説明

電子部品

【課題】基板に設けられた複数の電極間におけるイオンマイグレーションが生じ難い、信頼性に優れた電子部品を提供する。
【解決手段】基板2の表面に複数の導電膜からなる複数の積層電極5A〜5Dが形成されており、各積層電極5A〜5Dが、マイグレーションが相対的に起こりやすい第1の導電膜8と、第1の導電膜8よりもマイグレーションが生じ難い第2の導電膜9とを有し、第1の導電膜8が積層電極5A〜5Dの最上層以外の層として形成されており、かつ積層電極5A〜5Dの外周縁において第1の導電膜8が外周縁よりも内側に後退されている、圧電共振部品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電膜を積層してなる積層電極が基板上に形成されている電子部品に関し、より詳細には、複数の導電膜の積層構造が改良されている電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電共振部品などの様々な電子部品が、携帯電話機や各種電子機器に用いられている。電子部品の小型化が進むにつれて、複数の電極間の距離が小さくなってきている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図6(a)に示す圧電共振部品が開示されている。圧電共振部品101では、絶縁性セラミックスからなる基板102上に、圧電共振子104が導電性接着剤101a〜101eを用いて実装される。また、コンデンサ103及び圧電共振子104を覆うように、下方に開いた開口を有するケース105が基板102に取り付けられる。コンデンサ103及び圧電共振子104を外部と電気的に接続するために、基板102の上面には、電極106,107,108が形成されている。電極106,107,108は、長手方向を有する基板102の幅方向全幅に至るように形成されている。
【0004】
また、基板102の側面には、マザー基板に形成されたスルーホールを分割することにより形成された円筒曲面状の凹部102a〜102dが形成されている。凹部102a,102bは、電極106の両端に位置している。凹部102a,102bの内面には、積層金属膜からなる電極109,110が形成されている。凹部102c,102dの内面にも同様に積層金属膜からなる電極111,112が形成されている。
【0005】
特許文献1では図6(b)に示すように、電極106と対向するように下面にも電極113が形成されている。電極106と電極113とが、上記電極109により電気的に接続されている。ところで、電極109により外部と電気的に接続するために、電極109の外表面には、半田層113が形成されている。
【0006】
近年、電極109のように、半田により接合される電極では、電極109の半田食われを防止する必要がある。
【0007】
従って、このような半田と接触する電極では、導電性に優れたAgまたはAgを主体する合金を用いた場合、半田食われが生じる。そこで、従来、Agからなる電極膜上に、半田食われを防止するために、Ni膜を積層し、さらにNi膜の表面に半田食われが生じがたいAu膜や、半田付け性に優れたSn膜などを積層することが広く試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−293752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の圧電共振部品101では、基板102の外周方向に沿って、電極106〜112が配置されている。近年、電子部品の小型化に伴って、このような電極109,111間や電極111,112間などの距離が小さくなってきている。従って、Ag膜を有する積層電極により電極106〜112を形成した場合、例えば電極109と電極111や、電極111と電極112間とで、Agイオンによるマイグレーションが生じるおそれがあった。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、積層電極間のマイグレーションが生じ難い電極構造を備えた電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電子部品は、基板と、基板表面に形成されており、複数の導電膜からなる複数の積層電極とを備える。本発明においては、前記積層電極が、マイグレーションが相対的に起こりやすい第1の導電膜と、前記第1の導電膜よりもマイグレーションが生じ難い第2の導電膜とを有し、前記第1の導電膜が前記積層電極の最上層以外の層として形成されており、かつ前記積層電極の外周縁において、前記第1の導電膜が外周縁よりも内側に後退されている。
【0012】
本発明に係る電子部品のある特定の局面では、上記第1の導電膜は、積層電極の最下層に位置している。この場合には、積層電極外周縁から後退されている第1の導電膜を基板表面に容易に形成することができる。
【0013】
また、本発明に係る電子部品の他の特定の局面では、前記基板が、基板の側面に形成された複数の凹部を有し、該凹部の内面に沿うように前記積層電極が形成されている。前記積層電極の前記凹部と前記基板の側面との境界に至る積層電極外周縁部分において、前記第1の導電膜が積層電極の外周縁より後退されている。この場合には、複数の電子部品の小型化に伴って、複数の凹部間の距離が短くなった場合であっても、第1の導電膜が凹部に形成されている積層電極の外周縁よりも後退されているので、マイグレーションを確実に防止することができる。
【0014】
本発明に係る電子部品のさらに他の特定の局面では、前記積層電極が、前記第1の導電膜及び前記第2の導電膜の少なくとも一方に積層されており、前記第1の導電膜よりもマイグレーションが生じ難い少なくとも一層の第3の導電膜がさらに備えられている。このように、本発明では、第1の導電膜及び第2の導電膜以外に、1以上の第3の導電膜が形成されていてもよい。よって、半田食われを防止する機能を有する導電膜や、半田付け性に優れた導電膜などの他の導電膜を第3の導電膜として積層し、信頼性に優れた電極構造を有する電子部品を提供することができる。
【0015】
本発明に係る電子部品のさらに別の特定の局面では、前記第1の導電膜がAgまたはAgを主体とする合金からなる。AgまたはAgを主体とする合金はイオンマイグレーションが生じやすいが、本発明に従って第1の導電膜が積層電極の外周縁から後退されているので、マイグレーションを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電子部品では、マイグレーションが相対的に起こりやすい第1の導電膜が積層電極の外周縁において、外周縁よりも内側に後退されて形成されているため、複数の積層電極間の距離が短い場合であっても、マイグレーションを確実に防止することができる。従って、電子部品の高密度化を進めた場合であっても、信頼性に優れた電子部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る電子部品としての圧電共振部品を示す斜視図であり、(b)はその積層電極の構造を拡大して示す部分切欠平面断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における積層電極の作用を説明するための略図的部分切欠断面図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例のマイグレーションの試験結果を示す図である。
【図4】(a)は本発明の他の実施形態に係る圧電フィルタ素子を示す斜視図であり、(b)はその上面の電極構造の要部を示す部分切欠正面断面図であり、(c)はその下面の電極構造を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態の電子部品としての圧電共振子を示す正面断面図である。
【図6】(a)は、従来の圧電共振部品の分解斜視図であり、(b)は該圧電共振部品の基板に形成されている電極構造を説明するための部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0019】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る圧電共振部品を示す分解斜視図である。圧電共振部品1は、基板2を有する。基板2は、アルミナなどの絶縁性セラミックスまたは合成樹脂の適宜の絶縁性材料からなる。基板2は、長さ方向を有する矩形の平面形状を有する。この基板2の上面においては、基板2の幅方向全幅に至るように電極3a〜3cが形成されている。電極3a〜3cは、Ag、Cuなどの適宜の導電性材料からなる。電極3a〜3cは、複数の導電膜を積層してなる積層導電膜により形成されていてもよい。
【0020】
図1(a)では明らかではないが、基板2の下面にも、電極3a〜3cと対向するように下面側の電極がそれぞれ形成されている。
【0021】
基板2の側面には、凹部2a〜2fが形成されている。凹部2a,2bは、電極3aの両端に位置している。凹部2c,2dは電極3bの両端に位置している。凹部2e,2fは、電極3cの両端に位置している。凹部2a〜2f内では、積層導電膜からなる積層電極が形成されている。図1(a)では、これらの内、積層電極5A〜5Dのみが現れている。
【0022】
図1(b)を参照して、積層電極5Aの詳細を説明する。
【0023】
積層電極5Aは、基板2の表面から順に、第1の導電膜8,第2の導電膜9及び第3の導電膜10が、積層された構造を有する。
【0024】
第1の導電膜8は、Agからなる。第2の導電膜9はNiからなる。
【0025】
圧電共振部品1は、通常半田により回路基板等により実装される。Agからなる第1の導電膜8の半田食われを防止するために、Niからなる第2の導電膜9が形成されている。この場合、Niに比べてAgがイオンマイグレーションを生じやすい。従って、本実施形態では、積層電極5Aの外周縁より、Agからなる第1の導電膜8の端縁8aが後退されている。他方、第2の導電膜9及び第3の導電膜10は、電極後の外周縁5aに至るように形成されている。
【0026】
上記第1〜第3の導電膜8〜10は蒸着、めっきもしくはスパッタリングなどの薄膜形成方法により形成することができる。
【0027】
なお、電極3a〜3c及び基板2の下面に形成されている電極についても、上記積層電極5Aと同様の積層構造を有していてもよい。もっとも、基板2をマザーの基板から製造するに際しては、上記電極3a〜3c及び下面の電極が形成されているマザー基板に、上記積層電極5A〜5Dが形成される部分にスルーホールを形成する。次に、スルーホールを分割するようにしてマザー基板を分割し、個々の基板2を得る。それによって凹部2a〜2fが形成される。しかる後、凹部2a〜2fに上記積層導電膜からなる積層電極5A〜5Dを形成する。従って、電極3a〜3cと、積層電極5A〜5Dとは、異なる導電性材料で形成されていてもよい。
【0028】
上記凹部2a〜2fは、閉口形状が円形のスルーホールを分割することにより形成されている。従って、内周面は、半円筒曲面状の形状を有する。積層電極5A〜5Dは、このような半円筒状曲面の内周面を覆うように形成されている。もっとも、上記積層電極5A〜5Dの外周縁においては、特に、外周縁のうち基板2の下面に露出している外周縁部分においては、上記第1の導電膜8が外周縁5aよりも後退されている。
【0029】
従って、電子部品の小型化を進め、隣り合う上記積層電極5A,5C間や積層電極5C,5D間の距離が短くなった場合であっても、第1の導電膜8が積層電極5A〜5Dの外周縁から後退されているので、例えば積層電極5A,5C間や積層電極5C,5D間におけるイオンマイグレーションを確実に抑制することができる。
【0030】
本実施形態の圧電共振部品1では、上記電極3a〜3c上に、導電性接着剤11a〜11cを介してコンデンサ12が接合される。コンデンサ12上に導電性接着剤13a,13bを介して圧電共振子14が接続されている。圧電共振子14は、周知の厚みすべりモードを利用したストリップ型の圧電共振子である。圧電共振子14は、ストリップ型の圧電基板15を有する。圧電基板15の上面に励振電極16が形成されており、圧電基板15の下面に、励振電極16と圧電基板15の長さ方向中央において表裏対向するように励振電極が形成されている。励振電極16が導電性接着剤13bに電気的に接続され、下面の励振電極が導電性接着剤13aに電気的に接続される。
【0031】
上記圧電共振子14を覆うように、下方に開いた開口を有するケース17が取り付けられる。
【0032】
本実施形態の圧電共振部品1では、上記のように、基板2に形成されている複数の導電膜すなわち第1〜第3の導電膜8〜10からなる積層電極5A〜5Dが基板2の側面の外周方向に沿って複数形成されている。そして、上記第1の導電膜8が、積層電極5A〜5Dの外周縁から後退されている構造を有するため、積層電極5A,5C間の距離が短かった場合であっても、上記のように、積層電極5A,5C間のイオンマイグレーションを確実に防止することができる。よって、圧電共振部品1の信頼性を高めることができる。
【0033】
図2に示すように、第1の導電膜8が、積層電極5Aの外周縁から後退されている。従って、積層電極5Aと、異なる電位に接続される積層電極5Cとの間のマイグレーションを防止することができる。すなわち、矢印Aで示す領域では、電界密度が低く、Agイオンが基板2上を伝って隣接する積層電極に至り難い。よって、Agイオンのマイグレーションを確実に抑制することができる。
【0034】
上記基板2におけるイオンマイグレーションの発生状況を具体的な実験に基づき確認した。
【0035】
すなわち、アルミナからなる基板2の凹部2a〜2fに、複数の積層電極5A〜5Dを形成した。この場合、上記実施形態に従って、Ag膜からなる第1の導電膜8上に、Niからなる第2の導電膜9の及びAuからなる第3の導電膜10をめっき法により形成した。この場合、Agからなる第1の導電膜8の厚みを15μm、Niからなる第2の導電膜9の厚みを3μm、Auからなる第3の導電膜10の厚みを0.1μmとした。ここで、積層電極5A〜5Dの上記外周縁において、第1の導電膜8を、外周縁5aから40μm程度後退させ、上記実施形態の実施例を得た。
【0036】
比較のために、第1の導電膜8の外周縁が、積層電極5A〜5Dの外周縁に至っていることを除いては、上記と同様にして複数の積層電極5A〜5Dが形成されている比較例を用意した。
【0037】
試験前の積層電極5A,5C間の絶縁抵抗IRは実施例及び比較例のいずれにおいても1×1010Ω以上であった。上記実施例及び比較例の基板を、純水に浸漬し、直流5Vの電圧を印可し、マイグレーションを発生させるように試みた。マイグレーションにより、積層電極5A,5C間の絶縁抵抗IRが1.0×10Ω以下になるまでの時間を測定した。結果を図3に示す。
【0038】
なお、上記実施例及び比較例の基板として、各7個の基板を用い、上記実験を行った。図3から明らかなように、比較例では、純水中で直流5Vの電圧を印可したところ、短時間でマイグレーションが生じ、7個のサンプルの平均では、88秒であった。これに対して、上記実施例では、7個のサンプルの平均値は2934秒であった。従って、上記比較例に比べ、実施例によれば、マイグレーションに対し、約33倍の延命効果のあることがわかる。
【0039】
上記実施形態では、図1(a)に分解斜視図で示した圧電共振部品1を示したが、本発明の電子部品は、このような構造に限定されるものではない。図4(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態の電子部品を説明するための図である。
【0040】
図4(a)に示すように、本実施形態の圧電フィルタ素子21は、圧電基板22を有する。圧電基板22は、圧電基板からなり、厚み方向に分極処理されている。圧電基板22の上面には、第1,第2の共振電極23,24が形成されており、圧電基板22の下面には、共振電極23,24と圧電基板22を介して対向するように設けられた共振電極25が形成されている。
【0041】
本実施形態では、図4(b)に示すように、共振電極23,24は、それぞれ、第1の導電膜26、第2の導電膜27及び第3の導電膜28をこの順序で圧電基板22の上面から積層した構造を有する。すなわち、共振電極23,24は、積層導電膜からなる。同様に、圧電基板22の下面側の共振電極25も、第1〜第3の導電膜26〜28をこの順序で積層した構造を有する。
【0042】
共振電極23〜25においても、共振電極23〜25の外周縁においては、第1の導電膜26が外周縁よりも内側に後退されて最上層以外の層として形成されている。本実施形態では、第1の導電膜26が、AgまたはAg合金からなり、イオンマイグレーションを生じやすい。これに対して、第2の導電膜27はAgよりもイオンマイグレーションが生じ難いNiからなる。また、第3の導電膜28は、第1の導電膜26よりもマイグレーションが生じ難いAuからなる。従って、本実施形態の圧電フィルタ素子21においても、第1の実施形態の圧電共振部品1と同様に、例えば共振電極23,24間や、共振電極23,25間あるいは共振電極24,25間のマイグレーションを確実に防止することができる。特に、Agからなる第1の導電膜が形成されている場合には、圧電基板22上面と下面との間でマイグレーションが生じ易い。しかしながら、上記のように最上層以外の層としてAgからなる第1の導電膜26が形成されていたとしても、外周縁から後退されているので、マイグレーションを確実に抑制できる。
【0043】
図5は、本発明のさらに他の実施形態の電子部品としての厚み滑り振動を利用した圧電共振子を示す正面断面図である。
【0044】
図5に示す圧電共振子31は、ストリップ状の圧電基板32を有する。圧電基板32は、圧電セラミックスからなり、その長さ方向に分極処理されている。圧電基板32の上面に第1の励振電極33が、下面に第2の励振電極34が形成されている。第1,第2の励振電極33,34は、圧電基板32の長さ方向中央において、圧電基板32を介して表裏対向されている。第1,第2の励振電極33,34は、圧電基板32の長さ方向中央から、圧電基板32の一端に至るように形成されている。
【0045】
圧電共振子31の小型化を図った場合、第1の励振電極33の先端の外周縁33aと、第2の励振電極34との間の距離が近づく。また、第1,第2の励振電極33,34の幅方向両端すなわち図5の紙面−紙背方向端部においては、第1,第2の励振電極33,34が、圧電基板32を介して近接している。従って、励振電極33,34がイオンマイグレーションを生じやすい金属からなる場合、小型化を図るとイオンマイグレーションが生じるおそれがある。
【0046】
これに対して、本実施形態においても、第1,第2の励振電極33,34が、第1の実施形態と同様の材料からなる第1の導電膜35、第2の導電膜36及び第3の導電膜37をこの順序で圧電基板32の表面から順に積層した構造を有する。すなわち、第1の導電膜35がAgからなり、第2の導電膜36がNiからなり、第3の導電膜37がAuからなる。
【0047】
第1の導電膜35の端部が、第1,第2の励振電極33,34の外周縁33a,34aから内側に後退されている。従って、イオンマイグレーションを確実に防止することができる。
【0048】
なお、上述してきた各実施形態では、第1の導電膜がAgからなり、第2の導電膜がNiにより形成されていたが、第1,第2の導電膜を構成する導電性材料の組み合わせはこれに限定されるものではない。すなわち、相対的にイオンマイグレーションが生じやすい金属により第1の導電膜が形成されており、相対的にイオンマイグレーションが生じ難い金属により第2の導電膜が形成されておれば、第1,第2の導電膜を構成する金属の組み合わせは特に限定されるものではない。
【0049】
Ag、Pb、Cu、Sn、Auにおけるイオンマイグレーションが生じ難い順序は、Ag<Pb<<Cu<Sn<Auである。すなわち、Agが最もイオンマイグレーションを生じさせ易い。従って、第1の導電膜をAgにより形成した場合、第2の導電膜は、Pb、Cu、Sn、Auにより形成されてもよい。
【0050】
さらに、図4に示した実施形態において示したように、Agに代えて、Agを主体とする合金により第1の導電膜を形成してもよい。Agを主体とする合金とは、合金組成中Agが50重量%を以上を占める合金を広く含むものとする。同様に、第1の導電膜をAg以外の導電性材料により形成する場合においても、金属もしくは該金属を主体とする合金を適宜用いることができる。
【0051】
なお、第3の導電膜は、本発明において必須ではないが、上記各実施形態において示したように、第2の導電膜上に第3の導電膜を積層してもよい。この場合、2層以上の第3の導電膜を積層した構造であってもよい。さらに、第1の導電膜と第2の導電膜との間に第3の導電膜を積層してもよい。第3の導電膜は、前述したように、第1の導電膜よりもイオンマイグレーションが生じ難い適宜の金属により構成することができる。第3の導電膜は1層に限るものではない。
【符号の説明】
【0052】
1…圧電共振部品
2…基板
2a〜2f…凹部
3a〜3c…電極
5A〜5D…積層電極
5a…外周縁
8…第1の導電膜
8a…端縁
9…第2の導電膜
10…第3の導電膜
11a〜11c…導電性接着剤
12…コンデンサ
13a,13b…導電性接着剤
14…圧電共振子
15…圧電基板
16…励振電極
17…ケース
21…圧電フィルタ素子
22…圧電基板
23,24,25…共振電極
26…第1の導電膜
27…第2の導電膜
28…第3の導電膜
31…圧電共振子
32…圧電基板
33…第1の励振電極
34…第2の励振電極
33a,34a…外周縁
35…第1の導電膜
36…第2の導電膜
37…第3の導電膜



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面に形成されており、複数の導電膜からなる複数の積層電極とを備え、
前記積層電極が、マイグレーションが相対的に起こりやすい第1の導電膜と、前記第1の導電膜よりもマイグレーションが生じ難い第2の導電膜とを有し、前記第1の導電膜が前記積層電極の最上層以外の層として形成されており、かつ前記積層電極の外周縁において、前記第1の導電膜が外周縁よりも内側に後退されている、電子部品。
【請求項2】
前記第1の導電膜が、前記積層電極の最下層である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記基板が、基板の側面に形成された複数の凹部を有し、該凹部の内面に沿うように前記積層電極が形成されており、前記積層電極の前記凹部と前記基板の側面との境界に至る積層電極外周縁部分において、前記第1の導電膜が前記積層電極の外周縁より後退されている、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記積層電極が、前記第1の導電膜及び前記第2の導電膜の少なくとも一方に積層されており、前記第1の導電膜よりもマイグレーションが生じ難い少なくとも一層の第3の導電膜をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1の導電膜がAgまたはAgを主体とする合金からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−114776(P2012−114776A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263412(P2010−263412)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】