説明

電気化学セル及び表面実装型電気化学セル

【課題】気密性が高く内蔵する活物質量を減らすことなく、キャップの径を短くでき、その分だけ小形化することができる電気化学セル及び表面実装型電気化学セルを提供する。
【解決手段】ベース11は、金属製リング14の外周面に軟質金属層が形成され、金属製リング14内に固着されたペレット12に1本のリード13が貫通固定されている。リード13のインナーリード部13bには、シート状の活物質20が接続され、活物質20の正極活物質シートと電気的に接続されている。電解液が注入されたキャップ30の開口縁部に、その活物質20の周囲を覆うように、金属製リング14の軟質金属層を形成した外周面を圧入する。また、キャップ30の外周面には突起電極35が設けられ、活物質20の負極活物質シートとキャップ30,金属製リング14、接続リングを介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル及び表面実装型電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セル、例えば、電気2重層キャパシタは、メモリのバックアップ用として携帯機器に用いられている。小型のパッケージは、コイン型が慣用されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−190427号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、携帯機器の高機能、小型化に伴い、この種の電気化学セルもさらなる小型化が要求されている。
しかしながら、コインのパッケージの径は最も小型のものでも4mm程度の寸法を有している。さらに小径のもの、例えば、1mm程度に小さなサイズのパッケージは提案されていない。これはコイン型のキャパシタの構造が、正極と負極を電気的に絶縁するために絶縁性のガスケットを用いることに起因している。
【0004】
そしてまた、従来のコンイ型のパッケージの外部電極端子は、正極缶及び負極缶に外部端子をレーザ等で後付しているが(同じく特許文献1参照)、外部端子の折り曲げ角度のバラツキに起因して共平面性(コプナリティ)にも劣っているので、基板に実装する際に、セルが斜めに浮いた状態で取りつけられる不具合が発生していた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、気密性が非常に高く内蔵する活物質量を減らすことなく、キャップの径を短くでき、その分だけ小型化することができる電気化学セル及び表面実装型電気化学セルを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気化学セルは、外周面に軟質金属層を形成した円環状の金属製リング内に固着された絶縁性充填材に金属製リードを貫通固定したベースと、前記絶縁性充填材に貫通固定された前記リードのインナーリード部に接続され、前記インナーリード部と前記金属製リングがそれぞれ電気的に接続されたシート状の電極活物質と、前記リードのインナーリード部に接続された電極の周囲を覆うように、前記リングの外周面を圧入して、前記ベースに密着固定されるとともに、外周面に電極を設けた有蓋円筒形状のキャップと、前記キャップの中に充填された電解液とを有する。
【0007】
本発明の電気化学セルによれば、ベース(金属製リング)をキャプに圧入することで、すなわち、ベースとキャップの連結が金属同士による圧入であることから、連結作業が非常に簡単となる。
【0008】
しかも、キャップは、圧入により金属製リングの外周面に形成した軟質金属層をしまりばめする。従って、従来用いられた樹脂製のガスケットに比較して気密性が非常に高い。また、高温多湿の厳しい環境下においても、品質の劣化を抑制可能である。さらに、従来用いられた樹脂製のガスケットを用いないことから、内蔵する活物質量を減らすことなく、キャップの径を短くでき、その分だけ電気化学セルを小形化することができる。
【0009】
このような構造のベースは、その外径を約0.5mmから2mm程度に縮小させても、量産性良く製造することが可能である。また、対となるキャップも、例えば後述のように、薄板の深絞り加工で量産性良く製造することができる。
【0010】
そして、電気化学セルは、リードのアウターリード部とキャップの電極を、例えばプリント基板に形成した対応する配線にそれぞれ接続することによってプリント基板に実装される。
【0011】
この電気化学セルにおいて、前記金属製リングの外周面に形成した前記軟質金属層は、下地に銅層又はニッケル層を形成した後に、錫又は銀の単金属か、または、錫・銀(SnAg),金・錫(AuSn),錫・銅(SnCu)のいずれかの合金からなる金属膜を形成してもよい。
【0012】
これによれば、キャップは、金属製リングの外周面に形成した軟質金属層をしまりばめし、気密性が非常に高い電気化学セルにすることができる。
この電気化学セルにおいて、前記金属製リング内に固着された絶縁性充填材は、硼珪酸ガラス又はソーダガラスであってもよい。
【0013】
これによれば、リードはガラスによって気密を満たしながら支持固定される。
この電気化学セルにおいて、前記金属製リング及び前記リードは、FeNiCo合金、鉄ニッケル合金又はステンレスであってもよい。
【0014】
これによれば、FeNiCo合金、鉄ニッケル合金の場合は、ベースを構成するリード、金属製リング、ペレットの熱膨張率を近似することができる。又、ステンレスを選択した場合には、ガラスの圧縮応力が加わるように寸法設計することで信頼性に優れた気密構造が可能となる。
【0015】
この電気化学セルにおいて、前記キャップは、洋白であり、その表面をニッケル(Ni)メッキ処理してもよい。
これによれば、洋白は展延性に優れていることから、深絞り加工にて有蓋円筒状のキャップを成形することができる。また、耐食性に優れた洋白のキャップの表面にニッケルメッキをしたので、キャップの腐食を防止できる。
【0016】
この電気化学セルにおいて、前記リードの前記電解液と接するインナーリード部は、その表面がアルミニウム膜で被覆してもよい。
これによれば、インナーリード部の表面にアルミニウムを被膜することにより、腐食を防止することができる。
【0017】
この電気化学セルにおいて、前記リングの前記電解液と接触する部分は、アルミニウム膜で被膜してもよい。
これによれば、金属製リングの電解液と接する面にアルミニウムを被膜することにより、腐食を防止できる。
【0018】
本発明の表面実装型電気化学セルは、上記した電気化学セルと、前記キャップに密着固定した前記ベースから突出した前記リードのアウターリード部に接続した第1外部電極端子と、前記ベースに密着固定した前記キャップに設けた電極に接続した第2外部電極端子とを有し、前記密着固定したベースとキャップを覆うとともに前記第1外部電極端子及び前記第2電極端子の一部が露出するように樹脂でモールドした。
【0019】
本発明の表面実装型電気化学セルによれば、電気化学セルを、前記外部電極端子の一部が外部に露出するように樹脂モールドしたことにより、小型な電気化学セルのプリント基板への精度の高い実装が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図面に従って説明する。
図1は、樹脂モールドした表面実装型電気化学セル1の全体斜視図、図2は、樹脂モールドした表面実装型電気化学セル1の断面図を示す。
【0021】
表面実装型電気化学セル1は、インサート成形にて電気化学セル1をエポキシ樹脂等の樹脂Jをモールドして成形されている。表面実装型電気化学セル1は、電気化学セルとしての電気二重層キャパシタ10のアウターリード部13aに電気的に第1外部電極端子としての正極外部電極端子2が接続されているとともに、電気二重層キャパシタ10の突起電極35に電気的に第2外部電極端子としての負極外部電極端子3が接続されている。
【0022】
正極外部電極端子2と負極外部電極端子3は、電気二重層キャパシタ10とともに樹脂モールドされ、樹脂モールドされた表面実装型電気化学セル1の樹脂Jの底面1aからその一部が露出するようにモールドされている。
【0023】
つまり、正極外部電極端子2は、断面コ字状に形成され、その上片2aがアウターリード部13aに溶接にて電気的に接続され、下片2bが樹脂Jの底面1aから露出する。さらに、負極外部電極端子3は、断面L字状に形成され、上辺に形成した嵌合凹部3aに嵌合された突起電極35に溶接にて電気的に接続され、下片3bが樹脂Jの底面1aから露出する。このとき、正極外部電極端子2の下片2bの下面と負極外部電極端子3の下片3bの下面は、面一となる。
【0024】
そして、表面実装型電気化学セル1は、樹脂Jの底面1aから露出した正極外部電極端子2の下片2b及び負極外部電極端子3の下片3bが、プリント基板Pに形成された配線に接続されることによって、表面実装型電気化学セル1は、高い位置精度でプリント基板Pに実装される。
【0025】
次に、樹脂モールドされた電気二重層キャパシタ10について説明する。
図3は、電気二重層キャパシタ10の外観を示す全体斜視図、図4は、同じく電気二重層キャパシタ10の分解斜視図を示す。
【0026】
図3及び図4において、電気二重層キャパシタ10は、ベース11を備えている。ベース11は、絶縁性充填材としてのペレット12、導電性材料からなるリード13及び金属製リング14とから構成されている。
【0027】
ペレット12は、図5に示すように、円柱状をなし、その本体が金属製リング14に密着固定されて、ペレット12の外周面が金属製リング14の内周面と気密の状態に密着固定されている。金属製リング14の外周面14aには、図6に示すように、軟金属の軟質金属層15が形成されている。軟質金属層15は、本実施形態では、10μmから50μm前後の厚さで形成されている。
【0028】
ペレット12には、その左右両側面の中央位置を貫通する貫通穴12aが形成されている。その貫通穴12aには、リード13を貫通させ、リード13を貫通穴12aに対して気密の状態に密着固定されている。
【0029】
なお、説明の便宜上、図4において、ペレット12の左側面を外側面12bと、ペレット12の右側面を内側面12cという。そして、そのペレット12の貫通穴12aに密着固定されたリード13について、ペレット12の外側面12bから突出した部分をアウターリード部13a、ペレット12の内側面12cから突出した部分をインナーリード部13bという。
【0030】
インナーリード部13bには、活物質20が巻回されている。活物質20は、図7に示すように、第1セパレータ21、第2セパレータ22、正極活物質シート23、負極活物質シート24からなる。第1セパレータ21、第2セパレータ22、正極活物質シート23、負極活物質シート24は、シート状に形成されている。そして、第1セパレータ21、負極活物質シート24、第2セパレータ22、正極活物質シート23の順に積層される。
【0031】
そして、第1セパレータ21の縦幅及び横幅は、負極活物質シート24の縦幅及び横幅より長く形成されている。また、第2セパレータ22の縦幅は第1セパレータ21の縦幅と負極活物質シート24の縦幅の間の長さに形成されているとともに、第2セパレータ22の横幅は負極活物質シート24の横幅と正極活物質シート23の横幅の間の長さに形成されている。さらに、正極活物質シート23の縦幅は負極活物質シート24の縦幅と同じ長さに形成されているとともに、正極活物質シート23の横幅は第2セパレータ22の横幅より短く形成されている。
【0032】
このとき、図7に示すように、第1セパレータ21と第2セパレータ22の間に配設される負極活物質シート24が、第1セパレータ21に完全に覆われるのに対して、第2セパレータ22の両端側から一部露出するように配置されている。負極活物質シート24の右側の第2セパレータ22から露出した位置には、短冊状の接続電極25の一端が電気的に接続されている。
【0033】
また、負極活物質シート24側と反対側の第2セパレータ22に面に配設される正極活物質シート23が、第2セパレータ22に完全に覆われるように配置されている。
そして、第1セパレータ21、正極活物質シート23、第2セパレータ22、負極活物質シート24の順に積層配置された活物質20を、ベース11に設けたインナーリード部13bに巻回する。
【0034】
詳述すると、図7に示すように、インナーリード部13bを、正極活物質シート23の左端部分に当接させる。この状態から、第1セパレータ21、第2セパレータ22、正極活物質シート23、負極活物質シート24からなる活物質20を、ベース11の金属製リング14に接触しないように、インナーリード部13bに巻回し巻き付ける。
【0035】
インナーリード部13bに巻回し巻き付けられた活物質20おいて、正極活物質シート23と負極活物質シート24は、第1セパレータ21及び第2セパレータ22によって、完全に被覆されるとともに互いに直接接触することはない。
【0036】
巻き付けた後、一端が負極活物質シート24に電気的に接続した短冊状の接続電極25の他端を金属製リング14の面14bにスポット溶接にて電気的に接続する。従って、インナーリード部13bは、活物質20の正極活物質シート23に電気的に接続され、金属製リング14は、活物質20の負極活物質シート24に電気的に接続される。
【0037】
活物質20を巻回したベース11は、電解液31(図9参照)が入った有蓋円筒状のキャップ30が取着されている。キャップ30は、弾性に富む金属材料から構成された有蓋円筒型の形状をしている。有蓋円筒型のキャップ30は、その開口端部30aにベース11のリング14の外周面14aを圧入することによって、キャップ30に入った電解液31を漏らすことなくベース11に密着固定されている。
【0038】
詳述すると、図6に示すように、ベース11に活物質20を巻回した状態で、電解液31の入ったキャップ30に圧入する際、キャップ30は、その開口端部30aがリング14の外周面14aに形成した軟質金属層15をしまりばめしながら圧入する。従って、ベース11とキャップ30で形成される空間は気密が保たれるため、電解液31が漏れることはない。
【0039】
又、キャップ30の先端部中央位置は、円柱状の突起電極35をレーザ等にて溶接し電気的に接続する。
次に、表面実装型電気化学セル1の製造方法について説明する。
【0040】
(ベース11)
例えば、ホウ珪酸ガラスの粉末を型に入れて、貫通穴12aを有するペレット12の前駆体を形成する。また、貫通穴12aに貫挿するリード13を用意する。さらに、ペレット12の外周面に密着固定する金属製リング14を用意する。リード13及び金属製リング14は、ペレット12と熱膨張率が広い範囲で近似するものが好適である。例えば、コバール(FeNiCo合金)又は鉄ニッケル合金等が候補となる。
【0041】
また、ガラスはホウ珪酸ガラスに限られず、ソーダガラスであってもよい。ここで、ソーダガラスはソーダライムガラスやソーダバリウムガラスを選択することができる。
さらに、金属製リング14及びリード13の材料にステンレスを用いることができる。この場合は、部材の寸法設計により、ガラスに圧縮応力が加わるような構造にするのが好ましい。これにより、ガラスの長期信頼性が確保できる。
【0042】
前記ペレット12の前駆体、リード13、金属製リング14を所定の形状に冶具を用いて組み立てた後、焼成して一体物(ベース11)を形成する。これにより、リード13とペレット12間、ペレット12と金属製リング14間が気密に封止固定される。
【0043】
次に、治具を取り外した後、金属製リング14の外周面14aに軟質金属層15をメッキにて形成する。メッキは、下地に銅層やニッケル層等の被膜を5μm程度の厚みで形成した後、錫、錫銅合金、錫ビスマス合金、錫銀合金、金錫合金などのいずれかを約5μmから50μm程度の厚みで形成する。5μm以下では、膜厚が不足し、気密が保てない。また50μm以上では、圧入が難しくなる。好ましくは10μmから20μmが良い。そして、洗浄後、エージングを施すことによって、ベース11が完成する。
【0044】
尚、インナーリード部13bの表面は、アルミニウムの被膜を数十μm施すのが好ましい。腐食を防止する目的である。また、金属製リング14の電解液31と接する面14bも同様に、アルミニウムの被膜を数μm程度施すのが好ましい。これは、アウターリード部13aが金属製リング14に仮に誤接触した場合に、金属製リング14が一方の極を形成するからである。この場合は、電解液31に接する金属製リング14の面14aにアルミニウムの膜を被覆しておくことで腐食を防止できる。
【0045】
(キャップ30)
有蓋円筒型のキャップ30は、深絞り加工にて成形される。キャップ30の材質には、展延性に優れ円筒型に深絞りし易く、かつ耐食性に優れている洋白を選定した。キャップ30は、洋白の板材(厚み約0.1mm)をプレスで塚絞り加工を施した。この後、ニッケルメッキを内外表面に約3μから5μmの厚みで施すことによってキャップ30が完成する。
【0046】
また、キャップ30の先端中央位置に突起電極35をレーザ等にて溶接する。
(キャパシタの組み立て)
まず、ベース11のインナーリード部13bに、活物質20を巻回する。巻き付けた後、終端の負極活物質シート24からのびた短冊状の接続電極25の他端をリング14の面14bにスポット溶接にて電気的に接続する。
【0047】
続いて、巻回した活物質20の終端がショートしないようにセパレータシートで覆う。そして、巻回した状態の活物質20を締め付けるように、外側からポリイミド樹脂等の絶縁性テープで巻く。その後、巻回した状態の活物質20の外側全体をセパレータシートで覆うか、あるいは絶縁性のフィルムで覆う。
【0048】
次に、巻回した状態の活物質20を、図8に示すように、タンク32に貯留した電解液31に浸漬させてガスの発生などを促進させる。
続いて、キャップ30に、電解液31を所定量注入する。そして、図9に示すように、活物質20を巻回したベース11と電解液31を注入したキャップ30を位置合せした後、ベース11をキャップ30の開口端部30aに圧入し、キャップ30内の電解液31を封止する。このときの圧入は、冷間圧入である。なお、本作業は、電解液31中で実施してもよい。
【0049】
そして、洗浄した後に、キャパシタの電気特性を検査した後、電気二重層キャパシタ10は完成する。
(電気二重層キャパシタ10の樹脂によるモールド)
まず、プレス加工及び折り曲げ加工して、図10に示すような、正極外部電極端子2となる正極端子部42と、負極外部電極端子3となる負極端子部43が複数対を成したリードフレーム41を用意する。リードフレーム41の板厚は、100μmから150μm程度が好ましく、また材質は電気二重層キャパシタ10のリード13と熱膨張率が近似するものが好ましい。リード材料がコバールの場合は、リードフレーム41の材料は42合金が適当である。
【0050】
正極端子部42は、正極外部電極端子2の上片2aと下片2bを形成するためにコ字状に折り曲げ形成されている。負極端子部43は、負極外部電極端子3の嵌合凹部3aと下片3bを形成するために切り欠き形成されているとともにL字状に折り曲げ形成されている。
【0051】
次に、対をなす正極端子部42と負極端子部43に対して、電気二重層キャパシタ10を移載する。詳述すると、正極端子部42の上片2aに電気二重層キャパシタ10のアウターリード部13aを、負極端子部43の嵌合凹部3aに電気二重層キャパシタ10の突起電極35を載置して、電気二重層キャパシタ10を正極端子部42と負極端子部43の間に配置する。
【0052】
正極端子部42と負極端子部43からなる各対に対して、電気二重層キャパシタ10が配置されると、各電気二重層キャパシタ10のアウターリード部13a及び突起電極35を、対応する各対の端子部42,43とレーザにて溶接し連結固定させる。これにより、各電気二重層キャパシタ10は、アウターリード部13aが正極端子部42に、突起電極35が負極端子部43に電気的に接続される。
【0053】
リードフレーム41への電気二重層キャパシタ10を溶接完了すると、該リードフレーム41を樹脂モールド用の上下の金型に挟み込み、エポキシ樹脂などの樹脂Jでモールドする。ここで、樹脂モールドの条件は、金型温度は約160℃から180℃に設定され、金型内保持時間は、約60秒から120秒である。従って、電解液31が内部に充填されているユニットでも、気密性に優れた封止構造であるので、このような樹脂モールド工程を設けても問題がない。ハロゲンフリー及びアンチモンフリーのエポキシ樹脂でも、約180℃程度の金型温度でモールド可能である。
【0054】
樹脂モールドが終了すると、樹脂Jのバリ取り及び端子部42,43の樹脂から露出する部分をメッキする。メッキはSnメッキやSnBi(錫ビスマス合金)メッキ等の鉛フリーメッキが好ましい。
【0055】
メッキ後、リードフレーム41から金型(パンチとダイ)を用いて個々の素子を切断して表面実装型電気化学セル1を取り出す。
そして、切り離した表面実装型電気化学セル1について、電気的特性を検査した後、表面実装型電気化学セル1が完成する。
【0056】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態の電気二重層キャパシタ10によれば、活物質20を巻回したリード13を有したベース11は、その金属製リング14を、電解液31を充填したキャップ30に圧入することで、電気二重層キャパシタ10を組み立てた。従って、圧入するだけで組み付けられるので組立作業が非常に簡単となる。
【0057】
しかも、キャップ30は、金属製リング14の外周面14aに形成した軟質金属層15をしまりばめする。従って、従来用いられた樹脂製のガスケットに比較して気密性が非常に高くすることができる。また、高温多湿の厳しい環境下においても、品質の劣化を抑制可能である。さらに、従来用いられた樹脂製のガスケットを用いないことから、内蔵する活物質量を減らすことなく、キャップ30の径を短くでき、その分だけ電気二重層キャパシタ10を小形化することができる。
【0058】
(2)本実施形態の電気二重層キャパシタ10によれば、金属製リング14及びリード13は、ペレットの熱膨張率と近似するコバール(FeNiCo合金)で形成した。従って、ペレット12の前駆体、リード13、金属製リング14を所定の形状に冶具を用いて組み立てた後、焼成してベース11を形成する際、大きな熱膨張差によるベース11の破損がなくなる。
【0059】
(3)本実施形態の電気二重層キャパシタ10によれば、リード13に巻回した活物質20を、外側からポリイミド樹脂等の絶縁性テープで締め付けるように巻き、その後、巻回した状態の活物質20の外側全体をセパレータシートで覆うか、あるいは絶縁性のフィルムで覆うようにした。従って、リード13に巻回された活物質20は、キャップ30とショートすることはない。
【0060】
(4)本実施形態の電気二重層キャパシタ10によれば、キャップ30を展延性に優れてた洋白で成形したので、有蓋円筒状のキャップを深絞り加工にて簡単に成形することができる。また、洋白のキャップ30の表面に耐食性に優れたニッケルメッキをしたので、キャップ30の腐食を防止できる。
【0061】
(5)本実施形態の電気二重層キャパシタ10によれば、インナーリード部13bの表面にアルミニウムを被膜した。従って、電解液31にてインナーリード部13bが腐食されるのを防止することができる。
【0062】
(6)本実施形態の電気二重層キャパシタ10によれば、金属製リング14の電解液31と接する面14bにアルミニウムを被膜した。従って、電解液31にて金属製リング14の該電解液31と接する面14bが腐食されるのを防止することができる。
(7)本実施形態の表面実装型電気化学セル1によれば、アウターリード部13aに正極外部電極端子2を溶接にて電気的に接続し、突起電極35に負極外部電極端子3を溶接にて電気的に接続した。正極外部電極端子2と負極外部電極端子3は、電気二重層キャパシタ10とともに樹脂モールドされるとき、樹脂モールドされた表面実装型電気化学セル1の樹脂Jの底面1aからその一部(互いに、面一になっている下片2b、3b)が露出するようにモールドされている。
【0063】
従って、プリント基板Pの実装する場合、面一になっている下片2b、3bが、プリント基板Pに形成された配線に接続されるため、表面実装型電気化学セル1を安定した状態に配置でき、高い位置精度で実装することができる。
【0064】
(8)本実施形態の表面実装型電気化学セル1によれば、正極外部電極端子2及び負極外部電極端子3は、一枚のリードフレーム41をプレス加工及び折り曲げ加工して、リードフレーム41上に一括して加工されるので形状や寸法のバラツキが少ない。しかも、外部電極端子2、3は樹脂Jの中に埋め込まれる構造なので、外部から印加される力に対しても変形することがない。これによって、プリント基板Pに実装されるまで共平面性が保たれている。
【0065】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
(1)上記実施形態では、電解液31をキャップ30内に注入させた後に、ベース11とキャップ30を圧入したが、これに限られない。キャップ30の底面や側面に細孔を設け、圧入後に電解液31を注入し、この後、細孔部を気密に塞ぐ方法でもよい。
【0066】
(2)キャップ30の先端部中央に設けられた突起電極35は、キャップ30を深絞り加工して製造する際に、先端が突起状になるように加工して形成してもよい。この場合は、先端の突起部を形成する加工工程が実施された後、連続して口径の大きいキャップ本体部分を深絞り加工する。
【0067】
電気化学セルの発電素子として非水電解質電池を構成する場合には、正極に含まれる活物質として、TiS2 、MoS2 、NbSe3 等の金属カルゴゲン化物や、MnO2 、MoO3 、V2O5、LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4 等の金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセン等の導電性高分子、およびグラファイト層間化合物等のリチウムイオン及びアニオンを吸蔵放出可能な各種の物質を用いることができる。
【0068】
負極に含まれる活物質としては特に限定されないが、SiO、WO2 、WO3 、SnO、LiAl、Liまたは炭素材料等各種物質を用いることができる。
また、電気化学セルが電気二重層キャパシタを構成する場合には、活物質に活性炭或いは活性炭繊維を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】表面実装型電気化学セルの全体斜視図。
【図2】表面実装型電気化学セルの断面図。
【図3】電気化学セルとしての電気二重層キャパシタの外観を示す全体斜視図。
【図4】同じく電気二重層キャパシタの分解斜視図。
【図5】ベースの分解斜視図。
【図6】ベースとキャップの圧入状態を示す要部断面図。
【図7】活物質の組立を説明するための説明図。
【図8】活物質への電解液の浸漬を説明する図。
【図9】活物質を巻回したベースのキャップへの圧入を説明する図。
【図10】リードフレームの要部斜視図。
【符号の説明】
【0070】
1…表面実装型電気化学セル、2…正極外部電極端子、3…負極外部電極端子、
10…電気二重層キャパシタ、11…ベース、12…ペレット、12a…貫通穴、13…リード、13a…アウターリード部、13b…インナーリード部、14…リング、15…軟質金属層、20…活物質、21…第1セパレータ、22…第2セパレータ、23…正極活物質シート、24…負極活物質シート、25…接続電極、30…キャップ、30a…開口端部、31…電解液、32…タンク、35…突起電極、J…樹脂、P…プリント基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に軟質金属層を形成した円環状の金属製リング内に固着された絶縁性充填材に金属製リードを貫通固定したベースと、
前記絶縁性充填材に貫通固定された前記リードのインナーリード部に接続され、前記インナーリード部と前記金属製リングがそれぞれ電気的に接続されたシート状の電極活物質と、
前記リードのインナーリード部に接続された電極の周囲を覆うように、前記リングの外周面を圧入して、前記ベースに密着固定されるとともに、外周面に電極を設けた有蓋円筒形状のキャップと、
前記キャップの中に充填された電解液と
を有すること特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学セルにおいて、
前記金属製リングの外周面に形成した前記軟質金属層は、下地に銅層又はニッケル層を形成した後に、錫又は銀の単金属か、または、錫・銀(SnAg),金・錫(AuSn),錫・銅(SnCu)のいずれかの合金からなる金属膜を形成したことを特徴とする電気化学セル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学セルにおいて、
前記金属製リング内に固着された絶縁性充填材は、硼珪酸ガラス又はソーダガラスであることを特徴とする電気化学セル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の電気化学セルにおいて、
前記金属製リング及び前記リードは、FeNiCo合金、鉄ニッケル合金又はステンレスであることを特徴とする電気化学セル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の電気化学セルにおいて、
前記キャップは、洋白であり、その表面をニッケル(Ni)メッキ処理したことを特徴とする電気化学セル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載の電気化学セルにおいて、
前記リードの前記電解液と接するインナーリード部は、その表面がアルミニウム膜で被覆されていることを特徴とする電気化学セル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の電気化学セルにおいて、
前記リングの前記電解液と接触する部分は、アルミニウム膜で被膜されていることを特徴とする電気化学セル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の電気化学セルと、
前記キャップに密着固定した前記ベースから突出した前記リードのアウターリード部に接続した第1外部電極端子と、
前記ベースに密着固定した前記キャップに設けた電極に接続した第2外部電極端子と
を有し、
前記密着固定したベースとキャップを覆うとともに前記第1外部電極端子及び前記第2外部電極端子の一部が露出するように樹脂でモールドしたことを特徴とする表面実装型電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−259970(P2009−259970A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105956(P2008−105956)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】