説明

露光装置、露光方法、及び表示用パネル基板の製造方法

【課題】光ビームにより基板にパターンを描画する際、露光量を均一にして、パターンの描画を精度良く行う。
【解決手段】露光パターン解析装置80の光量データメモリ82は、予め、光ビーム照射装置20から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶する。描画制御部71は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給する。露光カウンタ85は、チャック10と光ビーム照射装置20との相対的な位置、及び光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給される描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数える。演算回路87は、予め記憶した光ビームの光量と、光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出する。露光パターン解析装置80は、算出した露光量に基づいて、露光量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等の表示用パネル基板の製造において、フォトレジストが塗布された基板へ光ビームを照射し、光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置、露光方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造は、露光装置を用いて、フォトリソグラフィー技術により基板上にパターンを形成して行われる。露光装置としては、従来、レンズ又は鏡を用いてマスクのパターンを基板上に投影するプロジェクション方式と、マスクと基板との間に微小な間隙(プロキシミティギャップ)を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ方式とがあった。
【0003】
近年、フォトレジストが塗布された基板へ光ビームを照射し、光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置が開発されている。光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを直接描画するため、高価なマスクが不要となる。また、描画データ及び走査のプログラムを変更することにより、様々な種類の表示用パネル基板に対応することができる。この様な露光装置として、例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−332221号公報
【特許文献2】特開2005−353927号公報
【特許文献3】特開2007−219011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ビームにより基板にパターンを描画する際、光ビームの変調には、DMD(Digital Micromirror Device)等の空間的光変調器が用いられる。DMDは、光ビームを反射する複数の微小なミラーを直交する二方向に配列して構成され、駆動回路が描画データに基づいて各ミラーの角度を変更することにより、光源から供給された光ビームを変調する。DMDの各ミラーの動作角度が一定でないと、各ミラーにより反射された光ビームの光量にばらつきが発生する。また、光ビームによる基板の走査は、基板を支持するチャックと光ビームを照射する光ビーム照射装置とを相対的に移動して行われるが、チャックと光ビーム照射装置との相対的な移動速度により、光ビーム照射装置から照射される光ビームの照射回数が異なってくる。そのため、光ビームにより基板に描画されるパターンの露光量のばらつきが複雑に変化し、精度の高い補正が困難であるという問題があった。
【0006】
また、従来は、光ビームによりパターンを描画した基板を検査して、露光装置の性能を評価していたが、実際に基板上にパターンがどの様に形成されたかが不明であるため、不具合が発生したときに原因を調査するが困難であった。
【0007】
本発明の課題は、光ビームにより基板にパターンを描画する際、露光量を均一にして、パターンの描画を精度良く行うことである。また、本発明の課題は、光ビームにより基板に描画されるパターンを解析して、露光条件を改善することである。さらに、本発明の課題は、高品質な表示用パネル基板を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の露光装置は、フォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置と、チャックと光ビーム照射装置とを相対的に移動する移動手段とを備え、移動手段によりチャックと光ビーム照射装置とを相対的に移動し、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出する検出手段と、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給する描画制御手段と、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンを解析する解析装置とを備え、解析装置が、予め、光ビーム照射装置から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶したメモリと、検出手段により検出したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置、及び描画制御手段から光ビーム照射装置の駆動回路へ供給される描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数えるカウンタと、メモリに記憶された光ビームの光量と、カウンタにより数えた光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出する演算回路と、演算回路により算出した露光量に基づいて露光量を補正する補正手段とを有するものである。
【0009】
また、本発明の露光方法は、フォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、チャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを、相対的に移動し、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、予め、光ビーム照射装置から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置、及び光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数え、予め記憶した光ビームの光量と、光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出し、算出した露光量に基づいて露光量を補正するものである。
【0010】
チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置、及び光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数えるので、チャックと光ビーム照射装置との相対的な移動速度が変動しても、光ビームの照射回数が所定の面積の露光領域毎に検出される。そして、予め記憶した光ビームの光量と、光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出するので、光ビームの光量にばらつきがあっても、実際の露光量が所定の面積の露光領域毎に検出される。従って、算出した露光量に基づいて露光量を補正することにより、露光量が均一になり、パターンの描画が精度良く行われる。
【0011】
さらに、本発明の露光装置は、描画制御手段が、光ビーム照射装置の駆動回路へ補正用の描画データを供給し、補正手段が、演算回路により算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定する判定回路と、描画制御手段から光ビーム照射装置の駆動回路へ供給される補正用の描画データの内、判定回路により露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクするマスク回路と有するものである。
【0012】
また、本発明の露光方法は、算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定し、光ビーム照射装置の駆動回路へ補正用の描画データを供給し、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する補正用の描画データの内、露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクして、露光量を補正するものである。
【0013】
算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定し、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する補正用の描画データの内、露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクして、露光量を補正するので、通常の描画データをそのまま補正用の描画データとして使用することができる。従って、通常の描画データを補正用の描画データとして使用して、簡単な処理で露光量の補正が行われる。
【0014】
本発明の表示用パネル基板の製造方法は、上記のいずれかの露光装置又は露光方法を用いて基板の露光を行うものである。上記の露光装置又は露光方法を用いることにより、露光量が均一になり、パターンの描画が精度良く行われるので、高品質な表示用パネル基板が製造される。
【0015】
また、本発明の露光装置は、フォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置と、チャックと光ビーム照射装置とを相対的に移動する移動手段とを備え、移動手段によりチャックと光ビーム照射装置とを相対的に移動し、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出する検出手段と、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給する描画制御手段と、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンを解析する解析装置とを備え、解析装置が、検出手段により検出したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報を記憶する第1のメモリと、描画制御手段から光ビーム照射装置の駆動回路へ供給される描画データを記憶する第2のメモリと、第1のメモリに記憶されたチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶された描画データから、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンの形状を再現する処理装置とを有するものである。
【0016】
また、本発明の露光方法は、フォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、チャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを、相対的に移動し、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報を第1のメモリに記憶し、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データを第2のメモリに記憶し、第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンの形状を再現するものである。
【0017】
チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報を第1のメモリに記憶し、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データを第2のメモリに記憶し、第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンの形状を再現するので、再現したパターンの形状を解析して、露光条件を改善することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明の露光装置は、処理装置が、第1のメモリに記憶されたチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶された描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出するものである。また、本発明の露光方法は、第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出するものである。第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出するので、再現したパターンの露光量を解析して、露光量を制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の露光装置及び露光方法によれば、予め、光ビーム照射装置から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置、及び光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数え、予め記憶した光ビームの光量と、光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出し、算出した露光量に基づいて露光量を補正することにより、露光量を均一にして、パターンの描画を精度良く行うことができる。
【0020】
さらに、本発明の露光装置及び露光方法によれば、算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定し、光ビーム照射装置の駆動回路へ補正用の描画データを供給し、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する補正用の描画データの内、露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクして、露光量を補正することにより、通常の描画データを補正用の描画データとして使用して、簡単な処理で露光量の補正を行うことができる。
【0021】
本発明の表示用パネル基板の製造方法によれば、露光量を均一にして、パターンの描画を精度良く行うことができるので、高品質な表示用パネル基板を製造することができる。
【0022】
また、本発明の露光装置及び露光方法によれば、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報を第1のメモリに記憶し、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データを第2のメモリに記憶し、第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンの形状を再現することにより、再現したパターンの形状を解析して、露光条件を改善することが可能となる。
【0023】
さらに、本発明の露光装置及び露光方法によれば、第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出することにより、再現したパターンの露光量を解析して、露光量を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態による露光装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による露光装置の正面図である。
【図4】光ビーム照射装置の概略構成を示す図である。
【図5】レーザー測長系の動作を説明する図である。
【図6】描画制御部の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態による露光装置の露光パターン解析装置を示す図である。
【図8】図7に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。
【図9】図7に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。
【図10】図7に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。
【図11】図7に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。
【図12】図7に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。
【図13】本発明の他の実施の形態による露光装置の露光パターン解析装置を示す図である。
【図14】図13に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。
【図15】図13に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。
【図16】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図17】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図18】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図19】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図20】液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図21】液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。また、図2は本発明の一実施の形態による露光装置の側面図、図3は本発明の一実施の形態による露光装置の正面図である。露光装置は、ベース3、Xガイド4、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック10、ゲート11、光ビーム照射装置20、リニアスケール31,33、エンコーダ32,34、レーザー測長系、レーザー測長系制御装置40、ステージ駆動回路60、主制御装置70、及び露光パターン解析装置を含んで構成されている。なお、図1では、露光パターン解析装置が省略されている。また、図2及び図3では、レーザー測長系のレーザー光源41、レーザー測長系制御装置40、ステージ駆動回路60、主制御装置70、及び露光パターン解析装置が省略されている。露光装置は、これらの他に、基板1をチャック10へ搬入し、また基板1をチャック10から搬出する基板搬送ロボット、装置内の温度管理を行う温度制御ユニット等を備えている。
【0026】
なお、以下に説明する実施の形態におけるXY方向は例示であって、X方向とY方向とを入れ替えてもよい。
【0027】
図1及び図2において、チャック10は、基板1の受け渡しを行う受け渡し位置にある。受け渡し位置において、図示しない基板搬送ロボットにより基板1がチャック10へ搬入され、また図示しない基板搬送ロボットにより基板1がチャック10から搬出される。チャック10は、基板1の裏面を真空吸着して支持する。基板1の表面には、フォトレジストが塗布されている。
【0028】
基板1の露光を行う露光位置の上空に、ベース3をまたいでゲート11が設けられている。ゲート11には、複数の光ビーム照射装置20が搭載されている。なお、本実施の形態は、8つの光ビーム照射装置20を用いた露光装置の例を示しているが、光ビーム照射装置の数はこれに限らず、本発明は1つ又は2つ以上の光ビーム照射装置を用いた露光装置に適用される。
【0029】
図4は、光ビーム照射装置の概略構成を示す図である。光ビーム照射装置20は、光ファイバー22、レンズ23、ミラー24、DMD(Digital Micromirror Device)25、投影レンズ26、及びDMD駆動回路27を含んで構成されている。光ファイバー22は、レーザー光源ユニット21から発生された紫外光の光ビームを、光ビーム照射装置20内へ導入する。光ファイバー22から射出された光ビームは、レンズ23及びミラー24を介して、DMD25へ照射される。DMD25は、光ビームを反射する複数の微小なミラーを二方向に配列して構成された空間的光変調器であり、各ミラーの角度を変更して光ビームを変調する。DMD25により変調された光ビームは、投影レンズ26を含むヘッド部20aから照射される。DMD駆動回路27は、主制御装置70から供給された描画データに基づいて、DMD25の各ミラーの角度を変更する。
【0030】
図2及び図3において、チャック10は、θステージ8に搭載されており、θステージ8の下にはYステージ7及びXステージ5が設けられている。Xステージ5は、ベース3に設けられたXガイド4に搭載され、Xガイド4に沿ってX方向へ移動する。Yステージ7は、Xステージ5に設けられたYガイド6に搭載され、Yガイド6に沿ってY方向へ移動する。θステージ8は、Yステージ7に搭載され、θ方向へ回転する。Xステージ5、Yステージ7、及びθステージ8には、ボールねじ及びモータや、リニアモータ等の図示しない駆動機構が設けられており、各駆動機構は、図1のステージ駆動回路60により駆動される。
【0031】
θステージ8のθ方向への回転により、チャック10に搭載された基板1は、直交する二辺がX方向及びY方向へ向く様に回転される。Xステージ5のX方向への移動により、チャック10は、受け渡し位置と露光位置との間を移動される。露光位置において、Xステージ5のX方向への移動により、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームが、基板1をX方向へ走査する。また、Yステージ7のY方向への移動により、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームによる基板1の走査領域が、Y方向へ移動される。図1において、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、θステージ8のθ方向へ回転、Xステージ5のX方向への移動、及びYステージ7のY方向への移動を行う。
【0032】
なお、本実施の形態では、Xステージ5によりチャック10をX方向へ移動することによって、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査を行っているが、光ビーム照射装置20を移動することにより、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査を行ってもよい。また、本実施の形態では、Yステージ7によりチャック10をY方向へ移動することによって、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査領域を変更しているが、光ビーム照射装置20を移動することにより、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査領域を変更してもよい。
【0033】
図1及び図2において、ベース3には、X方向へ伸びるリニアスケール31が設置されている。リニアスケール31には、Xステージ5のX方向への移動量を検出するための目盛が付けられている。また、Xステージ5には、Y方向へ伸びるリニアスケール33が設置されている。リニアスケール33には、Yステージ7のY方向への移動量を検出するための目盛が付けられている。
【0034】
図1及び図3において、Xステージ5の一側面には、リニアスケール31に対向して、エンコーダ32が取り付けられている。エンコーダ32は、リニアスケール31の目盛を検出して、パルス信号を主制御装置70へ出力する。また、図1及び図2において、Yステージ7の一側面には、リニアスケール33に対向して、エンコーダ34が取り付けられている。エンコーダ34は、リニアスケール33の目盛を検出して、パルス信号を主制御装置70へ出力する。主制御装置70は、エンコーダ32のパルス信号をカウントして、Xステージ5のX方向への移動量を検出し、エンコーダ34のパルス信号をカウントして、Yステージ7のY方向への移動量を検出する。
【0035】
図5は、レーザー測長系の動作を説明する図である。なお、図5においては、図1に示したゲート11、及び光ビーム照射装置20が省略されている。レーザー測長系は、公知のレーザー干渉式の測長系であって、レーザー光源41、レーザー干渉計42,44、及びバーミラー43,45を含んで構成されている。バーミラー43は、チャック10のY方向へ伸びる一側面に取り付けられている。また、バーミラー45は、チャック10のX方向へ伸びる一側面に取り付けられている。
【0036】
レーザー干渉計42は、レーザー光源41からのレーザー光をバーミラー43へ照射し、バーミラー43により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光源41からのレーザー光とバーミラー43により反射されたレーザー光との干渉を測定する。この測定は、Y方向の2箇所で行う。レーザー測長系制御装置40は、主制御装置70の制御により、レーザー干渉計42の測定結果から、チャック10のX方向の位置及び回転を検出する。
【0037】
一方、レーザー干渉計44は、レーザー光源41からのレーザー光をバーミラー45へ照射し、バーミラー45により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光源41からのレーザー光とバーミラー45により反射されたレーザー光との干渉を測定する。レーザー測長系制御装置40は、主制御装置70の制御により、レーザー干渉計44の測定結果から、チャック10のY方向の位置を検出する。
【0038】
図4において、主制御装置70は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給する描画制御部を有する。図6は、描画制御部の概略構成を示す図である。描画制御部71は、メモリ72,76、バンド幅設定部73、中心点座標決定部74、座標決定部75、及び描画データ作成部77を含んで構成されている。
【0039】
メモリ76には、設計値マップが格納されている。設計値マップには、描画データがXY座標で示されている。描画データ作成部77は、メモリ76に格納された設計値マップから、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成する。メモリ72は、描画データ作成部77が作成した描画データを、そのXY座標をアドレスとして記憶する。
【0040】
バンド幅設定部73は、メモリ72から読み出す描画データのY座標の範囲を決定することにより、光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射される光ビームのY方向のバンド幅を設定する。
【0041】
レーザー測長系制御装置40は、露光位置における基板1の露光を開始する前のチャック10のXY方向の位置を検出する。中心点座標決定部74は、レーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置から、基板1の露光を開始する前のチャック10の中心点のXY座標を決定する。図1において、光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1の走査を行う際、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Xステージ5によりチャック10をX方向へ移動させる。基板1の走査領域を移動する際、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Yステージ7によりチャック10をY方向へ移動させる。図6において、中心点座標決定部74は、エンコーダ32,34からのパルス信号をカウントして、Xステージ5のX方向への移動量及びYステージ7のY方向への移動量を検出し、チャック10の中心点のXY座標を決定する。
【0042】
座標決定部75は、中心点座標決定部74が決定したチャック10の中心点のXY座標に基づき、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データのXY座標を決定する。メモリ72は、座標決定部75が決定したXY座標をアドレスとして入力し、入力したXY座標のアドレスに記憶された描画データを、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ出力する。
【0043】
図7は、本発明の一実施の形態による露光装置の露光パターン解析装置を示す図である。また、図8〜図12は、図7に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。図7において、本実施の形態の露光パターン解析装置80は、補正回路81、光量データメモリ82、読み出し回路84、露光カウンタ85、露光カウントメモリ86、演算回路87、露光量判定回路88、及びマスク回路89を含んで構成されている。
【0044】
光量データメモリ82は、予め、光ビーム照射装置20から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶している。図8は、光量データメモリ82に記憶された光ビームの光量を、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、図中の「1」及び「2」の数字が、光ビームの光量を示している。図7において、光量データメモリ82は、補正回路81へ入力されたレーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置、及びエンコーダ32,34からのパルス信号に基づき、光ビーム照射装置20からの光ビームが照射される露光領域について記憶した光ビームの光量を出力する。
【0045】
読み出し回路84は、主制御装置70の描画制御部71から光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給される描画データを読み出して、露光カウンタ85へ出力する。図9は、描画制御部71から光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給される描画データを、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、図中の灰色で示した部分が、光ビームにより描画されるパターン2を示している。
【0046】
図7において、露光カウンタ85は、レーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置、及びエンコーダ32,34からのパルス信号に基づき、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給される描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数える。図10は、露光カウンタ85により数えた光ビームの照射回数を、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、図中の「6」、「7」、及び「8」の数字が、光ビームの照射回数を示している。図7において、露光カウントメモリ86は、露光カウンタ85により数えた光ビームの照射回数を、所定の面積の露光領域毎に記憶する。
【0047】
演算回路87は、光量データメモリ82から出力された光ビームの光量と、露光カウントメモリ86に記憶された光ビームの照射回数とを乗算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出する。露光量判定回路88は、演算回路87が算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定する。図11は、露光量判定回路88の判定結果を、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、本例では、光ビームの光量(図8)と光ビームの照射回数(図10)とを乗算した露光量が所定値10未満である露光領域に、露光量が所定値に達していない旨の符号「1」が付されている。
【0048】
図7において、描画制御部71は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ補正用の描画データを供給する。この補正用の描画データは、通常の描画データと全く同じものである。マスク回路89は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する補正用の描画データの内、露光量判定回路88により露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクする。光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27は、マスク回路89を介して供給された補正用の描画データに基づき、DMD25を駆動して、補正用の光ビームを基板1へ照射させる。図12は、マスク回路89によりマスクされた描画データを、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、図中の灰色で示した部分が、露光量が補正される領域2’を示している。
【0049】
チャック10の位置を検出し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給し、チャック10の位置、及び光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数えるので、チャック10の移動速度が変動しても、光ビームの照射回数が所定の面積の露光領域毎に検出される。そして、予め記憶した光ビームの光量と、光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出するので、光ビームの光量にばらつきがあっても、実際の露光量が所定の面積の露光領域毎に検出される。従って、算出した露光量に基づいて露光量を補正することにより、露光量が均一になり、パターンの描画が精度良く行われる。
【0050】
さらに、算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する補正用の描画データの内、露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクして、露光量を補正するので、通常の描画データをそのまま補正用の描画データとして使用することができる。従って、通常の描画データを補正用の描画データとして使用して、簡単な処理で露光量の補正が行われる。
【0051】
図13は、本発明の他の実施の形態による露光装置の露光パターン解析装置を示す図である。また、図14〜図15は、図13に示した露光パターン解析装置の動作を説明する図である。図13において、本実施の形態の露光パターン解析装置90は、補正回路91、光量補正データメモリ92、マスク回路93、読み出し回路94、座標情報履歴メモリ95、パターン履歴メモリ96、及びパターン解析回路97を含んで構成されている。
【0052】
光量補正データメモリ92は、予め、露光量を補正するための補正データを、所定の面積の露光領域毎に記憶している。図14は、光量補正データメモリ92に記憶された補正データを、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、図中の符号「1」が、露光量の補正が必要であることを示している。図13において、光量補正データメモリ92は、補正回路91へ入力されたレーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置、及びエンコーダ32,34からのパルス信号に基づき、光ビーム照射装置20からの光ビームが照射される露光領域について記憶した補正データを出力する。
【0053】
描画制御部71は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ補正用の描画データを供給する。この補正用の描画データは、通常の描画データと全く同じものである。マスク回路93は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する補正用の描画データの内、光量補正データメモリ92から出力された補正データの座標以外の座標のデータをマスクする。光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27は、マスク回路93を介して供給された補正用の描画データに基づき、DMD25を駆動して、補正用の光ビームを基板1へ照射させる。
【0054】
予め、露光量を補正するための補正データを記憶し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する補正用の描画データの内、補正データの座標以外の座標のデータをマスクして、露光量を補正するので、通常の描画データをそのまま補正用の描画データとして使用することができる。従って、通常の描画データを補正用の描画データとして使用して、簡単な処理で露光量の補正が行われる。
【0055】
座標情報履歴メモリ95は、レーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置の情報、及びエンコーダ32,34からのパルス信号を記憶する。読み出し回路94は、描画制御部71からDMD駆動回路27へ供給される通常の描画データ、及び描画制御部71からマスク回路93を介してDMD駆動回路27へ供給される補正用の描画データを読み出して、パターン履歴メモリ96へ出力し、パターン履歴メモリ96は、これらの描画データを記憶する。パターン解析回路97は、座標情報履歴メモリ95に記憶されたレーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置の情報、及びエンコーダ32,34からのパルス信号、並びにパターン履歴メモリ96に記憶された描画データから、光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1に描画されるパターンの形状を再現する。
【0056】
図15(a)〜(d)は、パターン履歴メモリ96に記憶された描画データを、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、図中の灰色で示した部分が、光ビーム照射装置20からの光ビームにより露光される領域を示している。光ビーム照射装置20からの光ビームによる描画は、DMD25の各ミラーにより反射された光ビームが通過する領域に対して行われるため、露光される領域は、図15(a)〜(d)に示す様に飛び飛びに現れる。図15(e)は、図15(a)〜(d)に示した描画データから再現したパターンを、所定の面積の各露光領域2aに対応させて模擬的に図示したものであり、図中の灰色で示した部分が、再現されたパターン2を示している。
【0057】
図13において、パターン解析回路97は、再現したパターンの形状を解析して、レーザー光源ユニット21から発生する光ビームの光量、光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1の走査を行う際のXステージ5の移動速度、光ビーム照射装置20からの光ビームによる基板1の走査領域を変更する際のYステージ7の移動量等の露光条件を決定し、決定した露光条件を主制御装置70へ指示する。
【0058】
チャック10の位置を検出し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給し、チャック10の位置の情報を座標情報履歴メモリ95に記憶し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給した描画データをパターン履歴メモリ96に記憶し、座標情報履歴メモリ95に記憶したチャック10の位置の情報、及びパターン履歴メモリ96に記憶した描画データから、光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1に描画されるパターンの形状を再現するので、再現したパターンの形状を解析して、露光条件を改善することが可能となる。
【0059】
さらに、本実施の形態では、パターン解析回路97が、座標情報履歴メモリ95に記憶されたレーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置の情報、及びエンコーダ32,34からのパルス信号、並びにパターン履歴メモリ96に記憶された描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出する。座標情報履歴メモリ95に記憶したチャック10の位置の情報、及びパターン履歴メモリ96に記憶した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出するので、再現したパターンの露光量を解析して、露光量を制御することが可能となる。
【0060】
図16〜図19は、光ビームによる基板の走査を説明する図である。図16〜図19は、8つの光ビーム照射装置20からの8本の光ビームにより、基板1のX方向の走査を4回行って、基板1全体を走査する例を示している。図16〜図19においては、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aが破線で示されている。各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームは、Y方向にバンド幅Wを有し、Xステージ5のX方向への移動によって、基板1を矢印で示す方向へ走査する。
【0061】
図16は、1回目の走査を示し、X方向への1回目の走査により、図16に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。1回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図17は、2回目の走査を示し、X方向への2回目の走査により、図17に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。2回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図18は、3回目の走査を示し、X方向への3回目の走査により、図18に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。3回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図19は、4回目の走査を示し、X方向への4回目の走査により、図19に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われ、基板1全体の走査が終了する。
【0062】
複数の光ビーム照射装置20からの複数の光ビームにより基板1の走査を並行して行うことにより、基板1全体の走査に掛かる時間を短くすることができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0063】
なお、図16〜図19では、基板1のX方向の走査を4回行って、基板1全体を走査する例を示したが、走査の回数はこれに限らず、基板1のX方向の走査を3回以下又は5回以上行って、基板1全体を走査してもよい。
【0064】
図7〜図12に示した実施の形態によれば、予め、光ビーム照射装置20から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶し、チャック10の位置を検出し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給し、チャック10の位置、及び光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数え、予め記憶した光ビームの光量と、光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出し、算出した露光量に基づいて露光量を補正することにより、露光量を均一にして、パターンの描画を精度良く行うことができる。
【0065】
さらに、図7〜図12に示した実施の形態によれば、算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ補正用の描画データを供給し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する補正用の描画データの内、露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクして、露光量を補正することにより、通常の描画データを補正用の描画データとして使用して、簡単な処理で露光量の補正を行うことができる。
【0066】
また、図13〜図15に示した実施の形態によれば、チャック10の位置を検出し、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給し、チャック10の位置の情報を座標情報履歴メモリ95に記憶し、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データをパターン履歴メモリ96に記憶し、座標情報履歴メモリ95に記憶したチャック10の位置の情報、及びパターン履歴メモリ96に記憶した描画データから、光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1に描画されるパターンの形状を再現することにより、再現したパターンの形状を解析して、露光条件を改善することが可能となる。
【0067】
さらに、図13〜図15に示した実施の形態によれば、座標情報履歴メモリ95に記憶したチャック10の位置の情報、及びパターン履歴メモリ96に記憶した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出することにより、再現したパターンの露光量を解析して、露光量を制御することが可能となる。
【0068】
本発明の露光装置又は露光方法を用いて基板の露光を行うことにより、露光量を均一にしてパターンの描画を精度良く行うことができるので、高品質な表示用パネル基板を製造することができる。
【0069】
例えば、図20は、液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。薄膜形成工程(ステップ101)では、スパッタ法やプラズマ化学気相成長(CVD)法等により、基板上に液晶駆動用の透明電極となる導電体膜や絶縁体膜等の薄膜を形成する。レジスト塗布工程(ステップ102)では、ロール塗布法等によりフォトレジストを塗布して、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜上にフォトレジスト膜を形成する。露光工程(ステップ103)では、露光装置を用いて、フォトレジスト膜にパターンを形成する。現像工程(ステップ104)では、シャワー現像法等により現像液をフォトレジスト膜上に供給して、フォトレジスト膜の不要部分を除去する。エッチング工程(ステップ105)では、ウエットエッチングにより、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜の内、フォトレジスト膜でマスクされていない部分を除去する。剥離工程(ステップ106)では、エッチング工程(ステップ105)でのマスクの役目を終えたフォトレジスト膜を、剥離液によって剥離する。これらの各工程の前又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。これらの工程を数回繰り返して、基板上にTFTアレイが形成される。
【0070】
また、図21は、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離等の処理により、基板上にブラックマトリクスを形成する。着色パターン形成工程(ステップ202)では、染色法や顔料分散法等により、基板上に着色パターンを形成する。この工程を、R、G、Bの着色パターンについて繰り返す。保護膜形成工程(ステップ203)では、着色パターンの上に保護膜を形成し、透明電極膜形成工程(ステップ204)では、保護膜の上に透明電極膜を形成する。これらの各工程の前、途中又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。
【0071】
図20に示したTFT基板の製造工程では、露光工程(ステップ103)において、図21に示したカラーフィルタ基板の製造工程では、ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)及び着色パターン形成工程(ステップ202)の露光処理において、本発明の露光装置又は露光方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 基板
2 パターン
3 ベース
4 Xガイド
5 Xステージ
6 Yガイド
7 Yステージ
8 θステージ
10 チャック
11 ゲート
20 光ビーム照射装置
20a ヘッド部
21 レーザー光源ユニット
22 光ファイバー
23 レンズ
24 ミラー
25 DMD(Digital Micromirror Device)
26 投影レンズ
27 DMD駆動回路
31,33 リニアスケール
32,34 エンコーダ
40 レーザー測長系制御装置
41 レーザー光源
42,44 レーザー干渉計
43,45 バーミラー
60 ステージ駆動回路
70 主制御装置
71 描画制御部
72,76 メモリ
73 バンド幅設定部
74 中心点座標決定部
75 座標決定部
77 描画データ作成部
80 露光パターン解析装置
81 補正回路
82 光量データメモリ
84 読み出し回路
85 露光カウンタ
86 露光カウントメモリ
87 演算回路
88 露光量判定回路
89 マスク回路
90 露光パターン解析装置
91 補正回路
92 光量補正データメモリ
93 マスク回路
94 読み出し回路
95 座標情報履歴メモリ
96 パターン履歴メモリ
97 パターン解析回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、
光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置と、
前記チャックと前記光ビーム照射装置とを相対的に移動する移動手段とを備え、
前記移動手段により前記チャックと前記光ビーム照射装置とを相対的に移動し、前記光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、
前記チャックと前記光ビーム照射装置との相対的な位置を検出する検出手段と、
前記光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給する描画制御手段と、
前記光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンを解析する解析装置とを備え、
前記解析装置は、
予め、前記光ビーム照射装置から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶したメモリと、
前記検出手段により検出した前記チャックと前記光ビーム照射装置との相対的な位置、及び前記描画制御手段から前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給される描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数えるカウンタと、
前記メモリに記憶された光ビームの光量と、前記カウンタにより数えた光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出する演算回路と、
前記演算回路により算出した露光量に基づいて露光量を補正する補正手段とを有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記描画制御手段は、前記光ビーム照射装置の駆動回路へ補正用の描画データを供給し、
前記補正手段は、
前記演算回路により算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定する判定回路と、
前記描画制御手段から前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給される補正用の描画データの内、前記判定回路により露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクするマスク回路と有することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
フォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、
チャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを、相対的に移動し、
光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、
予め、光ビーム照射装置から照射される光ビームの光量を、所定の面積の露光領域毎に記憶し、
チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、
光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、
チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置、及び光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に数え、
予め記憶した光ビームの光量と、光ビームの照射回数とから、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出し、
算出した露光量に基づいて露光量を補正することを特徴とする露光方法。
【請求項4】
算出した露光量に基づき、露光量が所定値に達したか否かを所定の面積の露光領域毎に判定し、
光ビーム照射装置の駆動回路へ補正用の描画データを供給し、
光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する補正用の描画データの内、露光量が所定値に達していないと判定した露光領域の座標以外の座標のデータをマスクして、露光量を補正することを特徴とする請求項3に記載の露光方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の露光装置を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の露光方法を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項7】
フォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、
光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置と、
前記チャックと前記光ビーム照射装置とを相対的に移動する移動手段とを備え、
前記移動手段により前記チャックと前記光ビーム照射装置とを相対的に移動し、前記光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、
前記チャックと前記光ビーム照射装置との相対的な位置を検出する検出手段と、
前記光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給する描画制御手段と、
前記光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンを解析する解析装置とを備え、
前記解析装置は、
前記検出手段により検出した前記チャックと前記光ビーム照射装置との相対的な位置の情報を記憶する第1のメモリと、
前記描画制御手段から前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給される描画データを記憶する第2のメモリと、
前記第1のメモリに記憶された前記チャックと前記光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び前記第2のメモリに記憶された描画データから、前記光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンの形状を再現する処理装置とを有することを特徴とする露光装置。
【請求項8】
前記処理装置は、前記第1のメモリに記憶された前記チャックと前記光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び前記第2のメモリに記憶された描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出することを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
フォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、
チャックと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを、相対的に移動し、
光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、
チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置を検出し、
光ビーム照射装置の駆動回路へ描画データを供給し、
チャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報を第1のメモリに記憶し、
光ビーム照射装置の駆動回路へ供給した描画データを第2のメモリに記憶し、
第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板に描画されるパターンの形状を再現することを特徴とする露光方法。
【請求項10】
第1のメモリに記憶したチャックと光ビーム照射装置との相対的な位置の情報、及び第2のメモリに記憶した描画データから、光ビームの照射回数を所定の面積の露光領域毎に積算して、所定の面積の露光領域毎に露光量を算出することを特徴とする請求項9に記載の露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−123383(P2011−123383A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282348(P2009−282348)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】