説明

電流検出回路およびそれを用いた受光装置ならびに電子機器

【課題】受光デバイスに流れる電流を正確に検出可能な電流検出回路を提供する。
【解決手段】第1トランジスタQ1は、フォトトランジスタ210の電流経路上に設けられる。第1抵抗R10は、第1トランジスタQ1の一端と、電源ライン間に設けられる。第2トランジスタQ2は、第1トランジスタQ1とともにカレントミラー回路を構成し、第1トランジスタQ1に流れる電流を所定係数倍し、一端の電位が固定された充電キャパシタCchgを充電する。第2抵抗R12は、第2トランジスタQ2の一端と、電源ライン間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光デバイスに流れる電流を検出する電流検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな電子機器において、外部から入射する光を測定し、測定した受光量に応じた信号処理を行っている。このような例としては、照度センサ、赤外線リモコンの受光装置などが挙げられる。光を受光する受光デバイスとしては、フォトトランジスタやフォトダイオード、CCD(Charge Coupled Device)などが広く用いられている。
【0003】
フォトトランジスタやフォトダイオードは、受光量に応じた電流を出力する。したがって、受光装置は、これらの受光デバイスに流れる電流を増幅し、あるいは電圧変換するなどして信号処理を行っている。たとえば、特許文献1には、演算増幅器を用いた受光回路の構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−216984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、従来の受光装置においては、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの受光デバイスに対して直列に抵抗を接続し、抵抗に発生する電圧に対して信号処理を行うものが一般的であった。ところが、この回路構成では、受光デバイスに流れる光電流が変化すると、抵抗の電圧降下が変化することになる。その結果、受光デバイスと電流検出回路の接続点、すなわちフォトダイオードのカソードや、フォトトランジスタのコレクタの電位が変動することになり、受光デバイスのバイアス状態が変化し、同一の光量が入射していても、発生する光電流の電流値が変動してしまう。
【0006】
さらに、光電流が増加し、抵抗の電圧降下が大きくなると、フォトトランジスタのコレクタエミッタ間電圧が小さくなっていくため、フォトトランジスタが動作しなくなってしまうため、ダイナミックレンジに制約を受ける場合があった。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、受光デバイスのバイアス状態を保ち、安定した光電流の検出が可能な電流検出回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、受光デバイスに流れる電流を検出する電流検出回路である。この電流検出回路は、受光デバイスの電流経路上に設けられた第1トランジスタと、第1トランジスタの一端と、電位の固定された端子間に設けられた第1抵抗と、第1トランジスタとともにカレントミラー回路を構成し、第1トランジスタに流れる電流を所定係数倍して本電流検出回路の出力とする第2トランジスタと、第2トランジスタの一端と、電位の固定された端子間に設けられた第2抵抗と、を備える。
【0009】
この態様によると、受光デバイスと第1トランジスタの接続点の電位は、受光デバイスに流れる光電流の大きさにかかわらずほぼ一定値に保たれるため、受光デバイスのバイアス状態を保つことができ、光電流を安定に検出することができる。
【0010】
電流検出回路は、第2抵抗と並列に接続された調節抵抗をさらに備えてもよい。この場合、本電流検出回路に接続される受光デバイスの種類、特性、あるいはばらつきに応じて、カレントミラー回路の第2トランジスタのエミッタ側もしくはソース側のインピーダンスを調節することができ、安定した光電流の検出が可能となる。
【0011】
第2トランジスタのサイズを第1トランジスタのサイズより大きく設定し、第2抵抗の抵抗値を、第1抵抗の抵抗値より大きく設定してもよい。この場合、カレントミラー回路の入力電流に対して、出力電流を低く設定することができるため、回路の消費電流を低減し、あるいは電流電圧変換に使用するキャパシタの容量値を小さくすることができる。
【0012】
第2トランジスタに流れる電流を容量に充電し、電圧に変換して出力してもよい。カレントミラー回路の出力電流によって、容量に充電することによって、光電流を積分して電圧変換することができ、受光デバイスに入射した光量を検出することができる。
【0013】
第1、第2トランジスタ、第1、第2抵抗をひとつの半導体基板上に一体集積化するとともに、調節抵抗を半導体基板の外部に接続してもよい。この場合、本電流検出回路を用いたセットの製造段階、あるいは検査段階において、回路特性を調節することができ、回路特性およびフォトトランジスタのばらつきに対する歩留まりの向上を図ることができる。
【0014】
本発明の別の態様は、受光装置である。この受光装置は、受光デバイスと、受光デバイスに流れる光電流を検出する上述の電流検出回路と、を備える。受光デバイスは、フォトトランジスタあるいはフォトダイオードであってもよい。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、発光デバイスと、発光デバイスから発せられた光が、外部の物体により反射した光を検出する受光装置と、を備える。発光デバイスは、受光装置により検出した反射光の光量が所定値に達すると、発光を停止してもよい。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電流検出回路によれば、安定した光検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本実施の形態に係る電子機器300の構成を示す図である。本実施の形態に係る電子機器300は、たとえば、カメラ付き携帯電話端末であり、フラッシュを備えている。電子機器300は、フラッシュを発光した後、反射して戻ってきた光を検出する受光装置を備えており、所定の光量を検出すると、フラッシュの発光を停止するものである。
【0019】
電子機器300は、電池310、DC/DCコンバータ320、発光デバイス330、発光制御部340、発光制御トランジスタ350、受光装置200を備える。
電池310は、Liイオン電池などであり、3V〜4V程度の電池電圧Vbatを出力する。DC/DCコンバータ320は、発光デバイス330を駆動するために、電池電圧Vbatを300V程度まで昇圧する。DC/DCコンバータ320により生成される駆動電圧Vdrvは、発光デバイス330へと供給される。
【0020】
発光デバイス330は、たとえばキセノンチューブランプであって、300V程度まで昇圧された駆動電圧Vdrvがその一端に印加されている。発光デバイス330の他端には、発光制御トランジスタ350が接続される。発光制御トランジスタ350としては、高耐圧のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが用いられる。発光制御トランジスタ350のゲートには、発光制御部340から出力される発光制御信号SIG1が入力される。
【0021】
発光制御部340には、ユーザがフラッシュをオンにすると、シャッターのタイミングと同期してハイレベルとなる制御信号CNTが入力されている。発光制御部340は後述のように、制御信号CNTにもとづいて発光制御信号SIG1をハイレベルに切り換える。発光制御信号SIG1がハイレベルとなると、遅延時間τ経過後に発光制御トランジスタ350がオンし、発光デバイス330が発光する。遅延時間τは、キセノンチューブランプの特性で決まる。
【0022】
また、発光制御部340は、制御信号CNTにもとづき、第1制御信号CNT1〜第3制御信号CNT3を生成し、受光装置200へと出力する。受光装置200は、発光制御部340から出力される第1制御信号CNT1〜第3制御信号CNT3によって、受光のためのスタンバイ状態へと遷移する。その後、受光装置200は、発光デバイス330から発光され、外部の撮影対象物に反射して戻ってきた光を検出し、検出電圧Vdetとして出力する。発光制御部340は、検出電圧Vdetが所定のしきい値電圧Vthを超えると、すなわち検出した反射光が、所定の光量に達すると、発光制御信号SIG1をローレベルとして、発光デバイス330の発光を停止する。
【0023】
次に、本実施の形態に係る受光装置200の構成について詳細に説明する。図2は、本実施の形態に係る受光装置200の構成を示す回路図である。受光装置200は、電流検出回路100、フォトトランジスタ210、充電キャパシタCchg、調節抵抗Radjを含む。電流検出回路100はひとつの半導体基板上に一体集積化されたICであり、本実施の形態においては、図1の発光制御部340や、DC/DCコンバータ320の制御回路などとともに、機能IC302として一体集積化されている。
【0024】
フォトトランジスタ210は、受光デバイスとして設けられており、入射した光に応じた光電流Ipが流れる。フォトトランジスタ210のエミッタは接地され、コレクタは電流検出回路100の検出端子102に接続される。
【0025】
電流検出回路100は、検出端子102に接続されるフォトトランジスタ210に流れる光電流Ipを検出する。電流検出回路100は、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、第1バイアス抵抗Rbias1、第2バイアス抵抗Rbias2、バイアススイッチSW1、バイパススイッチSW2、第1抵抗R10、第2抵抗R12を含む。また、電流検出回路100の外部には、抵抗接続端子106、抵抗接続端子108間に調節抵抗Radjが、容量接続端子104に充電キャパシタCchgが接続される。
【0026】
第1トランジスタQ1は、PNP型バイポーラトランジスタ(以下、単にPNPトランジスタという)であって、受光デバイスであるフォトトランジスタ210の電流経路上に設けられる。第1トランジスタQ1のエミッタと電源電圧Vddが印加される電源ライン間には、第1抵抗R10が接続される。また、第1トランジスタQ1のベースコレクタ間は結線されている。
【0027】
第2トランジスタQ2は、PNPトランジスタであって、第1トランジスタQ1とベースが共通接続される。第2トランジスタQ2のエミッタと電源ライン間には、第2抵抗R12が設けられる。さらに、第2抵抗R12と並列に、調節抵抗Radjが接続される。第2トランジスタQ2は、第1トランジスタQ1、第1抵抗R10、第2抵抗R12、調節抵抗Radjとともにカレントミラー回路を構成する。第2トランジスタQ2は、第1トランジスタQ1に流れる第1電流Iq1を所定係数倍した第2電流Iq2を出力する。たとえば、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2のサイズ比は、4:1程度に設定する。
【0028】
第1トランジスタQ1のコレクタから、検出端子102、フォトトランジスタ210を介して接地に至る経路を、主電流経路10とする。主電流経路10の第1トランジスタQ1および検出端子102間には、第2バイアス抵抗Rbias2が設けられる。第2バイアス抵抗Rbias2の抵抗値は、十分に高く設定し、たとえば数MΩ〜数十MΩの範囲で設定する。本実施の形態では、一例として10MΩに設定される。主電流経路10は、第2バイアス抵抗Rbias2をバイパスするバイパススイッチSW2をさらに備える。バイパススイッチSW2は、発光制御部340から出力される第1制御信号CNT1によってオンオフが制御される。
【0029】
バイアス電流経路12は、主電流経路10と並列に設けられる。バイアス電流経路12は、第1トランジスタQ1のコレクタと接地間に直列接続された第1バイアス抵抗Rbias1およびバイアススイッチSW1を含む。第1バイアス抵抗Rbias1の抵抗値は、第2バイアス抵抗Rbias2に対して十分に低く、たとえば1/10程度に設定しておく。第2バイアス抵抗Rbias2の抵抗値は、たとえば1MΩである。
【0030】
バイアススイッチSW1は、発光制御部340により生成される第3制御信号CNT3によってオンオフが制御される。バイアススイッチSW1がオンすると、バイアス電流経路12がオンし、電流が流れる。以下、バイアス電流経路12に流れる電流をバイアス電流Ibiasという。
【0031】
第2トランジスタQ2のコレクタは、マスク用スイッチSW3を介して容量接続端子104と接続される。電流検出回路100は、第2トランジスタQ2に流れる第2電流Iq2を充電キャパシタCchgに充電し、電圧に変換する。マスク用スイッチSW3のオンオフは、発光制御部340において生成される第2制御信号CNT2によって制御される。マスク用スイッチSW3は、第2制御信号CNT2がハイレベルのときオフ、ローレベルのときオンする。マスク用スイッチSW3がオフすると、第2電流Iq2の経路が遮断されるため、充電キャパシタCchgの充電は停止する。
【0032】
容量接続端子104と接地間には、放電用スイッチSW4が設けられる。放電用スイッチSW4は、NMOSトランジスタであって、充電キャパシタCchgと並列に接続される。放電用スイッチSW4は、ドレインが容量接続端子104に接続され、ソースが接地され、ゲートには、発光制御部340によって生成される第2制御信号CNT2が入力される。放電用スイッチSW4は、第2制御信号CNT2がハイレベルのときオン、ローレベルのときオフする。放電用スイッチSW4がオンすると、容量接続端子104が接地され、充電キャパシタCchgに蓄えられた電荷が放電する。後述のように、放電用スイッチSW4は、フォトトランジスタ210の受光開始に先立ち、第2制御信号CNT2により、所定時間ΔT1だけオンする。放電用スイッチSW4およびマスク用スイッチSW3のオンオフは、同一の第2制御信号CNT2により制御される。
【0033】
本実施の形態に係る電流検出回路100は、容量接続端子104に現れる電圧を、検出電圧Vdetとして発光制御部340へと出力する。
【0034】
次に、発光制御部340の構成について説明する。図3は、本実施の形態に係る発光制御部340の構成を示す回路図である。発光制御部340は、コンパレータ20、Dラッチ回路22、ワンショット回路24、第1インバータ26、NANDゲート28、ドライバ回路30、第2インバータ32、遅延回路34を含む。
【0035】
発光制御部340は、制御端子342に入力されたフォトトランジスタ210の受光開始に先立って信号レベルが変化する制御信号CNTにもとづき、第1制御信号CNT1〜第3制御信号CNT3を生成し、電流検出回路100へと出力する。また、発光制御部340は、制御信号CNTおよび電流検出回路100から出力される検出電圧Vdetにもとづいて発光制御信号SIG1を生成し、発光デバイス330の発光および発光停止を制御する。
【0036】
はじめに、発光制御部340において、第1制御信号CNT1〜第3制御信号CNT3を生成するブロックについて説明する。
制御端子342に入力された制御信号CNTは、そのまま第1制御信号CNT1として電流検出回路100へと出力される。
【0037】
第2制御信号CNT2は、抵抗R20、R22、トランジスタQ1、第1インバータ26、第2インバータ32、遅延回路34によって、制御信号CNTを遅延させることにより生成される。トランジスタQ1は、NPN型バイポーラトランジスタであって、エミッタ接地されており、コレクタと電源ライン間には、抵抗R22が設けられる。トランジスタQ1のベースと制御端子342間には、抵抗R20が接続されている。
【0038】
抵抗R20、R22、トランジスタQ1は、制御信号CNTを論理反転して出力する。第1インバータ26は、反転された制御信号CNTを再度論理反転する。
【0039】
第1インバータ26の出力信号SIG10は、第2インバータ32に入力される。第2インバータ32は、第1インバータ26の出力信号SIG10を論理反転し、遅延回路34へと出力する。遅延回路34は、第2インバータ32の出力信号を、所定時間ΔT1だけ遅延する。遅延回路34から出力される信号は、第2制御信号CNT2として電流検出回路100へと出力される。たとえば、遅延回路34による遅延時間ΔT1は、5μs程度に設定する。
【0040】
フォトトランジスタ210の受光開始に先立って信号レベルが変化する制御信号CNTは、ワンショット回路24に入力される。ワンショット回路24は、制御信号CNTがハイレベルとなってから所定時間ΔT2の期間、ハイレベルとなる第3制御信号CNT3を生成する。すなわち、ワンショット回路24は、制御信号CNTを所定時間ΔT2の期間ラッチするラッチ回路である。第3制御信号CNT3は、バイアススイッチSW1へと出力され、そのオンオフを制御する。所定時間ΔT2は、遅延時間ΔT1より長く、たとえば10μs程度に設定する。
【0041】
以上のように構成される発光制御部340は、第1制御信号CNT1〜第3制御信号CNT3を生成し、電流検出回路100へと出力する。
【0042】
次に、発光制御部340において、発光デバイス330の発光を制御するための発光制御信号SIG1を生成するブロックについて説明する。このブロックは、コンパレータ20、Dラッチ回路22、NANDゲート28、ドライバ回路30を含む。
【0043】
コンパレータ20は、電流検出回路100から出力される検出電圧Vdetと、所定のしきい値電圧Vthを比較し、Vdet>Vthのときハイレベル、Vdet<Vthのときローレベルとなる比較信号SIG12を出力する。
【0044】
コンパレータ20から出力される比較信号SIG12は、Dラッチ回路22のクロック端子に入力される。Dラッチ回路22のデータ端子は電源ラインに接続されており、ハイレベルに固定されている。Dラッチ回路22のリセット端子には、制御信号CNTが入力されている。Dラッチ回路22は、比較信号SIG12のポジエッジによってセットされ、制御信号CNTのネガエッジによりリセットされるラッチ回路として機能する。Dラッチ回路22の反転出力信号SIG14は、NANDゲート28へと出力される。
【0045】
NANDゲート28は、第1インバータ26の出力信号SIG10と、Dラッチ回路22の反転出力信号SIG14の否定論理積を出力する。ドライバ回路30は、NANDゲート28の出力信号がローレベルの期間、ハイレベルとなる発光制御信号SIG1を出力する。
【0046】
以上のように構成された図2の電流検出回路100および図3の発光制御部340の動作について説明する。図4は、本実施の形態に係る電流検出回路100および電子機器300の動作状態を示すタイムチャートである。
【0047】
時刻T0以前において、電源電圧Vddが立ち上がっており、電流検出回路100は待機状態となっている。この間、フォトトランジスタ210には非常に小さな光電流Ip(暗電流)が流れている。この光電流Ipは、第1トランジスタQ1に第1電流Iq1として流れる。第1トランジスタQ1は、ベースコレクタ間が接続されているため、コレクタエミッタ間電圧Vceは、ベースエミッタ間電圧Vbeに等しくなる。検出端子102の電位Vptrは、電源電圧Vddから、第1トランジスタQ1のコレクタエミッタ間電圧Vce(=ベースエミッタ間電圧Vbe)および第1抵抗R10での電圧降下ΔVrだけ低い電圧(Vdd−Vce−ΔVr)が現れる。フォトトランジスタ210に流れる光電流Ipは小さいため、第1トランジスタQ1のコレクタエミッタ間電圧Vceは小さい。
【0048】
時刻T0に、制御信号CNTがハイレベルとなり、発光デバイス330の発光が指示される。上述したように、制御信号CNTがハイレベルとなると同時に、第1制御信号CNT1がハイレベルとなる。また、ワンショット回路24から出力される第3制御信号CNT3は、時刻T1から所定時間ΔT2の間、ハイレベルとなる。
【0049】
時刻T0に、第1制御信号CNT1がハイレベルとなると、バイパススイッチSW2がオンし、第2バイアス抵抗Rbias2がバイパスされる。また、第3制御信号CNT3がハイレベルとなると、バイアススイッチSW1がオンし、バイアス電流経路12にバイアス電流Ibiasが流れる。
【0050】
このとき、第1トランジスタQ1に流れる電流Iq1は、光電流Ipと、バイアス電流Ibiasの和(Ip+Ibias)となる。上述のように、第1バイアス抵抗Rbias1の抵抗値は、第2バイアス抵抗Rbias2の抵抗値に対して十分に低く設定されるため、第1トランジスタQ1に流れる第1電流Iq1は増加する。その結果、第1トランジスタQ1のコレクタエミッタ間電圧Vceは、時刻T0以前の期間に比べて大きくなり、検出端子102の電位Vptrは低下する。
【0051】
発光デバイス330の受光開始に先立った時刻T0に、バイパススイッチSW2をオンして、バイアス電流経路12にバイアス電流Ibiasを流すことにより、第1電流Iq1が増加する。第1電流Iq1が増加することは、第1トランジスタQ1のコレクタ電流Iceが増加することを意味する。
【0052】
図5は、バイポーラトランジスタである第1トランジスタQ1の電流特性を示す図である。同図の縦軸はコレクタ電流Ice(=Iq1)を、横軸はコレクタエミッタ間電圧Vce(=ベースエミッタ間電圧Vbe)を示す。図5に示すように、コレクタ電流Ice(=Iq1)が小さいときには、コレクタ電流Iceの変動に対するコレクタエミッタ間電圧Vceの変動幅が大きく、コレクタ電流Iceが大きくなると、その変動幅は小さくなる。
【0053】
したがって、時刻T0以前のように、第1電流Iq1(コレクタ電流Ice)が小さいときには、第1電流Iq1がわずかに変化しただけで、第1トランジスタQ1のコレクタ電圧、ひいては検出端子102の電圧Vptrが変動してしまう。検出端子102の電圧Vptrが変動すると、フォトトランジスタ210のバイアス状態が変化してしまい、光電流Ipが変動するおそれがある。また、検出端子102の電圧が変動することにより、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2を含むカレントミラー回路の特性が悪化する場合がある。
【0054】
そこで、本実施の形態に係る電流検出回路100では、受光開始に先立った時刻T0に、バイアススイッチSW1をオンして、第1電流Iq1を増加させる。その結果、第1トランジスタQ1が定電流領域でバイアスされ、コレクタ電流Iceの変化量に対するコレクタエミッタ間電圧Vceの変化量が小さくなり、検出端子102の電圧Vptrを一定に保つことができる。検出端子102の電圧Vptrが一定に保たれると、フォトトランジスタ210の特性を一定に保つことができるとともに、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2を含むカレントミラー回路の特性を良好に保つことができる。
【0055】
また、第2制御信号CNT2は、制御信号CNTがローレベルからハイレベルに遷移しする時刻T0から、所定時間ΔT1経過後の時刻T1までのラッチされ、ハイレベルを維持する。第2制御信号CNT2がハイレベルの期間、放電用スイッチSW4はオンするため、充電キャパシタCchgに蓄えられた電荷が放電されて初期化される。さらに、第2制御信号CNT2がハイレベルの間、マスク用スイッチSW3はオフするため、第2電流Iq2の経路が遮断される。その結果、時刻T1以前においては、発光デバイス330に光が入射し、光電流Ipが流れても、充電キャパシタCchgは充電されず、検出電圧Vdetは接地電位に固定される。また、回路電流が遮断されるため、低消費電力化を図ることができる。
【0056】
時刻T0には、発光制御信号SIG1がハイレベルとなり、発光デバイス330が発光可能状態となる。本実施の形態に係る発光デバイス330は、発光制御信号SIG1がハイレベルとなってから、時間τだけ遅れて発光する。したがって、上述の所定時間ΔT1は、時間τよりも短くなるように設定する必要がある。
【0057】
時刻T1に、第2制御信号CNT2がローレベルとなると、マスク用スイッチSW3がオン、放電用スイッチSW4がオフし、電流検出回路100がスタンバイ状態となる。
【0058】
発光制御信号SIG1がハイレベルとなる時刻T0から時間τ経過後の時刻T2に、発光デバイス330が発光する。発光デバイス330が発光すると、反射光がフォトトランジスタ210に入射し、光電流Ipが流れる。時刻T2において、バイアス電流経路12はオフしているため、第1トランジスタQ1に流れる第1電流Iq1は、光電流Ipに等しい。上述のように、第1トランジスタQ1は定電流領域にバイアスされているため、光電流Ipが流れはじめても、検出端子102の電位Vptrはほとんど変動しない。
【0059】
時刻T2以降、充電キャパシタCchgは、第2トランジスタQ2から出力される第2電流Iq2によって充電され、検出電圧Vdetは徐々に上昇する。時刻T3に、検出電圧Vdetが、所定のしきい値電圧Vthに達すると、コンパレータ20の出力である比較信号SIG12はハイレベルとなり、Dラッチ回路22の反転出力信号SIG14は、ローレベルとなる。その結果、ドライバ回路30から出力される発光制御信号SIG1はローレベルとなり、発光制御トランジスタ350がオフして、発光デバイス330の発光が停止する。
【0060】
その後、時刻T0から所定時間ΔT2経過後の時刻T4に、第3制御信号CNT3がローレベルとなり、バイアススイッチSW1がオフする。
【0061】
本実施の形態に係る電流検出回路100によれば、フォトトランジスタ210と直列に、抵抗を接続する代わりに、カレントミラー回路を接続して、光電流を複製している。その結果、光電流が変化しても、第1トランジスタQ1のコレクタ電圧は、それほど大きく変動しないため、フォトトランジスタ210のコレクタ電圧Vptrを一定に保つことができ、安定な光検出が可能となる。さらに、光電流Ipが増加しても、フォトトランジスタ210のコレクタ電圧はほぼ一定値となるため、ダイナミックレンジを広くとることができる。
【0062】
さらに、本実施の形態に係る電流検出回路100によれば、発光デバイス330の発光開始、すなわちフォトトランジスタ210による受光開始に先立ち、バイアススイッチSW1をオンすることにより、カレントミラー回路を構成する第1トランジスタQ1を定電流領域にバイアスすることができる。さらに、その結果、フォトトランジスタ210のコレクタ電圧、すなわち検出端子102の電位Vptrを、光電流Ipの値によらずにほぼ一定値に保つことができ、安定な光検出を行うことができる。
【0063】
また、第2トランジスタQ2のサイズを第1トランジスタQ1のサイズよりも小さく設定することによって、カレントミラー回路の出力電流である第2電流Iq2を小さくすることができ、回路の消費電流を低減し、また充電キャパシタCchgの容量値を小さくすることができる。
【0064】
さらに、第2抵抗R12と並列に調節抵抗Radjを設けることによって、検出端子102に接続されるフォトトランジスタ210の特性、ばらつきなどに応じて、電流検出回路100の特性を調節することができ、安定な電流検出を可能とするとともに、フォトトランジスタのばらつきに対する歩留まりの向上を図ることができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る電流検出回路100によれば、発光デバイス330の発光開始、すなわちフォトトランジスタ210による受光開始に先立ち、バイアススイッチSW1をオンすることにより、カレントミラー回路を構成する第1トランジスタQ1を定電流領域にバイアスすることができる。さらに、その結果、フォトトランジスタ210のコレクタ電圧、すなわち検出端子102の電位Vptrを、光電流Ipの値によらずにほぼ一定値に保つことができ、安定な光検出を行うことができる。
【0066】
さらに、第2バイアス抵抗Rbias2を設けることにより、受光開始前の期間において、主電流経路10のインピーダンスを高くすることができ、回路の消費電流を低減することができる。
【0067】
図6は、フォトトランジスタ210による受光量が小さいときの電流検出回路100および電子機器300の動作状態を示すタイムチャートである。
【0068】
フォトトランジスタ210による受光開始前、すなわち時刻T0から時刻T2の波形は、図4と同様である。制御信号CNTがハイレベルとなる時刻T0から、時間τ経過後の時刻T2に、発光デバイス330が発光する。発光デバイス330から反射体までの距離が遠いときには、反射光の強度が弱くなるため、受光量が小さくなる。その結果、光電流Ipが図4の場合と比べて小さくなり、検出電圧Vdetの上昇速度が遅くなる。時刻T2から時刻T4までの期間、第1トランジスタQ1に流れる第1電流Iq1は、光電流Ipとバイアス電流Ibiasの和電流となっている。
【0069】
時刻T0から所定時間ΔT2経過後の時刻T3に第3制御信号CNT3がローレベルとなる。第3制御信号CNT3がローレベルとなると、バイアススイッチSW1がオフし、バイアス電流経路12がオフする。時刻T4以降、バイアススイッチSW1がオフすると、バイアス電流Ibiasが流れなくなるため、第1トランジスタQ1に流れる第1電流Iq1は、光電流Ipに等しくなる。その結果、充電キャパシタChgに対する充電電流が減少し、検出電圧Vdetの上昇速度が低下する。
【0070】
その後、時刻T5に、検出電圧Vdetがしきい値電圧Vthに達すると、発光制御信号SIG1はローレベルとなり、発光デバイス330の発光が停止する。
【0071】
フォトトランジスタ210が受光を開始してから所定時間(本実施の形態においては、ΔT2−τに相当する)経過するということは、検出電圧Vdetの上昇速度が遅いことを意味し、ひいては光電流Ipが小さいことを意味する。光電流Ipがバイアス電流Ibiasと同程度、あるいはそれよりも低い場合に、第1電流Iq1(=Ip+Ibias)にもとづき、充電キャパシタCchgを充電すると、受光量を正確に積分することができなくなってしまう。
【0072】
そこで、本実施の形態に係る受光装置200および発光制御部340は、所定時間(ΔT2−τ)経過後にバイアススイッチSW1をオフすることにより、第1電流Iq1を、光電流Ipと等しく設定することにより、フォトトランジスタ210による受光量を正確に検出し、発光デバイス330をオフするまでの時間を好適に制御することができる。
【0073】
なお、時刻T4においては、第1トランジスタQ1には光電流Ipが流れているため、バイアス電流Ibiasをオフしても、第1トランジスタQ1のバイアス状態が非定電流領域まで下がることはなく、検出端子102の電位Vptrが大幅に変動することもない。
【0074】
さらに、本実施の形態に係る受光装置200および発光制御部340によれば、放電用スイッチSW4およびマスク用スイッチSW3を設けることにより、以下の効果を有する。
【0075】
電流検出回路100に電源電圧を与えると、フォトトランジスタ210がバイアスされるため、暗電流が流れたり、あるいは外部から入射する本来受光すべきでない光によって光電流Ipが流れ、充電キャパシタCchgが充電されるおそれがある。そこで、フォトトランジスタ210の受光開始に先立ち、所定の期間、放電用スイッチSW4をオンすることにより、不要な電流によって充電キャパシタCchgが充電されるのを防止するとともに、充電キャパシタCchgに蓄えられた電荷を放電し、検出電圧Vdetを初期値に設定することができる。さらに、フォトトランジスタ210の受光開始に先立ち、マスク用スイッチSW3をオフしておくことにより、第2電流Iq2によって充電キャパシタCchgが充電されるのを防止することができるとともに、回路の消費電流を低減することができる。
【0076】
さらに、コンパレータ20から出力される比較信号SIG12を、Dラッチ回路22を用いてラッチすることにより、検出電圧Vdetがしきい値電圧Vth付近で変動した場合に、発光制御信号SIG1がハイレベルとローレベルを繰り返し、発光デバイス330が発光状態と、発光停止状態を繰り返すのを防止することができる。
【0077】
上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0078】
実施の形態において、第2トランジスタQ2のサイズを第1トランジスタQ1のサイズより小さく設定する場合について説明したがこれには限定されない。フォトトランジスタ210のサイズが非常に小さく光電流Ipが小さい場合や、充電キャパシタCchgの容量値が小さな場合には、第2トランジスタQ2のサイズを第1トランジスタQ1のサイズより大きくすることによって、電流増幅を行ってもよい。この場合、第2抵抗R12の抵抗値を、第1抵抗R10の抵抗値よりも低く設定することが望ましい。
【0079】
実施の形態において、バイアス電流経路12を直列接続した第1バイアス抵抗Rbias1およびバイアススイッチSW1によって構成したが、これには限定されず、所定の電流を生成する定電流源を用いてもよい。この場合、定電流源をオンオフすることにより、第1トランジスタQ1のバイアス状態を変化させることができる。
【0080】
実施の形態では、受光デバイスとしてフォトトランジスタ210を用いたが、フォトダイオードを代わりに用いてもよい。
【0081】
実施の形態においてMOSFET、バイポーラトランジスタで構成された素子は、相互に置換することが可能である。これらの選択は、半導体製造プロセスやコスト、回路に求められる使用に応じて決定すればよい。さらに、電源電圧と接地電位を天地反転し、PNPトランジスタとNPNトランジスタ、あるいはPMOSトランジスタとNMOSトランジスタを置換した回路構成も有効である。
【0082】
実施の形態においては、受光装置200および発光制御部340が一体集積化される場合について説明したが、一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。どの部分を集積化するかは、コストや占有面積、用途などに応じて決めればよい。
【0083】
本実施の形態に係る電流検出回路100あるいは受光装置200を用いた電子機器300としては、上述の携帯電話端末に限定されるものではなく、照度センサや赤外線通信機器など、フォトダイオードやフォトトランジスタを用いて光を検出する機器に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態に係る電子機器の構成を示す回路図である。
【図2】図1の受光装置の構成を示す回路図である。
【図3】図1の発光制御部の構成を示す回路図である。
【図4】図1の電子機器の動作状態を示すタイムチャートである。
【図5】バイポーラトランジスタである第1トランジスタの電流特性を示す図である。
【図6】フォトトランジスタによる受光量が小さいときの電流検出回路および電子機器の動作状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0085】
10 主電流経路、 12 バイアス電流経路、 20 コンパレータ、 22 Dラッチ回路、 24 ワンショット回路、 26 第1インバータ、 28 NANDゲート、 30 ドライバ回路、 32 第2インバータ、 34 遅延回路、 C20 キャパシタ、 100 電流検出回路、 102 検出端子、 104 容量接続端子、 106 抵抗接続端子、 108 抵抗接続端子、 200 受光装置、 210 フォトトランジスタ、 300 電子機器、 302 機能IC、 310 電池、 320 DC/DCコンバータ、 330 発光デバイス、 340 発光制御部、 350 発光制御トランジスタ、 R10 第1抵抗、 R12 第2抵抗、 Q1 第1トランジスタ、 Q2 第2トランジスタ、 Rbias1 第1バイアス抵抗、 Rbias2 第2バイアス抵抗、 SW1 バイアススイッチ、 SW2 バイパススイッチ、 SW3 マスク用スイッチ、 SW4 放電用スイッチ、 Radj 調節抵抗、 Cchg 充電キャパシタ、 CNT1 第1制御信号、 CNT2 第2制御信号、 CNT3 第3制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光デバイスに流れる電流を検出する電流検出回路であって、
前記受光デバイスの電流経路上に設けられた第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの一端と、電位の固定された端子間に設けられた第1抵抗と、
前記第1トランジスタとともにカレントミラー回路を構成し、前記第1トランジスタに流れる電流を所定係数倍して本電流検出回路の出力とする第2トランジスタと、
前記第2トランジスタの一端と、電位の固定された端子間に設けられた第2抵抗と、
を備えることを特徴とする電流検出回路。
【請求項2】
前記第2抵抗と並列に接続された調節抵抗をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項3】
前記第2トランジスタのサイズを前記第1トランジスタのサイズより大きく設定し、
前記第2抵抗の抵抗値を、前記第1抵抗の抵抗値より大きく設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の電流検出回路。
【請求項4】
前記第2トランジスタに流れる電流を容量に充電し、電圧に変換して出力することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電流検出回路。
【請求項5】
前記第1、第2トランジスタ、前記第1、第2抵抗がひとつの半導体基板上に一体集積化され、前記調節抵抗が前記半導体基板の外部に接続されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電流検出回路。
【請求項6】
受光デバイスと、
前記受光デバイスに流れる光電流を検出する請求項1から3のいずれかに記載の電流検出回路と、
を備えることを特徴とする受光装置。
【請求項7】
前記受光デバイスはフォトトランジスタであることを特徴とする請求項6に記載の受光装置。
【請求項8】
前記受光デバイスはフォトダイオードであることを特徴とする請求項6に記載の受光装置。
【請求項9】
発光デバイスと、
前記発光デバイスから発せられた光が、外部の物体により反射した光を検出する請求項6から8のいずれかに記載の受光装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
前記発光デバイスは、前記受光装置により検出した反射光の光量が所定値に達すると、発光を停止することを特徴とする請求項9に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−107926(P2007−107926A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296723(P2005−296723)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】