説明

電源回路

【課題】平衡ラインに入れているコンデンサに端子外れや接触不良が起きても2次側漏洩電流の増加による感電事故を未然に防止する。
【解決手段】インバータ回路10から整流平滑回路16に高周波電力を伝送する平衡ラインに入れた一対のコンデンサを4端子コンデンサ38,40とし、インバータ回路10のコイル28に対する直流電力供給を、4端子コンデンサの同一電極に設けた2端子a,bを介して行い、端子外れ又は接触不良に対しインバータ回路10を停止させる。また平衡ラインから整流平滑回路16に高周波電力を入力する平衡不平衡変換回路14につき、2系統化して冗長接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次側インバータと2次側整流回路又は交流変換回路をコンデンサにより絶縁分離した電源回路に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、インバータを使用したスイッチングレギュレータなどの電源回路にあっては、インバータのスイッチング周波数の増加に伴いそれまでのトランスによる1次側と2次側の絶縁分離では、規定の絶縁性能を確保するための絶縁構造の複雑化と大型化が避けられないことから、インバータの1次側と負荷を接続する2次側とをコンデンサにより絶縁分離している。
【0003】
このようなコンデンサによる絶縁分離型の電源回路にあっては、直流電力を1次側インバータにより所定の周波数の高周波電力に変換した後にコンデンサによる絶縁障壁を介して整流平滑回路で直流電力に変換して負荷に供給するか、又は平滑回路で平滑した交流電力を負荷に供給している。
【0004】
更に、コンデンサの1次側に1次側インバータ回路が発生した高周波電圧を不平衡電圧から平衡電圧への変換する不平衡平衡変換回路を設けると共に、コンデンサの2次側に平衡電圧を不平衡電圧へ変換する平衡不平衡変換回路を設け、コンデンサを介して接続する信号ラインを平衡ラインとすることで、平衡ラインに相互に逆向きとなる高周波電流を流すことによる打消し作用で2次側とグランド間に流れる漏洩電流を小さくし、漏洩電流の抑制で2次側での感電事故を防止するようにしている。
【特許文献1】特許第3043947号公報
【特許文献2】特開昭63−148610号公報
【特許文献3】実開昭57−29129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような1次側インバータと2次側整流回路又は交流変換回路の平衡ラインに入れた一対のコンデンサによって1次側2次側間の絶縁と、高周波伝送電流の打ち消しにより漏洩電流を低減している従来の電源回路にあっては、平衡ラインに入れている一対のコンデンサのうちの片側が外れたり、リードの半田付けが接触不良となった場合、平衡ラインの電流差動による高周波電流の打ち消し作用がなくなり、このため不平衡となって高周波電流の差分が大きくなり、漏洩電流が増加し、2次側の端子に人が触れた場合には感電事故を起こす問題があった。
【0006】
本発明は、平衡ラインに入れているコンデンサに端子外れや接触不良が起きても2次側漏洩電流の増加による感電事故を未然に防止するフェイルセーフ機能を備えた電源回路を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明の電源回路は次のように構成する。本発明は、スイッチング素子のスイッチング動作によりトランスの1次巻線に高周波電圧を発生する1次側のインバータ回路と高周波電圧を整流平滑する2次側の整流平滑回路を1次側と2次側絶縁用の一対のコンデンサを介して接続し、インバータ回路が発生した前記高周波電圧の不平衡電圧から平衡電圧への変換を行う不平衡平衡変換回路を1次側に設けるとともに、不平衡平衡変換回路の出力の平衡電圧から不平衡電圧への変換を行う平衡不平衡変換回路を2次側に設けた電源回路を対象とする。
【0008】
このような電源回路につき、本発明は、平衡ラインに入れた一対のコンデンサを4端子以上の多端子コンデンサとし、インバータ回路に対する直流電力供給を、多端子コンデンサの同一電極に設けた2端子を介して行い、端子外れ又は接触不良に対しインバータ回路を停止させることを特徴とする。
【0009】
本発明の別の形態にあっては、伝送ラインに入れた一対のコンデンサを4端子以上の多端子コンデンサとし、多端子コンデンサの各電極に設けた複数端子から接続先の回路部位に対し複数の分離した系統ラインを冗長接続したことを特徴とする。
【0010】
本発明の別の形態にあっては、一対の多端子コンデンサで接続される1次側の不平衡平衡変換回路と2次側の平衡不平衡変換回路又は整流平滑回路の何れか一方又は両方を2系統設けて冗長接続したことを特徴とする。
【0011】
本発明の別の形態にあっては、不平衡平衡変換回路の平衡出力コイルをインバータ回路の安定電位から分離絶縁、または平衡不平衡変換回路の平衡入力コイルを整流平滑回路の安定電位から分離絶縁したことを特徴とする。
【0012】
本発明の別の形態にあっては、不平衡平衡変換回路又は平衡不平衡変換回路に接続されたコンデンサの端子が外れた時に発生する漏洩電流を検出してインバータ回路を停止するインバータ停止回路部を設けたことを特徴とする。
【0013】
ここで、インバータ停止回路部は、インバータ回路の安定電位と不平衡平衡変換回路の平衡出力コイルの中性点の間に1次コイルを接続したコモンモードトランスと、コモンモードトランスの2次コイルの発生電圧から漏洩電流を検出する漏洩電流検知回路と、漏洩電流検知回路の検出漏洩電流が所定の閾値以上のときインバータ回路に遮断信号を出力して停止させる停止制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0014】
またインバータ停止回路部は、インバータ回路に対する直流電力の入力ライン間に設けた検出コイル付きのコモンモードトランスと、コモンモードトランスの検知コイルの発生電圧から漏洩電流を検出する漏洩電流検知回路と、漏洩電流検知回路の検出漏洩電流が所定の閾値以上のときインバータ回路に遮断信号を出力して停止させる停止制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0015】
更に、インバータ停止回路部は平衡不平衡変換回路の不平衡出力コイルの中性点と整流平滑回路の安定電位との間に1次コイルを接続したコモンモード検知トランスと、コモンモード検知トランスの2次コイルの発生電圧から漏洩電流を検出する漏洩電流検知回路と、漏洩電流検知回路の検出漏洩電流が所定の閾値以上のときインバータ回路のスイッチング動作を停止する停止回路とを備えたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1次側インバータから2次側整流回路又は交流変換回路に高周波電力を伝送する平衡ラインに入れた絶縁用のコンデンサに端子外れなどの異常が発生しても、インバータを停止するか、或いは冗長構成により平衡状態を維持した運転を継続させ、不平衡状態となることによる漏洩電流の増加を未然に防止し、感電などの重大な事故を確実に防ぐことができる。
【0017】
特に、1次側インバータから2次側整流回路又は交流変換回路に高周波電力を伝送する平衡ラインに入れたコンデンサとして、例えば4端子コンデンサを使用したことで、平衡ラインの冗長接続と異常発生時のインバータ停止が、簡単な回路構成により低コストで実現できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の電源回路の実施形態にあっては、1次側インバータの高周波電力を2次側整流回路又は交流変換回路に伝送する平衡ラインに設けた一対の多端子コンデンサの端子外れに対し次の5つのフェイルセーフモードを適用する。
【0019】
第1モード:端子外れで1次側インバータを停止
第2モード:平衡ラインに対する4端子コンデンサの端子冗長接続
第3モード:平衡ラインの1次側電力供給部又は2次側電力受給部の2系統化
第4モード:平衡ラインの絶縁分離
第5モード:端子外れで流れる漏洩電流を検知して1次側インバータを停止
【0020】
図1は本発明による電源回路の第1実施形態であり、1次側インバータの高周波電力を2次側整流平滑回路に伝送する平衡ラインに設けた一対の多端子コンデンサの端子外れに対し、
(1)端子外れで1次側インバータを停止する第1モード
(2)平衡ラインに対する4端子コンデンサの端子冗長接続を行う第2モード、
を適用したことを特徴とする。
【0021】
図1において、第1実施形態の電源回路は、1次側から2次側に向けて、インバータ回路10、不平衡平衡変換回路12、平衡不平衡変換回路14及び整流平滑回路16を設けている。
【0022】
インバータ回路10は、直流電力をスイッチング動作により所定の第1周波数の高周波電力に変換して出力する。整流平滑回路16は交流直流変換回路であり、インバータ回路10から供給された高周波電力を、整流した後に平滑して負荷に出力する。
【0023】
不平衡平衡変換回路12は、インバータ回路10から出力された高周波電圧を不平衡電圧から平衡電圧に変換する。平衡不平衡変換回路14は、不平衡平衡変換回路12から出力された平衡電圧を不平衡電圧に変換して整流平滑回路16に供給する。ここで、1次側のインバータ回路10としてはプッシュプルインバータ回路を使用している。
【0024】
更に図1の実施形態を具体的に説明すると次のようになる。交流電源18からの交流出力はブリッジ整流回路20により全波整流され、コンデンサ22により平滑される。プッシュプルインバータを構成するインバータ回路10は、スイッチング素子としてFET24,26を有し、FET24,26はドライブ回路30によりオン、オフ制御される。
【0025】
FET24,26のソース端子は安定化電位に共通接続され、ドレイン側は平衡ラインに接続した一対の4端子コンデンサ38,40のそれぞれの共通電極を介して、1次コイル28の両端にそれぞれ接続されている。また1次コイル28の中間タップは、コイル32を介してブリッジ整流回路のプラス側に接続されている。
【0026】
1次コイル28にはFET24,26のオン、オフ動作により高周波電圧が発生し、1次コイル28は同時にインバータ回路10で発生した不平衡電圧を平衡電圧に変換して出力する不平衡平衡変換回路12を構成している。コイル32とコンデンサ34,36は、1次コイル28に発生する高周波電圧の矩形波をサイン波に変換している。
【0027】
プッシュプルインバータを用いたインバータ回路10の出力、即ち1次コイル28で構成される不平衡平衡変換回路12の出力は、一対の平衡ラインを介して平衡不平衡変換ライン14に接続され、更に整流84平滑回路16に接続されている。
【0028】
この不平衡平衡変換回路12と平衡不平衡変換回路14の間の平衡ラインには、各ラインごとに4端子コンデンサ38,40が設けられている。4端子コンデンサ38はリード端子a,b,c,dを備え、リード端子a,bは一方のコンデンサ電極に共通接続されており、リード端子c,dは他方のコンデンサ電極に共通接続されている。
【0029】
このような4端子コンデンサ38としては、例えば図2に示す4端子コンデンサが使用できる。図2は本発明の電源回路で使用する4端子コンデンサの説明図である。図2(A)は積層セラミックタイプの4端子コンデンサ38であり、一対の電極38a,38bを備え、電極38aにつき両側にリード電極a,bを取り出し、また電極38bについても同様に両側に電極c,dを取り出している。
【0030】
図2(B)は本発明の電源回路で使用する4端子コンデンサ38の他の例であり、この4端子コンデンサ38にあっては円盤状のセラミックコンデンサを使用しており、一方のコンデンサ電極からリード端子a,bが引き出され、他方の電極からリード端子c,dが引き出されている。
【0031】
再び図1を参照するに、平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38,40における1次側の電極から引き出されたリード端子a,bにつき、本発明にあっては、第1モードである4端子コンデンサ38の端子外れで1次側のインバータ回路10の動作を停止するための回路接続を行っている。
【0032】
即ち、第1インバータ10に設けたFET24,26のドレイン側を4端子コンデンサ38のリード端子aに接続し、同じ電極に接続しているリード端子bを1次コイル28に接続している。
【0033】
このため4端子コンデンサ38,40におけるリード端子aまたはリード端子bが外れた場合、FET24または26のドレインと1次コイル28の接続が切り離され、ドライブ回路30によりFET24,26をオン、オフ動作しても、リード端子aまたはbが外れている系統については1次コイル28に電流が流れず、プッシュプルインバータとしての動作は停止する。
【0034】
なお4端子コンデンサ38または40のいずれか一方のリード端子a,bの外れに対しては、FET24,26のオン、オフ動作により、いずれか一方のオン、オフ動作で1次コイル28に過大電流がながれてFETが破壊し、インバータ動作が停止して高周波電力が発生しないことから、平衡ラインがリード端子外れで不平衡状態となっても、2次側の整流平滑回路16に流れ込む漏洩電流も十分に抑えられ、感電事故を防止できる。
【0035】
以上のように、4端子コンデンサ38,40の両方についてリード端子a,bのいずれかの端子外れが起きた場合には、インバータ回路10の動作は完全に停止する。
【0036】
4端子コンデンサ38,40を備えた平衡ラインに続いて設けられた平衡不平衡変換回路14は、平衡ラインに対する4端子コンデンサの端子冗長接続である第2モードが適用されている。
【0037】
平衡不平衡変換回路14は、4端子コンデンサ38側に設けた2系統の平衡入力コイル42、4端子コンデンサ40側に設けた2本の平衡入力コイル44、更に整流平滑回路16側に接続された不平衡出力コイル46で構成されており、各コイルは電磁誘導結合されている。
【0038】
4端子コンデンサ38のリード端子cは平衡入力コイル42bに接続され、またリード端子dも平衡入力コイル42に接続され、平衡入力コイル42の反対側は整流平滑回路16の安定電位に接続されている。
【0039】
同様に、4端子コンデンサ40のリード端子cは平衡入力コイル44に接続され、リード端子bも平衡入力コイル44aに接続され、平衡入力コイル44の反対側は整流平滑回路16の安定電位に共通接続されている。
【0040】
即ち、この整流平滑回路16に対する2次側電力供給部となる平衡不平衡変換回路14において、本発明にあっては、平衡ラインに4端子コンデンサ38,40を設けることで、その2次側の端子を冗長接続としており、4端子コンデンサ38,40のリード端子c,dのいずれか一方に端子外れが起きても、正常な端子による平衡状態が維持できることで、フェイルセーフを図っている。
【0041】
ここで平衡入力コイル42には1次コイル28における中間タップから見た高周波電圧とは逆方向の電圧が発生し、また平衡入力コイル44にも1次コイル28の中間タップから見た高周波電圧とは逆方向の電圧が発生し、この平衡入力電圧による電磁誘導を受けて平衡出力コイル46に不平衡電圧が発生し、これが整流平滑回路16に供給されることになる。
【0042】
整流平滑回路16は、コンデンサ48に続いてブリッジ整流回路50を持ち、ブリッジ整流回路50の出力に抵抗55を介して出力制御素子としてのFET52を接続している。ブリッジ整流回路50の全波整流による直流電力は、制御回路54によるFET52の制御動作により、インバータ回路10の高周波電力を脈流電力に変換し、この脈流電力をコイル56とコンデンサ58で直流に平滑して、負荷60に出力している。制御回路54は整流平滑回路16による直流出力電圧を規定の一定電圧となるようにFET52を制御している。
【0043】
ここで、平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38,40としては、交流電源18及び整流平滑回路16の周波数、例えば50〜60Hzに対しては高インピーダンスであり、且つインバータ回路10の高周波信号に対しては低インピーダンスとなるように容量を選定する必要があり、インバータ回路10の周波数が例えば10MHz程度であった場合には、1000pFの容量のものを使用すればよい。また4端子コンデンサ38,40の耐圧としては3KV〜4KVと十分に高いものを使用している。
【0044】
更に、4端子コンデンサ38,40による絶縁障壁を設けた平衡ラインを介してインバータ回路10と整流平滑回路16を接続することで、インバータ回路10からの高周波電力の伝送については、平衡ラインにより高周波電流が打ち消し合う方向に流れるため、高周波電流の差電流に起因したグランド側への漏洩電流を極めて少なくすることができ、整流平滑回路16を設けている2次側の端子に人が手を触れた際の感電事故を確実に防止することができる。
【0045】
また、不平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38,40に端子外れなどの異常が起きた場合、インバータ回路10の動作が停止するか、あるいは平衡不平衡変換回路14におけるコンデンサ端子冗長化により、端子外れに対し平衡状態が崩れることがなく、この結果、4端子コンデンサ38,40に端子外れが起きても漏洩電流を十分に抑えることができ、2次側における感電事故を防止できる。
【0046】
図3は本発明による電源回路の第2実施形態であり、この実施形態にあっては、1次側のインバータ回路10として共振インバータ回路を使用しており、平衡ラインに設けたコンデンサ端子電圧の外れに対しては
(1)端子外れで1次側インバータを停止する第1モード、
(2)平衡ラインに対する4端子コンデンサの端子冗長接続となる第2モード、
を適用したことを特徴とする。
【0047】
図3において、交流電源18からの交流出力はコンデンサ62を介して、コイル64a、64bを有する不平衡平衡変換回路12に入力する。インバータ回路10は共振インバータ回路を構成しており、コンデンサ66、コイル68、FET70及びドライブ回路72で構成される。
【0048】
ドライブ回路72は、制御回路96により制御されてFET70をオン、オフすることにより、高周波のサイン波に対し不平衡電圧から平衡電圧への変換を行うが、交流電源18の交流出力に対しては不平衡から平衡への変換作用は持たない。
【0049】
不平衡状態のまま不平衡平衡変換回路12を通過した交流出力は、その交流電位の変化に応じてインバータ回路10の共振インバータにより高周波のサイン波に変換される。高周波のサイン波は半サイクルずつ、コイル64a,64bのそれぞれに逆向きに発生し、平衡ラインに設けている4端子コンデンサ38,40に供給される。共振インバータを用いたインバータ回路10は、4端子コンデンサ38,40による絶縁障壁を介して2次側に接続されている。
【0050】
ここで不平衡平衡変換回路12のコイル64a,64bの2次側は、平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38,40の同一電極側のリード端子aからリード端子bを介して共振インバータを構成するインバータ回路10に接続されている。このため4端子コンデンサ38,40におけるリード端子a,bに端子外れが起きると、インバータ回路10に対する不平衡状態となる交流出力の供給が停止され、インバータ回路10は停止することになる。
【0051】
4端子コンデンサ38,40の2次側に設けた平衡不平衡変換回路14は、平衡入力コイル76a,76bと不平衡出力コイル78を備えており、平衡入力コイル76aにはコイル64aに発生した電圧と逆方向の電圧が発生し、また平衡入力コイル76bにはコイル64aに発生した電圧と逆方向の電圧が発生し、この発生電圧の電磁誘導を受けて、2次コイルとなる不平衡出力コイル78に同方向の電圧を発生する。なお、コンデンサ74は平衡ラインの2次側の発生電圧を低くするために設けている。
【0052】
2次側は整流平滑回路ではなく交流変換回路17としている。交流変換回路17は、コンデンサ80、FET82,84、ダイオード86,88、ドライブ回路90、コイル92及びコンデンサ94で構成される。交流変換回路17は、ドライブ回路90によるFET82,84のオン、オフ制御により交流入力を交流出力に変換して負荷60に供給する。なお、コンデンサ94はノイズ吸収用に設けられている。
【0053】
ここで、平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38,40の2次側のリード端子c,dについては平衡不平衡変換回路14の平衡入力コイル76a.76bに対する接続ラインを2系統の接続ラインとしている。このため、リード端子c,dのいずれか一方に端子外れが起きても、平衡ラインから4端子コンデンサ38,40が切り離されることがなく、端子外れに対し不平衡状態とならずに平衡状態を維持することのできるフェイルセーフ動作が実現できる。
【0054】
このため4端子コンデンサ38,40に端子外れが起きた場合、1次側のリード端子a,bの端子外れについては共振インバータを用いたインバータ回路10の動作を停止し、一方、2次側のリード端子c,dの端子外れについては2系統の接続で端子外れによる不平衡状態となることを防止し、端子外れに対し4端子コンデンサ38,40による絶縁障壁を備えた平衡ラインを維持できることで、平衡ラインに流れる高周波電流の打ち消しにより、差動電流として生ずるグランドに対する漏洩電流を抑制し、2次側の端子に触れた際などの感電事故を確実に防止できる。
【0055】
図4は本発明による電源回路の第3実施形態であり、この第3実施形態にあっては1次側のインバータ回路10として自励ハーフブリッジインバータ回路を用いたことを特徴とし、更に平衡ラインに設けたコンデンサ端子外れに対するフェイルセーフとして
(1)平衡ラインに対する4端子コンデンサの端子冗長接続となる第2モード、
(2)平衡ラインの1次側電力供給部の2系統化となる第3モード、更に
(3)平衡ラインの絶縁分離となる第4モード、
を適用したことを特徴とする。
【0056】
図4において、交流電源18からの交流出力はブリッジ整流回路98により全波整流され、コンデンサ100,102により2分割される。インバータ回路10は自励ハーフブリッジインバータ回路を構成しており、スイッチング素子としてFET103,104を有し、FET103,104のゲート側にはコンデンサ106,108及び検出コイル110,112がそれぞれ設けられている。
【0057】
抵抗116,118はFET103,104の駆動電圧を供給し、ダイオード117,119はFET103,104のゲートを保護するために設けられている。自励発振によりFET103,104のオン、オフ動作が行われると、1次コイル120に高周波電圧が発生する。コンデンサ100,102の中間接続点とFET103,104との中間接続点との間に設けられた1次コイル120とコンデンサ122の直列回路は、1次コイル120に発生する高周波電圧の矩形波をサイン波に変換するために設けられている。
【0058】
1次コイル120に対し設けられたコイル124,126は不平衡平衡変換回路12を構成しており、1次コイル120に発生した高周波電圧である不平衡電圧による電磁誘導を受けてコイル124,126に平衡電圧を発生し、不平衡電圧から平衡電圧への変換を行う。この場合、コイル124には1次コイル120と同方向の高周波電圧が発生し、コイル112には1次コイル120と逆方向の高周波電圧が発生する。
【0059】
自励ハーフブリッジインバータ回路を用いたインバータ回路10の高周波出力は、1次側と2次側を絶縁分離する4端子コンデンサ38,40を設けた平衡ラインを介して2次側の整流平滑回路16に接続されている。
【0060】
整流平滑回路16は、可変容量制御素子128、ブリッジ整流回路132、コイル134、コンデンサ136及び制御回路130で構成されており、コンデンサ136で平滑された直流出力電圧は制御回路130に出力され、制御回路130は直流出力電圧に応じて可変容量制御素子128の容量を可変とし、直流出力電圧を規定電圧に制御する。
【0061】
ここで、平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38,40における2次側のリード端子c,dにつき、整流平滑回路16の入力ラインに対し2系統接続とする第2モードによる端子冗長接続が行われている。このため、4端子コンデンサ38,40のリード端子c,dのいずれか一方に端子外れが起きたとしても、平衡ラインにおける4端子コンデンサ38,40の絶縁障壁としての機能は失われず、また平衡状態も維持され、端子外れによる漏洩電流の増加で短絡事故を起こすことを防止できる。
【0062】
また、平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38,40の1次側のリード端子a,bにつき、不平衡平衡変換回路12に設けている平衡出力コイルとなるコイル124,126につき2系統の接続とすることで、第3モードのフェイルセーフを図っている。
【0063】
更に不平衡平衡変換回路12に設けている平衡出力コイルとなるコイル124,126は、トランス構造により1次側と絶縁分離されており、4端子コンデンサ38,40による絶縁分離に加え、不平衡平衡変換回路12における絶縁分離により、1次側と2次側の絶縁分離を更に強化することができる。
【0064】
なお図4の実施形態にあっては、2次側の発生電圧が低いことから2次側に平衡不平衡変換回路14を設ける必要がないが、2次側の発生電圧が高い場合には整流平滑回路16の入力段に例えば図1に示したような平衡不平衡変換回路14を設ければよい。
【0065】
図5は本発明による電源回路の第4実施形態であり、この第4実施形態は1次側のインバータ回路10としてフルブリッジインバータ回路を使用し、平衡ラインに設けたコンデンサの端子外れに対するフェースセーフとして
(1)平衡ラインの1次側の電力受給部の2系統を行う第3モード、
(2)平衡ラインを絶縁分離する第4モード、
を適用したことを特徴とする。
【0066】
図5において、直流電圧11に続いて設けられたインバータ回路10はフルブリッジインバータ回路を構成している。すなわちFET140,142,144,146でフルブリッジを構成し、ドライブ回路148によるFET140,142とFET144,146が交互にオン、オフ動作され、これにより1次巻線154に高周波電圧が発生する。コイル150とコンデンサ152は発生する高周波電圧を矩形波からサイン波に変換している。
【0067】
第1ブリッジインバータ回路10に続いては、不平衡平衡変換回路12が設けられ、1次コイル154に発生して高周波電圧による不平衡電圧から平衡電圧の変換を行う。不平衡平衡変換回路12は不平衡入力コイルとなる1次コイル154に対し、平衡出力コイルとなる2つのコイル156,157を備えており、コイル156,157には1次コイル154と同方向の電圧が発生する。
【0068】
ここで不平衡平衡変換回路12はトランス構造により、1次コイル154とコイル156,157も分離しており、これが第4モードによる平衡ラインの1次側の絶縁分離の適用である。
【0069】
不平衡平衡変換回路12からの平衡ラインには、それぞれ一対のコンデンサ38a,38bとコンデンサ40a,40bが設けられ、その2次側に平衡不平衡変換回路14を設けている。平衡不平衡変換回路14は1次側にコイル158、159を設け、コイル158,159にはコイル156,157の発生電圧と逆方向の電圧が発生する。
【0070】
コイル158,159に対してはトランス構造にる絶縁分離を介して整流平滑回路16の電力受給部となる2次コイル160が設けられている。この平衡不平衡変換回路14においても、トランス構造による絶縁分離による第4モードのフェイルセーフの適用が行われている。
【0071】
この結果、図5の実施形態の平衡ラインにあっては、インバータ回路10及び整流平滑回路16のそれぞれに対して平衡ライン1次側と2次側をトランス構造により絶縁分離すると共に、平衡ラインに設けた一対のコンデンサ38a,38b,40a,40bにより絶縁分離を行っている。
【0072】
一対のコンデンサ38a,38b,40a,40bの1次側のリード端子a,a‘とb,b’に対しては不平衡平衡変換回路12に設けたコイル156,157がそれぞれ接続されており、一対のコンデンサ38a,38bと40a,40bから見ると平衡ラインの1次側が2系統接続されている。また一対のコンデンサ38a,38bと40a,40bの2次側のリード端子c,c‘とd,d’に対しては平衡不平衡変換ライン14のコイル158,159がそれぞれ接続されており、一対のコンデンサ38a,38bと40a,40bから見ると2次側についても2系統の対応接続が行われている。
【0073】
すなわち平衡ラインに設けた4端子コンデンサ8,40の1次側及び2次側につき、1次側についてはコイル156,157が並列接続され、2次側についてはコイル158,159が並列接続されていることになる。このため一対のコンデンサ38a,38bと40a,40bのリード端子にいずれかの端子外れが起きたとしても、必ず正常な1系統が残ることで平衡ラインの平衡状態を維持し、漏洩電流の増加による感電事故の発生を未然に防止できる。この平衡ラインに対する4端子コンデンサの1次側及び2次側の2重接続は第3モードによるフェイルセーフの適用である。
【0074】
平衡不平衡変換回路14の2次コイル160に発生した電圧はブリッジ整流回路162により全波整流され、コンデンサ164,166により平滑され、交流変換回路17に供給される。交流変換回路17は、FET170,172、ダイオード174、176、ドライブ回路178、コイル180及びコンデンサ182から構成されている。
【0075】
ドライブ回路178はFET170,172をオン、オフ制御することで直流電力を交流電力に変換し、さらにコイル180及びコンデンサ182で矩形波をサイン波に変換し、負荷60に変換した交流電力を供給する。
【0076】
制御回路168はインバータ回路10の入力側の直流電圧と出力側の交流電圧を入力しており、直流入力電圧が一定電圧となるようにインバータ回路10のドライブ回路148のスイッチング制御を行い、同時に交流出力電圧が一定となるように交流変換回路17のドライブ回路178のスイッチング制御を行っている。
【0077】
図6は本発明による電源回路の第5実施形態であり、この第5実施形態にあってはインバータ回路としてシングルインバータ回路を使用しており、また平衡ラインのコンデンサ端子外れに対しては、
(1)平衡ラインの2次側電力受給部の2系統化を行う第3モード、
(2)端子外れで流れる漏洩電流を検出して1次側インバータを検出する第5モード、
を適用としたことを特徴とする。
【0078】
図6において、直流電流11に対しては、インバータ回路10としてシングルインバータ回路が接続されている。インバータ回路10はトランスの1次コイル184に対しコイル156を介してFET188を直列に接続しており、FET188はパルス発生回路190によりオン、オフ制御され、これにより1次コイル184に高周波電圧が発生する。1次コイル184にはコンデンサ192が接続され、コンデンサ192とコイル186により1次コイル184に発生する高周波電圧を矩形波からサイン波にしている。
【0079】
インバータ回路10の1次コイル184に対しては2次側にコイル192,194が設けられ、この1次側コイル184と2次側コイル192、194のトランス構造により不平衡平衡変換回路12を構成している。不平衡平衡変換回路12は、不平衡出力コイルとなる1次側コイル184に発生した平衡電圧を不平衡入力コイルとなるコイル192,194に発生する平衡電圧に変換する。すなわちコイル192には1次コイル184に発生した高周波電圧とは逆方向の電圧が発生し、コイル194には1次コイル184に発生した高周波電圧と同方向の電圧が発生する。
【0080】
不平衡平衡変換回路12からは平衡ラインが引き出され、4端子コンデンサ38、40を介して整流平滑回路16に接続される。この実施形態にあっては4端子コンデンサ38,40については1次側、2次側それぞれについて回路接続を2系統した第3モードによるフェイルセーフが適用されている。
【0081】
すなわち4端子コンデンサ38,40の1次側のリード端子a,bについては個別に信号ラインが引き出され2系統化している。同様に4端子コンデンサ38,40の2次側のリード端子c,dについても、2系統に信号ラインが引き出されている。
【0082】
4端子コンデンサ38,40の2次側の2系統ラインに対応して、整流平滑回路16には2つのブリッジ整流回路202,204が設けられている。すなわち4端子コンデンサ38,40のリード端子cに対し、ブリッジ整流回路202が接続され、一方、4端子コンデンサのリード端子dに対し別のブリッジ整流回路202が接続されている。
【0083】
このため平衡ラインに設けた4端子コンデンサ38、40につき1次側のリード端子a、bのいずれか一方に端子外れが起きても平衡ラインの平衡状態は維持できる。また2次側のリード端子c、dのいずれかに端子外れが起きてもブリッジ制御回路202,204の正常な側から整流出力を得ることができる。
【0084】
整流平滑回路16は制御回路202によるFET198のオン、オフ制御によりコンデンサ196、197と4端子コンデンサの容量比率を変化させ、結果として整流前の平均電圧を低くした電圧に変換し、ブリシッジ整流回路202,204で全波整流した後にコイル202及びコンデンサ208で平滑し、負荷62に制御回路200より規定電圧に安定化された直流電圧を供給している。
【0085】
さらに図6の実施形態にあっては、インバータ回路10側にコモンモードトランス210、漏洩電流検出回路212及び停止指示回路214を設け、4端子コンデンサ38,40により分離した平衡ラインにコンデンサ端子外れなどが起きて漏洩電流が増加した際に、この漏洩電流を検出してインバータ回路10を停止するためのインバータ停止回路部を設けている。
【0086】
コモンモードトランス210はコイル210a,210bをもち、1次側のコイル210aをインバータ回路10の安定電位と不平衡平衡変換回路12に設けた平衡のコイル192,194の中性点との間に接続している。4端子コンデンサ38、40を接続している平衡ラインが正常であれば、平衡ラインを流れる高周波電圧の打ち消し作業によりグランド側に流れる漏洩電流、すなわち高周波ラインにおける各電流の差分に応じた電流はごく小さく、コモンモードトランス210の2次コイル(検知コイル)210bの発生電圧が極めて小さい。
【0087】
しかしながら、4端子コンデンサ38、40における異常や端子外れなどによる不平衡状態になると、平衡ラインにおける各高周波電流の間に大きな差が生じ、この差電流の間に漏洩電流がコモンモードトランス210の1次コイル210aに流れることで2次コイル210bに大きな電圧が発生する。
【0088】
2次コイル210bの漏洩電流に起因して発生電圧は漏洩電流検出回路212で例えば直流電圧に変換され、所定の閾値電圧を超えた際に停止指示回路214からインバータ回路10のパルス発生回路190に遮断信号を出力して動作を停止する。
【0089】
4端子コンデンサ38、40を設けた平衡ラインにコンデンサ端子外れなどの異常により不平衡となる障害が発生した場合、漏洩電流を検出してインバータ回路10が停止されるため、不平衡状態により漏洩電流により整流平滑回路16側の端子に手を触れるなどして起こる感電事故を確実に防止できる。
【0090】
尚、図6の実施形態にあっては整流平滑回路16の発生電圧が低いことから平衡不平衡変換回路を設けていないが、発生電圧が大きい場合には平衡不平衡変換回路を設ければよい。
【0091】
図7は本発明の電源回路の第6実施形態であり、この第6実施形態にあっては平衡ラインについては従来と同じ2端子のコンデンサを使用し、平衡ラインにおけるコンデンサの端子外れなどによる不平衡状態に対しては、1次側、2次側それぞれについて設けた漏洩電流検出回路により1次側インバータを停止させる第5モードのフェイルセーフを行うようにしたことを特徴とする。
【0092】
図7において、1次側のインバータ回路10は図6の実施形態と同様、シングルインバータ回路を使用しており、トランスの1次コイル184、FET188、コイル186及びコンデンサ191で構成される。また不平衡平衡変換回路12もトランスの2次コイルとしてコイル192、194を設けており、図6の実施形態と同じである。
【0093】
不平衡平衡変換回路12から引き出された平衡ラインについては、この実施形態にあっては従来と同じ2端子のコンデンサ210,212を設け、1次側と2次側を絶縁している。平衡ラインに続いては整流平滑回路16の入力ラインに平衡不平衡変換回路14を設けている。
【0094】
平衡不平衡変換回路14には平衡入力コイルとなるコイル214、216と不平衡出力コイルとなる218で構成される。平衡不平衡変換回路14のコイル214には不平衡平衡変換回路12のコイル192の発生電圧と逆方向の電圧が発生する。またコイル216にはコイル194と逆方向の電圧が発生する。コイル214、216の2次側が共通接続され、整流平滑回路16の安定電位に接続されている。整流平滑回路16は交流変換後に整流平滑を行う回路であり、図6に設けたブリッジ整流回路204とコンデンサ197を除いたと同じ回路構成を備えている。
【0095】
このようなインバータ回路10、不平衡平衡変換回路12、平衡ライン、平衡不平衡変換回路14及び整流平滑回路16で構成される電源回路につき、第6実施形態にあっては、直流電源11からインバータ回路10に対する直流電源供給ラインにコモンモードトランス220を設けている。
【0096】
コモンモードトランス220はコイル220a、220bをもち、さらに検出コイル220cを備えている。コンデンサ210、212を設けた平衡ラインが正常な場合には平衡ラインを相互に逆向きに流れる高周波電流による差電流は略ゼロとなり、漏洩電流はほとんど流れず、この結果、コモンモードトランス220のコイル220a、220bに流れる直流電流も同じ値で相互に打ち消しあっており、検出コイル220cに発生電圧はない。
【0097】
コンデンサ210、212を設けた平衡ラインでコンデンサ端子外れなどが生じて不平衡状態になると漏洩電流が流れ、この漏洩電流に応じてコモンモードトランス220の検出コイル220cにインバータ回路10の高周波電圧に応じた電圧が発生する。
【0098】
この検出コイル220cの高周波電圧はブリッジ整流回路222で全波整流された後、漏洩電流検知回路224に入力される。漏洩電流検知回路224は抵抗226、230、ツェナーダイオード228及びアンプ231で構成される。ダイオードブリッジ222による全波整流電圧がツェナーダイオード228のツェナー電圧を超えるとツェナーダイオード228が導通し、抵抗230に電圧が発生する。
【0099】
このためアンプ231より信号電圧が出力し、これを受けて停止指示回路231が遮断信号をダイオード234を介してインバータ回路10のパルス発生回路190に出力することでインバータ回路10の動作が停止する。
【0100】
一方、整流平滑回路16についてもコモンモードトランス236を設けている。コモンモードトランス236は1次コイル236aと2次コイル236bを持ち、1次コイル236aを整流平滑回路16の安定電位と平衡不平衡変換回路14の平衡入力用のコイル214、216の中性点Pとの間に接続している。
【0101】
コンデンサ210,212を接続した平衡ラインが正常な場合、コモンモードトランス236の1次コイル236aに漏洩電流が流れることはないが、コンデンサ210,212の端子外れなどにより不平衡状態になると平衡ラインの差電流に応じた漏洩電流がコモンモードトランス236の1次コイル236aにも流れ、2次コイル236bにインバータ回路10の高周波電圧に応じた電圧が漏洩電流の大きさに応じて発生する。
【0102】
2次コイル236bの発生電圧はブリッジ整流回路238で全波整流された後、漏洩電流検知回路240で所定の閾値以上となった場合に停止指示回路242を作動してダイオード235を介してインバータ回路10のパルス発生回路190に遮断信号を出力し、インバータ回路10を停止する。漏洩電流検知回路240としては1次側の漏洩電流検知回路224と同じ回路構成としている。
【0103】
このように図7の第6実施形態にあっては、1次側と2次側を結ぶ平衡ラインに設けたコンデンサ210,212のいずれかに端子外れが生じて不平衡状態になると、不平衡状態で流れる漏洩電流を検出して1次側のインバータ回路10の動作を停止し、不平衡状態となったまま電源回路が運用されることによる漏洩電流に起因した感電事故を確実に防止することができる。
【0104】
尚、上記の実施形態にあっては平衡ラインのコンデンサ端子外れに対し、第1モードから第5モードのフェイルセーフの適用は、いずれかひとつのモードを最小限適用すれば良く、更に必要に応じて複数のモードを組み合わせて適用することもできる。
【0105】
また上記の実施形態にあっては、多端子コンデンサとして4端子コンデンサを例にとるものであったが、更に端子数の多い多端子コンデンサを使用しても良い。
【0106】
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含む。さらに本発明は上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の電源回路の第1実施形態を示した回路ブロック図
【図2】本発明の電源回路で使用する4端子コンデンサの説明図
【図3】本発明の電源回路の第2実施形態を示した回路ブロック図
【図4】本発明の電源回路の第3実施形態を示した回路ブロック図
【図5】本発明の電源回路の第4実施形態を示した回路ブロック図
【図6】本発明の電源回路の第5実施形態を示した回路ブロック図
【図7】本発明の電源回路の第6実施形態を示した回路ブロック図
【符号の説明】
【0108】
10:インバータ回路
11:直流電源
12不平衡平衡変換回路
14平衡不平衡変換回路
16:整流平滑回路
17:交流変換回路
18:交流電源
20,50,98,132,162,202,222,238:ブリッジ整流回路
22,34,36,38a,38b,40a,40b,48,58,62,66,74,80,94,100,102,106,108,122,136,152,164,166,182,191,196,197,208,210,212:コンデンサ
24,26,52,70,82,84,103,104,140,142,144,146,170,172,188,198:FET
28,32,42,44,46,56,64a,64b,68,76a,76b,78,110,112,120,124,126,134,150,154,156,157,158,159,160,180,184,186,192,194,192,210a,210b,214,216,218,220a,220b,220c,236a,236b:コイル
30,72,90,148,178:ドライブ回路
32,56:コイル
38,40:4端子コンデンサ
54,96,130,168,200:制御回路
60:負荷
128:可変容量制御素子
190:パルス発生回路
210,220,236:コモンモードトランス
212,224,240:漏洩電流検知回路
214,232,242:停止指示回路
228:ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のスイッチング動作によりトランスの1次巻線に高周波電圧を発生する1次側のインバータ回路と前記高周波電圧を整流平滑する2次側の整流平滑回路を1次側と2次側絶縁用の一対のコンデンサを介して接続し、前記インバータ回路が発生した前記高周波電圧の不平衡電圧から平衡電圧への変換を行う不平衡平衡変換回路を1次側に設けるとともに、該不平衡平衡変換回路の出力の平衡電圧から不平衡電圧への変換を行う平衡不平衡変換回路を2次側に設けた電源回路に於いて、
前記一対のコンデンサを4端子以上の多端子コンデンサとし、前記インバータ回路に対する直流電力供給を、前記多端子コンデンサの同一電極に設けた2端子を介して行い、前記端子外れ又は接触不良に対し前記インバータ回路を停止させることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
スイッチング素子のスイッチング動作によりトランスの1次巻線に高周波電圧を発生する1次側のインバータ回路と前記高周波電圧を整流平滑する2次側の整流平滑回路を1次側と2次側絶縁用の一対のコンデンサを介して接続し、前記インバータ回路が発生した前記高周波電圧の不平衡電圧から平衡電圧への変換を行う不平衡平衡変換回路を1次側に設けるとともに、該不平衡平衡変換回路の出力の平衡電圧から不平衡電圧への変換を行う平衡不平衡変換回路を2次側に設けた電源回路に於いて、
前記一対のコンデンサを4端子以上の多端子コンデンサとし、前記多端子コンデンサの各電極に設けた複数端子から接続先の回路部位に対し複数の分離した系統ラインを冗長接続したことを特徴とする電源回路。

【請求項3】
スイッチング素子のスイッチング動作によりトランスの1次巻線に高周波電圧を発生する1次側のインバータ回路と前記高周波電圧を整流平滑する2次側の整流平滑回路を1次側と2次側絶縁用の一対のコンデンサを介して接続し、前記インバータ回路が発生した前記高周波電圧の不平衡電圧から平衡電圧への変換を行う不平衡平衡変換回路を1次側に設けるとともに、該不平衡平衡変換回路の出力の平衡電圧から不平衡電圧への変換を行う平衡不平衡変換回路を2次側に設けた電源回路に於いて、
前記一対の多端子コンデンサで接続される1次側の不平衡平衡変換回路と2次側の平衡不平衡変換回路又は整流平滑回路の何れか一方又は両方を2系統設けて冗長接続したことを特徴とする電源回路。

【請求項4】
スイッチング素子のスイッチング動作によりトランスの1次巻線に高周波電圧を発生する1次側のインバータ回路と前記高周波電圧を整流平滑する2次側の整流平滑回路を1次側と2次側絶縁用の一対のコンデンサを介して接続し、前記インバータ回路が発生した前記高周波電圧の不平衡電圧から平衡電圧への変換を行う不平衡平衡変換回路を1次側に設けるとともに、該不平衡平衡変換回路の出力の平衡電圧から不平衡電圧への変換を行う平衡不平衡変換回路を2次側に設けた電源回路に於いて、
前記一対のコンデンサを4端子以上の多端子コンデンサとし、前記不平衡平衡変換回路の平衡出力コイルを前記インバータ回路の安定電位から分離絶縁、または前記平衡不平衡変換回路の平衡入力コイルを前記整流平滑回路の安定電位から分離絶縁したことを特徴とする電源回路。

【請求項5】
スイッチング素子のスイッチング動作によりトランスの1次巻線に高周波電圧を発生する1次側のインバータ回路と前記高周波電圧を整流平滑する2次側の整流平滑回路を1次側と2次側絶縁用の一対のコンデンサを介して接続し、前記インバータ回路が発生した前記高周波電圧の不平衡電圧から平衡電圧への変換を行う不平衡平衡変換回路を1次側に設けるとともに、該不平衡平衡変換回路の出力の平衡電圧から不平衡電圧への変換を行う平衡不平衡変換回路を2次側に設けた電源回路に於いて、
前記不平衡平衡変換回路又は前記平衡不平衡変換回路に接続された前記コンデンサの端子が外れた時に発生する漏洩電流を検出して前記インバータ回路を停止するインバータ停止回路部を設けたことを特徴とする電源回路。

【請求項6】
請求項5記載の電源回路に於いて、前記インバータ停止回路部は、
前記インバータ回路の安定電位と前記不平衡平衡変換回路の平衡出力コイルの中性点との間に1次コイルを接続したコモンモードトランスと、
前記コモンモードトランスの2次コイルの発生電圧から漏洩電流を検出する漏洩電流検知回路と、
前記漏洩電流検知回路の検出漏洩電流が所定の閾値以上のとき前記インバータ回路に遮断信号を出力して停止させる停止制御回路と、
を備えたことを特徴とする電源回路。

【請求項7】
請求項5記載の電源回路に於いて、前記インバータ停止回路部は、
前記インバータ回路に対する直流電力の入力ライン間に設けた検出コイル付きのコモンモードトランスと、
前記コモンモードトランスの検知コイルの発生電圧から漏洩電流を検出する漏洩電流検知回路と、
前記漏洩電流検知回路の検出漏洩電流が所定の閾値以上のとき前記インバータ回路に遮断信号を出力して停止させる停止制御回路と、
を備えたことを特徴とする電源回路。

【請求項8】
請求項5記載の電源回路に於いて、前記インバータ停止回路部は、
前記平衡不平衡変換回路の不平衡出力コイルと前記整流平滑回路の安定電位との間に1次コイルを接続したコモンモード検知トランスと、
前記コモンモード検知トランスの2次コイルの発生電圧から漏洩電流を検出する漏洩電流検知回路と、
前記漏洩電流検知回路の検出漏洩電流が所定の閾値以上のとき前記インバータ回路のスイッチング動作を停止する停止回路と、
を備えたことを特徴とする電源回路。

【請求項9】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電源回路に於いて、前記整流平滑回路の代わりに交流変換回路を設けたことを特徴とする電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−325337(P2006−325337A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146525(P2005−146525)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】