説明

電磁ポンプ

【課題】二つのボビン部材と往復動部材とのクリアランスより、該往復動部材とガイド部材とのクリアランスを大きくすることにより軸芯方向に対する横方向吸引力を低減し摩耗を防止する。
【解決手段】電磁ポンプ10は本体11の内孔に円筒形のガイド12が液密に嵌挿されている。ボディ11の内孔11aにはガイド12の両側面に当接してボビン13、14が嵌合されている。ボビン13,14の内孔21a,21bにプランジャ22が嵌挿され、該プランジャ22の両端面に隣接して吐出側本体38,39が設けられている。プランジャ22の両端面には吸入逆止弁60,61が設けられ、吐出側本体38,39に吐出逆止弁57,58が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力で往復動する往復動部材により、その左右に設けた二つのポンプ室の容積を変化させて交互にポンプ作用させる複動型の電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁ポンプはハウジングに形成されたシリンダ内を電磁力により往復動するアーマチャと、シリンダの両端側にそれぞれ形成されたポンプ室の容積を前記アーマチャの往復動により変化してポンプ作用を行っている。
係る電磁ポンプとして、二分割構造のハウジング1A,1Bに小径のシリンダ3A、3Bと大径のアーマチャ摺動空間4A,4 Bとを形成する。シリンダ3A,3Bには、ピストン5A,5Bを挿入してポンプ室6A、6Bを設け、アーマチャ摺動空間4A、4Bにはピストン5A,5Bとは別体でハウジング1にソレノイド12A,12Bにより駆動されるアーマチャ7を収納して左右のピストン5A,5Bを当接させ、これにより、ポンプ室6A,6Bに交互にポンプ作用を行わせている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−41148号特許公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の複合型電磁ポンプにおいては、シリンダを形成するハウジングが中央部分で二分割される構造であり、二分割されたハウジングの位置誤差によりアーマチャとシリンダとの間で発生する軸芯方向に対する横方向吸引力が発生する。また、磁路を構成するアーマチャとシリンダが接触するために横方向吸引力が増加するので、アーマチャとシリンダの間で摩耗が発生することがあった。
また、ピストン径を変えることにより容易に吐出圧力を変えることができるが、アーマチャとピストンとの当接部に高硬度のライナを装着しているので構造が複雑で組み付けが困難であった。
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、軸芯方向に対する横方向吸引力を低減し摩耗を防止するとともに、アーマチャとプランジャを一体にしながら二圧二流量を吐出できる電磁ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、電磁力で往復動される往復動部材により、ハウジングに形成された第一及び第二のポンプ室に交互にポンプ作用を行わせる電磁ポンプにおいて、
本体と、
前記本体の内孔に嵌挿されたガイド部材と、
前記ガイド部材の一側面に隣接して前記本体の内方に嵌挿され内孔が小径の第一のボビン部材と、
前記第一のボビン部材に巻装された第一のコイル部材と、
前記ガイド部材の他側面に隣接して前記本体の内方に嵌挿され内孔が大径の第二のボビン部材と、
前記第二のボビン部材に巻装された第二のコイル部材と、
前記第一及び前記第二のボビン部材の内孔に摺動自在に装着された往復動部材と、
を備え、
前記第一のコイル部材の巻数が前記第二のコイル部材の巻数よりも大きく設けられ、前記往復動部材は小径部が前記第一のボビン部材の小孔、大径部が前記ガイド部材及び前記第二のボビン部材の大孔にそれぞれ嵌挿され、前記小径部及び前記大径部は軸径方向に径差を設けていることを特徴とする。
【0005】
本発明によれば、往復動部材に径差を設け、該往復動部材の小径側のボビン部材の内径を小さくし、その分コイル部材の巻数を増加させることにより、吸引力の低下をおさえることができ、往復動部材の径を小さくすることによる圧力上昇効果を最大にすることができる。その結果、小径側では、高圧小流量、大径側では低圧大流量の二圧二流量の吐出ができる。
請求項2記載の発明は、前記往復動部材の大径部の軸心方向の長さが該往復動部材の少なくとも半分以上占めるので、往復動部材・ストッパ部材間に磁束が流れることにより吸引力を発生させている。往復動部材の大径部が長いほど、ガイド部材・往復動部材間の磁束の通過面積が広くなり、磁気抵抗が小さくでき電磁気的な吸引力を高めることができるのでよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、往復動部材の径を小さくすることによって生じる吸引力低下を抑え、かつ往復動部材の径を小さくすることによる圧力上昇効果を最大にすることができ、小径側では、高圧小流量、大径側では低圧大流量の二圧二流量の吐出ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の電磁ポンプにつき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施に形態に係る電磁ポンプ10の概略構造を示す略縦断面図である。
図2は吐出逆止弁57,58の要部拡大図で、括弧内の符号は図1の吐出逆止弁58の構成を示す。図3は吸入逆止弁60、61の要部拡大図で、括弧内の符号は図1の吸入逆止弁61の構成を示す。
【0008】
図1において、電磁ポンプ10は鉄製材料なる略円筒形状のボディ(本体)11の内孔11aの略中央に円筒形のガイド(ガイド部材)12がOリング16により液密に嵌挿されている。さらに、ボディ11の内孔11aにはガイド12の両側面に当接してボビン(第一のボビン部材)13、(第二のボビン部材)14が嵌合されている。ボビン13、14は円筒形状を有し、その両側面には側壁部13a,13b、14a,14bを形成しており、内方の側壁部13a,14aは円盤になってガイド12の両側面にOリング15を介して係合し、側壁部13b,14bは端子17,18を接合している。さらに、ボビン13,14には、側壁部13a,13b及び14a,14b間にコイル内径の異なるコイル19,20が巻き回され、端子17,18に接続されている。
【0009】
図1においては、コイル20の電磁力がコイル19よりも大きくなるように、コイル20の内径がコイル19よりも大きくなって設けられている。さらに、コイル19、20をボディ11に内挿させるに際し、コイル20の巻数はコイル19よりも少なくなっている。すなわち、コイル19、20により発生する電磁力が最適となるように、プランジャ22の大径側に比べ、該プランジャ22の小径側のコイル内径を小さくすることによりコイル巻数を増やしている。このため小径側のプランジャ22ではより高圧を発生させることができる。
【0010】
前記ガイド12の内径12a及びボビン13,14の内孔21a,21bを形成する内周面には、段付を有するプランジャ(往復動部材)22が摺動自在に嵌挿されている。プランジャ22は、例えば一方(図1で左方)に小径部23aと、他方(図1で右方)に大径部23bと、を備える。小径部23aはボビン13の内孔(小孔)21aに、大径部23bはボビン14の内孔(大孔)21bにそれぞれ摺動自在に嵌挿されている。
また、プランジャ22の軸心方向の長さは大径部23bの範囲が該プランジャ22の長さの半分以上を占めている。これにより、プランジャ22の径が大径部が長いほど、プランジャ・ガイド部材間の磁束の通過面積が広くなり、磁気抵抗が小さくでき電磁気的な吸引力を高めることができる。
さらに、ガイド12の内径12aとプランジャ22の大径部23bの外径との間には若干の隙間を有している。
なお、プランジャ22の小径部23a及び大径部23bが接合する段付とボビン13の右端面との間には開口部24が形成されている。
【0011】
一方、ボビン13,14の内孔21a,21bには、固定鉄芯であるストッパ(ストッパ部材)25,26が臨入されている。なお、側壁部32,33の端面には非磁性体の薄板を当接又はばね部材70,71で押圧することにより電磁力の低下を速やかに行っている。
ストッパ25,26は一側にOリング31を介してボビン13,14の側壁部13b,14bに当接する鍔部27,28と、ボビン13,14の内孔21a,21bに嵌挿された中央部29,30と、他側に中央部29,30に接合する側壁部32,33と、備える。中央部29,30は横断面凹状を有し、側壁部32,33に出口穴34,35を有する出口シート36,37(図2参照)が形成されている。
【0012】
前記ストッパ25,26の中央部29,30には、吐出側本体38,39の円筒部40,41がOリング42を介して液密的に嵌挿されており、該吐出側本体38,39の鍔部43,44をストッパ25,26の鍔部27,28に接合してボディ11に加締め挟持することにより吐出側本体38,39をストッパ25,26に固定している。
前記吐出側本体38,39には、軸芯方向に指向する比較的に口径が大きく液体の吐出口としての機能を有する開口穴45,46と、これらの開口穴45,46に連通しストッ,パ25,26の出口穴34,35に接続する段付貫通孔47,48が形成されている。
図2に示すように、中央部29,30に嵌挿された円筒部40,41の先端部40a,41aは該円筒部40,41よりも小径で台形の円錐状に形成されており、該先端部40a,41aには円周方向に十字状に削成された溝55,56が設けられている。
【0013】
参照符号49,50は段付貫通孔47,48に嵌挿されたばね部材を示し、該ばね部材49,50の一端を段付貫通孔47,48の段部47a,48a(図1参照)に係合し、他端を出口ボール51、52に当接させており、ばね部材49,50の弾発力により出口ボール51,52を軸芯方向に付勢して、該出口ボール51,52を出口シート36,37に押圧するように機能する。なお、出口ボール51,52は側壁部32,33側の円筒部40,41の端部に形成された截頭形状の先端部40a,41aの開口穴53,54に嵌挿されている。溝55,56は出口ボール51,52が開口穴53,54のテーパ面53a,54aに係合しても液体を流す機能を有する。
この場合、図2に示すように出口シート36,37、ばね部材49,50,出口ボール51,52により、吐出逆止弁57,58が形成される。
【0014】
一方、吐出逆止弁57,58に対向して吸入逆止弁60,61がストッパ25,26とプランジャ22との間に設けられている。
すなわち、図3に示すように吸入逆止弁60,61はプランジャ22の両端面に形成されてポンプ室として機能する開口穴62,63に嵌挿された円筒形のシート64,65と、該シート64,65に側面に係合するリード弁66,67と、該リード弁66,67を押えるリード弁押え68,69と、開口穴62,63に嵌挿され一端をストッパ25,26の側壁部32,33に接触し、他端をリード弁押え68,69に係合するばね部材70,71と、を備える。
【0015】
本発明に係る電磁ポンプ10は基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
図1はコイル19,20が非励磁の状態を示しており、この状態ではばね部材70,71の弾発力によりプランジャ22はボディ11の略中央に位置している。
【0016】
図1の状態で、例えばコイル20に通電されると、電磁力によりプランジャ22が矢印Y方向に吸引され、該電磁力とばね部材70,71の弾発力の合力により、該プランジャ22は矢印Y方向に移動する。これにより、ポンプ室63(図3参照)の容積が縮小するので吸入口12a、通路24b,24aを経てリード弁67を開いてポンプ室63に流入した流体は圧縮され、ポンプ室63の内圧上昇により出口ボール52がばね部材50を押圧して出口シート37から離脱して矢印Y方向に変位する。このため、吐出逆止弁58が開いて流体がポンプ室63より段付貫通孔48よりと吐出口46より吐出される。
【0017】
一方、ポンプ室62内の容積は増大して負圧になるので吸入逆止弁60が開く。すなわち、リード弁66が開いて流体は通路24aよりポンプ室62に吸い込まれ該ポンプ室62に充填される。
図4に示すように、電磁力によりプランジャ22が吸着され、該プランジャ22がストッパ26に当接すると、左右のポンプ室62,63は共に容積変化がなくなり、吐出逆止弁58はばね部材50の弾発力により出口ボール52が出口シート37に当接し、出口穴35と段付貫通孔48とを遮断する。すなわち、吐出逆止弁58は閉じる。
電磁力によりプランジャ22がストッパ26に吸着されると、左右のポンプ室62,63が共に容積変化がなくなると、吸入逆止弁60はリード弁66の弾発力により該リード弁66がシート64に当接する。これにより、吸入逆止弁60は閉じる。
【0018】
コイル20の通電が停止され、しかる後にコイル19に通電されると、電磁力によりプランジャ22が矢印X方向に吸引され、該電磁力とばね部材70の弾発力の合力により、該プランジャ22が矢印X方向に移動する。
これにより、ポンプ室63(図3参照)の容積は増大して負圧になってリード弁67を開くので吸入逆止弁61が開弁する。よって、流体が吸入口12a、通路24b,24aを経てリード弁67を介してポンプ室63に流入し、該ポンプ室63に充填される。
一方、ポンプ室62(図3参照)の容積が縮小するので吸入口12a、通路24b,24aを経てリード弁66を開いてポンプ室62に流入した流体は圧縮され、ポンプ室62の内圧上昇により出口ボール51がばね部材49を押圧して出口シート36から離脱して矢印X方向に変位する。このため、吐出逆止弁57が開いて流体がポンプ室62より段付貫通孔47よりと吐出口45より吐出される。
【0019】
図5に示すように、プランジャ22がストッパ25に吸着されると、左右のポンプ室62,63は共に容積変化がなくなり、吐出逆止弁57はばね部材49の弾発力により出口ボール51が出口シート36に当接し、出口穴34と段付貫通孔47とを遮断する。すなわち、吐出逆止弁57は閉じる。
以下、このような動作を繰り返すことにより、左右の二つのポンプ室、例えばポンプ室62、63(図3参照)より交互に吸入・吐出動作が行われる。
本発明の実施の形態においては、吸入口12aをガイド12の略中央に、吐出口である開口穴45,46を電磁ポンプ10の両端に設けたが、これらの位置を逆にしてもよい。
その際、吐出逆止弁57,58と吸入逆止弁60,61の作動方向を反転させることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る電磁ポンプの略縦断面図である。
【図2】図1に示す吐出逆止弁の要部拡大略縦断面である。
【図3】図1に示す吸入逆止弁の要部拡大縦断面図である。
【図4】図1の右側の電磁ポンプの動作説明図である。
【図5】図1の左側の電磁ポンプの動作説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10 電磁ポンプ 11 ボディ
12 ガイド 13,14 ボビン
21a,212b 内孔 22 プランジャ
23a 小径部 23b 大径部
24 開口部 24a,24b 通路
25,26 ストッパ 38,39 吐出側本体
57,58 吐出逆止弁 60,61 吸入逆止弁



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁力で往復動される往復動部材により、ハウジングに形成された第一及び第二のポンプ室に交互にポンプ作用を行わせる電磁ポンプにおいて、
本体と、
前記本体の内孔に嵌挿されたガイド部材と、
前記ガイド部材の一側面に隣接して前記本体の内方に嵌挿され内孔が小径の第一のボビン部材と、
前記第一のボビン部材に巻装された第一のコイル部材と、
前記ガイド部材の他側面に隣接して前記本体の内方に嵌挿され内孔が大径の第二のボビン部材と、
前記第二のボビン部材に巻装された第二のコイル部材と、
前記第一及び前記第二のボビン部材の内孔に摺動自在に装着された往復動部材と、
を備え、
前記第一のコイル部材の巻数が前記第二のコイル部材の巻数よりも大きく設けられ、前記往復動部材は小径部が前記第一のボビン部材の小孔、大径部が前記ガイド部材及び前記第二のボビン部材の大孔にそれぞれ嵌挿され、前記小径部及び前記大径部は軸径方向に径差を設けていることを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の電磁ポンプにおいて、
前記往復動部材の大径部の軸心方向の長さが該往復動部材の少なくとも半分以上占めることを特徴とする電磁ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−71166(P2010−71166A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238773(P2008−238773)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】