電流検出装置及びモータ制御装置
【課題】PWMインバータの出力電流を検出するのに、その検出電流に含まれる検出誤差を低減できる電流検出装置を提供する。
【解決手段】三角波パルス幅変調を用いた多相インバータの出力電流を検出する電流検出装置であって、あらかじめ設定した一定期間中の複数の特定のタイミング毎に電流を検出する電流検出手段111と、一定期間中の複数の特定のタイミング毎の電流検出値を加算する加算手段113u,113wとを備え、電流検出手段は、一定期間中の複数の特定のタイミングとして、三角波PWMの搬送波の上り側と下り側との両方でそれぞれ少なくとも1回ずつ電流検出を行うことを特徴とする。
【解決手段】三角波パルス幅変調を用いた多相インバータの出力電流を検出する電流検出装置であって、あらかじめ設定した一定期間中の複数の特定のタイミング毎に電流を検出する電流検出手段111と、一定期間中の複数の特定のタイミング毎の電流検出値を加算する加算手段113u,113wとを備え、電流検出手段は、一定期間中の複数の特定のタイミングとして、三角波PWMの搬送波の上り側と下り側との両方でそれぞれ少なくとも1回ずつ電流検出を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、電流検出装置及びそれを用いたモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PWM(Pulse Width Modulation)インバータの電力変換装置では、PWMインバータの出力電流を検出する際に、検出電流に含まれる信号ノイズ等を低減するために電流検出を複数回行い、その加算値を検出値する方法を採用している。
【0003】
しかしながら、従来の技術では、パルス幅変調(PWM)によって発生する電流リプルを拾ってしまい、電流検出値に検出誤差が生じてしまう問題点があった。尚、ここで「検出誤差」とは、実際の電流ベクトルに対する検出値のずれを表し、加算値を検出値とする場合には、加算する周期における電流ベクトルの平均値と加算値の平均とのずれと定義している。
【0004】
また、多相インバータでは、通常、コストの問題からA/Dコンバータが1つしか搭載されておらず、複数の相電流を同時に検出することはできず、電流検出タイミングを相毎に異ならせている。そして相毎に電流検出タイミングを異ならせると、電流ベクトルに変換したときに、検出電流にベクトルの位置毎に異なった検出誤差が生じる問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3312472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされたもので、検出電流に含まれる検出誤差を低減できる電流検出装置及びそれを用いたモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態は、三角波パルス幅変調を用いた多相インバータの出力電流を検出する電流検出装置であって、あらかじめ設定した一定期間中の複数の特定のタイミング毎に電流を検出する電流検出手段と、前記一定期間中の複数の特定のタイミング毎の電流検出値を加算する加算手段とを備え、前記電流検出手段は、前記一定期間中の複数の特定のタイミングとして、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側との両方でそれぞれ少なくとも1回ずつ電流検出を行うようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態のモータ制御装置のブロック図。
【図2】第1の実施の形態のモータ制御装置における電流検出処理部のブロック図。
【図3】3軸固定座標系における電圧指令ベクトルとPWM出力ベクトルの関係の説明図。
【図4】直交電圧成分による電流リプルの波形図。
【図5】電圧指令ベクトル毎の直交電圧成分のベクトル図。
【図6】第1の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図7】第2の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図8】第3の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図9】第4の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図10】第5の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図11】第6の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図12】第7の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図13】三角波PWMにおけるU相電圧とU相電流との関係例1の説明図。
【図14】三角波PWMにおけるU相電圧とU相電流との関係例2の説明図。
【図15】第8の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図16】第9の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図17】3相電流における検出遅れが生じた際の検出電流の波形図。
【図18】3相電流における検出遅れが生じた際の検出電流の振幅図。
【図19】短時間における複数の電流検出値とその平均値の関係の説明図。
【図20】第10の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図21】第11の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図22】第12の実施の形態のインバータ制御装置のブロック線図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0010】
図1に各実施の形態に共通する同期電動機04を負荷とし、センサレス制御により制御するモータ制御装置の構成を示している。このモータ制御装置は、PWMゲート信号により直流電力を交流電力に変換し、またその逆変換も行うPWMインバータ02、このPWMインバータ02の交流出力を受けて動作する同期電動機04、PWMインバータ02から同期電動機04に供給される交流電力のU,V,W各相の交流電流iu,iv,iwのうちU,W2相の交流電流iu,iwを検出する電流検出器03u,03w、PWMインバータ02のゲート制御を行うため、電流検出器03u,03wの検出する交流電流iu,iwを所定のタイミングにてA/D変換し、デジタル電流検出値Iu,Iwとして取り込み、演算して各相の電圧指令Vu,Vv,Vwを出力する制御装置05、この制御装置05の出力する各相の電圧指令Vu,Vv,Vwを三角波搬送波によってPWMすることによりゲート指令を作成し、PWMインバータ02をゲート制御する三角波PWM変調器01にて構成されている。
【0011】
同期電動機04は、固定子の各励磁相に流れる3相交流電流iu,iv,iwによって磁界を発生し、回転子との磁気的相互作用によりトルクを発生するものである。
【0012】
制御装置05はマイクロコンピュータにて構成されるものであるが、その演算機能を構成要素に分けて示すと、回転位相各推定器07、電流制御器08、3軸/2軸座標変換器09、2軸/3軸座標変換器10、デジタル電流検出処理器11から構成されている。
【0013】
電流検出器03u,03wは、同期電動機04に流れる3相交流電流のうち2相iu,iwの電流応答値をアナログ信号として出力する。尚、図1では2相の電流を検出する構成を示しているが、U,V,W3相それぞれの電流応答値を検出する構成であってもよい。
【0014】
デジタル電流検出処理器11は、電流検出器03u,03wの電流検出アナログ信号を所定のタイミング毎に入力してA/D変換し、かつ相毎に所定回数ずつ加算して相毎のデジタル電流検出値を3軸/2軸座標変換器09に出力する。
【0015】
回転位相角推定器07は、3軸/2軸座標変換器09の変換処理した電流応答値から、同期電動機04の回転位相角θestを推定する。
【0016】
3軸/2軸座標変換器09は、デジタル電流検出処理器11の出力する電流応答値Iu,Iwに対して、回転位相角推定器07によって得られた回転位相角θestを用いて、3相固定座標系とγδ軸回転座標系の3軸/2軸座標変換を行い、3相電流値Iu,Iv,Iwから2軸電流値Iγres,Iδresを得、回転位相角推定器07と電流制御器08に出力する。尚、V相電流値Ivについては、検出されるU相、W相電流値Iu,Iwから換算して得ている。
【0017】
電流制御器08は、3軸/2軸座標変換器09の変換した2軸電流応答値Iγres,Iδresと電流指令値Iγref,Iδrefを比較し、2軸電圧指令値Vγ,Vδを決定する。
【0018】
2軸/3軸座標変換器10は、電流制御器08からの2軸電圧指令値Vγ,Vδを2軸/3軸座標変換し、3相電圧指令Vu,Vv,Vwを三角波PWM変調器01に出力する。三角波PWM変調器01は、上記のように、3相電圧指令Vu,Vv,Vwを三角波搬送波によってPWMすることによりゲート指令を作成し、PWMインバータ02をゲート制御する。
【0019】
上記のデジタル電流検出処理器11は、図2に示す機能構成であり、アナログ入力信号iu,iwを所定のタイミング毎にA/D変換してデジタル値にして出力するマルチ入出力チャネルを備えたA/Dコンバータ111、このA/Dコンバータ111に対して変換処理タイミングを設定するタイミング設定器112、A/Dコンバータ111の各出力チャネルから出力するデジタル電流検出値を所定回数加算し、電流平均値Iu,Iwとして出力する加算器113u,113wから構成されている。タイミング設定器112は、後述の各実施の形態の電流検出タイミングにてA/Dコンバータ111に対してタイミング設定チャネル指令を与える。
【0020】
以上の構成のモータ制御装置の動作について説明する。電流検出器で検出した電流Iu,Iv,Iwに検出誤差が含まれると、検出誤差に従い、回転位相角推定器07によって推定した回転位相角θestに振動が発生する。例えば、特許第3312472号公報の回転位相角推定器を用いた場合、単相交番電圧を指令に印加し、その直交方向成分の電流を用いて回転位相角を推定している。したがって、インバータによって発生する直交方向の検出電流誤差がそのまま回転位相角の推定誤差となる。
【0021】
そこで、本実施の形態では、次のように電流検出方法を実施して直交方向に生じる検出電流誤差を低減し、回転位相角の推定精度を向上させ、安定な制御を実現する。
【0022】
三角波PWMインバータ02では、2種類の零ベクトルと2種類の電圧ベクトルを合成することで、三角波搬送波の半周期間における電圧ベクトルの合成が電圧指令ベクトルと一致するように変調する。例えば、U,V,W3相の3軸固定座標系において、電圧指令ベクトルが図3エラー! 参照元が見つかりません。の位置にある場合には、(U,V,W)=(0,0,0)、(U,V,W)=(1,1,1)の2種類の零ベクトルと(U,V,W)=(1,0,0)、(U,V,W)=(1,1,0)との2種類の電圧ベクトルの合成によって電圧指令ベクトルと一致する電圧ベクトルを出力する。この時、出力したい電圧ベクトルの方向と直交する電圧成分Vhも出力されることになる。この直交電圧ベクトルVhは搬送波(Carrier)の半周期間で合成すれば零になるが、この直交電圧ベクトルによって図4に示すように電流リプルIhが発生することになる。
【0023】
図5に示すように、この直交電圧ベクトルは電圧指令ベクトルが1/6周期回転する毎に1周期の振動をし、すなわち搬送波周波数の6倍の周波数の電流リプルが発生する。
【0024】
ここで、図4から電流リプルIhは搬送波(Carrier)の頂点を中心に点対称となっており、搬送波の上り側と下り側で正負が異なっている。(実際には、インダクタンスの影響や電圧指令ベクトルの変化により、完全には点対称とはならないものの、点対称に近い波形となる。)図4では、搬送波の山側の頂点で点対称であることを示しているが、搬送波の谷側の頂点に関しても同様に点対称となる。また、電圧指令ベクトルの方向や大きさが異なる条件でも、上り側と下り側の正負が入れ替わったり、電流リプルの大きさが変化したりするだけで、この傾向は変わらない。
【0025】
図6に、第1の実施の形態において制御装置05が実行する電流検出タイミングを示している。デジタル電流検出処理器11は、1回の電流検出期間としての搬送波の1周期毎に、電流検出器03u,03wそれぞれからのアナログ電流検出信号iu,iwをA/D変換し、上り側で少なくとも1回、下り側で少なくとも1回の電流検出を行い、その検出値を加算し、加算値をデジタル電流応答値Iu,Iwとして出力する。これにより、正の誤差と負の誤差を加算することになり、検出電流に含まれる検出誤差を低減することができる。
【0026】
図6に示す第1の実施の形態では、搬送波の1周期毎にその上り側で1回、下り側で2回、所定のタイミングで電流検出を行っているが、一般的には、上り側と下り側で少なくとも1回以上、所定のタイミング毎に電流検出を行えば、その検出値に含まれる検出誤差が低減できる。
【0027】
また、搬送波の頂点に関しては、検出誤差が必ず零となるので、上り側、下り側の回数には含まれないが、図7のように頂点のタイミングでの検出値を加算してもよい(第2の実施の形態)。
【0028】
さらに、図8のように搬送波の2周期分を電流検出期間単位とし、この電流検出期間毎に搬送波の上り側、下り側でそれぞれ少なくとも1回以上、所定のタイミング毎に電流検出を行い、その加算値を電流応答値としてもよい(第3の実施の形態)。
【0029】
また、図9のように搬送波の1周期未満の検出値を加算する場合であっても、搬送波の上り側と下り側で少なくとも1回以上の電流検出を行えばよい(第4の実施の形態)。搬送波の上り側と下り側で電流リプルIhの平均値は等しいので、電流検出回数を上り側と下り側で同じにすれば、電流リプルIhをキャンセルできる量が増える。この図9に示す電流検出方法によれば、上り側と下り側で検出回数が異なる場合と比較して検出誤差が低減される。
【0030】
さらに、搬送波の頂点は上り側、下り側の回数には含まないので、図9の検出タイミングに加え、例えば、図10に示すように頂点での検出値を加算してもよい(第5の実施の形態)。
【0031】
第6の実施の形態を、図11を用いて説明する。前述の通り、電流リプルIhは搬送波の頂点を中心に点対称となっている。したがって、上り側、下り側それぞれの搬送波の高さが一致するタイミングでは、電流リプルは大きさが等しく、符号が逆である。このタイミングで電流値を検出すれば、電流リプルは完全に打ち消される。そこで、搬送波の上り側、下り側それぞれで搬送波の高さが一致するタイミングにて電流値を検出し、加算する。これにより、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出が図れる。
【0032】
また、そして搬送波の頂点は上り側、下り側のどちらにも含まないので、例えば、図12に示したように、搬送波の頂点でも電流値を検出し、これを他の位置で検出した電流値に加算することもできる(第7の実施の形態)。これにより、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出が図れる。
【0033】
これら第6、第7の実施の形態によれば、電流ベクトルに含まれる検出誤差だけでなく、3相電流に含まれる検出誤差を打ち消すこともできる。図13、図14にPWMにおけるU相電圧VuとU相電流iuの関係を示す。PWMにおいて、U相電圧Vuの出力は符号が同じ電圧が出力されるパターン(図13)と符号が異なる電圧が出力されるパターン(図14)とがある。これらのいずれの場合でも、搬送波の頂点に対して点対称となる。そこで、本実施の形態の電流検出方法を用いれば、3相電流に含まれる検出誤差を効果的に打ち消すことができる。
【0034】
図15に第8の実施の形態の電流検出方法を示す。搬送波の1周期を加算期間とし、4等分して、各等分期間の中心タイミングで電流検出し、4個の電流検出値を加算している。これにより、第6の実施の形態と同様に、搬送波の上り側、下り側それぞれで搬送波の高さが一致するタイミングにて電流値を検出し、加算することができ、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出ができる。
【0035】
また、上述したように、搬送波の頂点は上り側、下り側のどちらにも含まないので、図16に示すように、搬送波の頂点でも電流値を検出し、これを他の位置で検出した電流値に加算する(第9の実施の形態)。そこで、本実施の形態では、搬送波の1周期を加算期間とし、1周期を5等分して、各等分期間の中心タイミングで電流検出し、5個の電流検出値を加算している。これにより、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出が図れる。加えて、これら第8、第9の実施の形態の電流検出方法は、検出誤差が打ち消される効果を持ちながら、検出間隔を一定とするため、実機への実装が容易になる効果を有する。
【0036】
次に、第10の実施の形態について説明する。3相インバータにおいて出力電流の基本波成分が図17(a)のような正弦波となった場合、検出タイミングが遅れると、図17(b)に示すように出力電流の位相がずれたように検出される。すると、図18に示すように、通常は振幅が一定の出力21であるはずが、出力周波数の2倍で振動する検出電流22となる。
【0037】
インバータ出力電流の基本波は正弦波状であるが、短い時間では概ね線形に変化していると考えることができる。したがって、ある短い期間において複数回電流を検出し、その電流を加算平均すれば、平均検出時点(検出時点を時間的に平均した時点)における電流と一致する。すなわち、図19に示すように、複数回のタイミングti,t2,t3それぞれの電流検出値i1,i2,i3を平均すると、iave=(i1+i2+i3)/3となる。いま、idet=iaveとなるタイミングをtdetとすれば、tdet=tave=(ti+t2+t3)/3となる。
【0038】
例えば、U,V,W3相インバータにおいて、電流検出を図20、図21のような各タイミングでU,V,W相の電流に対して個別に行えば、平均検出時点taveが一致する。すなわち、tuave=tvave=twaveとなるので、検出電流を加算平均すれば、U,V,W3相全てにおいて平均検出時点taveでの電流が得られることになる。このようにすれば、A/D変換器111が1つしかなく、複数の電流を同時に検出することができないシステムでも、U,V,W相各相の実質的に同時刻の電流値を得ることができ、検出誤差を低減することができる。
【0039】
また、図13、図14に示したように、3相電流は搬送波の頂点に対して点対称となるので、第6、第7の実施の形態の電流検出方法と第10の実施の形態の電流検出方法とを組み合わせることもできる(第11の実施の形態)。この場合、第10の実施の形態の電流検出方法により基本波による電流検出誤差がなくなり、第6、第7の実施の形態の電流検出方法によりPWMによる電流リプルによる電流検出誤差がなくなるので、電流検出誤差をほとんどゼロにすることができる。これにより、電流制御系の応答性を向上できる。
【0040】
これまでの説明では、電流リプルIhは搬送波の頂点を中心に完全な点対称となっているが、前述の通り、実際には、インダクタンスの影響や電圧指令ベクトルの変化により、完全には点対称とはならないため、多少の検出誤差が生じる恐れがある。そこで、複数の電流検出値を加算する周期内で変調波(すなわち電圧指令ベクトル)を一定とすることにより、電流リプルIhが搬送波の頂点を中心とする点対称に近づき、低減効果が大きくなる。
【0041】
また、上記の各実施の形態は3相PWMインバータに対する例を示したが、本発明は多相インバータであれば、全て利用できる。
【0042】
また、3相のうちU相電流、W相電流を検出し、そこからV相電流を演算する構成を示したが、全ての電流を検出する構成とすることもできる。図22は、一般的な構成を示している。図1に示したモータ制御装置を一般化したインバータ制御装置を示している。負荷04に対してPWMインバータ02が3相電流を供給し、負荷04に対する3相電流それぞれをアナログの電流検出器03u,03v,03wが検出して制御装置05に出力する。制御装置05は、第1の実施の形態のモータ制御装置における制御装置05と共通の構成である。ただし、デジタル電流検出処理器11はU,V,W3相それぞれのアナログ電流検出信号をA/D変換し、かつ相毎に加算して電流平均値を求め、3軸/2軸座標変換器09に出力する構成である。尚、この図22の構成にあっても、電流検出は3相のうちの2相に対して行い、そこから残りの1相の電流を演算する構成にすることもできる。
【0043】
さらに、各実施の形態では、PWMインバータによる負荷電流の制御の例を示したが、例えば、負荷04が電源であり、インバータ02がコンバータとして作用した場合の電源電流の制御に適用することもできる。
【符号の説明】
【0044】
01…三角波PWM変調器
02…PWMインバータ
03u,03v,03w…電流検出器
04…同期電動機(負荷)
05…制御装置
07…回転位相角推定器
08…電流制御器
09…3軸/2軸座標変換器
10…2軸/3軸座標変換器
11…デジタル電流検出処理器
111…A/Dコンバータ
112…検出タイミング設定器
113u,113w…加算器
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、電流検出装置及びそれを用いたモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PWM(Pulse Width Modulation)インバータの電力変換装置では、PWMインバータの出力電流を検出する際に、検出電流に含まれる信号ノイズ等を低減するために電流検出を複数回行い、その加算値を検出値する方法を採用している。
【0003】
しかしながら、従来の技術では、パルス幅変調(PWM)によって発生する電流リプルを拾ってしまい、電流検出値に検出誤差が生じてしまう問題点があった。尚、ここで「検出誤差」とは、実際の電流ベクトルに対する検出値のずれを表し、加算値を検出値とする場合には、加算する周期における電流ベクトルの平均値と加算値の平均とのずれと定義している。
【0004】
また、多相インバータでは、通常、コストの問題からA/Dコンバータが1つしか搭載されておらず、複数の相電流を同時に検出することはできず、電流検出タイミングを相毎に異ならせている。そして相毎に電流検出タイミングを異ならせると、電流ベクトルに変換したときに、検出電流にベクトルの位置毎に異なった検出誤差が生じる問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3312472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされたもので、検出電流に含まれる検出誤差を低減できる電流検出装置及びそれを用いたモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態は、三角波パルス幅変調を用いた多相インバータの出力電流を検出する電流検出装置であって、あらかじめ設定した一定期間中の複数の特定のタイミング毎に電流を検出する電流検出手段と、前記一定期間中の複数の特定のタイミング毎の電流検出値を加算する加算手段とを備え、前記電流検出手段は、前記一定期間中の複数の特定のタイミングとして、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側との両方でそれぞれ少なくとも1回ずつ電流検出を行うようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態のモータ制御装置のブロック図。
【図2】第1の実施の形態のモータ制御装置における電流検出処理部のブロック図。
【図3】3軸固定座標系における電圧指令ベクトルとPWM出力ベクトルの関係の説明図。
【図4】直交電圧成分による電流リプルの波形図。
【図5】電圧指令ベクトル毎の直交電圧成分のベクトル図。
【図6】第1の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図7】第2の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図8】第3の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図9】第4の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図10】第5の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図11】第6の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図12】第7の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図13】三角波PWMにおけるU相電圧とU相電流との関係例1の説明図。
【図14】三角波PWMにおけるU相電圧とU相電流との関係例2の説明図。
【図15】第8の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図16】第9の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図17】3相電流における検出遅れが生じた際の検出電流の波形図。
【図18】3相電流における検出遅れが生じた際の検出電流の振幅図。
【図19】短時間における複数の電流検出値とその平均値の関係の説明図。
【図20】第10の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図21】第11の実施の形態における電流検出タイミングの説明図。
【図22】第12の実施の形態のインバータ制御装置のブロック線図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0010】
図1に各実施の形態に共通する同期電動機04を負荷とし、センサレス制御により制御するモータ制御装置の構成を示している。このモータ制御装置は、PWMゲート信号により直流電力を交流電力に変換し、またその逆変換も行うPWMインバータ02、このPWMインバータ02の交流出力を受けて動作する同期電動機04、PWMインバータ02から同期電動機04に供給される交流電力のU,V,W各相の交流電流iu,iv,iwのうちU,W2相の交流電流iu,iwを検出する電流検出器03u,03w、PWMインバータ02のゲート制御を行うため、電流検出器03u,03wの検出する交流電流iu,iwを所定のタイミングにてA/D変換し、デジタル電流検出値Iu,Iwとして取り込み、演算して各相の電圧指令Vu,Vv,Vwを出力する制御装置05、この制御装置05の出力する各相の電圧指令Vu,Vv,Vwを三角波搬送波によってPWMすることによりゲート指令を作成し、PWMインバータ02をゲート制御する三角波PWM変調器01にて構成されている。
【0011】
同期電動機04は、固定子の各励磁相に流れる3相交流電流iu,iv,iwによって磁界を発生し、回転子との磁気的相互作用によりトルクを発生するものである。
【0012】
制御装置05はマイクロコンピュータにて構成されるものであるが、その演算機能を構成要素に分けて示すと、回転位相各推定器07、電流制御器08、3軸/2軸座標変換器09、2軸/3軸座標変換器10、デジタル電流検出処理器11から構成されている。
【0013】
電流検出器03u,03wは、同期電動機04に流れる3相交流電流のうち2相iu,iwの電流応答値をアナログ信号として出力する。尚、図1では2相の電流を検出する構成を示しているが、U,V,W3相それぞれの電流応答値を検出する構成であってもよい。
【0014】
デジタル電流検出処理器11は、電流検出器03u,03wの電流検出アナログ信号を所定のタイミング毎に入力してA/D変換し、かつ相毎に所定回数ずつ加算して相毎のデジタル電流検出値を3軸/2軸座標変換器09に出力する。
【0015】
回転位相角推定器07は、3軸/2軸座標変換器09の変換処理した電流応答値から、同期電動機04の回転位相角θestを推定する。
【0016】
3軸/2軸座標変換器09は、デジタル電流検出処理器11の出力する電流応答値Iu,Iwに対して、回転位相角推定器07によって得られた回転位相角θestを用いて、3相固定座標系とγδ軸回転座標系の3軸/2軸座標変換を行い、3相電流値Iu,Iv,Iwから2軸電流値Iγres,Iδresを得、回転位相角推定器07と電流制御器08に出力する。尚、V相電流値Ivについては、検出されるU相、W相電流値Iu,Iwから換算して得ている。
【0017】
電流制御器08は、3軸/2軸座標変換器09の変換した2軸電流応答値Iγres,Iδresと電流指令値Iγref,Iδrefを比較し、2軸電圧指令値Vγ,Vδを決定する。
【0018】
2軸/3軸座標変換器10は、電流制御器08からの2軸電圧指令値Vγ,Vδを2軸/3軸座標変換し、3相電圧指令Vu,Vv,Vwを三角波PWM変調器01に出力する。三角波PWM変調器01は、上記のように、3相電圧指令Vu,Vv,Vwを三角波搬送波によってPWMすることによりゲート指令を作成し、PWMインバータ02をゲート制御する。
【0019】
上記のデジタル電流検出処理器11は、図2に示す機能構成であり、アナログ入力信号iu,iwを所定のタイミング毎にA/D変換してデジタル値にして出力するマルチ入出力チャネルを備えたA/Dコンバータ111、このA/Dコンバータ111に対して変換処理タイミングを設定するタイミング設定器112、A/Dコンバータ111の各出力チャネルから出力するデジタル電流検出値を所定回数加算し、電流平均値Iu,Iwとして出力する加算器113u,113wから構成されている。タイミング設定器112は、後述の各実施の形態の電流検出タイミングにてA/Dコンバータ111に対してタイミング設定チャネル指令を与える。
【0020】
以上の構成のモータ制御装置の動作について説明する。電流検出器で検出した電流Iu,Iv,Iwに検出誤差が含まれると、検出誤差に従い、回転位相角推定器07によって推定した回転位相角θestに振動が発生する。例えば、特許第3312472号公報の回転位相角推定器を用いた場合、単相交番電圧を指令に印加し、その直交方向成分の電流を用いて回転位相角を推定している。したがって、インバータによって発生する直交方向の検出電流誤差がそのまま回転位相角の推定誤差となる。
【0021】
そこで、本実施の形態では、次のように電流検出方法を実施して直交方向に生じる検出電流誤差を低減し、回転位相角の推定精度を向上させ、安定な制御を実現する。
【0022】
三角波PWMインバータ02では、2種類の零ベクトルと2種類の電圧ベクトルを合成することで、三角波搬送波の半周期間における電圧ベクトルの合成が電圧指令ベクトルと一致するように変調する。例えば、U,V,W3相の3軸固定座標系において、電圧指令ベクトルが図3エラー! 参照元が見つかりません。の位置にある場合には、(U,V,W)=(0,0,0)、(U,V,W)=(1,1,1)の2種類の零ベクトルと(U,V,W)=(1,0,0)、(U,V,W)=(1,1,0)との2種類の電圧ベクトルの合成によって電圧指令ベクトルと一致する電圧ベクトルを出力する。この時、出力したい電圧ベクトルの方向と直交する電圧成分Vhも出力されることになる。この直交電圧ベクトルVhは搬送波(Carrier)の半周期間で合成すれば零になるが、この直交電圧ベクトルによって図4に示すように電流リプルIhが発生することになる。
【0023】
図5に示すように、この直交電圧ベクトルは電圧指令ベクトルが1/6周期回転する毎に1周期の振動をし、すなわち搬送波周波数の6倍の周波数の電流リプルが発生する。
【0024】
ここで、図4から電流リプルIhは搬送波(Carrier)の頂点を中心に点対称となっており、搬送波の上り側と下り側で正負が異なっている。(実際には、インダクタンスの影響や電圧指令ベクトルの変化により、完全には点対称とはならないものの、点対称に近い波形となる。)図4では、搬送波の山側の頂点で点対称であることを示しているが、搬送波の谷側の頂点に関しても同様に点対称となる。また、電圧指令ベクトルの方向や大きさが異なる条件でも、上り側と下り側の正負が入れ替わったり、電流リプルの大きさが変化したりするだけで、この傾向は変わらない。
【0025】
図6に、第1の実施の形態において制御装置05が実行する電流検出タイミングを示している。デジタル電流検出処理器11は、1回の電流検出期間としての搬送波の1周期毎に、電流検出器03u,03wそれぞれからのアナログ電流検出信号iu,iwをA/D変換し、上り側で少なくとも1回、下り側で少なくとも1回の電流検出を行い、その検出値を加算し、加算値をデジタル電流応答値Iu,Iwとして出力する。これにより、正の誤差と負の誤差を加算することになり、検出電流に含まれる検出誤差を低減することができる。
【0026】
図6に示す第1の実施の形態では、搬送波の1周期毎にその上り側で1回、下り側で2回、所定のタイミングで電流検出を行っているが、一般的には、上り側と下り側で少なくとも1回以上、所定のタイミング毎に電流検出を行えば、その検出値に含まれる検出誤差が低減できる。
【0027】
また、搬送波の頂点に関しては、検出誤差が必ず零となるので、上り側、下り側の回数には含まれないが、図7のように頂点のタイミングでの検出値を加算してもよい(第2の実施の形態)。
【0028】
さらに、図8のように搬送波の2周期分を電流検出期間単位とし、この電流検出期間毎に搬送波の上り側、下り側でそれぞれ少なくとも1回以上、所定のタイミング毎に電流検出を行い、その加算値を電流応答値としてもよい(第3の実施の形態)。
【0029】
また、図9のように搬送波の1周期未満の検出値を加算する場合であっても、搬送波の上り側と下り側で少なくとも1回以上の電流検出を行えばよい(第4の実施の形態)。搬送波の上り側と下り側で電流リプルIhの平均値は等しいので、電流検出回数を上り側と下り側で同じにすれば、電流リプルIhをキャンセルできる量が増える。この図9に示す電流検出方法によれば、上り側と下り側で検出回数が異なる場合と比較して検出誤差が低減される。
【0030】
さらに、搬送波の頂点は上り側、下り側の回数には含まないので、図9の検出タイミングに加え、例えば、図10に示すように頂点での検出値を加算してもよい(第5の実施の形態)。
【0031】
第6の実施の形態を、図11を用いて説明する。前述の通り、電流リプルIhは搬送波の頂点を中心に点対称となっている。したがって、上り側、下り側それぞれの搬送波の高さが一致するタイミングでは、電流リプルは大きさが等しく、符号が逆である。このタイミングで電流値を検出すれば、電流リプルは完全に打ち消される。そこで、搬送波の上り側、下り側それぞれで搬送波の高さが一致するタイミングにて電流値を検出し、加算する。これにより、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出が図れる。
【0032】
また、そして搬送波の頂点は上り側、下り側のどちらにも含まないので、例えば、図12に示したように、搬送波の頂点でも電流値を検出し、これを他の位置で検出した電流値に加算することもできる(第7の実施の形態)。これにより、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出が図れる。
【0033】
これら第6、第7の実施の形態によれば、電流ベクトルに含まれる検出誤差だけでなく、3相電流に含まれる検出誤差を打ち消すこともできる。図13、図14にPWMにおけるU相電圧VuとU相電流iuの関係を示す。PWMにおいて、U相電圧Vuの出力は符号が同じ電圧が出力されるパターン(図13)と符号が異なる電圧が出力されるパターン(図14)とがある。これらのいずれの場合でも、搬送波の頂点に対して点対称となる。そこで、本実施の形態の電流検出方法を用いれば、3相電流に含まれる検出誤差を効果的に打ち消すことができる。
【0034】
図15に第8の実施の形態の電流検出方法を示す。搬送波の1周期を加算期間とし、4等分して、各等分期間の中心タイミングで電流検出し、4個の電流検出値を加算している。これにより、第6の実施の形態と同様に、搬送波の上り側、下り側それぞれで搬送波の高さが一致するタイミングにて電流値を検出し、加算することができ、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出ができる。
【0035】
また、上述したように、搬送波の頂点は上り側、下り側のどちらにも含まないので、図16に示すように、搬送波の頂点でも電流値を検出し、これを他の位置で検出した電流値に加算する(第9の実施の形態)。そこで、本実施の形態では、搬送波の1周期を加算期間とし、1周期を5等分して、各等分期間の中心タイミングで電流検出し、5個の電流検出値を加算している。これにより、電流リプルIhを効果的にキャンセルし、精度の良い電流検出が図れる。加えて、これら第8、第9の実施の形態の電流検出方法は、検出誤差が打ち消される効果を持ちながら、検出間隔を一定とするため、実機への実装が容易になる効果を有する。
【0036】
次に、第10の実施の形態について説明する。3相インバータにおいて出力電流の基本波成分が図17(a)のような正弦波となった場合、検出タイミングが遅れると、図17(b)に示すように出力電流の位相がずれたように検出される。すると、図18に示すように、通常は振幅が一定の出力21であるはずが、出力周波数の2倍で振動する検出電流22となる。
【0037】
インバータ出力電流の基本波は正弦波状であるが、短い時間では概ね線形に変化していると考えることができる。したがって、ある短い期間において複数回電流を検出し、その電流を加算平均すれば、平均検出時点(検出時点を時間的に平均した時点)における電流と一致する。すなわち、図19に示すように、複数回のタイミングti,t2,t3それぞれの電流検出値i1,i2,i3を平均すると、iave=(i1+i2+i3)/3となる。いま、idet=iaveとなるタイミングをtdetとすれば、tdet=tave=(ti+t2+t3)/3となる。
【0038】
例えば、U,V,W3相インバータにおいて、電流検出を図20、図21のような各タイミングでU,V,W相の電流に対して個別に行えば、平均検出時点taveが一致する。すなわち、tuave=tvave=twaveとなるので、検出電流を加算平均すれば、U,V,W3相全てにおいて平均検出時点taveでの電流が得られることになる。このようにすれば、A/D変換器111が1つしかなく、複数の電流を同時に検出することができないシステムでも、U,V,W相各相の実質的に同時刻の電流値を得ることができ、検出誤差を低減することができる。
【0039】
また、図13、図14に示したように、3相電流は搬送波の頂点に対して点対称となるので、第6、第7の実施の形態の電流検出方法と第10の実施の形態の電流検出方法とを組み合わせることもできる(第11の実施の形態)。この場合、第10の実施の形態の電流検出方法により基本波による電流検出誤差がなくなり、第6、第7の実施の形態の電流検出方法によりPWMによる電流リプルによる電流検出誤差がなくなるので、電流検出誤差をほとんどゼロにすることができる。これにより、電流制御系の応答性を向上できる。
【0040】
これまでの説明では、電流リプルIhは搬送波の頂点を中心に完全な点対称となっているが、前述の通り、実際には、インダクタンスの影響や電圧指令ベクトルの変化により、完全には点対称とはならないため、多少の検出誤差が生じる恐れがある。そこで、複数の電流検出値を加算する周期内で変調波(すなわち電圧指令ベクトル)を一定とすることにより、電流リプルIhが搬送波の頂点を中心とする点対称に近づき、低減効果が大きくなる。
【0041】
また、上記の各実施の形態は3相PWMインバータに対する例を示したが、本発明は多相インバータであれば、全て利用できる。
【0042】
また、3相のうちU相電流、W相電流を検出し、そこからV相電流を演算する構成を示したが、全ての電流を検出する構成とすることもできる。図22は、一般的な構成を示している。図1に示したモータ制御装置を一般化したインバータ制御装置を示している。負荷04に対してPWMインバータ02が3相電流を供給し、負荷04に対する3相電流それぞれをアナログの電流検出器03u,03v,03wが検出して制御装置05に出力する。制御装置05は、第1の実施の形態のモータ制御装置における制御装置05と共通の構成である。ただし、デジタル電流検出処理器11はU,V,W3相それぞれのアナログ電流検出信号をA/D変換し、かつ相毎に加算して電流平均値を求め、3軸/2軸座標変換器09に出力する構成である。尚、この図22の構成にあっても、電流検出は3相のうちの2相に対して行い、そこから残りの1相の電流を演算する構成にすることもできる。
【0043】
さらに、各実施の形態では、PWMインバータによる負荷電流の制御の例を示したが、例えば、負荷04が電源であり、インバータ02がコンバータとして作用した場合の電源電流の制御に適用することもできる。
【符号の説明】
【0044】
01…三角波PWM変調器
02…PWMインバータ
03u,03v,03w…電流検出器
04…同期電動機(負荷)
05…制御装置
07…回転位相角推定器
08…電流制御器
09…3軸/2軸座標変換器
10…2軸/3軸座標変換器
11…デジタル電流検出処理器
111…A/Dコンバータ
112…検出タイミング設定器
113u,113w…加算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角波パルス幅変調を用いた多相インバータの出力電流を検出する電流検出装置であって、
あらかじめ設定した一定期間中の複数の特定のタイミング毎に電流を検出する電流検出手段と、
前記一定期間中の複数の特定のタイミング毎の電流検出値を加算する加算手段とを備え、
前記電流検出手段は、前記一定期間中の複数の特定のタイミングとして、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側との両方でそれぞれ少なくとも1回ずつ電流検出を行うことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記一定期間中の複数の特定のタイミングとして、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側とで同じ回数ずつ電流検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記電流検出手段は、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側とで搬送波の高さが一致するタイミングにて電流検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記電流検出手段は、前記一定期間の中心を搬送波の山の頂点あるいは谷の頂点とし、前記電流検出のタイミングとして、前記一定期間を等分した期間において各等分期間の中心に設定したことを特徴とする請求項3に記載の電流検出装置。
【請求項5】
加算する周期内で変調波を一定とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記電流検出手段は、前記一定期間中に複数の相毎に複数のタイミングにて電流検出を行うのに、各相の複数の電流検出タイミングを前記一定期間において時間的に平均した際の平均検出タイミングが等しくなる設定にしたことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電流検出装置と、
前記電流検出装置の検出する3相それぞれの電流値に基づいてモータの位相を推定する回転位相推定手段と、
前記電流検出装置で検出した電流値を、前記回転位相推定手段の求めた位相推定値を用い、回転子の磁束方向をd軸としこれと直交する軸をq軸とする回転dq座標系の電流値に座標変換する3軸/2軸座標変換手段と、
前記回転dq座標系上で、前記座標変換した検出電流と電流指令との差に基づいて2軸電圧指令を演算する電流指令演算手段と、
前記電流指令演算手段の算出する2軸電圧指令を、前記回転位相推定手段の求めた位相推定値を用いて3軸固定座標系の電圧指令に変換する2軸/3軸座標変換手段と、
前記2軸/3軸座標変換手段の変換した3軸固定座標系の電圧指令を三角波搬送波にてPWM変調してゲート信号を得る三角波PWM変調手段と、
前記三角波PWM変調手段の出力するゲート信号にて電力変換を行い、前記モータに出力するPWMインバータとを備えたモータ制御装置。
【請求項1】
三角波パルス幅変調を用いた多相インバータの出力電流を検出する電流検出装置であって、
あらかじめ設定した一定期間中の複数の特定のタイミング毎に電流を検出する電流検出手段と、
前記一定期間中の複数の特定のタイミング毎の電流検出値を加算する加算手段とを備え、
前記電流検出手段は、前記一定期間中の複数の特定のタイミングとして、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側との両方でそれぞれ少なくとも1回ずつ電流検出を行うことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記一定期間中の複数の特定のタイミングとして、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側とで同じ回数ずつ電流検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記電流検出手段は、前記三角波PWMの搬送波の上り側と下り側とで搬送波の高さが一致するタイミングにて電流検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記電流検出手段は、前記一定期間の中心を搬送波の山の頂点あるいは谷の頂点とし、前記電流検出のタイミングとして、前記一定期間を等分した期間において各等分期間の中心に設定したことを特徴とする請求項3に記載の電流検出装置。
【請求項5】
加算する周期内で変調波を一定とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記電流検出手段は、前記一定期間中に複数の相毎に複数のタイミングにて電流検出を行うのに、各相の複数の電流検出タイミングを前記一定期間において時間的に平均した際の平均検出タイミングが等しくなる設定にしたことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電流検出装置と、
前記電流検出装置の検出する3相それぞれの電流値に基づいてモータの位相を推定する回転位相推定手段と、
前記電流検出装置で検出した電流値を、前記回転位相推定手段の求めた位相推定値を用い、回転子の磁束方向をd軸としこれと直交する軸をq軸とする回転dq座標系の電流値に座標変換する3軸/2軸座標変換手段と、
前記回転dq座標系上で、前記座標変換した検出電流と電流指令との差に基づいて2軸電圧指令を演算する電流指令演算手段と、
前記電流指令演算手段の算出する2軸電圧指令を、前記回転位相推定手段の求めた位相推定値を用いて3軸固定座標系の電圧指令に変換する2軸/3軸座標変換手段と、
前記2軸/3軸座標変換手段の変換した3軸固定座標系の電圧指令を三角波搬送波にてPWM変調してゲート信号を得る三角波PWM変調手段と、
前記三角波PWM変調手段の出力するゲート信号にて電力変換を行い、前記モータに出力するPWMインバータとを備えたモータ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−110074(P2012−110074A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254902(P2010−254902)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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