説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】例えば、画素スイッチング用TFTが選択状態から非選択状態に切り換えられた際に生じるプッシュダウン現象に起因して生じる画素電極の電位の低下、即ち、画像信号の書き込み不足を補償する。
【解決手段】画素回路(70)は、液晶素子(118)、画素電極(9a)、TFT(30)、ノード(N)、保持容量(119)、容量素子(Cf)を備えている。容量素子(Cf)は、補正信号線(131)を介して供給された補正信号(φj)によって駆動され、当該補正信号(φj)に応じて、ノード(N)の電位、即ち、画素電極(9a)の電極電位の変化を補償する。これにより、走査信号(Yj)が立ち下がる際、即ち一水平走査期間を終了する際に生じるプッシュダウン現象に起因する表示性能の低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置では、複数の画素から構成される表示領域に縦横に配列された複数の走査線及び複数のデータ線、並びにこれらの各交点に対応して複数の画素電極が基板上に設けられている。このような液晶装置は、例えば各画素に対応して設けられた画素スイッチング用TFT(Thin Film Transistor)のオンオフ、即ち、選択状態及び非選択状態を走査信号によって切り換え、データ線から画素スイッチング用TFTを介して画像信号が画素電極に供給されることによって画像を表示するアクティブマトリクス駆動方式を採用している。
【0003】
液晶装置の駆動時に画素スイッチング用TFTが選択状態から非選択状態に切り換えられた際には、例えば、画素スイッチング用TFTのゲート絶縁膜を誘電体膜として寄生容量が発生し、当該寄生容量を一因として画素電極の電位が低下してしまうプッシュダウン現象が生じる場合がある。このようなプッシュダウン現象によれば、画像信号が画素電極に供給されることによって設定された画素電極の電極電位が低下し、液晶装置の表示性能を低下させてしまう。特に、画像信号がアナログ信号として画素電極に供給される駆動方法を採用する液晶装置では、各画素の輝度は、画素電極、及び当該画素電極に対向する対向電極間に挟持された液晶に印加される印加電圧に依存するため、画素電極の電位の低下は、画素の輝度に直接影響し、液晶装置の表示性能を大きく低下させる一因になる。このような画素電極の電位の低下は、画素電極の電位を保持するために画素スイッチング用TFT及び画素電極間に保持容量が電気的に接続されている場合でも、大なり小なり発生する。そこで、特許文献1は、このようなプッシュダウン現象によって生じる画素電極の電位の低下を抑制する技術を開示している。
【0004】
また、この種の電気光学装置の一例である液晶装置では、液晶の焼付きや劣化を防ぐため、ドット反転、ライン反転、フレーム反転等の反転駆動方式が採用されている。反転駆動方式を採用する液晶装置によれば、各画素における画素電極の電位は、当該画素電極に対向する対向電極の電位を基準として、正極性書き込み期間及び負極性書き込み期間の夫々の期間において正極性及び負極性の夫々の極性に設定されるため、各期間において液晶に印加される印加電圧の大きさが一定になるように、画素電極に書き込まれる画像信号の電位、或いは対向電極の電位を調整している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−341313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、液晶を駆動するために各画素に設けられた画素回路の構成が複雑になる問題点がある。加えて、表示領域に表示される画像の高精細化を目的として画素のサイズを小さくする場合、TFT及びこれらTFTを相互に電気的に接続する配線が形成されるスペースを画素に確保することが困難となる問題点も生じるうえ、仮に、これらTFT及び配線を画素に作り込むことが可能になったとしても、TFT等の素子及び配線間に生じる寄生容量によって画素電極の電位が低下し、各画素電極に対する画像信号の書き込み不足が生じる可能性である。また、この種の電気光学装置では、相前後するフレーム期間のうち後のフレーム期間においてデータ線に供給される画像信号の電位に変動を生じさせないように、先のフレーム期間の終了後にデータ線をプリチャージするプリチャージ動作が行われる場合がある。特許文献1に開示された技術によれば、画素電極の電位の低下を抑制するためには、画像信号を画素電極に書き込んだ後に一定の期間が必要となるため、プリチャージ動作を行う期間を確保することが技術的に困難になる。
【0007】
一方、反転駆動方式を採用する液晶装置では、画像信号供給回路等の外部回路によって電位が調整された画像信号をデータ線に供給することになるため、画像信号の電位の調整が煩雑になることに加え、このような調整を実行する外部回路の構成が複雑になる。加えて、正極性を有する画像信号及び負極性を有する画像信号の夫々の電位を予め狙いの電位より高い電位側に調整しておく必要が生じる。したがって、これら画像信号を画素電極に供給する画素スイッチング用TFTを駆動するために走査線から当該TFTに印加される走査信号の電圧が大きくなり、走査線の耐圧性能を高める必要も生じてしまう。
【0008】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、画素スイッチング用TFTが選択状態から非選択状態に切り換えられた際に生じるプッシュダウン現象に起因して生じる画素電極の電位の低下、即ち、画像信号の書き込み不足を補償可能な電気光学装置、及びそのような電気光学装置を具備してなる表示装置等の電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上の表示領域で互いに交差する複数のデータ線及び複数の走査線と、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線の交差に対応して設けられた複数の表示素子の駆動を制御する複数の画素回路とを備え、前記画素回路は、前記表示素子を駆動する駆動電極と、(i)前記データ線に電気的に接続され、且つ前記データ線を介して画像信号が入力される入力側端子、(ii)前記駆動電極に電気的に接続され、且つ前記駆動電極に前記画像信号を出力する出力側端子、及び(iii)前記走査線に電気的に接続されたゲート電極を有しており、前記駆動電極を介して前記駆動を制御する駆動用トランジスタ素子と、(a)固定電位が供給される固定電位線に電気的に接続された第1容量電極、及び(b)前記駆動電極及び前記出力側端子間を電気的に接続する接続経路の途中に設けられたノードに電気的に接続され、且つ前記第1容量電極と共に一対の容量電極を構成する第2容量電極を有しており、前記画像信号の電位に応じて設定された前記駆動電極の電極電位を保持する保持容量と、補正信号供給回路から補正信号が供給される補正信号線及び前記ノード間において、前記補正信号線及び前記ノードの夫々に電気的に接続されており、前記駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられた際に前記ノードの電位に生じる第1変化量を前記補正信号に応じて補償する容量手段とを有する。
【0010】
本発明に係る電気光学装置によれば、「表示素子」とは、液晶素子のように光を変調することによって表示光を出射する変調素子、或いはEL素子等の自発発光素子をいい、駆動電極と共に画素回路の一部を構成している。ここで、「駆動電極」とは、表示素子を駆動するために当該表示素子に電圧を印加、或いは電流を供給する電極をいう。より具体的には、駆動電極は、例えば、表示素子が液晶素子である場合には、駆動電極は液晶に駆動電圧を印加するために各画素に設けられた画素電極であり、表示素子がEL素子等の自発光素子である場合には、発光層に駆動電流を供給するために当該発光層に電気的に接続された電極である。このような駆動電極は、後述する駆動用トランジスタ素子を介して供給された画像信号に応じた電圧を表示素子に印加したり、電流を供給したりする。
【0011】
駆動用トランジスタ素子は、(i)前記データ線に電気的に接続され、且つ前記データ線を介して画像信号が入力される入力側端子、(ii)前記駆動電極に電気的に接続され、且つ前記駆動電極に前記画像信号を出力する出力側端子、及び(iii)前記走査線に電気的に接続されたゲート電極を有しており、前記駆動電極を介して前記駆動を制御する。入力側端子及び出力側端子の夫々は、当該駆動用トランジスタ素子のソース領域及びドレイン領域に電気的に接続されており、例えば、当該電気光学装置が反転駆動方式を採用する液晶装置である場合である場合には、これら端子の夫々に電気的に接続されたソース領域及びドレイン領域の役割は、画像信号の電位に応じて相互に入れ替わる。より具体的には、例えば、駆動用トランジスタ素子がNチャネル型TFTであり、正極性の画像信号が入力側端子に供給された場合、当該入力側端子はソース領域に電気的に接続された端子として機能し、出力側端子はドレイン領域に電気的に接続された端子として機能する。逆に、負極性の画像信号が入力側端子に供給された場合には、入力側端子はドレイン領域に電気的に接続された端子と機能し、出力側端子はソース領域に電気的に接続された端子として機能する。このような駆動用トランジスタ素子は、走査線を介してゲート電極に供給された走査信号によって選択状態及び非選択状態、即ちチャネル領域の導通及び非導通が切り換え可能に構成されており、駆動電極を介して表示素子に印加される電圧、或いは表示素子に供給される電流によって表示素子の駆動を制御する。
【0012】
保持容量は、(a)固定電位が供給される固定電位線に電気的に接続された第1容量電極、及び(b)前記駆動電極及び前記出力側端子間を電気的に接続する接続経路の途中に設けられたノードに電気的に接続され、且つ前記第1容量電極と共に一対の容量電極を構成する第2容量電極を有しており、前記画像信号の電位に応じて設定された前記駆動電極の電極電位を保持する。
【0013】
ノードは、駆動電極及び出力側端子間を電気的に接続する配線等の接続経路の途中に設けられており、回路構成上、ノードの電位及び駆動電極の電位は相互に一致している。したがって、画像信号が供給された駆動電極の電極電位が変化すれば、当該変化に応じてノードの電位も変化する。
【0014】
保持容量は、例えば、基板上に形成された層間絶縁膜の一部を誘電体層とし、当該誘電体層を挟持する第1容量電極及び第2容量電極を一対の容量電極として有する積層構造を有している。第1容量電極は、当該電気光学装置の一例である液晶装置の動作時において、例えば、画素電極として機能する駆動電極に対向する対向電極と同電位、或いは対向電極に供給される共通電位と相互に異なる一定の固定電位が供給され、駆動電極の電極電位を保持するように動作する。
【0015】
容量手段は、補正信号供給回路から補正信号が供給される補正信号線及びノード間において、補正信号線及びノードの夫々に電気的に接続されており、駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられた際にノードの電位に生じる第1変化量を補正信号に応じて補償する。
【0016】
補正信号供給回路は、例えば、走査線に走査信号を供給する走査線駆動回路の一部を構成する回路部、或いは走査線駆動回路とは別に設けられた回路部であり、当該電気光学装置の動作時に、走査線に対応して設けられた補正信号線を介して容量手段に補正信号を供給する。
【0017】
容量手段は、例えば、駆動用トランジスタ素子にゲート絶縁膜、或いは当該ゲート絶縁膜と同層に形成された絶縁膜部分を誘電体膜として含んで構成されるゲート容量、駆動用トランジスタ素子のソース領域及びドレイン領域間に生じるSDジャンクション容量、基板上に形成された配線を一対の電極及びこれら電極間に延びる絶縁膜を誘電体膜として構成される容量素子、配線間の寄生容量、或いは他のトランジスタ素子を含んで容量を生じさせる各種容量回路であり、駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられた際にノードの電位に生じる第1変化量を補償するように動作する構成を有していればよい。より具体的には、駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられることによって生じる、ノード、即ち駆動電極から移動する電荷の移動量に相当する電荷を補償できればよい。
【0018】
したがって、本発明に係る電気光学装置によれば、駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられた際に生じる駆動電極の電位の低下を抑制でき、駆動電極の電位を画像信号の電位に応じた電位に維持(即ち、ホールド)することが可能であるため、駆動電極の電位の変化に起因して生じる表示不良を低減できる。特に、画像信号がアナログ信号である場合、表示素子の一例である液晶素子における液晶の配向状態は、当該液晶に加わる電圧Vと、電圧Vが維持される保持時間Tとの関係を規定するV−T曲線によって概ね規定されるため、画素電極として機能する駆動電極の電位をより長く保持(即ち、ホールド)できることによって、画素の輝度が狙いの輝度からずれることを効果的に抑制でき、電気光学装置の表示性能を高めることが可能である。
【0019】
加えて、本発明に係る電気光学装置によれば、駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられた直後から補正信号を容量手段に供給できるため、データ線にプリチャージを施すプリチャージ期間を確保することもできる。また、画素回路とは別に設けられた外部回路から補正済の画像信号が供給することなく駆動電極の電極電位を補償できるため、基板上に形成される回路構成を簡便なものにすることができるうえ、画像の高精細化を目的として画素サイズを小さく設定する場合でも、各画素に設けられる画素回路のサイズの増大を極力抑えつつ、画素を微細化できる利点もある。
【0020】
本発明に係る電気光学装置の一の態様では、前記補正信号供給回路は、前記駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられる第1タイミングに先んじて、前記補正信号の電位を第1電位から第2電位に変更し、前記第1タイミングの後に前記補正信号の電位を前記第2電位から前記第1電位に変更してもよい。
【0021】
この態様によれば、第1電位及び第2電位の電位差に応じて、容量手段によって補償可能な第1変化量、即ち駆動電極の電極電位の変化量を特定できるため、画像信号の電位を調整する場合に比べて簡便に電極電位を保持することが可能である。
【0022】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記画像信号をサンプリングして前記データ線に供給するサンプリングスイッチを有するサンプリング回路と、前記サンプリングスイッチを介して前記データ線に前記画像信号が供給されるように前記サンプリングスイッチを非選択状態から選択状態に切り換えるデータ線駆動回路とを備え、前記補正信号供給回路は、前記サンプリングスイッチが選択状態から非選択状態に切り換えられる第2タイミングに先んじて、前記補正信号の電位を前記第1電位から前記第2電位に変更し、前記容量手段は、前記サンプリングスイッチが選択状態から非選択状態に切り換えられた際に前記ノードの電位に生じる第2変化量を補償してもよい。
【0023】
この態様によれば、画像信号は、当該電気光学装置の駆動時において、シリアル−パラレル変換されたN個の画像信号の一つであり、N本の画像信号線のうち一本の画像信号線に供給され、更に、例えばサンプリング回路へと供給される。N個の画像信号は、例えば駆動周波数の上昇を抑えつつ高精細な画像表示を実現すべく、外部回路によって、シリアルな画像信号が、3相、6相、12相、24相、・・・など、複数のパラレルな画像信号に変換されることによって生成される。このような画像信号の供給と並行して、例えばデータ線駆動回路によって、複数のデータ線を一群とするデータ線群に対応するサンプリングスイッチ毎に、サンプリング信号が順次供給される。すると、サンプリング回路によって、複数のデータ線には、サンプリング信号に応じてデータ線群毎にN個の画像信号が順次供給される。よって、同一データ線群に属するデータ線は同時に駆動されることとなる。尚、サンプリングスイッチは、例えば、TFTにより夫々構成されており、出力側がデータ線に接続され、ゲートに供給されたサンプリング信号に応じて非選択状態から選択状態に切り換えられ、画像信号がデータ線に供給される。
【0024】
ここで、データ線に電気的に接続されたサンプリングスイッチが選択状態から非選択状態に切り換えられた際には、駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられた場合と同様に、ノードの電位、即ち駆動電極の電極電位が変化してしまう。したがって、このような電位の変化に対応する第2変化量によっても電極電位の保持が困難になるため、補正信号供給回路は、サンプリングスイッチが選択状態から非選択状態に切り換えられる第2タイミングに先んじて、補正信号の電位を第1電位から前記第2電位に変更し、容量手段は、サンプリングスイッチが選択状態から非選択状態に切り換えられた際にノードの電位に生じる第2変化量を補償する。
【0025】
したがって、この態様によれば、第1変化量だけでなく、第2変化量に起因して生じる電極電位の変動の抑制することが可能であり、第1変化量のみを補償する場合に比べて、より一層高品位の画像を表示することが可能である。
【0026】
この態様では、前記第1電位及び前記第2電位間の電位差である差分電圧値と、前記容量手段の容量値との組み合わせは、前記第1変化量及び前記第2変化量のうち少なくとも前記第1変化量を補償可能なように設定されていてもよい。
【0027】
この態様によれば、容量手段の設計が制限されることによって容量値が制限される場合であっても、差分電圧値を便宜設定することによって第1変化量及び第2変化量のうち少なくとも第1変化量を補償できる。また、差分電圧値の設定値が制限される場合には、容量値を便宜設定することによって、第1変化量及び第2変化量のうち少なくとも第1変化量を補償できる。したがって、この態様によれば、差分電圧値及び容量値の少なくとも一方をパラメータとして少なくとも第1変化量を補償することが可能であり、基板上に形成される容量手段の設計及び差分電圧値の設定値の夫々の自由度を高めることが可能である。
【0028】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記補正信号線は、複数の補助補正信号線から構成されており、前記補正信号は、前記補正信号供給回路から前記複数の補助補正信号線に供給される複数の補助補正信号であり、前記容量手段は、前記ノードに各々電気的に接続された複数の補助容量手段であり、前記複数の補助容量手段の夫々は、前記複数の補助補正信号線の夫々に応じて前記第1変化量及び前記第2変化量のうち少なくとも前記第1変化量の補償を分担してもよい。
【0029】
この態様によれば、一つの容量手段によって第1変化量及び第2変化量のうち少なくとも第1変化量を補償する場合に比べて、当該一つの容量手段が他の画素回路に与える影響を低減できる。より具体的には、複数の補助容量手段の夫々によって補償される電位の変化量は、第1変化量全体に比べて小さいため、例えば、一つの容量素子で構成される容量手段によって他の画素回路に生じる駆動電極の電位変動に比べて当該他の画素回路における電極電位の変動を抑制できる。
【0030】
また、電気光学装置が反転駆動方式を採用する液晶装置である場合には、複数の容量手段の夫々が相互に独立して、互いに異なる極性を有する画像信号の夫々が供給された駆動電極の電極電位を補償することも可能である。
【0031】
この態様では、前記補正信号供給回路は、前記複数の補助補正信号を互いに異なるタイミングで前記複数の補助補正信号線の夫々に供給し、前記複数の補助容量手段は、前記第1変化量及び前記第2変化量のうち少なくとも前記第1変化量を時間軸に沿って段階的に補償してもよい。
【0032】
この態様によれば、「段階的に」とは、時間軸に沿って少なくとも第1変化量を複数の補助容量手段によって分担して補償することをいう。したがって、この態様によれば、複数の補助容量手段によって少なくとも第1変化量を同一のタイミングで補償する場合に比べて、時間的に緩やかに補償でき、他の画素回路に寄生容量が生じることを低減できる。
【0033】
この態様では、前記複数の補助補正信号の夫々の波形のうち前記時間軸に対する前記複数の補助補正信号の電位の変化で特定される傾き部分の夫々は、前記時間軸に対して互いに異なる傾きを有していてもよい。
【0034】
この態様によれば、複数の補助補正信号の夫々によって各々動作する複数の補助容量手段によって、例えば、ノードと他の配線等の導電部との間に生じる容量結合を低減できると共に、液晶素子等の表示素子における対向電極に供給される共通電位とノードの電位に起因して生じる結合容量を低減できる。
【0035】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記複数の補助容量手段の夫々の容量値は、互いに異なる値であってもよい。
【0036】
この態様によれば、第1変化量及び第2変化量のうち少なくとも第1変化量を補償することができ、例えば、ノードと他の配線等の導電部との間に生じる容量結合を低減できると共に、液晶素子等の表示素子における対向電極に供給される共通電位とノードの電位に起因して生じる結合容量を低減できる。
【0037】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記第1電位は、前記複数の補助補正信号の夫々において互いに異なり、前記第2電位は、前記複数の補助補正信号の夫々において互いに異なっていてもよい。
【0038】
この態様によれば、差分電圧値を規定する第1電位及び第2電位の設定値の自由度を高めることが可能である。
【0039】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記複数の補助補正信号の夫々における前記第1電位及び前記第2電位の差である差分電圧値の夫々は、前記複数の補助補正信号の夫々において互いに異なっていてもよい。
【0040】
この態様によれば、他の画素回路に対する影響を電気的な影響を抑制しつつノードの電位変動を低減することが可能である。
【0041】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記サンプリングスイッチは、サンプリング用トランジスタ素子であり、前記補正信号供給回路は、前記サンプリング用トランジスタ素子及び前記駆動用トランジスタ素子の少なくとも一方と並行して形成され、且つ前記一方と同一の素子設計を有する供給回路用トランジスタ素子を含んで構成されていてもよい。
【0042】
この態様によれば、一つの補正信号、或いは複数の補助補正信号の夫々に応じて補償可能な電圧をサンプリング用トランジスタ素子及び駆動用トランジスタ素子の少なくとも一方のしきい値電圧で一致させることが可能である。より具体的には、サンプリング用トランジスタ素子及び駆動用トランジスタ素子の少なくとも一方と並行して形成され、且つ当該一方と同一の素子設計を有する供給回路用トランジスタ素子と異なるトランジスタ素子を介して出力される複数の補助補正信号に比べて、複数の補助補正信号相互の電位のばらつきを低減可能である。
【0043】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を備えている。
【0044】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することが可能である。
【0045】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下図面を参照しながら、本発明に係る電気光学装置及び電子機器の各実施形態を説明する。
【0047】
<1:電気光学装置の全体構成>
先ず、図1及び図2を参照しながら、本発明に係る電気光学装置の一実施形態である液晶パネル100の全体構成を説明する。ここに、図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た液晶パネル100の概略的な平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。ここでは、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶パネルを例に挙げている。
【0048】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶パネル100では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、本発明の「表示領域」の一例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0049】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0050】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0051】
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺のいずれかに沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。尚、走査線駆動回路104を、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に隣接する2辺に沿って設けるようにしてもよい。この場合、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿って設けられた複数の配線によって、二つの走査線駆動回路104は互いに接続されるようにする。
【0052】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0053】
図2において、TFTアレイ基板10上には、本発明の「駆動電極」の一例である画素電極9aが、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後に形成されており、その上に配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0054】
尚、図1及び図2には図示しないが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101や走査線駆動回路104等に加えて、後述するように画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、及び、各画素回路に補正信号を供給する補正信号供給回路が形成されている。本実施形態では、サンプリング回路のほか、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0055】
<2:電気光学装置の電気的な構成>
次に、図3及び図4を参照しながら、液晶パネル100の電気的な構成を説明する。ここに、図3は、液晶パネルを含んで構成される液晶装置の全体構成を示すブロック図であり、図4は、液晶パネル100の電気的な構成を示すブロック図である。
【0056】
図3に示すように、液晶装置500は、液晶パネル100を備えると共に、外部回路として設けられた画像信号供給回路300、タイミング制御回路400、及び電源回路700を備えている。
【0057】
タイミング制御回路400は、各部で使用される各種タイミング信号を出力するように構成されている。タイミング制御回路400の一部であるタイミング信号出力手段により、最小単位のクロックであり各画素を走査するためのドットクロックが作成され、このドットクロックに基づいて、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYinv、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号XCLinv、YスタートパルスDY及びXスタートパルスDXが生成される。
【0058】
画像信号供給回路300には、液晶装置500の動作時、即ち、液晶パネル100の動作時に、外部から1系統の入力画像データVIDが入力される。画像信号供給回路300は、1系統の入力画像データVIDをシリアル−パラレル変換して、N相、本実施形態では6相(N=6)の画像信号VID1〜VID6を生成する。更に、画像信号供給回路300において、画像信号VID1〜VID6の各々の電圧が、所定の基準電位に対して正極性及び負極性に反転され、このように極性反転された画像信号VID1〜VID6が出力される。
【0059】
電源回路700は、所定の共通電位LCCOMの共通電源を、図2に示す対向電極21に供給する。本実施形態において、対向電極21は、図2に示す対向基板20の下側に、複数の画素電極9aと対向するように形成されている。
【0060】
図4に示すように、液晶パネル100には、そのTFTアレイ基板10の周辺領域に、走査線駆動回路104、データ線駆動回路101、サンプリング回路200、及び補正信号供給回路600が設けられている。
【0061】
走査線駆動回路104には、Yクロック信号CLY、反転Yクロック信号CLYinv、及びYスタートパルスDYが供給される。走査線駆動回路104は、YスタートパルスDYが入力されると、Yクロック信号CLY及び反転Yクロック信号CLYinvに基づくタイミングで、走査信号Y1、・・・、Ymを順次生成して出力する。
【0062】
データ線駆動回路101には、Xクロック信号CLX、反転Xクロック信号CLXinv、及びXスタートパルスDXが供給される。データ線駆動回路101は、XスタートパルスDXが入力されると、Xクロック信号CLX及び反転Xクロック信号XCLXinvに基づくタイミングで、サンプリング信号S1、・・・、Snを順次生成し、配線116を介して各サンプリングスイッチ202にサンプリング信号S1、・・・、Snを出力する。
【0063】
サンプリング回路200は、Pチャネル型又はNチャネル型の片チャネル型TFT、若しくは相補型のTFTから夫々構成された複数のサンプリングスイッチ202を備えている。
【0064】
液晶パネル100は、更に、そのTFTアレイ基板10の中央を占める画像表示領域10aに、縦横に配線されたデータ線114及び走査線112を備え、それらの交点に対応する各画素部に画素回路70を備えている。尚、本実施形態では特に、走査線112の総本数をm本(但し、mは2以上の自然数)とし、データ線114の総本数をn本(但し、nは2以上の自然数)として説明する。
【0065】
6相にシリアル−パラレル展開された画像信号VID1〜VID6は、N本、本実施形態では6本の画像信号線171を介して液晶パネル100に供給される。n本のデータ線114は、以下に説明するように、画像信号線171の本数に対応する6本のデータ線114を1群とするデータ線群毎に、順次駆動される。
【0066】
データ線駆動回路101から、各データ線群に対応するサンプリングスイッチ202毎にサンプリング信号Si(i=1、2、・・・、n)が順次供給され、サンプリング信号Siに応じて各サンプリングスイッチ202はオン状態となる。各サンプリングスイッチ202は、中継配線を介して画像信号線171に接続されている。
【0067】
よって、サンプリングスイッチ202がオン状態となった際に、即ち、サンプリングスイッチ202が非選択状態から選択状態に切り換った際に、6本の画像信号線171から画像信号VID1〜VID6が、データ線群に属するデータ線114に同時に、且つデータ線群毎に順次供給される。よって、データ線群に属するデータ線114は互いに同時に駆動されることとなる。従って、本実施形態では、n本のデータ線114をデータ線群毎に駆動できるため、相展開しない場合に比べて液晶パネル100の駆動周波数を抑制できる。
【0068】
液晶パネル100は、補正信号線131、電源線132及び133を備えている。
【0069】
補正信号線131は、補正信号供給回路600及び画素回路70を電気的に中継している。後述するように、補正信号供給回路600から出力された補正信号は、補正信号線131を介して各画素回路70に供給される。
【0070】
電源線132は、外部回路から供給された共通電位LCCOMを画素回路70に供給する。電源線133は、後述する固定電位VCOMを画素回路70に供給する。
【0071】
<3:画素回路の構成及び動作>
次に、図5乃至図10を参照しながら、画素回路70の電気的な構成、及びその動作を説明する。図5は、本実施形態に係る画素回路70の回路構成をサンプリングスイッチ202と共に示した回路図である。図6及び図7は、本実施形態に係る液晶パネルに供給される各種信号のタイミングチャートである。図8は、本実施形態に係る液晶パネルが有する画素回路の比較例に係る画素回路の回路図である。図9は、図8に示した画素回路に供給される各種信号のタイミングチャートである。図10は、比較例に係る画素回路に供給される各種信号のタイミングチャートの他の例である。
【0072】
図5に示すように、画素回路70は、本発明の「表示素子」の一例である液晶素子118、画素電極9a、本発明の「駆動用トランジスタ素子」の一例であるTFT30、ノードN、保持容量119、本発明の「容量手段」の一例である容量素子Cfを備えている。
【0073】
液晶素子118は、液晶パネル100の動作時に、画素電極9aと、画素電極9aに対向する対向電極21との間に生じる電圧によって液晶の配向状態が制御され、当該配向状態に応じて光源光を透過させる。
【0074】
TFT30は、本発明の「入力側端子」の一例であるソース電極30a、本発明の「出力側端子」の一例であるドレイン電極30b、ゲート電極30cを有しており、液晶パネル100の動作時に画素電極9aを介して液晶素子118の駆動を制御する。より具体的には、図4及び図5に示すように、ソース電極30aには、画像信号VIDk(但し、k=1、2、3、・・・、6)が供給されるデータ線114が電気的に接続されている一方、ゲート電極30cには、走査信号Yj(但し、j=1、2、3、・・・、m)が供給される走査線112が電気的に接続されるとともに、TFT30のドレイン電極30bには、液晶素子118の画素電極9aが接続されている。
【0075】
ソース電極30a及びドレイン電極30bの夫々は、TFT30の一部を構成する活性層のうちソース領域及びドレイン領域の夫々に電気的に接続されている。本実施形態では、特に、液晶パネル100を駆動するアクティブマトリクス駆動方式のうち画像信号の極性を反転させる反転駆動方式を採用しているため、ソース電極30a及びドレイン電極30bの夫々に電気的に接続されたソース領域及びドレイン領域の電位は、画像信号の極性に電位に応じて相互に入れ替わる。より具体的には、例えば、TFT30がNチャネル型TFTであり、正極性の画像信号がソース電極30aに供給された場合、ソース電極30aがドレイン電極30bより高電位になり、負極性の画像信号がソース電極30aに供給された場合には、ソース電極30aがドレイン電極30bより低電位となり、ドレイン電極として機能する。画素回路70において、液晶素子118は、画素電極9aと対向電極21との間に液晶を挟持してなる。
【0076】
走査信号Yjが供給された走査線112に対応する画素回路70、即ち、選択された走査線112に対応する画素回路70において、TFT30に走査信号Yjが供給されると、TFT30はオン状態(即ち、非選択状態から選択状態)に切り換り、当該画素回路70は選択状態となる。液晶素子118の画素電極9aには、TFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線114より画像信号VIDkが所定のタイミングで供給される。これにより、液晶素子118には、画素電極9a及び対向電極21の各々の電位によって規定される印加電圧が印加される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶パネル100からは画像信号VID1〜VID6に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0077】
図5に示すように、保持容量119は、第1容量電極119a及び第2容量電極119bと、これら容量電極間に挟持された誘電体層(不図示)を備えて構成されている。保持容量119は、例えば、TFTアレイ基板10上に形成された層間絶縁膜の一部を誘電体層とし、当該誘電体層を挟持する第1容量電極119a及び第2容量電極119bを一対の容量電極として有する積層構造を有している。
【0078】
第1容量電極119bは、電源線133に電気的に接続されており、液晶パネル100の動作時に、電源線133を介して固定電位VCOMが供給される。第2容量電極119aは、TFT30のドレイン電極30b側に電気的に接続されている。即ち、保持容量119は、液晶素子118と並列に付加されており、画像信号VIDkに応じて設定された画素電極9aの電極電位を保持する。より具体的には、例えば、第1容量電極119bは、液晶装置の動作時において、例えば、画素電極9aに対向する対向電極と同電位、或いは対向電極に供給される共通電位と相互に異なる一定の固定電位VCOMが供給され、画素電極9aの電極電位を保持するように動作する。
【0079】
画素電極9aに保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aの電位は、ソース電圧が印加された時間よりも理想的には3桁も長い時間だけ保持容量119によって保持されるので、保持特性が改善される結果、高コントラスト比が実現されることとなる。
【0080】
しかしながら、通常、TFT30の動作時に生じるTFT30のゲート及びドレイン間容量C1、或いは、データ線114及びグランド間に生じる容量C2、並びに、サンプリングスイッチ202が選択状態から非選択状態に切り換えられる際にサンプリングスイッチ202のゲート及びドレイン間に生じる容量C3に起因して、画素電極9a、言い換えれば、画素電極9a及びドレイン電極30b間を電気的に接続する接続経路の途中に設けられたノードNの電位がプッシュダウン現象により低下してしまい、液晶パネル100の表示性能が低下してしまう。そこで、画素回路70では、後述するように、容量素子Cfによって、ノードNの電位、即ち画素電極9aの電極電位に生じる変化を補償し、液晶パネル100の表示性能を向上させている。
【0081】
尚、本発明に係る電気光学装置は、液晶素子のように光を変調することによって表示光を出射する変調素子によって画像を表示する液晶装置に限定されるものではなく、例えば、EL素子等の自発発光素子等の表示素子を含んでなる画素回路を備えた表示装置でもよい。このような表示装置では、発光層に駆動電流を供給する電極が駆動電極の一例となり、液晶パネル100と同様にして、プッシュダン現象に起因する電極電位の低下が補償される。
【0082】
次に、図5乃至図7を参照しながら、画素回路70の動作を説明する。
【0083】
図5及び図6(a)に示すように、液晶パネル100に供給されたYクロック信号CLY、及びYスタートパルスDYに応じて、各走査線112に順次走査信号Y1、・・・、Ymが供給される。図5及び図6(b)に示すように、一水平走査期間においてデータ線駆動回路101に供給されるXスタートパルスDX及びXクロック信号CLXに応じて、画像信号VID1、・・・、VID6が画像信号線117を介してサンプリング回路200に供給される。サンプリング回路200を構成する複数のサンプリングスイッチ202の夫々は、Xクロック信号CLXに応じてデータ線駆動回路101が出力されるサンプリング信号Siに応じてオフ状態(即ち、非選択状態)からオン状態(即ち、選択状態)に切り換えられ、画像信号VID1、・・・、VID6の夫々を、各画像信号に対応するデータ線114に供給する。
【0084】
ここで、図8乃至図10を参照しながら、本実施形態に係る液晶パネルの比較例である液晶パネルが備える画素回路の動作を説明しつつ、画素電極9aの電極電位、即ちノードNの電位が低下するプッシュダウン現象の発生プロセスを説明する。尚、以下では、本実施形態に係る液晶パネルと共通する部分に共通の参照符号を付し、詳細な説明を省略している。
【0085】
図8に示すように、比較例に係る液晶パネルに設けられた画素回路70aの電気的構成は、容量素子Cf及び補正信号線131を有していない点で画素回路70と相違する。
【0086】
図9に示すように、走査信号Yjが走査線112に供給された後、言い換えれば、走査線112の電位が、走査信号Yjの供給に応じて電位E0から電位E1に立ち上った後に、画像信号VIDkがデータ線114に供給される。画像信号VIDkは、例えば、1フィールド期間等の所定の期間毎に固定電位VCOMに対して正極性及び負極性に反転された状態で供給される。図9では、例えば、正極性のVIDkが、固定電位VCOMに対して電位Vdだけ高い電位を有しており、負極性のVIDkは、固定電位VCOMに対して電気Vdだけ低い電位を有している。
【0087】
画像信号VIDkの極性が正極性である場合、ノードNの電位、即ち画素電極9aの電極電位Vpixは、サンプリングスイッチ202が非選択状態から選択状態に切り換った際に、固定電位VCOMより高い電位+Vdに立ち上がる。
【0088】
しかしながら、TFT30が非選択状態から選択状態に切り換る際にゲート及びドレイン間に生じる容量C1に起因して、画素電極9aの電極電位Vpixは、電位ΔVだけ低下する。電極電位Vpixの低下は、正極性及び負極性の夫々の画像信号VIDNが供給された場合の両方で発生する。
【0089】
ここで、図10に示すように、電極電位Vpixにおける電位ΔVの変化を低減するために、画像信号VIDkの電位を狙いの電位+Vd及び−Vdより予めΔVだけ高く設定しておくことによって、電極電位Vpixのずれを補償しておく方法も考えられる。
【0090】
しかしながら、液晶パネルの外部から当該液晶パネルに供給される画像信号の電位を画像信号供給回路等300等の外部回路によって制御する必要が生じ、外部回路の設計変更を行う必要が生じる。加えて、高電位側に電位が設定された画像信号VIDkを画素電極9aに供給するTFT30のゲート電圧を高くする必要があるため、走査線112の耐圧性を高める必要も生じてしまい、液晶パネルの設計について変更すべき部分が増えてしまう問題点が生じる。
【0091】
そこで、図5及び図7を参照しながら詳細に説明するように、本実施形態に係る液晶パネル100が有する容量素子Cfによって、ノードNの電位、即ち、画素電極9aの電極電位Vpixの電位の変化を補償する。
【0092】
図5及び図7において、走査信号Yjが供給される一水平走査期間において、サンプリングスイッチ202にサンプリング信号Siが供給されると、画像信号VIDkが当該画像信号VIDkに対応するデータ線114にサンプリングされ、データ線114のデータ線電位DLkが立ち上がる。尚、図7では、正極性の画像信号VIDkが供給される期間を図中Aで示しており、負極性の画像信号VIDkが供給される期間を図中Bで示している。本実施形態では、説明を簡便にするために正極性の画像信号VIDkが供給される期間を例に挙げて画素回路70の動作を説明する。したがって、図7中で、サンプリング信号Siに応じてサンプリングされた画像信号VIDkは正極性を有しており、当該画像信号VIDkが供給されたデータ線114のデータ線電位DLkは、固定電位VCOMより高い電位Vdに立ち上がる。
【0093】
容量素子Cfは、補正信号供給回路600(図4参照)から補正信号φjが供給される補正信号線131及びノードN間において、補正信号線131及びノードNの夫々に電気的に接続されており、TFT30が選択状態から非選択状態に切り換えられた際にノードNの電位に生じる第1変化量−ΔV2を補正信号φjに応じて補償する。
【0094】
より具体的には、走査信号Yjが立ち下がる前に、即ち、走査信号Yjの電位が電位E1から電位E0に立ち下がる前に、補正信号供給回路600が、補正信号φの電位を第1電位Vφ1から第2電位Vφ2に差分電圧値ΔVsだけ立ち下げる。その後、走査信号Yjの電位が立ち下がった後、補正信号供給回路600は、補正信号φの電位を第2電位Vφ2から第1電位Vφ1に高める。このように補正信号φの電位を変更することによって、容量素子Cfは、補正信号φの電位の変化に応じて画素電極9aの電極電位Vpixの電位の変化を補償し、画像信号VIDkの電位に応じた電極電位Vpixを保持する。
【0095】
ここで、差分電位差ΔVsは、液晶パネル100の動作時にノードNの電位、即ち電極電位Vpixにおいて生じる画像信号VIDkの電位からのずれのうち少なくともTFT30が選択状態から非選択状態に切り換えられた際に生じる電位の変化である第1変化量−ΔV2を補償するように設定される。より具体的には、容量素子Cfによって補償される電位の変化量+ΔV3は、容量素子Cfの容量Cf、保持容量119の容量値CcapA、TFT30のゲート及びドレイン間に生じる容量C1、差分電圧値ΔVsを用いて、式(1)に基づいて算出可能である。
【0096】
【数1】

容量素子119は、例えば、TFT30のゲート絶縁膜、或いは当該ゲート絶縁膜と同層に形成された絶縁膜部分を誘電体膜として含んで構成されるゲート容量、TFT30のソース領域及びドレイン領域間に生じるSDジャンクション容量、TFTアレイ基板10上に形成された配線を一対の電極とすると共にこれら電極間に延びる絶縁膜を誘電体膜として構成される容量、配線間の寄生容量、或いは他のトランジスタ素子を含んで容量を生じさせる各種容量回路であり、TFT30が選択状態から非選択状態に切り換えられた際にノードN、即ち電極電位Vpixに生じる電位の第1変化量−ΔV2を補償するように動作する構成を有している。より具体的には、TFT30が選択状態から非選択状態に切り換えられることによって生じる、ノードN、即ち画素電極9aから移動する電荷の移動量に相当する電荷を補償できればよい。
【0097】
本実施形態に係る液晶パネル100では、TFT30が選択状態から非選択状態に切り換えられる際だけでなく、サンプリング信号Siが立ち下がる際、即ちサンプリングスイッチ202が選択状態から非選択状態に切り換えられる際にも、ノードNの電位は当該サンプリングスイッチ202の切り換え動作に応じて生じる容量C3に起因して第2変化量ΔV1だけ低下する。容量素子Cfは、容量C3に起因して生じるノードNの電位の変化である第2変化量−ΔV1も補償可能である。より具体的には、第1変化量ΔV2に加えて、第2変化量ΔV1も補償する際には、補正信号φの電位を第1電位Vφ1から第2電位Vφ2に立ち下げるタイミングは、サンプリング信号Siを立ち下げる第2タイミングより前になる。このようなタイミングで補正信号φの電位を第1電位Vφ1から第2電位Vφ2に立ち下げ、且つノードNの電位の第2変化量ΔV1を考慮して変化量ΔV3を設定することによって、第1変化量ΔV2及び第2変化量ΔV1の両方を補償できる。
【0098】
尚、本実施形態では、差分電圧値ΔVsと、容量値Cfとの組み合わせは、第1変化量ΔV2及び第2変化量ΔV1のうち少なくとも第1変化量ΔV2を補償可能なように設定することが可能である。差分電圧値ΔVs及び容量値Cfの組み合わせを設定可能であることにより、容量素子Cfの設計が制限されることによって容量値Cfが制限される場合であっても、差分電圧値ΔVsが便宜設定可能の状態となり、第1変化量ΔV2及び第2変化量ΔV1のうち少なくとも第1変化量ΔV2の補償が可能になる。
【0099】
また、差分電圧値ΔVsの設定値が制限される場合、即ち第1電位Vφ1及び第2電位Vφ2の設定値が制限される場合には、容量値Cfを便宜設定することによって、少なくとも第1変化量ΔV2を補償できる。したがって、本実施形態に係る液晶パネルによれば、TFTアレイ基板10上に形成される容量素子Cfの設計及び差分電圧値ΔVの設定値の夫々の自由度を高めることが可能である。
【0100】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶パネル100によれば、TFT30が選択状態から非選択状態に切り換えられた際に生じる画素電極9aの電位の低下を抑制でき、画素電極9aの電位を画像信号VIDkの電位に応じた電位に維持(即ち、ホールド)することが可能となり、画素電極9aの電極電位Vpixの変化に起因して生じる表示不良を低減できる。特に、画像信号VIDkがアナログ信号である場合、液晶素子118における液晶の配向状態は、当該液晶に加わる電圧Vと、当該電圧が維持される保持時間Tとの関係を規定するV−T曲線によって概ね規定されるため、画素電極の電位をより長く保持(即ち、ホールド)することによって、画素における輝度が狙いの輝度からずれることを効果的に抑制でき、液晶パネルの表示性能を高めることが可能である。
【0101】
加えて、本実施形態に係る液晶パネル100によれば、TFT30が選択状態から非選択状態に切り換えられた直後から補正信号φを容量素子Cfに供給できるため、データ線114にプリチャージを施すプリチャージ期間を確保することもできる。
【0102】
また、本実施形態に係る液晶パネル100によれば、画素回路70とは別に設けられた外部回路から補正済の画像信号を供給することなく画素電極の電極電位を補償できるため、TFTアレイ基板10上に形成される回路構成を簡便なものにすることができる。加えて、画像の高精細化を目的として画素サイズを小さく設定する場合でも、各画素に設けられる画素回路のサイズの増大を極力抑えつつ、画素を微細化できる利点もある。
【0103】
(変形例)
次に、図11乃至図14を参照しながら、本実施形態に係る液晶パネルの変形例を説明する。図11は、本例に係る液晶パネルに設けられた画素回路の構成を示した回路図である。図12は、図11に示した画素回路に供給される各種信号のタイミングチャートである。図13は、補正信号の波形を詳細に示したタイミングチャートである。図14は、図13に示した補正信号の波形の一部を詳細に示したタイミングチャートである。
【0104】
図11に示すように、本例に係る液晶パネルにおける画素回路70bは、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)を備えている点で上述の画素回路70と相違する。
【0105】
補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)の夫々は、本発明の「補助容量手段」の一例であり、これら補助容量素子の夫々に対応する複数の補助補正信号線131−1、・・・、131−iの夫々と、ノードNとの間に電気的に接続されている。複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々は、液晶パネルの動作時に、補助補正信号供給回路から複数の補助補正信号線131−1、・・・、131−iの夫々を介して複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)の夫々に供給される。
【0106】
図11及び図12に示すように、データ線114の電位DLkは、上述の液晶パネル100の動作時と同様に、サンプリング信号Siが立ち下がるタイミングと、走査信号Yjが立ち下がるタイミングとの夫々において、プッシュダウン現象が生じることによって、電圧ΔV1及びΔV2だけ低下する。本例に係る液晶パネルでは、一つの容量素子によってデータ線114のデータ線電位DLkの低下を補償するのではなく、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)が当該データ線電位DLkの低下に対する補償を分担する点に特徴がある。
【0107】
複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々は、サンプリング信号Siが入力されるタイミングの前に、第1電位Vφ1a、・・・、Vφiaから第2電位Vφ1b、・・・、Vφibに下げられる。その後、走査信号Yjが供給されなくなるタイミング、即ち一水平走査期間が終了した後に、複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々の電位は、第2電位Vφ1b、・・・、Vφibから再度第1電位Vφ1a、・・・、Vφiaに高められる。このように複数の補正信号φ1、・・・、φiの夫々の電位を変更することによって、これら第1電位Vφ1a、・・・、Vφiaと、第2電位Vφ1b、・・・、Vφibとの差分電圧値ΔVs(1)、・・・、ΔVs(i)の夫々が複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)に印加される。複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)は、印加された差分電圧値ΔVs(1)、・・・、ΔVs(i)に応じて、これら補助容量素子全体でノードNの電位を電圧ΔV3だけ高める。これにより、上述の液晶パネル100と同様に、プッシュダウンによって生じたノードNの電位の低下、即ち画素電極9aの電極電位Vpixが補償される。
【0108】
したがって、本例に係る液晶パネルによれば、上述の液晶パネル100と異なり、ノードNに生じた電位の変化を一つの容量素子によって補償する場合に比べて、当該一つの容量素子が他の画素回路に与える影響を低減できる。より具体的には、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)のうち一つの補助容量素子によって補償される電位の変化量は、第1変化量ΔV2に比べて小さいため、一つの容量素子で構成される容量手段によって他の画素回路に生じる画素電極9aの電位変動に比べて当該他の画素回路における電極電位の変動を抑制できる。このような複数の補助容量素子による電位の補償は、相展開駆動される液晶パネルにおいて、表示性能を高める上で特に有効である。
【0109】
また、本例に係る液晶パネルのように、駆動方式として反転駆動方式を採用する場合には、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)の夫々が相互に独立して、互いに異なる極性を有する画像信号VIDkの夫々が供給された画素電極9aの電極電位を補償することも可能である。
【0110】
尚、本実施形態では、ノードNに生じた電位の変化のうち、走査信号Yjが立ち下がったタイミングで生じる第1変化量ΔV2と、サンプリング信号Siが立ち下がったタイミングで生じる第2変化量ΔV1との両方が補償されているが、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)は、これら電位の変化量のうち少なくとも第1変化量ΔV2を補償するように動作すればよいが、第1変化量ΔV2及び第2変化量ΔV1の両方が補償されるほうがより好ましい。
【0111】
次に、図13を参照しながら、複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの波形を詳細に説明する。尚、図13では、説明の便宜上、補助補正信号φ1、φi−1、φiの波形のみを図示している。
【0112】
図13に示すように、補正信号供給回路600は、複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々を互いに異なるタイミングで複数の補助補正信号線131−1、・・・、131−iの夫々に供給し、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・Cf(i)は、第1変化量ΔV2及び第2変化量ΔV1のうち少なくとも第1変化量ΔV2を時間軸に沿って段階的に補償する。より具体的には、補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々を第2電位Vφ1b、・・・、Vφibの夫々から第1電位Vφ1a、・・・、Vφiaの夫々に立ち上げるタイミングは相互に異なっている。
【0113】
したがって、本例に係る液晶パネルによれば、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・Cf(i)に同一のタイミングでノードNの電位の変化、即ち電極電位Vpixの変化を補償する場合に比べて、時間的に緩やかに電位の変化を補償でき、他の画素回路に寄生容量が生じることを低減できる。
【0114】
また、本例に係る液晶パネルによれば、第1電位Vφ1a、・・・、Vφiaの夫々は相互に異なっていてもよいし、第2電位Vφ1b、・・・、Vφibの夫々も相互に異なっていてもよい。このように第1電位Vφ1a、・・・、Vφia、及び第2電位Vφ1a、・・・、Vφiaを設定可能にしておくことによって、差分電圧値ΔVs(1)、・・・ΔVs(i)を規定する第1電位Vφ1a、・・・、Vφia、及び第2電位Vφ1b、・・・、Vφibの設定値の自由度を高めることが可能である。同様の理由により、差分電圧値ΔVs(1)、・・・ΔVs(i)の夫々が、複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々について互いに異なっていてもよい。
【0115】
加えて、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)の夫々の容量値は、互いに異なる値であってもよい。このように、第1電位及び第2電位、差分電圧値、並びに複数の補助容量素子の夫々の容量値について設定値の自由度を高めることが可能であるため、補助補正信号φ1、・・・、φiの設定値に制限がある場合には、補助容量素子Cf(1)、・・・、Cf(i)の容量値を適切な値に設定することによってノードNの電位の変化量を補償可能である。
【0116】
同様に、補助補正信号φ1、・・・、φiを出力する補助補正信号供給回路600の設計、或いは製造プロセスに制限が課されることによって、適切な補助補正信号φ1、・・・、φiを複数の補助容量素子Cf(1)、・・・Cf(i)に供給できない場合であっても、複数の補助容量素子Cf(1)、・・・Cf(i)の夫々の容量値を適切な値に設定しておくことによって、ノードNに生じる電位の変化を補償できると共に、例えば、ノードNと他の配線等の導電部との間に生じる容量結合を低減でき、液晶素子等の表示素子における対向電極に供給される共通電位LCCOMとノードNの電位との電位差に起因して生じる結合容量を低減できる。
【0117】
次に、図14を参照しながら、補助補正信号φ1、・・・、φiの波形の形状を詳細に説明する。
【0118】
図14に示すように、本例に係る液晶パネルでは、複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々の波形のうち時間軸Tに対する複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの電位の変化で特定される傾き部分の夫々が、時間軸Tに対して互いに異なる傾きを有している。
【0119】
より具体的には、例えば、補助補正信号φ1、φi−1、及びφiの夫々における傾き部分P1、Pi−1、及びPiの夫々が時間軸Tに対して相互に異なる傾きを有している。
【0120】
このような補助補正信号φ1、・・・、φiによれば、複数の補助補正信号φ1、・・・、φiの夫々によって各々動作する複数の補助容量素子Cf(1)、・・・Cf(i)によって、ノードNと他の配線等の導電部との間に生じる容量結合を低減できると共に、液晶素子等の表示素子における対向電極に供給される共通電位LCCOMとノードNの電位差に起因して生じる結合容量を効果的に低減できる。
【0121】
尚、本実施形態に係る液晶パネルでは、補正信号供給回路600は、サンプリングスイッチ202及びTFT30の少なくとも一方と並行して形成され、且つ当該一方と同一の素子設計を有する供給回路用トランジスタ素子を含んで構成されていてもよい。
【0122】
このような補正信号供給回路600によれば、一つの補正信号、或いは複数の補助補正信号の夫々に応じて補償可能な電圧をサンプリングスイッチ202及びTFT30の少なくとも一方のしきい値電圧で一致させることが可能であり、サンプリングスイッチ202及びTFT30の少なくとも一方と並行して形成され、且つ当該一方と同一の素子設計を有する供給回路用トランジスタ素子と異なるトランジスタ素子を介して、補正信号或いは複数の補助補正信号が出力されるに比べて、これら信号相互の電位のばらつきを低減可能である。
【0123】
<4:電子機器>
次に、上述した液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。
【0124】
<4−1:モバイル型コンピュータ>
先ず、上述の液晶装置をモバイル型のパーソナルコンピュータに適用した例について説明する。図15は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。図15において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、液晶表示ユニット1206とから構成されている。この液晶表示ユニット1206は、先に述べた液晶装置1005の背面にバックライトを付加することにより構成されている。
【0125】
<4−2:携帯電話>
さらに、液晶装置を、携帯電話に適用した例について説明する。図16は、この携帯電話の構成を示す斜視図である。図16において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302とともに、反射型の液晶装置1005を備えるものである。この反射型の液晶装置1005にあっては、必要に応じてその前面にフロントライトが設けられる。
【0126】
尚、図15及び図16を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0127】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び該電気光学装置を備えてなる電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本実施形態に係る液晶パネルの平面図である。
【図2】図1のII−II´断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶パネルの全体構成を示したブロック図である。
【図4】本実施形態に係る液晶パネルの電気的構成を示したブロック図である。
【図5】本実施形態に係る液晶パネルにおける画素回路70の回路構成をサンプリングスイッチと共に示した回路図である。
【図6】本実施形態に係る液晶パネルに供給される各種信号のタイミングチャート(その1)である。
【図7】本実施形態に係る液晶パネルに供給される各種信号のタイミングチャート(その2)である。
【図8】本実施形態に係る液晶パネルが有する画素回路の比較例に係る画素回路の回路図である。
【図9】本実施形態に係る液晶パネルが有する画素回路の比較例に係る画素回路に供給される各種信号のタイミングチャートである。
【図10】本実施形態に係る液晶パネルが有する画素回路の比較例に係る画素回路に供給される各種信号のタイミングチャートの他の例である。
【図11】本実施形態に係る液晶パネルに設けられた画素回路の変形例の構成を示した回路図である。
【図12】本実施形態に係る液晶パネルに設けられた画素回路の変形例に係る画素回路に供給される各種信号のタイミングチャートである。
【図13】本実施形態に係る液晶パネルに設けられた画素回路の変形例に係る画素回路に供給される補正信号の波形を詳細に示したタイミングチャートである。
【図14】図13に示した補正信号の波形の一部を詳細に示したタイミングチャートである。
【図15】本発明に係る電子機器の一例であるパーソナルコンピュータの斜視図である。
【図16】本発明に係る電子機器の他の例である携帯電話の斜視図である。
【符号の説明】
【0129】
9a・・・画素電極、30・・・TFT、101・・・データ線駆動回路、104・・・走査線駆動回路、112・・・走査線、114・・・データ線、119・・・保持容量、200・・・サンプリング回路、N・・・ノード、Cf・・・容量素子、Cf(i)・・・補助容量素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の表示領域で互いに交差する複数のデータ線及び複数の走査線と、
前記複数のデータ線及び前記複数の走査線の交差に対応して設けられた複数の表示素子の駆動を制御する複数の画素回路とを備え、
前記画素回路は、
前記表示素子を駆動する駆動電極と、
(i)前記データ線に電気的に接続され、且つ前記データ線を介して画像信号が入力される入力側端子、(ii)前記駆動電極に電気的に接続され、且つ前記駆動電極に前記画像信号を出力する出力側端子、及び(iii)前記走査線に電気的に接続されたゲート電極を有しており、前記駆動電極を介して前記駆動を制御する駆動用トランジスタ素子と、
(a)固定電位が供給される固定電位線に電気的に接続された第1容量電極、及び(b)前記駆動電極及び前記出力側端子間を電気的に接続する接続経路の途中に設けられたノードに電気的に接続され、且つ前記第1容量電極と共に一対の容量電極を構成する第2容量電極を有しており、前記画像信号の電位に応じて設定された前記駆動電極の電極電位を保持する保持容量と、
補正信号供給回路から補正信号が供給される補正信号線及び前記ノード間において、前記補正信号線及び前記ノードの夫々に電気的に接続されており、前記駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられた際に前記ノードの電位に生じる第1変化量を前記補正信号に応じて補償する容量手段とを有すること
を特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記補正信号供給回路は、前記駆動用トランジスタ素子が選択状態から非選択状態に切り換えられる第1タイミングに先んじて、前記補正信号の電位を第1電位から第2電位に変更し、前記第1タイミングの後に前記補正信号の電位を前記第2電位から前記第1電位に変更すること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記画像信号をサンプリングして前記データ線に供給するサンプリングスイッチを有するサンプリング回路と、
前記サンプリングスイッチを介して前記データ線に前記画像信号が供給されるように前記サンプリングスイッチを非選択状態から選択状態に切り換えるデータ線駆動回路とを備え、
前記補正信号供給回路は、前記サンプリングスイッチが選択状態から非選択状態に切り換えられる第2タイミングに先んじて、前記補正信号の電位を前記第1電位から前記第2電位に変更し、
前記容量手段は、前記サンプリングスイッチが選択状態から非選択状態に切り換えられた際に前記ノードの電位に生じる第2変化量を補償すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1電位及び前記第2電位間の電位差である差分電圧値と、前記容量手段の容量値との組み合わせは、前記第1変化量及び前記第2変化量のうち少なくとも前記第1変化量を補償可能なように設定されていること
を特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記補正信号線は、複数の補助補正信号線から構成されており、
前記補正信号は、前記補正信号供給回路から前記複数の補助補正信号線に供給される複数の補助補正信号であり、
前記容量手段は、前記ノードに各々電気的に接続された複数の補助容量手段であり、
前記複数の補助容量手段の夫々は、前記複数の補助補正信号線の夫々に応じて前記第1変化量及び前記第2変化量のうち少なくとも前記第1変化量の補償を分担すること
を特徴とする請求項3又は4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記補正信号供給回路は、前記複数の補助補正信号を互いに異なるタイミングで前記複数の補助補正信号線の夫々に供給し、
前記複数の補助容量手段は、前記第1変化量及び前記第2変化量のうち少なくとも前記第1変化量を時間軸に沿って段階的に補償すること
を特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記複数の補助補正信号の夫々の波形のうち前記時間軸に対する前記複数の補助補正信号の電位の変化で特定される傾き部分の夫々は、前記時間軸に対して互いに異なる傾きを有すること
を特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記複数の補助容量手段の夫々の容量値は、互いに異なる値であること
を特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1電位は、前記複数の補助補正信号の夫々において互いに異なり、
前記第2電位は、前記複数の補助補正信号の夫々において互いに異なること
を特徴とする請求項5乃至8の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記複数の補助補正信号の夫々における前記第1電位及び前記第2電位の差である差分電圧値の夫々は、前記複数の補助補正信号の夫々において互いに異なること
を特徴とする請求項5乃至9の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項11】
前記サンプリングスイッチは、サンプリング用トランジスタ素子であり、
前記補正信号供給回路は、前記サンプリング用トランジスタ素子及び前記駆動用トランジスタ素子の少なくとも一方と並行して形成され、且つ前記一方と同一の素子設計を有する供給回路用トランジスタ素子を含んで構成されていること
を特徴とする請求項3乃至10の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の電気光学装置を具備してなること
を特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−75301(P2009−75301A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243442(P2007−243442)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】