説明

露光ヘッド及びその製造方法、カートリッジ、並びに画像形成装置

【課題】光寿命が向上した露光ヘッドを提供する。
【解決手段】有機電界発光素子60Bで構成された発光部60Aと、発光部60Aからの発光を光入射面から入射すると共に光出射面から出射して予め定められた位置に結像させる結像部と、を備え、有機電界発光素子60Bとして、陽極層62と、陰極層64と、陽極層62及び陰極層64の間に配された発光層63と、陰極層64の側面及び発光層63側とは反対側の面を覆って配された金属層65であって、一部又は全部が露出して配された金属層65と、の積層体で構成させる。そして、陰極層64は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の少なくとも1種を含んで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光ヘッド及びその製造方法、カートリッジ、並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真装置等の露光装置において、発光素子を光源とする露光ヘッドが検討されている。
例えば、特許文献1には、「複数の発光素子を実装した基板と、該基板を配設したベースと、該ベースに固定されたカバーと、前記発光素子に対向した位置で、前記カバーに固定されたレンズアレイとを有するLEDプリントヘッドにおいて、ベースは、多角形の金属棒と、前記基板とを樹脂により一体的に成形したものであり、前記金属棒のいずれかの稜線が、前記基板の裏面と対向していることを特徴とするLEDプリントヘッド」が開示されている。
また、特許文献2には、セルフォクスレンズと呼ばれるレンズアレイ屈折率分布型レンズを介して露光を行う露光ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−289843号公報
【特許文献2】特開平11−1018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、発光部を構成する有機電界発光素子が陰極を覆う金属層を有さない場合に比べ、寿命が向上した露光ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
基板上に配された有機電界発光素子で構成された発光部と、
前記発光部からの発光を光入射面から入射すると共に光出射面から出射して予め定められた位置に結像させる結像部と、
を備え、
前記有機電界発光素子が、陽極層と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の少なくとも1種を含む陰極層と、前記陽極層及び陰極層の間に配された発光層と、前記陰極層の側面及び前記発光層側とは反対側の面を覆って配された金属層であって、一部又は全部が露出して配された金属層と、の積層体で構成されている露光ヘッド。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記金属層における露出された面の少なくとも一部が、凹凸構造を有する請求項1に記載の露光ヘッド。
【0007】
請求項3に係る発明は、
請求項1又は2に記載の露光ヘッドを備え、
画像形成装置に着脱するカートリッジ。
【0008】
請求項4に係る発明は、
潜像を保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する露光ヘッドであって、請求項1又は2に記載の露光ヘッドと、
前記露光ヘッドによって形成された潜像を現像する現像装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、発光部を構成する有機電界発光素子が陰極を覆う金属層を有さない場合に比べ、寿命が向上した露光ヘッドを提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、有機電界発光素子における金属層の露出された面が凹凸構造を有さない場合に比べ、寿命が向上した露光ヘッドを提供することができる。
請求項3、4に係る発明によれば、発光部を構成する有機電界発光素子が陰極を覆う金属層を有さない露光ヘッドを適用した場合に比べ、長期にわたり像保持体に対する露光が実現されたカートリッジ、及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る露光ヘッドの構成を示す概略斜視図である。
【図3】露光ヘッドからの発光が感光体に結像される状態を模式的に示した模式図である。
【図4】本実施形態に係る露光ヘッドの有機電界発光素子の構成を示す概略断面図である。
【図5】本実施形態に係る露光ヘッドの他の有機電界発光素子の構成を示す概略断面図である。
【図6】本実施形態に係る露光ヘッドの他の有機電界発光素子の構成を示す概略断面図である。
【図7】本実施形態に係る露光ヘッドの他の有機電界発光素子の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【0013】
本実施形態に係る画像形成装置10は、図1に示すように、各構成部品を収容する筐体11と、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pにトナー画像を形成する画像形成部14と、記録媒体収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成部14によって形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置18と、定着装置18によってトナー画像が定着された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部(図示省略)と、を備えている。
【0014】
記録媒体収容部12、画像形成部14、搬送部16及び定着装置18は、筐体11に収容されている。
【0015】
画像形成部14は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kと、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写体の一例としての中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する一次転写部材の一例としての一次転写ロール26と、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を記録媒体Pに転写する二次転写部材の一例としての二次転写ロール28と、を備えている。
【0016】
画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kは、潜像を保持する像保持体の一例として、一方向(図1において時計回り方向)へ回転する感光体30をそれぞれ有している。
【0017】
各感光体30の周囲には、感光体30の回転方向上流側から順に、感光体30の表面を帯電させる帯電装置32と、帯電した感光体30の表面を露光して感光体30の表面に静電潜像を形成する露光装置としての露光ヘッド34と、感光体30の表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置36と、トナー画像が中間転写ベルト24に転写された後の感光体30の表面に残留しているトナーを除去する除去装置40と、が設けられている。
【0018】
感光体30、帯電装置32、露光ヘッド34、現像装置36及び除去装置40は、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kに収容されてユニット化されている。画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kは、筐体11に着脱可能に設けられたプロセスカートリッジとされており、交換可能となっている。
【0019】
なお、感光体30、帯電装置32、露光ヘッド34、現像装置36及び除去装置40の全てがユニット化される必要は無い。例えば、露光ヘッド34を少なくとも備え、これと、その他、例えば感光体30、帯電装置32及び現像装置36の少なくとも1つと、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kに収容されてユニット化されていればよい。
【0020】
中間転写ベルト24は、二次転写ロール28に対向する対向ロール42、駆動ロール44及び支持ロール46によって支持され、感光体30と接触しながら一方向(図1において反時計回り方向)へ循環して移動するようになっている。
【0021】
一次転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで、感光体30に対向している。一次転写ロール26と感光体30との間には、感光体30上のトナー画像が中間転写ベルト24に一次転写される一次転写位置が形成される。この一次転写位置において、一次転写ロール26が感光体30の表面のトナー画像を圧接力と静電力により中間転写ベルト24に転写するようになっている。
【0022】
二次転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで対向ロール42と対向している。二次転写ロール28と対向ロール42との間には、中間転写ベルト24上のトナー画像が記録媒体Pに二次転写される二次転写位置が形成される。この二次転写位置において、二次転写ロール28が中間転写ベルト24の表面のトナー画像を圧接力と静電力により記録媒体Pに転写するようになっている。
【0023】
搬送部16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール50と、送出ロール50によって送り出された記録媒体Pを二次転写位置へ搬送する搬送ロール対52と、を備えている。
【0024】
定着装置18は、二次転写位置より搬送方向下流側に配置されており、二次転写位置で転写されたトナー画像を記録媒体Pへ定着させる。
【0025】
二次転写位置より搬送方向下流側であって、定着装置18よりも搬送方向上流側には、定着装置18に記録媒体Pを搬送する搬送部材の一例としての搬送ベルト54が配置されている。
【0026】
以上の構成により、本実施形態に係る画像形成装置10では、まず記録媒体収容部12から送り出された記録媒体Pが、搬送ロール対52によって二次転写位置へ送り込まれる。
【0027】
一方、中間転写ベルト24には、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成された各色のトナー画像が重ねられて、カラー画像が形成される。二次転写位置へ送り込まれた記録媒体Pは、中間転写ベルト24上に形成されたカラー画像が転写される。
【0028】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置18へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置18により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、記録媒体排出部(図示省略)へ排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0029】
なお、画像形成装置の構成としては、上記の構成に限られず、例えば、中間転写体を有さない直接転写型の画像形成装置でもよく、種々の構成とすることが可能である。
【0030】
次に、露光ヘッド34について説明する。
図2は、本実施形態に係る露光ヘッドを示す斜視図である。
【0031】
各露光ヘッド34は、図2に示すように、例えば、発光素子アレイ60と、結像部70と、を備えている。発光素子アレイ60は、例えば、発光素子60Bで構成される発光部60Aと発光素子60Bが実装される実装基板61(基板の一例)と、を備える。
【0032】
発光素子アレイ60と結像部70とは、発光部60A(発光素子60B)と結像部70の光入射面70Aとの光学距離が結像部70の作動距離となるように、離間した状態で保持部材(不図示)により保持されている。
ここで、結像部70の作動距離とは、結像部に用いるレンズの焦点から結像部の入射面までの距離である。
そして、結像部70では、発光部60Aからの発光を光入射面70Aから入射すると共に光出射面70Bから出射して予め定められた位置に結像させる、つまり、発光素子60Bからの発光を感光体30に結像することによって、感光体30が露光されて潜像が形成される(図3参照)。
【0033】
発光素子アレイ60について説明する。
発光素子アレイ60は、例えば、発光部60A(発光素子60B)から照射される光を実装基板61側から取り出す、所謂、ボトムエミッション方式となっている。無論、トップエミッション方式であってもよい。
【0034】
実装基板61は、ボトムエミッション方式の場合、例えば、光透過率50%以上(望ましくは80%)の透明な基板で構成させる。
実装基板61としては、具体的には、例えば、絶縁性基板であって、ガラス基板や樹脂基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート基板(PET基板)、ポリエチレンナフタレート基板(PEN基板)等で構成される。
【0035】
発光部60Aは、例えば、単一の発光素子60Bの群で構成されている。発光素子60Bは、図示しないが、実装基板61の長手方向に沿って線状(直列)又は千鳥状に配置して、発光部60Aを構成している。発光素子60Bの群で構成された発光部60Aは、感光体30の画像形成領域以上の長さとしている。
【0036】
発光素子60Bとしては、例えば有機電界発光素子が適用される。
発光素子60Bとしての有機電界発光素子は、図4に示すように、陽極層62と、陰極層64と、陽極層62及び陰極層64の間に配された発光層63と、陰極層64の側面及び発光層63側とは反対側の面を覆って配された金属層65であって、一部又は全部が露出して配された金属層65と、の積層体で構成されている。
具体的には、有機電界発光素子は、実装基板61から順に、陽極層62、発光層63、陰極層64、金属層65が積層されて構成されている。
そして、陰極層64は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の少なくとも1種を含んで構成されている。
なお、陽極層62と陰極層64との間であって、発光層63非形成領域には、絶縁層66が配されている。また、この絶縁層66は、陰極層64の厚み方向の投影面積よりも大きい面積で配されている。
【0037】
ここで、有機電界発光素子は、上記構成に限られず、発光層63の他、他の機能層(例えば、電荷輸送層、電荷注入層、反射層等)を陽極層62及び陰極層64の間やその他領域に配した形態であってもよい。
【0038】
陰極層64は、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム)及びアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム 及びバリウム)に属する元素の少なくとも1種を含んで構成される。
これらの中でも、陰極層64としての電荷注入特性を向上させる点から、カルシウム(a)、バリウムが好適である。
【0039】
陰極層64の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下がよく、望ましくは0.2μm以上、1μm以下である。
【0040】
金属層65は、陰極層64の側面及び発光層63側とは反対側の面を覆って配され、一部又は全部が露出して配される。この金属層65は、陰極層64を覆うように配し、陰極層64に対する放熱機能(蓄熱機能)及び封止機能を兼ねた機能層である。
ここで、陰極層64の側面とは、陰極層64の厚み方向に対向する面に対して交差する面である。そして、陰極層64の発光層63側とは反対側の面とは、陰極層64の厚み方向に対向する面のうち、発光層63とは対向しない側の面である。
つまり、金属層65は、陰極層64が露出しないように、当該陰極層64を覆って配される。
【0041】
金属層65は、例えば、アルミニウム、金、銀、銅等で構成される。これらの中も、アルミニウムが好適である。
そして、金属層65は、放熱機能(蓄熱機能)を効果的に機能させるために、熱伝導率が200W/m・K以上であることがよい。。
なお、熱伝導率は、試験体内に張った金属細線をステップ状に通電加熱し,細線の発熱量とその温度応答から熱伝導率を測定する熱線法(細線加熱法)(熱物性ハンドブック(日本熱物性学会編・株式会社養賢堂,1990))により求められる値である。
【0042】
金属層65の厚みは、例えば、0.5μm以上10μm以下がよく、望ましくは1μm以上5μm以下、。
また、金属層65の厚み方向に投影される面積は、例えば、発光層63の発光面積に対して10倍以上1000倍以下がよく、望ましくは100倍以上500倍以下、である。
この金属層65の厚みや、厚み方向に投影される面積が上記範囲であると、放熱機能(蓄熱機能)が促進され、陰極層64の発熱による温度上昇、ひいては発光素子の温度上昇が抑制される。
ここで、金属層65の厚みは、陰極層64と接する領域の最大厚みを意味する。
また、発光層63の発光面積とは、発光部60Aの、発光層63を挟んで陽極層62と陰極層64が対向して配置されている領域の発光素子アレイ基板60への投影面積を意味する。
【0043】
金属層65は、放熱機能(蓄熱機能)を発揮するために、一部又は全部が露出して配されているが、図5に示すように、この露出した面の少なくとも一部には凹凸構造65Aを設けてもよい。凹凸構造65Aは、金属層65の対象面にエッチング等により、例えば、線状又は曲線状の溝、円形又は四角形の窪みを設けることで、配される。
この凹凸構造65Aを設けることで、金属層65の露出面積が増え、その結果、放熱機能が促進され、陰極層64の発熱による温度上昇、ひいては発光素子の温度上昇が抑制される。
【0044】
金属層65は、実装基板61のうち、陰極層64が配された面側のみならず、図6に示すように、陰極層64が配された面とは反対側の面側まで延ばして配されていてもよい。これにより、金属層65の形成領域が増加すると共に露出面積の増加するので、蓄熱機能と共に放熱機能が促進され、陰極層64の発熱による温度上昇、ひいては発光素子の温度上昇が抑制される。
【0045】
金属層65には、例えば、図7に示すように、放熱部材67(ヒートシンク)を接して配されていてもよい。放熱部材67は、例えば、金属層65を取り囲むように、金属層65の縁部に突出して設けられる。
【0046】
ここで、放熱部材67は、その放熱機能を発揮する点から、金属層65の構成材料と同様なもので構成させることがよく、その熱伝度率も金属層65と同様であることがよい。
放熱部材67により、金属層65と共に、蓄熱機能と共に放熱機能が促進され、陰極層64の発熱による温度上昇、ひいては発光素子の温度上昇が抑制される。
なお、放熱部材67は、配する金属層65と同じ材料で一体的に(連続して)設けてもよいし、配する金属層65と異なる材料で別体として設けてもよい。
【0047】
一方、陽極層62としては、例えば、導電性金属酸化物(例えば、SnO(酸化スズ)、In(酸化インジュウム)、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化亜鉛インジウム))、その金属(Al、Cu)等、周知の材料で構成される。また、陽極層62の厚さは、例えば、100nmとされる。なお、陽極層62の厚さは、これに限られるものではない
【0048】
発光層63は、例えば、発光材料を含んで構成される。発光材料としては、例えば、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。
【0049】
絶縁層66は、周知の絶縁材料を含んで構成され、具体的には、例えば、SiO等で構成されることがよい。
【0050】
結像部70について説明する。
結像部70は、例えば、ロッドレンズ71が複数配列されたレンズアレイで構成されている。レンズアレイとして具体的には、例えば、セルフォックレンズアレイ(SLA:セルフォックは、日本板硝子(株)の登録商標)と呼ばれる屈折率分散型レンズアレイを適用することがよい。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る露光ヘッド34では、発光部60Aを構成する発光素子60Bとして、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の少なくとも1種を含む陰極層64を有する有機電界発光素子を採用している。
【0052】
ここで、電子写真方式の画像形成装置に適用する露光ヘッドは、ディスプレイなどの表示装置などに比べて、必要となる発光輝度が高い。
露光ヘッドの光源(発光部)として有機電界発光素子を採用する場合、発光輝度を高めるには、有機電界発光素子が電流駆動であることから、駆動電流を増加させる必要がある。
そして、駆動電流を増加させると、それに起因する発熱により、有機電界発光素子は温度が上昇し、素子が劣化し易くなる。
【0053】
一方、有機電界発光素子では、電荷注入性を改善するため、仕事関数のマッチングを良くするために、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の少なくとも1種を含む陰極層64を採用した場合、これらの金属が反応性に富み、酸化しやすいことから、陰極層に対して、水分や酸素透過率の低い樹脂などにより被覆した後、ガラス基板によって封止することで、水分や酸素を遮断し、陰極層の酸化を抑制している。
しかしながら、陰極層を樹脂やガラス基板で封止してしまうと、この封止により、放熱が生じ難くなり、益々、駆動電流の増加による発熱で、有機電界発光素子は温度が上昇し、素子が劣化し易くなる。
【0054】
そこで、本実施形態では、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の少なくとも1種を含む陰極層64を有する有機電界発光素子に対して、陰極層64の側面及び発光層63側とは反対側の面を覆って配された金属層65であって、一部又は全部が露出して配された金属層65を配している。
この金属層65により、駆動電流の増加により発熱が生じても、放熱が促進されると考えられることから、有機電界発光素子の温度上昇が抑えられ、素子劣化を抑制する。
【0055】
このため、この有機電界発光素子を発光部60Aを構成する発光素子60Bとして採用した露光ヘッド34は、寿命が向上する。
そして、この露光ヘッド34を備えた画像形成装置(又はカートリッジ)は、長期にわたり感光体30(像保持体)に対する露光が実現される。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を説明する。なお、本発明はこれらの実施例によってのみ限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
実装基板として、長さ50mm×幅10mmのITOパターン電極(陽極層)付きガラス基板を準備した。なお、ITOパターン電極付きガラス基板は予めSiO絶縁膜を形成し、発光部を規定してある。
このITOパターン電極付きガラス基板に、その長手方向に沿って、発光部として20μm×20μmの発光面積400μmの有機電界発光素子を一直線に1024個並置して形成した。1素子間の間隔は20μmとした(L/S=20/20)。
但し、各有機電界発光素子は、ボトムエミッション型となるように形成した。陰極層としてメタルマスクを用いてCaを30nmの陰極層を形成後、Caの形成領域より一回り大きい領域にアルミニウム0.5μmの金属層を形成した。金属層の形成領域は、発光素子面積の約200倍(2mm×50mm)となるようにした。

以上により、発光素子アレイを作製した(ボトムエミッション型OLED[Organic light−emitting diode]プリントヘッドモジュール)。
【0058】
作製した発光素子アレイのガラス基板(実施基板)側に、有機電界発光素子(発光部)とSLAの光入射面との光学距離が結像部の作動距離となるように、当該ガラス基板(実施基板)と離間して、SLA保持部材によりSLAを実装した。
これにより露光ヘッドを作製した。
【0059】
(実施例2)
陰極の膜厚を1.0μmとした以外は実施例1と同様にして、発光素子アレイを作製した。そして、この発光素子アレイを用い、実施例1と同様にして、露光ヘッドを作製した。
【0060】
(実施例3)
金属層の形成面積を発光素子面積の約400倍(4mm×50mm)とした以外は実施例1と同様にして、発光素子アレイを作製した。そして、この発光素子アレイを用い、実施例1と同様にして、露光ヘッドを作製した。
【0061】
(実施例4)
陰極の膜厚を1.0μm、金属層の形成面積を発光素子面積の約400倍(4mm×50mm)とした以外は実施例1と同様にして、発光素子アレイを作製した。そして、この発光素子アレイを用い、実施例1と同様にして、露光ヘッドを作製した。
【0062】
(実施例5)
金属層の材料をAuとした以外は実施例1と同様にして、発光素子アレイを作製した。そして、この発光素子アレイを用い、実施例1と同様にして、露光ヘッドを作製した。
【0063】
(実施例6)
陰極層の材料としてBaを用いた以外は実施例1と同様にして、発光素子アレイを作製した。そして、この発光素子アレイを用い、実施例1と同様にして、露光ヘッドを作製した。
【0064】
(実施例7)
金属層の露出された面の全面に、高さ0.1μm、幅0.1μmの凹部(図5参照)を形成した以外は実施例1と同様にして、発光素子アレイを作製した。そして、この発光素子アレイを用い、実施例1と同様にして、露光ヘッドを作製した。
【0065】
(比較例1)
実装基板として、長さ50mm×幅10mmのITOパターン電極(陽極層)付きガラス基板を準備した。なお、ITOパターン電極(陽極層)付きガラス基板は予めSiO絶縁膜を形成し、発光部を規定してある。
このITOパターン電極付きガラス基板に、その長手方向に沿って、発光部として20μm×20μmの発光面積400μmの有機電界発光素子を一直線に1024個並置して形成した。1素子間の間隔は20μとした(L/S=20/20)。但し、各有機電界発光素子は、ボトムエミッション型となるように形成した。陰極層としてメタルマスクを用いてCaを30nm形成後、連続してAlを0.2μm積層した。
窒素雰囲気中で形成した陰極層を覆うように熱硬化性エポキシ樹脂で封止用ガラスを接着した。
以上により、発光素子アレイを作製した(ボトムエミッション型OLED[Organic light−emitting diode]プリントヘッドモジュール)。
【0066】
そして、作製した発光素子アレイのガラス基板(実施基板)側に、有機電界発光素子(発光部)とSLAの光入射面との光学距離が結像部の作動距離となるように、当該ガラス基板(実施基板)と離間して、SLA保持部材によりSLAを実装した。
これにより露光ヘッドを作製した。
【0067】
(評価)
各例で作製した露光ヘッドについて、次の評価を行った。評価を表1に示す。
【0068】
−寿命−
寿命は次のように評価した。直流電流を印加して、発光輝度が10,000cd/m2を保つようにフィードバックしながら、素子が発光しなくなるまでの時間を計測した
【0069】
【表1】

【0070】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、寿命が向上することがわかる。
また、本実施例のうち、実施例4は、実施例1〜3、5、6に比べ、より寿命が向上することがわかる。本実施例のうち、実施例7は、実施例1に比べ、より寿命が向上することがわかる。
【符号の説明】
【0071】
10 画像形成装置
11 装置筐体
12 記録媒体収容部
14 画像形成部
16 搬送部
18 定着装置
22k、22Y、22M、22C 画像形成ユニット
24 中間転写ベルト
26 一次転写ロール
28 二次転写ロール
30 感光体
32 帯電装置
34 露光ヘッド
36 現像装置
40 除去装置
42 対向ロール
44 駆動ロール
46 支持ロール
50 送出ロール
52 搬送ロール対
54 搬送ベルト
60 発光素子アレイ
60A 発光部
60B 発光素子
61 実装基板
62 陽極層
63 発光層
64 陰極層
65 金属層
66 絶縁層
67 放熱部材
70 結像部
70A 結像部の光入射面
70B 結像部の光出射面
71 ロッドレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配された有機電界発光素子で構成された発光部と、
前記発光部からの発光を光入射面から入射すると共に光出射面から出射して予め定められた位置に結像させる結像部と、
を備え、
前記有機電界発光素子が、陽極層と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の少なくとも1種を含む陰極層と、前記陽極層及び陰極層の間に配された発光層と、前記陰極層の側面及び前記発光層側とは反対側の面を覆って配された金属層であって、一部又は全部が露出して配された金属層と、の積層体で構成されている露光ヘッド。
【請求項2】
前記金属層における露出された面の少なくとも一部が、凹凸構造を有する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の露光ヘッドを備え、
画像形成装置に着脱するカートリッジ。
【請求項4】
潜像を保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する露光ヘッドであって、請求項1又は2に記載の露光ヘッドと、
前記露光ヘッドによって形成された潜像を現像する現像装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−6206(P2012−6206A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143036(P2010−143036)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】