説明

非接触測定装置及び機上計測システム

【課題】測定ヘッド側から送信されるデータ量を小さくすることができる非接触測定装置などを提供する。
【解決手段】非接触測定装置は、ワーク表面にレーザ光を照射するレーザ発振器11と、レーザ発振器11から照射されワーク表面で反射したレーザ光を受光して2次元画像データを生成するCCDカメラ12と、生成された2次元画像データを基にワーク表面とCCDカメラ12との間の距離を算出する距離算出部23と、算出された距離に係る数値データを無線通信により送信する送受信制御部24及び無線機18とを有する測定ヘッド10であって、工作機械の主軸に対して着脱自在に構成された測定ヘッド10と、測定ヘッド10から送信された距離データを無線通信により受信する受信装置、受信された距離データと工作機械の数値制御装置から得られる位置情報とを基にワークの表面形状を算出するデータ処理部を有する処理装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸に装着された測定ヘッドからレーザ光を被測定対象物の表面に照射して被測定対象物表面の形状測定を行う非接触測定装置、及びこの非接触測定装置を備えた機上計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工の分野では、加工後のワークを工作機械から取り外すことなくワーク表面の形状を測定するといったことが従来から行われている。そして、このような測定に用いられる測定装置として、例えば、特許第3515023号公報に開示されたような非接触測定装置がある。
【0003】
この非接触測定装置は、工具が装着される主軸と、ワークが載置されるテーブルと、前記主軸とテーブルとを直交3軸方向に相対移動させる送り機構部と、前記送り機構部を制御する数値制御装置とを備えた工作機械に設けられるようになっており、前記主軸に装着可能な撮像装置と、前記撮像装置と一体的に設けられる送信機及びモニタに接続される受信機から構成される無線通信装置と、モニタの表示画面に貼り付けられ、十字状の定点表示マークが印字された透明なシート体とを備える。
【0004】
前記撮像装置は、テーブル上のワーク(被測定対象物)を撮像して2次元画像データを生成し、前記送信機は、撮像装置によって生成された2次元画像データを送信し、前記受信機は、送信機から送信された2次元画像データを受信して、受信した2次元画像データを前記モニタの表示画面に拡大表示する。
【0005】
この非接触測定装置では、撮像装置により撮像,生成された2次元画像データをモニタの表示画面に表示しつつ、送り機構部により主軸及びテーブル(撮像装置及びワーク)を相対移動させて、ワークの測定点と定点表示マークの中心点とを一致させ、このときの主軸及びテーブルの直交3軸方向における移動位置を求める。そして、以下同様にして、複数の測定点について、主軸及びテーブルの直交3軸方向における移動位置を求め、このようにして求めた各移動位置を基に、例えば、ワークの面粗度などを算出する。
【0006】
【特許文献1】特許第3515023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の非接触測定装置では、撮像装置により撮像,生成された2次元画像データを送信しているので、送信するデータ量が非常に大きいという問題があった。また、送信されるデータ量が大きくなると、データの送受信に時間がかかって面粗度の測定に長時間かかるという問題も生じる。
【0008】
また、このような問題は、例えば、測定ヘッドからレーザ光を被測定対象物表面に向けて照射して、反射したレーザ光を光検出器により受光し、反射レーザ光の受光位置に係るデータを無線通信でデータ処理装置側に送信して、このデータ処理装置側で被測定対象物の表面形状を算出する場合にも同様に発生する。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、測定ヘッド側から送信されるデータ量を小さくすることができる非接触測定装置、及びこれを備えた機上計測システムの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、
先端に工具が装着される主軸と、ワークが載置されるテーブルと、前記主軸とテーブルとを前記主軸の軸線方向を含む直交3軸方向に沿って相対移動させる送り機構部と、前記送り機構部を制御する数値制御手段とを備えた工作機械に設けられ、前記ワーク表面の形状測定を行う非接触測定装置において、
前記主軸に対して着脱自在に構成された測定ヘッドであって、前記ワーク表面にレーザ光を照射する投光手段と、前記ワーク表面で反射したレーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段の受光データを基に前記ワーク表面と測定ヘッドとの間の距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段によって算出された距離に係る数値データを無線通信により送信する送信手段とを有する測定ヘッドと、
前記測定ヘッドから送信された距離データを無線通信により受信する受信手段と、前記受信手段により受信された距離データと前記数値制御手段から得られる前記主軸及びテーブルの位置情報とを基に、前記ワークの表面形状を算出するデータ処理手段とを有する処理装置とを備えてなることを特徴とする非接触測定装置に係る。
【0011】
この非接触測定装置によれば、工具が装着された主軸と、ワークが載置されたテーブルとが、数値制御手段による制御の下、送り機構部により直交3軸方向に相対移動せしめられてワークが加工されると、前記主軸に工具に代えて測定ヘッドが装着され、加工後におけるワーク(被測定対象物)表面の形状測定が行われる。
【0012】
具体的には、投光手段からワーク表面に向けてレーザ光が照射され、照射されたレーザ光は、ワーク表面で反射して受光手段により受光され、この後、距離算出手段により、受光手段の受光データを基にワーク表面と測定ヘッドとの間の距離が算出され、算出された距離に係る数値データが送信手段によって処理装置側に無線通信により送信される。測定ヘッド側から処理装置側に送信された距離データは、受信手段によって無線通信により受信され、受信された距離データと数値制御手段から得られる主軸及びテーブルの位置情報とを基に、データ処理手段によりワークの表面形状が算出される。
【0013】
尚、算出されるワークの表面形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、ワーク表面のある点における主軸軸線方向の位置、ワークの表面粗さ、ワーク表面の輪郭形状、ワーク表面の傾きや平面度などを挙げることができる。また、測定に当たっては、例えば、ワーク表面のある点に向けてレーザ光が照射されるように測定ヘッド及びワークを所定位置に位置決めしてレーザ光を照射したり、レーザ光を連続的に照射しながら、測定ヘッド及びワークを主軸軸線と直交する平面内で相対移動させるようにしても良い。
【0014】
このように、本発明に係る非接触測定装置によれば、距離算出手段で算出された距離に係る数値データを測定ヘッド側から処理装置側に無線通信で送信しているので、即ち、算出結果に係る数値データを送信しているので、ワーク表面と測定ヘッドとの間の距離を算出するのに必要なデータを測定ヘッド側から処理装置側に送信する場合に比べ、測定ヘッド側から送信するデータ量を小さくすることができる。また、データとして最も軽い数値データを送信しているので、送信データを軽くする上で最適である。また、データの送受信に時間がかからなくなるので、ワーク表面の形状測定を短時間で効率的に実施することができる。
【0015】
また、本発明は、
前記非接触測定装置と、
先端に工具が装着される主軸と、ワークが載置されるテーブルと、前記主軸とテーブルとを前記主軸の軸線方向を含む直交3軸方向に沿って相対移動させる送り機構部と、前記送り機構部を制御する数値制御手段とを備えた工作機械とから構成される機上計測システムであって、
前記工作機械の主軸先端部の近傍位置に設けられる1次側の給電コイルと、前記給電コイルに電圧を印加する電圧印加手段と、前記測定ヘッドに設けられ、前記投光手段,受光手段,距離算出手段及び送信手段に電力をそれぞれ供給する2次側の受電コイルとから構成される非接触給電手段を備え、
前記給電コイル及び受電コイルは、前記測定ヘッドが前記主軸に装着されたときに両者が近接して前記給電コイル側から前記受電コイル側に電力が供給されるように構成されてなることを特徴とする機上計測システムに係る。
【0016】
この機上計測システムによれば、測定ヘッドが主軸に装着されると、給電コイル及び受電コイルが近接して、電圧印加手段により電圧が印加された給電コイル側から受電コイル側に電力が供給され、これにより、測定ヘッドに設けられた投光手段,受光手段,距離算出手段及び送信手段に電力がそれぞれ供給される。このように、測定ヘッドへの電力供給を非接触給電にすることで、電力供給のための電力ケーブルを不要にして作業者の作業性を向上させることができる。また、測定ヘッドに電力供給のためのバッテリを設けているような場合には、バッテリの充電作業や残量管理といった煩わしい作業を行わなければならないが、これらの作業を省くことができる。
【0017】
尚、前記工作機械は、複数の工具が格納される工具マガジンと、前記工具マガジンに格納された工具と前記主軸に装着された工具とを交換する交換機構とからなる工具交換装置を更に備え、前記測定ヘッドは、前記工具マガジンに格納され、前記交換機構により前記主軸に対して着脱されるように構成されていても良い。
【0018】
このようにすれば、工具交換装置により測定ヘッドを主軸に対して自動で着脱することができるので、便利である。また、ワークの加工及び加工後のワーク測定を自動且つ連続的に行うことができ、効率的である。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る非接触測定装置及び機上計測システムによれば、測定ヘッド側から処理装置側に無線通信で送信されるデータ量を小さくすることができ、効率的且つ確実にデータの送受信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について、添付図面に基づき説明する。尚、図1は、本発明の一実施形態に係る機上計測システムの概略構成を示した斜視図であり、図2は、本実施形態に係る測定ヘッドの工作機械取付状態を一部断面で示した断面図である。また、図3は、本実施形態に係る測定ヘッドの概略構成を一部断面で示した断面図であり、図4は、本実施形態に係る測定ヘッドの概略構成を示したブロック図であり、図5は、本実施形態に係るデータ処理装置の概略構成を示したブロック図である。
【0021】
図1乃至図5に示すように、本例の機上計測システム1は、工作機械60と、レーザ光をワークWの表面に向けて照射し、ワークWの表面により反射されたレーザ光を受光してワークWの表面との間の距離を算出し、算出した距離に係るデータを無線通信で送信する測定ヘッド10、及び測定ヘッド10から送信された距離データを無線通信により受信して、受信した距離データなどを基にワークWの表面形状を算出するデータ処理装置40を有する非接触測定装置5と、測定ヘッド10に電力を非接触で供給する非接触給電装置30とを備え、被測定対象物たるワークWの表面の形状測定を行うように構成される。
【0022】
前記工作機械60は、ベッド61と、ベッド61上に配設されたコラム62と、コラム62に支持され、上下方向(Z軸方向)に移動自在となった主軸頭63と、軸線がZ軸と平行且つ軸線中心に回転自在に主軸頭63によって支持され、工具が装着される主軸64と、ベッド61上に水平方向(Y軸方向)に移動自在に配設されたサドル65と、サドル65上にZ軸及びY軸の双方と直交するX軸方向に移動自在に配設され、上面にワークWが載置されるテーブル66と、主軸頭63,サドル65及びテーブル66をZ軸方向,Y軸方向及びX軸方向にそれぞれ移動させるZ軸送り機構部(図示せず),Y軸送り機構部(図示せず)及びX軸送り機構部(図示せず)と、主軸64に装着された工具を新たな工具と交換する工具交換装置67と、各送り機構部及び工具交換装置67の作動を制御する数値制御装置68などから構成される。
【0023】
また、前記主軸64は、先端面に開口したテーパ穴64aを備えており、このテーパ穴64a内には、工具を保持,固定するためのコレット70及びドローバ71などが配設される。コレット70は、その先端部により工具のプルスタッドを把持可能に構成され、ドローバ71は、コレット70に係合して設けられており、これらコレット70及びドローバ71のZ軸方向への移動によって工具の着脱が可能になる。
【0024】
また、前記工具交換装置67は、特に図示はしないが、複数の工具が格納される工具マガジンと、工具マガジンに格納された工具と主軸64に装着された工具とを交換する交換機構とを備えており、この交換機構は、まず、主軸64に装着されている工具を引き抜いた後、新たな工具を主軸64に装着する。
【0025】
前記測定ヘッド10は、ワークWの表面にレーザ光を照射するレーザ発振器11と、レーザ発振器11から照射されワークWの表面で反射したレーザ光を受光して2次元画像データを生成するCCDカメラ12と、レーザ発振器11とワークWとの間に配置され、レーザ発振器11からのレーザ光をワークWの表面に導くプリズム13及び反射鏡14と、CCDカメラ12とワークWとの間に配置され、ワークWの表面で反射したレーザ光をCCDカメラ12の撮像面12a上に結像させる(具体的には、環状像として収束させる)2つの凸レンズ15,16と、CCDカメラ12と凸レンズ16との間に配置された絞り17と、アンテナ18aを有し、データ処理装置40との間でデータの送受信を行うための無線機18と、制御装置19と、レーザ発振器11、CCDカメラ12、プリズム13、反射鏡14、凸レンズ15,16、絞り17、無線機18及び制御装置19などが収容される円筒状の筐体20と、筐体20の上端に固設され、工具の主軸装着部と同形状をした装着部材21とを備え、工作機械60の主軸64に対して着脱自在に構成される。
【0026】
また、測定ヘッド10は、CCDカメラ12によって生成された2次元画像データを基にワークWの表面と測定ヘッド10との間のZ軸方向における距離(ワークWの表面におけるレーザ光の照射点PとCCDカメラ12の撮像面12aとの間の距離)を算出する距離算出部23と、距離算出部23によって算出された距離に係る数値データ(距離データ)をデータ処理装置40に無線機18を介して送信する処理などを行う送受信制御部24とを更に備える。尚、前記制御装置19は、前記距離算出部23及び送受信制御部24などから構成される。
【0027】
前記装着部材21には、プルスタッド21aが形成されており、装着部材21が主軸64のテーパ穴64a内に挿入された際に、このプルスタッド21aがコレット70によって把持されるようになっている。
【0028】
前記CCDカメラ12は、多行多列の2次元に配置された複数の光電変換素子を備え、受光強度に応じて各光電変換素子から出力される電圧信号をデジタル化した後、これを濃淡レベル値に変換して2次元濃淡画像データとして出力する。
【0029】
前記距離算出部23は、CCDカメラ12から出力された2次元濃淡画像データを所定のしきい値で2値化し、この2値化画像を基に反射レーザ光の環状像を抽出して、前記環状像の直径を認識し、この認識した直径から照射点Pと撮像面12aとの間の距離を算出する。
【0030】
尚、この測定ヘッド10は、通常、工具交換装置67の工具マガジン内に格納されており、ワークWの測定を行う際にのみ、交換機構により主軸64に装着されるようになっている。
【0031】
前記非接触給電装置30は、工作機械60側に設けられる1次側の給電コイル31と、給電コイル31に交流電圧を印加する交流電源32と、測定ヘッド10側に設けられ、レーザ発振器11,CCDカメラ12,無線機18,距離算出部23及び送受信制御部24がそれぞれ接続された2次側の受電コイル33とから構成される。
【0032】
前記給電コイル31は、主軸頭63を構成するハウジング63aの先端面であり且つ主軸64の先端の近傍位置に取付部材31aを介して設けられ、前記受電コイル33は、測定ヘッド10の筐体20の上端に取付部材33aを介して設けられており、この取付部材33aは、筐体20の径方向に突出するように形成されてその突出端に受電コイル33が設けられている。そして、これら給電コイル31及び受電コイル33は、測定ヘッド10が主軸64に装着されたときに近接して、一定間隔を隔てて対向するようになっている。また、交流電圧の印加された給電コイル31と受電コイル33とが一定間隔を隔てて対向すると、給電コイル31側に発生した磁束より受電コイル33側に誘導起電力が生じ、これによって、給電コイル31側から受電コイル33側に電力が供給される、即ち、レーザ発振器11,CCDカメラ12,無線機18,距離算出部23及び送受信制御部24に電力が供給される。
【0033】
前記データ処理装置40は、データの画面表示や印字のための出力装置41と、アンテナ42aを有し、測定ヘッド10との間でデータの送受信を行うための無線機42と、測定ヘッド10から送信された距離データ(距離に係る数値データ)を無線機42を介して受信する処理などを行う送受信制御部43と、数値制御装置68から、主軸64及びテーブル66のX軸,Y軸及びZ軸方向における相対移動位置データを取得する位置データ取得部44と、測定ヘッド10から受信された距離データと位置データ取得部44により取得された相対移動位置データとを記憶する距離データ記憶部45と、距離データ記憶部45に格納されたデータを基にワークWの表面形状を算出するデータ処理部46とを備える。
【0034】
前記位置データ取得部44は、ワークWの表面とCCDカメラ12との間の距離が計測されたとき(例えば、レーザ発振器11からレーザ光が照射されたときや、CCDカメラ12のシャッタが切られたときなど)の主軸64及びテーブル66の相対移動位置データを取得し、前記距離データ記憶部45には、図6に示すように、測定ヘッド10から得られた距離データと数値制御部68から得られた相対移動位置データとが関連付けられて格納される。
【0035】
前記データ処理部46は、ワークWの表面形状として、例えば、ワークWの表面のある点におけるZ軸方向の位置、ワークWの表面粗さ、ワークWの表面の輪郭形状、ワークWの表面の傾きや平面度などを算出するように構成されるが、これらに何ら限定されるものではない。
【0036】
以上のように構成された本例の機上計測システム1によれば、工作機械60において、数値制御装置68による制御の下、各送り機構部により、工具が装着された主軸64と、ワークWが載置されたテーブル66とがX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向に相対移動せしめられてワークWが加工されると、以下のようにして、加工後におけるワークWの表面の形状測定が行われる。
【0037】
即ち、まず、数値制御装置68による制御の下、工具交換装置67により、工具マガジン内の測定ヘッド10と主軸64の工具とが交換され、これにより、主軸64に測定ヘッド10が装着される。この後、非接触給電装置30の交流電源32により給電コイル31に交流電圧が印加されて受電コイル33側(レーザ発振器11,CCDカメラ12,無線機18,距離算出部23及び送受信制御部24)に電力が供給される。
【0038】
この後、例えば、ワークWの表面のある点に向けてレーザ光が照射されるように測定ヘッド10及びワークWが送り機構部により所定位置に位置決めされてレーザ光が照射されたり、レーザ光が連続的に照射されながら測定ヘッド10及びワークWが送り機構部により相対移動せしめられる。
【0039】
そして、照射されたレーザ光は、ワークWの表面で反射してCCDカメラ12により受光され、これによって、2次元画像データが生成され、生成された2次元画像データを基に、距離算出部23によりワークWの表面とCCDカメラ12との間の距離が算出される。算出された距離データは、送受信制御部24により、無線機18を介してデータ処理装置40に送信される。
【0040】
送信された距離データは、無線機42を介して送受信制御部43により受信され、また、距離計測時における主軸64及びテーブル66の相対移動位置データが位置データ取得部44により数値制御装置68から取得され、この距離データと相対移動位置データとが距離データ記憶部45に関連付けられて格納される。そして、距離データ記憶部45に格納されたデータを基に、データ処理部46によりワークWの表面形状が算出される。
【0041】
このようにして、ワークWの表面の形状測定が行われ、測定されたデータは、出力装置41から出力される。
【0042】
斯くして、本例の機上計測システム1によれば、CCDカメラ12により生成された2次元画像データを基にワークWの表面とCCDカメラ12との間の距離を算出して、算出した距離に係る数値データを測定ヘッド10側からデータ処理装置40側に無線通信で送信しているので、2次元画像データをそのままデータ処理装置40側に送信する場合に比べ、測定ヘッド10側から送信されるデータ量を小さくすることができる。また、データとして最も軽い数値データを送信しているので、送信データを軽くする上で最適である。また、データの送受信に時間がかからなくなるので、ワークWの表面の形状測定を短時間で効率的に実施することができる。
【0043】
また、測定ヘッド10への電力供給を非接触給電装置30により行っているので、電力供給のための電力ケーブルを不要にして作業者の作業性を向上させることができる。また、測定ヘッド10に電力供給のためのバッテリを設けているような場合には、バッテリの充電作業や残量管理といった煩わしい作業を行わなければならないが、これらの作業を省くことができる。
【0044】
また、工具交換装置67により主軸64に対して測定ヘッド10を着脱するようにしているので、測定ヘッド10の着脱を自動で行うことができ、便利である。また、ワークWの加工及び加工後のワークWの測定を自動且つ連続的に行うことができ、効率的である。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0046】
上例では、測定ヘッド10にレーザ発振器11及びCCDカメラ12などから構成される光学系を採用したが、これに限られるものではなく、測定ヘッド10とワークWの表面との間の距離を算出可能な光学系であれば、どのようなものであっても良い。例えば、レーザ干渉の原理を用いて測定ヘッド10とワークWの表面との間の距離を算出するようにすることもできる。
【0047】
また、3軸制御の工作機械60でワークWを測定したが、ワークWの測定を行う工作機械は、何ら限定されるものではなく、どのような工作機械であっても良い。また、データ処理装置40の機能を、数値制御装置68を含む工作機械の制御装置に設けて、当該工作機械の制御装置とデータ処理装置40とを一体的に構成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る機上計測システムの概略構成を示した斜視図である。
【図2】本実施形態に係る測定ヘッドの工作機械取付状態を一部断面で示した断面図である。
【図3】本実施形態に係る測定ヘッドの概略構成を一部断面で示した断面図である。
【図4】本実施形態に係る測定ヘッドの概略構成を示したブロック図である。
【図5】本実施形態に係るデータ処理装置の概略構成を示したブロック図である。
【図6】本実施形態に係る距離データ記憶部に格納されたデータのデータ構成を示した説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 機上計測システム
5 非接触測定装置
10 測定ヘッド
11 レーザ発振器
12 CCDカメラ
18 無線機
23 距離算出部
24 送受信制御部
30 非接触給電装置
31 給電コイル
32 交流電源
33 受電コイル
40 データ処理装置
42 無線機
43 送受信制御部
44 位置データ取得部
45 距離データ記憶部
46 データ処理部
64 主軸
66 テーブル
67 工具交換装置
68 数値制御部
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に工具が装着される主軸と、ワークが載置されるテーブルと、前記主軸とテーブルとを前記主軸の軸線方向を含む直交3軸方向に沿って相対移動させる送り機構部と、前記送り機構部を制御する数値制御手段とを備えた工作機械に設けられ、前記ワーク表面の形状測定を行う非接触測定装置において、
前記主軸に対して着脱自在に構成された測定ヘッドであって、前記ワーク表面にレーザ光を照射する投光手段と、前記ワーク表面で反射したレーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段の受光データを基に前記ワーク表面と測定ヘッドとの間の距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段によって算出された距離に係る数値データを無線通信により送信する送信手段とを有する測定ヘッドと、
前記測定ヘッドから送信された距離データを無線通信により受信する受信手段と、前記受信手段により受信された距離データと前記数値制御手段から得られる前記主軸及びテーブルの位置情報とを基に、前記ワークの表面形状を算出するデータ処理手段とを有する処理装置とを備えてなることを特徴とする非接触測定装置。
【請求項2】
前記請求項1記載の非接触測定装置と、
先端に工具が装着される主軸と、ワークが載置されるテーブルと、前記主軸とテーブルとを前記主軸の軸線方向を含む直交3軸方向に沿って相対移動させる送り機構部と、前記送り機構部を制御する数値制御手段とを備えた工作機械とから構成される機上計測システムであって、
前記工作機械の主軸先端部の近傍位置に設けられる1次側の給電コイルと、前記給電コイルに電圧を印加する電圧印加手段と、前記測定ヘッドに設けられ、前記投光手段,受光手段,距離算出手段及び送信手段に電力をそれぞれ供給する2次側の受電コイルとから構成される非接触給電手段を備え、
前記給電コイル及び受電コイルは、前記測定ヘッドが前記主軸に装着されたときに両者が近接して前記給電コイル側から前記受電コイル側に電力が供給されるように構成されてなることを特徴とする機上計測システム。
【請求項3】
前記工作機械は、複数の工具が格納される工具マガジンと、前記工具マガジンに格納された工具と前記主軸に装着された工具とを交換する交換機構とからなる工具交換装置を更に備え、
前記測定ヘッドは、前記工具マガジンに格納され、前記交換機構により前記主軸に対して着脱されるように構成されてなることを特徴とする請求項2記載の機上計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−54399(P2010−54399A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220859(P2008−220859)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】