説明

電池構造体

【課題】 振動に対する高い耐性を確保することができるラミネート電池、組電池、複合組電池、および組電池または複合組電池を搭載した車両を提供する。
【解決手段】 バイポーラ電池は、正極層と負極層の組み合わせの構成を複数有する発電要素と、発電要素を被覆する外装材としての高分子金属複合フィルム19と、高分子金属複合フィルム19の内部から外部へ取り出されるタブ11、13とを有しており、タブ11、13の少なくとも一部が、当該タブ11、13の他の部分と剛性が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート電池、組電池、複合組電池、および組電池または複合組電池を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護運動の高まりを背景として電気自動車(EV)、ハイブリット自動車(HEV)、燃料電池車(FCV)の導入を促進すべく、これらのモータ駆動用電池の開発が行われている。この用途には、繰り返し充電可能な二次電池が使用される。EV、HEV、FCVのモータ駆動電源のような高出力及び高エネルギー密度が要求される用途では、単一の大型電池は事実上作れず、複数個の電池を接続して構成した組電池を使用することが一般的であった。また、このような組電池を構成する一個の電池として、リチウムイオン二次電池が提案されている。
【0003】
一方、携帯用の電話やパソコンなどの電子機器用(民生用途)の電池でも放電容量の大きいリチウムイオン二次電池が利用されているが、さらに、スペースファクター並びに軽量の点からシート型とし、さらにシート型電池の電圧や容量を大きくするためにバイポーラ電極ユニットを採用してなるシート型のバイポーラ電池が提案されている(特許文献1および2参照)。
【0004】
かかるバイポーラ電池の構造としては、例えば、一方の面が正極用集電体層であり他方の面が負極用集電体層である複合集電体の正極用集電体層の上に正極活物質層を有し、負極用集電体層の上に負極活物質層を有するバイポーラ電極ユニットを有し、且つ電解質として固体電解質を使用することを特徴とするシート型のバイポーラ電池や、バイポーラ電極ユニットの一または直列接続された二以上を有する第1組と第1組と同数のバイポーラ電極ユニットを有する第2組とが端子電極に接続される電極板を中央として互いに鏡像関係となるように並列接続されており、且つ第1組に含まれる少なくとも一のバイポーラ電極ユニットとそれと鏡像関係にある第2組中のバイポーラ電極ユニットの各複合集電体同士がリード線により直接電気的に接続されてなることを特徴とするシート型のバイポーラ電池がある(特許文献1および2参照)。
【0005】
こうしたシート型のバイポーラ電池では、シート状の発電要素を収納する外装容器として、従来の金属製の外装容器に代えて防水性シートからなる袋体が用いられている。かかる防水性シートとしては、ポリエチレンテレフタレート層とアルミニウム箔とエチレン−アクリル酸共重合体(エチレンモノマー成分1モルあたりアクリル酸モノマー成分の量:0.08モル、MI:5)との層とからなる三層構造の防水性シートが用いられている。
【0006】
このようなラミネート封止型のバイポーラ電池は、個々に金属製の外装容器を持たないため薄型、軽量で放熱性が良好であり、過充電等に容器内の圧力が高圧にとなり破裂に至った場合でも、金属容器に比べて衝撃が少なく安全性に優れるため、一般の民生用途に幅広く利用できるものである。
【特許文献1】特開2000−100471号公報
【特許文献2】特開2000−195495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載のシート型のラミネート電池では、防水性シートからなる袋体を用いることで十分なシール性及び防水性を確保することができるため、上記したような一般民生用途では使用可能であるものの、EV、HEV、FCVのモータ駆動電源等や補助電源として搭載して利用しようとする場合には、車両特有の振動に対する高い耐性を確保することができていなかった。
【0008】
すなわち、車両用のシート型のラミネート電池は、防水性シートからなる袋体を用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、上記発電要素を収納し密封した構成を有しており、該発電要素の両端電極と導通される金属製のタブ(電極端子リード)が、上記熱融着部(シール部)に挟まれて上記袋体の外部に露出される構造を有する。そのため、車両からの振動がラミネート電池のタブ部を経てそのまま発電要素に伝播する虞があった。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、振動に対する高い耐性を確保することができるラミネート電池、組電池、複合組電池、および組電池または複合組電池を搭載した車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、正極層と負極層の組み合わせの構成を複数有する発電要素と、前記発電要素を被覆する外装材としての高分子金属複合フィルムと、前記高分子金属複合フィルムの内部から外部へ取り出されるタブとを有し、前記タブの少なくとも一部が、当該タブの他の部分と剛性が異なることを特徴とするラミネート電池により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タブの少なくとも一部の剛性を当該タブの他の部分の剛性と異ならせることにより、タブのバネ定数を変化させることができる。これにより、ラミネート電池そのものの共振の低下および周波数シフトを図ることができ、防振性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るラミネート電池は、正極層と負極層の組み合わせの構成を複数有する発電要素と、発電要素を被覆する外装材としての高分子金属複合フィルムと、高分子金属複合フィルムの内部から外部へ取り出されるタブとを有し、タブの少なくとも一部が、当該タブの他の部分と剛性が異なることを特徴とするラミネート電池である。以下、本発明の実施の形態につき、説明する。
【0013】
本発明の対象となるラミネート電池としては、特に限定されるべきものではなく、電池要素として例えば、電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に限定されるべきものではなく、従来公知のいずれの構造にも適用し得るものである。また、電池の構造がバイポーラ、非バイポーラにかかわらず本願を適用すること可能であるがタブに対して高電位の絶縁性を要求されるバイポーラ型の電極に適用することが好ましく、以下バイポーラ電極を対象に説明する。同様にバイポーラ電池の電解質の種類で区別した場合にも、特に限定されるべきものではなく、電解液をセパレータ(不織布セパレータを含む)に含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用し得るものである。これらの電解質のうち高分子ゲル電解質および固体高分子電解質(全固体電解質)に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質(全固体電解質)をセパレータ(不織布セパレータを含む)に含浸させて使用することもできるなど、特に限定されるべきものではない。また、本発明は、一次電池および二次電池のいずれにも適用し得るものであるが、本発明の使用目的が車両に適用する点にあることから、二次電池に適用するのが望ましい。さらに、バイポーラ電池の電極材料ないし電極間を移動する金属イオンで見た場合には、バイポーラリチウムイオン二次電池、バイポーラナトリウムイオン二次電池、バイポーラカリウムイオン二次電池、バイポーラニッケル水素二次電池、バイポーラニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池など、特に限定されるべきものではなく、従来公知のいずれの電極材料等にも適用し得るものである。好ましくは、バイポーラリチウムイオン二次電池である。これは、バイポーラリチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。したがって、以下の説明では、バイポーラリチウムイオン二次電池を例にとり説明するが、本発明はこれに何ら限定されるべきものではない。
【0014】
以下、本発明のバイポーラ電池の具体的な実施形態につき、図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るバイポーラ電池の一実施形態を模式的に表わした平面図である。図2は、図1のII−II線断面図であり、バイポーラ電池の積層構造の一実施形態を模式的に表わした断面概略図である。図3は、図1のIII−III線断面図であり、バイポーラ電池の金属製のタブが、外装材の高分子金属複合フィルムの熱融着部(シール部)に挟まれている部分の積層構造の一実施形態を模式的に表わした断面概略図である。
【0016】
本発明のバイポーラ電池1は、正極層と負極層の組み合わせの構成を複数有する発電要素9と、発電要素9を被覆する電池外装材19と、電池外装材19の内部から外部へ取り出されるタブ11、13とを有している。
【0017】
ここで、バイポーラ電池1は、正極層と負極層の組み合わせの直列構成が複数存在する、いわゆるバイポーラ構造を有するものである。バイポーラ構造とは、1枚または2枚以上で構成される集電体の片面に正極層(正極活物質層ともいう)を設け、もう一方の面に負極層(負極活物質層ともいう)を設けたバイポーラ電極3で電解質層5を挟み、隣り合うバイポーラ電極3の正極と負極とが対向するようになっている構造をいうものとする。すなわち、バイポーラ電池1では、集電体の片方の面上に正極層を有し、他方の面上に負極層を有するバイポーラ電極3を、電解質層5を介して複数枚積層した構造の発電要素(電極積層体、電池素子ないしバイポーラ電池本体とも称する)9を有するものである。
【0018】
また、本発明では、上記バイポーラ電極3を複数枚積層した発電要素9の最外部である最上層の電極3aと最下層の電極3bは、バイポーラ電極でなくてもよい。例えば、最上層の集電体兼正極板と最下層の集電体兼負極板の必要な片面のみに、正極層ないし負極層を設けた構造(非バイポーラ電極構造)としてもよい。また、集電体同士が接触したり、電解液が漏れ出したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲には絶縁層7が形成されている。
【0019】
また、本発明のバイポーラ電池では、最外部の集電体とは別にそれぞれ正極端子板および負極端子板(図示せず)を接合してもよい。さらに図2に示すように、電池外部に取り出される正極及び負極タブ11、13と最外部の電極3a、3bの集電体(または電極端子板)との間を電気的に接続するために正極及び負極リード15、17で電気的に接続してもよいが、最外部の電極の集電体(または電極端子板)に、電池外部に取り出される正極及び負極タブをそれぞれ直接接続してもよいし、最外部の電極の集電体(または電極端子板)の一部を延長して正極及び負極リードとしてもよいなど、特に限定されるべきものではない。該正極及び負極タブ11、13には、図示されていない車両の負荷(モータ、電装品など)が接続され、これらタブ11、13には、非常に大きな充放電電流が流れる。そのため、正極タブ11と負極タブ13の幅および厚み(換言すれば断面積)は、主にそれに流れるであろう充放電時の電流値により決定される。また、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素9は電池外装材19に減圧封入される。
【0020】
電池外装材19には、軽量化の観点から、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)の薄膜乃至箔(金属層19b)をポリプロピレンフィルム等の絶縁性の樹脂フィルム(表皮樹脂層19aと金属層−タブ間樹脂層19c)で被覆した高分子金属複合ラミネートフィルムが用いられている。そして、電池外装材19の周辺部の一部または全部を熱融着等にて接合することにより、発電要素9が電池外装材19内に減圧封入(密封)され、正極及び負極タブ11、13は電池外装材19の外部に取り出された構成となっている。
【0021】
上記バイポーラ電極(最外部の非バイポーラ電極を含む)の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。例えば、車両用では、単電池の端子間電圧を4.2Vにしているので、数十〜百数十セル分の単電池層が直列接続されてなる構成の発電要素9の端子間電圧(電池電圧)は400Vを超えるような高電圧になる場合もある。このようにバイポーラ電池は、1つの単電池層の端子間電圧がバイポーラ電極を用いない、例えば、リチウムイオン二次電池などのような一般的な二次電池の端子間電圧に比較して高いので、容易に高電圧の電池を構成することができる。
【0022】
そして、本実施形態では、車両特有の振動に対する高い耐性を確保することができる以下の構成要件を具備している。
【0023】
即ち、本発明のバイポーラ電池1では、タブ11、13の少なくとも一部が、当該タブの他の部分と剛性が異なっている。たとえば具体的には、タブ11、13の少なくとも一部に、凹凸形状部(微細な凹凸形状を含む)あるいは穴形状部が形成され得る。なお、図2および図3において、穴形状部や凹凸形状部は、図示省略されている。
【0024】
図4は、バイポーラ電池1の振動モデルを示す模式図、図5は、図3に示される断面構造の振動モデルを示す模式図である。図4の振動モデルは、概して、発電要素9を含む本体部がマスに相当し、タブ11、13およびその周囲の接着領域がバネに相当するマスバネ系を構成している。より詳細には、本体部は、マスM、バネ定数k、およびダンピング係数Cを有し、タブ11、13は、それぞれ、マスMa,Mb、およびバネ定数ka,kbを有している。また、図5に示すように、タブ11、13は、タブ表面と垂直な方向にバネ定数およびダンピング係数を有し、タブ表面と平行な方向にバネ定数を有している。
【0025】
このとき、タブ11、13のバネ定数を変化させることにより、バイポーラ電池1の防振性能を変化させることができる。一般には、タブ11、13の剛性を低減することでバネ定数を低減し、バイポーラ電池1そのものの共振周波数の低下およびシフトを図ることができ、防振性能を向上させることが可能となる。このように本発明によれば、タブ11、13の少なくとも一部の剛性を変化させ、バイポーラ電池1の防振性能を向上させることが可能となる。
【0026】
タブ11、13内で剛性を変化させる部位は、タブ11、13内であれば任意であるが、特にタブ11、13の接着領域Aに(図6参照)おいて剛性を変化させることは有効である。これは、タブ11、13の接着領域Aがタブのバネ定数の変化を決定する主たる部位に該当するからである。より具体的には、好ましくは、タブ11、13と電池外装材19との接着領域Aにおける当該タブ11、13の断面積は、当該接着領域A外におけるタブ11、13の断面積よりも小さく設定される。なお、ここでいう断面積は、タブ11、13の外部への引き出し方向に垂直な平面で切断した断面における断面積をいう。そして、タブ11、13と電池外装材19との接着領域Aにおける当該タブ11、13の断面積は、接着領域A外におけるタブ11、13の断面積の50〜90%であることが望ましい。50%よりも小さいとタブ11、13の剛性が小さくなって電池を構成するのが困難になる可能性があり、90%以上になると周波数シフトが殆ど起こらず防振性能の向上が図れない可能性があるからである。
【0027】
同時に、タブ11、13の接着領域Aにおける断面積を当該接着領域A外における断面積よりも小さく設定することにより、タブ11、13と電池外装材19の金属層19bとの間の最も距離の短い部分の面積を減らすことができ、絶縁破壊が起きる可能性を減少させることができる。つまり、金属層19bとタブ11、13の距離が最も小さくなる部分の面積が広いほど、絶縁が破れる確率が大きくなるからである。ここで、タブ11、13と電池外装材19との接着領域において両者が最も接近するためかかる接着領域Aで絶縁破壊が起きる可能性が高く、接着領域Aにおいてタブ11、13の断面形状に変化を持たせることで、全体としての絶縁を確保することができる。したがって、高電圧付加時でも、バイポーラ端子間の絶縁を確保することが可能となる。そのため、電池の起電力が高くなり、高絶縁が必要になる車両用のモータ駆動電源用途に好適に利用できるものである。
【0028】
更に、凹凸形状部あるいは穴形状部の形成により、電池のシール性が最も要求されるタブと樹脂との接着部分において、接触面積の増大(凹凸形状部)あるいはアンカー効果の発揮(凹凸形状部、穴形状部)がもたらされるため、高い接着強度を発現させることができ、電池のシール信頼性が向上する。
【0029】
また、本実施形態では、タブ11、13と電池外装材19との接着領域におけるタブの周囲に、少なくとも1層以上の高分子接着層21が設けられている。このように高分子接着層21をタブ11、13と電池外装材19との間に追加で設定するにより、タブ11、13と金属層19bの絶縁距離を、高分子接着層21の厚さ分だけさらに広げることができる。したがって、タブ11、13と金属層19bとの間の絶縁がより確保し易くなり、かつ高分子接着層21に使用される接着樹脂に起因して接着強度をも向上させることが可能となる。また、タブ11、13等に生じ得るバリを高分子接着層21の接着樹脂で受けることができるため、バリに対する強度を上げることが可能となる。さらに、接着樹脂の存在により、樹脂のダンピング効果を併せ持たせることが可能となり、振動の減衰効果を発揮させることが可能となる。高分子接着層21としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、あるいは変性PPなどの樹脂が好適に使用され得る。ただし、本発明において、高分子接着層21の形成は省略可能である。
【0030】
バイポーラ電池1を外部の振動衝撃から保護するためには、高分子接着層21の樹脂の硬度が、電池外装材19である高分子金属複合フィルムの接着層(金属層−タブ間樹脂層19c)の硬度よりも小さい方が望ましい。これは、タブ11、13に近いほうの樹脂のダンピング係数が高くバネ定数が小さい方が、全体の振動減衰に効果が大きいからである。好ましくは、高分子接着層21の樹脂の硬度は、高分子金属複合フィルムにおける接着用の樹脂の硬度の30〜80%である。30%よりも小さくなると接着時に樹脂が流れる可能性があり、80%以上では振動減衰効果が小さくなる可能性があるからである。
【0031】
また、この高分子接着層21の硬度は、JIS A 5〜95の範囲にあることが望ましい。JIS Aが5以下では、樹脂が柔らかくて集電箔の間隔を均一に保持するのが困難であり、95以上では硬すぎて防振効果が小さくなるからである。樹脂を積層して使用する場合には、硬度は積層した樹脂の平均値となる。樹脂をブレンドする場合には、ブレンドした後の樹脂において硬度が上記したスペック範囲にあればよい。本スペック範囲にあることで、車両の共振(100Hz以下)から電池の共振周波数を高周波側にシフトさせることができる。
【0032】
図6は、バイポーラ電池におけるタブの一例を説明するための図である。
【0033】
図6の例では、タブ11、13は、接着領域Aにおいて穴形状部31を有している。なお、図中の符号「A」は、高分子接着層21が形成される領域を示す。
【0034】
タブ11、13に穴形状部31を設けることにより、タブ11、13の剛性を低減することによってバネ定数を低減することができる。したがって、バイポーラ電池1そのものの共振の低下および周波数シフトを図ることができ、防振性能を向上させることが可能となる。
【0035】
また、接着領域Aにおけるタブ11、13の断面積が接着領域A外における当該タブ11、13の断面積に対して減少されている部分、すなわち図6では穴形状部31に、接着用の樹脂が充填されていることが望ましい。なお後述する図11の凹形状部35についても同様である。つまり、タブ11、13の穴形状部31等の断面積が減少されている部分には、空気以外に何も存在しないのではなく、接着用の樹脂が存在することが望ましい。これは、断面積が減少されている部分において、タブ11、13のバネ定数が低下するが、その部分に樹脂が存在することにより、樹脂のダンピング効果を併せ持たせることが可能となり、振動の減衰効果を発揮させることが可能となるからである。
【0036】
穴形状部31の開口形状は特に限定されるものではなく、長方形(図6〜図8、図19図20参照)、平行四辺形(図9および図10参照)、略正方形(図15〜図18参照)の他、丸等の形状でも発明の目的を達成し得る。また、穴形状部31のサイズ、開口面積、個数も特に限定されるものではない。
【0037】
しかも、タブ11、13の接着領域Aに穴形状部31を設けた場合には、タブ11、13と金属層19bとの間の最も距離の短い部分の面積が、当該穴形状部31の面積の分だけ小さくなるため、絶縁破壊が起きる可能性を減少させる点で有効である。
【0038】
穴形状部31は、タブ11、13の外周と一体で加工しても、外周加工の後、別に加工してもよい。ここで、タブの周辺部にバリがあるとバリの先端での絶縁距離が短くなるため、バリの発生をできるだけ抑制する必要がある。また、穴形状部31の加工の後に、バリを取るためのプレス工程、削り工程を実施することも、絶縁をより確保するために望ましい。
【0039】
また、接着領域Aにおいて、タブ11、13の幅方向両側に位置する一対の外縁32、33が、それぞれ一つの直線を形成していることが好ましい。換言すれば、外縁32、33は、接着領域Aの内部で、その(接線)角度が変化していない。たとえば、図6に示されるようなエッジ部34は、接着領域Aの内部に含まれないことが望ましい。これは、接着領域Aにおけるタブの外縁が一つの直線を形成しておらず、接着領域Aの内部で角度が変化している場合には、タブの加工上、タブが湾曲する可能性があるからである。この場合、タブ11、13における曲がった先端の絶縁距離は、他の部分よりも小さくなってしまい、絶縁破壊が起き易くなる。
【0040】
なお、接着領域A内にエッジ部34が無ければよいため、図6に示されるタブ11、13の構造の場合には、接着領域Aの範囲内でタブ11、13と電池外装材19との接着が行われればよい。これは直線部分ではタブが湾曲する可能性が低いため、絶縁距離を保ち易いことによる。なお、たとえば後述する図9に示されるようなタブも、接着領域Aの内部(境界を除く)で角度変化が起きていないので、本発明の範囲に属する。
【0041】
図7は、バイポーラ電池におけるタブの他の例を示す図である。なお、既に説明した部分と共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する(図8〜図22でも同様)。図7に示すタブ11b、13bは、エッジ部34(換言すれば切り欠き形状)を有しない点で図6に示すタブ11、13と相違しており、他の点では同様である。
【0042】
図8は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図8に示すタブ11c、13cの穴形状部31は、接着領域A、および高分子接着層21が形成される領域Aを超えてタブの引き出し方向に伸延している点で図7に示すタブ11b、13bと相違しており、他の点では同様である。
【0043】
図9は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【0044】
図9の例では、タブ11a、13aは、穴形状部31aの長手方向は、当該バイポーラ電池の長手方向(図9ではタブの取り出し方向と同じ)に対して所定の角度αで傾斜している。タブ11a、13aと樹脂の接着は、特にセルの内圧に耐える必要があるが、このような所定の角度αを有することにより、タブ11a、13aと樹脂の接着強度が高められるため、有効である。ここで、穴形状部31aを斜めにすることにより、バイポーラ電池の長手方向のみならず、それに直交する方向においても、樹脂−樹脂間の強い接着強度が得られる。したがって、タブ11a、13a全体の接着強度が向上する。
【0045】
図10は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図10に示すタブ11e、13eは、エッジ部34を有しない点で図9に示すタブ11d、13dと相違しており、他の点では同様である。
【0046】
図11は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を説明するための図、図12は、図11におけるタブと電池外装材との接着領域付近の拡大断面図である。図11および図12の例では、タブ11f、13fは、接着領域Aにおいて凹形状部35を有している。なお、接着領域Aにおける凹形状部35以外の部分と凹形状部35とが、結果的に凹凸形状部を形成する。
【0047】
タブ11b、13bに凹形状部35を設けることにより、タブ11b、13bと金属層19bとの間の最も距離の短い部分(図12に示す絶縁距離Dを有する部分)の面積が、当該凹形状部35の面積の分だけ小さくなるため、絶縁破壊が起きる可能性を減少させる点で有効である。また、平均の絶縁距離(図12に示す絶縁距離Dを有する部分と絶縁距離Dを有する部分との平均)が、凹形状部35を有しない従来のタブの絶縁距離Dよりも大きくなる。なお、凹形状部35の開口形状は特に限定されるものではない。また、凹形状部35のサイズ(深さを含む)、開口面積、個数も特に限定されるものではない。
【0048】
図13および図14は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図13に示すタブ11g、13gは、エッジ部34を有しない点で図11に示すタブ11f、13fと相違しており、他の点では同様である。図14に示すタブ11h、13hは、凹形状部35が、バイポーラ電池の長手方向(タブの取り出し方向と同じ)に直交する方向に表裏に1つずつ形成された溝である点で図13に示すタブ11f、13fと相違しており、他の点では同様である。
【0049】
図15は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図15の例では、タブ11i、13iの穴形状部31bは、接着領域A内で、タブの取り出し方向において少なくとも2つ(図15では3つ)に分離されて形成されている。
【0050】
したがって、電池内部からの電解液によりシール性能が弱められることが考えられる場合であっても、樹脂−樹脂の接着部分よりも接着強度の比較的弱い金属−樹脂の部分が分離されていることにより、漏液の防止力が向上することになる。例えば、電池の内部から外部に向かって貫通したピンホールがあると液漏れの原因になり易いが、このように金属−樹脂の接着部位を分離することにより、貫通したピンホールの形成を防止することができるようになる。
【0051】
図16は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図16に示すタブ11j、13jは、エッジ部34を有しない点で図15に示すタブ11i、13iと相違しており、他の点では同様である。
【0052】
図17は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図17の例では、タブ11k、13kの穴形状部31cは、接着領域A内で、タブの取り出し方向において少なくとも2つ(図17では3つ)に分離されて形成されている。さらに、分離された穴形状部31cの、タブの取り出し方向と直交する方向(W方向)における位置が、少なくとも一部において相互にずれている。例えば、図17において、W方向に複数の穴形状部31cが並んで構成される3つの列R〜Rのうちの真中の列Rにおける穴形状部31cの位置が、他の列RおよびRにおける穴形状部31cのW方向位置とずれている。つまり、タブの取り出し方向に分離された複数の穴形状部31cは、タブの取り出し方向(L方向)に直線状に並んでいない。このような穴形状部31cのW方向位置のずれにより、貫通したピンホールの形成を更に防止することが可能となり、液漏れ防止により効果的である。
【0053】
図18は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図18に示すタブ11l、13lは、エッジ部34を有しない点で図17に示すタブ11k、13kと相違しており、他の点では同様である。
【0054】
図19は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図19の例のタブ11m、13mにおいては、接着領域Aにおけるタブ11mb、13mbの断面積は、接着領域A外におけるタブ11ma、13ma、および11mc、13mcの断面積(最小断面積)と同等若しくはそれ以上とされている。つまり、穴形状部31の形成によって接着領域Aのタブ11jb、13jbの抵抗が下がらないように、タブの投影面積が増やされる。これにより、接着性の向上とタブ抵抗値の維持とを確保することができる。図19の構造によれば、タブの厚さを増やすことなく抵抗値を維持することができる。なお、図19(および後述する図20)の構造以外の構造では、穴形状部の形成によってタブの投影面積が小さくなるため、タブの抵抗値を維持するためには、投影面積を増やした分だけタブの厚さを増す必要がある。ただし、タブの厚さを増加させたくない場合、使用する最大電流値でもタブの発熱が許容できるように、穴形状部を含めたタブの幅を予め決めて確保しておけばよい。
【0055】
接着領域Aのタブ11mb、13mbと接着領域A外のタブ11ma、13ma、および11mc、13mcとの接合は、振動溶着で行うのが望ましい。振動溶着によれば、接触抵抗が低くなるとともに、接合のために異種材料を使用しないので予想もしない化学反応の進行を防止できるからである。
【0056】
図20は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図20に示すタブ11n、13nは、エッジ部34を有しない点で図19に示すタブ11m、13mと相違しており、他の点では同様である。
【0057】
図21および図22は、バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。図21に示すタブ11o、13oは、凹形状部35がタブ11o、13oの接着領域A外に形成されている点で図14に示すタブ11h、13hと相違しており、他の点では同様である。図22に示すタブ11p、13pは、凹形状部35がタブ11p、13pの接着領域A外に形成されている点で図13に示すタブ11g、13gと相違しており、他の点では同様である。このような構成であってもタブ内で剛性を変化させることができ、防振性能の向上を図ることが可能である。
【0058】
以上、本発明にかかるバイポーラ電池の主要構成要件を中心に説明したが、本発明のバイポーラ電池の他の構成要素に関しては特に限定されるべきものではなく、従来公知のものを適宜利用して構成することができるものである。以下、バイポーラリチウムイオン二次電池を例にとり、その構成要件につき説明するが、本発明はこれに何ら限定されるべきものでないことはいうまでもない。
【0059】
[集電体]
本発明で用いることのできる集電体としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、チタン箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。複合集電体を用いる場合、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、複合集電体においては、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していればよい。
【0060】
複合集電体における正極集電体および負極集電体の各厚みは、通常通りでよく両集電体とも、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは集電体(複合集電体を含む)の厚さが1〜100μm程度であればよいが、本発明のように高電圧の電池とするには、単電池層が数十〜百数十層積層する必要上、集電体も薄膜軽量化するのが望ましいことから、該集電体の厚さとして好ましくは、5〜20μmの範囲である。
【0061】
[正極層(正極活物質層)]
ここで、正極層の構成材料としては、正極活物質を含むものであればよく、さらに必要に応じて、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)、高分子電解質、添加剤などが含まれ得るが、電解質層に高分子ゲル電解質や液体電解質を用いる場合には、正極活物質微粒子同士を結びつける従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤などが含まれていればよく、高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。電解質層に液体電解質を用いる場合にも、正極層には高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。
【0062】
正極活物質としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)を好適に使用できる。具体的には、LiMnO、LiMnなどのLi−Mn系複合酸化物、LiCoOなどのLi−Co系複合酸化物、LiCr、LiCrOなどのLi−Cr系複合酸化物など、LiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物、LiFeO、LiFeOなどのLi−Fe系複合酸化物、LiなどのLi−V系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNiCo1−x(0<x<1)等)などが使用できるなど、Li金属酸化物から選択し使用するが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することができる点で有利である。この他、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなどが挙げられる。
【0063】
上記正極活物質の中では、Li−Mn系複合酸化物が望ましい。これは、Li−Mn系複合酸化物を用いることにより、プロファイルを傾けることが可能となり、異常時信頼性が向上するためである。詳しくは、正極活物質をLi−Mn系複合酸化物にすることで、電圧−SOCプロファイルを傾けることができるようになる。これにより、電圧を計測することで電池の充電状態(SOC)が判明するため、電池の特に不安定な過充電、過放電状態を検知し、対処することができるようになり、電池の信頼性を向上させることが可能となる。また、Li−Mn系複合酸化物は過充電、過放電で電池が故障するときにも反応が穏やかであり、異常時の信頼性が高いといえる。その結果、各単電池層及びバイポーラ電池全体の電圧の検知が容易になる。
【0064】
正極活物質の粒径は、バイポーラ電池の電極抵抗を低減するために、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池で一般に用いられる粒径よりも小さいものを使用するとよい。具体的には、正極活物質微粒子の平均粒径が0.1〜5μmであるとよい。0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.5〜5μmの範囲とするのが望ましい。
【0065】
上記導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々の炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0066】
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、SBR、ポリイミドなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0067】
上記電解質のうち高分子ゲル電解質は、イオン導伝性を有する固体高分子電解質に、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池で用いられる電解液を含んだものであるが、さらに、リチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含むものである。よって、上記電解質のうち高分子固体電解質は、イオン導伝性を有する高分子固体電解質となる。
【0068】
ここで、高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質塩および可塑剤)としては、特に限定されるべきものではなく、従来既知の各種電解液を適宜使用することができるものである。例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);LiBETIともいう)等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の可塑剤(有機溶媒)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0069】
イオン導伝性を有する固体高分子電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のような公知の固体高分子電解質が挙げられる。
【0070】
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
【0071】
上記イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0072】
高分子ゲル電解質中のホストポリマーと電解液との比率(質量比)は、使用目的などに応じて決定すればよいが、2:98〜90:10の範囲である。すなわち、電池電極中の電解質材料からの電解液の染み出しについては、図2に示すように、絶縁層7を形成することで効果的にシールすることができる。そのため、上記高分子ゲル電解質中のホストポリマーと電解液との比率(質量比)に関しても、比較的電池特性を優先したものとすることができる。
【0073】
上記添加剤としては、例えば、電池の性能や寿命を高めるためのトリフルオロプロピレンカーボネート、補強材として各種フィラーなどが挙げられる。
【0074】
正極層の厚さ(正極活物質膜厚)は、特に限定するものではなく、配合量について述べたように、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。よって、正極層の厚さ(正極活物質膜厚)は、1〜500μm程度である。本発明のように高電圧の電池とするには、単電池層が数十〜百数十層積層する必要上、電極は薄膜軽量化するのが望ましいことから、正極層の厚さ(正極活物質膜厚)として好ましくは、5〜30μmの範囲である。
【0075】
正極層における、正極活物質、導電助剤、バインダ、高分子電解質(ホストポリマー、電解液など)、リチウム塩等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。
【0076】
[負極層(負極活物質層)]
負極層は、負極活物質活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、高分子電解質(ホストポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、添加剤などが含まれ得るが、高分子電解質層に高分子ゲル電解質を用いる場合には、負極活物質微粒子同士を結びつける従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤などが含まれていればよく、高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。電解質層に溶液電解質を用いる場合にも、負極層には高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。負極活物質の種類以外は、基本的に「正極層」の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0077】
負極活物質としては、溶液系のリチウムイオン電池でも使用される負極活物質を用いることができる。具体的には、カーボン、金属化合物、金属酸化物、Li金属化合物、Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)、ホウ素添加炭素、グラファイトなどを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。上記カーボンとしては、例えば、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボンなど、従来公知のカーボン材料が挙げられる。上記金属化合物としては、LiAl、LiZn、LiBi、LiCd、LiSd、LiSi、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C(LiC)等が挙げられる。上記金属酸化物としては、SnO、SnO、GeO、GeO、InO、In、PbO、PbO、Pb、Pb、AgO、AgO、Ag、Sb、Sb、Sb、SiO、ZnO、CoO、NiO、FeO等が挙げられる。Li金属化合物としては、LiFeN、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4N等が挙げられる。Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)としては、LiTi12などLiTiで表されるリチウム−チタン複合酸化物等が挙げられる。上記ホウ素添加炭素としては、ホウ素添加カーボン、ホウ素添加グラファイト等が挙げられる。ただし、本発明では、これらに限定されるべきものではなく従来公知のものを適宜利用することができる。上記ホウ素添加炭素中のホウ素の含有量は0.1〜10質量%の範囲が望ましいが、これに限定されるべきものではない。
【0078】
上記負極活物質の中では、結晶性炭素材、非結晶性炭素材から選ばれるものが好ましい。これらを用いることで、プロファイルを傾けることが可能となる。詳しくは、負極活物質を結晶性炭素材、非結晶性炭素材から選ばれるものにすることで、電圧−SOCプロファイルを傾けることができるようになる。これにより、電圧を計測することで電池の充電状態(SOC)が判明するため、電池の特に不安定な過充電、過放電状態を検知し、対処することができるようになり、電池の信頼性を向上させることが可能となる。この効果は非晶質炭素において特に顕著であり、有効であるが特に限定は行わない。その結果、各単電池層及びバイポーラ全体の電圧の検知が容易になる。ここでいう結晶性炭素材とは、グラファイト系炭素材料をいい、上記グラファイトカーボンなどがこれに含まれる。非結晶性炭素材とは、ハードカーボン系炭素材料をいい、上記ハードカーボンなどがこれに含まれる。
【0079】
負極層の厚さ(負極活物質膜厚)は、特に限定するものではなく、配合量について述べたように、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。よって、負極層の厚さ(負極活物質膜厚)は、1〜500μm程度である。本発明のように高電圧の電池とするには、単電池層が数十〜百数十層積層する必要上、電極は薄膜軽量化するのが望ましいことから、負極層の厚さ(負極活物質膜厚)として好ましくは、5〜30μmの範囲である。
【0080】
[電解質層]
本発明では、その使用目的に応じて、(a)高分子ゲル電解質、(b)高分子固体電解質または(c)これらポリマー電解質ないし電解液を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)、のいずれにも適用し得るものである。
【0081】
(a)高分子ゲル電解質
高分子ゲル電解質としては、特に限定されるべきものではなく、従来のゲル電解質層に用いられているものを適宜利用することができる。ここで、ゲル電解質とは、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。なお、本発明において、全固体高分子電解質(単に、高分子固体電解質ともいう)と、ゲル電解質との違いは、以下のとおりである。
【0082】
・ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質に、通常のリチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものがゲル電解質である。
【0083】
・ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、電解液を保持させたものもゲル電解質にあたる。
【0084】
・ゲル電解質を構成するポリマー(ホストポリマーないしポリマーマトリックスとも称する。)と電解液の比率は幅広く、ポリマー100質量%を全固体高分子電解質、電解液100質量%を液体電解質とすると、その中間体はすべてゲル電解質にあたる。
【0085】
上記ゲル電解質の、ホストポリマーとしては、特に限定されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができるが、好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびそれらの混合物が望ましい。
【0086】
上記ゲル電解質の、電解液(電解質塩および可塑剤)としては、特に限定されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。具体的には、通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0087】
本発明におけるゲル電解質中の電解液の割合としては、特に限定されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。本発明では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。
【0088】
また、本発明では、ゲル電解質に含まれる電解液の量は、ゲル電解質内部で略均一になるようにしてもよいし、中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていってもよい。前者は、より広範囲で反応性を得ることができるため好ましく、後者は、外周部の全固体高分子電解質部の電解液に対するシール性を高めることができる点で好ましい。中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていく場合には、上記ホストポリマーには、リチウムイオン伝導性のあるポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)およびそれらの共重合体を用いることが望ましい。
【0089】
(b)高分子固体電解質
全固体高分子電解質としては、特に限定されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。具体的には、イオン伝導性を有する高分子から構成される層であり、イオン伝導性を示すのであれば材料は限定されない。全固体高分子電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のような公知の固体高分子電解質が挙げられる。固体高分子電解質中には、イオン伝導性を確保するためにリチウム塩が含まれる。リチウム塩としては、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。PEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SOなどのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
【0090】
(c)上記ポリマー電解質ないし電解液(電解質塩および可塑剤)を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)
セパレータに含浸させることのできる電解質としては、既に説明した(a)および(b)または上記(a)で説明した電解(電解質塩および可塑剤)液と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0091】
上記セパレータとしては、特に限定されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができるものであり、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)などを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
【0092】
該ポリマーの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
【0093】
上記セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。セパレータの厚さが、かかる範囲にあることでセパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
【0094】
上記セパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。セパレータの微細孔の平均径が上記範囲にあることで、熱によってセパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスが出て電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
【0095】
上記セパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。セパレータの空孔率が上記範囲にあることで、電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から、出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
【0096】
上記セパレータへの電解質の含浸量は、セパレータの保持能力範囲まで含浸させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質にシール部を設け、電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持できる範囲であれば含浸可能である。
【0097】
電解質を保持させる為に用いる不織布セパレータとしては、特に限定されるべきものではなく、繊維を絡めてシート化することにより製造することができる。また、加熱によって繊維同士を融着することにより得られるスパンボンド等も用いることができる。すなわち、繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ、適当な接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のものであればよい。上記接着剤としては、製造及び使用時の温度下で十分な耐熱性を有し、ゲル電解質に対しても反応性や溶解性等がなく安定したものであれば、特に限定されるべきものではなく、従来公知のものを利用できる。また、使用繊維としては、特に限定されるものではなく、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができ、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に限定されるべきものではない。すなわち、あまり不織布のかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
【0098】
不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。空孔率が50%未満では、電解質の保持性が悪化し、90%超では強度が不足する。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
【0099】
なお、上記(a)〜(c)の電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
【0100】
また、高分子電解質は、電解質層、正極活物質層、負極活物質層に含まれ得るが、同一の高分子電解質を使用してもよく、層によって異なる高分子電解質を用いてもよい。
【0101】
ところで、現在好ましく使用される高分子電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、溶液系のリチウムイオン電池で一般に使用される、酸化還元電位の高い正極剤を使用する場合には、負極の容量が、高分子電解質層を介して対向する正極の容量より少ないことが好ましい。負極の容量が対向する正極の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極および負極の容量は、正極および負極を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。
【0102】
ただし、負極の容量を対向する正極の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
【0103】
電池を構成する電解質層の厚さは、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトなバイポーラポリマー電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。一般的な電解質層の厚さは5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0104】
[絶縁層]
絶縁層は、電解液による液絡、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものである。本発明では、必要に応じて、電極の周囲に絶縁層を設けてもよい。これは、車両駆動用ないし補助用電源として利用するような場合には、たとえ固体電解質を用いて電解液による短絡(液落)を完全に防止したとしても、電池への振動や衝撃が長期にわたり負荷される。そのため、電池寿命の長期化の観点からは、絶縁層を設置することがより長期間の信頼性、安全性を確保する上で望ましく、高品質の大容量電源を提供できる点で望ましいためである。
【0105】
該絶縁層としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0106】
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板は、必要に応じて使用すればよい。すなわち、バイポーラ電池の積層(ないし巻回)構造によっては、最外部の集電体から正極及び負極タブ(電極端子)を直接または電極リードを介して取り出してもよく、この場合には正極および負極端子板は用いなくともよい(図2参照)。
【0107】
正極および負極端子板を用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよいが、積層されてなる電極、電解質および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、電極端子板から電極タブまでの内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
【0108】
正極および負極端子板の材質は、通常のバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。
【0109】
正極端子板と負極端子板との材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極および負極端子板は、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。これら正極および負極端子板でも、電池外装材と近接ないし密着することもあることから、必要があれば、電極タブと同様の高抵抗層を電極端子板の外表面上の必要とされる部分に適宜に設けてもよいことはいうまでもない。
【0110】
[正極および負極リード]
正極および負極リードは、必要に応じて使用すればよい。正極および負極リードは、既存のバイポーラ型ではない通常のリチウムイオン二次電池で用いられる公知の電極リードを用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。正極リードと負極リードとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極および負極リードは、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
【0111】
[正極および負極タブ(タブないし電極タブ)]
図2に示すように、本発明に用いられる正極および負極タブ11、13は、最外層の電極の集電体(ないしこれに接続された電極端子板)に接続された正・負極リード15、17との間で接続されていてもよし、最外層の電極の集電体に接続された正・負極端子板ないし正・負極リードに接続してよいし(図示せず)、最外層の電極の集電体の一部を延長して形成してもよい(図示せず)など、特に限定されるべきものではない。なお、電池外装材19から電池外部に取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆しておいてもよい。
【0112】
また、本発明に用いられるタブは、既存のバイポーラ型ではない通常のリチウムイオン二次電池で用いられる公知の電極タブを用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。正極タブと負極タブとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極および負極タブは、材質の異なる金属(合金を含む)を多層に積層したものであってもよい。
【0113】
また、タブの金属抵抗は、タブ金属の種類にもよるが、通常1〜50Ω・m程度であり、比較のために便宜的にV/mで示すと10-7〜10-6V/m程度である。
【0114】
タブの厚さは、外装材シール部に挟まれている部分の気密性や防水性を高める観点からは薄い方が望ましく、一方、電気抵抗低減の観点からは厚い方が望ましいことから、電池の使用目的に応じて適宜決定すればよいが、通常50〜1000μm、好ましくは100〜300μmの範囲である。
【0115】
また、タブの電池外部への取り出し方としては、図1に示すように、正極タブと負極タブとを対向する辺から別々に取り出してもよいし、正極タブと負極タブとを同じ辺から取り出してもよいし、正極タブと負極タブとを隣接する辺から別々に取り出してもよいなど特に限定されるものではないが、これらの電池を複数接続して組電池を形成するには、図23や図24に示すような構成とするのが配線などの関係から都合がよいため、好ましくは図1に示すように、正極タブと負極タブとを対向する辺から別々に取り出すのが望ましいといえる。
【0116】
[電圧検知タブ]
本発明では、電池内のセル(単電池層)ごとの電圧を検知し、過充電や過放電状態になったセルをバイパスして充放電が行えるような電圧検知タブを各セルに設けておくのが望ましい。この電圧検知タブの一端はセルの集電体に接続し、もう一方の端を電池外部にまで取り出し、これらタブを電圧検知・バイパス制御回路等に接続するのが望ましい。これにより数十〜百数十セル(単電池層)ある電池内部の各単電池層の容量バラツキによる電池性能の低下を抑制することができ、電池寿命を高めることができる。特に、バイポーラ電池を車両の動力源として使用する場合には、信頼性と安定性が要求されるため、それぞれのバイポーラ電池及び該電池内の各単電池層(セル)が正常に機能しているか否かを常に監視する必要がある。このため、すべてのバイポーラ電池(通常、複数のバイポーラ電池を接続した組電池を、更に複数接続した複合組電池として車両に搭載されている)及び電池内のセルの電圧を常時監視し、劣化したバイポーラ電池及び電池内のセルが検知できるようにするのが望ましいためである。
【0117】
また、電極タブである正極タブ及び負極タブと、電圧検知タブとは、電池の異なる辺から取り出すのが配線などの都合上便利であるほか、シール部の気密性確保の観点からも望ましいといえる。
【0118】
更に、電圧検知タブには、各セルごとの電圧(4.2V程度)しか加わらないため、本発明の電極タブのように穴形状部や凹凸形状部を形成する必要はない。
【0119】
電圧検知タブには、上記電極タブと同様の材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。各電圧検知タブの材質は、同一の材質を用いるのが望ましいが、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、電圧検知タブは、材質の異なる金属(合金を含む)を多層に積層したものであってもよい。
【0120】
[電池外装材]
本発明では、従来と同様に電池の防水性、シール性を確保し、更に電池の軽量化を図り、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止する観点から、電池本体である電池積層体(ないし電池巻回体)全体を収納するための電池外装材として、高分子金属複合フィルムを用いてなるものである。かかる高分子金属複合フィルムとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを適宜適用することができるものであり、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)の層19bの両面をポリプロピレンフィルム等の絶縁体(好ましく耐熱性の絶縁体)の樹脂層(表皮樹脂層19a、金属層−タブ間樹脂層19c)で被覆した高分子金属複合フィルムなどを用いることができる。上記絶縁体(好ましく耐熱性の絶縁体)の樹脂層としては、例えば、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が挙げられ、これらを目的に応じて、表皮樹脂層19a側と金属層−タブ間樹脂層19c側とに適用すればよい。
【0121】
上記金属層19bとしては、高電圧に対する絶縁性よりも耐熱性や外部からの酸素や水蒸気や光(紫外線など)に対する高バリア性、更に折り曲げなどに対する強度に優れる軟質材が求められることから、アルミニウムが望ましい。該金属層の膜厚としては、上記特性を十分に発現させることができればよく、10〜100μm、好ましくは20〜50μmの範囲である。
【0122】
上記表皮樹脂層19aでは、熱融着性は必要ではなく、外部絶縁性、耐候性、耐擦過傷、外部からの酸素や水蒸気に対するバリア性、耐熱性などが求められることから、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(ポリエステル)(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンとポリエステルの積層フィルムなど所望の材料を選定すればよい。また、表皮樹脂層19aの膜厚も、上記特性を十分に発現させることができればよく、5〜50μm、好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0123】
上記金属層−タブ間樹脂層19cとしては、内部絶縁性、熱融着性、耐薬品性(電解液等に対する耐性)、酸素や水蒸気、更には充放電で発生するガス等に対するバリア性、耐熱性などが求められることから、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等など所望の材料を選定すればよい。また、金属層−タブ間樹脂層19cの膜厚も、上記特性を十分に発現させることができればよく、10〜100μm、好ましくは20〜50μmの範囲である。
【0124】
高分子金属複合フィルム全体の膜厚は、電池外装材に求められる上記機能を発揮することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常50〜150μm、好ましくは80〜120μmの範囲である。
【0125】
また、これら金属層、表皮樹脂層及び金属層−タブ間樹脂層は、それぞれ材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。また、図2に示すように、上下2枚の高分子金属複合フィルムを熱融着させて用いる場合、これら2枚の高分子金属複合フィルム内の各層の材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。
【0126】
本発明では、高分子金属複合フィルムを用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することによりシール部を形成し、発電要素9を収納し密封した構成とする。この場合、正極および負極タブ11、13と電池外装材19との接着領域Aが上記シール部(熱融着部)の一部に相当し、絶縁を確保した状態で、正極および負極タブ11、13の先端の取り出し部分が上記電池外装材19の外部に露出される構造とすればよい。また熱伝導性に優れた高分子金属複合フィルムなどを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。
【0127】
次に、本発明のバイポーラ電池の用途としては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。この場合には、本発明のバイポーラ電池を複数個接続して構成した組電池とすることが望ましい。すなわち、本発明のバイポーラ電池、特にバイポーラ型ポリマーリチウムイオン二次電池を少なくとも2個以上を用いて、並列接続、直列接続、並列−直列接続および直列−並列接続の少なくとも一つの接続方式を用いて構成した組電池、さらには複合組電池とすることにより、高容量、高出力の電源を形成することができる。そのため、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、比較的安価に対応することが可能になる。これらに関しては、後述する。
【0128】
次に、本発明のバイポーラ電池の製造方法としては、上述したタブへの穴形状部もしくは凹凸形状部の追加を除いては、特に限定されるべきものではなく、従来公知の各種の方法を適宜利用することができる。以下に、簡単に説明する。
【0129】
(1)正極用組成物の塗布
まず、適当な集電体を準備する。正極用組成物は通常はスラリー(正極用スラリー)として得られ、集電体の一方の面に塗布される。
【0130】
正極用スラリーは、正極活物質を含む溶液である。他成分として、導電助剤、バインダ、重合開始剤、電解質の原料(固体電解質用高分子ないしホストポリマー、電解液など)、支持塩(リチウム塩)、その他添加剤およびスラリー粘度調整溶媒などが任意で含まれる。すなわち、正極用スラリーは、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池と同様に、正極活物質のほか、導電助材、電解質の原料、支持塩(リチウム塩)、スラリー粘度調整溶媒、重合開始剤等を任意で含む材料を所定の比率で混合して作製することができる。
【0131】
電解質層に高分子ゲル電解質を用いる場合には、正極活物質微粒子同士を結びつける従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助材、溶媒などが含まれていればよく、高分子ゲル電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。電解質層として電解液を含浸させたセパレータを用いる場合も同様である。
【0132】
電解質の高分子原料(高分子ゲル電解質の原料のホストポリマーないし高分子固体電解質の高分子原料)は、PEO、PPO、これらの共重合体などが挙げられ、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有することが好ましい。この架橋性の官能基を用いて高分子電解質を架橋することによって、機械的強度が向上する。
【0133】
正極活物質、導電助剤、バインダ、リチウム塩に関しては、前述した化合物を用いることができる。
【0134】
重合開始剤は、重合させる化合物に応じて選択する必要がある。例えば、光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられ、熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、t−ヘキシルパーオキシピパレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
NMPなどのスラリー粘度調整溶媒は、正極用スラリーの種類に応じて選択する。
【0136】
正極活物質、リチウム塩、導電助剤の添加量は、バイポーラ電池の目的等に応じて調節すればよく、通常用いられる量を添加すればよい。重合開始剤の添加量は、高分子原料に含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。通常は高分子原料に対して0.01〜1質量%程度である。
【0137】
(2)正極層の形成
正極用スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去する。それと同時に、正極用スラリーによっては、架橋反応を進行させて、高分子固体電解質の機械的強度を高めてもよい。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された正極用スラリーに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。
【0138】
(3)負極用組成物の塗布
正極層が塗布された面と反対側の面に、負極活物質を含む負極用組成物(負極用スラリー)を塗布する。
【0139】
負極用スラリーは、負極活物質を含む溶液である。他成分として、導電助材、バインダ、重合開始剤、(固体電解質用高分子ないしホストポリマー、電解液など)、支持塩(リチウム塩)およびスラリー粘度調整溶媒などが任意で含まれる。使用される原料や添加量については、「(1)正極用組成物の塗布」の項での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0140】
(4)負極層の形成
負極用スラリーが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去する。それと同時に、負極用スラリーによっては、架橋反応を進行させて、高分子ゲル電解質の機械的強度を高めてもよい。この作業により、バイポーラ電極が完成する。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された負極用スラリーに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。かかる乾燥処理により、集電体上に負極層を形成する。
【0141】
(5)電解質層の形成
高分子固体電解質層を用いる場合には、例えば、高分子固体電解質の原料高分子、リチウム塩等をNMPのような溶媒に溶解させて調製した溶液を硬化させることによって製造される。また、高分子ゲル電解質層を用いる場合には、例えば、高分子ゲル電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等からなるプレゲル溶液を不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。また、不織布セパレータに高分子ゲル電解質を保持させてなる高分子ゲル電解質層を用いる場合には、セパレータに、例えば、高分子ゲル電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等からなるプレゲル溶液を含浸させて、不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。不織布セパレータに固体高分子電解質を保持させてなる高分子固体電解質層を用いる場合には、セパレータに、例えば、高分子固体電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等を粘度調整剤に溶解してなる溶液を含浸させて、不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。また、セパレータに電解液を保持させてなる液体電解質層を用いる場合には、セパレータに電解液を含浸させればよく、例えば、電解液含浸前のセパレータとバイポーラ電極を積層した後に、電解液を各セパレータに含浸させてもよい。
【0142】
例えば、上記電極の正極層および/または負極層上に、調製された上記溶液またはプレゲル溶液を塗布し、所定の厚さの電解質層またはその一部(電解質層厚さの半分程度の電解質膜)を形成する。その後、電解質層(膜)が積層された電極を不活性雰囲気下で硬化または加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって、電解質の機械的強度を高め、電解質層(膜)を製膜形成する(完成させる)。
【0143】
あるいは、別途、電極間に積層される電解質層またはその一部(電解質層厚さの半分程度の電解質膜)を準備する。電解質層(膜)ないしセパレータに高分子ゲル電解質を保持させてなる高分子ゲル電解質層(膜)は、上記溶液またはプレゲル溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど適当なフィルム上に塗布し、不活性雰囲気下で硬化または加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造されるか、あるいは、上記溶液またはプレゲル溶液を、ポリプロピレン(PP)製など適当な不織布セパレータに含浸し、不活性雰囲気下で硬化または加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。
【0144】
硬化または加熱乾燥は真空乾燥機(真空オーブン)などを用いることができる。加熱乾燥の条件は溶液またはプレゲル溶液に応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は30〜110℃で0.5〜12時間である。
【0145】
電解質層(膜)の厚さは、スペーサなどを用いて制御できる。光重合開始剤を用いる場合には、光透過性のギャップに流し込み、乾燥及び光重合ができるような紫外線照射装置を用いて紫外線を照射して、電解質層内のポリマーを光重合させ架橋反応を進行させて製膜するとよい。ただし、この方法に限定されないことは勿論である。重合開始剤の種類に応じて、放射線重合、電子線重合、熱重合などを使いわける。
【0146】
また、上記で用いるフィルムは、製造過程で80℃程度に加熱されることもありえるため、当該温度程度での十分な耐熱性を有し、さらに溶液またはプレゲル溶液との反応性がなく、製造過程で剥離し除去する必要上、離型性に優れたものを用いるのが望ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンフィルムなどを使用することができるが、これらに限定されるべきものではない。
【0147】
なお電解質層の幅は、バイポーラ電極の集電体サイズよりも若干小さくすることが多い。
【0148】
上記溶液またはプレゲル溶液の組成成分やその配合量などについては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものである。
【0149】
なお、電解液を染み込ませたセパレータは、バイポーラ型でない従来の溶液系のバイポーラ電池に用いられる電解質層と同様の構成であり、従来公知の各種製造方法、例えば、電解液を染み込ませたセパレータをバイポーラ電極に挟み込んで積層する方法や真空注液法などにより製造できるため、以下、詳しい説明は省略する。
【0150】
(6)バイポーラ電極と電解質層との積層
(i)電解質層(膜)が一面または両面に形成されたバイポーラ電極の場合には、高真空下で十分加熱乾燥してから、電解質層(膜)が形成された電極を適当なサイズに複数個切りだし、切り出された電極を直接貼り合わせて、バイポーラ電池本体(発電要素)を作製する。
【0151】
(ii)別々にバイポーラ電極と電解質層(膜)を作製した場合には、高真空下で十分加熱乾燥してから、バイポーラ電極と電解質層(膜)をそれぞれを適当なサイズに複数個切りだす。切りだされたバイポーラ電極と電解質層(膜)とを所定数張り合わせて、バイポーラ電池本体(発電要素)を作製する。
【0152】
上記発電要素の積層数は、バイポーラ電池に求める電池特性を考慮して決定される。
また、正極側の最外層には、集電体上に正極層のみを形成した電極を配置する。負極側の最外層には、集電体上に負極層のみを形成した電極を配置する。バイポーラ電極と電解質層(膜)とを積層、あるいは電解質層(膜)が形成された電極を積層させてバイポーラ電池を得る段階は、電池内部に水分等が混入するのを防止する観点から、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、アルゴン雰囲気下や窒素雰囲気下でバイポーラ電池を作製するとよい。
【0153】
(7)絶縁層の形成
本発明では、例えば、発電要素の電極形成部の周囲を、所定の幅でエポキシ樹脂(前駆体溶液)等に浸漬または樹脂を注入ないし含浸する。いずれの場合にも、事前に電圧検知タブや電極端子板や電極リードや電極タブ、あるいはこれらを接続する必要のある集電体部分等を離型性マスキング材等を用いてマスキング処理しておく。その後エポキシ樹脂を硬化させて、絶縁部を形成し、その後、マスキング材を剥がせばよい。
【0154】
(8)端子板、電極リード及びタブ(端子)の接続
バイポーラ電池本体(電池積層体)の両最外層の集電体上にそれぞれ、正極端子板、負極端子板を設置して接続し、該正極端子板、負極端子板に正極リード、負極リードに接合(電気的に接続)し、さらに正極リード、負極リードに正極タブ、負極タブを接合(電気的に接続)する(図2参照)。これら端子板、リードおよびタブの接合方法としては、接合温度の低い超音波溶接等が好適に利用し得るものであるが、これに限定されるべきものではなく、従来公知の接合方法を適宜利用することができる。また、本発明では、単電池層の電圧を検知し、過充電や過放電状態になれば、バイパスすることができるような電圧検知タブを各集電体に接続し、これらを電池外部にまで取り出し、これらタブを電圧検知・バイパス制御回路に接続するのが望ましい。これにより数十〜百数十セル(単電池層)ある電池内部の各単電池層の容量バラツキによる電池性能の低下を抑制することができ、電池寿命を高めることができる。
【0155】
(9)パッキング(電池の完成)
最後に、電池積層体全体を、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池外装材で封止し、バイポーラ電池を完成させる。封止の際には、正極タブ、負極タブ、更には電圧検知タブの一端を電池外部に取り出す。
【0156】
次に、本発明では、上記のバイポーラ電池を、少なくとも2以上バイポーラ電池を直列、並列、直列と並列の混合に接続して組電池とすることができる。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本のバイポーラ電池の組み合わせで対応が可能になる。
その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なるバイポーラ電池を設計、生産する必要がなく、基本となるバイポーラ電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。以下に、当該組電池の代表的な実施形態につき、図面を用いて簡単に説明する。
【0157】
図23に本発明のバイポーラ電池(24V、50mAh)を2直20並に接続した組電池(42V1Ah)の模式図を示す。並列部分のタブは銅のバスバー56、58で接続し、直列部分はタブ11、13同士を振動溶着して接続した。直列部分の端部を端子42、44に接続して、正負の端子を構成している。電池の両側には、バイポーラ電池1の各層の電圧を検知する検知タブ12を取り出し、それらの検知線53を組電池50の前部に取り出している。詳しくは、図23に示す組電池50を形成するには、バイポーラ電池1を5枚並列にバスバー56で接続し、5枚並列にしたバイポーラ電池1をさらに電極タブ同士を接続して2枚直列にし、これらを4層積層して並列にバスバー58で接続して金属製の組電池ケース55に収納する。このように、バイポーラ電池1を任意の個数直並列に接続することによって、所望の電流、電圧、容量に対応できる組電池50を提供することができる。該組電池50には、正極端子42、負極端子44が金属製の組電池ケース55の側面前部に形成されており、電池を直並列に接続後、例えば、各バスバー56と各正極端子42、負極端子44とが端子リード59で接続されている。また、該組電池50には、電池電圧(各単電池層、更にはバイポーラ電池の端子間電圧)を監視するために検知タブ端子54が金属製の組電池ケース55の正極端子42及び負極端子44が設けられている側面前部に設置されている。そして、各バイポーラ電池1の電圧検知タブ12が全て検知線53を介して検知タブ端子54に接続されている。また、組電池ケース55の底部には、外部弾性体52が取り付けられており、組電池50を複数積層して複合組電池を形成するような場合に、組電池50間距離を保ち、防振性、耐衝撃性、絶縁性、放熱性などを向上することができる。
【0158】
また、この組電池50には、使用用途に応じて、上記検知タブ端子54以外にも各種計測機器や制御機器類を設けてもよい。さらにバイポーラ電池1の電極タブ(11、13)同士や検知タブ12と検知線53とを連結するためには、超音波溶接、熱溶接、レーザ溶接または電子ビーム溶接により、または、リベットのようなバスバー56、58を用いて、またはカシメの手法を用いて、連結するようにしてもよい。さらにバスバー56、58と端子リード59等とを連結するためにも、超音波溶接、熱溶接、レーザ溶接または電子ビーム溶接を用いてもよいなど、特に限定されるものではない。
【0159】
上記外部弾性体52にも、本発明の電池で用いた樹脂群と同様の材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
また、本発明の組電池では、本発明のバイポーラ電池と、該バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした電池(バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池等)と、を並列に接続したものであってもよい。すなわち、組電池を形成するバイポーラ電池は、本発明のバイポーラ電池と従来のバイポーラ型ではないリチウムイオン二次電池等とを混在させてもよい。これにより、出力重視のバイポーラ電池と、エネルギー重視の一般リチウムイオン二次電池の組み合わせでお互いの弱点を補う組電池ができ、組電池の重量・サイズを小さくすることができる。それぞれのバイポーラ電池とバイポーラ型でない電池をどの程度の割合で混在させるかは、組電池として要求される安全性能、出力性能に応じて決める。
【0161】
また、図24にバイポーラ電池A(42V、50mAh)と一般リチウムイオン二次電池B(4.2V、1Ah)の10直(42V)を並列に連結した組電池を示す。一般電池Bとバイポーラ電池Aは電圧が等しくなり、その部分で並列接続を形成している。この組電池50'は、出力の分担をバイポーラ電池Aが有し、エネルギーの分担を一般電池Bが有する構造である。これは、出力とエネルギーを両立することが困難な組電池において、非常に有効な手段である。この組電池50'でも、並列部分及び図の横方向に隣り合う一般電池B間を直列接続する部分のタブは銅のバスバー56で接続し、図の縦方向に隣り合う一般電池B間を直列接続する部分はタブ11、13同士を振動溶着して接続した。一般電池Bとバイポーラ電池Aを並列接続している部分の端部を端子42、44に接続して、正負の端子を構成している。バイポーラ電池Aの両側には、バイポーラ電池1の各層の電圧を検知する検知タブ12を取り出し、それらの検知線(図示せず)を組電池50の前部に取り出している以外は、図23の組電池50と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付した。詳しくは、図24に示す組電池50'を形成するには、一般電池Bの10枚を端から順番にバスバー56および振動溶着して直列に接続した。さらに、バイポーラ電池Aと直列接続された両端の一般電池Bとをそれぞれバスバー56で並列に接続して金属製の組電池ケース55に収納する。このように、バイポーラ電池Aを任意の個数直並列に接続することによって、所望の電流、電圧、容量に対応できる組電池50'を提供することができる。
【0162】
該組電池50'にも、正極端子42、負極端子44が金属製の組電池ケース55の側面前部に形成されており、電池A、Bを直並列に接続後、例えば、各バスバー56と各正極端子42、負極端子44とが端子リード59で接続されている。また、該組電池50'には、電池電圧(バイポーラ電池Aの各単電池層、更にはバイポーラ電池A及び一般電池Bの端子間電圧)を監視するために検知タブ端子54が金属製の組電池ケース55の正極端子42及び負極端子44が設けられている側面前部に設置されている。そして、各バイポーラ電池A(更には一般電池B)の検知タブ12が全て検知線(図示せず)を介して検知タブ端子54に接続されている。また、組電池ケース55の低部には、外部弾性体52が取り付けられており、組電池50'を複数積層して複合組電池を形成するような場合に、組電池50'間距離を保ち、防振性、耐衝撃性、絶縁性、放熱性などを向上することができる。
【0163】
また本発明の組電池では、更に上記のバイポーラ電池を直並列接続して第1組電池ユニットを形成するとともに、この第1組電池ユニットの端子間電圧と電圧を同一にするバイポーラ電池以外の二次電池が直並列接続されてなる第2組電池ユニットを形成し、この第1組電池ユニットと第2組電池ユニットを並列接続することによって組電池としてもよいなど、特に限定されるものではない。
【0164】
なお、組電池の他の構成要件に関しては、何ら限定されるべきものではなく、既存のバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池を用いた組電池の構成要件と同様のものが適宜適用することができるものであり、従来公知の組電池用の構成部材および製造技術が利用できるため、ここでの説明は省略する。
【0165】
次に、上記の組電池を、組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することが可能になる。すなわち、本発明の複合組電池は、組電池(本発明のバイポーラ電池だけで構成したものの他、本発明のバイポーラ電池と他のバイポーラ型でない電池とで構成したものを含む)を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続したことを特徴とするものであり、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる沢山の組電池種を製造しなくてよいため、複合組電池コストを減少することができる。
【0166】
複合組電池としては、例えば、図23に記載のバイポーラ電池を用いた組電池(42V、1Ah)を6並に接続した複合組電池(42V、6Ah)の模式図が図25である。複合組電池を構成する各組電池は連結版と固定ねじにより一体化し、組電池の間に弾性体を設置して防振構造を形成している。また、組電池のタブは板状のバスバーで連結している。すなわち、図25に示したように、上記の組電池50を6組並列に接続して複合組電池60とするには、各組電池ケース55の蓋体に設けられた組電池50のタブ(正極端子42および負極端子44)を、板状のバスバーである外部正極端子部、外部負極端子部を有する組電池正極端子連結板62、組電池負極端子連結板64を用いてそれぞれ電気的に接続する。
【0167】
また、各組電池ケース55の両側面に設けられた各ネジ孔部(図示せず)に、該固定ネジ孔部に対応する開口部を有する連結板66を固定ネジ67で固定し、各組電池50同士を連結する。また、各組電池50の極端子42および負極端子44は、それぞれ正極および負極絶縁カバーにより保護され、適当な色、例えば、赤色と青色に色分けすることで識別されている。また、組電池50の間、詳しくは組電池ケース55の底部に外部弾性体52を設置して防振構造を形成している。
【0168】
このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池は、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能である。
【0169】
また、本発明の車両は、上記組電池および/または上記複合組電池を搭載することを特徴とするものである。これにより、軽く小さい電池にすることでスペース要望の大きな車両要望に合致できる。電池のスペースを小さくすることで、車両の軽量化も達成できる。
【0170】
図26に示したように、複合組電池60を、車両(例えば、電気自動車等)に搭載するには、電気自動車70の車体中央部の座席(シート)下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、電池を搭載する場所は、座席下に限らず、車両の床下、シートバック裏、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでもよい。
【0171】
なお、本発明では、複合組電池60だけではなく、使用用途によっては、組電池50を車両に搭載するようにしてもよいし、これら複合組電池と組電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明の複合組電池または組電池を駆動用電源や補助電源として搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車、燃料電池自動車やこれらのハイブリッドカーが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、本発明の組電池および/または複合組電池を、例えば、駆動用電源や補助電源等として搭載することのできる車両としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0172】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に限定されるものではない。
【0173】
図27は、実施例および比較例のバイポーラ電池の構成と評価結果とを示す。
【0174】
<バイポーラ電池の製造方法>
実施例1を例として、バイポーラ電池の製造方法について説明する。その他の実施例、および比較例は、図27中に記載されたスペックのタブを用いた以外は、実施例1と概ね同様に製造した。
【0175】
まず、基準箔としてのSUS15μmにLi−Mn系の正極材料(平均粒径5μm品)を15μm塗布し、その後、正極の反対面に、非晶質炭素材量のハードカーボン負極材料(平均粒径6μm品)を15μm塗布した。
【0176】
加架橋型ゲル電解質の前駆体をポリエステル不織布セパレータ(25μm厚さ:硬度JIS A 60)に染込ませ、電極材の上に重ねた。
【0177】
両側の電極は同様の箔に同様の正極材、若しくは負極材だけを片面に塗布した。
【0178】
そして、これらの電極を重ね(両側各1枚+中央部8層)、10層構造のバイポーラ電池を構成した。
【0179】
このバイポーラ電極の正極端側にはAlのタブ(200μm厚で幅55mm(断面積11mm))を振動溶着し、負極端側にはCuのタブ(200μm厚で幅55mm(断面積11mm))を振動溶着した。このようにタブと一体となったバイポーラ電極の全体を電池外装材(ラミネート材)で封止した(外観図は図1参照)。
【0180】
ここで、タブの穴形状部の開口形状は、5mm×10mm(断面積5mm)とし、55mmのタブ幅に穴形状部を4箇所形成し、両側にも5mmの切り欠き形状(断面積5mm)をつけた(図6参照)。ラミネート材は、図6に示す接着領域Aの部分のみに接着した。
【0181】
このバイポーラ電池を約80℃で約2時間加熱架橋し、10層バイポーラ電池を製造した。
【0182】
<実施例および比較例の構成>
実施例1では、層状をなす構成単位の数(積層数)が10層、タブが図6の構造、高分子接着層を構成する樹脂が変性PP、正極活物質がLi−Mn系複合酸化物、負極活物質が非結晶性炭素材、である42Vのバイポーラ電池を使用した。前述したように、正極端側のタブはAlのタブ(200μm厚で幅55mm(断面積11mm))、負極端側のタブはCuのタブ(200μm厚で幅55mm(断面積11mm))である(特に言及しない限り以降において同じ)。タブの穴形状部を開口形状が5mm×10mm(断面積5mm)となるように4箇所形成し、両側にも5mmの切り欠き形状(断面積5mm)を形成した。
【0183】
実施例2では、タブが図7の構造であること以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。タブの穴形状部を開口形状が5mm×10mm(断面積5mm)となるように5箇所形成した。
【0184】
実施例3では、タブが図8の構造であること以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。
【0185】
実施例4では、タブが図9の構造であること以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。タブの穴形状部を開口形状が底辺5mm×高さ10mmの平行四辺形(断面積5mm)となるように5箇所形成した。
【0186】
実施例5では、タブが図10の構造であること以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。タブの穴形状部を開口形状が底辺5mm×高さ10mmの平行四辺形(断面積5mm)となるように5箇所形成した。
【0187】
実施例6では、タブが図11の構造であり、高分子接着層を有しないこと以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。タブの凹形状部を開口形状が5mm×10mmとなるように4箇所形成し、両側には5mmの切り欠き形状(断面積5mm)を形成した。凹形状部は、深さ約50μmとなるようにケミカルエッチングにより表裏ともに形成した。
【0188】
実施例7では、タブが図13の構造であること以外は実施例6と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。タブの凹形状部を開口形状が5mm×10mmとなるように5箇所形成した。凹形状部は、深さ約50μmとなるようにケミカルエッチングにより表裏ともに形成した。
【0189】
実施例8では、タブが図14の構造であること以外は実施例6と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。凹形状部は、深さ約50μmとなるようにケミカルエッチングにより表裏ともに形成した。
【0190】
実施例9では、タブが図15の構造、正極活物質がLi−Ni系複合酸化物であること以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。開口形状が横5mm×縦3mm(断面積5mm)の穴を5箇所形成してなる列を3列形成した。列間の間隔は1mmとした。両側には5mmの切り欠き形状(断面積5mm)を形成した。断面積比は、タブの引き出し方向に垂直な、穴を通る平面で切断した断面において計算した。
【0191】
実施例10では、タブが図16の構造であること以外は実施例9と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。開口形状が横5mm×縦3mm(断面積5mm)の穴を5箇所形成してなる列を3列形成した。列間の間隔は1mmとした。断面積比は、タブの引き出し方向に垂直な、穴を通る平面で切断した断面において計算した。
【0192】
実施例11では、タブが図17の構造であること以外は実施例9と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。穴の形状は基本的に実施例9と同じであり、3つの列R〜Rのうちの真中の列Rにおける穴の位置をW方向にずらした。断面積比は、タブの引き出し方向に垂直な、真中の列Rの穴を通る平面で切断した断面において計算した。
【0193】
実施例12では、タブが図18の構造であること以外は実施例9と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。穴の形状は基本的に実施例10と同じであり、3つの列R〜Rのうちの真中の列Rにおける穴の位置をW方向にずらした。断面積比は、タブの引き出し方向に垂直な、列Rの穴を通る平面で切断した断面において計算した。
【0194】
実施例13では、タブが図19の構造であり、高分子接着層を有しておらず、負極活物質が結晶性炭素材であること以外は実施例9と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。接着領域におけるタブの拡張部(タブ11mb、13mb)を200μm厚で幅55mmとした。タブの穴形状部の開口形状を5mm×10mmとし、両側にも5mmの切り欠き形状を形成した。
【0195】
実施例14では、タブが図20の構造であること以外は実施例13と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。接着領域におけるタブの拡張部(タブ11mb、13mb)を200μm厚で幅55mmとした。タブの穴形状部の開口形状を5mm×10mmとした。
【0196】
実施例15では、積層数が10層、タブが図21の構造、高分子接着層を構成する樹脂が変性PP、正極活物質がLi−Ni系複合酸化物、負極活物質が結晶性炭素材、である42Vのバイポーラ電池を使用した。凹形状部は、深さ約50μmとなるようにケミカルエッチングにより表裏ともに形成した。
【0197】
実施例16では、タブが図22の構造であること以外は実施例15と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。タブの凹形状部の開口形状を5mm×10mmとし、凹形状部は、深さ約50μmとなるようにケミカルエッチングにより表裏ともに形成した。
【0198】
実施例17では、積層数が100層であること以外は実施例2と同様の構成である420Vのバイポーラ電池を使用した。
【0199】
比較例1では、図28に示すように、タブが平板であり、高分子接着層を有しないこと以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。
【0200】
比較例2では、図29に示すように、タブが平板であること以外は実施例1と同様の構成であるバイポーラ電池を使用した。
【0201】
なお、図27において、剛性比は、タブにおける剛性の低い部分の剛性を、他の一般部の剛性で割った値を示す。剛性として、断面2次モーメントの値を使用した。なお、実施例3においては(図8参照)、一般部の剛性は、穴の存在する部分と穴の存在しない部分との平均とした。また、断面積比は、接着領域におけるタブの断面積を、接着領域外におけるタブの断面積で割った値を示す。
【0202】
<試験方法>
1.共振点シフト量の測定
バイポーラ電池の略中央部(図1の平面図において略中央部)に、加速度ピックアップを設定し、インパルスハンマーによってハンマリングしたときの加速度ピックアップの振動スペクトルを測定した。加速度ピックアップの設定方法は、JIS B 0908(振動及び衝撃ピックアップの校正方法・基本概念)に準拠した。測定された振動スペクトルをFFT分析器により解析し、周波数(Hz)と加速度(dB)の次元に変換した。得られた周波数に関して、平均化とスムージングとを行い、振動伝達率スペクトルのグラフを得た。
【0203】
得られた振動伝達率スペクトルのグラフの一次共振周波数を、比較例1の振動伝達率スペクトルのグラフの一次共振周波数と比較し、比較例1に関する一次共振周波数からの変化量(Hz)を共振点シフト量とした。
【0204】
2.絶縁性の検査
絶縁抵抗計を用い、各々の実施例および比較例の電池について、タブと電池外装材の金属層との間の抵抗値を測定した。結果を図27に示す。図27では、500Vを印加した時に100MΩ以上の絶縁抵抗を有したものを○とし、それに満たない場合を×とした。
【0205】
<評価結果>
本発明の各実施例では、共振点シフト量として50〜150Hzが得られた。これにより、バイポーラ電池の共振周波数を高周波数側へ移動させて車両上で通常発生する振動領域から外すことが可能となる。
【0206】
図30は、バイポーラ電池の振動の低減および共振点の移動を示す振動伝達率スペクトルのグラフの一例である。図30は、上記の実施例1および比較例1の振動伝達率スペクトルのグラフをあわせて示すものである。図30に示すように、一次共振周波数が、60Hzから170Hzに移動されていることがわかる。しかも、振動伝達率スペクトルのグラフの中で最も振動伝達率の大きいピーク値(dB)について比較例1と実施例1とを比較すれば、比較例1のピークP1に対して、実施例1のピークP2は、ピーク値が低減されていることがわかる。
【0207】
なお、共振周波数のシフトに関しては、剛性比の方が断面積比よりも効果的である。断面積比は、接着樹脂とタブ金属の接着面積に影響を与えるため、その比が大きい方が振動の減衰効果が大きくなり、この値が大きいとシフトされた共振点のピーク中心がなだらかになりこの値が小さいと尖ることなる。
【0208】
また、本発明の各実施例では、いずれも絶縁性に優れ、タブと電池外装材フィルム内の金属層との間に500Vが印加された場合でも絶縁が確保されることが確認できた。したがって、車両での使用電圧の上限である500Vのバイポーラ電池を作製しても、電池のタブと電池外装材フィルム内の金属層の間で十分な絶縁性を確保できるため、車両用電源に好適に利用できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明に係るバイポーラ電池の一実施形態を模式的に表わした平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】バイポーラ電池の振動モデルを示す模式図である。
【図5】図3に示される断面構造の振動モデルを示す模式図である。
【図6】バイポーラ電池におけるタブの一例を説明するための図である。
【図7】バイポーラ電池におけるタブの他の例を示す図である。
【図8】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を説明するための図である。
【図9】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図10】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図11】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図12】図11におけるタブと電池外装材との接着領域付近の拡大断面図である。
【図13】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図14】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図15】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図16】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図17】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図18】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図19】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図20】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図21】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図22】バイポーラ電池におけるタブのさらに他の例を示す図である。
【図23】本発明のバイポーラ電池を2直20並に接続した組電池の模式図を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図24】バイポーラ電池と一般リチウムイオン二次電池Bの10直を並列に連結した組電池を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図25】図23に示される組電池を6並に接続した複合組電池の模式図を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図26】複合組電池を搭載した状態の電気自動車を示す模式図である。
【図27】実施例および比較例のバイポーラ電池の構成と評価結果とを示す図である。
【図28】バイポーラ電池におけるタブの比較例を示す図である。
【図29】バイポーラ電池におけるタブの比較例を示す図である。
【図30】バイポーラ電池の振動の低減および共振点の移動を示す振動伝達率スペクトルのグラフの一例である。
【符号の説明】
【0210】
1 バイポーラ電池、
3 バイポーラ電極、
3a 最上層の電極、
3b 最下層の電極、
5 電解質層、
7 絶縁層、
9 発電要素、
11,11a〜11p タブ、
13,13a〜13p タブ、
19 電池外装材(高分子金属複合フィルム)、
19a 表皮樹脂層、
19b 金属層、
19c 金属層−タブ間樹脂層、
21 高分子接着層、
31,31a,31b,31c 穴形状部、
32 外縁、
35 凹形状部、
50,50' 組電池、
60 複合組電池、
70 電気自動車、
A バイポーラ電池、
B 一般リチウムイオン二次電池、
接着領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と負極層の組み合わせの構成を複数有する発電要素と、
前記発電要素を被覆する外装材としての高分子金属複合フィルムと、
前記高分子金属複合フィルムの内部から外部へ取り出されるタブとを有し、
前記タブの少なくとも一部が、当該タブの他の部分と剛性が異なることを特徴とするラミネート電池。
【請求項2】
前記タブと前記高分子金属複合フィルムとの接着領域における当該タブの断面積は、前記接着領域外における当該タブの断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のラミネート電池。
【請求項3】
前記タブと前記高分子金属複合フィルムとの接着領域における当該タブの断面積は、前記接着領域外における当該タブの断面積の50〜90%であることを特徴とする請求項2に記載のラミネート電池。
【請求項4】
前記接着領域における前記タブの断面積が前記接着領域外における当該タブの断面積に対して減少されている部分に、接着用の樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のラミネート電池。
【請求項5】
前記接着領域において、前記タブの幅方向両側に位置する一対の外縁が、それぞれ一つの直線を形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のラミネート電池。
【請求項6】
前記接着領域において、前記タブは穴形状部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のラミネート電池。
【請求項7】
前記穴形状部の長手方向は、当該ラミネート電池の長手方向に対して所定の角度で傾斜していることを特徴とする請求項6に記載のラミネート電池。
【請求項8】
前記穴形状部は、前記接着領域内で、タブの取り出し方向において少なくとも2つに分離されて形成されることを特徴とする請求項6または7に記載のラミネート電池。
【請求項9】
分離された穴形状部の、タブの取り出し方向と直交する方向における位置が、少なくとも一部において相互にずれていることを特徴とする請求項8に記載のラミネート電池。
【請求項10】
前記接着領域における前記タブの周囲に、少なくとも1層以上の高分子接着層をさらに有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のラミネート電池。
【請求項11】
前記高分子接着層の樹脂の硬度は、前記高分子金属複合フィルムにおける接着用の樹脂の硬度よりも小さいことを特徴とする請求項10に記載のラミネート電池。
【請求項12】
前記高分子接着層の樹脂の硬度は、前記高分子金属複合フィルムにおける接着用の樹脂の硬度の30〜80%であることを特徴とする請求項11に記載のラミネート電池。
【請求項13】
前記正極層は、Li−Mn系複合酸化物またはLi−Ni系複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載のラミネート電池。
【請求項14】
前記負極層は、結晶性炭素材または非結晶性炭素材を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載のラミネート電池。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載のラミネート電池を複数個、直列、並列、または直列と並列の混合に接続したことを特徴とする組電池。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1つに記載のラミネート電池と、
該ラミネート電池と正極層および負極層の材料を同一とし、該ラミネート電池の前記発電要素における構成単位の数だけ直列に接続することにより電圧を該ラミネート電池と同一にした電池と、
を並列に接続したことを特徴とする組電池。
【請求項17】
請求項15または16に記載の組電池を複数個、直列、並列、または直列と並列の複合接続したことを特徴とする複合組電池。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1つに記載の組電池または複合組電池を搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−164752(P2006−164752A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354493(P2004−354493)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】