説明

電極パターンの形成方法及び光電池モジュール

【課題】 量産性に優れる電極パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 ホットメルト層8が金属材料からなる被覆層4により覆われ、表裏面を貫通する主電極形成用開口部12aを有する主電極形成マスク10aを用いて、基板20上に電極パターン22aを形成する方法であって、主電極形成マスク10aを、ホットメルト層8を介して基板20の表面に熱圧着する工程と、主電極形成用開口部12aを介して導電性蒸着材料の物理的蒸着を行うことにより、基板20上に主電極パターン22aを形成する工程と、前記主電極形成マスクを剥離する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極パターンの形成方法及び光電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電極パターンが形成された基板は、太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電池や、ディスプレイなどに広く用いられている。例えば、アモルファスシリコン光電池や、色素増感型光電池などの光電池の場合、透明導電膜などからなる電極パターンがそれぞれ形成された一対の基板間に、光電変換層を有する。
【0003】
電極パターンを基板上に形成する方法として、基板の表面に感光性樹脂を塗布した後、フォトマスクを介して紫外線を照射し、薬液を用いてエッチングを行うフォトリソグラフィ法が、従来から知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところが、電極パターンをフォトリソグラフィ法により形成する場合、基板の材質によっては薬液の酸やアルカリによりダメージを受けるおそれがあるだけでなく、電極パターンの形成を連続的に行う場合には、廃棄される薬液の量も多くなって環境汚染の問題が生じるなど、大量生産には不向きであった。
【特許文献1】特開平8−330692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、量産性に優れる電極パターンの形成方法及び光電池モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、ホットメルト層が金属材料からなる被覆層により覆われ、表裏面を貫通する主電極形成用開口部を有する主電極形成マスクを用いて、基板上に電極パターンを形成する方法であって、前記主電極形成マスクを、前記ホットメルト層を介して基板の表面に熱圧着する工程と、前記主電極形成用開口部を介して導電性蒸着材料の物理的蒸着を行うことにより、前記基板上に主電極パターンを形成する工程と、前記主電極形成マスクを剥離する工程とを備える電極パターンの形成方法により達成される。
【0007】
また、本発明の前記目的は、上記電極パターンの形成方法により基板上に形成された主電極パターンに、光電変換層及び対向電極を積層してなる光電池モジュールにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、量産性に優れる電極パターンの形成方法及び光電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る電極パターンの形成方法を用いた光電池モジュールの製造方法を、添付図面を参照しながら説明する。

1.フロント電極フィルムの形成
光電池モジュールを構成するフロント電極フィルムの製造方法について、図1及び図2に示す工程断面図を参照して説明する。まず、図1(a)に示すように、一方面に粘着剤層2が形成され、他方面に被覆層4が形成された基材フィルム6を用意し、粘着剤層2の露出面にホットメルト層8を貼り合わせて、図1(b)に示すように積層体10を構成する。
【0010】
粘着剤層2は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂など耐熱性の強粘着剤を使用することができる。粘着剤層2の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜40μmである。
【0011】
被覆層4は、アルミニウムや銅などの金属材料からなり、後工程のクリーン化処理時などにおいて基材フィルム6の表面を保護する。被覆層4の厚みも特に限定はないが、例えば、1〜50μmである。
【0012】
基材フィルム6は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロンなどから形成された硬質フィルムからなり、厚みは、20〜100μm程度が好ましい。
【0013】
ホットメルト層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、EVA系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などに、ロジン系やテルペン系などの粘着付与剤などが添加された公知のものを用いることができる。
【0014】
次に、積層体10に型抜き加工を施して、図1(c)に示すように開口部12aを形成する。この開口部12aは、主電極形成用の開口部であり、後述する基板20上に形成される主電極パターンに対応した形状を有している。こうして、主電極形成用の開口部12aを有する主電極形成マスク10aが得られる。
【0015】
ついで、図1(d)に示すように、この主電極形成マスク10aを、基板20上に接着する。基板20としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの耐熱性及び絶縁性が高い樹脂フィルムや、ガラス基板を例示することができ、その他に、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0016】
基板20への主電極形成マスク10aの接着は、熱圧着ローラなどを用いた熱圧着により行うことができるが、ホットメルト層8を半溶融状態にすることで接着強度が大きくなりすぎないように調整し、ホットメルト層8と基板20との間で容易に剥離可能にすることが好ましい。
【0017】
次に、基板20の上面側にコロナ放電処理やエキシマ処理などを施して、基板20上における開口部12aから露出する部分をクリーン化した後、開口部12aを介して、導電性蒸着材料の物理的蒸着を行うことにより、図1(e)に示すように、基板20上に主電極パターン22aを形成する。そして、図1(f)に示すように、主電極形成マスク10aを、ホットメルト層8と基板20との間で剥離する。
【0018】
主電極パターン22aを形成するための物理的蒸着法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどを挙げることができる。また、導電性蒸着材料としては、ITO(インジウム錫酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)などの透明性材料を例示することができる。主電極パターン22aのパターン形状は特に限定されず、帯状、矩形状、線状など種々の形状が可能であり、複数のパターン部から構成することができる。
【0019】
こうして、基板20上に主電極パターン22aを形成した後、補助電極形成マスク10bを用いて、同じ基板20上に補助電極パターン22bを形成する。補助電極パターン22bは、上述した主電極パターン22aの作成方法と同様の手順で作成することができ、積層体10に対して、主電極形成用の開口部12aの代わりに補助電極形成用の開口部12bを形成することにより得られる。
【0020】
図2(a)に示すように、基板20上の主電極パターン22aに対して所望の位置に開口部12bが配置されるように、基板20に対する補助電極形成マスク10bの位置合わせを行った後、基板20に対してホットメルト層8を上記と同様に仮接着する。そして、開口部12bを介して、導電性蒸着材料の物理的蒸着を行うことにより、図2(b)に示すように、基板20上の主電極パターン22aに沿って補助電極パターン22bを形成する。補助電極パターン22bの材料は、主電極パターン22aよりも低抵抗であることが好ましく、白金、金、銅、銀、クロム−銅−クロムなどの金属材料を例示することができる。
【0021】
本実施形態においては、補助電極パターン22bを、主電極パターン22aの長手方向両縁部に沿って直線状に形成しているが、主電極パターン22aに沿って形成されている限り、補助電極パターン22bの位置や形状は特に限定されない。この後、補助電極形成マスク10bを剥離することにより、図2(c)に示すように、主電極パターン22a及び補助電極パターン22bからなる電極パターン22が基板20上に形成されたフロント電極フィルム30が得られる。
【0022】
本実施形態においては、主電極パターン22aを形成した後に、補助電極パターン22bを形成しているが、補助電極パターン22bを先に形成してから主電極パターン22aを形成してもよい。
【0023】
すなわち、図12(a)に示すように、電極フィルムなどからなる基板20上に補助電極形成マスク10bを接着し、開口部12bを介して補助電極パターン22bを形成した後、図12(b)に示すように補助電極形成マスク10bを剥離する。そして、図12(c)に示すように、補助電極パターン22bが形成された基板20上に主電極形成マスク10aを接着し、開口部12aを介して基板20上にコロナ放電処理などのクリーン化処理を行った後、開口部12aを介して主電極パターン22aを形成する。本実施形態においては、補助電極パターン22bが主電極パターン22aの外周縁部に沿って形成され、これらの間に充填されるように主電極パターン22aが形成される。
【0024】
ついで、開口部12aを介して半導体電極材料を蒸着し、図12(d)に示すように、主電極パターン22aの上面に半導体層34aを堆積させた後、この半導体層34aの上面に半導体電極材料をスキージ等で塗布することにより、図12(e)に示すように、半導体電極34を形成する。この後、主電極形成マスク10aを剥離する。
【0025】
このように、補助電極パターン22bの形成後に主電極パターン22aを形成することにより、主電極形成マスク10aを用いて、主電極パターン22aの形成だけでなく半導体電極34を形成することができるので、主電極形成マスク10aを半導体電極形成マスクと兼用して、製造効率を高めることができる。半導体電極34の形成については、後に詳述する。
【0026】
主電極形成マスク10aの剥離は、ホットメルト層8と基板20との間で行うこともできるが、粘着剤層2を弱粘着剤から形成する等してホットメルト層8と基材フィルム6との間で行うことも可能であり、図12(f)に示すように、ホットメルト層8が残留したフロント電極フィルム30を製造することもできる。
【0027】
補助電極パターン22bは、必ずしも必要ではなく、基板20上に主電極パターン22aのみを設けてもよい。但し、主電極パターン22aが、例えばITOからなる場合には、長手方向の長さが大きくなるにつれて電力損失も大きくなるので、この場合には、主電極パターン22aの長手方向に沿って補助電極パターン22bを設けることが好ましい。この場合、主電極パターン22aの材料よりも低抵抗の材料により補助電極パターン22bを形成する等して、補助電極パターン22bの表面抵抗値を、主電極パターン22aの表面抵抗値よりも小さくなるように設定する。より具体的には、使用時における主電極パターン22aの表面抵抗値を1とした場合に、補助電極パターン22bの表面抵抗値は、0.1以下であることが好ましく、例えば、ITOからなる主電極パターン22aの表面抵抗値が100Ω/□に対して、白金からなる補助電極パターン22bの表面抵抗値を3Ω/□とすることができる。
【0028】
基板20への電極パターン22(主電極パターン22a及び補助電極パターン22b)の形成は、例えば以下のようにして連続的に行うことができる。まず、図3(a)に斜視図で示すように、フィルム状の基板20及び積層体10の両側縁部に、それぞれ位置合わせ孔Hを形成すると共に、積層体10には、開口部12aを長手方向に沿って一定の間隔で複数設けることにより、主電極形成マスク10aを形成する。
【0029】
そして、これらの基板20及び主電極形成マスク10aを、搬送ロール42,44によりそれぞれ搬送し、図3(b)に示すように、これらを積層した状態で一対の熱圧着ロール46,46間に供給することにより、主電極形成マスク10aが基板20に熱圧着される。熱圧着ロール46,46による熱圧着条件は、ホットメルト層8が半溶融状態で仮接着となるように適宜設定することが好ましく、一例を挙げると、ロール表面温度が120℃、加圧力が0.5MPa、加圧時間が2秒である。
【0030】
熱圧着ロール46,46は、係合部Sを両側に備えており、基板20及び主電極形成マスク10aの位置合わせ孔Hが係合部Sに係合することで、基板20及び主電極形成マスク10aの幅方向及び長手方向の位置合わせが行われる。基板20と主電極形成マスク10aとの位置合わせは、このような方法に限定されず、例えば、位置合わせ孔H及び係合部Sの代わりにそれぞれ設けたアライメントマーク同士の位置合わせにより行うことが可能である。また、熱圧着ロール46,46を通過させる前に、スプロケット孔を有する冷ロールにより基板20及び主電極形成マスク10aの位置合わせを行うようにしてもよく、これによって、位置が合わない場合のやり直しを容易にすることができる。
【0031】
基板20は、主電極形成マスク10aが仮接着された状態で、巻き取りロール(図示せず)に巻き取られた後、真空蒸着装置などの物理的蒸着装置に装填される。そして、物理的蒸着装置内において再び繰り出され、開口部12aを介して物理的蒸着が行われた後、図3(c)に示すように、粘着ロール48により主電極形成マスク10aが剥離され、主電極パターン22aが残留する。
【0032】
次に、図3(d)に示すように、基板20上の主電極パターン22aが形成された面に、搬送ロール(図示せず)により補助電極形成マスク10bを積層し、一対の熱圧着ロール52,52間に供給することにより、基板20に補助電極形成マスク10bを仮接着する。この後、基板20は、上記と同様に物理的蒸着装置に搬送され、開口部12bを介して物理的蒸着がおこなわれた後、補助電極形成マスク10bが剥離され、補助電極パターンが残留する。
【0033】
このように、本実施形態の電極パターンの形成方法によれば、従来のように水溶性薬液や有機溶剤などを用いることなく電極パターンを連続的に形成することができ、環境への負荷を軽減しつつ量産化を可能にすることができる。
【0034】
また、主電極形成マスク10a(又は補助電極形成マスク10b)において、ホットメルト層が金属材料からなる被覆層により覆われているので、導電性材料の物理的蒸着を行う際の熱によりホットメルト層8が基板20に密着するのを防止することができ、主電極形成マスク10a(又は補助電極形成マスク10b)を基板20から容易に剥離することができる。このような効果は、本実施形態のように被覆層4とホットメルト層8との間に基材フィルム6が介在されている場合において、特に顕著である。
【0035】
主電極形成マスク10a(又は補助電極形成マスク10b)の構成は、必ずしも本実施形態のものに限定されず、ホットメルト層8が被覆層4に覆われている限り他の構成とすることも可能であり、例えば、ホットメルト層8の表面に被覆層4が直接形成された構成にすることもできる。
【0036】
上述した電極パターンの形成方法は、後述するように、色素増感型の光電池の電極パターンを形成する方法として好適であるが、これに限定されず、他の種類の光電池に用いられる電極パターンや、液晶表示装置、EL発光デバイスなど他のデバイスに用いられる電極パターンを形成する方法としても、利用することができる。

2.半導体電極(光電変換層)の形成
電極パターン22が形成された基板20に対して、以下のようにして光電変換層となる半導体電極を形成する。まず、主電極形成マスク10aと同様に構成された(図1(c)参照)、開口部32aを有する半導体電極形成マスク30aを用意し、図4(a)に示すように、電極パターン22と開口部32aとの位置合わせを行いながら、半導体電極形成マスク30aを基板20上に貼り合わせる。尚、半導体電極形成マスク30aにおいて、主電極形成マスク10aと同様の構成要素に同一の符号を付している。
【0037】
基板20への半導体電極形成マスク30aの接着についても、主電極形成マスク10aの接着と同様に、ホットメルト層8と基板20との間で容易に剥離可能な仮接着とすることが好ましい。この状態で、基板20の表面にコロナ放電処理などを施し、開口部32aから露出する電極パターン22の表面をクリーン化した後、図4(b)に示すように、電極パターン22上に半導体電極材料からなる第1の半導体層34aを物理的蒸着により形成する。ついで、図4(c)に示すように、半導体電極材料をスキージ等により塗布し、第1の半導体層34a上に第2の半導体層34bを堆積する。第1の半導体層34aは、必ずしも必要ではなく、電極パターン22に第2の半導体層34bを直接形成してもよい。半導体電極材料としては、例えば、亜鉛、ニオブ、錫、チタン、インジウム、タングステン、タンタル、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅などの酸化物や、さらにはリン化ガリウム、リン化インジウムなどが挙げられる。
【0038】
第1の半導体層34aは、物理的蒸着により形成された密な膜であり、後述する光増感色素及び電解液が電極パターン22に接触するのを防止する。一方、第2の半導体層34bは、後述する光増感色素の担持量を増やすために、直径が5nm〜200nm程度の半導体微粒子を堆積してなる多孔質膜であることが望ましく、その厚みは、通常、約0.1〜20μm程度である。また、半導体微粒子の堆積後に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物などによるチタンゾル又はペルオキソチタンゾルを塗布してもよく、水洗を行った後、必要に応じて加熱により水を蒸発させたものを第2の半導体層34bとすることもできる。
【0039】
この後、図4(d)に示すように、第2の半導体層34bに増感色素液を浸漬、電気泳動あるいはスキージ塗布などした後、乾燥させることにより、光増感色素が担持された半導体電極34を得る。
【0040】
半導体電極34において色素増感に用いられる光増感色素は、従来公知のものが使用でき、例えば、ルテニウム−トリス、ルテニウム−ビス、オスミウム−トリス、オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、またはルテニウム−シス−ジアクア−ビピリシル錯体、またはフタロシアニンやポルフィリン、ジチオラート錯体、アセチルアセトナート錯体などのいわゆる金属キレート錯体、およびシアニジン色素、メロシアニン色素、ローダミン色素などの有機色素、およびオキサジアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、芳香環を有する有機化合物などが挙げられる。これらの色素は、第2の半導体層34b上に化学的に吸着し易いように、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ホスフィン基などの官能基を有することが好ましい。これらの光増感色素は、例えば、適当な溶媒に溶解した後、この色素溶液を第2の半導体層34bに吸着、担持させることができる。
【0041】
この後、半導体電極形成マスク30aを剥離することにより、図4(e)に示すように、基板20の電極パターン22上に半導体電極34が残留する。
【0042】
基板20への半導体電極34の形成についても、電極パターン22の形成と同様に行うことができる。すなわち、フィルム状の積層体10をロールなどから繰り出して、両側縁部に位置合わせ孔やアライメントマークを形成すると共に、電極パターン22に対応した開口部32aを設けることにより、半導体電極形成マスク30aを形成する。そして、半導体電極形成マスク30aを基板20上に積層し、熱圧着した後、スクリーン印刷機、ロール塗工機などの塗布装置に搬送する。基板20と半導体電極形成マスク30aとの位置合わせは、位置合わせ孔やアライメントマークを用いて行うことができる。
【0043】
そして、塗布装置において半導体電極材料及び色素液が基板20上に順次塗布された後、基板20は、乾燥装置へ搬送されて、加熱乾燥が行われる。これにより、基板20への半導体電極34の形成が完了する。この後、粘着ロールの粘着力により半導体電極形成マスク30aが剥離され、半導体電極34が残留する。
【0044】
このように、本実施形態の半導体電極の形成方法によれば、光電変換効率の高い半導体電極を、連続的に効率よく形成することができる。

3.バック電極フィルムの形成
バック電極フィルムは、上述したフロント電極フィルム30の場合と同様の手順で基板上に主電極パターンを形成することにより、製造することができる。バック電極フィルムの主電極パターンに用いられる材料としては、ITO(インジウム錫酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)などの透明性材料の他、金、銀、銅、白金、クロムなどの金属材料を例示することができ、これらの2種以上を積層して主電極パターンを形成してもよい。例えば、主電極形成マスクの開口部を介して基板上にITO膜を蒸着した後、更にこの開口部を介して白金膜を蒸着することにより、バック電極フィルムの主電極パターンを形成することができる。また、基板上に金属などからなる主電極パターンを形成する前に、基板上にアンダーコート膜を塗布し、乾燥させることにより、図5に示すように、基板82上にアンダーコート層81を介して電極パターン83が形成されたバック電極フィルム80を形成することも可能であり、これによって、電極パターン83の密着性を高めることができる。
【0045】
また、バック電極フィルムは、ホットメルト層及び被覆層が粘着剤層を介して積層された主電極形成マスクを用いて形成することもできる。すなわち、図10(a)に示すように、ホットメルト層8に粘着剤層2を介して被覆層4を貼り合わせた後、図10(b)に示すように、型抜き加工を施して開口部12aを形成することにより、主電極形成マスク100aを得ることができる。尚、図10において、図1に示す構成と同様の部分に同一の符号を付している。
【0046】
この後は、図1(d)から(f)に示す工程と同様の手順で、主電極形成マスクを基板上に接着した後、導電性材料の物理的蒸着を行い、ホットメルト層と基板との間で主電極形成マスクを剥離することにより、基板上に主電極パターンを形成することができる。
【0047】
図10(c)に示すように、主電極形成マスク100aを接着する基板20の表面には、予めアンダーコート材料を塗布して乾燥させることによりアンダーコート層81を形成してもよい。また、ホットメルト層8と被覆層4との張り合わせは、粘着剤層2を介して行う代わりに、ホットメルト層8を被覆層4に熱融着して強固に接着させて行うことも可能であり、図11に示すように、主電極形成マスク101aを、被覆層4にホットメルト層8が直接接着された構成にすることができる。

4.配線部の形成
次に、上述したフロント電極フィルム30とバック電極フィルム80との間で導通を取るための配線部を形成する方法を説明する。
【0048】
まず、図6(a)に示すように、一方面に粘着剤層62が形成された基材フィルム64を用意し、粘着剤層62にホットメルト層66を貼り合わせて、図6(b)に示すように、積層体68を構成する。
【0049】
粘着剤層62は、ホットメルト層66に対して易剥離性を有するものであり、例えば、アクリル樹脂からなる耐熱性の微粘着剤を使用することができる。粘着剤層62の厚みは、後述する電解質層の厚みを考慮して設定すればよく、例えば、1〜40μmである。
【0050】
基材フィルム64は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、フッ素樹脂などから形成された硬質フィルムからなり、厚みは、20〜100μm程度が好ましい。
【0051】
ホットメルト層66は、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、EVA系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などに、ロジン系やテルペン系などの粘着付与剤などが添加された公知のものを用いることができる。
【0052】
次に、図6(c)に示すように、ホットメルト層66のみを切除(半抜き)して、電解液収容部68aを形成すると共に、積層体全体を貫通する配線部形成孔68bを形成し、貼り合わせ用マスク69を作成する。このとき、電解液収容部68aに電解液を供給するための電解液流路も、ホットメルト層66のみを除去する半抜きにより形成しておく。
【0053】
そして、図6(d)に示すように、この貼り合わせ用マスク69を、配線部形成孔68bと電極パターン83との位置合わせが行われるように、バック電極フィルム80の基板82上に配置し、熱圧着ローラなどを用いてホットメルト層66を基板82に熱圧着する。この熱圧着は、ホットメルト層66を十分溶融させて、基板82との間で強固に密着させることが好ましい。具体的には、ホットメルト層66と基板82との間の接着強度は、2N/cm以上であることが好ましい。一方、粘着剤層62とホットメルト層66との間は、上述したように容易に剥離可能であることが好ましく、ホットメルト層66と基板82との間の接着強度よりも接着強度が小さいことが好ましい。具体的には、粘着剤層62とホットメルト層66との間の接着強度は、0.01〜0.2N/cmであることが好ましい。
【0054】
ここまでの工程は、フィルム状の積層体68をロールなどから繰り出して、両側縁部に位置合わせ孔やアライメントマークを形成すると共に、電解液収容部68a及び配線部形成孔68bを形成することにより、貼り合わせ用マスク69を形成した後、基板82上に配置して熱圧着することにより、連続的に行うことができる。
【0055】
この後、上述した配線部形成用の導電性ペーストを、貼り合わせ用マスク69上にスキージ塗布することにより、図7(a)に示すように、配線部形成孔68bに導電性ペースト61aを充填する。そして、貼り合わせ用マスク69を、粘着剤層62とホットメルト層66との間で剥離ローラなどにより剥離し、図7(b)に示すように、基材フィルム64は除去する一方、ホットメルト層66は残存させる。
【0056】
導電性ペースト61aは、半田合金粉末を樹脂溶液に撹拌混合することにより形成されたものである。半田合金は、Sn/Bi、Sn/Bi/Pb、Sn/Bi/Zn、Bi/Pb、Sn/In、Sn/Bi/Pb、Sn/Bi/In、Sn/Bi/Pb/Inなど低融点の半田合金粉末を好ましく例示することができ、組成比を適宜調整する等して所望の融点を得ることができる。半田合金粉末の平均粒径は、0.01〜50μm程度を例示することができる。
【0057】
より詳細には、半田合金粉末の液相線温度が、基板20の耐熱限界温度よりも低いことが好ましく、最高でも150℃以下であることがより好ましい。ここで、「耐熱限界温度」とは、材料の変質、劣化を防止できる最高温度をいい、例えば、PET:約130℃、メチルメタクリレート系アクリル樹脂:約70℃、シリコーン樹脂:約180℃である。一方、屋外での高温使用時などを考慮すると、半田合金粉末の液相線温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。組成比と固相線温度及び液相線温度との関係を、表1に例示する。
【0058】
【表1】

樹脂溶液は、各種有機溶媒、水、或いはこれらの2種以上の混合液からなる溶媒に、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの可撓性および密着性が良好な熱硬化性樹脂を溶解させたものを、好ましく用いることができる。溶解される樹脂は、半田合金粉末の加熱溶融時において熱分解が生じない程度の耐熱性を有することが好ましい。
【0059】
樹脂溶液の体積に占める半田合金粉末の体積の割合(体積分率)は、大きすぎると基板への密着性が確保しにくくなる一方、小さすぎると良好な導電性を確保しにくくなることから、50〜90%であることが好ましく、70〜85%がより好ましい。
【0060】
次に、ホットメルト層8付きのフロント電極フィルム30(図12(f)参照)を、図7(c)に示すように、基板20上の電極パターン22が導電性ペースト61aに接続されると共に、電極パターン22上の半導体電極34が電解液収容部68aに収容されるように位置合わせを行い、ホットメルト層8,66同士を貼り合わせる。この後、熱圧着ローラなどを用いてホットメルト層8,66を加熱溶融させ、フロント電極フィルム30とバック電極フィルム80とを強固に密着させる。
【0061】
実際の製造においては、図8に示すように、電極パターン22,83間に半導体電極34を有する光電池セルを複数形成し、隣接する半導体電極34,34が、電極パターン22,83及び導電性ペースト61aを介して直列(又は並列)に電気的に接続されるように構成することが好ましい。ホットメルト層66の加熱により、配線部形成孔68bに充填された導電性ペースト61aは、樹脂が溶融してフロント電極フィルム30及びバック電極フィルム80にそれぞれ密着すると共に、半田合金粉末が溶融して電極パターン22,83との接続部が導通可能となる結果、フロント電極フィルム30とバック電極フィルム80との間で確実な導通を得ることができる。ホットメルト層66の加熱温度及び加熱時間は、ホットメルト層66や導電性ペースト61aの材料などを考慮して適宜設定すればよいが、例えば、約120〜150℃、約10〜15分である。
【0062】
このように、本実施形態の配線部の形成方法によれば、フロント電極フィルム30とバック電極フィルム80とを貼り合わせる工程において、配線部の形成を同時に行うことにより、製造効率を高めることができる。
【0063】
本実施形態においては、基材フィルム64として樹脂フィルムを用いているが、例えば金属フィルムなど他の材質のフィルムを用いることもできる。また、基材フィルム64とホットメルト層66との間に介在させた粘着剤層62は必ずしも必要ではなく、ホットメルト層66から基材フィルム64を容易に剥離できる場合には、ホットメルト層66に基材フィルム64を直接貼り合わせてもよい。
【0064】
以上の説明は、フロント電極フィルム30とバック電極フィルム80との間で立体的な導通を取るための一例であるが、フロント電極フィルム30又はバック電極フィルム80において、電極パターン22,83を構成する各電極部を直列又は並列に接続したり、電極パターン22,83への電気的な接続部を形成するために、フロント電極フィルム30又はバック電極フィルム80の基板20,82上に、上述した導電性ペーストからなる配線部を形成することも可能である。この場合、配線部は、所定形状の開口部を有する配線部形成マスクを介して、基板上に導電性ペーストをスキージなどで塗布することにより、形成される。
【0065】
配線部形成マスクは、上述した主電極形成マスク10aと同様に、PETなどからなる基材フィルムの一方面に、強粘着剤からなる粘着剤層2を介してホットメルト層が形成された構成を例示することができ、熱圧着ロールなどによりホットメルト層を半溶融状態で熱圧着することにより、剥離可能に仮接着することができる。基材フィルムの表面は、必要に応じて耐熱フィルムで被覆されていてもよい。配線部形成マスクとしては、この他に、基材フィルムの一方面に粘着強度が調整された弱粘着層付きの構成にすることも可能であり、圧着ロールにより基板に圧着することができる。更に、このような弱粘着層付き配線部形成マスクに、上述したホットメルト層付きの配線部形成マスクを積層した構成にすることもできる。
【0066】
このような配線部の形成方法によれば、密着性及び導電性が良好な配線部を効率よく製造することができる。

5.電解質層の形成
次に、フロント電極フィルム30とバック電極フィルム80との間に電解質層を形成する。基板82上に残存したホットメルト層66には、電解液流路が形成されており、これらは電解液収容部68aを外部と連通する。
【0067】
図9(a)に示すように、電解液流路のOUT側において吸引することにより、電解液流路のIN側から電解液が供給され、電解液収容部68aに電解液が注入されて、電解質層90が形成される。電解液としては、例えば、ヨウ素/ヨウ化物、臭素/臭化物、遷移金属錯体などの電解質が、アセトニトリルやエチレンカーボネートなどの溶媒やイミダゾリウム塩などのイオン性液体に溶解してなるものが挙げられる。尚、図9(a)における電解液の流れは模式的に示したものであり、実際には図面を貫通する方向に電解液が流れる。
【0068】
電解質層は、上述した電解液を注入する以外に、ゲル電解質、溶融塩電解質、固体電解質などをフロント電極フィルム30又はバック電極フィルム80に予め塗布してから、フロント電極フィルム30及びバック電極フィルム80を貼り合わせて形成することもできる。

6.超音波溶着
電解質層90の形成後は、図9(b)に示すように、電解液収容部68aの全体を取り囲むようにフロント電極フィルム30及びバック電極フィルム80を超音波溶着することにより封止部91が形成され、電解質層90の電解液が封止される。そして、封止部91の外側を除去することにより、図9(c)に示すように、電極パターン上に光電変換層及び対向電極が順次積層された光電池モジュールが完成する。この光電池モジュールからの出力は、隅部2カ所に形成された接続端子孔92,92から取り出すことができる。
【0069】
超音波溶着は、振動子から振動エネルギーが伝達されるホーンと、被溶着物が載置される台座とを備える超音波溶着装置を用いて行うことができる。台座の上面には、振動エネルギーを集中するための突起部(エネルギーダイレクタ)が設けられており、フロント電極フィルム30及びバック電極フィルム80をホーンと台座との間に加圧挟持し、ホーンから超音波振動を付与することにより摩擦熱が生じて樹脂が溶融し、両者が結合される。超音波溶着により電解質層90を確実に封止するためには、フロント電極フィルム30及びバック電極フィルム80の基板20,82と、ホットメルト層66とが同等の材質からなることが好ましい。ここで、「同等の材質」とは、材質が全く同一である場合の他、溶融温度や熱膨張係数などの物性値がほぼ等しいものをいう。具体的な材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】フロント電極フィルムの基板上に主電極パターンを形成する工程の一例を示す工程断面図である。
【図2】フロント電極フィルムの基板上に補助電極パターンを形成する工程の一例を示す工程断面図である。
【図3】上記主電極パターン及び補助電極パターンを基板上に連続的に形成する工程の一例を示す工程斜視図である。
【図4】半導体電極を形成する工程の一例を示す工程断面図である。
【図5】バック電極フィルムの一例を示す断面図である。
【図6】配線部及び電解質層を形成するための前工程の一例を示す工程断面図である。
【図7】配線部及び電解質層を形成する工程の一例を示す工程断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る光電池モジュールの断面図である。
【図9】電解質層の形成及び封止工程の一例を示す工程断面図である。
【図10】主電極形成マスクを用いて主電極パターンを形成する他の方法を示す工程断面図である。
【図11】主電極形成パターンを形成する更に他の方法に用いられる主電極形成マスクの断面図である。
【図12】電極パターンを形成する他の方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0071】
2 粘着剤層
4 被覆層
6 基材フィルム
8 ホットメルト層
10 積層体
10a 主電極形成マスク
12a 開口部
20 基板
22 電極パターン
22a 主電極パターン
22b 補助電極パターン
30 フロント電極フィルム
30a 半導体電極形成マスク
32a 開口部
34 半導体電極
62 粘着剤層
64 基材フィルム
66 ホットメルト層
68 積層体
68a 電解液収容部
68b 配線部形成孔
69 貼り合わせ用マスク
80 バック電極フィルム
90 電解質層
91 封止部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト層が金属材料からなる被覆層により覆われ、表裏面を貫通する主電極形成用開口部を有する主電極形成マスクを用いて、基板上に電極パターンを形成する方法であって、
前記主電極形成マスクを、前記ホットメルト層を介して基板の表面に熱圧着する工程と、
前記主電極形成用開口部を介して導電性蒸着材料の物理的蒸着を行うことにより、前記基板上に主電極パターンを形成する工程と、
前記主電極形成マスクを剥離する工程とを備える電極パターンの形成方法。
【請求項2】
前記主電極形成マスクは、基材フィルムの一方面に粘着剤層を介して前記ホットメルト層が積層され、前記基材フィルムの他方面に前記被覆層が積層されて形成されている請求項1に記載の電極パターンの形成方法。
【請求項3】
前記主電極形成マスクを剥離する工程の後、
ホットメルト層が金属材料からなる被覆層により覆われ、表裏面を貫通する補助電極形成用開口部を有する補助電極形成マスクを、前記ホットメルト層を介して前記基板の表面に熱圧着する工程と、
前記補助電極形成用開口部を介して導電性蒸着材料の物理的蒸着を行うことにより、前記主電極パターンに沿って補助電極パターンを形成する工程と、
前記ホットメルト層と前記基板との間で前記補助電極形成マスクを剥離する工程とを備え、
前記補助電極パターンは、前記主電極パターンよりも表面抵抗値が小さくなるように形成される請求項1または2に記載の電極パターンの形成方法。
【請求項4】
前記主電極形成マスクを基板の表面に熱圧着する工程の前に、
ホットメルト層が金属材料からなる被覆層により覆われ、表裏面を貫通する補助電極形成用開口部を有する補助電極形成マスクを、前記ホットメルト層を介して前記基板の表面に熱圧着する工程と、
前記補助電極形成用開口部を介して導電性蒸着材料の物理的蒸着を行うことにより、補助電極パターンを形成する工程と、
前記ホットメルト層と前記基板との間で前記補助電極形成マスクを剥離する工程とを備え、
前記補助電極パターンは、前記主電極パターンよりも表面抵抗値が小さくなるように形成される請求項1または2に記載の電極パターンの形成方法。

【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電極パターンの形成方法により基板上に形成された主電極パターンに、光電変換層及び対向電極が順次積層された光電池モジュール。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−56345(P2007−56345A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245520(P2005−245520)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】