説明

電磁誘導加熱器

【課題】各種食材調理用鉄板や各種食品焼成用トレーの底面全体を均一に電磁誘導加熱する。
【解決手段】1本物の電磁誘導加熱コイル(14)における径小な中央加熱コイル部(14a)を巻き付けたボビン(B)と、同じく順次径大な第1、2周辺加熱コイル部(14B)(14c)を受け持つ支持脚(F)と、上記ボビン(B)の中心へ垂直に貫通された磁性体の芯棒(15)とから成り、その芯棒(15)を食材調理用鉄板又は食品焼成用トレー(6)の底面に向かって昇降調整できるように定めると共に、上記第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)同士の隣り合う相互間に確保した一定間隙(X2)を、広く又は狭く調整できるように定めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はお好み焼きや焼きそば、ギョーザなどの各種食材を調理する鉄板(ホットプレート)のほかに、クレープやワッフル、クッキー、煎餅、たい焼き、その他の各種食品(焼き菓子)を焼成するトレー用としてもふさわしく有効な電磁誘導加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクレープを焼き菓子の一例に挙げて言えば、これは特許文献1に開示のようなクレープ菓子製造装置を用いて製造されており、その特許文献1にはパレット(5)の加熱源が記載されていないが、ターンテーブル(4)の自動間歇的な回転停止中において、その複数のパレット(5)をこれらと対応位置するガスバーナーにより、下方から加熱している実際である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−8606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記パレット(5)の複数をガスにより加熱する手段では、作業者の受ける温度環境や熱効率が非常に悪く、それにもましてガスの炎が排気流などの影響を受けて揺れ動くため、そのパレット(5)の底面全体を均一な温度に加熱することができず、焼き色にもムラを生じ、常時安定な品質のクレープ(焼き菓子)を得られない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では食材調理用鉄板又は食品焼成用トレーを加熱するための電磁誘導加熱器であって、
【0006】
1本物の電磁誘導加熱コイルにおける巻き径が小さい中央加熱コイル部を巻き付けたボビンと、同じく加熱コイルの巻き径が順次大きい少なくとも2つの第1、2周辺加熱コイル部を受け持った支持脚と、上記中央加熱コイル部の中心へ垂直に貫通された磁性体の芯棒とから成り、
【0007】
その芯棒を上記鉄板又はトレーの底面に向かって昇降調整できるように定めると共に、上記電磁誘導加熱コイルにおける周辺加熱コイル部同士の隣り合う相互間を一定間隙だけ離隔させることにより、上記鉄板又はトレーにおける底面中央区域の加熱温度分布と底面周辺区域のそれとを均一に保つことを特徴とする。
【0008】
又、請求項2ではボビンと支持脚とを食材調理用鉄板又は食品焼成用トレーの底面に向かって、一挙同時に又は各別に昇降調整できるように定めたことを特徴とする。
【0009】
請求項3では1本物の電磁誘導加熱コイルにおける周辺加熱コイル部同士の隣り合う一定間隙へ、食材調理用鉄板又は食品焼成用トレーの底面と接触し得る接触式温度センサーを昇降作動自在に介挿設置して、
【0010】
その温度センサーが上記鉄板又はトレーの現在温度を検知した出力信号により、上記電磁誘導加熱コイル励磁用高周波電源の加熱力を強弱調整するように定めたことを特徴とする。
【0011】
更に、請求項4では自動間歇的に回転駆動される円形なターンテーブルの周辺部へ、複数の食材調理用鉄板又は食品焼成用トレーを全体的な放射対称分布型として、しかも上方から係脱自在に差し込み係止させると共に、
【0012】
その鉄板又はトレーが一旦停止される位置へ、下方から渦巻き状態に臨ませた1本物の電磁誘導加熱コイルにより、上記鉄板又はトレーの底面を停止中だけ加熱するように定めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の上記構成によれば、食材調理用鉄板(ホットプレート)又は食品焼成用トレーにおける材質や厚みなどの変化に応じて、磁性体の芯棒をその鉄板又はトレーの底面に向かい昇降調整したり、又1本物の電磁誘導加熱コイルにおける巻き径が比較的大きい周辺加熱コイル部同士の隣り合う一定間隙を広く又は狭く調整したりすることにより、上記鉄板又はトレーの底面全体を均一な温度分布状態に電磁誘導加熱することができ、このような効果は請求項2の構成を採用すれば、ますます向上する。
【0014】
特に、請求項3の構成を採用するならば、上記周辺加熱コイル部同士の隣り合う一定間隙を活用して、その間隙へ上記鉄板又はトレーの接触式温度センサーを介挿設置することができ、しかもその温度センサーを鉄板又はトレーから離すように下降させれば、その鉄板又はトレーの回転運動や清掃作業も可能になる。
【0015】
更に、請求項4の構成を採用するならば、クレープやワッフルなどの各種食品を熱効率良く焼成することができ、その大量処理や作業環境の改良などに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電磁誘導加熱器を取り付けたクレープ焼成機の平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線拡大断面図である。
【図5】図4の斜面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】電磁誘導加熱器の制御回路図である。
【図8】食品焼成用トレーの底面へ温度センサーを押し付けた状態の断面図である。
【図9】本発明の変形実施形態を示す図1に対応する平面図である。
【図10】図9の正面図である。
【図11】図10の側面図である。
【図12】図9の12−12線拡大断面図である。
【図13】図12の電磁誘導加熱コイルを抽出して示す平面図である。
【図14】トレーの底面に対する加熱温度分布を示すグラフである。
【図15】図4の電磁誘導加熱器によるトレーの加熱温度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示の実施形態に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1〜8は焼き菓子の一例であるクレープの焼成機(M)と、これに対する電磁誘導加熱器(H)の取り付け使用状態を示しており、(1)はクレープ焼成機(M)の据付け機筐であって、一定な大きさの円筒形又は角筒形をなし、その下端部にねじ込まれた複数の接地脚座(2)により、据付け高さを調整できるようになっているが、これに代えて又は加えて、据付け場所の変更可能なブレーキ付きのキャスター(3)を軸支しても良い。
【0018】
このような据付け機筐(1)の水平な上面は作業しやすい設置高さにある円形のターンテーブル(4)として、その周辺部に全体的な放射対称分布型として開口する複数(図例では合計7個)のトレー受け入れ口(5)を備えており、その円形の各トレー受け入れ口(5)には食品(クレープ)焼成用トレー(6)が上方から係脱自在に差し込み係止されている。
【0019】
茲に、複数(図例では合計7個)のトレー(6)は非磁性体の軽量なアルミ材から、互いに同じ大きさの円形受皿状に造形されており、しかもそのフラットな底面には鉄粉などの発熱被膜(7)が各々溶射されることによって、導電性が与えられている。但し、その導電性を有する限りでは、上記トレー(6)の材質としてフェライト系ステンレス鋼や胴、鉄とアルミとのクラッド材などを採用しても良く、磁性体の鉄も勿論採用することができる。
【0020】
(8)は上記クレープ焼成機(M)の据付け機筐(1)を形作る胴壁面(9)の適当な中途高さ位置へ、その内側から全体的な放射対称分布型に溶接された複数の支持ステーであって、アングル形鋼材から成り、その支持ステー(8)の水平片には円形のモーター受け台(10)が着脱自在に取り付け固定されている。
【0021】
(11)はその水平なモーター受け台(10)の円形中心部へ搭載状態に取り付け固定されたギヤードモーターであって、その垂直な出力軸(12)の上端部をなす径大なテーブル受けフランジ(13)が、上記ターンテーブル(4)の円形中心部へ裏当て状態に取り付け一体化されており、そのターンテーブル(4)をギヤードモーター(11)によって間歇的に回転駆動し得るようになっている。図1の符号(R)はそのターンテーブル(4)の回転方向、(S1)(S2)(S3)(S4)(S5)(S6)(S7)は上記トレー(6)の第1〜7停止位置を示している。
【0022】
電磁誘導加熱器(H)は複数(図例では合計6個)として、その導電性トレー(6)の自動間歇的な第1〜6停止位置(S1)〜(S6)に点在分布されており、その停止状態にあるトレー(6)の底面を電磁誘導加熱する。但し、トレー(6)の第7停止位置(S7)だけは焼成し終った食品(クレープ)をトレー(6)から取り出す位置として、ここにトレー(6)の電磁誘導加熱器(H)は設置されていない。
【0023】
即ち、電磁誘導加熱器(H)の複数は悉く同じ図3〜6に示すようなユニット体として、各導電性トレー(6)の大きさに対応する長い1本物の電磁誘導加熱コイル(14)と、その電磁誘導加熱コイル(14)における巻き径が小さい中央加熱コイル部(14a)を巻き付けるボビン(B)と、同じく電磁誘導加熱コイル(14)の巻き径が順次大きい少なくとも2つの第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)を受け持つ支持脚(F)と、上記ボビン(B)の中心を垂直に貫通する磁性体の芯棒(15)とから成り、これらが共通のベース板(16)に取り付けられたものである。
【0024】
そして、上記電磁誘導加熱コイル(14)の中央加熱コイル部(14a)が磁性体の芯棒(15)による磁束の集中的な浸透作用とも相俟って、各トレー(6)における底面中央区域(P1)の加熱を分担すると共に、同じく電磁誘導加熱コイル(14)の第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)が各トレー(6)における底面周辺区域(P2)(P3)の加熱を分担し、その1本物の電磁誘導加熱コイル(14)によって各トレー(6)の底面全体を加熱するようになっている。
【0025】
先ず、ボビン(B)は耐熱性の合成樹脂やベークライトなどの電気絶縁材から、上下一対の水平な張り出しフランジ(17)(18)を備えた一定な背丈の円筒形に作成されており、その胴面に電磁誘導加熱コイル(14)の中央加熱コイル部(14a)が巻き径(d)の小さく巻き付け一体化されている。
【0026】
その場合、図例の電磁誘導加熱器(H)では一定な太さ(直径が約5mm)と長さの銅線(リッツ線)から成る電磁誘導加熱コイル(14)のうち、その中央加熱コイル部(14a)を上記ボビン(B)の胴面へ、連続する内外二重の積層螺旋状態に14回巻き付けることにより、その中央加熱コイル部(14a)の背丈とボビン(B)のそれを低く扁平化しているが、その背高くなる一重に巻き付けてもさしつかえない。
【0027】
上記ボビン(B)の上側張り出しフランジ(17)は中央加熱コイル部(14a)の巻き径(d)とほぼ同じ外径を有しており、これよりも径大な下側張り出しフランジ(18)が、全体的な放射対称分布型に垂立する非磁性体から成る複数の支持ボルト(19)とその固定ナット(20)を介して、上記ベース板(16)へ昇降操作自在に取り付けられている。そのため、上記トレー(6)の底面とその中央加熱コイル部(14a)との上下相互間隙を、広く又は狭く調整することができる。
【0028】
次に、磁性体の芯棒(15)は一定な太さを有する角柱形又は円柱形のフェライトから成り、その背丈(身長)が上記中央加熱コイル部(14a)の背丈よりも高い(長い)一定寸法として、そのボビン(B)の中心を貫通する垂立状態にある。そのため、電磁誘導加熱コイル(14)の中央加熱コイル部(14a)を流れる高周波電流によって起生される磁束が、上記芯棒(15)からトレー(6)に浸透して、そのトレー(6)の底面中央区域(P1)を加熱することができる。
【0029】
しかも、その芯棒(15)の下端部を受け持つ1本のセンターボルト(21)が、やはり上記ベース板(16)へ昇降操作自在に取り付けられており、トレー(6)の底面と芯棒(15)の頂面との上下相互間隙(s)を、広く又は狭く調整することができ、延いてはトレー(6)における底面中央区域(P1)の加熱温度分布を、その底面周辺区域(P2)(P3)の加熱温度分布と等しくなるように調整し得るようになっている。(22)はその調整状態の固定ナットであり、上記センターボルト(21)と同じくアルミやステンレス鋼などの非磁性体から成る。
【0030】
又、上記支持脚(F)は一定の太さ(例えば直径が約5〜8mm)を有し且つ全体的な放射対称分布型に配列された複数(図例では合計8本)のアルミ棒やステンレス鋼棒、その他の非磁性体の金属骨材から、図3〜6のような各トレー(6)の底面周辺区域(P2)(P3)と対応する大きさになるほぼ倒立L字形に折り曲げ立体化されたものである。
【0031】
そして、その複数の金属骨材から成る支持脚(F)の水平な腕杆(23)へ、上方から長い1本物の電磁誘導加熱コイル(14)における巻き径の順次大きい少なくとも2つの第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)が、各々一重の渦巻き状態に取り付け固定されている。(24)はその腕杆(23)の張り出し先端部に悉く組み付け溶接された円形の縁取りリングであり、これも非磁性体のアルミ棒などから成る。
【0032】
図例の場合、上記巻き径が小さい内側の第1周辺加熱コイル部(14b)を、3回だけ渦巻き状態に巻回する一方、これよりも巻き径が大きい外側の第2周辺加熱コイル部(14c)を、9回渦巻き状態に巻回しているが、第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)の巻き回数やその相対的な比率については、上記トレー(6)の大きさや厚みなどを考慮して、適当に設定することができる。
【0033】
他方、同じく複数の金属骨材から成る支持脚(F)の垂直な脚杆(25)は、上記電磁誘導加熱コイル(14)の中央加熱コイル部(14a)とボビン(B)を包囲する平行状態にあり、その各脚杆(25)の下端ネジ杆部(25a)が非磁性体の固定ナット(26)によって、上記ベース板(16)へ昇降操作自在に締結されている。そのため、上記トレー(6)の底面とその第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)との上下相互間隙を、広く又は狭く調整することができる。
【0034】
尚、上記支持脚(F)を形作る複数の金属骨材に被覆一体化されたガラス繊維などの電気絶縁チューブや、同じく金属骨材へ上記第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)を取り付けた電気絶縁性の結束紐、更にその第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)へ上方から貼り付け一体化されたガラス繊維や合成樹脂などの断熱材層は、何れも図示省略してある。
【0035】
更に、上記電磁誘導加熱器(H)のベース板(16)はボビン(B)の真下位置にあり、中央加熱コイル部(14a)の芯棒(15)から下方に向かう磁束の遮断用として、その磁束を反射できる非磁性体のアルミ板やステンレス鋼板などから成り、その円形の周辺部が全体的な放射対称分布型に垂立する複数の支持ボルト(27)とその上下一対づつの固定ナット(28)(29)を介して、上記モーター受け台(10)へ昇降操作自在に取り付けられている。
【0036】
そのため、上記ベース板(16)を昇降操作することにより、トレー(6)の底面に対する電磁誘導加熱器(H)の全体的な設置高さを調整することができる。尚、図例の場合ベース板(16)の支持ボルト(27)とその下側の固定ナット(29)を兼用して、上記据付け機筐(1)における胴壁面(9)側の支持ステー(8)へ、モーター受け台(10)を一挙に取り付け固定している。
【0037】
何れにしても、長い1本物の電磁誘導加熱コイル(14)における巻き径(d)の小さい中央加熱コイル部(14a)と、同じく巻き径の順次大きい少なくとも2つの第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)とは図5、6のように、全体の同芯渦巻き状態として振り分け配置されており、しかもその磁性体の芯棒(15)が貫通された中央加熱コイル部(14a)と、内側の第1周辺加熱コイル部(14b)との隣り合う相互間にはサークル状の第1分離間隙(X1)が、又その内側の第1周辺加熱コイル部(14b)と外側の第2周辺加熱コイル部(14c)との隣り合う相互間にはやはりサークル状の第2分離間隙(X2)が確保されてもいる。
【0038】
そのため、上記電磁誘導加熱コイル(14)における切り離し両端部の接続端子(30)を、その励磁用高周波電源(加熱用インバーター)(31)の出力端子と接続配線し、その高周波電源(31)から電磁誘導加熱コイル(14)へ高周波電流を供給して、上記トレー(6)と鎖交する磁束を発生させれば、そのトレー(6)の底面に渦電流が流れ、ジュール熱によりトレー(6)の発熱被膜(7)が発熱して、その底面中央区域(P1)並びに底面周辺区域(P2)(P3)を加熱することができる。
【0039】
(32)は上記トレー(6)の底面と接触して、その発熱被膜(7)の温度を検知する熱電温度計や抵抗温度計、その他の接触式温度センサーであり、上記第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)における隣り合う相互間の第2分離間隙(X2)に介在する位置関係として、上記ベース板(16)へ昇降作動自在に取り付け固定されている。
【0040】
そして、その接触式温度センサー(32)が上記トレー(6)における底面(発熱被膜)の現在温度を検知した出力信号により、高周波電源(31)の加熱力を強弱調整し、そのトレー(6)を予じめ設定された目標温度よりも高く過熱しないようになっている。尚、上記温度センサー(32)を下降させて、トレー(6)の底面から離すことにより、そのトレー(6)を清掃作業することができる。
【0041】
更に言えば、図1〜8の実施形態はクレープ焼成機(M)に適用した本発明の電磁誘導加熱器(H)を例示しており、その矢印方向(R)へ回転駆動されるターンテーブル(4)によるトレー(6)の第1停止位置(S1)において、鶏卵や小麦粉、牛乳、砂糖などから成る食品(クレープ)の材料がそのトレー(6)に自動供給され、その材料は引き続くトレー(6)の第2〜6停止位置(S2)〜(S6)において、自動的に薄く圧延され、最後の第7停止位置(S7)において、その焼成し終えた食品(クレープ)がトレー(6)から自動的に取り出されることになり、このような1サイクルを繰り返す。その1サイクルの所要時間は例えば約5分であり、食品の種類や量などに応じて、タイマーにより適当に設定されることとなる。
【0042】
その場合、図1や図4〜6から併せて明白なように、上記トレー(6)の第1、2停止位置(S1)(S2)に臨む電磁誘導加熱コイル(14)同士の隣り合う1組と、同じく第3、4停止位置(S3)(S4)に臨む電磁誘導加熱コイル(14)同士の隣り合う1組と、更に第5、6停止位置(S5)(S6)に臨む電磁誘導加熱コイル(14)同士の隣り合う1組は、各々連続一本化されていると共に、その1組づつの接続端子(30a)(30b)(30c)が図7のように、互いに別個独立する3個づつの第1〜3高周波電源(加熱用インバーター)(31a)(31b)(31c)及び第1〜3操作パネル(33a)(33b)(33c)へ接続配線されている。(34)はその高周波電源(31a)(31b)(31c)の受け台であり、上記据付け機筐(1)におけるモーター受け台(10)の下段位置に取り付け固定されている。
【0043】
しかも、上記隣り合う1組づつをなす電磁誘導加熱コイル(14)のうち、その何れか一方の第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)におけるサークル状の第2分離間隙(X2)には、各々昇降作動可能な接触式の第1〜3温度センサー(32a)(32b)(32c)も介挿設置されており、その温度センサー(32a)(32b)(32c)を各々一旦停止中にあるトレー(6)の底面(発熱被膜)へ下方から押し当てるべく上昇させて、そのトレー(6)の温度を検知し得るようになっている。その温度検知後に温度センサー(32a)(32b)(32c)は下降されて、上記ターンテーブル(4)が回転されることは言うまでもない。
【0044】
そのため、上記食品(クレープ)を焼成する作用の1サイクル中、その第1、2停止位置(S1)(S2)に停止中のトレー(6)を例えば180℃、その後の第3、4停止位置(S3)(S4)に停止中のトレー(6)を例えば約170℃、引き続く第5、6停止位置(S5)(S6)に停止中のトレー(6)を例えば約160℃として、その加熱温度を順次段階的に低下させるべく、その第1〜3高周波電源(31a)(31b)(31c)の加熱力を別個独立に調整することができる。最後の第7停止位置(S7)に停止中のトレー(6)は、その加熱温度の低く冷めるので、これから焼成し上がった食品(クレープ)を容易に剥離し得るのである。尚、上記高周波電源(31a)(31b)(31c)の出力は一例として約3Kw、電流の周波数は同じく約20〜40KHz である。
【0045】
先の図1〜8に示した実施形態では、ギヤードモーター(11)により間歇的に回転駆動されるターンテーブル(4)上へ、複数の食品(クレープ)焼成用トレー(6)を全体的な放射対称分布型に取り付け使用して、そのターンテーブル(4)により移動される上記トレー(6)を、その一旦停止した状態において対応的な複数の電磁誘導加熱器(H)により電磁誘導加熱するようになっているが、別な図9〜13の変形実施形態に示す如く、1個の固定状態において使用される食材調理用鉄板(ホットプレート)(6)の電磁誘導加熱器(H)としても、本発明を適用実施することができる。
【0046】
その変形実施形態の構成を採用する場合でも、上記ターンテーブル(4)に代る据付けかまど(1)の上面に開口するホットプレート受け入れ口(5)へ、食材調理用鉄板(ホットプレート)(6)を上方から係脱自在に差し込み係止させると共に、その鉄板(6)の底面に対する接触式の温度センサー(32)を、上記電磁誘導加熱器(H)の水平なベース板(16)へ昇降作動自在に取り付け固定する。そうすれば、その温度センサー(32)を下降させることにより、上記鉄板(6)を据付けかまど(1)のホットプレート受け入れ口(5)から取りはずして、その交換や清掃などを便利良く行なえる。
【0047】
尚、図9〜13の変形実施形態におけるその他の構成は図1〜8の実施形態と実質的に同一であるため、その図9〜13に図1〜8との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0048】
図14は上記食品(クレープ)焼成用トレー(6)又は食材調理用鉄板(ホットプレート)における底面の加熱温度分布を示すグラフであり、上記高周波電源(加熱用インバーター)(31)(31a)(31b)(31c)の出力を予じめ調整することによって、その調整された一定な加熱力のもとで電磁誘導加熱すれば、誘導電流の作る磁束が電磁誘導加熱コイル(14)の中央加熱コイル部(14a)を貫通する磁性体の垂直な芯棒(15)から、上記トレー(6)又は鉄板の底面に吸い寄せられ浸透して、その中央加熱コイル部(14a)から発生する磁界と内側の第1周辺加熱コイル部(14b)から発生する磁界とをオーパラップさせると共に、その内側の第1周辺加熱コイル部(14b)と外側の第2周辺加熱コイル部(14c)とから発生する磁界同士もオーバーラップさせて、各々同じ高周波電流としての加算効果により、その加熱コイル部(14a)(14b)(14c)が隣り合う同士の内外相互間隙(X1)(X2)を高温に平準化又は均平化し、上記トレー(6)又は鉄板の底面全体を均一な温度分布状態に加熱することができる。
【0049】
又、図15は図1の第3停止位置(S3)にある食品(クレープ)焼成用トレー(6)内のクレープ材料を、本発明の電磁誘導加熱器(H)による電磁誘導加熱中の10秒毎にサンプリングした経時的な一定時刻における加熱温度分布を示すグラフであり、これによれば上記トレー(6)の測定点(イ)〜(ヘ)における加熱温度分布が、そのトレー(6)の底面全体として約5℃のバラツキ範囲にとどまっており、ほぼ均一な温度分布状態を得られている。
【0050】
磁性体の芯棒(15)に巻き付けた中央加熱コイル部(14a)の巻き回数を減少させて、これが受け持ち分担する底面中央区域(P1)の測定点(イ)(ロ)における加熱力を低く設定する一方、底面周辺区域(P2)(P3)の加熱を受け持ち分担する第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)を、その巻き径が相違する内外一対として一定間隙(X2)だけ離隔させることにより、上記底面周辺区域(P2)(P3)の測定点(ニ)(ホ)(ヘ)おける加熱力をほぼ均一に平準化していることが、上記効果の達成に寄与したものと考えられる。
【符号の説明】
【0051】
(1)・据付け機筐
(2)・接地脚座
(3)・キャスター
(4)・ターンテーブル
(5)・トレー受け入れ口
(6)・トレー
(7)・発熱被膜
(8)・支持ステー
(9)・胴壁面
(10)・モーター受け台
(11)・ギヤードモーター
(12)・出力軸
(13)・テーブル受けフランジ
(14)・電磁誘導加熱コイル
(14a)・中央加熱コイル部
(14b)(14c)・第1、2周辺加熱コイル部
(15)・芯棒
(16)・ベース板
(17)(18)・張り出しフランジ
(29)・支持ボルト
(20)(22)(26)(28)(29)・固定ナット
(21)・センターボルト
(23)・腕杆
(24)・縁取りリング
(25)・脚杆
(25a)・下端ネジ杆部
(27)・支持ボルト
(30)・接続端子
(31)(31a)(31b)(31c)・高周波電源(インバーター)
(32)(32a)(32b)(32c)・温度センサー
(33)(33a)(33b)(33c)・操作パネル
(34)・電源受け台
(B)・ボビン
(F)・支持脚
(H)・電磁誘導加熱器
(M)・クレープ焼成機
(R)・回転方向
(P1)・底面中央区域
(P2)(P3)・底面周辺区域
(d)・中央加熱コイル部の巻き径
(X1)・第1分離間隙
(X2)・第2分離間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材調理用鉄板又は食品焼成用トレー(6)を加熱するための電磁誘導加熱器(H)であって、
1本物の電磁誘導加熱コイル(14)における巻き径が小さい中央加熱コイル部(14a)を巻き付けたボビン(B)と、同じく加熱コイル(14)の巻き径が順次大きい少なくとも2つの第1、2周辺加熱コイル部(14b)(14c)を受け持った支持脚(F)と、上記中央加熱コイル部(14a)の中心へ垂直に貫通された磁性体の芯棒(15)とから成り、
その芯棒(15)を上記鉄板又はトレー(6)の底面に向かって昇降調整できるように定めると共に、上記電磁誘導加熱コイル(14)における周辺加熱コイル部(14b)(14c)同士の隣り合う相互間を一定間隙(X2)だけ離隔させることにより、上記鉄板又はトレー(6)における底面中央区域(P1)の加熱温度分布と底面周辺区域(P2)(P3)のそれとを均一に保つことを特徴とする電磁誘導加熱器。
【請求項2】
ボビン(B)と支持脚(F)とを食材調理用鉄板又は食品焼成用トレー(6)の底面に向かって、一挙同時に又は各別に昇降調整できるように定めたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱器。
【請求項3】
1本物の電磁誘導加熱コイル(14)における周辺加熱コイル部(14b)(14c)同士の隣り合う一定間隙(X2)へ、食材調理用鉄板又は食品焼成用トレー(6)の底面と接触し得る接触式温度センサー(32)(32a)(32b)(32c)を昇降作動自在に介挿設置して、
その温度センサー(32)(32a)(32b)(32c)が上記鉄板又はトレー(6)の現在温度を検知した出力信号により、上記電磁誘導加熱コイル励磁用高周波電源(31)(31a)(31b)(31c)の加熱力を強弱調整するように定めたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱器。
【請求項4】
自動間歇的に回転駆動される円形なターンテーブル(4)の周辺部へ、複数の食材調理用鉄板又は食品焼成用トレー(6)を全体的な放射対称分布型として、しかも上方から係脱自在に差し込み係止させると共に、
その鉄板又はトレー(6)が一旦停止される位置(S1)(S2)(S3)(S4)(S5)(S6)へ、下方から渦巻き状態に臨ませた1本物の電磁誘導加熱コイル(14)により、上記鉄板又はトレー(6)の底面を停止中だけ加熱するように定めたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−19689(P2011−19689A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166665(P2009−166665)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000247247)有限会社ナカイ (22)
【Fターム(参考)】