説明

電磁式押圧装置

【課題】大型化および複雑化を抑制するとともに、消費電力の増大あるいは効率の低下を抑制することのできる電磁式押圧装置を提供する。
【解決手段】電磁石102と磁性部材103との相対距離が変位する際の移動力を基に押圧力を発生する推力機構と、推力機構に対する相対移動が可能で、前記押圧力を被押圧部材120に伝達する押圧部材111と、磁性流体126に印可する磁気を制御して前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、磁性流体126は、推力機構と押圧部材111との間の第1充填室112と、第1流路115で第1充填室112に連通された第2充填室114とに充填され、磁性部材103は、電磁石102で発生する磁束を、磁束密度および磁気抵抗が異なる磁路127,128に分岐し、第1流路115は、いずれかの磁路が通過する第2流路118を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁力を利用したアクチュエータで発生させた推力により、例えば多板式のクラッチやブレーキの摩擦板を押圧する装置に適用できる電磁式押圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧あるいは電磁力を利用したアクチュエータやボールねじなどの回転力を推力に変換する機構を利用したアクチュエータなどの各種のアクチュエータが知られている。例えば特許文献1には、電磁石をアクチュエータとして利用した電磁摩擦クラッチに関する発明が記載されている。この電磁摩擦クラッチは、電磁石で発生させた磁気力によってアーマチュアを吸引し、その推力を摩擦板に作用させて各摩擦板を接触させるように構成されている。したがって、その推力に応じた係合力すなわちトルク容量が設定される。しかしながら、その推力あるいはクラッチの締結力は、磁束密度によって変化し、その磁束密度がエアギャップによって変化するので、この特許文献1に記載された発明では、磁束密度を算出することにより、電磁石に通電する電流値をフィードバック制御するように構成している。その結果、エアギャップが変化しても締結力を適切に制御できる、とされている。
【0003】
すなわち、この特許文献1の発明は、アーマチュアのストローク量が摩擦板の摩耗やアーマチュアの位置のバラツキなどに起因して異なっている場合に、電流を変化させて推力もしくは締結力を所定値に維持するものである。これに対して、特許文献2には、エアギャップを自動調整するために電磁石の位置を変化させるようにした電磁摩擦クラッチに関する発明が記載されている。この特許文献2に記載された発明は、電磁石に対するアーマチュアの相対的なストローク量を一定に維持するために、本来固定されている電磁石を移動させるように構成したものである。
【0004】
また、特許文献3には、電磁ブレーキの応答性を向上させるために、ハウジングとアーマチュア部材との間に押圧部材の押圧方向、すなわち多板ブレーキ機構のブレーキプレートとブレーキディスクとを当接させる方向に、アーマチュア部材を付勢する弾性手段を設けた電磁ブレーキに関する発明が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−227882号公報
【特許文献2】特開2004−232835号公報
【特許文献3】特開2004−52901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された装置は、エアギャップが大きくなっていて磁束密度が低下している場合、すなわち締結力が小さい場合には、電流値を大きくし、また反対にエアギャップが小さくなっていて磁束密度が増大している場合には、電流値を下げることになる。したがって、例えば摩擦板の摩耗が進行していないなどのために、電磁石とアーマチュアとの間隔が広い場合には、電磁石に流す電流を多くする必要があるので、電磁石が大型化する可能性があり、また消費電力が増大する可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された装置では、電磁石を移動させるためのスペースを確保する必要があるうえに、電磁石を移動させ、また選択的に固定する機能を備えた機構を設ける必要があるので、構成が複雑化し、また装置の全体としての構成が大型化する可能性がある。
【0008】
そして、特許文献3に記載された装置は、電磁ブレーキの非作動時であっても、弾性手段によりアーマチュア部材が多板ブレーキ機構を係合する方向に付勢されているため、多板ブレーキ機構のブレーキプレートとブレーキディスクとの摩擦面同士が常に押し付けられる構成となっている。すなわち、ブレーキプレートとブレーキディスクとの摩擦面同士が、電磁ブレーキの作動・非作動にかかわらず常に弾性手段で押し付けられている。そのため、電磁ブレーキの非作動状態における引き摺り損失の増大、ひいてはブレーキプレートおよびブレーキディスクの摩擦面の発熱や焼損を誘発する可能性がある。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、装置の大型化および複雑化を抑制するとともに、消費電力の増大あるいは効率の低下を抑制することのできる電磁式押圧装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目標を達成するために、請求項1の発明は、電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記推力機構とは別の所定の部材と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通する第1流路とにそれぞれ充填されていて、前記磁性部材は、前記電磁石に通電した際に発生する磁束が通過する磁路を、磁束密度および磁気抵抗が異なる複数の磁路に分岐するとともに、前記第1流路は、前記複数の磁路のうちのいずれかが通過する第2流路を含んでいることを特徴とする装置である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第2流路を通過する磁路が、前記複数の磁路のうち相対的に磁束密度が大きくかつ磁気抵抗が大きい磁路であることを特徴とする装置である。
【0012】
また、請求項3の発明は、電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記第1副電磁石と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、前記押圧部材が前記押圧力を前記被押圧部材に伝達している状態で、前記推力機構の前記押圧力の押圧方向と反対側への後退移動を規制する押圧力保持手段を備えていることを特徴とする装置である。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記磁性流体が、前記磁性部材と前記推力機構との間に固定された第2副電磁石と前記推力機構との間に形成された第3充填室と、前記第2副電磁石と前記磁性部材との間に形成された第4充填室と、それら第3充填室と第4充填室とを連通するとともに前記第2副電磁石の内部に形成された第2流路とにそれぞれ充填されていて、前記押圧力保持手段が、前記第2副電磁石で前記第2流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記後退移動を規制する手段を含むことを特徴とする装置である。
【0014】
また、請求項5の発明は、電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記第1副電磁石と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、前記押圧部材が前記押圧力を前記被押圧部材に伝達している状態で、前記推力機構の前記押圧力の押圧方向と反対側への後退移動を規制する押圧力保持手段と、前記第1副電磁石により前記第1流路に磁気が印加された場合に、前記第1流路を閉塞もしくは狭窄させる流路制限手段とを備えていることを特徴とする装置である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記磁性流体が、前記磁性部材と前記推力機構との間に固定された第2副電磁石と前記推力機構との間に形成された第3充填室と、前記第2副電磁石と前記磁性部材との間に形成された第4充填室と、それら第3充填室と第4充填室とを連通するとともに前記第2副電磁石の内部に形成された第2流路とにそれぞれ充填されていて、前記押圧力保持手段が、前記第2副電磁石で前記第2流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記後退移動を規制する手段を含み、前記流路制限手段は、前記第2副電磁石により前記第2流路に磁気が印加された場合に、前記第2流路を閉塞もしくは狭窄させる手段を含むことを特徴とする装置である。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5または6の発明において、前記流路制限手段が、前記第1流路または前記第2流路内に設けられた磁性を有しかつ膨張・収縮自在な磁性弾性体により構成されていることを特徴とする装置である。
【0017】
また、請求項8の発明は、電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記推力機構とは別の所定の部材と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記所定の部材との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、前記第1充填室内の磁性流体が前記推力機構側からの力を受ける第1受圧部の受圧面積が、前記第1充填室内の磁性流体が前記押圧部材側からの力を受ける第2受圧部の受圧面積よりも小さいことを特徴とする装置である。
【0018】
また、請求項9の発明は、電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記推力機構とは別の所定の部材と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記所定の部材との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、前記第1充填室内の磁性流体が前記推力機構側からの力を受ける第1受圧部の受圧面積が、前記第1充填室内の磁性流体が前記押圧部材側からの力を受ける第2受圧部の受圧面積よりも小さく、前記推力機構が前記被押圧部材側へ移動する際に前記推力機構の移動を徐々に規制して前記押圧部材と被押圧部材との当接を緩衝する緩衝手段を備えていることを特徴とする装置である。
【0019】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記緩衝手段が、前記推力機構と前記第1受圧部との間に設けられた第2副電磁石と、前記第2副電磁石の内部に形成されて前記磁性流体が充填されるとともに、前記推力機構の移動と連動して容積が変化する第3充填室と、前記第1充填室と前記第3充填室とを連通させて前記磁性流体の流通を可能にする第2流路とから構成されていることを特徴とする装置である。
【0020】
請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記第3充填室が、前記推力機構と前記押圧部材との間の距離が短くなるほど容積が少なくなるように形成され、前記第2副電磁石が、該第2副電磁石に通電されて磁力を発生している場合に、前記推力機構と前記押圧部材との間の距離が短くなるほど前記磁力が大きくなるように形成されていることを特徴とする装置である。
【0021】
また、請求項12の発明は、電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、前記推力機構と前記押圧部材との間に設けられるとともに、前記磁性流体に印加する磁気の大小に応じて前記推力機構と前記押圧部材とを選択的に固定する係合機構を備え、前記磁性流体は、前記推力機構と前記係合機構との間に設けられた第1副電磁石の内部に形成された第1充填室に充填されていて、前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石への通電を低下もしくは停止することにより前記係合機構で前記推力機構と前記押圧部材とを固定して前記相対移動を規制することを特徴とする装置である。
【0022】
請求項13の発明は、請求項12の発明において、前記押圧部材と所定の固定部材との間に固定された第2副電磁石と、前記押圧部材と所定の固定部材との間に形成されかつ前記第2副電磁石の内部に形成された流路で互いに連通されかつ前記磁性流体が充填されるとともに、前記押圧部材の移動と連動して容積がそれぞれ変化する第2および第3充填室と、前記第2副電磁石で前記流路内の磁性流体に印加する磁気を制御することにより前記押圧部材の前記被押圧部材に対する相対移動および押圧状態を制御する押圧制御手段とを備えていることを特徴とする装置である。
【0023】
そして、請求項14の発明は、電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対位置を回転変位させ、その相対位置が回転変位する際の回転力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記第1副電磁石と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、前記押圧部材が前記押圧力を前記被押圧部材に伝達している状態で、前記推力機構の前記押圧力の押圧方向と反対側への後退移動を規制する押圧力保持手段を備えていることを特徴とする装置である。
【0024】
請求項15の発明は、請求項14の発明において、前記推力機構が、回転運動を直線運動に変換するボールねじにより該推力機構に入力される回転力を基に前記押圧力を発生する機構を含み、前記押圧力保持手段が、前記ボールねじの回転を停止することにより前記後退移動を規制する手段を含むことを特徴とする装置である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、推力機構と押圧部材とが相対的に移動可能であるから、それらの間に介在させる、すなわち第1充填室内に介在させる磁性流体の量に応じて両者の相対位置、言い換えれば、推力機構に対する押圧部材の伸長量を変化させることができる。したがって、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を各充填室内の磁性流体の量で調整でき、それに伴って磁性部材の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0026】
また、第1充填室内の磁性流体の量は、第1充填室と第2充填室とを連通する第1流路における磁性流体の流動を規制して、磁性流体を第1充填室内に封止することにより設定される。その第1流路における磁性流体の流動の規制は、第1流路が磁性部材内の内部を迂回する部分に形成された第2流路を、磁性部材内のいずれかの磁路を通って磁束が通過することにより第2流路内の磁性流体に磁気が印加され、その結果、第2流路内の磁性流体が固化し、もしくは流動性が低下させられることによって行われる。そのため、専用のストロークセンサや位置センサ、あるいは磁性流体に磁気を印可する専用の電磁石などを設けることなく、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を第1充填室内の充填材の量で調整できる。そして、それに伴って磁性部材の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0027】
さらに、請求項2の発明によれば、上記の請求項1の発明による作用・効果に加えて、電磁石に通電され、電磁石と磁性部材とに磁界が発生する場合に、磁性部材に形成される複数の磁路のうち相対的に磁束密度が大きくかつ磁気抵抗が大きい磁路が、流路内を第1流路内の磁性流体が流通する第2流路を通過する。したがって、電磁石に通電されると、電磁石と磁性部材とに作用する磁束は、先ず、磁性部材の複数の磁路のうち相対的に磁束密度が小さくかつ磁気抵抗が小さい磁路を通って磁界を形成する。その際、磁性部材に吸引力が作用して磁性部材が変位し、それに伴って推力機構で押圧力が発生する。そして、相対的に磁束密度が小さくかつ磁気抵抗が小さい磁路が磁気飽和した後に、磁性部材の複数の磁路のうち相対的に磁束密度が大きくかつ磁気抵抗が大きい磁路、すなわち第2流路を通過している磁路を磁束が通過するようになって、第2流路内の磁性流体の流動が規制される。すなわち第1充填室内の磁性流体の移動が規制されて、推力機構と押圧部材との相対移動が規制される。そのため、電磁石の通電量や磁性部材での各磁路の磁束密度および磁気抵抗などを適宜に調整して設定することにより、専用のストロークセンサや位置センサ、あるいは磁性流体に磁気を印可する専用の電磁石などを設けることなく、電磁石と磁性部材との間のいわゆるエアギャップ、および推力機構に対する押圧部材の相対位置を容易に設定することができる。
【0028】
請求項3の発明によれば、推力機構と押圧部材とが相対的に移動可能であるから、それらの間に介在させる、すなわち第1および第2充填室内に介在させる磁性流体の量に応じて両者の相対位置、言い換えれば、推力機構に対する押圧部材の伸長量を変化させることができる。したがって、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を各充填室内の磁性流体の量で調整でき、それに伴って磁性部材の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0029】
また、推力機構を移動させることに伴って押圧部材が被押圧部材に当接すると、その反力によって押圧部材が推力機構側に押される。その場合に磁性流体が流動状態に設定されていると、これが第1充填室から押し出されて押圧部材が推力機構に対して接近する。すなわち、押圧部材のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1副電磁石によって第1流路内の磁性流体に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体を第1充填室に封止した状態に維持することにより、推力機構による推力を被押圧部材に作用させることができる。したがって、押圧部材と被押圧部材との当接位置が変化した場合であっても、押圧部材のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0030】
そして、押圧部材で被押圧部材を押圧している状態、すなわち推力機構の推力を押圧部材を介して被押圧部材に伝達している状態では、押圧力保持手段によって推力機構の後退方向、すなわち推力機構の推力による押圧力の押圧方向と反対方向への移動が規制される。そのため、磁性部材を吸引していた電磁石への通電を停止しても、推力機構の後退移動を規制して押圧部材による押圧状態を維持することができ、その結果、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【0031】
さらに、請求項4の発明によれば、上記の請求項3の発明による作用・効果に加えて、磁性部材が前進すると第4充填室の磁性流体が第3充填室に移動して推力機構を押圧する。その推力機構は、電磁石に吸引される磁性部材と同様に動作し、したがって押圧部材がストローク位置を調整された状態で押圧作用を行う。その状態で、第2副電磁石によって第2流路内の磁性流体に磁気を印可し、その流動を阻止すると、推力機構と磁性部材との間の充填室、すなわち第3および第4充填室に磁性流体が封入され、推力機構を押圧した状態が維持される。そのため、磁性部材を吸引していた電磁石への通電を停止しても、推力機構の後退移動を規制して押圧部材による押圧状態を維持することができ、その結果、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【0032】
請求項5の発明によれば、推力機構と押圧部材とが相対的に移動可能であるから、それらの間に介在させる、すなわち第1および第2充填室内に介在させる磁性流体の量に応じて両者の相対位置、言い換えれば、推力機構に対する押圧部材の伸長量を変化させることができる。したがって、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を各充填室内の磁性流体の量で調整でき、それに伴って磁性部材の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0033】
また、推力機構を移動させることに伴って押圧部材が被押圧部材に当接すると、その反力によって押圧部材が推力機構側に押される。その場合に磁性流体が流動状態に設定されていると、これが第1充填室から押し出されて押圧部材が推力機構に対して接近する。すなわち、押圧部材のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1副電磁石によって第1流路内の磁性流体に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体を第1充填室に封止した状態に維持することにより、推力機構による推力を被押圧部材に作用させることができる。したがって、押圧部材と被押圧部材との当接位置が変化した場合であっても、押圧部材のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0034】
さらに、押圧部材で被押圧部材を押圧している状態、すなわち推力機構の推力を押圧部材を介して被押圧部材に伝達している状態では、押圧力保持手段によって推力機構の後退方向、すなわち推力機構の推力による押圧力の押圧方向と反対方向への移動が規制される。そのため、磁性部材を吸引していた電磁石への通電を停止しても、推力機構の後退移動を規制して押圧部材による押圧状態を維持することができ、その結果、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【0035】
そして、第1副電磁石で第1流路に磁気を印加する場合、第1流路内に設けられた流路制限手段により第1流路が閉塞もしくは狭窄される。その結果、第1充填室の磁性流体を封止した状態にするために第1流路内で磁気が印可される磁性流体が少なくなり、そのために第1副電磁石への通電量が少なくて済む。その結果、推力機構と押圧部材との相対移動を規制するための電力の消費を削減することができる。
【0036】
さらに、請求項6の発明によれば、上記の請求項5の発明による作用・効果に加えて、磁性部材が前進すると第4充填室の磁性流体が第3充填室に移動して推力機構を押圧する。その推力機構は、電磁石に吸引される磁性部材と同様に動作し、したがって押圧部材がストローク位置を調整された状態で押圧作用を行う。その状態で第2副電磁石によって第2流路内の磁性流体に磁気を印可し、その流動を阻止すると、推力機構と磁性部材との間の充填室、すなわち第3および第4充填室に磁性流体が封入され、推力機構を押圧した状態が維持される。そのため、磁性部材を吸引していた電磁石への通電を停止しても、推力機構の後退移動を規制して押圧部材による押圧状態を維持することができ、その結果、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【0037】
また、第2副電磁石で第2流路に磁気を印加する場合、第2流路内に設けられた流路制限手段により第2流路が閉塞もしくは狭窄される。その結果、第3充填室の磁性流体を封止した状態にするために第2流路内で磁気が印可される磁性流体が少なくなり、そのために第2副電磁石への通電量が少なくて済む。その結果、推力機構の後退移動を規制するための電力の消費を削減することができる。
【0038】
さらに、請求項7の発明によれば、上記の請求項5または6の発明による作用・効果に加えて、例えばスポンジ状で膨張・収縮自在な弾性部材の内部に、上記のような磁性流体を含浸させた磁性と弾性とを有する磁性弾性部材によって流路制限手段が構成される。そのため、その磁性弾性部材を第1流路あるいは第2流路内に配置することにより、流路に磁気が印加された場合にその磁性弾性部材を膨張させて、容易に流路を閉塞もしくは狭窄させることができる。
【0039】
請求項8の発明によれば、推力機構と押圧部材とが相対的に移動可能であるから、それらの間に介在させる、すなわち第1充填室内に介在させる磁性流体の量に応じて両者の相対位置、言い換えれば、推力機構に対する押圧部材の伸長量を変化させることができる。したがって、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を各充填室内の磁性流体の量で調整でき、それに伴って磁性部材の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0040】
また、推力機構を移動させることに伴って押圧部材が被押圧部材に当接すると、その反力によって押圧部材が推力機構側に押される。その場合に磁性流体が流動状態に設定されていると、これが第1充填室から第2充填室に押し出されて押圧部材が推力機構に対して接近する。すなわち、押圧部材のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1副電磁石によって第1流路内の磁性流体に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体を第1充填室に封止した状態に維持することにより、推力機構による推力を被押圧部材に作用させることができる。したがって、押圧部材と被押圧部材との当接位置が変化した場合であっても、押圧部材のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0041】
そして、第1充填室において、磁性流体が推力機構からの推力を受ける第1受圧部の受圧面積が、磁性流体が押圧部材を押圧する第2受圧部よりも小さくなっている。そのため、押圧部材で被押圧部材を押圧する場合、すなわち第1充填室内の磁性流体が推力機構からの推力に押され、その力が押圧部材に伝達されて被押圧部材を押圧する場合に、押圧部材で被押圧部材を押圧する押圧力に対して、推力機構で発生する押圧力が小さくて済み、その結果、電磁石を小型化して装置全体の体格の小型化を図ることができる。
【0042】
請求項9の発明によれば、推力機構と押圧部材とが相対的に移動可能であるから、それらの間に介在させる、すなわち第1充填室内に介在させる磁性流体の量に応じて両者の相対位置、言い換えれば、推力機構に対する押圧部材の伸長量を変化させることができる。したがって、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を各充填室内の磁性流体の量で調整でき、それに伴って磁性部材の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0043】
また、推力機構を移動させることに伴って押圧部材が被押圧部材に当接すると、その反力によって押圧部材が推力機構側に押される。その場合に磁性流体が流動状態に設定されていると、これが第1充填室から第2充填室に押し出されて押圧部材が推力機構に対して接近する。すなわち、押圧部材のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1副電磁石によって第1流路内の磁性流体に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体を第1充填室に封止した状態に維持することにより、推力機構による推力を被押圧部材に作用させることができる。したがって、押圧部材と被押圧部材との当接位置が変化した場合であっても、押圧部材のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0044】
また、第1充填室において、磁性流体が推力機構からの推力を受ける第1受圧部の受圧面積が、磁性流体が押圧部材を押圧する第2受圧部よりも小さくなっている。そのため、押圧部材で被押圧部材を押圧する場合、すなわち第1充填室内の磁性流体が推力機構からの推力に押され、その力が押圧部材に伝達されて被押圧部材を押圧する場合に、押圧部材で被押圧部材を押圧する押圧力に対して、推力機構で発生する押圧力が小さくて済み、その結果、電磁石を小型化して装置全体の体格の小型化を図ることができる。
【0045】
そして、押圧部材が磁性流体を介して推力機構に押されて押圧部材と被押圧部材とが当接する場合、推力機構の移動が抑制され、その移動が徐々に規制される。そのため、押圧部材と被押圧部材とが当接する際の衝撃を緩衝することができ、例えば押圧部材が急激に移動して被押圧部材に衝突し、ショックが生じてしまうような事態を防止もしくは抑制することができる。
【0046】
さらに、請求項10の発明によれば、上記の請求項9の発明による作用・効果に加えて、推力機構と第1充填室の受圧部との間に、内部に第3充填室が形成された第2副電磁石が設けられ、その第3充填室が、室内に磁性流体が充填されるとともに推力機構の移動と連動して容積が変化するように形成されている。そのため、推力機構が移動する際の位置に応じて第3充填室内の磁性流体への磁気の印加状態を変化させて、磁性流体の流動性を変化させることができ、複雑な制御を行うことなく、推力機構の移動を抑制し、もしくはその移動を徐々に規制することができる。
【0047】
さらに、請求項11の発明によれば、上記の請求項10の発明による作用・効果に加えて、第2副電磁石に通電され、かつ推力機構が磁性流体を介して押圧部材を押圧する場合、推力機構が押圧部材に近づくにつれて、すなわち推力機構が押圧部材側に移動することにより押圧部材が第3充填室および第1充填室の磁性流体に押されて被押圧部材に近づくにつれて、第3充填室の容積が小さくなるとともに、第2副電磁石で発生する磁力が大きくなる。したがって、押圧部材が被押圧部材に近づくにつれて第3充填室の磁性流体の流動性が低下させられる。そのため、複雑な制御を行うことなく、推力機構の移動を抑制し、もしくはその移動を徐々に規制することができる。
【0048】
請求項12の発明によれば、推力機構と押圧部材とが相対的に移動可能であるから、両者の相対位置、言い換えれば、推力機構に対する押圧部材の伸長量を変化させることができる。したがって、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を推力機構と押圧部材との相対位置を変化させることにより調整でき、それに伴って推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0049】
また、推力機構を移動させることに伴って押圧部材が被押圧部材に当接すると、その反力によって押圧部材が推力機構側に押され、押圧部材が推力機構に対して接近する。すなわち、押圧部材のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1副電磁石による第1充填室の磁性流体に対する磁気の印可を停止すること、すなわち第1副電磁石への通電を停止することにより、係合機構を係合させて推力機構と押圧部材との相対移動を規制した状態に維持し、推力機構による推力を被押圧部材に作用させることができる。したがって、押圧部材と被押圧部材との当接位置が変化した場合であっても、押圧部材のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で被押圧部材を押圧することができる。さらに、推力機構と押圧部材との相対移動は、第1副電磁石への通電を停止することにより規制される。そのため、第1副電磁石への通電を停止した状態で押圧部材による押圧状態を維持することができ、その結果、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【0050】
さらに、請求項13の発明によれば、上記の請求項12の発明による作用・効果に加えて、押圧部材が推力機構と共に移動させられ、押圧部材と被押圧部材とが当接する場合、押圧部材の移動と連動して容積が変化する第2充填室と第3充填室との間の磁性流体の流動状態を制御することにより、すなわち、第2副電磁石による第2充填室と第3充填室との間の流路への磁気の印加状態を制御することにより、言い換えると、第2副電磁石への通電量を制御することにより、押圧部材の移動状態および押圧部材と被押圧部材との当接状態を制御することができる。そのため、例えば押圧部材と被押圧部材とが当接する際に、第2副電磁石に通電して第2充填室と第3充填室との間の磁性流体の流動を抑制しておくことにより、押圧部材と被押圧部材とが当接する際の衝撃を緩衝することができる。あるいは、推力機構と押圧部材との相対移動が規制され、押圧部材で被押圧部材を押圧する場合、すなわち推力機構からの推力が押圧部材に伝達されて被押圧部材を押圧する場合に、第2副電磁石へ所定の電流が通電されて押圧部材の移動が規制されていた状態から、第2副電磁石への通電を低下させることにより、押圧部材の移動を解除して押圧部材で被押圧部材を押圧することができる。
【0051】
請求項14の発明によれば、推力機構と押圧部材とが相対的に移動可能であるから、それらの間に介在させる、すなわち第1および第2充填室内に介在させる磁性流体の量に応じて両者の相対位置、言い換えれば、推力機構に対する押圧部材の伸長量を変化させることができる。したがって、押圧部材をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を各充填室内の磁性流体の量で調整でき、それに伴って磁性部材の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0052】
また、推力機構を移動させることに伴って押圧部材が被押圧部材に当接すると、その反力によって押圧部材が推力機構側に押される。その場合に磁性流体が流動状態に設定されていると、これが第1充填室から押し出されて押圧部材が推力機構に対して接近する。すなわち、押圧部材のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1副電磁石によって第1流路内の磁性流体に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体を第1充填室に封止した状態に維持することにより、推力機構による推力を被押圧部材に作用させることができる。したがって、押圧部材と被押圧部材との当接位置が変化した場合であっても、押圧部材のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で被押圧部材を押圧することができる。
【0053】
そして、押圧部材で被押圧部材を押圧している状態、すなわち推力機構の推力を押圧部材を介して被押圧部材に伝達している状態では、押圧力保持手段によって推力機構の後退方向、すなわち推力機構の推力による押圧力の押圧方向と反対方向への移動が規制される。そのため、押圧部材による押圧状態を確実に維持することができる。
【0054】
さらに、請求項15の発明によれば、上記の請求項14の発明による作用・効果に加えて、推力機構が、例えば電動モータとその電動モータの回転運動を軸線方向を前後動する直線運動に変換するボールねじとから構成される。そのため、電動モータへの通電量を制御することにより、推力機構の移動を制御すること、すなわち推力機構の移動速度および推力機構の軸線方向における移動位置を制御することができる。また、推力機構と押圧部材との相対移動を規制して押圧部材で被押圧部材を押圧している状態で、電動モータへの通電を停止することにより、推力機構の後退移動を規制して押圧部材による押圧状態を維持することができる。そのため、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。この発明の電磁式押圧装置は、アクチュエータが発生する推力を押圧部材に伝達し、この押圧部材によって摩擦板などの所定の対象物すなわち被押圧部材を押圧するように構成され、そのアクチュエータのストローク量もしくは範囲を一定に維持し、また押圧部材のストローク位置を被押圧部材の状態に応じて調整して、被押圧部材を押圧するように構成されている。その調整および推力の伝達のために、アクチュエータと押圧部材との間に、磁性流体が封入されている。
【0056】
アクチュエータは、推力を発生できる構成のものであり、この発明では、電磁力を利用した電磁アクチュエータや、電動モータの回転力をリンク機構やボールねじ等により推力に変換する機構などを使用して前後動作させる推進機構を採用することができる。このうち、電磁アクチュエータは、コイルに流す電流と発生する推力との関係が、コイルもしくはこれと一体のヨークとアーマチュアとの間のエアギャップによって変化するので、そのエアギャップを所定値もしくは所定範囲に維持するためには、この発明の電磁式押圧装置が有効である。また、電動モータとボールねじとを利用したアクチュエータは、電動モータのコイルに流す電流を制御することにより、推進機構の移動位置および動作速度を容易に制御することができる。
【0057】
また、押圧部材は、被押圧部材に直接当接して被押圧部材に押圧力を加える部材であり、アクチュエータの可動部とは相対移動可能に配置されている。そして、アクチュエータの可動部の推力を押圧部材に伝達するため、あるいは押圧部材とアクチュエータとの相対移動を許容もしくは規制するための磁性流体は、磁気が印加されていない通常の状態では、所定の流動性を有していて、磁気が印加された状態では、その流動性が低下し、もしくは固化するものである。したがって、この発明で用いられる磁性流体は、例えば磁性流体に印可する磁気を制御するために設けられる副電磁石によってその流動性を低下させ、もしくは実質的に固化させてその流動を阻止することになる。
【0058】
(第1の実施例)
図1には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した第1の実施例を示してある。ここに示す例におけるアクチュエータ101は、電磁石102とこれに吸引されるアーマチュア103とによって推力を発生するように構成されている。その電磁石102は、全体として環状を成しかつ周辺部分の断面が、軸線方向(図1の左右方向)に開いたコ字状を成すヨーク104と、通電することにより磁界を発生する電磁コイル(以下、仮にメインコイルと記す)105とを備えている。そのメインコイル105はヨーク104の内部に嵌め込まれた状態になっている。
【0059】
アーマチュア103は、ヨーク104に対向するリング状の平板部106と、その平板部106の外周端に一体化させられているシリンダ部107とを備えている。このアーマチュア103は、メインコイル105が通電された際に、メインコイル105で発生する磁力により吸引されて、軸線方向の推力を発生させるためのものである。したがってアーマチュア103における少なくとも平板部106は磁性材料によって形成されている。すなわち、このアーマチュア103がこの発明の磁性部材に相当している。
【0060】
シリンダ部107は、第1内筒部107aとそれより大径の第1外筒部107bとを備え、全体として環状を成し、かつ周辺部分が中空形状を成している。また、このシリンダ部107は、上記の第1内筒部107aと第1外筒部107bとの中空形状部分の開口方向とは軸線方向における反対側(図1の左側)に開口する中空形状の周辺部分を形成するとともに全体として環状を成している第2内筒部107cとそれより大径の第2外筒部107dとを備えている。なお、第1外筒部107bと第2外筒部107dとはケース部107eを介して一体に形成されている。
【0061】
そして、シリンダ部107は、ヨーク104の外周側に配置されており、その先端部、具体的には第1内筒部107aの先端部にスペーサ108がヨーク104の外周側の一部を被うように取り付けられている。このスペーサ108と電磁石102を保持している所定の固定部109との間に、リターンスプリング110が配置されている。このリターンスプリング110は、アーマチュア103が電磁石102によって吸引されて前進された場合に圧縮され、電磁石102による吸引力(アーマチュア103の推力)がなくなった場合にアーマチュア103を元の初期位置に押し戻す弾性力を発生するように構成されている。
【0062】
シリンダ部107の内部に、この発明における押圧部材に相当する第1ピストン111が液密状態を維持して前後動するように嵌め込まれている。それに伴って第1内筒部107aと第1外筒部107bとの間に形成される中空部における第1内筒部107aおよび第1外筒部107bと第1ピストン111との間に、この発明における第1充填室に相当する第1ピストン室112が形成されている。また、上記のシリンダ部107の内部で、第2内筒部107cと第2外筒部107dとにより形成される中空部分には、第2ピストン113が液密状態を維持して前後動するように嵌め込まれている。それに伴って第2内筒部107cと第2外筒部107dとの間に形成される中空部における第2内筒部107cおよび第2外筒部107dと第2ピストン113との間に、この発明における第2充填室に相当する第2ピストン室114が形成されている。
【0063】
これら第1ピストン室112と第2ピストン室114とは、シリンダ部107のケース部107eとアーマチュア103の平板部106とが対向する部分の隙間に形成された流路115により連通されている。すなわち、この流路115がこの発明における第1流路に相当している。また、平板部106のシリンダ部107と対向する側面(図1の左側の側面)には、平板部106を貫通しない深さ、すなわち平板部106の板厚よりも短い深さで、かつ平板部106と同心で環状の溝部116が形成されている。したがって、流路115はこの溝部116も含んでいる。なお、この実施例では、平板部106の溝部116が位置する部分の半径方向(図1の上下方向)に垂直な断面において、平板部106の溝部116が形成されていない部分の断面積よりも溝部116が形成されている部分の断面積の方が大きくなっている。
【0064】
そして、図2で詳細に示すように、シリンダ部107のケース部107eのアーマチュア103と対向する側面(図1,図2の右側の側面)には、所定の磁性材料により平板部106と同心の環状に形成された磁性部材117が、シリンダ部107と一体に固定されている。この磁性部材117は、ケース部107eの溝部116と対応する位置に形成されていて、溝部116に挿入されている。また、磁性部材117の半径方向(図1,図2の上下方向)の厚さは溝部116の溝幅よりも小さくなるように、また磁性部材117の溝部116内部に挿入される部分の長さは溝部116の深さよりも短くなるように形成されている。すなわち、溝部116すなわち流路115の溝部116部分は、磁性部材117が挿入された状態でも流路115が閉塞されないようになっている。したがって、溝部116と磁性部材117との間の空間に、流路115の一部である迂回流路118が形成されている。
【0065】
前記の第1ピストン111は、シリンダ部107の内部に嵌合する部分から軸線方向に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ブレーキ機構119を構成している摩擦板120に接近して対向している。この摩擦板120は、ケーシング121の内周面にスプライン嵌合されたブレーキプレートと、ブレーキドラム122の外周面にスプライン嵌合されかつブレーキプレートに対して交互に配置されたブレーキディスクとを含み、第1ピストン111によって厚さ方向(軸線方向)に押圧されることにより互いに摩擦接触してトルクを伝達するように構成されている。図1に示す例では、遊星歯車機構123のサンギヤ124にブレーキドラム122が一体化され、そのサンギヤ124を選択的に制動するように構成されている。
【0066】
また、第2ピストン113は、シリンダ部107の内部に嵌合する部分から軸線方向(図1における左方向)に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ケーシング121に取り付けられているストッパ125に当接するように構成されている。このストッパ125は、第2ピストン113をシリンダ部107の内部に押し戻すためのものであり、したがって第2ピストン113に前記の延出部分を形成する替わりに、第2ピストン113に向けて突出した部分をストッパ125に設けてもよい。
【0067】
そして、上記の各ピストン室112,114、および迂回流路118を含む流路115の内部に、磁性流体もしくは磁気粘性流体(以下、仮にこれらを磁性流体と記す)126が封入されている。この磁性流体126は、従来知られているもので、例えばマグネタイトなどの磁性体を油や水溶液中に分散させた流体状の物質であって、磁気を印加することによりその流動性が低下し、もしくは固化する流体である。
【0068】
前述したように、アーマチュア103の平板部106には、平板部106の板厚よりも短い深さの環状の溝部116が形成されていて、その溝部116に、磁性部材117が挿入された状態で配置されている。また、アーマチュア103は、電磁石102と近接して配置されている。したがって、メインコイル105が通電されて磁界を発生した際に、ヨーク104に形成される磁路(すなわち磁束通路)が、アーマチュア103で2方向に分岐されるようになっている。
【0069】
すなわち、上記のように、アーマチュア103の平板部106に溝部116が形成されることにより、アーマチュア103の平板部106を通過する磁界の磁束は、平板部106の溝部116が形成されていない部分であって、図2の矢印Aで示す位置の第1磁路127と、平板部106の溝部116すなわち迂回流路118が形成されている部分であって、図2の矢印Bで示す位置の第2磁路128との2本の磁路に分岐されてアーマチュア103部分を通過することになる。また、前述したように、平板部106の溝部116が形成されていない部分である第1磁路127の断面積よりも、平板部106の溝部116が形成されている部分である第2磁路128の断面積の方が大きくなっている。
【0070】
したがって、溝部116が形成されていて磁路の途中に空隙がある第2磁路128と比較して、第1磁路127の方が、相対的に磁路の磁気抵抗が小さく、磁路の断面積すなわち磁路の磁束面積が小さくなっている。言い換えると、第1磁路127は、第2磁路128よりも磁気抵抗が小さく、かつ磁束面積が小さくなっている。すなわち、アーマチュア103は、電磁石102で形成された磁路を、磁束密度および磁気抵抗が大小に異なる第1磁路127と第2磁路128との2つの磁路に分岐するように構成されている。
【0071】
そして、第1磁路127よりも磁気抵抗が大きくかつ磁束面積が大きい第2磁路128の途中には、磁性流体126が充填された溝部116すなわち迂回流路118が形成されている。言い換えると、前記の流路115は、相対的に磁気抵抗が大きくかつ磁束面積が大きい第2磁路128が通過する迂回流路118を含んでいる。したがって、この迂回流路118がこの発明における第2流路に相当している。
【0072】
つぎに上述した装置の作用について説明する。図1に示す状態は、メインコイル105に通電された状態、すなわちメインコイル105がON状態であって押圧作用を行っている状態である。メインコイル105がONになると、メインコイル105に通電される電流が増大させられ、その結果、メインコイル105で発生する磁力によってアーマチュア103が吸引されて軸線方向の推力が発生する。その場合の吸引力すなわち推力は、メインコイル105に流す電流と、ヨーク104とアーマチュア103との間のエアギャップとに応じたものとなる。
【0073】
アーマチュア103に作用する吸引力が、リターンスプリング110による弾性力より大きくなると、アーマチュア103が移動し始める。このアーマチュア103と共に各ピストン111,113が移動すると、第1ピストン111が摩擦板120に当接し、また第2ピストン113がストッパ125から離れてストッパ125側に移動できる状態になる。したがって、第1ピストン111の前進が阻止された状態でアーマチュア103が前進するので、第1ピストン111がシリンダ部107の内部に向けて相対的に押し戻される。そのため、この状態では摩擦板120を積極的に摩擦接触させる押圧力は生じない。また、第1ピストン室112の磁性流体126は、前述した流路115および迂回流路118を通って第2ピストン室114に移動し、それに伴って第2ピストン113がストッパ125側に押し出される。したがって、押圧部材である第1ピストン111のアーマチュア103からの突出量もしくは両者の相対位置が変更され、第1ピストン111のストローク位置が相対的に後退方向に調整される。
【0074】
上記のように、メインコイル105が通電されると、電磁石102とアーマチュア103とを通る磁界による磁束が発生する。すなわち、電磁石102のヨーク104で発生した磁束がアーマチュア103に進入し、そのアーマチュア103を経由して再びヨーク104へ戻り、磁束の閉回路が形成される。このとき、ヨーク104およびアーマチュア103を通過する磁束は、ヨーク104では1つの磁路を通過するのに対して、アーマチュア103では、前述したように、第1磁路127と第2磁路128の2つに磁路に分岐されて通過する。
【0075】
それら第1磁路127および第2磁路128を磁束が通過する際には、当初は、第2磁路128と比較して磁気抵抗が小さい第1磁路127に磁束が集中する。そしてメインコイル105の電流が増大されること、およびアーマチュア103が電磁石102側に吸引されてヨーク104とアーマチュア103との間のエアギャップが減少することなどにより、第1磁路127を通過する磁束が次第に増大していくと、ついには、第2磁路128と比較して磁束面積が小さい第1磁路127を通過する磁束が飽和し、言い換えると、第1磁路127が磁気飽和した状態になり、ヨーク104からアーマチュア103へ進入した磁束は、第2磁路128を通過するようになる。
【0076】
そして、第2磁路128を通過する磁束が次第に増大していくと、第2磁路128の途中に形成された迂回流路118内に充填されている磁性流体126を通過する磁束も増大し、すなわち、迂回流路118内の磁性流体126に印可される磁気が増大する。磁性流体126に磁気が印加されることにより、磁性流体126が固化し、あるいはその流動性がほとんど無い状態になり、第1ピストン室112の内部に充填されている磁性流体126がその第1ピストン室112の内部に封止された状態になる。その結果、アーマチュア103の推力が第1ピストン111に伝達される。
【0077】
ここで、第1磁路127が磁気飽和し、第2磁路128の途中に形成された迂回流路118内の磁性流体126が固化もしくはその流動性が低下した状態にされるタイミングは、アーマチュア103が所定の設定位置まで前進した時点で、磁性流体126が固化もしくはその流動性が低下した状態になるように設定されている。具体的には、アーマチュア103が所定の設定位置まで前進した時点で磁性流体126が固化もしくはその流動性が低下した状態になるように、例えば前述の第1磁路127および第2磁路128の断面積、あるいは迂回流路118の容積、あるいは磁性流体126の磁気力などが、設計上、それぞれ適宜に設定されている。なお、上記の所定の設定位置は、エアギャップがゼロに近い微小になる位置であり、実験やシミュレーションなどによって予め定めた位置である。
【0078】
磁性流体126に磁気が印加されて、その磁性流体126が固化し、もしくはその流動性が低下することにより、アーマチュア103の推力が第1ピストン111に伝達されると、押圧部材である第1ピストン111が摩擦板120を押圧してそれらを互いに摩擦接触させ、ブレーキ機構119がいわゆる係合状態となる。すなわち、摩擦板120を積極的に摩擦接触させる押圧力が発生する。その場合の摩擦接触力すなわち係合力は、メインコイル105でアーマチュア103を吸引する電磁気力(磁力)あるいは磁束密度に応じたものになるが、アーマチュア103と第1ピストン111との相対位置もしくは第1ピストン111のストローク位置が前述したように調整されてエアギャップが小さいことにより、その電磁気力あるいは磁束密度が大きく、メインコイル105の電流を特に増大させることなく、必要十分な係合力を得ることができる。
【0079】
上記のようにして前進させたアーマチュア103を元の位置に戻す場合、すなわちブレーキ機構119を解放させる場合、メインコイル105の電流を止めてOFF状態とする。その結果、アーマチュア103を摩擦板120側に移動させる推力が作用しなくなるので、リターンスプリング110の弾性力によってアーマチュア103が初期位置に向けて押し戻される。その場合、第2磁路128を通過する磁束から磁気を受けて固化させられていた、もしくは流動性が低下させられていた磁性流体126は、メインコイル105が磁気を発生しなくなり、第2磁路128を通過する磁束も無くなって磁気を受けなくなることにより、磁性流体126は流動可能な状態になる。そのため、第2ピストン113がストッパ125に当接してこれを第2ピストン室114に押し込む力が作用すると、第2ピストン室114から第1ピストン室112に磁性流体126が流れ、その磁性流体126に押されて第1ピストン111がアーマチュア103のシリンダ部107から伸長する方向に押される。すなわち、伸長量が減少するように位置調整された第1ピストン111の伸長量が、元の伸長量に復帰させられる。
【0080】
そして、ブレーキ機構119を再度係合させるべくメインコイル105に通電してアーマチュア103が前進すると、上述した場合と同様に、第1ピストン111のアーマチュア103からの伸長量すなわち第1ピストン111のストローク位置が、摩擦板120との関係で調整される。
【0081】
したがって、例えば摩擦板120の摩耗が進行していて、摩擦板120を実質的に係合させる第1ピストン111の位置が、摩耗が進行していない場合より前方側に変化しているとしても、第1ピストン111のアーマチュア103からの伸長量が、摩擦板120の摩耗量に応じて増大させられる。言い換えれば、摩擦板120の摩耗に応じたストローク調整を、アーマチュア103と第1ピストン111との相対位置もしくは間隔の調整によって行うので、ヨーク104とアーマチュア103との間のエアギャップが変化することがなく、エアギャップは所定の間隔に維持される。そのため、摩擦板120の摩耗が進行していない状態でエアギャップが大きくなったり、そのためのメインコイル105の電流を増大させたり、あるいはメインコイル105を大型化するなどの不都合を未然に解消もしくは抑制することができる。
【0082】
このように、この発明の第1の実施例で示す構成の装置によれば、電磁石102およびシリンダ部107などから構成される推力機構と第1ピストン111とが、具体的にはアーマチュア103と第1ピストン111とが相対移動可能であり、それらの間に、すなわち第1ピストン室112とよび第2ピストン室114に介在させる磁性流体126の量に応じてアーマチュア103と第1ピストン111との相対位置、言い換えれば、アーマチュア103に対する第1ピストン111の伸長量を変化させることができる。したがって、第1ピストン111をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を各ピストン室112,114の磁性流体126の量で調整でき、それに伴ってアーマチュア103の変位量もしくは推力機構のストローク量を一定に維持した状態で摩擦板120を押圧することができる。
【0083】
また、メインコイル105に通電され、電磁石102に磁界が発生する場合に、アーマチュア103に形成される各磁路127,128のうち相対的に磁束密度が大きくかつ磁気抵抗が大きい第2磁路128が、流路内を流路115内の磁性流体126が流通する迂回流路118を通過する。したがって、メインコイル105に通電されると、メインコイル105とアーマチュア103とに作用する磁束は、先ず、アーマチュア103の各磁路127,128のうち相対的に磁束密度が小さくかつ磁気抵抗が小さい第1磁路127を通って磁界を形成する。そして、第1磁路127が磁気飽和した後に、各磁路127,128のうち相対的に磁束密度が大きくかつ磁気抵抗が大きい第2磁路128、すなわち迂回流路118を通過している第2磁路128を磁束が通過するようになり、迂回流路118の磁性流体126の流動が規制される。すなわち第1ピストン室112の磁性流体126の移動が規制されて、アーマチュア103と第1ピストン111との相対移動が規制される。そのため、メインコイル105の通電量や各磁路127,128の磁束密度および磁気抵抗などを適宜に調整して設定することにより、専用のストロークセンサや位置センサ、あるいは磁性流体126に磁気を印可する専用の電磁石などを設けることなく、メインコイル105とアーマチュア103との間のいわゆるエアギャップ、およびアーマチュア103に対する第1ピストン111の相対位置を容易に設定することができる。
【0084】
(第2の実施例)
図3には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した第2の実施例を示してある。ここに示す例におけるアクチュエータ201は、電磁石202とこれに吸引されるアーマチュア203とによって推力を発生するように構成されている。その電磁石202は、全体として環状を成しかつ周辺部分の断面が、軸線方向(図3の左右方向)に開いたコ字状を成すヨーク204と、通電することにより磁界を発生する電磁コイル(以下、仮にメインコイルと記す)205とを備えている。そのメインコイル205はヨーク204の内部に嵌め込まれた状態になっている。
【0085】
アーマチュア203は、ヨーク204に対向するリング状の平板部206を備えている。このアーマチュア203は、メインコイル205が通電された際に、メインコイル205で発生する磁力により吸引されて、軸線方向の推力を発生させるためのものである。したがってアーマチュア203における少なくとも平板部206は磁性材料によって形成されている。すなわち、このアーマチュア203がこの発明の磁性部材に相当している。
【0086】
電磁石202の外周側にシリンダ部207が形成されている。このシリンダ部207は、ケーシング208の内周面と、その内側に配置された円筒部材209の外周面とによって形成されたものであって、全体としてリング状を成しかつ軸線方向に延びた中空部である。そして、そのシリンダ部207における後述するブレーキ機構222側の開口端側(図3の右側)に、第3ピストン210が液密状態を維持して前後動するように配置されている。
【0087】
この第3ピストン210は、その内部にこの発明における押圧部材に相当する第1ピストン211が液密状態を維持して前後動するように嵌合され、その第1ピストン211の後側(図3の左側)に、この発明の第1副電磁石に相当する電磁石212が嵌合されて固定されている。この電磁石212は、第3ピストン210の内筒部210aの外周面に固定されたベースリング212aと、第3ピストン210の外筒部210bの内周面に固定されたフレーム部材212bと、そのフレーム部材212bの内部に固定された電磁コイル(以下、仮に第1サブコイルと記す)212cとを備えている。なお、ベースリング212aとフレーム部材212bおよび第1サブコイル212cとの間には僅かな隙間が開いていて、この隙間が、後述する磁性流体221のための流路213を形成している。
【0088】
また、上記の第3ピストン210の内部の電磁石212と第1ピストン211との間に、この発明における第1充填室に相当する第1ピストン室214が形成されている。さらに、その電磁石212の後側(図3の左側)に、この発明における第2充填室に相当する第2ピストン215が配置され、この第2ピストン215と電磁石212との間に第2ピストン室216が形成されている。そして、これら第2ピストン室216と第1ピストン室214とは、この発明における第1流路に相当する流路213によって連通されている。
【0089】
なお、第2ピストン215は、第1ピストン211が後退方向(図3の左方向)に移動した場合に、電磁石212から遠ざかる方向(図3の左側)に押され、第1ピストン211が後述する摩擦板223から反力を受けて後退側に移動する際のダンパとして機能するように構成されている。
【0090】
また、第3ピストン210は、図示しないリターンスプリングの弾性力よって、図3の左方向に押し戻されるように構成されている。このリターンスプリングは、アーマチュア203が電磁石202によって吸引されて前進された場合に変形させられ、電磁石202による吸引力(アーマチュア203の推力)がなくなった場合にアーマチュア203を元の初期位置に押し戻す弾性力を発生するように構成されている。
【0091】
シリンダ部207の内部で第3ピストン210の後側(図3の左側)に、この発明の第2副電磁石に相当する電磁石217が挿入されて固定されている。この電磁石217は、前記の第1サブコイル212cを含む電磁石212と同様に、円筒部材209の外周面に固定したベースリング217aと、その外周側に嵌合させた電磁コイル(以下、仮に第2サブコイルと記す)217cと、そのサブコイル217cを被うフレーム部材217bとを備えている。なお、ベースリング217aとフレーム部材217bおよび第2サブコイル217cとの間には僅かな隙間が開いていて、この隙間が、後述する磁性流体221のための流路218を形成している。
【0092】
上記のシリンダ部207の内部で電磁石217を挟んだ一方(図3の右側)には、この発明における第3充填室に相当する第3ピストン室219が形成されている。また、上記のシリンダ部207の内部で電磁石217を挟んだ他方(図3の左側)には、アーマチュア203の先端部203aが液密状態を維持して前後動するように挿入されている。
【0093】
この先端部203aと電磁石217との間に、この発明における第4充填室に相当する油室220が形成されている。そして、これら油室220と第3ピストン室219とが、電磁石217に形成されたこの発明の第2流路に相当する流路218を介して連通されている。
【0094】
そして、これらの第1ピストン室214、第2ピストン室216、第3ピストン室219、油室220、および流路213、流路218に、磁性流体221が封入されている。この磁性流体221は、従来知られているもので、例えばマグネタイトなどの磁性体を油や水溶液中に分散させた流体状の物質であって、磁気を印加することによりその流動性が低下し、もしくは固化する流体である。
【0095】
したがって、第1サブコイル212cに通電して磁気を発生させると、磁性流体221が固化し、もしくは流動性が低下して、第1ピストン室214および第2ピストン室216の磁性流体221が封止状態となる。また、第2サブコイル217cに通電して磁気を発生させると、磁性流体221が固化し、もしくは流動性が低下して、第3ピストン室219および油室220の磁性流体221が封止状態となる。
【0096】
上記の第1ピストン211は、第3ピストン210の内部に嵌合する部分から軸線方向に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ブレーキ機構222を構成している摩擦板223に接近して対向している。この摩擦板223は、ケーシング208の内周面にスプライン嵌合されたブレーキプレートと、ブレーキドラム224の外周面にスプライン嵌合されかつブレーキプレートに対して交互に配置されたブレーキディスクとを含み、第1ピストン211によって厚さ方向(軸線方向)に押圧されることにより互いに摩擦接触してトルクを伝達するように構成されている。図3に示す例では、遊星歯車機構225のサンギヤ226にブレーキドラム224が一体化され、そのサンギヤ226を選択的に制動するように構成されている。
【0097】
つぎに上述した装置の作用について説明する。図3に示す状態は、メインコイル205に通電された状態、すなわちメインコイル205がON状態であって押圧作用を行っている状態である。このようにしてブレーキ機構222を係合させる場合の制御例を、図4のフローチャートに示してある。
【0098】
先ず、係合開始の判断が成立して係合指令が出力されると、メインコイル205の電流が増大させられる(ステップS1)。その結果、メインコイル205による磁力によってアーマチュア203が吸引され、軸線方向の推力が発生する。したがってアーマチュア203における少なくとも平板部206は磁性体によって形成されている。また、その場合の吸引力すなわち推力は、メインコイル205に流す電流と、ヨーク204とアーマチュア203との間のエアギャップとに応じたものとなる。
【0099】
続いて、アーマチュア203に作用する吸引力が、前記のリターンスプリングによる弾性力より大きいか否かが判断される(ステップS2)。アーマチュア203に作用する吸引力がリターンスプリングの弾性力よりも未だ小さいことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、上記のステップS1へ戻り、メインコイル205の電流を増大させる制御が継続される。そして、アーマチュア203に作用する吸引力がリターンスプリングの弾性力よりも大きくなったことにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、アーマチュア203が移動し始める(ステップS3)。
【0100】
アーマチュア203が電磁石202に吸引されて移動すると、油室220の磁性流体221は、流路218を通って第3ピストン室219に移動し、それに伴って第3ピストン210がブレーキ機構222側に押し出される。すなわち、アーマチュア203の推力が磁性流体221を介して第3ピストン210に伝達され、これが前進する。
【0101】
第3ピストン210と共に第1ピストン211がブレーキ機構222側へ移動すると、第1ピストン211が摩擦板223に当接する。したがって、第1ピストン211の前進が阻止された状態でアーマチュア203が前進するので、第1ピストン211が第3ピストン210の内部に向けて相対的に押し戻される。そのため、この状態では摩擦板223を積極的に摩擦接触させる押圧力は生じない。そして、押圧部材である第1ピストン211のアーマチュア203からの突出量もしくは両者の相対位置が変更され、第1ピストン211のストローク位置が相対的に後退方向に調整される。
【0102】
なお、このとき、第2ピストン215は、第1ピストン211が摩擦板223から反力を受け、それに伴って第2ピストン215が第1ピストン室214から流路213を通って第2ピストン室216へ移動する磁性流体221に押圧されて後退側に移動することにより、第1ピストン211が摩擦板223から反力を受けて後退側に移動する際のダンパとして機能する。
【0103】
そして、ステップS4へ進み、第2サブコイル217cの電流が増大させられる。第2サブコイル217cの電流が増大させられ、流路218の磁性流体221に第2サブコイル217cからの磁気が印加されることにより、磁性流体221が固化し、もしくはその流動性が低下する。そのために、油室220および第3ピストン室219の内部に充填されている磁性流体221が、それら油室220および第3ピストン室219の内部に封止された状態になり、その結果、アーマチュア203の推力が第3ピストン210に伝達される。
【0104】
なお、上記のステップS1,S4におけるメインコイル205および第2サブコイル217cの電流を増大させる制御は、例えば磁性流体221あるいはブレーキ機構222内のオイルの温度に応じて、それらの電流の増大量が適宜に設定されて実行される。磁性流体221やオイルは、温度によりその粘性が変化する。したがって、磁性流体221あるいはオイルの温度を考慮してメインコイル205および第2サブコイル217cの電流の制御を行うことにより、温度変化に左右されず常に適切な制御を実行することができる。
【0105】
この間、メインコイル205の電流を増大させる制御もしくは電流を維持する制御は継続されていて、アーマチュア203に作用する吸引力が、リターンスプリングの弾性力と磁性流体221の流体抵抗力との和に等しくなり(ステップS5)、アーマチュア203の移動が停止する(ステップS6)と、第1サブコイル212cの電流が増大させられて、第3ピストン210と第1ピストン211との相対移動が規制される(ステップS7)。
【0106】
第1サブコイル212cの電流が増大させられ、流路213の磁性流体221に第1サブコイル212cからの磁気が印加されることにより、磁性流体221が固化し、もしくはその流動性が低下する。そのために、第1ピストン室214の内部に充填されている磁性流体221が、その第1ピストン室214の内部に封止された状態になり、その結果、第3ピストン210と第1ピストン211との相対移動が規制された状態になる。
【0107】
続いて、メインコイル205および第2サブコイル217cの電流が一時的に低下させられる(ステップS8)。すなわち、メインコイル5による推力が一時的に低下させられる。また、メインコイル205の電流が再び制御されて、アーマチュア203の推力が第3ピストン210に伝達されることによる摩擦板223に対する押圧力、すなわちブレーキ機構222の係合力が制御される(ステップS9)。そして、その摩擦板223に対する押圧力が設定圧力よりも大きいか否かが判断される(ステップS10)。
【0108】
摩擦板223に対する押圧力が設定圧力以下であることにより、このステップS9で否定的に判断された場合は、上記のステップS9へ戻り、メインコイル205の電流制御によるを摩擦板223に対する押圧力の制御が継続される。これに対して、摩擦板223に対する押圧力が設定圧力よりも大きくなったことにより、ステップS9で肯定的に判断された場合には、ステップS11へ進み、第2サブコイル217cの電流が増大させられる。
【0109】
すなわち、ブレーキ機構222の摩擦板223が第1ピストン211によって押圧されて係合し、その押圧力が必要とする押圧力より大きくなると、第2サブコイル217cの電流が増大させられる。その結果、第3ピストン室219および油室220に充填されている磁性流体221が固化し、もしくはその流動性が低下するので、第3ピストン室219内の磁性流体221を封止した状態となる。そして、第3ピストン室219を形成している電磁石217が固定されているから、結局、第3ピストン210は前進位置で固定されることになる。
【0110】
したがって、この状態ではアーマチュア203による推力は特には必要がないので、メインコイル205の電流が低下させられる(ステップS12)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。すなわち、ブレーキ機構222の係合制御が終了する。
【0111】
なお、上記のステップS10で設定される設定圧力は、例えば摩擦板223の枚数、摩擦係数、半径、第1ピストン211による押圧力、あるいはブレーキ機構222を含む動力伝達装置に入力されるトルク(例えばエンジントルク)や変速比などに基づいて算出することができる。
【0112】
上記のようにしてメインコイル205の電流を制御して摩擦板223に対する押圧力を制御し、所定の設定圧力、すなわち所望するブレーキ機構222の係合力が得られた場合に、上記のステップS11で第2サブコイル217cの電流を増大することにより、磁性流体221が固化し、もしくはその流動性が低下する。その結果、第1ピストン211および第3ピストン210が摩擦板223を押圧している状態が維持される。そのため、上記のステップS12での制御のように、相対的に消費電力が大きいメインコイル205の通電を止め、あるいは電流を低下させることができ、ブレーキ機構222の係合状態を維持するために消費する電力もしくはエネルギを削減することができる。
【0113】
ここで、上述した各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図4に示すステップS7の制御を行う機能的手段がこの発明における相対移動規制手段に相当する。また、ステップS11,S12の制御を行う機能的手段がこの発明における押圧力保持手段に相当する。
【0114】
このように、この発明の第2の実施例で示す構成の装置によれば、電磁石202および第3ピストン210などから構成される推力機構と第1ピストン211とが、具体的には第3ピストン210と第1ピストン211とが相対移動可能であり、それらの間に、すなわち第1ピストン室214に介在させる磁性流体221の量に応じて第3ピストン210と第1ピストン211との相対位置、言い換えれば、第3ピストン210に対する第1ピストン211の伸長量を変化させることができる。したがって、第1ピストン211をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を第1ピストン室214の磁性流体221の量で調整でき、それに伴ってアーマチュア203の変位量もしくは第3ピストン210のストローク量を一定に維持した状態で摩擦板223を押圧することができる。
【0115】
また、第3ピストン210を移動させることに伴って第1ピストン211が摩擦板223に当接すると、その反力によって第1ピストン211が第3ピストン210側に押される。その場合に磁性流体221が流動状態に設定されていると、これが第1ピストン室214から第2ピストン室216に押し出されて第1ピストン211が第3ピストン210に対して接近する。すなわち、第1ピストン211のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1サブコイル212cによって流路213内の磁性流体221に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体221を第1ピストン室214に封止した状態に維持することにより、推力機構による推力を摩擦板223に作用させることができる。したがって、第1ピストン211と摩擦板223との当接位置が変化した場合であっても、第1ピストン211のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で摩擦板223を押圧することができる。
【0116】
そして、アーマチュア203が前進すると油室220の磁性流体221が第3ピストン室219に移動して第3ピストン210を押圧する。その第3ピストン210は、メインコイル205に吸引されるアーマチュア203と同様に動作し、したがって第1ピストン211がストローク位置を調整された状態で押圧作用を行う。その状態で、第2サブコイル217cによって流路218内の磁性流体221に磁気を印可し、その流動を阻止すると、第3ピストン210とアーマチュア203との間の充填室、すなわち第3ピストン室219および油室220に磁性流体221が封入され、第3ピストン210を押圧した状態が維持される。そのため、アーマチュア203を吸引していたメインコイル205への通電を停止しても、第1ピストン211の後退移動を規制して第1ピストン211による押圧状態を維持することができ、その結果、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【0117】
(第3の実施例)
図5,図6には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した第3の実施例を示してある。この第3の実施例は、前述の第2の実施例における各流路213,218に、磁性と弾性とを有する磁性弾性部材を設けることにより、各流路213,218で磁性流体221に磁気を印可して磁性流体221を固化させる際の消費電力を抑制するようにした例である。したがって、各流路213,218に磁性弾性部材が設けられた部分以外の構成は、前述の図3に示す第2の実施例における構成と同様であるので、図5,図6に図3と同じ参照符号を付けて詳細な説明は省略する。
【0118】
図5において、各電磁石212,217の内部に形成された各流路213,218には、磁性弾性部材301,302がそれぞれ配置されている。具体的には、図6に示すように、各電磁石212,217のベースリング212a,217aとフレーム部材212b,217bおよびサブコイル212c,217cとの間に形成された各流路213,218内のベースリング212a,217aの外周面に、それぞれベースリング212a,217aと同心で環状の磁性弾性部材301,302が固定されている。
【0119】
これら各磁性弾性部材301,302は、例えば内部に多数の空隙が形成されたスポンジ状の、言い換えると、内部に流体を吸収もしくは保持することが可能な、膨張・収縮自在なゴム製あるいは樹脂製の弾性部材に、前述の磁性流体221を含浸させたものである。そして、各磁性弾性部材301,302の半径方向(図5,図6の上下方向)の厚さが、各サブコイル212c,217cに通電されていない状態では、それぞれベースリング212a,217aとフレーム部材212b,217bおよびサブコイル212c,217cとの間の距離よりも小さくなるように設定されている。したがって、各サブコイル212c,217cに通電されていない状態では、流路213,218が閉塞もしくは狭窄されないようになっている(図6の(a)に示す状態)。
【0120】
これに対して、各サブコイル212c,217cに通電して磁気を発生させると、磁性弾性部材301,302の内部の磁性流体221が、固化もしくは流動性が低下さされるとともに、フレーム部材212b,217b側へ吸引される。それに伴って、磁性弾性部材301,302がそれぞれフレーム部材212b,217b側へ膨張させられ、その結果、流路213,218が閉塞もしくは狭窄された状態になる(図6の(b)に示す状態)。したがって、各サブコイル212c,217cの通電状態をそれぞれ制御することにより、内部に磁性弾性部材301,302が配置された各流路213,218の閉塞・開通状態をそれぞれ制御することができる。
【0121】
このように、この第3の実施例で示す構成の装置によれば、前述した第2の実施例で示す構成の装置によって得られる作用・効果に加えて、第1サブコイル212cで流路213に磁気を印加する場合、および第2サブコイル217cで流路218に磁気を印加する場合に、各流路213,218内にそれぞれ設けられた、この発明の流路制限手段として機能する各磁性弾性部材301,302により、各流路213,218がそれぞれ閉塞もしくは狭窄される。その結果、第1ピストン室214あるいは第3ピストン室219の磁性流体221を封止した状態にするために流路213あるいは流路218で磁気が印可される磁性流体221が少なくなり、そのために第1サブコイル212cあるいは第2サブコイル217cへの通電量が少なくて済む。そのため、第3ピストン210と第1ピストン211との相対移動を規制するため、あるいは3ピストン210の後退移動を規制するための電力の消費を削減することができる。
【0122】
(第4の実施例)
図7には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した第4の実施例を示してある。ここに示す例におけるアクチュエータ401は、電磁石402とこれに吸引されるアーマチュア403とによって推力を発生するように構成されている。その電磁石402は、全体として環状を成しかつ周辺部分の断面が、軸線方向(図7の左右方向)に開いたコ字状を成すヨーク404と、通電することにより磁界を発生する電磁コイル(以下、仮にメインコイルと記す)405とを備えている。そのメインコイル405はヨーク404の内部に嵌め込まれた状態になっている。
【0123】
アーマチュア403は、ヨーク404に対向するリング状の平板部406を備えている。このアーマチュア403は、メインコイル405が通電された際に、メインコイル405で発生する磁力により吸引されて、軸線方向の推力を発生させるためのものである。したがってアーマチュア403における少なくとも平板部406は磁性材料によって形成されている。すなわち、このアーマチュア403がこの発明の磁性部材に相当している。
【0124】
また、電磁石402の外周側にシリンダ部407が形成されている。このシリンダ部407は、ケーシング408の内周面と、その内側に配置された円筒部材409の外周面とによって形成されたものであって、全体としてリング状を成しかつ軸線方向に延びた中空部である。そして、そのシリンダ部407における後述するブレーキ機構419側の開口端側(図7の右側)に、この発明における押圧部材に相当する第1ピストン410が液密状態を維持して前後動するように配置されている。そして第1ピストン410の後側(図7の左側)には、第2ピストン411が液密状態を維持して前後動するように配置されているとともに、この発明の第1副電磁石に相当する電磁石412が嵌合されて固定されている。
【0125】
具体的には、第1ピストン410の後側でケーシング408と円筒部材409との間に、他の円筒部材413が配置されていて、シリンダ部407の第1ピストン410の後側の部分は、この円筒部材413によって仕切られている。すなわち、シリンダ部407の第1ピストン410の後側の部分は、ケーシング408の内周面と円筒部材413の外周面とによって形成された外シリンダ部407aと、円筒部材409の外周面と円筒部材413の内周面とによって形成された内シリンダ部407bとの2箇所に区画されている。
【0126】
そして、外シリンダ部407aにおける第1ピストン410側(図7の右側)に、電磁石412が嵌合されて固定されている。そして電磁石412の後側(図7の左側)には、調整用ピストン414が液密状態を維持して前後動するように配置されている。一方、内シリンダ部407bには、前記のアーマチュア403と一体化されている第2ピストン411が液密状態を維持して前後動するように配置されている。
【0127】
電磁石412は、円筒部材413の外周面に固定されたベースリング412aと、ケーシング408の内周面に固定されたフレーム部材412bと、そのフレーム部材412bの内部に固定された電磁コイル(以下、仮にサブコイルと記す)412cとを備えている。なお、ベースリング412aとフレーム部材412bおよびサブコイル412cとの間には僅かな隙間が開いていて、この隙間が、後述する磁性流体418のための流路415を形成している。
【0128】
上記のシリンダ部407の内部であって、第2ピストン411の先端面(図7の右側端面)411aと、第1ピストン410の後端面(図7の左側端面)410aと、電磁石412の第1ピストン410側の側面(図7の右側面)とによって囲まれた空間に、この発明における第1充填室に相当する第1ピストン室416が形成されている。
【0129】
この第1ピストン室416においては、アーマチュア403からの推力が第2ピストン411を介して伝達される場合、上記の第2ピストン411の先端面411aが加圧面となり、第1ピストン410の後退面410aが受圧面となる。そして、先端面411aの面積すなわち第1ピストン室416の加圧面積に対して、後退面410aの面積すなわち第1ピストン室416の受圧面積が相対的に大きくなっている。したがって、第2ピストン411の先端面411aがこの発明における第1受圧部に相当していて、第1ピストン410の後退面410aがこの発明における第2受圧部に相当している。
【0130】
また、外シリンダ部407aの内部の電磁石412と調整用ピストン414との間に、この発明における第2充填室に相当する油室417が形成されている。そして、これら第1ピストン室416と油室417とは、この発明の第1流路に相当する前述の流路415によって連通されている。
【0131】
そして、これらの第1ピストン室416と油室417とに、磁性流体418が封入されている。この磁性流体418は、従来知られているもので、例えばマグネタイトなどの磁性体を油や水溶液中に分散させた流体状の物質であって、磁気を印加することによりその流動性が低下し、もしくは固化する流体である。
【0132】
したがって、サブコイル412cに通電して磁気を発生させると、流路415内の磁性流体418が固化し、もしくは流動性が低下して、その結果、第1ピストン室416および油室417の磁性流体418が封止状態となる。この状態でアーマチュア403からの推力による押圧力を第2ピストン411から第1ピストン室416に作用させると、第1ピストン室416内の磁性流体418が第2ピストン411の先端面411aに押圧され、その押圧力が磁性流体418を介して第1ピストン410の後退面410aに伝達され、第1ピストン410が前進方向(図7の右方向)に移動する。すなわち、アーマチュア403の推力が第1ピストン410に伝達される。
【0133】
その場合、前述したように、第2ピストン411の先端面411aの面積よりも第1ピストン410の後退面410aの面積の方が大きいので、言い換えると、第1ピストン室416では加圧面積に対して受圧面積が大きくなっているので、第2ピストン411から第1ピストン室416内の磁性流体418に加えられる力に対して、その磁性流体418から第1ピストン410に加えられる力が相対的に大きくなる。したがって、第2ピストン411に相対的に小さな押圧力を加えることにより、第1ピストン410に相対的に大きな押圧力を作用させることができる。すなわち、電磁石402の体格が小さく発生する推力が小さい場合であっても、大きな押圧力を第1ピストン410に作用させることができる。そのため、電磁石402として体格の小さなものを使用することにより、装置全体としての体格を小型化することができる。
【0134】
なお、調整用ピストン414は、第1ピストン410が後退方向(図7の左方向)に移動した場合に、電磁石412から遠ざかる方向(図7の左側)に押され、第1ピストン410が後述する摩擦板420から反力を受けて後退側に移動する際のダンパとして機能するように構成されている。
【0135】
また、第1ピストン410は、図示しないリターンスプリングの弾性力よって、図7の左方向に押し戻されるように構成されている。このリターンスプリングは、アーマチュア403が電磁石402によって吸引されて前進された場合に変形させられ、電磁石402による吸引力(アーマチュア403の推力)がなくなった場合にアーマチュア403を元の初期位置に押し戻す弾性力を発生するように構成されている。
【0136】
上記の第1ピストン410は、シリンダ部407の内部に嵌合する部分から軸線方向に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ブレーキ機構419を構成している摩擦板420に接近して対向している。この摩擦板420は、ケーシング408の内周面にスプライン嵌合されたブレーキプレートと、ブレーキドラム421の外周面にスプライン嵌合されかつブレーキプレートに対して交互に配置されたブレーキディスクとを含み、第1ピストン410によって厚さ方向(軸線方向)に押圧されることにより互いに摩擦接触してトルクを伝達するように構成されている。図7に示す例では、遊星歯車機構422のサンギヤ423にブレーキドラム421が一体化され、そのサンギヤ423を選択的に制動するように構成されている。
【0137】
つぎに上述した装置の作用について説明する。図7に示す状態は、メインコイル405に通電された状態、すなわちメインコイル405がON状態であって押圧作用を行っている状態である。メインコイル405がONになると、メインコイル405に通電される電流が増大させられ、その結果、メインコイル405で発生する磁力によってアーマチュア403が吸引されて軸線方向の推力が発生する。その場合の吸引力すなわち推力は、メインコイル405に流す電流と、ヨーク404とアーマチュア403との間のエアギャップとに応じたものとなる。
【0138】
アーマチュア403に作用する吸引力が、前述のリターンスプリングによる弾性力より大きくなると、アーマチュア403が移動し始める。このアーマチュア403と共に第2ピストン411が移動すると、アーマチュア403の推力が磁性流体418を介して第1ピストン410に伝達され、それに伴って第1ピストン410がブレーキ機構419側(図7の右側)に移動して、第1ピストン410が摩擦板420に当接する。
【0139】
この状態でサブコイル412cは未だ通電されていないので、磁性流体418は流動性を有しており、第2ピストン411および第1ピストン410が移動する際には、第1ピストン室416の磁性流体418は流路415を通って油室417に移動しようとする。このとき、第1ピストン室416の磁性流体418が第2ピストン411から押圧力を受ける内シリンダ部407bの部分の受圧面積に対して、流路415の流路面積が相当に小さいこと、また第1ピストン410が摩擦板420に当接するまでの間は大きな負荷はかからないことなどから、第1ピストン室416の磁性流体418は、ほとんど油室417へは移動しない、もしくは僅かの量だけしか移動しない。そのため、上記の状態で第1ピストン410を移動させて摩擦板420に当接させることが可能である。
【0140】
第1ピストン410が摩擦板420に当接すると、第1ピストン410の前進が阻止された状態でアーマチュア403が前進するので、第1ピストン410がシリンダ部407の内部に向けて相対的に押し戻される。そのため、この状態では摩擦板420を積極的に摩擦接触させる押圧力は生じない。
【0141】
また、第1ピストン410の前進が阻止されて第1ピストン410がシリンダ部407の内部に相対的に押し戻されると、その第1ピストン410の第1ピストン室416の磁性流体418が第1ピストン410の後退方向(図7の左方向)に押され、磁性流体418が流路415を通って油室417に移動する。それに伴って、油室417に移動してきた磁性流体418に調整用ピストン414が押され、その調整用ピストン414が外シリンダ部407aで電磁石412から遠ざかる方向(図7の左方向)に移動する。したがって、調整用ピストン414は、第1ピストン410が摩擦板420から反力を受け、それに伴って第1ピストン室416から流路415通って油室417へ移動する磁性流体418に押圧される際のダンパとして機能している。
【0142】
このようにして、押圧部材である第1ピストン410のアーマチュア403からの突出量もしくは両者の相対位置が変更され、第1ピストン410のストローク位置が相対的に後退方向に調整される。
【0143】
アーマチュア403が設定位置まで前進すると、メインコイル405の電流が一時的に低下させられる。すなわち、メインコイル405による推力が一時的に低下させられる。そして、アーマチュア403の位置が設定位置になったか否かが判断され、未だ設定位置ではない場合は、メインコイル405の電流を増大させる制御もしくは電流を維持する制御が継続される。そして、アーマチュア403の位置が設定位置になった場合には、メインコイル405の電流が一時的に低下させられる。
【0144】
ここで、アーマチュア403の位置を判断するための基準である設定位置は、エアギャップがゼロに近い微小になる位置であり、実験やシミュレーションなどによって予め定めた位置である。そして、その判断は、アーマチュア403の位置やストローク量を検出するセンサによる出力値と設定値とを比較することにより行うことができる。また、アーマチュア403の位置が設定位置になった場合に低下させるメインコイル405の電流値は、アーマチュア403が前記のリターンスプリングによる押し戻し力で初期位置に戻らない程度の推力もしくは吸引力が発生する電流値であり、設計上、予め定めておくことができる。
【0145】
上記のようにしてヨーク404とアーマチュア403との間のエアギャップがゼロに近い所定間隔になった時点で、サブコイル412cの電流が増大させられて、磁性流体418にサブコイル412cからの磁気が印加されることにより、磁性流体418が固化し、もしくはその流動性が低下させられる。そのため、第1ピストン室416の内部に充填されている磁性流体418がその第1ピストン室416の内部に封止された状態になり、その結果、アーマチュア403の推力が第1ピストン410に伝達される。
【0146】
そのため、押圧部材である第1ピストン410が摩擦板420を押圧してそれらを互いに摩擦接触させ、ブレーキ機構419がいわゆる係合状態となる。すなわち、摩擦板420を積極的に摩擦接触させる押圧力が発生する。その場合の係合力は、メインコイル405でアーマチュア403を吸引する電磁気力(磁力)あるいは磁束密度に応じたものになるが、アーマチュア403と第1ピストン410との相対位置もしくは第1ピストン410のストローク位置が前述したように調整されてエアギャップが小さいことにより、その電磁気力あるいは磁束密度が大きく、メインコイル405の電流を特に増大させることなく、必要十分な係合力を得ることができる。
【0147】
また、サブコイル412cの電流を増大させる制御は、例えばブレーキ機構419の保持トルクが必要トルク以上となるように実行される。なお、保持トルクは、摩擦板420の枚数、摩擦係数、半径、第1ピストン410による係合圧などに基づいて算出することができる。また、必要トルクは、このブレーキ機構419を含む動力伝達装置に入力されるトルク(例えばエンジントルク)や変速比などに基づいて算出することができる。
【0148】
上記のようにして前進させたアーマチュア403を元の位置に戻す場合、すなわちブレーキ機構419を解放させる場合、メインコイル405の電流を止めてOFF状態とする。その結果、アーマチュア403を摩擦板420側に移動させる推力が作用しなくなるので、リターンスプリングの弾性力によってアーマチュア403が初期位置に向けて押し戻される。
【0149】
そして、ブレーキ機構419を再度係合させるべくメインコイル405に通電してアーマチュア403が前進すると、上述した場合と同様に、第1ピストン410のアーマチュア403からの伸長量すなわち第1ピストン410のストローク位置が、摩擦板420との関係で調整される。したがって、例えば摩擦板420の摩耗が進行していて、摩擦板420を実質的に係合させる第1ピストン410の位置が、摩耗が進行していない場合より前方側に変化しているとしても、第1ピストン410のアーマチュア403からの伸長量が、摩擦板420の摩耗量に応じて増大させられる。言い換えれば、摩擦板420の摩耗に応じたストローク調整を、アーマチュア403と第1ピストン410との相対位置もしくは間隔の調整によって行うので、ヨーク404とアーマチュア403との間のエアギャップが変化することがなく、エアギャップは所定の間隔に維持される。したがって、摩擦板420の摩耗が進行していない状態でエアギャップが大きくなったり、そのためのメインコイル405の電流を増大させたり、あるいはメインコイル405を大型化するなどの不都合を未然に解消もしくは抑制することができる。
【0150】
このように、この発明の第4の実施例で示す構成の装置によれば、電磁石402およびシリンダ部407ならびに第2ピストン411などから構成される推力機構と第1ピストン410とが、具体的には第2ピストン411およびアーマチュア403と第1ピストン410とが相対移動可能であり、それらの間に、すなわち第1ピストン室416に介在させる磁性流体418の量に応じて第2ピストン411と第1ピストン410との相対位置、言い換えれば、第2ピストン411に対する第1ピストン410の伸長量を変化させることができる。したがって、第1ピストン410をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を第1ピストン室416の磁性流体418の量で調整でき、それに伴ってアーマチュア403の変位量もしくは第2ピストン411のストローク量を一定に維持した状態で摩擦板420を押圧することができる。
【0151】
また、第2ピストン411を移動させることに伴って第1ピストン410が摩擦板420に当接すると、その反力によって第1ピストン410が第2ピストン411側に押される。その場合に磁性流体418が流動状態に設定されていると、これが第1ピストン室416から油室417に押し出されて第1ピストン410が第2ピストン411に対して接近する。すなわち、第1ピストン410のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、サブコイル412cによって流路415内の磁性流体418に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体418を第1ピストン室416に封止した状態に維持することにより、推力機構による推力を摩擦板420に作用させることができる。したがって、第1ピストン410と摩擦板420との当接位置が変化した場合であっても、第1ピストン410のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で摩擦板420を押圧することができる。
【0152】
そして、第1ピストン室416において、磁性流体418が第2ピストン411の先端面411aからの推力を受ける受圧部の受圧面積が、磁性流体418が第1ピストン410の後退面410aを押圧する受圧部の受圧面積よりも小さくなっている。そのため、第1ピストン410で摩擦板420を押圧する場合、すなわち第1ピストン室416の磁性流体418が第2ピストン411に押され、その力が第1ピストン410に伝達されて摩擦板420を押圧する場合に、第1ピストン410で摩擦板420を押圧する押圧力に対して、アーマチュア403とメインコイル405とで発生する押圧力が小さくて済み、その結果、電磁石402を小型化して装置全体の体格の小型化を図ることができる。
【0153】
(第5の実施例)
図8,図9には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した第5の実施例を示してある。この第5の実施例は、前述の第4の実施例における第2ピストン411と第1ピストン410との間に、アーマチュア403が移動することにより磁界の大きさが変化するコイルを備えた電磁石および磁性流体を設けることにより、アーマチュア403が急激に移動することによるショックを防止もしくは抑制するようにした例である。したがって、第2ピストン411と第1ピストン410との間の電磁石および磁性流体が設けられた部分以外の構成は、前述の図7に示す第4の実施例における構成と同様であるので、図8,図9に図7と同じ参照符号を付けて詳細な説明は省略する。
【0154】
図8,図9において、第2ピストン411と第1ピストン410との間に、この発明の第2副電磁石に相当する電磁石501が設けられている。この電磁石501は、ベースプレート501aと、フレーム部材501bと、そのフレーム部材501bの内部に固定された電磁コイル(以下、仮に第2サブコイルと記す)501cと、ベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間に形成される第2ピストン室501dとを備えている。
【0155】
第2サブコイル501cを含むフレーム部材501bは、第2ピストン411の先端(図8の右側の端)に固定されて、第2ピストン411と一体に軸線方向に移動可能になっている。一方、ベースプレート501aは、開孔面積が第2ピストン411の受圧(もしくは押圧)部分の面積よりも相対的に小さく、この発明の第2流路に相当する開孔部501eが形成されているとともに、内シリンダ部407bの第1ピストン410側(図8の右側)の開口端部に固定されている。したがって、電磁石501は、第2ピストン411すなわちアーマチュア403が移動することによって、ベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間の距離が変化するように、言い換えると、第2ピストン室501dの容量が変化するように構成されている。
【0156】
そして、第1ピストン室416および油室417と共に、第2ピストン室501dに磁性流体418が封入されている。すなわち、第2ピストン室501dと第1ピストン室416とは、開孔部501eによって連通されており、それらの間を磁性流体418が流通可能になっている。
【0157】
したがって、第2サブコイル501cに通電して磁界を発生させた状態では、アーマチュア403を移動させてベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間の距離を変化させることにより、第2サブコイル501cで発生する磁力を制御することができる。すなわち、メインコイル405に通電する電流を増大してアーマチュア403を吸引し、ベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間の距離を短くすることにより、第2サブコイル501cで発生する磁力を増大させることができる。反対に、メインコイル405に通電する電流を低減してアーマチュア403を解放し、ベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間の距離を長くすることにより、第2サブコイル501cで発生する磁力を減少させることができる。
【0158】
つぎに上述した装置の作用について説明する。図8に示す状態は、メインコイル405に通電された状態、すなわちメインコイル405がON状態であって押圧作用を行っている状態である。メインコイル405がONになると、メインコイル405に通電される電流が増大させられ、その結果、メインコイル405で発生する磁力によってアーマチュア403が吸引されて軸線方向の推力が発生する。その場合の吸引力すなわち推力は、メインコイル405に流す電流と、ヨーク404とアーマチュア403との間のエアギャップとに応じたものとなる。
【0159】
アーマチュア403に作用する吸引力が、前述のリターンスプリングによる弾性力より大きくなると、アーマチュア403が移動し始める。また、このとき第2サブコイル501cに通電される。アーマチュア403と共に第2ピストン411が移動すると、移動開始当初は、アーマチュア403の推力が磁性流体418を介して第1ピストン411に伝達されるが、第2ピストン411がベースプレート501aに近づくにつれて、すなわちベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間の距離が短くなるにつれて、第2サブコイル501cで発生する磁力が増大するため、第2ピストン室501d内の磁性流体418の流動性が低下する。言い換えると、第2ピストン室501d内の磁性流体418の粘度が高くなる。
【0160】
そして、ベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間の距離が所定の距離まで近づくと、第2ピストン室501d内の磁性流体418が、第2サブコイル501cで発生する磁力により固化し、もしくはアーマチュア403の移動を阻止する程度までその流動性が低下して、アーマチュア403および第2ピストン411の移動が規制される。したがって、アーマチュア403および第2ピストン411は、アーマチュア403がメインコイル405に吸引されて移動を開始した後は、徐々に移動速度が低下させられて、ベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間の距離が前記の所定の距離まで近づいた時点で、その移動が規制される。言い換えると、アーマチュア403および第2ピストン411は、徐々に移動が規制される。
【0161】
そのため、メインコイル405に通電され、アーマチュア403がメインコイル405に吸引されて移動する場合に、流動性が低下させられた磁性流体418がいわゆる緩衝部材として機能してアーマチュア403の移動を抑制し、その移動を徐々に規制することにより、例えばアーマチュア403の移動に伴って第1ピストン410が急激に移動して摩擦板420に衝突し、ショックが生じてしまうような事態を防止もしくは抑制することができる。
【0162】
アーマチュア403の移動が規制されると、サブコイル412cに通電され、アーマチュア403すなわち第2ピストン411に加えて第1ピストン410の移動が規制される。すなわち、サブコイル412cに通電されることにより、流路415内の磁性流体418にサブコイル412cからの磁気が印加されて、磁性流体418が固化し、もしくはその流動性が低下させられる。その結果、第1ピストン室416の内部に充填されている磁性流体418がその第1ピストン室416の内部に封止された状態になり、第1ピストン410の後退方向(図8の左方向)への移動が規制される。
【0163】
第1ピストン410の後退方向の移動が規制されると、第2サブコイル501cの電流が低下させられて、アーマチュア403の移動を規制する力が弱められる。そして、メインコイル405の電流が制御されて、ブレーキ機構419が所望する係合力で係合させられる。
【0164】
すなわち、ブレーキ機構419の摩擦板420が第1ピストン410によって押圧されて係合し、その押圧力が必要とする押圧力になるように、もしくは必要とする押圧力より大きくなるようにメインコイル405の電流が制御される。
【0165】
そして、ブレーキ機構419が所望する係合力で係合させられると、第2サブコイル501cの電流が増大させられる。この場合、アーマチュア403が解放されて所期位置に戻った状態で、すなわちベースプレート501aとフレーム部材501bおよび第2サブコイル501cとの間が所期の距離に戻った状態で、第2ピストン室501d内の磁性流体418を固化し、もしくは第1ピストン410の後退方向の移動を阻止する程度にその流動性を低下させるまで第2サブコイル501cの電流が増大させられる。
【0166】
すなわち、第2ピストン室501dに充填されている磁性流体418が、第2ピストン室501d内に封止された状態となり、結局、第1ピストン410は、摩擦板420を必要な押圧力で押圧している状態で固定されることになる。したがって、この状態ではアーマチュア403による推力は特には必要がないので、メインコイル405の電流が低下させられる。そのため、相対的に消費電力が大きいメインコイル405の通電を止め、あるいは電流を低下させることができ、ブレーキ機構419の係合状態を維持するために消費する電力もしくはエネルギを削減することができる。
【0167】
このように、この発明の第5の実施例で示す構成の装置によれば、前述した第4の実施例で示す構成の装置によって得られる作用・効果に加えて、第1ピストン410が磁性流体418を介して第2ピストン411に押されて第1ピストン410と摩擦板420とが当接する場合、第2ピストン411すなわち推力機構の移動が抑制され、その移動が徐々に規制される。そのため、第1ピストン410と摩擦板420とが当接する際の衝撃を緩衝することができ、例えば第1ピストン410が急激に移動して摩擦板420に衝突し、ショックが生じてしまうような事態を防止もしくは抑制することができる。
【0168】
(第6の実施例)
図10には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した第6の実施例を示してある。ここに示す例におけるアクチュエータ601は、電磁石602とこれに吸引されるアーマチュア603とによって推力を発生するように構成されている。その電磁石602は、全体として環状を成しかつ周辺部分の断面が、軸線方向(図10の左右方向)に開いたコ字状を成すヨーク604と、通電することにより磁界を発生する電磁コイル(以下、仮にメインコイルと記す)605とを備えている。そのメインコイル605はヨーク604の内部に嵌め込まれた状態になっている。
【0169】
アーマチュア603は、ヨーク604に対向するリング状の平板部606を備えている。このアーマチュア603は、メインコイル605が通電された際に、メインコイル605で発生する磁力により吸引されて、軸線方向の推力を発生させるためのものである。したがってアーマチュア603における少なくとも平板部606は磁性材料によって形成されている。すなわち、このアーマチュア603がこの発明の磁性部材に相当している。
【0170】
電磁石602の外周側にシリンダ部607が形成されている。このシリンダ部607は、ケーシング608の内側に軸線方向で前後動可能に配置された外円筒部材607aの内周面と、その外円筒部材607aの内側に軸線方向に前後動可能に配置された内円筒部材607bの外周面とによって形成されたものであって、全体としてリング状を成しかつ軸線方向に延びた中空部である。
【0171】
なお、外円筒部材607aは、後述する調整用円筒部材610と共にアーマチュア603と一体に軸線方向で前後動するように構成されている。また、内円筒部材607bは、後述する調整用円筒部材610の平行面610aと対向する平行部607cを有していて、少なくともこの平行部607cは磁性体によって形成されている。
【0172】
シリンダ部607における後述するブレーキ機構627側の開口端側(図10の右側)に、この発明における押圧部材に相当するピストン609が液密状態を維持して前後動するように配置されている。また、内円筒部材607bとヨーク604との間に、調整用円筒部材610が配置されている。この調整用円筒部材610は、アーマチュア603と一体に固定されていて、その外周側に、前記の内円筒部材607bの内周面と所定の間隔を開けて並行に対向する平行面610aと、その平行面610aの先端(図10の右側の端部)から調整用円筒部材610の先端(図10の右側の端部)へ向けて薄肉化されたテーパー面610bとが形成されている。
【0173】
内円筒部材607bと調整用円筒部材610の間に、この発明の第1副電磁石に相当する電磁石611が嵌合されて固定されている。具体的には、この電磁石611は、前述の内円筒部材607bの平行部607cによって形成されるベースリング611aと、調整用円筒部材610の平行面610aの部分に埋め込まれて固定されたフレーム部材611bと、そのフレーム部材611bの内部に固定された電磁コイル(以下、仮に第1サブコイルと記す)611cとから構成されている。
【0174】
内円筒部材607bの平行部607cすなわちベースリング611aとフレーム部材611bおよび第1サブコイル611cとの間には、後述する磁性流体626が充填される隙間が開いていて、この隙間の、調整用円筒部材610の平行面610aにおけるフレーム部材611bおよび第1サブコイル611cを含む所定範囲の部分は、少なくとも2本のシールリング613によって液密状態が維持されている。すなわち、前記の隙間のシールリング613により液密状態が維持された所定範囲の部分によって、後述する磁性流体626が充填される油室614が形成されている。したがって、内円筒部材607bと調整用円筒部材610とは、前記の油室614の液密状態を維持しつつ、互いに相対移動が可能になっている。
【0175】
内円筒部材607bの先端(図10の右側の端部)で、前述のピストン609の内周面と調整用円筒部材610のテーパー面610bとの間であって、円周方向における所定の複数箇所に、ボール615が配置されている。このボール615は、例えば鋼球などの所定の剛性を有する球体により構成されていて、例えば円周方向の3箇所もしくはそれ以上の箇所に互いに等間隔に配置されている。
【0176】
ボール615の内円筒部材607bの反対側(図10の右側)に、保持リング616が配置されている。この保持リング616の先端部(図10の右側の端部)に薄板状のリテーナ617が取り付けられていて、このリテーナ617に対向する他のリテーナ618が、電磁石602を保持している所定の固定部619に固定されている。そして、これらのリテーナ617,618の間にリターンスプリング620が配置されている。このリターンスプリング620は、保持リング616をボール615に付勢する弾性力を発生するように構成されている。したがって、ボール615は、内円筒部材607bと保持リング616とによって狭持されて、ピストン609の内周面と調整用円筒部材610のテーパー面610bとの間の所定の位置で保持されている。
【0177】
上記の外円筒部材607a、およびピストン609、および内円筒部材607b、ならびに調整用円筒部材610の各後端部(図10の左側の端部)がそれぞれ当接し、それら外円筒部材607a、ピストン609、内円筒部材607b、調整用円筒部材610の後退移動をそれぞれ規制するストッパ621がケーシング608に固定されている。
【0178】
なお、図10では図示しない所定の位置に、電磁石622が嵌合されて固定されている。この電磁石622は、ケーシング608に対するピストン609の相対移動を制御するためのものである。具体的には、図11に示すように、電磁石622は、それぞれケーシング608に固定されたベースプレート622aおよびフレーム部材622bと、そのフレーム部材622bの内部に固定された電磁コイル(以下、仮に第2サブコイルと記す)622cとから構成されている。そしてベースプレート622aとフレーム部材622bおよび第2サブコイル622cとの間には僅かな隙間が開いていて、この隙間が、後述する磁性流体626のための流路623を形成している。
【0179】
また、電磁石622の前後方向(軸線方向、図10,図11の左右方向)の両側に、ピストン609の前後動に連動して容積が変化する第1ピストン室624と第2ピストン室625とが形成されている。すなわち、ピストン609が前進移動(図10,図11の右側への移動)することにより、この発明における第2充填室に相当する第1ピストン室624の容積が増加するとともに、その容積の増加分だけ、この発明における第3充填室に相当する第2ピストン室625の容積が減少し、反対に、ピストン609が後進移動(図10,図11の左側への移動)することにより、第1ピストン室624の容積が減少するとともに、その容積の減少分だけ第2ピストン室625の容積が増加するように構成されている。そしてそれら第1ピストン室624と第2ピストン室625とが、前記の流路623によって連通されている。
【0180】
そして、前述の油室614および第1ピストン室624および第2ピストン室625ならびに流路623に、磁性流体626が封入されている。この磁性流体626は、従来知られているもので、例えばマグネタイトなどの磁性体を油や水溶液中に分散させた流体状の物質であって、磁気を印加することによりその流動性が低下し、もしくは固化する流体である。
【0181】
したがって、第1サブコイル611cに通電することにより、油室614内の磁性流体626が固化し、もしくはその流動性が低下させられる。そして油室614内の磁性流体626と共にベースリング611aすなわち内円筒部材607bの平行部607cに磁気が印可され、ベースリング611aが磁性流体626を介して第1サブコイル611cに吸引される。その結果、内円筒部材607bを調整用円筒部材610に吸着させた状態にすることができ、内円筒部材607bの調整用円筒部材610に対する相対移動を規制することができる。言い換えると、第1サブコイル611cに通電することにより、内円筒部材607bの調整用円筒部材610に対する相対移動を規制し、内円筒部材607bと調整用円筒部材610とを一体化させることができる。
【0182】
また、第2サブコイル622cに通電することにより、流路623内の磁性流体626が固化し、もしくはその流動性が低下させられる。そのため、第1ピストン室624および第2ピストン室625に充填されている磁性流体626が、第1ピストン室624および第2ピストン室625内にそれぞれ封止された状態となる。その結果、ピストン609の軸線方向における前後動が規制される。すなわち、第2サブコイル622cに通電することにより、ピストン609のケーシング608に対する相対移動を規制することができる。
【0183】
なお、上記の第1ピストン室624および第2ピストン室625に作用する油圧(すなわち磁性流体626の流体圧)を検出する油圧センサ(図示せず)が設けられている。前述したように、第1ピストン室624と第2ピストン室625とは、ピストン609の前後動に連動してその容積が変化するように構成されている。すなわち、ピストン609の軸線方向の位置に応じて第1ピストン室624および第2ピストン室625内の油圧が変化するようになっている。
【0184】
上記のピストン609は、シリンダ部607の内部に嵌合する部分から軸線方向に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ブレーキ機構627を構成している摩擦板628に接近して対向している。この摩擦板628は、ケーシング608の内周面にスプライン嵌合されたブレーキプレートと、ブレーキドラム629の外周面にスプライン嵌合されかつブレーキプレートに対して交互に配置されたブレーキディスクとを含み、ピストン609によって厚さ方向(軸線方向)に押圧されることにより互いに摩擦接触してトルクを伝達するように構成されている。図10に示す例では、遊星歯車機構630のサンギヤ631にブレーキドラム629が一体化され、そのサンギヤ631を選択的に制動するように構成されている。
【0185】
つぎに上述した装置の作用について説明する。図10に示す状態は、メインコイル605がOFF状態であって押圧作用を行っていない状態であり、調整用円筒部材610および外円筒部材607aおよび内円筒部材607bならびにピストン609はリターンスプリング620によって、後退側の初期位置に押し戻されている。すなわち、内円筒部材607bが保持リング616およびボール615を介してリターンスプリング620によって後退側に押し戻されることにより、調整用円筒部材610のテーパー面610bのくさび効果から調整用円筒部材610のテーパー面610bとピストン609の内周面との間にボール615が嵌合する。そしてボール615と調整用円筒部材610のテーパー面610bおよびピストン609の内周面との間の摩擦力によって、調整用円筒部材610およびそれと一体移動する外円筒部材607aならびにピストン609が、内円筒部材607bと共に、後退側の所期位置に押し戻されている。
【0186】
この状態で係合開始の判断が成立して係合指令が出力されると、図12のフローチャートに示すように、先ず、メインコイル605および第1サブコイル611cの電流が増大させられる(ステップS21)。その結果、メインコイル605による磁力によってアーマチュア603が吸引され、軸線方向の推力が発生する。その場合の吸引力すなわち推力は、メインコイル605に流す電流と、ヨーク604とアーマチュア603との間のエアギャップとに応じたものとなる。
【0187】
アーマチュア603にメインコイル605の磁力による吸引力が作用すると、アーマチュア603に一体の調整用円筒部材610および外円筒部材607aと、第1サブコイル611cに通電されていることにより調整用円筒部材610と一体移動する内円筒部材607bとにも、同様に、メインコイル605の磁力による吸引力が作用する。
【0188】
したがって、アーマチュア603に作用する吸引力が、保持リング616およびボール615を介して内円筒部材607bを付勢しているリターンスプリング620による弾性力よりも大きくなると、アーマチュア603が前進側に移動し始める。このアーマチュア603と共に上記の調整用円筒部材610および外円筒部材607aならびに内円筒部材607bが前進側に移動すると、ピストン609と外円筒部材607aの内周面および内円筒部材607bの外周面との間の摩擦力により、ピストン609もアーマチュア603と共に前進側に移動する。
【0189】
ピストン609が摩擦板628に当接するまではピストン609には負荷はかかっていない。そのため、ピストン609と外円筒部材607aの内周面および内円筒部材607bの外周面との間の摩擦力程度の力によって、調整用円筒部材610および外円筒部材607aならびに内円筒部材607bと共にピストン609を移動させることが可能である。
【0190】
なお、この状態では、第1サブコイル611cに通電されて調整用円筒部材610に対する内円筒部材607bの相対移動が規制されていることにより、リターンスプリング620による保持リング616およびボール615と内円筒部材607bとに対する後退側への付勢が規制されている。すなわち、調整用円筒部材610のテーパー面610bとピストン609の内周面との間へのボール615の噛み込みが規制されている。したがって、この状態では調整用円筒部材610と内円筒部材607bおよびピストン609とが互いに相対移動することにより、アーマチュア603に作用する吸引力はピストン609へ伝達されない。そのため、この状態では摩擦板628を積極的に摩擦接触させる押圧力は生じない。
【0191】
メインコイル605および第1サブコイル611cの電流の増大制御に続いて、第2サブコイル622cに通電されてその電流値が制御される(ステップS22)。上記のようにメインコイル605および第1サブコイル611cの電流が増大させられて、ピストン609が摩擦板628側へ移動する際に、ピストン609が急激に移動して摩擦板628に当接することによるショックが発生する場合がある。そこで、第2サブコイル622cの通電量を制御して流路623内の磁性流体626の流動性を低下させることにより、ピストン609の急激な移動が規制される。そのため、メインコイル605に通電されてアーマチュア603およびピストン609が移動する場合に、ピストン609と摩擦板628とが当接する際の衝撃を緩和してピストン609と摩擦板628とが急激に衝突してしまうことによるショックを防止もしくは抑制することができる。
【0192】
続いて、第1ピストン室624および第2ピストン室625ならびに流路623内の油圧pすなわち磁性流体626の流体圧pが検出される(ステップS23)。油圧pが検出されると、その油圧pの検出値と、メインコイル605に通電されている電流値とから、ヨーク604とアーマチュア603との間のエアギャップδが算出される(ステップS24)。
【0193】
前述したように、第1ピストン室624および第2ピストン室625は、ピストン609の前後動に連動してその容積が変化するように構成されている。すなわち、ピストン609の軸線方向の位置に応じて油圧pが変化するようになっている。したがって、油圧pを検出することによって、ピストン609の軸線方向の位置をることができ、さらにメインコイル605に通電されている電流値を考慮してエアギャップδを推定して求めることができる。
【0194】
エアギャップδが算出されると、そのエアギャップδが、目標エアギャップδtと等しくなったか否かが判断される(ステップS25)。ここで目標エアギャップδtとは、ヨーク604とアーマチュア603との間のエアギャップの目標値、すなわち所望するエアギャップの値として予め設定された所定の値である。
【0195】
エアギャップδが未だ目標エアギャップδtと等しくないことにより、このステップS25で否定的に判断された場合は、ステップS24へ戻り、従前の制御が繰り返し実行される。すなわち、エアギャップδが目標エアギャップδtと等しくなるまで、上記のステップS24,S25の制御が繰り返し実行される。
【0196】
これに対して、エアギャップδが目標エアギャップδtと等しくなったことにより、ステップS25で肯定的に判断された場合には、ステップS26へ進み、第1サブコイル611cの電流が低下させられる。第1サブコイル611cの電流が低下させられることにより、油室614内の磁性流体626への磁気の印加が解除されて、調整用円筒部材610に対する内円筒部材607bの相対移動の規制が解除される。その結果、リターンスプリング620による保持リング616およびボール615と内円筒部材607bとに対する後退側への付勢の規制が解除される。すなわち、調整用円筒部材610のテーパー面610bとピストン609の内周面との間へのボール615の噛み込みが許容された状態になる。
【0197】
したがって、第1サブコイル611cの電流が低下させられ、調整用円筒部材610に対する内円筒部材607bの相対移動の規制が解除されると、調整用円筒部材610のテーパー面610bとピストン609の内周面との間にボール615が噛み込み、その部分のくさび効果によって調整用円筒部材610とピストン609とが固定される。言い換えると、第1サブコイル611cへの通電を停止して油室614内の磁性流体626へ磁気を印加しないことにより、調整用円筒部材610に対する内円筒部材607bの相対移動の規制を解除し、調整用円筒部材610のテーパー面610bとピストン609の内周面との間にボール615を噛み込ませて、調整用円筒部材610とピストン609とを固定することができる。すなわち、これら調整用円筒部材610のテーパー面610bとピストン609の内周面とボール615とが、この発明における係合機構に相当していて、第1サブコイル611cへの通電を停止して油室614内の磁性流体626へ磁気を印加しないことにより、上記の係合機構で調整用円筒部材610とピストン609とを固定することができる。
【0198】
第1サブコイル611cへの通電を停止して油室614内の磁性流体626へ磁気を印加しないことにより、上記の係合機構を係合させて調整用円筒部材610とピストン609とを固定すると、調整用円筒部材610を介してアーマチュア603に作用する吸引力がピストン609へ伝達されるようになる。すなわち、摩擦板628を積極的に摩擦接触させる押圧力を発生することが可能な状態になる。
【0199】
そして、第2サブコイル622cの電流が制御される(ステップS27)。すなわち、第1ピストン室624および第2ピストン室625の油圧pが所望する値になるように、第2サブコイル622cに通電される電流が制御される。なお、このときメインコイル605に通電されている電流は所定の一定値に維持されている。したがって、第2サブコイル622cの電流が制御されること、具体的には、第2サブコイル622cに通電されている電流が徐々に低下させられることにより、ピストン609が次第に摩擦板628側へ移動させられ、摩擦板628を積極的に摩擦接触させる押圧力が発生する。すなわち、摩擦板628が次第に係合させられる。
【0200】
第2サブコイル622cの電流が制御されるとともに、第1ピストン室624および第2ピストン室625の油圧pが、目標油圧ptと等しくなったか否かが判断される(ステップS28)。ここで目標油圧ptとは、ブレーキ機構627で所望する係合力を得る状態における油圧の値として予め設定された所定の値である。
【0201】
油圧pが未だ目標エ油圧ptと等しくないことにより、このステップS28で否定的に判断された場合は、ステップS27へ戻り、従前の制御が繰り返し実行される。すなわち、油圧pが目標油圧ptと等しくなるまで、上記のステップS27,S28の制御が繰り返し実行される。
【0202】
これに対して、油圧pが目標油圧tと等しくなったことにより、ステップS28で肯定的に判断された場合には、ステップS29へ進み、第2サブコイル622cの電流が低下させられる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。すなわち、ブレーキ機構627の係合制御が終了する。
【0203】
上記のようにしてメインコイル605の電流を一定に制御しつつ、第1ピストン室624および第2ピストン室625の油圧pに基づいてエアギャップδを推定し、そのエアギャップδを目標値に制御した状態でながら第1サブコイル611cをOFF状態にして、調整用円筒部材610すなわちアーマチュア603に対するピストン609の相対移動を規制することにより、例えば摩擦板628の摩耗状態にかかわらず、エアギャップδを常に所望するほぼ一定の値に制御することができる。そのため、メインコイル605とアーマチュア603との間のエアギャップδを一定の範囲に維持できるため、メインコイル605に流す電流を増大させるなどの必要がなく、したがってメインコイル605の大型化や電流もしくは消費エネルギの増大を防止もしくは抑制することができる。
【0204】
そして、エアギャップδが所望する値に設定された状態で第2サブコイル622cの電流を制御することにより、摩擦板628に対する押圧力、すなわちブレーキ機構627の係合力が、所望する所定の設定圧力に制御されて、ブレーキ機構627が係合させられる。ブレーキ機構627の係合が完了すると、第2サブコイル622cがOFF状態にされる。したがって、ブレーキ機構627の係合が完了した状態では、第1サブコイル611cおよび第2サブコイル622cは共にOFF状態にされている。そのため、ブレーキ機構627の係合状態を維持するために消費する電力もしくはエネルギを削減することができる。
【0205】
ここで、上述した各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図12に示すステップS26の制御を行う機能的手段がこの発明における相対移動規制手段に相当する。また、ステップS22,S27,S29の制御を行う機能的手段がこの発明における押圧制御手段に相当する。
【0206】
このように、この発明の第6の実施例で示す構成の装置によれば、電磁石602およびシリンダ部607および調整用円筒部材610ならびにボール615などから構成される推力機構とピストン609とが、具体的には調整用円筒部材610とピストン609とが相対移動可能であり、言い換えれば、上記の推力機構に対するピストン609の伸長量を変化させることができる。したがって、ピストン609をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を調整用円筒部材610とピストン609との相対位置を変化させることにより調整でき、それに伴ってアーマチュア603の変位量もしくはピストン609のストローク量を一定に維持した状態で摩擦板628を押圧することができる。
【0207】
また、アーマチュア603および調整用円筒部材610を移動させることに伴ってピストン609が摩擦板628に当接すると、その反力によってピストン609がアーマチュア603側に押され、ピストン609がアーマチュア603に対して接近する。すなわち、ピストン609のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、第1サブコイル611cによる油室614の磁性流体626に対する磁気の印可を停止すること、すなわち第1サブコイル611cへの通電を停止することにより、上記の係合機構を係合させてアーマチュア603および調整用円筒部材610とピストン609との相対移動を規制した状態に維持し、推力機構による推力を摩擦板628に作用させることができる。したがって、ピストン609と摩擦板628との当接位置が変化した場合であっても、ピストン609のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で摩擦板628を押圧することができる。さらに、推力機構とピストン609との相対移動は、第1副電磁石への通電を停止することにより規制される。そのため、第1サブコイル611cへの通電を停止した状態でピストン609による押圧状態を維持することができ、その結果、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【0208】
そして、上記の係合機構が係合され、ピストン609が調整用円筒部材610と共に移動させられ、ピストン609と摩擦板628とが当接する場合、ピストン609の移動と連動して容積が変化する第1ピストン室624と第2ピストン室625との間の磁性流体626の流動状態を制御することにより、すなわち、第2サブコイル622cによる第1ピストン室624と第2ピストン室625との間の流路623への磁気の印加状態を制御することにより、言い換えると、第2サブコイル622cへの通電量を制御することにより、ピストン609の移動状態およびピストン609と摩擦板628との当接状態を制御することができる。
【0209】
そのため、例えばピストン609と摩擦板628とが当接する際に、第2サブコイル622cに通電して第1ピストン室624と第2ピストン室625との間の磁性流体626の流動を抑制しておくことにより、ピストン609と摩擦板628とが当接する際の衝撃を緩衝することができる。あるいは、推力機構とピストン609との相対移動が規制され、ピストン609で摩擦板628を押圧する場合、すなわち推力機構からの推力がピストン609に伝達されて摩擦板628を押圧する場合に、第2サブコイル622cへ所定の電流が通電されてピストン609の移動が規制されていた状態から、第2サブコイル622cへの通電を低下させることにより、ピストン609の移動を解除してピストン609で摩擦板628を押圧することができる。
【0210】
(第7の実施例)
図13には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した第7の実施例を示してある。ここに示す例におけるアクチュエータ701は、電動モータ702と、その電動モータ702の回転運動を軸線方向(図13の左右方向)の直線運動に変換するボールねじ703とによって推力を発生するように構成されている。
【0211】
電動モータ702は、その電動モータ702を保持している所定の固定部704に固定されているステータ702aと、そのステータ702aの外周部に配置されて、ステータ702aの外周で回転するロータ702bとを備えた、いわゆるアウターロータ型の電動機である。
【0212】
ボールねじ703は、電動モータ702のロータ702bに配置されて、そのロータ702bと一体に回転するベースリング705の外周面と、電動モータ702およびベースリング705の外周側に配置されたシリンダ部材706の内周面との間に形成されている。すなわち、ベースリング705の外周面にボールねじ703のおねじが形成され、それに対向するシリンダ部材706の外周面にボールねじ703のめねじが形成されている。
【0213】
シリンダ部材706は、ケーシング707の内側に配置された外円筒部706aと、その内側に配置された内円筒部706bと、それら外円筒部706aおよび内円筒部706bの後退側(図13の左側)の端部を連結する底板部706cとによって形成されたものであって、全体としてリング状を成しかつ軸線方向に延びた有底の中空部である。そして、シリンダ部材706は軸線方向に前後動が可能なように支持されている。したがって、シリンダ部材706は、電動モータ702の電流を制御してロータ702bを回転させることにより、軸線方向を前進移動(図13の右側への移動)もしくは後進移動(図13の左側への移動)するように構成されている。
【0214】
上記のシリンダ部706の内部で、後述するブレーキ機構715側の開口端側(図13の右側)に、この発明における押圧部材に相当する第1ピストン708が液密状態を維持して前後動するように嵌合され、その第1ピストン708の後側(図13の左側)に、この発明の他の電磁石に相当する電磁石709が嵌合されて固定されている。この電磁石709は、シリンダ部材706の内円筒部706bに固定されたベースリング709aと、シリンダ部材706の外円筒部706aに固定されたフレーム部材709bと、そのフレーム部材709bの内部に固定された電磁コイル(以下、仮にサブコイルと記す)709cとを備えている。なお、ベースリング709aとフレーム部材709bおよびサブコイル709cとの間には僅かな隙間が開いていて、この隙間が、後述する磁性流体714のための流路710を形成している。
【0215】
また、上記のシリンダ部材706の内部の電磁石709と第1ピストン708との間に第1ピストン室711が形成されている。さらに、その電磁石709の後側(図13の左側)に第2ピストン712が配置され、この第2ピストン712と電磁石709との間に第2ピストン室713が形成されている。この第2ピストン室713と第1ピストン室711とは、前述の流路710によって連通されている。
【0216】
なお、第2ピストン712は、第1ピストン708が後退方向(図13の左方向)に移動した場合に、電磁石709から遠ざかる方向(図13の左側)に押され、第1ピストン708が後述する摩擦板716から反力を受けて後退側に移動する際のダンパとして機能するように構成されている。
【0217】
そして、上記の第1ピストン室711および第2ピストン室713ならびに流路710に、磁性流体714が封入されている。この磁性流体714は、従来知られているもので、例えばマグネタイトなどの磁性体を油や水溶液中に分散させた流体状の物質であって、磁気を印加することによりその流動性が低下し、もしくは固化する流体である。
【0218】
したがって、サブコイル709cに通電することにより、流路710内の磁性流体714が固化し、もしくはその流動性が低下させられる。そのため、第1ピストン室711および第2ピストン室713に充填されている磁性流体714が、第1ピストン室711および第2ピストン室713内にそれぞれ封止された状態となる。その結果、第1ピストン708の後退側の移動が規制される。すなわち、サブコイル709cに通電することにより、第1ピストン708のシリンダ部材706に対する相対移動を規制することができる。
【0219】
上記の第1ピストン708は、シリンダ部材706の内部に嵌合する部分から軸線方向に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ブレーキ機構715を構成している摩擦板716に接近して対向している。この摩擦板716は、ケーシング707の内周面にスプライン嵌合されたブレーキプレートと、ブレーキドラム717の外周面にスプライン嵌合されかつブレーキプレートに対して交互に配置されたブレーキディスクとを含み、第1ピストン708によって厚さ方向(軸線方向)に押圧されることにより互いに摩擦接触してトルクを伝達するように構成されている。図13に示す例では、遊星歯車機構718のサンギヤ719にブレーキドラム717が一体化され、そのサンギヤ719を選択的に制動するように構成されている。
【0220】
つぎに上述した装置の作用について説明する。図13に示す状態は、サブコイル709cに通電されて第1ピストン708の後退側の移動が規制された状態で、電動モータ702が回転制御されてシリンダ部材706が前進側に移動させられ、シリンダ部材706および第1ピストン708が摩擦板716に対して押圧作用を行っている状態である。このようにしてブレーキ機構715を係合させる場合の制御例を、図14のフローチャートに示してある。
【0221】
先ず、係合開始の判断が成立して係合指令が出力されると、電動モータ702に通電されてその回転が制御され、ボールねじ703のおねじが形成されたベースリング705が電動モータ702のロータ702bと共に回転させられる(ステップS31)。なお、この係合制御の開始当初は、未だサブコイル709cは通電されていないOFF状態で、したがって第1ピストン708とシリンダ部材706との相対移動が許容されている状態になっている。
【0222】
ロータ702bすなわちベースリング705がいずれかの方向に回転させられると、その回転運動がボールねじ703によって軸線方向の直線方向に変換されて、ボールねじ703のめねじが形成されたシリンダ部材706およびその内部に嵌合されている第1ピストン708が軸線方向に移動する(ステップS32)。ここでは、シリンダ部材706および第1ピストン708が前進側に移動するように電動モータ702の回転が制御される。
【0223】
シリンダ部材706と共に第1ピストン708が前進側に移動すると、第1ピストン708の延出部分が摩擦板716に当接し(ステップS33)、第1ピストン708の前進移動が阻止されてその移動が停止する(ステップS34)。この時点では未だ電動モータ702の回転は停止させられていないため、シリンダ部材706の前進移動は継続されている。したがって、第1ピストン708の前進が阻止された状態でシリンダ部材706が前進するので、第1ピストン708がシリンダ部材706の内部に向けて相対的に押し戻される。そのため、この状態では摩擦板716を積極的に摩擦接触させる押圧力は生じない。そして、押圧部材である第1ピストン708のシリンダ部材706からの突出量もしくは両者の相対位置が変更され、第1ピストン708のストローク位置が相対的に後退方向に調整される。
【0224】
なお、このとき、第2ピストン712は、第1ピストン708が摩擦板716から反力を受け、それに伴って第2ピストン712が第1ピストン室711から流路710を通って第2ピストン室713へ移動する磁性流体714に押圧されて後退側に移動することにより、第1ピストン708が摩擦板716から反力を受けて後退側に移動する際のダンパとして機能する。
【0225】
第1ピストン708が摩擦板716に当接してその前進移動が停止した時点から若干遅れて、電動モータ702の回転が停止させられ、シリンダ部材706の前進移動が停止する(ステップS35)。そして、その状態でサブコイル709cの電流が増大させられて、第1ピストン708とシリンダ部材706との相対移動が規制される(ステップS36)。
【0226】
サブコイル709cの電流が増大させられ、流路710の磁性流体714にサブコイル709cからの磁気が印加されることにより、磁性流体714が固化し、もしくはその流動性が低下する。そのために、第1ピストン室711および第2ピストン室713の内部に充填されている磁性流体714が、それら各ピストン室711,713の内部に封止された状態になり、その結果、軸線方向の推力に変換された電動モータ702のトルクが、第1ピストン708に伝達可能な状態になる。
【0227】
そして、その状態で、電動モータ702の電流、すなわち電動モータ702のトルクが制御されて、その電動モータ702のトルクによる推力が、第1ピストン708に伝達されることによる摩擦板716に対する押圧力、すなわちブレーキ機構715の係合力が制御される(ステップS37)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。すなわち、ブレーキ機構715の係合制御が終了する。
【0228】
なお、上記のステップS37で制御されるブレーキ機構715の係合力は、例えば摩擦板716の枚数、摩擦係数、半径、第1ピストン708による押圧力、あるいはブレーキ機構715を含む動力伝達装置に入力されるトルク(例えばエンジントルク)や変速比などに基づいて算出することができる。
【0229】
また、上記の各ステップにおける電動モータ702およびサブコイル709cに対する電流制御は、例えば磁性流体714あるいはブレーキ機構715内のオイルの温度に応じて、それらの電流の制御量が適宜に設定されて実行される。磁性流体714やオイルは、温度によりその粘性が変化する。したがって、磁性流体714あるいはオイルの温度を考慮して電動モータ702およびサブコイル709cの電流の制御を行うことにより、温度変化に左右されず常に適切な制御を実行することができる。
【0230】
ここで、上述した各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図14に示すステップS36の制御を行う機能的手段がこの発明における相対移動規制手段に相当する。また、ステップS35,S37の制御を行う機能的手段がこの発明における押圧力保持手段に相当する。
【0231】
このように、この発明の第7の実施例で示す構成の装置によれば、電動モータ702およびボールねじ703ならびにシリンダ部材706などから構成される推力機構と第1ピストン708とが、具体的にはシリンダ部材706と第1ピストン708とが相対移動可能であり、それらの間に、すなわち第1ピストン室711および第2ピストン室713に介在させる磁性流体714の量に応じてシリンダ部材706と第1ピストン708との相対位置、言い換えれば、シリンダ部材706に対する第1ピストン708の伸長量を変化させることができる。したがって、第1ピストン708をストロークさせる位置がそのストローク方向で前後に変化しても、その変化分を第1ピストン室711の磁性流体714の量で調整でき、それに伴って第1ピストン708のストローク量を一定に維持した状態で摩擦板716を押圧することができる。
【0232】
また、シリンダ部材706を移動させることに伴って第1ピストン708が摩擦板716に当接すると、その反力によって第1ピストン708がシリンダ部材706側に押される。その場合に磁性流体714が流動状態に設定されていると、これが第1ピストン室711から第2ピストン室713に押し出されて第1ピストン708がシリンダ部材706に対して接近する。すなわち、第1ピストン708のストローク位置がいわゆる後退側に調整される。その状態で、サブコイル709cによって流路710内の磁性流体714に磁気を印可してその流動性を低下させ、磁性流体714を第1ピストン室711に封止した状態に維持することにより、上記の推力機構による推力を摩擦板716に作用させることができる。したがって、第1ピストン708と摩擦板716との当接位置が変化した場合であっても、第1ピストン708のストローク位置の調整を自動的に、かつ容易に行った状態で摩擦板716を押圧することができる。
【0233】
そして、第1ピストン708で摩擦板716を押圧している状態、すなわちシリンダ部材706と第1ピストン708との相対移動を規制して第1ピストン708で摩擦板716を押圧している状態では、電動モータ702への通電を停止することにより、シリンダ部材706の後退移動を規制して第1ピストン708による押圧状態を維持することができる。そのため、押圧状態を維持するための電力の消費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】この発明の第1の実施例における構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す構成の一部を拡大して示す部分断面図である。
【図3】この発明の第2の実施例における構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図3に示す構成によるブレーキ機構の係合制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明の第3の実施例における構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図5に示す構成の一部を拡大して示す部分断面図である。
【図7】この発明の第4の実施例における構成を模式的に示す断面図である。
【図8】この発明の第5の実施例における構成を模式的に示す断面図である。
【図9】図8に示す構成の一部を拡大して示す部分断面図である。
【図10】この発明の第6の実施例における構成を模式的に示す断面図である。
【図11】この発明の第6の実施例における構成の一部を拡大して示す部分断面図である。
【図12】図10,図11に示す構成によるブレーキ機構の係合制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図13】この発明の第7の実施例における構成を模式的に示す断面図である。
【図14】図13に示す構成によるブレーキ機構の係合制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0235】
101,201,401,601,701…アクチュエータ、 102,202,402,602…電磁石、 103,203,403,603…アーマチュア(磁性部材)、 105,205,405,605…メインコイル、 111,211,410,609,708…ピストン(押圧部材)、 112,114,214,216,219,220,416,417,501d,624,625,711…ピストン室,油室(充填室)、 115,118,213,218,415,501e,623,710…流路、 120,223,420,628,716…摩擦板(被押圧部材)、 126,221,418,626,714…磁性流体、 127,128…磁路、 212c,217c,412c,501c,611c,622c,709c…サブコイル、 702…電動モータ、 703…ボールねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、
前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記推力機構とは別の所定の部材と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通する第1流路とにそれぞれ充填されていて、
前記磁性部材は、前記電磁石に通電した際に発生する磁束が通過する磁路を、磁束密度および磁気抵抗が異なる複数の磁路に分岐するとともに、
前記第1流路は、前記複数の磁路のうちのいずれかが通過する第2流路を含んでいることを特徴とする電磁式押圧装置。
【請求項2】
前記第2流路を通過する磁路は、前記複数の磁路のうち相対的に磁束密度が大きくかつ磁気抵抗が大きい磁路であることを特徴とする請求項1に記載の電磁式押圧装置。
【請求項3】
電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、
前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記第1副電磁石と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、
前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、
前記押圧部材が前記押圧力を前記被押圧部材に伝達している状態で、前記推力機構の前記押圧力の押圧方向と反対側への後退移動を規制する押圧力保持手段を備えている
ことを特徴とする電磁式押圧装置。
【請求項4】
前記磁性流体は、前記磁性部材と前記推力機構との間に固定された第2副電磁石と前記推力機構との間に形成された第3充填室と、前記第2副電磁石と前記磁性部材との間に形成された第4充填室と、それら第3充填室と第4充填室とを連通するとともに前記第2副電磁石の内部に形成された第2流路とにそれぞれ充填されていて、
前記押圧力保持手段は、前記第2副電磁石で前記第2流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記後退移動を規制する手段を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁式押圧装置。
【請求項5】
電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、
前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記第1副電磁石と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、
前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、
前記押圧部材が前記押圧力を前記被押圧部材に伝達している状態で、前記推力機構の前記押圧力の押圧方向と反対側への後退移動を規制する押圧力保持手段と、
前記第1副電磁石により前記第1流路に磁気が印加された場合に、前記第1流路を閉塞もしくは狭窄させる流路制限手段と
を備えていることを特徴とする電磁式押圧装置。
【請求項6】
前記磁性流体は、前記磁性部材と前記推力機構との間に固定された第2副電磁石と前記推力機構との間に形成された第3充填室と、前記第2副電磁石と前記磁性部材との間に形成された第4充填室と、それら第3充填室と第4充填室とを連通するとともに前記第2副電磁石の内部に形成された第2流路とにそれぞれ充填されていて、
前記押圧力保持手段は、前記第2副電磁石で前記第2流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記後退移動を規制する手段を含み、
前記流路制限手段は、前記第2副電磁石により前記第2流路に磁気が印加された場合に、前記第2流路を閉塞もしくは狭窄させる手段を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の電磁式押圧装置。
【請求項7】
前記流路制限手段は、前記第1流路または前記第2流路内に設けられた磁性を有しかつ膨張・収縮自在な磁性弾性体により構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の電磁式押圧装置。
【請求項8】
電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、
前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記推力機構とは別の所定の部材と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記所定の部材との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、
前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、
前記第1充填室内の磁性流体が前記推力機構側からの力を受ける第1受圧部の受圧面積が、前記第1充填室内の磁性流体が前記押圧部材側からの力を受ける第2受圧部の受圧面積よりも小さい
ことを特徴とする電磁式押圧装置。
【請求項9】
電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、
前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記推力機構とは別の所定の部材と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記所定の部材との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、
前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、
前記第1充填室内の磁性流体が前記推力機構側からの力を受ける第1受圧部の受圧面積が、前記第1充填室内の磁性流体が前記押圧部材側からの力を受ける第2受圧部の受圧面積よりも小さく、
前記推力機構が前記被押圧部材側へ移動する際に前記推力機構の移動を徐々に規制して前記押圧部材と被押圧部材との当接を緩衝する緩衝手段を備えている
ことを特徴とする電磁式押圧装置。
【請求項10】
前記緩衝手段は、前記推力機構と前記第1受圧部との間に設けられた第2副電磁石と、前記第2副電磁石の内部に形成されて前記磁性流体が充填されるとともに、前記推力機構の移動と連動して容積が変化する第3充填室と、前記第1充填室と前記第3充填室とを連通させて前記磁性流体の流通を可能にする第2流路とから構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の電磁式押圧装置。
【請求項11】
前記第3充填室は、前記推力機構と前記押圧部材との間の距離が短くなるほど容積が少なくなるように形成され、
前記第2副電磁石は、該第2副電磁石に通電されて磁力を発生している場合に、前記推力機構と前記押圧部材との間の距離が短くなるほど前記磁力が大きくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の電磁式押圧装置。
【請求項12】
電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対距離もしくは相対位置を変位させ、その相対距離もしくは相対位置が変位する際の移動力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、
前記推力機構と前記押圧部材との間に設けられるとともに、前記磁性流体に印加する磁気の大小に応じて前記推力機構と前記押圧部材とを選択的に固定する係合機構を備え、
前記磁性流体は、前記推力機構と前記係合機構との間に設けられた第1副電磁石の内部に形成された第1充填室に充填されていて、
前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石への通電を低下もしくは停止することにより前記係合機構で前記推力機構と前記押圧部材とを固定して前記相対移動を規制する
ことを特徴とする電磁式押圧装置。
【請求項13】
前記押圧部材と所定の固定部材との間に固定された第2副電磁石と、
前記押圧部材と所定の固定部材との間に形成されかつ前記第2副電磁石の内部に形成された流路で互いに連通されかつ前記磁性流体が充填されるとともに、前記押圧部材の移動と連動して容積がそれぞれ変化する第2および第3充填室と、
前記第2副電磁石で前記流路内の磁性流体に印加する磁気を制御することにより前記押圧部材の前記被押圧部材に対する相対移動および押圧状態を制御する押圧制御手段と
を備えていることを特徴とする請求項12に記載の電磁式押圧装置。
【請求項14】
電磁石で発生する磁力を利用してその電磁石とそれに近設させた磁性部材との間の相対位置を回転変位させ、その相対位置が回転変位する際の回転力を基に被押圧部材に向けた押圧力を発生する推力機構と、前記推力機構に対する相対移動が可能でかつその相対移動が選択的に規制されるとともに、該相対移動が規制された状態で前記被押圧部材に当接させられることにより前記押圧力を前記被押圧部材に伝達する押圧部材と、前記推力機構と前記押圧部材との間に介在させた磁性流体に印可する磁気を調整して前記磁性流体の流動性を制御することにより前記相対移動を規制する相対移動規制手段とを備えた電磁式押圧装置において、
前記磁性流体は、前記推力機構と前記押圧部材との間に固定された第1副電磁石と前記押圧部材との間に形成された第1充填室と、前記第1副電磁石と前記推力機構との間に形成された第2充填室と、それら第1充填室と第2充填室とを連通するとともに前記第1副電磁石の内部に形成された第1流路とにそれぞれ充填されていて、
前記相対移動規制手段は、前記第1副電磁石で前記第1流路内の磁性流体に磁気を印加することにより前記相対移動を規制するとともに、
前記押圧部材が前記押圧力を前記被押圧部材に伝達している状態で、前記推力機構の前記押圧力の押圧方向と反対側への後退移動を規制する押圧力保持手段を備えている
ことを特徴とする電磁式押圧装置。
【請求項15】
前記推力機構は、回転運動を直線運動に変換するボールねじにより該推力機構に入力される回転力を基に前記押圧力を発生する機構を含み、
前記押圧力保持手段は、前記ボールねじの回転を停止することにより前記後退移動を規制する手段を含む
ことを特徴とする請求項14に記載の電磁式押圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−115264(P2009−115264A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291223(P2007−291223)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】