説明

電気自動車用バッテリの冷却構造

【課題】車両の走行風によって発生する動圧を利用して、バッテリを収納した空間を換気することによりバッテリの冷却性能を改善する。
【解決手段】車体床部にバッテリ20を収納するバッテリ収納室10を設け、このバッテリ収納室の車両前方側に吸気口11、後方側に排気口12を設け、また車両走行に伴う空気流を横切る部位に凸部(第2の開閉ダンパ15)を設け、該凸部の下流側に前記排気口を開口した。排気口には車両走行に伴って負圧が発生し、その負圧によって換気が促進されるため、バッテリ収納室の換気性能を向上し、バッテリの冷却性能を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体床部に設けられたバッテリ収納室を換気して、そこに収納されたバッテリを冷却する電気自動車用バッテリの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の走行エネルギーを供給するバッテリは車体床部に載置されている。かかるバッテリは充放電に伴って発熱するため冷却が必要である。そのため、バッテリは一つの空間内に収納され、この空間内を換気するようにしている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−188144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来は換気性能が充分ではなかった。そのため、バッテリの冷却性能が充分ではなかった。
本発明は、このような問題に鑑み、車両の走行風によって発生する動圧を利用して、バッテリを収納した空間を換気することによりバッテリの冷却性能を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、車体床部にバッテリを収納するバッテリ収納室を設け、このバッテリ収納室の車両前方側に吸気口、後方側に排気口を設け、また車両走行に伴う空気流を横切る部位に凸部を設け、該凸部の下流側に前記排気口を開口したことを特徴とする電気自動車用バッテリの冷却構造である。
第1発明によれば、車両走行に伴う空気流を横切る部位に凸部を設け、その凸部の下流側にバッテリ収納室の排気口を開口したので、排気口には車両走行に伴って負圧が発生し、その負圧によって換気が促進されるため、バッテリ収納室の換気性能を向上し、バッテリの冷却性能を改善することができる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記凸部は、前記空気流を横切る突出量を可変とされたことを特徴とする電気自動車用バッテリの冷却構造である。
第2発明によれば、空気流を横切る凸部の突出量を可変としたので、バッテリ収納室における換気の必要度合や車両走行に伴う空気流の速さに応じて突出量を変えてバッテリ収納室の換気量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る電気自動車用バッテリの冷却構造の一実施形態を示す部分断面側面図である。
【図2】上記実施形態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、2において、床部を成す骨格部材35には、バッテリ20が載置され、このバッテリ20は、電気自動車の走行エネルギー源を成すものである。骨格部材35上には、バッテリ20を収納するように容器13が被せられ、バッテリ収納室10が形成されている。バッテリ収納室10は一つの空間とされ、自動車の進行方向前方側には吸気口11、後方側には排気口12が設けられている。
また、吸気口11には、吸気口11全体を開閉するように第1の開閉ダンパ14が設けられ、排気口12には、第2の開閉ダンパ15が設けられている。第1の開閉ダンパ14及び第2の開閉ダンパ15とも、骨格部材35の前方端及び後方端にヒンジ中心が設けられ、いずれも自動車の走行に伴う空気流を横切る位置に突出可能としている。
【0009】
第1の開閉ダンパ14は、ヒンジを中心として回動することにより、吸気口11を閉じる位置と、吸気口11を開き、且つ空気流を横切る位置との間で動作される。
第1の開閉ダンパ14により吸気口11が閉じられたときは、排気口12に設けられた第2の開閉ダンパ15の位置に係らずバッテリ収納室10には空気は流入しないが、第1の開閉ダンパ14が開き、空気流を横切る位置となったときには、空気流が第1の開閉ダンパ14に案内されて吸気口11に流入し、バッテリ収納室10には第1の開閉ダンパ14の開度に応じた量の空気が取り込まれる。
【0010】
第2の開閉ダンパ15は、ヒンジを中心として回動することにより、排気口12を閉じることはないが、第2の開閉ダンパ15が空気流を横切らない位置と、空気流を大きく横切る最大突出量の位置との間で変化するように動作される。
第2の開閉ダンパ15が空気流を横切る位置にあるときには、第2の開閉ダンパ15の下流側には第2の開閉ダンパ15を横切る空気流によって負圧が発生し、排気口12にその負圧が供給される。そのため、排気口12の空気圧が正圧の場合に比べてバッテリ収納室10に流入する空気量は多くなり、より換気性能が向上され、バッテリの冷却性能は改善される。このようにして発生される排気口12の負圧は、第2の開閉ダンパ15の空気流を横切る突出量によって発生し、突出量を大きくすれば負圧も大きくなって換気性能はより高められる。
第2の開閉ダンパ15が空気流を横切らない位置にあれば、上述のような負圧は発生しないため、バッテリ収納室10に流れる空気流は吸気口11の第1の開閉ダンパ14によってのみ決定される。
【0011】
図1、2において、36は車体前方側の床下整流板であり、走行時の空気流が吸気口11にスムースに流れるように機能している。37は、その床下整流板36の前方側に、略車幅方向全体に設けられた可動スパッツで、必要時に吸気口11の前方側に位置して吸気口11に泥、石などが入るのを防ぐように機能している。更に、31は電気自動車の車体であり、32〜34は電気自動車の前後左右の4つの車輪を示している。
【0012】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、凸部は、第2の開閉ダンパ15のように動作せず、骨格部材35の後方端に固定して設けても良い。
【符号の説明】
【0013】
10 バッテリ収納室
11 吸気口
12 排気口
13 容器
14 第1の開閉ダンパ
15 第2の開閉ダンパ
20 バッテリ
35 骨格部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体床部にバッテリを収納するバッテリ収納室を設け、このバッテリ収納室の車両前方側に吸気口、後方側に排気口を設け、また車両走行に伴う空気流を横切る部位に凸部を設け、該凸部の下流側に前記排気口を開口したことを特徴とする電気自動車用バッテリの冷却構造。
【請求項2】
請求項1において、前記凸部は、前記空気流を横切る突出量を可変とされたことを特徴とする電気自動車用バッテリの冷却構造。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−214077(P2012−214077A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79432(P2011−79432)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】