説明

電気駆動装置内のPWM電圧ひずみを低減させるための方法および装置

【課題】電気駆動装置内の低速動作時の電圧ひずみの影響を低減させるための方法および装置を提供すること。
【解決手段】方法は、最小達成可能デューティサイクルと最大達成可能デューティサイクルの間の範囲のデューティサイクルを有する第1の信号を受け取ること、そのデューティサイクルがひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値未満である場合に、最小達成可能デューティサイクルに基づく第2のデューティサイクルを生成すること、そのデューティサイクルがひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値と第2のクリッピング値の間にある場合に、最小パルス幅および最大パルス幅のうち近い方に基づく第2のデューティサイクルを生成すること、そのデューティサイクルがひずみ範囲内にあり、かつ第2のクリッピング値よりも大きい場合に、最大達成可能デューティサイクルに基づく第2のデューティサイクルを生成すること、および第2のデューティサイクルを有する第2の信号を、電圧源インバータに送出することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、電圧源インバータに関し、より詳細には、電動機内の電圧源インバータの出力電圧成分を制御するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータコントローラは、とりわけ車両けん引駆動装置を制御するために使用することができる。そのような場合には、電圧源インバータの基本波出力電圧成分を制御するために、不連続パルス幅変調(DPWM)法が一般に使用される。例えば、DPWM法は、三相電圧源インバータのスイッチング動作を制御するために使用することができる。こうした三相電圧源インバータは、電気駆動装置内の三相交流(AC)電動機の相電流を制御するために使用することができる。
【0003】
理想的には、三相電圧源インバータの各相脚(phase leg)内のスイッチ対がそれぞれ、一方のスイッチが常に「オン」であり、他方のスイッチが常に「オフ」であるような相補的な形で動作する。しかし、実際には、これらのスイッチは理想的ではなく、ブランキング時間、すなわち不動作時間が一般に、電圧源インバータのスイッチング状態の各遷移間に挿入される。不動作時間は、その間に両スイッチがゲート「オフ」される短い間隔である。これが、電圧源インバータを短絡させる恐れがある、電圧源インバータの相脚内の両スイッチが同時に「オン」になる状態を防止する。
【0004】
さらに、ゲート駆動回路が、電圧源インバータ内のスイッチに対して指令(例えば、制御モジュール、プロセッサなどによって指示)される最小「オン」持続時間に対する制限を有することがあり、またはスイッチがその制限を課すことがある。最小パルス幅制限と不動作時間制限が合わさって、コントローラ(例えばDPWM変調器)から指令することができるデューティサイクルの有限の最小(例えば0でない)値および最大(例えば1でない)値がもたらされる。
【0005】
従来のDPWM法は一般に、任意の所与のスイッチング周期中に、インバータの2つの相をスイッチし、残りの相が、1つのスイッチを連続的に「オン」にさせるものである。電気駆動装置の低速動作中など、制御される出力電圧が小さいとき、スイッチングしている2つの相はしばしば、非常に小さな、または非常に大きな出力デューティサイクルを生成することが要求される。結果として、最大および最小の達成可能な出力デューティサイクルがあることが、出力電圧の精度に影響を及ぼす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、出力電圧の精度を向上させる電圧源インバータコントローラを提供することが望ましい。さらに、電圧源インバータの出力電圧の精度を向上させる電圧源インバータの制御方法を提供することが望ましい。さらに、本発明の他の望ましい特徴および特性が、添付の図面ならびに前述の技術分野および背景と併せて、後続の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気駆動装置内の電圧ひずみの影響を低減させる電圧源インバータを制御するための方法および装置が提供される。一例示的実施形態では、電圧源インバータを制御する方法が提供される。電圧源インバータは、最小パルス幅および最大パルス幅(例えば、dminおよびdmax)と、最小パルス幅および最大パルス幅の外側の出力電圧ひずみ範囲とを有する。方法は、デューティサイクルを有する第1の信号を受け取ること、第1の信号のデューティサイクルが、出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値(例えばdclipLower)未満である場合に、第2の信号を生成すること、第1の信号のデューティサイクルが、出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値以上および第2のクリッピング値(例えば、dclipUpper)以下の一方である場合に、第3の信号を生成すること、第1の信号のデューティサイクルが出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第2のクリッピング値よりも大きい場合に、第4の信号を生成すること、ならびに第2、第3、および第4の信号のうち1つを、電圧源インバータに送出することを含む。デューティサイクルは、最小達成可能デューティサイクルから最大達成可能デューティサイクルまでの範囲を有する。第2の信号は、最小達成可能デューティサイクルを有し、第3の信号は、最小パルス幅および最大パルス幅のうち、第1の信号のデューティサイクルに近い方を有し、第4の信号は、最大達成可能デューティサイクルを有する。第2のクリッピング値は、第1のクリッピング値よりも大きい。
【0008】
別の例示的実施形態では、最小パルス幅および最大パルス幅、最小パルス幅未満の第1のひずみ範囲、ならびに最大パルス幅よりも大きな第2のひずみ範囲を有する電圧源インバータを制御する方法が提供される。方法は、デューティサイクルを有する第1の信号を受け取ること、第1の信号のデューティサイクルが第1のひずみ範囲内にある場合に、第1のひずみ範囲内で第1の平均出力電圧を維持するように構成された、第1の修正されたデューティサイクルを生成すること、第1の信号のデューティサイクルが第2のひずみ範囲内にある場合に、第2のひずみ範囲内で第2の平均出力電圧を維持するように構成された、第2の修正されたデューティサイクルを生成すること、ならびに第1および第2の修正されたデューティサイクルの一方を有する第2の信号を、電圧源インバータに供給することを含む。
【0009】
別の例示的実施形態では、交流(AC)電動機を制御するための電圧源インバータが提供される。電圧源インバータはひずみ範囲を有し、入力端および出力端を有するコントローラと、コントローラの出力端に結合された入力端、および出力端を有する変調器と、変調器の出力端に結合された入力端、およびAC電動機に結合するように構成された出力端を有するスイッチネットワークとを備える。コントローラは、第1のデューティサイクルを有する第1の信号を生成するように構成される。変調器は、第1のデューティサイクルがひずみ範囲内にある場合に、電圧源インバータの平均出力電圧を維持するように構成された第2のデューティサイクルを生成するように、また第2のデューティサイクルを有する第2の信号を生成するように構成される。スイッチネットワークは、第2の信号に応答して、AC電動機に対して出力電圧を発生するように構成される。
【0010】
本発明を以下に、同様の数字は同様の要素を示す添付の図面と併せて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の詳細な説明は、本質的に例にすぎず、本発明、または本発明の適用分野および使用法を限定するものではない。さらに、先の技術分野、背景、概要または以下の詳細な説明において提示された、任意の明示的または黙示的な理論によって束縛されるものではない。
【0012】
図1を参照すると、本発明の一例示的実施形態による電圧源インバータシステム10が示してある。電圧源インバータシステム10は、コントローラ32、コントローラ32の出力端に結合された入力端を有する変調器31、変調器31の出力端に結合された入力端を有するインバータ回路30、およびインバータ回路30の出力端に結合された交流(AC)電動機12を備える。コントローラ32および変調器31は、電圧源インバータシステム10の別々の構成要素として示し、説明されるが、コントローラ32および変調器31を組み合わせて、単一のユニットにすることができる(例えば、変調器31は、コントローラ32内の下位回路でよく、逆も同様である)。
【0013】
一般に、コントローラ32は、インバータ回路30のスイッチング動作を制御するためのパルス幅変調(PWM)信号を生成する。コントローラ32は、信号(例えば、別のPWM信号)を受け取って、そこからインバータ回路30を制御するようにその信号を生成することもできる。好ましい一実施形態では、コントローラ32は、デューティサイクルを有する不連続PWM(DPWM)信号を生成する。デューティサイクルは、最小達成可能デューティサイクル(例えば離散的0)から最大達成可能デューティサイクル(例えば離散的1)まで、すなわちレールからレールまで(rail−to−rail)の範囲を有する。この実施形態では、変調器31は、コントローラ32からの信号を、信号のデューティサイクルが出力電圧ひずみ範囲内にある場合に修正する。この修正の結果、特に低速動作時のAC電動機12に対するひずみの影響が低減される。
【0014】
コントローラからのPWM信号は、ハードウェア制限および(例えば、インバータ回路30の短絡を回避するための)不動作時間制限のため、最小パルス幅制限および最大パルス幅制限を有する。最小パルス幅および最大パルス幅の外側が、出力電圧ひずみ範囲である。低速時には、DPWM法を使用すると、インバータ回路30のスイッチングしている相が、ハードウェア制限のため通常は達成することができない非常に小さな、または非常に大きなデューティサイクルを生成しつつあり、したがって、小さなまたは大きなパルスの欠落により、指令された出力電圧(例えば、小さなパルスに関連する低い方の出力電圧ひずみ範囲、および大きなパルスに関連する高い方の出力電圧ひずみ範囲)がひずむ。これらのひずみの影響を低減するために、デューティサイクルが変調器31によって修正される。
【0015】
一実施形態では、これらのひずみの影響が、ひずみ範囲内で平均出力電圧を維持することによって低減される。低い方の出力電圧ひずみ範囲(例えば、最小達成可能デューティサイクルと最小パルス幅の間)内で平均出力電圧を維持するためには、低い方の出力電圧ひずみ範囲の半分の間に最小パルス幅に関連する出力電圧が発生されるように、デューティサイクルを修正することができる。同様に、高い方の出力電圧ひずみ範囲(例えば、最大パルス幅と最大達成可能デューティサイクルの間)内で平均出力電圧を維持するためには、高い方の出力電圧ひずみ範囲の半分の間に最大パルス幅に関連する出力電圧が発生されるように、デューティサイクルを修正することができる。
【0016】
高い方および低い方のクリッピング値を使用して、デューティサイクルをいつ修正するか、またいつデューティサイクルが出力電圧ひずみ範囲内にあるかを示すことができる。例えば、一実施形態では、デューティサイクルは、低い方のクリッピング値未満である場合に、最小達成可能デューティサイクル(離散的0)に修正され、低い方のクリッピング値以上である場合に、最小パルス幅に修正され、最大パルス幅よりも大きい場合に、最大パルス幅に修正され、高い方のクリッピング値よりも大きい場合に、最大達成可能デューティサイクルに修正される。一実施形態では、低い方および高い方のクリッピング値が、それぞれに対応するひずみ範囲(例えば、低い方および高い方の出力電圧ひずみ範囲)の中間点として選択されるが、これらのクリッピング値は、それぞれに対応するひずみ範囲間のどの点でも選択することができる。例えば、低い方のクリッピング値が、最小達成可能デューティサイクルと最小パルス幅の間の中間点として選択され、高い方のクリッピング値が、最大パルス幅と最大達成可能デューティサイクルの間の中間点として選択される。デューティサイクルがひずみ範囲の外側にある場合、デューティサイクルは、ひずみの影響を低減させるために修正されずに、インバータ回路30に供給される信号内に維持される。
【0017】
インバータ回路30は、変調器31から信号を受け取り、その信号を、AC電動機12を動作させるための変調電圧波形に変換する。AC電動機12は、自動車両において、多数の車両システムまたはサブシステムで一般に使用されるどんな従来型のAC電動機でもよい。本明細書に記載する本発明の諸実施形態は、1つまたは複数の従来型のプロセッサと、1つまたは複数のプロセッサが、いくつかの非プロセッサ回路(例えば、スイッチング回路)と共に、本明細書に記載の、インバータ回路30に供給される信号を制御/修正するための機能の一部、大多数、または全部を実施するように制御する、蓄積プログラム命令とを備えることができることが理解されよう。したがって、それらの機能を、電圧源インバータを制御する方法の諸ステップと解釈することができる。別法として、一部または全部の機能を蓄積プログラム命令のないステートマシンによって実施することもでき、あるいは各機能または機能のいくつかの何らかの組合せがカスタム論理回路として実装される、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)において実施することもできる。さらに、この2手法の組合せを使用することもできる。
【0018】
図2は、図1に示すインバータ回路の回路図である。インバータ回路30は、AC電動機12に結合される三相回路である。より具体的には、インバータ回路30は、電圧源14、16と、電圧源14、16に結合された第1の入力端、およびAC電動機12に結合されるように構成された出力端を有するスイッチネットワークとを備える。電圧源14、16は、2つの直列電圧源(例えば、第1の直列電圧源14および第2の直列電圧源16)を備えた分散型直流(DC)リンクとして示されているが、単一の電圧源を使用してもよい。
【0019】
スイッチネットワークは、各相に対応する、逆並列ダイオード(すなわち、各スイッチに逆並列の)付きの3対の直列スイッチを備える。直列スイッチの各対は、電圧源14、16の正の電極に結合された第1の端子を有する第1のスイッチ18、22および26と、電圧源14、16の負の電極に結合された第1の端子、ならびに第1のスイッチ18、22および26の第2の端子にそれぞれ結合された第2の端子を有する、第2のスイッチ20、24および28とを備える。図示されていないが、変調器31(図1)は、(例えば、更なる変調技法のために)インバータ回路30のスイッチング周期および出力電圧を監視することもできる。
【0020】
図3は、図1に示す電圧源インバータシステムの理解に役立つ、相のデューティサイクルとパルス幅との関係を示す波形42である。理想的なデューティサイクル40、および一実施形態に従って修正されたデューティサイクル42が示してある。最小パルス幅および最大パルス幅(dmin、dmax)が、出力電圧ひずみ範囲の境界を定める。例えば、出力電圧ひずみ範囲は、最小パルス幅(dmin)より下および最大パルス幅(dmax)より上であり、それぞれ、最小達成可能デューティサイクル(例えば離散的0)および最大達成可能デューティサイクル(例えば離散的1)によって制限される。この実施形態では、低い方のクリッピング値(dclipLower)が、最小達成可能デューティサイクル(離散的0(0))と最小パルス幅(dmin)との間の中間点であり、高い方のクリッピング値(dclipUpper)が、最大パルス幅(dmax)と最大達成可能デューティサイクル(離散的1(1))との間の中間点である。
【0021】
図4は、本発明の一例示的実施形態による電圧源インバータを制御する方法100の流れ図である。図1および4を参照すると、電圧源インバータは、出力電圧ひずみ範囲を有する。例えば、出力電圧ひずみ範囲は、最小達成可能デューティサイクル(例えば離散的0)と最小パルス幅(例えばdmin)との間、および最大パルス幅(例えばdmax)と最大達成可能デューティサイクル(例えば離散的1)との間である。ステップ105に示すように、デューティサイクルを有する第1の信号が受け取られる。例えば、変調器31が、コントローラ32からPWM信号を受け取る。デューティサイクルは、最小達成可能デューティサイクル(例えば離散的0)から最大達成可能デューティサイクル(例えば離散的1)までの範囲を有する。
【0022】
ステップ110に示すように、デューティサイクルは、出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値(例えば、dclipLower)未満である場合に、最小達成可能デューティサイクル(例えば離散的0)に修正される。ステップ115に示すように、デューティサイクルは、出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値以上第2のクリッピング値以下である場合に、最小パルス幅および最大パルス幅のうち近い方に修正される。第2のクリッピング値(例えば、dclipUpper)は、第1のクリッピング値(例えば、dclipLower)よりも大きい。一実施形態では、デューティサイクルは、出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値以上である場合に、最小パルス幅に修正され、出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第2のクリッピング値以下である場合に、最大パルス幅に修正される。第1のクリッピング値は、最小達成可能デューティサイクルと最小パルス幅の間のほぼ中間点になるように選択することができ、第2のクリッピング値は、最大達成可能デューティサイクルと最大パルス幅の間のほぼ中間点になるように選択することができる。
【0023】
ステップ120に示すように、デューティサイクルは、出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第2のクリッピング値よりも大きい場合に、最大達成可能デューティサイクルに修正される。ステップ125に示すように、第2の信号が、(例えば変調器31によって)電圧源インバータに送出される。第2の信号は、(例えば、先行するステップに基づき修正されたまたは無修正の)デューティサイクルを有する。例えば、デューティサイクルが出力電圧ひずみ範囲の外側である場合、第1の信号のデューティサイクルが第2の信号内に維持される。一実施形態では、第1の信号および第2の信号が、インバータ回路30のスイッチネットワークを制御するためのDPWM信号である。
【0024】
電圧源インバータは、出力電圧ひずみ範囲(例えば、最小達成可能デューティサイクルと最小パルス幅の間)に関連する第1の平均出力電圧を有する。さらに、電圧源インバータは、出力電圧ひずみ範囲(例えば、最大パルス幅と最大達成可能デューティサイクルの間)に関連する第2の平均出力電圧を有する。この実施形態では、デューティサイクルが、最小達成可能デューティサイクル以上であり、かつ最小パルス幅未満である場合、第1の平均出力電圧が維持される。さらに、デューティサイクルが最大パルス幅よりも大きく、かつ最大達成可能デューティサイクル以下である場合、第2の平均出力電圧が維持される。電圧源インバータは、スイッチング回路(例えば、インバータ回路30のスイッチネットワーク)を備えることができ、最小パルス幅および最大パルス幅は、そのスイッチング回路の短絡防止に基づくものである。
【0025】
図5は、本発明の別の例示的実施形態による電圧源インバータを制御する方法200の流れ図である。図1および5を参照すると、ステップ205に示すように、デューティサイクルを有する第1の信号が(例えば変調器31で)受け取られる。デューティサイクルは、最小達成可能デューティサイクル(例えば離散的0)から最大達成可能デューティサイクル(例えば離散的1)までの範囲を有する。ステップ210に示すように、デューティサイクルは、第1のひずみ範囲内にある場合、第1のひずみ範囲内で第1の平均出力電圧を維持するために修正される。一実施形態では、デューティサイクルは、第1のひずみ範囲内にあり、かつ第1のひずみ範囲内のクリッピング値(例えばdclipLower)未満である場合、最小達成可能デューティサイクルに修正され、第1のひずみ範囲内にあり、かつクリッピング値以上である場合、最小デューティサイクルに修正される。クリッピング値(例えばdclipLower)は、最小達成可能デューティサイクルと最小パルス幅の間のほぼ中間点になるように選択することができる。別の実施形態では、デューティサイクルは、最小達成可能デューティサイクル以上であり、かつクリッピング値未満である場合、最小達成可能デューティサイクルに修正され、クリッピング値以上であり、かつ最小パルス幅未満である場合、最小パルス幅に修正される。
【0026】
ステップ215に示すように、デューティサイクルは、第2のひずみ範囲内にある場合、第2のひずみ範囲内で第2の平均出力電圧を維持するために修正される。一実施形態では、デューティサイクルは、第2のひずみ範囲内にあり、かつ第2のひずみ範囲内のクリッピング値(例えば、dclipUpper)以下である場合、最大パルス幅に修正され、第2のひずみ範囲内にあり、かつクリッピング値よりも大きい場合、最大達成可能デューティサイクルに修正される。別の実施形態では、デューティサイクルは、最大パルス幅よりも大きく、かつクリッピング値未満である場合、最大パルス幅に修正され、クリッピング値よりも大きく、かつ最大達成可能デューティサイクル以下である場合、最大達成可能デューティサイクルに修正される。
【0027】
ステップ220に示すように、第2の信号が電圧源インバータに供給される。第2の信号は、デューティサイクルを有する。例えば、デューティサイクルが第1のひずみ範囲の外側かつ第2のひずみ範囲の外側(例えば、dminとdmaxの間)にある場合、第1の信号のデューティサイクルが第2の信号内に維持される。
【0028】
以上、前述の詳細な説明において、少なくとも1つの例示的実施形態を提示してきたが、多数の変形形態が存在することを理解されたい。1つまたは複数の例示的実施形態は例に他ならず、本発明の範囲、適用範囲、または構成を、いかなる形であれ限定するものではないことも理解されたい。そうではなく、前述の詳細な説明は、当業者に1つまたは複数の例示的実施形態を実施するための好都合な指針を提供するものである。諸要素の機能および構成に、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲、およびその法的な等価物から逸脱することなく、さまざまな変更を行うことができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一例示的実施形態による電圧源インバータシステムのブロック図である。
【図2】図1に示すインバータ回路の回路図である。
【図3】図1に示す電圧源インバータシステムの理解に役立つ、相のデューティサイクルとパルス幅の関係を示す波形図である。
【図4】本発明の一例示的実施形態による電圧源インバータを制御する方法の流れ図である。
【図5】本発明の別の例示的実施形態による電圧源インバータを制御する方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0030】
10 電圧源インバータシステム
12 交流(AC)電動機
14 電圧源
16 電圧源
18 第1のスイッチ
20 第2のスイッチ
22 第1のスイッチ
24 第2のスイッチ
26 第1のスイッチ
28 第2のスイッチ
30 インバータ回路
31 変調器
32 コントローラ
40 理想的なデューティサイクル
42 波形、修正されたデューティサイクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小および最大パルス幅と、前記最小および最大パルス幅の外側の出力電圧ひずみ範囲とを有する電圧源インバータを制御する方法であって、
最小達成可能デューティサイクルから最大達成可能デューティサイクルまでの範囲を有するデューティサイクルを有する第1の信号を受け取るステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ第1のクリッピング値未満である場合に、前記最小達成可能デューティサイクルを有する第2の信号を生成するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ、前記第1のクリッピング値以上、または前記第1のクリッピング値よりも大きな第2のクリッピング値以下の一方である場合に、前記最小および最大パルス幅のうち、前記第1の信号の前記デューティサイクルに近い方を有する第3の信号を生成するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ前記第2のクリッピング値よりも大きい場合に、前記最大達成可能デューティサイクルを有する第4の信号を生成するステップと、
前記第2、第3、および第4の信号のうち1つを、前記電圧源インバータに送出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第3の信号を生成する前記ステップが、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ前記第1のクリッピング値以上である場合に、前記第1の信号の前記デューティサイクルを前記最小パルス幅に修正するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記出力電圧ひずみ範囲内にあり、かつ前記第2のクリッピング値以下である場合に、前記第1の信号の前記デューティサイクルを前記最大パルス幅に修正するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の信号の前記デューティサイクルが前記出力電圧ひずみ範囲の外側にある場合、前記デューティサイクルを維持するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のクリッピング値を、前記最小達成可能デューティサイクルと前記最小パルス幅の間のほぼ中間点になるように選択するステップと、
前記第2のクリッピング値を、前記最大達成可能デューティサイクルと前記最大パルス幅の間のほぼ中間点になるように選択するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1、第2、第3、および第4の信号が、不連続パルス幅変調(DPWM)信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電圧源インバータが、前記最小達成可能デューティサイクルと前記最小パルス幅の間の前記出力電圧ひずみ範囲に関連する第1の平均出力電圧を有し、また前記最大パルス幅と前記最大達成可能デューティサイクルの間の前記出力電圧ひずみ範囲に関連する第2の平均出力電圧を有し、前記方法が、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記最小達成可能デューティサイクル以上であり、かつ前記最小パルス幅未満である場合に、前記第1の平均出力電圧を維持するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記最大パルス幅よりも大きく、かつ前記最大達成可能デューティサイクル以下である場合に、前記第2の平均出力電圧を維持するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧源インバータがスイッチング回路を備え、前記最小および最大パルス幅が、前記スイッチング回路の短絡防止に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
最小および最大パルス幅と、前記最小パルス幅未満の第1のひずみ範囲と、前記最大パルス幅よりも大きな第2のひずみ範囲とを有する電圧源インバータを制御する方法であって、
デューティサイクルを有する第1の信号を受け取るステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが前記第1のひずみ範囲内にある場合に、前記第1のひずみ範囲内で第1の平均出力電圧を維持するように構成された、第1の修正されたデューティサイクルを生成するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが前記第2のひずみ範囲内にある場合に、前記第2のひずみ範囲内で第2の平均出力電圧を維持するように構成された、第2の修正されたデューティサイクルを生成するステップと、
前記第1および第2のデューティサイクルの一方を有する第2の信号を、前記電圧源インバータに供給するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記デューティサイクルが、最小達成可能デューティサイクルから最大達成可能デューティサイクルまでの範囲を有し、前記第1の修正されたデューティサイクルを生成する前記ステップが、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記第1のひずみ範囲内にあり、かつ前記第1のひずみ範囲内のクリッピング値未満である場合に、前記最小達成可能デューティサイクルに基づく前記第1の修正されたデューティサイクルを生成するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記第1のひずみ範囲内にあり、かつ前記クリッピング値以上である場合に、前記最小パルス幅に基づく前記第1の修正されたデューティサイクルを生成するステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、最小達成可能デューティサイクルから最大達成可能デューティサイクルまでの範囲を有し、前記第2の修正されたデューティサイクルを生成する前記ステップが、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記第2のひずみ範囲内にあり、かつ前記第2のひずみ範囲内のクリッピング値以下である場合、前記最大パルス幅に基づく前記第2の修正されたデューティサイクルを生成するステップと、
前記デューティサイクルが、前記第2のひずみ範囲内にあり、かつ前記クリッピング値よりも大きい場合に、前記最大達成可能デューティサイクルに基づく前記第2の修正されたデューティサイクルを生成するステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記クリッピング値を、前記最小達成可能デューティサイクルと前記最小パルス幅の間のほぼ中間点になるように選択するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、最小達成可能デューティサイクルから最大達成可能デューティサイクルまでの範囲を有し、前記第1の修正されたデューティサイクルを生成する前記ステップが、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記最小達成可能デューティサイクル以上であり、かつ前記第1のひずみ範囲内にあるクリッピング値未満である場合に、前記最小達成可能デューティサイクルに基づく前記第1の修正されたデューティサイクルを生成するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記クリッピング値以上であり、かつ前記最小パルス幅未満である場合に、前記最小パルス幅に基づく前記第1の修正されたデューティサイクルを生成するステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記クリッピング値を、前記最大パルス幅と前記最大達成可能デューティサイクルの間のほぼ中間点になるように選択するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、最小達成可能デューティサイクルから最大達成可能デューティサイクルまでの範囲を有し、前記第2の修正されたデューティサイクルを生成する前記ステップが、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記最大パルス幅よりも大きく、かつ前記第2のひずみ範囲内にあるクリッピング値未満である場合に、前記最大パルス幅に基づく前記第2の修正されたデューティサイクルを生成するステップと、
前記第1の信号の前記デューティサイクルが、前記クリッピング値よりも大きく、かつ前記最大達成可能デューティサイクル以下である場合に、前記最大達成可能デューティサイクルに基づく前記第2の修正されたデューティサイクルを生成するステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の信号の前記デューティサイクルが前記第1および第2のひずみ範囲の外側にある場合に、前記デューティサイクルを前記第2の信号内に維持するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記第1および第2の信号が、不連続パルス幅変調(DPWM)信号である、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
交流(AC)電動機を制御するための電圧源インバータであって、ひずみ範囲を有し、
入力端および出力端を有するコントローラであって、第1のデューティサイクルを有する第1の信号を生成するように構成されたコントローラと、
前記コントローラの前記出力端に結合された入力端、および出力端を有する変調器であって、
前記第1のデューティサイクルが前記ひずみ範囲内にある場合に、前記電圧源インバータの平均出力電圧を維持するように構成された、第2のデューティサイクルを生成するように、また
前記第2のデューティサイクルを有する第2の信号を生成するように
構成された変調器と、
前記変調器の前記出力端に結合された入力端、および前記AC電動機に結合されるように構成された出力端を有するスイッチネットワークであって、前記第2の信号に応答して、前記AC電動機に対して出力電圧を発生するように構成されたスイッチネットワークと
を備える、電圧源インバータ。
【請求項18】
前記第1のデューティサイクルが、最小達成可能デューティサイクルから最大達成可能デューティサイクルまでの範囲を有し、前記電圧源インバータが、最小および最大パルス幅を有し、前記変調器が、
前記第1のデューティサイクルが、前記最小達成可能デューティサイクル以上であり、かつ前記ひずみ範囲内にある第1のクリッピング値未満である場合に、前記最小達成可能デューティサイクルに基づく前記第2のデューティサイクルを生成するように、
前記第1のデューティサイクルが、前記第1のクリッピング値以上であり、かつ前記最小パルス幅未満である場合に、前記最小パルス幅に基づく前記第2のデューティサイクルを生成するように、
前記第1のデューティサイクルが前記最大パルス幅よりも大きく、かつ前記第1のデューティサイクルが、前記第1のクリッピング値よりも大きな、前記ひずみ範囲内にある第2のクリッピング値以下である場合に、前記最大パルス幅に基づく前記第2のデューティサイクルを生成するように、また
前記第1のデューティサイクルが、前記第2のクリッピング値よりも大きく、かつ前記最大達成可能デューティサイクル以下である場合に、前記最大達成可能デューティサイクルに基づく前記第2のデューティサイクルを生成するように
さらに構成される、請求項17に記載の電圧源インバータ。
【請求項19】
前記第1のクリッピング値が、前記最小達成可能デューティサイクルと前記最小パルス幅の間のほぼ中間点であり、前記第2のクリッピング値が、前記最大パルス幅と前記最大達成可能デューティサイクルの間のほぼ中間点である、請求項17に記載の電圧源インバータ。
【請求項20】
前記第1および第2の信号が、不連続パルス幅変調信号である、請求項17に記載の電圧源インバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−206392(P2008−206392A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−38274(P2008−38274)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(505212049)ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・インコーポレーテッド (221)
【Fターム(参考)】