に含有させる無機充填材の平均粒径を10μm〜40μmとし、長軸/短軸の比を1〜1.5とするような球状のシリカを配合するとともに、融点が最終的に得られるエポキシ樹脂組成物の成形温度よりも20℃以上高い硬化促進剤を配合させることが試みられてる。このようにして得たエポキシ樹脂組成物は、比較的高い熱伝導率を有するものの、上述した大きさの無機充填材を含んでいることに起因して、大型の電子部品装置では、樹脂硬化物の収縮によって、封止材中にクラックが生じたり、金属ケース材と封止材との界面が剥離したりしてしまうなどの問題を解決することはできなかった。
【0005】
このような観点から、硬化触媒としてアミンやイミダゾール等が用いられているが、これらの触媒は、室温においてもエポキシ樹脂組成物との反応が少なからず進行しており、上述のような貯蔵寿命に影響を与えている。
【0006】
また、エポキシ樹脂組成物は空気中の水分を吸収しやすい点も増粘に影響している。したがって、これらの欠点を除き、長寿命で耐熱性を損なわない安価な樹脂が求められている。
【0007】
このような観点から、エポキシ樹脂組成物に代わる新規な樹脂組成物の開発が盛んになされている。例えば、特許文献2には、ポリエステル樹脂20〜50質量部、エポキシ樹脂1〜25質量部、ポリイミド樹脂1〜15質量部を含む樹脂組成物が開示されている。また、特許文献3には、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂とを含有する混合樹脂に対して、エポキシアクリレートを添加してなる樹脂組成物が開示されている。
【0008】
しかしながら、上述のような樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を含んでいるため、フィルム用途には使用できても、熱伝導性が必要とされるパワートランジスタなどには不向きである。一方、上記樹脂組成物を含浸させた後の電子部品装置においては、上述したように動作時及び停止時に発生する熱応力によって、樹脂組成物においてクラックが発生し、剥離してしまうなどの問題が生じ、電子部品に対する封止性が劣化してしまうという問題を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−325543号
【特許文献2】特許第3141057号
【特許文献3】特開2005−263855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属ケース材を有する大型の電子部品に使用してもクラックや剥離が発生することがない、封止性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明は、
(A)40質量部〜80質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び60質量部〜20質量部の脂環式エポキシ樹脂、並びに(B)10質量部〜30質量部の可撓性エポキシ樹脂からなる樹脂成分と、(C)80質量部〜120質量部の酸無水物硬化剤と、(D)500質量部〜800質量部の結晶性シリカとを具え、
(D)結晶性シリカは、(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカ及び(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカを含み、
(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカと(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカとの割合が、5:95〜20:80の範囲であることを特徴とする、電子部品用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、上記電子部品封止用エポキシ樹脂によって封止されてなる、外部金属ケース材を有する電子部品装置に関する。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべき鋭意検討を実施した。その結果、エポキシ樹脂がポリエステル樹脂等に比較して熱伝導率が高いことに着目し、このエポキシ樹脂に種々の工夫を加えることで上記課題の解決を試み、以下のような事実を見出すに至った。すなわち、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂と、可撓性エポキシ樹脂との混合物とすることによって、硬化剤としての酸無水物によって前記混合物を比較的短時間で硬化させることができる。
【0014】
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂は、絶縁性に優れ、さらに耐熱性や耐薬品性、耐水性、耐湿性に優れるので、電子部品に対する封止材として適した特性を有する。一方、可撓性エポキシ樹脂は、優れた可撓性を有するので、電子部品装置を構成する半導体素子の動作及び停止における発熱及び冷却に伴って発生する熱応力を吸収し、封止した際にも、クラックの発生や剥離を防止することができ、封止性に優れる。結果として、封止性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
なお、上記樹脂成分において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有割合は40質量部〜80質量部であることが必要であり、脂環式エポキシ樹脂の含有割合は60質量部〜20質量部であることが必要であり、可撓性エポキシ樹脂の含有割合は10質量部〜30質量部であることが必要である。特に、可撓性エポキシ樹脂の含有割合が30質量部を超えると硬化時間が長くなり、硬化物のガラス転移点(Tg)が低くなって、耐熱性が劣る結果となる。10質量部未満では封止材として用いた場合に、この封止材中にクラックが発生しやすくなる。
【0016】
また、アミンやイミダゾール等の硬化触媒を用いないので、貯蔵時に増粘するようなことがなく、上記エポキシ樹脂組成物の貯蔵時における長寿命化を図ることができる。
【0017】
また、本発明においては、500質量部〜800質量部の結晶性シリカを含み、この結晶性シリカは、数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカ及び数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカを含む。この結晶性シリカは、封止後のエポキシ樹脂組成物の強度を向上させるとともに、熱伝導性を向上させるように機能する。加えて、特に、このような破砕型の数平均粒径の小さい結晶性シリカを含んでいるので、上述のようにして熱応力が発生した場合においても、この熱応力の影響をさほど受けることがない。したがって、上述した可撓性のエポキシ樹脂との相乗効果によって、クラックの発生や剥離をより効果的に防止することができ、封止性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0018】
なお、本発明では、(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカと(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカとの割合を、5:95〜20:80の範囲とする。これによって、エポキシ樹脂組成物の強度及び熱伝導性と、熱応力の影響防止とをバランスさせることができ、封止後において、クラックの発生や剥離等を生じることのない、優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0019】
また、(B)可撓性エポキシ樹脂は、アルキレンオキサイド骨格を含むビスフェノール型エポキシ樹脂とすることができる。可撓性エポキシ樹脂には、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸変性エポキシ樹脂等もあるが、上述のような構成のビスフェノール型エポキシ樹脂は、特に可撓性に優れるので、上述した作用効果を得るためには特に好ましい。
【0020】
また、(C)酸無水物硬化剤は、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸の少なくとも一種を含むことができる。このような酸無水物硬化剤は、特に室温においてエポキシ樹脂との反応が抑制されるので、特に、貯蔵性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0021】
なお、上述のようにして得たエポキシ樹脂組成物は、硬化時の熱伝導率が、1.3W/m・℃以上の高い値を示す。現状得られる熱伝導率の上限は、1.8W/m・℃程度である。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本発明によれば、半導体素子の動作及び停止に伴う発熱及び冷却によって、クラックが発生し、剥離することがない、封止性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態における電子部品装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のその他の特徴及び利点について、発明を実施するための形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本実施形態における電子部品装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子部品装置10は、マザーボードとしての、例えば銅板11上にセラミック基板12が載置され、さらにセラミック基板12上には、コンデンサ13が配置され、コンデンサ13の両隣において、半導体集積回路(IC)14−1及び14−2が配置されている。コンデンサ13は、フリップチップボンディング17によってセラミック基板12の図示しないパッドを介してセラミック基板12と電気的に接続されており、IC14−1及び14−2は、ワイヤボンディング18によってセラミック基板12の図示しないパッドを介してセラミック基板12と電気的に接続されている。
【0026】
また、セラミック基板12内には、厚さ方向において図示しない層間接続体が前記図示しないパッドと電気的に接続するようにして形成され、コンデンサ13、並びにIC14−1及び14−2が、セラミック基板12を介して銅板11に電気的に接続されるようになっている。
【0027】
さらに、セラミック基板12上のコンデンサ13、並びにIC14−1及び14−2を覆うようにしてアルミ製のケース部材15が設けられており、銅板11、セラミック基板12とケース部材15との空間には、封止材として本発明のエポキシ樹脂組成物16が充填されている。
【0028】
なお、図1に示す電子部品装置10の大きさは、一片の長さが20cm程度であり、高さが2cm程度である。また、図1に示す電子部品装置10は、例えば、IGBTやパワーIC搭載基板として車載等の用途に使用することができる。
【0029】
エポキシ樹脂組成物16は、(A)40質量部〜80質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び60質量部〜20質量部の脂環式エポキシ樹脂、並びに(B)10質量部〜30質量部の可撓性エポキシ樹脂からなる樹脂成分と、(C)80質量部〜120質量部の酸無水物硬化剤と、(D)500質量部〜800質量部の結晶性シリカとを具え、(D)結晶性シリカは、(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカ及び(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカを含む。
【0030】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂は、絶縁性に優れ、さらに耐熱性や耐薬品性、耐水性、耐湿性に優れるので、電子部品装置10に対する封止材として適した特性を有する。一方、可撓性エポキシ樹脂は、優れた可撓性を有するので、電子部品装置10を構成するコンデンサ13、IC14−1,14−2の動作及び停止における発熱及び冷却に伴って発生する熱応力を吸収し、封止した際にも、クラックの発生や剥離を防止することができ、封止性に優れる。結果として、エポキシ樹脂組成物16の封止性をより向上させることができる。
【0031】
なお、上記樹脂成分において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有割合は40質量部〜80質量部であることが必要であり、脂環式エポキシ樹脂の含有割合は60質量部〜20質量部であることが必要であり、可撓性エポキシ樹脂の含有割合は10質量部〜30質量部であることが必要である。特に、可撓性エポキシ樹脂の含有割合が30質量部を超えると硬化時間が長くなり、硬化物のガラス転移点(Tg)が低くなって、耐熱性が劣る結果となる。10質量部未満では封止材として用いた場合に、この封止材中にクラックが発生しやすくなる。
【0032】
また、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂と、可撓性エポキシ樹脂との混合物とすることによって、硬化剤としての酸無水物によって前記混合物を比較的短時間で硬化させることができる。
【0033】
また、アミンやイミダゾール等の硬化触媒を用いないので、貯蔵時に増粘するようなことがなく、上記エポキシ樹脂組成物の貯蔵時における長寿命化を図ることができる。
【0034】
さらに、(A)40質量部〜80質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び60質量部〜20質量部の脂環式エポキシ樹脂、並びに(B)10質量部〜30質量部の可撓性エポキシ樹脂からなる樹脂成分に対して、(D)500質量部〜800質量部の結晶性シリカを含み、この結晶性シリカは、数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカ及び数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカを含む。
【0035】
結晶性シリカは、封止後のエポキシ樹脂組成物16の強度を向上させるとともに、熱伝導性を向上させるように機能するが、上述のように、このような破砕型の数平均粒径の小さい、(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカは、上述のようにして熱応力が発生した場合において、この熱応力の影響を抑制する作用を奏する。したがって、上述した可撓性のエポキシ樹脂との相乗効果によって、図1に示すように、エポキシ樹脂組成物16で電子部品装置10の封止をした際においても、クラックの発生や剥離を防止することができ、優れた封止性を供することができる。
【0036】
なお、(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカと(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカとの割合を、5:95〜20:80の範囲とする。これによって、エポキシ樹脂組成物16の強度及び熱伝導性と、熱応力の影響防止とをバランスさせることができ、封止材として用いたエポキシ樹脂組成物16において、クラックの発生や剥離等をより効果的に抑制することができるようになる。
【0037】
また、エポキシ樹脂組成物16を構成する(B)可撓性エポキシ樹脂は、アルキレンオキサイド骨格を含むビスフェノール型エポキシ樹脂とすることが好ましい。このような構成のビスフェノール型エポキシ樹脂は、特に可撓性に優れるので、上述した作用効果を得るためには特に好ましい。
【0038】
また、(C)酸無水物硬化剤は、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸の少なくとも一種を含むことができる。このような酸無水物硬化剤は、特に室温においてエポキシ樹脂との反応が抑制されるので、エポキシ樹脂組成物16を封止材として使用する以前の貯蔵時において、貯蔵性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0039】
なお、エポキシ樹脂組成物16は、上述した材料組成を有することによって、封止後に硬化させた際の熱伝導率が、1.3W/m・℃以上の高い値を示す。なお、現状得られる熱伝導率の上限は、1.8W/m・℃程度である。
【0040】
なお、エポキシ樹脂組成物16を構成する(D)結晶性シリカは、樹脂成分との密着性を向上させる観点から表面処理することができる。表面処理剤としては、例えば有機シラン化合物、有機チタネート化合物、または有機アルミネート化合物が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0041】
有機シラン化合物としては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタアクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0042】
有機チタネート化合物としては、例えばテトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムラクチート、オクチレングリコールチタネート、イソプロピル(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。また、有機アルミネート化合物としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピネート等が挙げられる。
【0043】
また、エポキシ樹脂組成物16には、上述した樹脂成分等に加えて、かつ本発明の趣旨に反しない限度において、その他の成分、例えば、シランカップリング剤、消泡剤、着色剤、硬化促進剤、形状維持剤、沈降防止剤等を含有させることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
エポキシ樹脂組成物の調整
(実施例1)
最初に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER-828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)60質量部、脂環式エポキシ樹脂(CEL2021P、ダイセル化学工業株式会社)40重量部及び可撓性エポキシ樹脂(EP-4000、(株)アデカ社製)20質量部からなる樹脂成分に対し、数平均粒径1.5μmの破砕型結晶性シリカ(5X、(株)龍森社製)100質量部、数平均粒径20μmの破砕型結晶性シリカ(クリスタライトC、(株)龍森社製)250質量部、沈降防止剤(エスベン、モメンティブ社製)3質量部、エポキシシラン(A-187、日本ユニカー株式会社製)0.5質量部、消泡剤(TSA720、(株)ハイメック電子社製)0.1質量部、硬化促進剤としてのイミダゾール(1B2MZ、四国化成工業社製)を混合攪拌して、主剤(エポキシ樹脂組成物)を調整した。
【0046】
次いで、硬化剤としての酸無水物(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MHHPA)、HN-5500E、日立化成工業社製)100質量部、及び数平均粒径10μmの破砕結晶シリカ(FB959、電気化学工業(株)社製)を350重量部を混合攪拌して、硬化剤成分を調整した。
【0047】
なお、混錬は、温度120℃、60rpmで10分間実施した。
【0048】
(実施例2)
主剤における数平均粒径20μmの破砕型結晶性シリカ(クリスタライトC、(株)龍森社製)を150質量部とし、さらに数平均粒径10μmの破砕球状シリカ(FB959、電気化学工業(株)社製を100質量部加えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0049】
(実施例3)
主剤における数平均粒径20μmの破砕型結晶性シリカ(クリスタライトC、(株)龍森社製)を100質量部とし、さらに数平均粒径10μmの破砕球状シリカ(FB959、電気化学工業(株)社製)を150質量部加えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0050】
(実施例4)
主剤における硬化促進剤としてのイミダゾール(1B2MZ、四国化成工業株式会社製)をBDMA(花王株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0051】
(実施例5)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER-828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)80質量部、及び脂環式エポキシ樹脂(CEL2021P、ダイセル化学工業株式会社)20重量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0052】
(実施例6)
硬化剤としての酸無水物(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MHHPA)、HN-5500E、日立化成工業社製)を、酸無水物(メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)、HN-2000、日立化成工業社製に代えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0053】
(比較例1)
数平均粒径1.5μmの破砕型結晶性シリカ(5X、(株)龍森社製)を含有させない以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0054】
(比較例2)
数平均粒径20μmの破砕型結晶性シリカ(クリスタライトC、(株)龍森社製)250質量部に代えて、数平均粒径10μmの破砕型球状シリカ(FB959、電気化学工業(株)社製)250重量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0055】
(比較例3)
可撓性エポキシ樹脂(EP-4000、(株)アデカ社製)を含有させない以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0056】
(比較例4)
可撓性エポキシ樹脂(EP-4000、(株)アデカ社製)を80重量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0057】
(比較例5)
数平均粒径1.5μmの破砕型結晶性シリカ(5X、(株)龍森社製)を170質量部、数平均粒径20μmの破砕型結晶性シリカ(クリスタライトC、(株)龍森社製)を180質量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0058】
(比較例6)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER-828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)50質量部、脂環式エポキシ樹脂(CEL2021P、ダイセル化学工業株式会社)10重量部とし、可撓性エポキシ樹脂(EP-4000、(株)アデカ社製)を30重量部とした以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調整した。
【0059】
評価
次いで、上記エポキシ樹脂組成物の製品としての実用特性を評価した。
【0060】
なお、各試験は以下のような条件で実施した。
・ガラス転移温度:硬化後のエポキシ樹脂組成物をTMA法にて実施した。温度は室温から185℃まで、15℃/分の速度で昇温させた。
・熱伝導率:硬化後の含浸用樹脂組成物を京都エレクトロニクス社製の熱伝導率測定器を用いて測定した。
・熱膨張率:硬化後のエポキシ樹脂組成物をTMA法にて実施した。昇温速度は10℃/分とした。
・サイクル試験:図1に示す電子部品装置10を作製し、5A、100Vを印加した状態で、−65℃〜125℃のサイクルにかけ、このサイクルを200回実施した。なお、この間に発生した剥離及びクラックについては目視観察した。
【0061】
以上、エポキシ樹脂組成物の作製条件及び評価結果を表1(実施例)及び表2(比較例)に示す。なお、表中において、剥離が観察されない場合の状態を○で示し、剥離が観察された場合の状態を×で示した。さらに、クラックについてはその発生を目視でカウントした。また、表中の樹脂組成において、特に明示のない限り、重量部を単位とする。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1から明らかなように、本発明に従った実施例においては、上記サイクル試験を200回繰り返した場合において、剥離やクラックの発生はなく、封止材としてのエポキシ樹脂組成物は良好な外観を示すことが判明した。また、この結果に呼応して熱伝導率も1.6W/m・℃と高いことが分かる。
【0065】
一方、本発明と異なる比較例においては、サイクル試験においてクラックが10個以上発生し、剥離も生じて、封止材としてのエポキシ樹脂組成物の外観は実施例の場合と比較して極めて劣ることが判明した。また、熱伝導率も多くの場合で実施例よりも低く、熱伝導性に劣ることが分かる。
【0066】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 電子部品装置
11 銅板
12 セラミック基板
13 コンデンサ
14−1、14−2 半導体集積回路(IC)
15 カバー材
16 エポキシ樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)40質量部〜80質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂、並びに(B)60質量部〜20質量部の可撓性エポキシ樹脂からなる樹脂成分と、(C)80質量部〜120質量部の酸無水物硬化剤と、(D)500質量部〜800質量部の無機充填材としての結晶性シリカとを具え、
(D)結晶性シリカは、(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカ及び(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカを含み、
(D−1)数平均粒径0.5μm〜3μmの破砕型結晶性シリカと(D−2)数平均粒径8μm〜30μmの破砕型結晶性シリカとの割合が、5:95〜20:80の範囲であることを特徴とする、電子部品用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(B)可撓性エポキシ樹脂は、アルキレンオキサイド骨格を含むビスフェノール型エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(C)酸無水物硬化剤は、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸の少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子部品用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
硬化物の熱伝導率が、1.3W/m・℃以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の電子部品用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一に記載の電子部品封止用エポキシ樹脂によって封止されてなる、外部金属ケース材を有する電子部品装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−148958(P2011−148958A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13503(P2010−13503)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】