説明

電源装置及びこれを備える車両

【課題】車両メンテナンスをするメンテナンス作業者が車内の限られたスペースから確実に着脱操作できるカバーで、且つ、電源装置ケースのフレーム窓から簡単に着脱可能なカバーとする強電部品保護構造を提供する。
【解決手段】電源装置部品を収納するケース10と、このケース10から突出して設けられたフレーム窓12と、取手部21を有し、この取手部21の操作によりフレーム窓12へ着脱可能なカバー20とを備えた電源装置であって、カバー20の着脱時において、取手部21をカバー20とフレーム窓12との密着力が不均一となる位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧・大容量のバッテリー等の強電部品で構成される電源装置及びこれを備える車両に関し、主としてハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等で使用される強電部品保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等の車両を走行させるモータの駆動電源となるバッテリーには、複数の電池を積層して電気接続した高電圧・大容量のバッテリーが使用される。バッテリーは、バッテリー状態をコントロールする制御ボックスと接続しており、これらバッテリーと制御ボックスは、強電部品とともに電源装置ケースに収納され隣接して配置される。
【0003】
車両は使用期間中、メンテナンス作業者による定期的な点検や修理等のメンテナンスを行うことで乗車人の安全を確保し、且つ、長期にわたって車両を良好な状態で維持している。車両に搭載される電源装置には、複数の電池で構成されたバッテリーが内蔵され、電池の接続状態を開閉する電源スイッチが設けられている。しかし、単に電源スイッチを設けただけでは、メンテナンス作業者の誤操作や車両側の不具合等で作業中にバッテリー電流が通電状態となり、メンテナンス作業者が接触感電してしまう等の恐れがあった。また、バッテリーや完成車両等は本体組立工場へ搬送したり海外へ輸送したりするので、移動中に振動等の衝撃を受けても、バッテリー電流の遮断状態が維持される安全性を備えておく必要があった。
【0004】
安全プラグは、上記問題を解決するために備えられた安全装置で、複数の電池と強電部品とで構成された通電回路の一部分に介装され、通電回路を開閉することで通電状態を開閉する。安全プラグを挿入すると通電回路が通電状態に、取り外すと通電回路が遮断状態となる。メンテナンス作業者は、作業前に電源スイッチを開状態、且つ、安全プラグを取り外ししておくことで、仮に電源スイッチが誤って閉状態となった場合でも、安全プラグの取り外しにより通電回路の遮断状態が維持されているので、メンテナンス作業者の安全性が確保される。
【0005】
そして、電源装置ケースは、バッテリーや制御ボックス等の強電部品を衝撃等から保護し、且つ、防水する役割を果たしている。ところが、安全プラグは、電源装置ケース外から操作できるように構成されているため、安全プラグ及び強電部品が電源装置ケース外にむき出しの状態となってしまう。このため、安全プラグの挿入及び取り外し部分には防水機能を備えた部品を別途必要とした。
【0006】
ここで、上記部品として開発されたのが安全プラグを覆うカバーで、このカバーは、安全プラグ挿入後に安全プラグ及び電源装置ケース内の強電部品を防水する目的で装着される。例えば、特許文献1の図1において、電源装置ケースには安全プラグを挿入及び取り外しする箇所にフレーム窓が設けてあり、カバーはそこへ装着される。通常、カバーにはゴム製のカバーが使用され、フレーム窓との間にシールを形成して電源装置ケース外からの水の進入を防止している。
【0007】
安全プラグ及びカバーは、メンテナンス作業者の安全性確保のため、電源装置のバッテリー電流の通電回路を遮断してからメンテナンス作業が開始できるように、作業開始前に車内から安全プラグの操作ができる仕様にしている。このとき、メンテナンス作業者は、車内の一部に設けられた小さなスペースでカバー及び安全プラグを着脱しなければならないため、簡単に着脱可能なカバーの開発が望まれた。そこで、簡単に着脱可能なカバーの候補として、図17〜図20に示すカバー200の形状が考案された。
【0008】
上記カバー200は、図17に示す電源装置ケース100の上面101に設けられたフレーム窓102に装着される。このカバー200は、カバー200の上面中央部と一体化した根本部202を有する取手部201を設けている。取手部201はEPDM等のゴム製材料からなり、カバー200の上面から垂直方向に突出し、上方両端が丸みをおびた四角形状をしている。カバー200は、メンテナンス作業者が取手部201を垂直方向に引っ張ることで電源装置ケース100のフレーム窓102から取り外しされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−294425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記カバー200では、取手部201がカバー200の上面中央部に位置しているため、取手部201を垂直方向に引っ張って取り外ししようとした場合に、カバー200の4隅に同等の力が加わり、この4隅が電源装置ケース100のフレーム窓102と密着して取り外ししにくいという問題があった。この取手部201を取り外しするには強い力を必要とし、メンテナンス作業者が簡単に取り外ししにくいため作業効率が良くなかった。また、作業終了後のカバー200の装着もしにくい形状であった。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するために開発されたカバーで、メンテナンスをするメンテナンス作業者が車内の限られたスペースから確実に着脱操作することができ、且つ、電源装置ケースのフレーム窓から簡単に着脱可能なカバーとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、電源装置部品を収納するケースと、このケースから突出して設けられたフレーム窓と、取手部を有し、この取手部の操作によりフレーム窓へ着脱可能なカバーとを備えた電源装置であって、取手部を、カバーの着脱時において、カバーとフレーム窓との密着力が不均一となる位置に設けている。
【0013】
本願請求項2の発明によれば、取手部は、カバー表面の端部から突出している。
【0014】
本願請求項3の発明によれば、取手部は、カバー表面から垂直に突出している。
【0015】
本願請求項4の発明によれば、取手部は、カバー上面から突出しており、取手部の根本部は、カバー上面の隅付近からカバー上面の中央付近に向かって形成されている。
【0016】
本願請求項5の発明によれば、取手部を折り曲げた時、取手部は、カバー上面から外側へ突出しない。
【0017】
本願請求項6の発明によれば、取手部は、三角形状に形成している。
【0018】
本願請求項7の発明によれば、取手部は、カバー表面の端部に形成された窪みである。
【0019】
本願請求項8の発明によれば、請求項1から請求項7記載の電源装置を備える車両としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、電源装置部品を収納するケースと、このケースから突出して設けられたフレーム窓と、取手部を有しこの取手部の操作によりフレーム窓へ着脱可能なカバーとを備えた電源装置で、取手部をカバーの着脱時において、カバーとフレーム窓との密着力が不均一となる位置に設けているので、取手部を設けた付近におけるカバーとフレーム窓との密着力が他の部分に比べて弱くなり、軽い操作力でも取手部付近から簡単にカバーを取り外しすることができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、取手部はカバー表面の端部に設けているので、取手部を引っ張った時のカバーとフレーム窓との密着力が、取手部を中央部に設けた時と比べて不均一となり、取手部を設けた端部付近の密着力が最も弱くなる。よって、取手部を軽く引っ張っただけでカバー端部が簡単にフレーム窓からはずれ、その状態から一気にカバーを外すことができる。また、取手部はカバー表面から突出しているので、カバーを掴んで取り外しすることができ、力を加え易いために操作性がはかれる。
【0022】
請求項3の発明によれば、取手部はカバー表面から垂直に突出しているので、操作時にメンテナンス作業者が取手部を把持し易い。また、カバーを垂直方向に引っ張ることで、着脱し易い。
【0023】
請求項4の発明によれば、取手部はカバー上面から突出しているので、カバーにアクセスできるスペースが上面の面積分あればカバー着脱の操作ができ、電源装置の配置自由度及び車両の設計自由度を向上させることができる。また、取手部の根本部は、カバー上面の隅付近からカバー上面の中央付近に向かって形成されているので、取手部を引っ張った時のカバーとフレーム窓との密着力が取手部を中央部に設けた時と比べて不均一となり、取手部を設けた隅付近の密着力が最も弱くなる。よって、取手部を軽く引っ張っただけでカバー端部が簡単にフレーム窓からはずれ、その状態から一気にカバーを外すことができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、取手部を折り曲げた時、取手部はカバー上面から外側へ突出しないので、カバー上面に他の部品、例えばボード板を配置した場合において、取手部がボード板に挟み込まれてメンテナンス作業者が取手部を把持できないといった問題が解消され、確実にカバーを取り外しすることができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、取手部を三角形状に形成しているので、取手部を引っ張る面の大きさを維持しながら、取手部の小型・省スペース化を実現できる。
【0026】
請求項7の発明によれば、上記電源装置を備える車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電源装置を搭載するハイブリッド自動車(車両HV)である。
【図2】本発明の電源装置を搭載する電気自動車(車両EV)である。
【図3】本発明の第1実施例の電源装置ケースの外観斜視図である。
【図4】本発明の第1実施例のカバーの外観斜視図である。
【図5】図4の上面図である。
【図6】図4の側面図である。
【図7】図4の裏面図である
【図8】図5を他面側から見た時の側面図である。
【図9】図5のカバーをフレーム窓へ装着し、A−A線から一面側を見た時の側面断面図である。
【図10】本発明の第2実施例の電源装置ケースの外観斜視図である。
【図11】本発明の第2実施例のカバーの外観斜視図である。
【図12】図11の上面図である。
【図13】図12のカバーをフレーム窓へ装着し、B−B線から側面側を見た時の側面断面図である。
【図14】図12のカバーをフレーム窓へ装着し、C−C線から一面側を見た時の側面断面図である。
【図15】図12を他面側から見た時の側面図である。
【図16】図12のD−D線から取手部を見た時の側面図である。
【図17】従来考案されたカバーを装着する電源装置ケースの外観斜視図である。
【図18】従来考案されたカバーの外観斜視図である。
【図19】図18の上面図である。
【図20】図19のカバーをフレーム窓へ装着した時の、E−E線における側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図16に基づいて詳細に説明する。まず、本発明の電源装置1を自動車に搭載する例を図1及び図2に基づいて、詳細に説明する。
【0029】
図1に、エンジン2を主体にしながらモータ3を併用して車輪を駆動させ走行するハイブリッド自動車(車両HV)に電源装置1を搭載する例を示す。この図に示す車両は、2つの動源力が平行して車輪の駆動に関与することからパラレル方式と呼ばれる。
【0030】
車両HVは、車両HVを走行させるエンジン2とモータ3とを備え、さらに、このモータ3に電力を供給するバッテリー4及びこのバッテリー4状態を制御する制御ボックス5とを収納している電源装置ケース10と、バッテリー4の電池を充電する発電機6とを備えている。電源装置1は、DC/ACインバータ7を介してモータ3と発電機6に接続している。
【0031】
車両HVは、電源装置1のバッテリー4を充放電しながらモータ3とエンジン2を併用して走行する。エンジン2は走行を主体とし、場合により電源装置1に収納するバッテリー4の電池を充電する。モータ3は、電源装置1から電力が供給されて駆動し、エンジン2に負担がかかる発進時や加速時に、エンジン2とともに作動して駆動力を補助する。また、低速時にはモータ3、高速時にはエンジン2と、駆動力を使い分けることでエネルギー効率を高める。さらに、車両が止まるブレーキ制動時には、モータ3を発電機6として利用し、電源装置1に収納するバッテリー4の電池を充電する。
【0032】
ハイブリッド自動車には、上記で記載したパラレル方式以外に、シリーズ方式とスプリット方式とがある。シリーズ方式は、動源力が1つで、モータのみが車輪を駆動し、エンジンはモータに電気を供給する発電用として搭載される。スプリット方式は、上記のパラレル方式にバッテリー充電専用の発電機を組み合わせたシステムで、パラレル方式よりさらに細かくエンジンの負荷制御をおこない、エネルギー効率を高める。このスプリット方式は、エンジンの動力を車両の駆動と発電機の両方に分割する動力分割機構を備えている。この動力分割機構を用いて、発電機、モータの回転数を制御しながら、効率的に自動車を動かしている。スプリット方式は、シリーズ・パラレル方式とも呼ばれる。
【0033】
次に、図2に、モータ3のみで走行する電気自動車(車両EV)に電源装置1を搭載する例を示す。この図に示す車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ3を備え、さらに、このモータ3に電力を供給するバッテリー4及びこのバッテリー4を制御する制御ボックス5を収納している電源装置ケース10と、バッテリー4の電池を充電する発電機6とを備えている。電源装置1は、DC/ACインバータ7を介してモータ3と発電機6に接続している。車両EVは、電源装置1のバッテリー4を充放電しながらモータ3のみで走行する。モータ3は、電源装置1から電力が供給されて駆動する。発電機6は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置1に収納するバッテリー4の電池を充電する。
【0034】
以上の車両に搭載される本発明の電源装置1の電源装置ケース10を、図3に基づいて詳細に説明する。
【0035】
図3は、電源装置ケース10の外観斜視図で、この電源装置ケース10内には、複数の電池で構成されたバッテリー4と、このバッテリー4の状態を制御する制御ボックス5と、バッテリー4の通電状態を開閉する安全プラグ等の強電部品とが収納されている。図3において、安全プラグは電源装置ケース10内の奥側左上の位置に配設される。そして、電源装置ケース10の上面11の左端には、電源装置ケース10の上面11から突出するフレーム窓12が設けられ、このフレーム窓12は安全プラグ上方に位置している。
【0036】
フレーム窓12は、アルミ等の金属材からなり、電源装置ケース10と一体形成される。このフレーム窓12は直方体で、その中央には電源装置ケース10の上面11を貫通する開口部13を設けている。この開口部13は、電源装置ケース10の外側からメンテナンス作業者が安全プラグを挿入及び取り外しできるように設けられたもので、安全プラグを通過させて取り外すことができる大きさにしている。
【0037】
安全プラグは、一度の操作だけでは挿入及び取り外しできない構造となっており、挿入及び取り外しするまでに複数段階の操作を行う必要がある。この機能を備えることにより、遮断状態のバッテリー電流の回路が簡単に通電状態となるのを防止できるので、メンテナンス作業者の危険を回避して安全性を確保することができる。安全プラグの挿入及び取り外し操作においてはレバー等の操作を伴うので、この操作を阻害しないように、フレーム窓12の一面14の上方中央部に切欠部15を設けている。
【0038】
上記構造により、安全プラグの操作をフレーム窓12が邪魔しないので、安全プラグの取り外しが行える。また、フレーム窓12の一面14の下側を切欠にせず残すことにより、電源装置ケース10の上面11からフレーム窓12を突出したままにすることができるので、突出部分が壁となり電源装置ケース10の内側へ水が流入してしまうのを防止する防水機能を備えることができる。さらにフレーム窓12の一面14の上方両端を切欠せず残すことにより、フレーム窓12の強度を保持するとともに、後述するカバー20とフレーム窓12との密着力を高めて確実な防水構造とすることができる。
【0039】
フレーム窓12には、開口部13を覆うゴム製のカバー20が装着される。該カバー20の一面23には、フレーム窓12に設けた切欠部15と嵌合する形状の凹み部24を設け、カバー20の上面には、後述する取手部21を設けている。カバー20をフレーム窓12に装着すると、カバー20の凹み部24とフレーム窓12の切欠部15とが密着して境界線に防水構造となるシールを形成する。これにより、電源装置ケース10の内側が密閉空間となるので、電源装置ケース10の内側へ水が進入せず、電源装置1に収納されたバッテリー4及び制御ボックス5並びに安全プラグ等の強電部品がショート電流や浸水により故障するのを防止することができる。
【0040】
そして、電源装置1にカバー20を装着後、電源装置ケース10の上面11とカバー20の上面とを覆うボード(図示せず)が配置される。このボードは、車を構成する車体部品の一つで、電源装置1と車内との間に介して配置され、各々の空間を独立させている。ボードは、カバー20の上面を上方から押圧して配置される。これにより、弾性材料であるゴム製のカバー20が押圧力により電源装置1のフレーム窓12へ押広がり、高密着状態となって防水構造が完成する。このとき、カバー20から突出する取手部21は、後述で説明する根本部22から折曲してボード下に納まる。
【0041】
ボードには、メンテナンス作業者が車内からカバー20及び安全プラグへアクセスできるように、開閉式の扉が設けられる。この扉は、カバー20及び安全プラグのすぐ上方に設けられ、これらを着脱することが可能な大きさとしている。ボードに設ける扉は、できるだけ小さいもの、また車内をフラットにする扉が好ましい。この構成とすることで、メンテナンス作業者は、メンテナンス作業を開始する前に車内からボードの扉を開き、カバー20と安全プラグとを取り外して電源装置ケース10の内側のバッテリー電流の通電回路を開状態とすることができる。よって、メンテナンス作業者は作業中に感電してしまう等の危険を回避することができ、安全性が確保される。
【0042】
以上の本発明の電源装置1の電源装置ケース10に装着されるカバー20の第1実施例を、以下、図4乃至図9に基づいて詳細に説明する。
【0043】
図4に、本発明の電源装置1の電源装置ケース10のフレーム窓12に装着されるカバー20の外観斜視図を示す。また、図5に図4の上面図を、図6に図4の側面図を、図7に図4の裏面図を示す。さらに、図8に図5を他面側から見た時の側面図を、図9に図5のカバーをフレーム窓へ装着し、A−A線から一面側を見た時の側面断面図を示す。
【0044】
本発明第1実施例のカバー20では、従来考案されたカバー200で上面中央部に設けていた取手部201を、上面端部に平行移動する配置変更をしている。図5では、取手部21を一面23側に近い方の端部に設けているが、取手部21は他面25側に近い方の端部に設けても良い。ただし、フレーム窓12とカバー20との密着力は、フレーム窓12が切欠部15を有する一面23側の方が他面25側に比べて弱いので、取手部21を一面23側に近い方の端部に設ける方が好ましい。
【0045】
上記により、取手部21を設けた付近におけるカバー20とフレーム窓12との密着力が他の部分に比べて弱くなり、軽い操作力でも取手部21付近から簡単にカバー20を取り外しすることができる。つまり、取手部21を引っ張った時のカバー20とフレーム窓12との密着力が、取手部21を中央部に設けた時と比べて不均一となり、取手部21を設けた端部付近の密着力が最も弱くなる。よって、取手部21を軽く引っ張っただけでカバー20の端部が簡単にフレーム窓12からはずれ、その状態から一気にカバー20を外すことができる。
【0046】
具体的には、図5で取手部21を引っ張った場合において、取手部21を設けていない他面25側の2隅付近はカバー20とフレーム窓12とが強く密着したままである。その一方で、取手部21を設けた一面23側の2隅付近は密着力が弱い。このため、取手部21を軽く引っ張っただけで取手部21を設けた方の端部が簡単に浮き上がってフレーム窓12からはずれる。そして、その状態から一気に簡単にカバー20を外すことができる。
【0047】
また、取手部21はカバー20の表面から突出しているので、カバー20を手で掴んで取り外しの操作をすることができ、力を加え易いために操作性がはかれる。さらに、取り外しの際に加えた力がカバー20の根本部22に集中してかかるので、弱い力でも取り外しすることができる。さらにまた、取手部21はカバー20の上面から突出しているので、カバー20にアクセスできるスペースがカバー20の上面の面積分あれば、カバー着脱の操作が可能となるので、電源装置1の配置自由度及び車両の設計自由度を向上させることができる。
【0048】
さらにまた、取手部21はカバー20の表面から垂直に突出しているので、操作時にメンテナンス作業者が取手部21を把持し易い。具体的には、ボードの扉を開けると、折曲して収納されていたカバー20の根本部22が自然と垂直に立ち上がるので、扉が狭くても、ボード内に位置する取手部21を上方から簡単に把持して操作できる。また、カバー20を垂直方向に引っ張ることで着脱し易い。
【0049】
さらにまた、本発明の第1実施例で開発されたカバー20は、従来考案されたカバー200をフレーム窓12へ装着するよりも、簡単に装着することができるので、操作性がはかれる。その装着方法としては、まず、取手部21を設けていない方の2隅をフレーム窓12へ引っ掛け、そこからカバー20を引っ掛けていないフレーム窓の2隅の方向へ引っ張り装着する。カバー20は弾性材料のゴム製で伸縮するので、弱い力で簡単に装着できる。従来考案されたカバー200は、取手部201が中央に配置されているため、カバー端部をフレーム窓102の2隅の方向へ引っ張ることが困難であった。
【0050】
取手部21は、根本部22の厚さを厚くしており、先端へいくに従って厚さを薄くしている。これにより、根本部22が折曲される時や取手部21を引っ張った時にかかる根本部22の負荷を軽減する耐久性を備えている。
【0051】
カバー20の裏面26には、図7で示すフレーム溝27を形成している。このフレーム溝27は、カバー20の裏面26から突出して設けた凸レーン28とカバー20の側面30との間に形成される。このフレーム溝27にフレーム窓12の窓枠部分を挿入することで、カバー20をフレーム窓12に固定するとともに、カバー20とフレーム窓12との間に防水構造となるシールを形成している。この様子を図示したのが図9で、カバー20の側面30と凸レーン28との間にフレーム溝27が形成されており、このフレーム溝27にフレーム窓12の窓枠が埋没している。
【0052】
また、カバー20の裏面26には、カバー20の裏面中央部と一面23との中間位置に、棒状の位置決めピン29を突出して設けている。この位置決めピン29は、カバー20を装着する時に、誤って逆方向に装着されてしまうのを防止する。正しい方向でないとカバー20の装着を許可しないので、誤装着により電源装置1を防水構造にできない等の様々な問題により不具合が生じないように工夫されている。
【0053】
なお、本発明第1実施例では、取手部21はカバー20から突出する形状であるが、指先等を挿入できる窪み形状の取手部にしても良い。
【0054】
次に、本発明の電源装置1の電源装置ケース2に装着されるカバー40の第2実施例を、以下、図10乃至図16に基づいて詳細に説明する。尚、第1実施例と同一部品については、同一番号を付して説明を省略する。
【0055】
図10に示す本発明の電源装置1の電源装置ケース10のフレーム窓12に装着されるカバー40の外観斜視図を図11示す。また、図12に図11の上面図を、図13に図12のカバーをフレーム窓へ装着し、B−B線から側面側を見た時の側面断面図を、図14に図12のカバーをフレーム窓へ装着し、C−C線から一面側を見た時の側面断面図を、図15に図12を他面側から見た時の側面図を、図16に図12のD−D線から取手部を見た時の側面図を示す。
【0056】
本発明第2実施例のカバー40では、第1実施例のカバー20で上面の端部に設けていた取手部21の形状と配置を変更している。まず、第1実施例で上方が丸みをおびた四角形状であった取手部21を、第2実施例では、根本部42を底辺、先端を頂点とする三角形状の取手部41にしている。また取手部41はカバー40の上面に設けられ、根本部42の一端43を一面23側の角隅付近に、他端44をカバー40の上面中央部付近に配置している。即ち、図12の上面図に示すように、取手部41は、カバー40の側面に対して傾斜するように設けられている。
【0057】
このとき、カバー40の上面は、根本部42を境界線として三角形(領域α)と台形(領域β)とに分割されており、このうち三角形は根本部42を底辺とする二等辺三角形である。そして、取手部41の形状と大きさは、この三角形より小さい形状と大きさにしている。
【0058】
上記構成により、取手部41を引っ張った時のカバー40とフレーム窓12との密着力が取手部21を中央部に設けた時と比べて不均一となり、取手部41を設けた隅付近の密着力が最も弱くなる。よって、取手部41を軽く引っ張っただけでカバー40端部が簡単にフレーム窓12からはずれ、その状態から一気にカバー40を外すことができる。
【0059】
具体的には、図12で取手部40を引っ張った場合において、取手部41の根本部42の一端43が配置していない3隅付近では、カバー40とフレーム窓12とが強く密着したままである。その一方で、根本部41の一端43を配置している1隅付近の密着力は、第1実施例で取手部21を端部に配置した時の密着力よりさらに弱くなる。このため、取手部41を軽く引っ張っただけで取手部41を設けた方の端部が簡単に浮き上がってフレーム窓12からはずれる。そして、その状態から一気に簡単にカバー40を外すことができる。
【0060】
また、本発明の第2実施例では、取手部41は根本部42からどちら側へ折曲した場合も、取手部41はカバー40の上面から外側へ突出しない形状としたので、カバー40の上面にボードを配置する時に、取手部41がボードと電源装置ケース10との間に挟み込まれてしまうのを防止することができる。よって、ボードの扉を開いた時に、メンテナンス作業者が取手部41を把持できないといった問題が解消されるので、確実にカバー40の取り外しをすることができる。
【0061】
さらに、カバー40の取り外し操作においては、三角形状の取手部41の頂点部分を把持して作業するので、手で掴み易く、さらに引っ張った力が分散されずに根元部42へ加わるので、カバー40を弱い力で取り外すことができる。さらにまた、取手部41を引っ張る面の大きさを維持しながら、取手部の小型・省スペース化をはかることもできる。
【0062】
さらにまた、本発明の第2実施例で開発されたカバー40は、従来考案されたカバー200をフレーム窓12へ装着するよりも、簡単に装着することができるので操作性がはかれる。その装着方法としては、まず、取手部41を設けた隅と対角線上にある隅をフレーム窓12へ引っ掛け、そこから対角線上にカバー40を引っ掛けていないフレーム窓12の方向へ引っ張り装着する。カバー40は弾性材料のゴム製で伸縮するので、弱い力で簡単に装着できる。
【0063】
実施例では、本発明の電源装置をHV車及びEV車に搭載しているが、これに限らず、様々な車種へ搭載することができる。また、車両以外へ本発明の電源装置を搭載しても良いし、電源装置内の構成や構造は本発明実施例のものに限定しない。フレームにカバーを着脱する全ての用途において、好適に利用できる。
【0064】
本発明で用いた部品の形状や大きさ、材質等は実施例のものに限定せず、使用するにあたって好適な部品の形状や材質に変更しても良い。また、部品同士の位置関係やその配置、固定方法等も実施例のものに限定しない。
【0065】
本発明の電源装置1のカバーは、本発明の主旨に反しない限り、あらゆる変更が可能で、実施例の構成に限定するものではない。例えば、本発明の実施例では、四角形のフレーム形状にあわせたカバーの形状にしているが、円のフレームであれば円のカバーにする等、装着する箇所の形状に合わせて変更しても良い。
【0066】
また、変更したカバーの形状に合わせて、取手部の形状や大きさ、厚さや配置等を変更しても良い。さらに、本発明ではカバーの取手部をカバー上面に設けたが、カバー側面に設けても良いし、用途によって好適な形状や配置に設けることができる。さらに、取手部は垂直に設ける以外に、傾斜させたり、中間を屈曲させたりとあらゆる変更ができる。
【0067】
そして、カバーに設けたフレーム溝や凸レーン、位置決めピンや凹み部等はなくすこともできるし、同じ効果のある他の方法に変更しても良い。取手部を把持する方法も、手以外の方法を用い、カバーを着脱することができる。
【0068】
さらに、本発明では実施例において取手部が折曲する場合を説明したが、必ずしも取手部が折曲する必要はなく、ボードも実施例のものに限定しないし、設けなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車等の車両用の電源装置で使用される安全プラグのカバーとして好適に利用できる。また、安全プラグカバーだけでなく様々なカバーとして利用でき、車載用以外のカバーとしても好適に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 電源装置
2 エンジン
3 モータ
4 バッテリー
5 制御ボックス
6 発電機
7 DC/ACインバータ

10 電源装置ケース
11 上面
12 フレーム窓
13 開口部
14 一面
15 切欠部

20 カバー
21 取手部
22 根本部
23 一面
24 凹み部
25 他面
26 裏面
27 フレーム溝
28 凸レーン
29 位置決めピン
30 側面

40 カバー
41 取手部
42 根本部
43 一端
44 他端

100 電源装置ケース
101 上面
102 フレーム窓

200 カバー
201 取手部
202 根本部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置部品を収納するケースと、このケースから突出して設けられたフレーム窓と、取手部を有し、この取手部の操作により前記フレーム窓へ着脱可能なカバーとを備えた電源装置であって、
前記取手部を、前記カバーの着脱時において、前記カバーと前記フレーム窓との密着力が不均一となる位置に設けたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記取手部は、前記カバー表面の端部から突出していることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記取手部は、前記カバー表面から垂直に突出していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記取手部は、前記カバー上面から突出しており、前記取手部の根本部は、前記カバー上面の隅付近から前記カバー上面の中央付近に向かって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
前記取手部を折り曲げた時、前期取手部は、前記カバー上面から外側へ突出しないことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
前記取手部は、三角形状に形成していることを特徴とする請求項5記載の電源装置。
【請求項7】
前記取手部は、前記カバー表面の端部に形成された窪みであることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7記載の電源装置を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−198555(P2011−198555A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62485(P2010−62485)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】