説明

面発光レーザの制御方法、光走査装置の制御方法及び画像形成装置の制御方法

【課題】低コストで、正確な光量制御を行なうことのできる面発光レーザの制御方法を提供する。
【解決手段】面発光レーザ素子110と、面発光レーザから出射されたレーザ光を検出する受光素子120と、面発光レーザからのレーザ光を反射するミラー107と、面発光レーザ素子、受光素子及びミラーが設置されるベース部101と、面発光レーザの光を透過する窓ガラス103を有するベース部101と接合されるキャップ部102と、ミラーの傾斜角度を変化させるミラー機構部106と、を有し、ミラーは、ミラー機構部により、面発光レーザからのレーザ光が窓ガラスより出射される第1の位置と、受光素子に入射する第2の位置と、に可動する面発光レーザモジュールにおける面発光レーザの制御方法において、面発光レーザからのレーザ光が、第2の位置となるミラーにより反射され受光素子に入射した際の出力信号に基づき、面発光レーザの出射光量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザの制御方法、光走査装置の制御方法及び画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)素子は、構造上、低閾値、低消費電力、ウエハ状態における検査が容易であり、2次元アレイ化しやすい等の特徴を有している。これらの特徴から、レーザプリンタ等の画像形成装置や光ディスク等の光記録装置、更には、光通信、画像読取装置、画像表示装置等の光源等において従来の端面発光型レーザに代わるものとされている。
【0003】
しかしながら、VCSELは、端面発光型レーザのように光が出射される面とは反対側の面から光が出射されないため、光が出射される面とは反対側の面から光をモニタし、VCSELの出力を制御することができない。
【0004】
このため、画像形成装置のように、光源の出力を安定化させる必要がある場合には、光が出射される面より出射された光を用いて、光量をモニタしVCSELの出力を制御する方法が開示されている。
【0005】
特許文献1には、2次元VCSELアレイの光量検出方法として、ハーフミラーにより出射された光の一部を分離する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、出射されたレーザ光が通過する光学系内にビームスプリッタを挿入して、出射光の一部を分岐させてモニタ光として検出する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、出射されたレーザ光をコリメートレンズにより平行光とした後に、開口部を有する反射鏡により周辺光束と中心光とに空間分割し、反射鏡の開口部を通過した中心光を画像記録に使用し、反射鏡に反射された周辺光をフォトダイオードで受光して光量のモニタに使用する方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、出射されたレーザ光をコリメートレンズにより平行光とする手前に、開口部を有する反射鏡を配置して周辺光束と中心光とに空間分割し、反射鏡の開口部を通解した中心光をコリメートレンズにより平行光とした後に画像記録に使用し、反射鏡により反射された周辺光をフォトダイオードで受光して光量のモニタを行なう方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献5及び6には、面発光レーザを覆うパッケージの窓に光検出器等を配置して出射されたレーザ光の周辺光を受光し光量モニタする方法が開示されている。
【0010】
また、特許文献7には、光出力の制御を行なうときに、光の出射方向を変えるものとして、光源装置に液体マイクロレンズにより光の出射方向を変える機能をもたせ、通常は出射光をカップリングレンズに入射させるが、光出力の制御を行なう場合には出射光を外部のミラーで折り返して外部の光検出器に入射させて光量検出を行なう方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、これらの方法は、いずれも半導体レーザから出射された光のすべて、または周辺光を利用して光量をモニタするものである。一方、画像形成装置等に用いられる光走査装置では半導体レーザから出射された光をコリメートレンズにより平行光とし、アパーチャにより平行光の中心の狭い領域の光のみを通過させて用いる。半導体レーザから出射される光の発散角は、出射光量等によって変化するため、出射光量全体に対するアパーチャを通過する光の光量も変化する。発散角の変化と出射光量の変化は線型ではないため、検出されたモニタ光量に基づきアパーチャを通過する光の光量を制御することは、制御誤差が大きくなる可能性があり、適切な光量制御を行なうことができない。
【0012】
特許文献8は、このような制御誤差に対応する方法が開示されている。即ち、光ビーム出力装置に流れる電流の値を複数回にわたり変化させ、各電流の値ごとに、光ビーム出力装置から出力される光ビームのスポットの周辺部における光量を表わす周辺光量を取得し、各電流の値について周辺光量とスポットの中心部における光量を表わす中心光量との対応関係が概ね線型となるように周辺光量を補正して、補正された周辺光量に応じて光ビーム出力装置から出力される光ビームの光量を制御するものである。このようにして、制御誤差を低減させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献8に記載されている方法では、光量のモニタを行なう周辺光量の補正回路が大規模なものとなり、面発光レーザモジュールや面発光レーザを有する光源装置が高コストなものとなるといった問題を有していた。
【0014】
よって、本発明は、上記に鑑みなされたものであり、低コストで、正確な光量制御を行なうことのできる面発光レーザの制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、面発光レーザが形成されている面発光レーザ素子と、前記面発光レーザから出射されたレーザ光を検出する受光素子と、前記面発光レーザから出射されたレーザ光を反射するミラーと、前記面発光レーザ素子、前記受光素子及び前記ミラーが設置されるベース部と、前記面発光レーザの光を透過する窓ガラスを有する前記ベース部と接合されるキャップ部と、前記ミラーの傾斜角度を変化させるミラー機構部と、を有し、前記ミラーは、前記ミラー機構部により、前記面発光レーザから出射されたレーザ光が前記窓ガラスより出射される第1の位置と、前記受光素子に入射する第2の位置と、に可動する面発光レーザモジュールにおける面発光レーザの制御方法において、前記面発光レーザから出射したレーザ光が、前記第2の位置となる前記ミラーにより反射され前記受光素子に入射した際の出力信号に基づき、前記面発光レーザにおける出射光量が制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低コストで、正確な光量制御を行なうことのできる面発光レーザの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態における面発光レーザモジュールの説明図
【図2】第1の実施の形態における面発光レーザモジュールの上面図
【図3】第1の実施の形態における面発光レーザの制御方法の説明図
【図4】面発光レーザから出射されたレーザ光のビームプロファイルの模式図
【図5】面発光レーザの出射光量とアパーチャ通過光量との相関図
【図6】面発光レーザの出射光量と受光素子により検出される出力電流との相関図
【図7】受光素子により検出される出力電流とアパーチャ通過光量との相関図
【図8】受光素子により検出される出力電流とアパーチャ通過光量の誤差との相関図
【図9】第2の実施の形態における面発光レーザモジュールの説明図
【図10】第2の実施の形態における面発光レーザモジュールの上面図
【図11】第2の実施の形態におけるミラーアレイの説明図
【図12】第2の実施の形態における他のミラーアレイの説明図
【図13】第2の実施の形態における面発光レーザの制御方法の説明図
【図14】第3の実施の形態における面発光レーザ素子の説明図
【図15】第3の実施の形態における面発光レーザモジュールの説明図(1)
【図16】第3の実施の形態における面発光レーザモジュールの説明図(2)
【図17】第4の実施の形態における面発光レーザモジュールの説明図(1)
【図18】第4の実施の形態における面発光レーザモジュールの説明図(2)
【図19】第5の実施の形態におけるレーザプリンタの構成図
【図20】第5の実施の形態における光走査装置の構成図
【図21】光走査装置の説明図
【図22】第6の実施の形態におけるカラープリンタの構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0019】
〔第1の実施の形態〕
(面発光レーザモジュール)
第1の実施の形態における面発光レーザモジュールについて説明する。図1及び図2に示されるように、本実施の形態における面発光レーザモジュール100は、ベース部101、キャップ部102からなるパッケージ内に面発光レーザ素子110及び受光素子120が設置されている。キャップ部102には、窓ガラス103が設けられており、ベース部101には、面発光レーザ素子110及び受光素子120を設置し支持するための第1の支持部104と、固定ミラー107a、可動ミラー107b及びミラー機構部106を設置し支持するための第2の支持部105が設けられている。本実施の形態における面発光レーザモジュール100では、ベース部101、キャップ部102及び窓ガラス103は、気密封止されている。尚、図1は本実施の形態における面発光レーザモジュール100の内部の側面図であり、図2は上面図である。
【0020】
ミラー機構部106には、固定ミラー107aと可動ミラー107bが設置されており、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光が、固定ミラー107a及び可動ミラー107bに照射される位置に設置されている。具体的には、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光の光軸における光が、可動ミラー107bに照射される位置に設置されている。
【0021】
図1(a)に示すように、固定ミラー107aの表面と可動ミラー107bの表面とが略平行となっている場合には、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光は、固定ミラー107a及び可動ミラー107bにおいて反射され、レーザ光110aとして窓ガラス103を介し出射される。即ち、固定ミラー107aの表面と可動ミラー107bの表面とが略平行となっている場合には、ミラーが一枚である場合と同様であり、面発光レーザ素子110より出射された光は、所定の放射角を維持した状態で、レーザ光110aとして窓ガラス103より出射される。尚、本実施の形態では、この状態における可動ミラー107bの位置を第1の位置と記載する場合がある。
【0022】
本実施の形態における面発光レーザモジュール100では、第1の支持部104は、ベース部101の表面に対し、表面が略垂直となるように形成されており、面発光レーザ素子110及び受光素子120は、第1の支持部104の表面に設置されている。窓ガラス103は、ベース部101の表面と略平行となるように設置されているため、第1の支持部104の表面と窓ガラス103とは略垂直となる。よって、面発光レーザ素子110の表面と窓ガラス103とは略垂直、即ち、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光の光軸中心と窓ガラス103とは略平行となる。固定ミラー107a及び可動ミラー107bは、図1(a)に示す固定ミラー107aが可動ミラー107bと略平行な状態において、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光の光軸の光が略垂直に偏向するように、第2の支持部105に設置され支持されている。即ち、図1(a)に示す状態で、固定ミラー107a及び可動ミラー107bの表面が、ベース部101の表面に対し約45°の角度となるよう固定ミラー107a、可動ミラー107b及びミラー機構部106が第2の支持部105に設置され支持されている。
【0023】
また、図1(b)に示すように、可動ミラー107bはミラー機構部106により可動させることができ、面発光レーザ素子110から可動ミラー107bに照射されたレーザ光を可動ミラー107bにより反射させ受光素子120に入射させることができる。即ち、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光の中心部の光であるレーザ光の光軸及び光軸近傍の光は、可動ミラー107bにおいて反射され、レーザ光110bとして受光素子120に入射する。この際、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光のうち、固定ミラー107aにより反射された光は、窓ガラス103を介し出射される。尚、本実施の形態では、この状態における可動ミラー107bの位置を第2の位置と記載する場合がある。
【0024】
本実施の形態では、固定ミラー107aと可動ミラー107bとを有している場合について説明しているが、固定ミラー107aを設けることなく可動ミラー107bのみを設けた構造のものであってもよい。
【0025】
また、可動ミラー107bを可動するミラー機構部106は、静電力、電磁力、圧電、熱歪み等による力を用いたアクチュエータにより形成されており、更には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によりアクチュエータと可動ミラー107bとを一体に形成してもよい。
【0026】
(光量の制御方法)
次に、図3に基づき本実施の形態における面発光レーザモジュール100の光量制御方法について説明する。図3は、本実施の形態における面発光レーザモジュール100を制御する制御回路を含む光源装置150を示すものである。この光源装置150には、本実施の形態における面発光レーザモジュール100、駆動回路151、制御回路152、不図示の電源回路及び外部とのインターフェース回路等を有している。面発光レーザモジュール100内には、面発光レーザ素子110、受光素子120であるフォトダイオード(Photodiode)の他、ミラー制御回路131が設けられている。面発光レーザ素子110のカソード電極及び受光素子120のアノード電極は、接地電位であるGNDに接続されており、面発光レーザ素子110のアノード電極は、駆動回路151に接続されており、受光素子120のカソード電極は、制御回路152に接続されている。また、駆動回路151及びミラー制御回路131は、制御回路152と接続されており、制御回路152は、外部からの画像形成信号等の入力信号に基づき、これらを制御する。
【0027】
駆動回路151は、制御回路152からのタイミング信号に基づいた時間に、光量設定信号に基づいた電流を面発光レーザ素子110に出力し、面発光レーザ素子110は、駆動回路151から出力される信号に基づいて点灯する。
【0028】
このように、制御回路152により、面発光レーザ素子110の点灯する時間と点灯した際の光量が制御される。例えば、後述する画像形成装置に用いる場合には、制御回路152は、主走査1ラインの時間を一定の比率で画像形成装置における感光体ドラム上に画像形成する時間とそれ以外の調整等の時間に分割し、各々の動作を一定時間の周期で繰り返す。調整等の時間は、更に各種の調整のための時間に分割され、この中には光量設定する時間も含まれている。
【0029】
画像形成する時間においては、制御回路152は、外部からの画像形成信号に基づいて、面発光レーザ素子110を点滅させるタイミング信号を駆動回路151に出力する。この状態においては、可動ミラー107bの表面は固定ミラー107aの表面と略平行であり、面発光レーザ素子110から出射されたレーザ光は、可動ミラー107b及び固定ミラー107aにおいて反射され、窓ガラス103を介し出射される。即ち、図1(a)に示す状態となる。この際、面発光レーザ素子110の光量設定信号は一定に保たれている。
【0030】
光量設定する時間においては、制御回路152は、面発光レーザ素子110を連続して点灯させるタイミング信号を駆動回路151に出力する。この状態においては、可動ミラー107bが可動し、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光の中心部の光が、可動ミラー107bにおいて反射されて受光素子120に入射する。即ち、図1(b)に示す状態となる。受光素子120は、受光素子120に入射したレーザ光により出力電流を出力し、出力された出力電流は、制御回路152において検出される。制御回路152には、予め算出された面発光レーザモジュール100より出射されアパーチャを通過した後のレーザ光の光量と受光素子120の出力電流との相関関係が記憶されている。制御回路152では、検出された受光素子120の出力電流と、制御回路152に記憶されている光量と出力電流との相関関係に基づき、面発光レーザモジュール100より出射されアパーチャを通過した光量が所望の値となるように、駆動回路151を制御する。尚、本願においては、アパーチャとは、後述するように光走査装置等において、面発光レーザモジュール100より出射されたレーザ光が、中心部の所定の範囲の光となるよう制限するものである。即ち、アパーチャは面発光レーザモジュール100より出射されたレーザ光の中心部の所定の範囲の光のみを通過させるものである。
【0031】
これにより、面発光レーザモジュール100から出射されアパーチャを通過した後の光量を一定にすることができる。本実施の形態においては、光量変動の少ないレーザ光の中心部の光をモニタ光として用いることができるため、面発光レーザ素子110の光量の制御を正確に行なうことができる。また、画像形成時において面発光レーザ素子110から出射された光を分岐等することなく、そのまま用いることができ、出射されたレーザ光の光量がモニタ光等により減ることはない。
【0032】
(面発光レーザの光量と受光素子の出力電流との相関関係)
本実施の形態において、制御回路152に記憶されている面発光レーザモジュール100より出射されアパーチャを通過した後の各々の面発光レーザからの光量と、受光素子120の出力電流との相関関係については、以下の方法により得ることができる。
【0033】
最初に、面発光レーザ素子110における使用範囲内の最小出射光量PV1における受光素子120の出力電流IM1と、最大出射光量PV2における受光素子120の出力電流IM2を測定する。
【0034】
次に、面発光レーザ素子110が最小出射光量PV1の場合において、不図示のアパーチャを通過した後のアパーチャ通過光量PA1と、面発光レーザ素子110が最大出射光量PV2の場合において、不図示のアパーチャを通過した後のアパーチャ通過光量PA2を測定する。
【0035】
出力電流IM1及びIM2、アパーチャ通過光量PA1及びPA2より、任意の値のアパーチャ通過光量PAと、この出射光量における受光素子120の出力電流IMとの相関関係は、数1に示す式で表わされる。
【0036】
【数1】

数1に示す式に基づき、出力電流IMを求める式に書き換えると、数2に示す式となる。
【0037】
【数2】

このようにして、アパーチャ通過光量PAと出力電流IMとの相関関係を得ることができる。尚、後述するように、面発光レーザ素子が複数の面発光レーザを有している面発光レーザアレイである場合には、各々の面発光レーザごとに、この相関関係を算出しておく。
【0038】
ところで、面発光レーザ素子110においては、最小出射光量PV1におけるビームプロファイルと最大出射光量PV2におけるビームプロファイルとは異なる。具体的には、図4に示すように、最小出射光量PV1におけるビームプロファイルに対し、最大出射光量PV2におけるビームプロファイルは裾野が広がり発散角が広がっている。このため、出射光量全体に占めるアパーチャを通過するレーザ光の光量の割合も変化するが、面発光レーザ素子110における発散角と出射光量の変化は、図5に示すように線型ではない。尚、図4に示す各々のビームプロファイルは、各々の中心のピークの光量で規格化されている。
【0039】
これに対し、本実施の形態では、面発光レーザ素子110における面発光レーザから出射されるレーザ光のうち、アパーチャを通過する領域を含んだ一部を受光素子120に入射させ、受光素子120の出力電流により、アパーチャを通過するレーザ光の光量を制御するため、アパーチャ通過光量の計算値と測定値の誤差を非常に小さくすることができる。一方、従来のように、面発光レーザから出射されるレーザ光のすべて、または周辺光のみを受光素子に入射させ、受光素子の出力電流によりアパーチャを通過するレーザ光の光量を制御する場合には、発散角の変化と出射光量の変化が線型でないことの影響をそのまま受けるため、アパーチャ通過光量の計算値と測定値に大きな誤差が生じる。
【0040】
一例として、本実施の形態における面発光レーザの出射光量と出力電流との関係と、面発光レーザから出射されるレーザ光の全てを受光素子に入射させた場合における面発光レーザの出射光量と出力電流との関係とを図6に示す。ここで、面発光レーザから出射されるレーザ光の全てを受光素子に入射させた場合における面発光レーザの出射光量がPV1となる受光素子の出力電流をIM1rとし、出射光量がPV2となる受光素子の出力電流をIM2rとする。図6において、実線6aで示される本実施の形態における面発光レーザの出射光量と出力電流との関係、及び破線6bで示される面発光レーザから出射されるレーザ光の全てを受光素子に入射させた場合における面発光レーザの出射光量と出力電流との関係は、ともに線型であり、面発光レーザの出射光量が同じ場合においては、受光素子の出力電流は破線で示されるIM1r及びIM2rの方が大きい。
【0041】
次に、図7に示すように、受光素子の出力電流とアパーチャ通過光量との関係を比較する。破線7raで示される面発光レーザから出射されるレーザ光の全てを受光素子に入射させた場合における受光素子とアパーチャ通過光量との関係は、数2に示す式により算出された破線7rbとの差が大きく誤差が大きいのに対し、実線7aで示される本実施の形態における受光素子とアパーチャ通過光量との関係は、数2に示す式により算出された破線7bとの差は小さく誤差は小さい。即ち、図8に示すように、破線8raで示される面発光レーザから出射されるレーザ光の全てを受光素子に入射させた場合における誤差に対し、実線8aで示される本実施の形態におけるものの誤差の方が小さくなる。よって、本実施の形態においては、アパーチャを通過した光の光量の誤差を大幅に低減することができる。
【0042】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、面発光レーザ素子が、複数の面発光レーザを有しており、1次元面発光レーザアレイ、または、2次元面発光レーザアレイが形成されているものである。
【0043】
(面発光レーザモジュール)
図9及び図10に示されるように、本実施の形態における面発光レーザモジュール200は、ベース部101、キャップ部102からなるパッケージ内に面発光レーザ素子210及び受光素子120が設置されている。キャップ部102には、窓ガラス103が設けられており、ベース部101には、面発光レーザ素子210及び受光素子120を設置し支持するための第1の支持部104とミラーアレイ207及びミラー機構部206を設置し支持するための第2の支持部105が設けられている。本実施の形態における面発光レーザモジュール200では、ベース部101、キャップ部102及び窓ガラス103は、気密封止されている。尚、図9は本実施の形態における面発光レーザモジュール200の内部の側面図であり、図10は上面図である。
【0044】
面発光レーザ素子210には、複数の面発光レーザが1次元に配列されており、1次元面発光レーザアレイを形成している。図10に示す場合では、8個の面発光レーザが1次元に配列されている面発光レーザアレイの場合を示す。ミラーアレイ207は、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザに対応するミラー207b〜207i及び、ミラー207b及び207iの外側に各々ミラー207a及び207jが設けられている。即ち、図10に示す場合には、ミラーアレイ207は、10枚のミラー207a〜207jにより形成されており、ミラー207a及び207jは固定ミラーであり、ミラー207b〜207iは可動ミラーである。
【0045】
ミラー機構部206は、ミラーアレイ207における10枚のミラーのうち可動ミラーである8枚のミラー207b〜207iを各々独立に可動させることができる。尚、ミラーアレイ207は、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザより出射されたレーザ光211a〜211hが、各々の面発光レーザに対応するミラー207b〜207iに照射されるように設置されている。
【0046】
図9(a)に示す場合では、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザより出射されたレーザ光211a〜211hは、ミラーアレイ207における対応する各々にミラー207b〜207iにおいて反射され、レーザ光212aとして窓ガラス103を介し出射される。即ち、この場合には、ミラーが一枚である場合と同様であり、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザより出射された光は、所定の放射角を維持した状態で、レーザ光212aとして窓ガラス103より出射される。尚、本実施の形態では、この状態における可動ミラー207b〜207iの位置を第1の位置と記載する場合がある。
【0047】
本実施の形態における面発光レーザモジュール200では、面発光レーザ素子210及び受光素子120は、第1の支持部104の表面に設置されており、面発光レーザ素子210の表面と窓ガラス103とは略垂直、即ち、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザより出射されたレーザ光の光軸中心と窓ガラス103とは略平行となる。ミラーアレイ207は、図9(a)に示す状態において、面発光レーザ素子110より出射されたレーザ光の光軸における光が略垂直に偏向する位置に設置されている。即ち、ミラーアレイ207の表面が、ベース部101の表面に対し約45°の角度となるようミラーアレイ207及びミラー機構部206が第2の支持部105により支持されている。
【0048】
また、図9(b)に示すように、ミラーアレイ207における8枚のミラー207b〜207iはミラー機構部206により可動させることができ、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザより出射されたレーザ光を各々の面発光レーザに対応するミラー207b〜207iにより反射させ受光素子120に入射させることができる。これにより、面発光レーザ素子110における各々の面発光レーザより出射されたレーザ光の中心部の光、即ち、レーザ光の光軸及び光軸近傍の光は、各々の面発光レーザに対応するミラー207b〜207iにおいて反射され、レーザ光212bとして受光素子120に入射する。尚、本実施の形態では、この状態における可動ミラー207b〜207iの位置を第2の位置と記載する場合がある。
【0049】
より詳細に、ミラーアレイ207について図11に基づき説明する。図11(a)に示すように、ミラーアレイ207におけるミラー207bを図9(b)に示す状態に可動させた場合では、面発光レーザ素子210における面発光レーザ210aより出射されたレーザ光211aは、ミラー207bにおいて反射され受光素子120に入射する。
【0050】
また、図11(b)に示すように、ミラーアレイ207におけるミラー207cを図9(b)に示す状態に可動させた場合では、面発光レーザ素子210における面発光レーザ210bより出射されたレーザ光211bは、ミラー207cにおいて反射され受光素子120に入射する。
【0051】
また、図11(c)に示すように、ミラーアレイ207におけるミラー207iを図9(b)に示す状態に可動させた場合では、面発光レーザ素子210における面発光レーザ210hより出射されたレーザ光211hは、ミラー207iにおいて反射され受光素子120に入射する。
【0052】
他のミラーについても同様である。このようにして、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザに対応するミラーアレイ207におけるミラー207b〜207iを可動させることにより、各々の面は光レーザより出射されたレーザ光の中心部の光を受光素子120に入射させることができる。
【0053】
また、図12に示すように、可動ミラーである8枚のミラー207b〜207iにより、ミラーアレイ217を形成することも可能である。この場合には、ミラーアレイ217におけるミラー207bを可動させることにより、面発光レーザ素子210における面発光レーザ210aより出射されたレーザ光211aは、ミラー207aにおいて反射され受光素子120に入射する。また、ミラーアレイ217におけるミラー207cを可動させることにより、面発光レーザ素子210における面発光レーザ210bより出射されたレーザ光211bは、ミラー207bにおいて反射され受光素子120に入射する。ミラーアレイ217におけるミラー207iを可動させることにより、面発光レーザ素子210における面発光レーザ210hより出射されたレーザ光211hは、ミラー207iにおいて反射され受光素子120に入射する。尚、図12に示すように、ミラーアレイ217は、8枚のミラー207b〜207iの周囲を囲むように、固定ミラーを設けたものであってもよい。
【0054】
また、ミラー207b〜207iを可動するミラー機構部206は、静電力、電磁力、圧電、熱歪み等による力を用いたアクチュエータにより形成されており、更には、MEMSによりアクチュエータと可動ミラー207b〜207iとを一体に形成してもよい。
【0055】
(光量の制御方法)
次に、図13に基づき本実施の形態における面発光レーザモジュール200の光量制御方法について説明する。図13は、本実施の形態における面発光レーザモジュール200を制御する制御回路を含む光源装置250を示すものである。この光源装置250には、本実施の形態における面発光レーザモジュール200、駆動回路251、制御回路252、不図示の電源回路及び外部とのインターフェース回路等を有している。面発光レーザモジュール200内には、面発光レーザ素子210、受光素子120であるフォトダイオードの他、ミラー制御回路231が設けられている。図13に示す場合では、面発光レーザ素子210には、一例として、4つの面発光レーザ210a〜210dが設けられており、この場合について説明する。面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dのカソード電極及び受光素子120のアノード電極は、接地電位であるGNDに接続されており、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dのアノード電極は、駆動回路251に接続されており、受光素子120のカソード電極は、制御回路252に接続されている。また、駆動回路251及びミラー制御回路231は、制御回路252と接続されており、制御回路252は、外部からの画像形成信号等の入力信号に基づき、これらを制御する。
【0056】
駆動回路251は、制御回路252からのタイミング信号に基づいた時間に光量設定信号に基づいた電流を面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dに出力し、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dは、駆動回路251から出力される信号に基づいて各々点灯する。
【0057】
このように、制御回路252により、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dの点灯する時間と点灯した際の光量が制御される。例えば、後述する画像形成装置に用いる場合には、制御回路252は、主走査1ラインの時間を一定の比率で画像形成装置における感光体ドラム上に画像形成する時間と、それ以外の調整等の時間に分割し、各々の動作を一定時間の周期で繰り返す。調整等の時間は、更に各種の調整のための時間に分割され、この中には光量設定する時間も含まれている。
【0058】
画像形成する時間において、制御回路252は外部からの画像形成信号に基づいて、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dを点滅させるタイミング信号を駆動回路251に出力する。この状態においては、ミラーアレイ207における各々のミラーにより、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dから出射されたレーザ光は反射され、窓ガラス103を介し出射される。即ち、図9(a)に示す状態となる。この際、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dの光量設定信号は一定に保たれている。
【0059】
また、光量設定する時間において、制御回路252は面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dを連続して点灯させるタイミング信号を駆動回路251に出力する。この状態においては、光量設定がおこなわれる面発光レーザ210a〜210dのいずれかに対応するミラーアレイ207におけるミラーが可動する。即ち、図9(b)に示す状態となる。この際、ミラーアレイ207において、光量設定が行なわれる面発光レーザに対応するミラー以外のミラーは可動していないため、光量設定が行なわれる面発光レーザ以外のレーザ光の中心部の光がミラーアレイ207におけるミラーにより反射されて受光素子120に入射することはない。
【0060】
このようにして、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dより出射されたレーザ光の中心部の光が、ミラーアレイ207において対応するミラーにより反射されて受光素子120に入射する。受光素子120は、受光素子120に入射したレーザ光により出力電流を出力し、出力された出力電流は、制御回路252において検出される。制御回路252では、予め面発光レーザモジュール200より出射されアパーチャを通過した後の各々の面発光レーザからの光量と受光素子120の出力電流との相関関係が算出されて記憶されている。制御回路252では、検出された受光素子120の出力電流と、制御回路252に記憶されている光量と出力電流との相関関係に基づき、面発光レーザモジュール200より出射されアパーチャを通過した光量が所望の値となるように、駆動回路251を制御する。
【0061】
これにより、面発光レーザモジュール200から出射されアパーチャを通過した後の光量を一定にすることができる。本実施の形態においては、光量変動の少ないレーザ光の中心部の光をモニタ光として用いることができるため、面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dの光量の制御を正確に行なうことができる。また、画像形成時において面発光レーザ素子210における各々の面発光レーザ210a〜210dから出射された光は分岐等されることなく、そのまま用いることができ、出射されたレーザ光の光量がモニタ光等により減ることはない。
【0062】
また、画像形成の時間と光量設定する時間のタイミングについては、例えば、主走査1ラインの画像形成→面発光レーザ210aの光量設定→主走査1ラインの画像形成→面発光レーザ210bの光量設定→主走査1ラインの画像形成→面発光レーザ210cの光量設定→主走査1ラインの画像形成→面発光レーザ210dの光量設定の順に、繰り返し行なうことにより、各々の面発光レーザ210a〜210dにおいて、同じ時間間隔で光量設定を行なうことができる。
【0063】
本実施の形態では、複数の面発光レザーを有する面発光レーザ素子210において、1つの受光素子により光量設定を行なうことができる。
【0064】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0065】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、面発光レーザ素子310は、第1の支持部104に設置され支持されており、ミラーアレイ307が第2の支持部105に設置され支持されている。ミラーアレイ307は、第2の実施の形態におけるミラーアレイ207と同様の構造であって、ミラーの枚数の異なるものである。面発光レーザ素子310には、図14に示すように、面発光レーザが2次元的に配列されており、2次元の面発光レーザアレイが形成されている。具体的には、面発光レーザ310は、面発光レーザ310aa〜310hhを有しており、矢印Aに示す方向が上になるように、即ち、面発光レーザ310aa〜310haが上側になるように設置されている。
【0066】
面発光レーザ310aa〜310ahは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されており、面発光レーザ310ba〜310bhは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されており、面発光レーザ310ca〜310chは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されており、面発光レーザ310da〜310dhは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されており、面発光レーザ310ea〜310ehは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されており、面発光レーザ310fa〜310fhは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されており、面発光レーザ310ga〜310ghは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されており、面発光レーザ310ha〜310hhは、矢印Aに示す方向に略平行に配置されている。
【0067】
本実施の形態では、例えば、図15に示すように、面発光レーザ素子310の面発光レーザ310aa〜310ahにおいて、各々の面発光レーザからミラーアレイ307におけるミラーまでの距離が異なっている。即ち、面発光レーザ310ahからミラーアレイ307におけるミラーまでの距離は短く、面発光レーザ310aaからミラーアレイ307におけるミラーまでの距離は長いため、ミラーにおけるレーザ光の光スポットの幅Vahは短く、ミラーにおける光スポットの幅Vaaは長くなる。よって、Vaa>Vahとなる。
【0068】
図16は、面発光レーザ素子310とミラーアレイ307とを上面より見た図である。面発光レーザ素子310における面発光レーザ310ahよりミラーアレイ307に照射されたレーザ光の光スポット312ahの径は、面発光レーザ310ahとミラーアレイ307の距離が短いため小さく、幅Vahと直交する光スポット312ahの幅Hahは短い。一方、面発光レーザ素子310における面発光レーザ310aaよりミラーアレイ307に照射されたレーザ光の光スポット312aaの径は、面発光レーザ310aaとミラーアレイ307の距離が長いため大きく、幅Vaaと直交する光スポット312aaの幅Haaは長い。即ち、Haa>Hahとなる。
【0069】
このため、本実施の形態では、ミラーアレイ307における光スポットの形状に応じて可動させるミラーを変える。例えば、図16に示されるように、ミラーアレイ307がミラー307a〜307lにより形成されている場合について説明する。この場合、面発光レーザ310ahより出射されたレーザ光に対しては、ミラー307cのみを可動し、ミラー307cにより反射されたレーザ光を受光素子120に入射させる。また、面発光レーザ310aaより出射されたレーザ光に対しては、ミラー307b〜307dを可動し、ミラー307b〜307dにより反射されたレーザ光を受光素子120に入射させる。他の面発光レーザにつても同様の動作をさせる。
【0070】
尚、上記以外の内容については、第2の実施の形態と同様である。
【0071】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、図17及び図18に示すように、ミラーが2次元状に配置されたミラーアレイ407を用いたものである。
【0072】
面発光レーザ素子310における面発光レーザ310ahよりミラーアレイ407に照射されたレーザ光の光スポット312ahは、面発光レーザ310ahとミラーアレイ407の距離が短いため小さく、光スポット312ahにおける相互に直交する幅Vah及び幅Hahは短い。一方、面発光レーザ素子310における面発光レーザ310aaよりミラーアレイ407に照射されたレーザ光の光スポット312aaは、面発光レーザ310aaとミラーアレイ407の距離が長いため大きく、光スポット312aaにおける相互に直交する幅Vaa及び幅Haaは長い。即ち、Vaa>Vah、Haa>Hahとなる。
【0073】
このため、図18に示すように、面発光レーザ310ahより出射されたレーザ光に対しては、光スポット312ahの範囲の略中心にあるミラー407ahを可動し、面発光レーザ310aaより出射されたレーザ光に対しては、光スポット312aaの範囲の略中心にある5枚のミラー407aa1〜407aa5を可動する。即ち、ミラーアレイ407に照射された面発光レーザの光スポットの範囲内に存在しているミラーのみを可動し、可動したミラーにより反射された光を受光素子120に入射させる。
【0074】
尚、上記以外の内容については、第3の実施の形態と同様である。
【0075】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態における面発光レーザモジュールまたは光源装置を用いた画像形成装置であるレーザプリンタ1000である。
【0076】
図19に基づき、本実施の形態におけるレーザプリンタ1000について説明する。本実施の形態におけるレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060等を備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
【0077】
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0078】
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、矢印Xで示す方向に回転するようになっている。
【0079】
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
【0080】
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
【0081】
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、上位装置からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
【0082】
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、このトナーは現像ローラ1032に供給される。
【0083】
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
【0084】
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、この給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。このレジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、この記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
【0085】
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
【0086】
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
【0087】
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
【0088】
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
【0089】
次に、図20に基づき光走査装置1010について説明する。光走査装置1010は、光源ユニット1100、カップリングレンズ1111、アパーチャ1112、シリンドリカルレンズ1113、ポリゴンミラー1114、fθレンズ1115、トロイダルレンズ1116、2つのミラー(1117、1118)、及び上記各部を統括的に制御する不図示の制御装置を備えている。尚、光源ユニット1100は、第1から第4のいずれかの実施の形態における面発光レーザモジュールを含むものである。
【0090】
カップリングレンズ1111は、光源ユニット1100から出射された光ビームを平行光に整形する。アパーチャ1112は、カップリングレンズ1111を介した光ビームのビーム径を規定するもので、光源ユニット1100から出射されたレーザ光に対して狭い範囲の中心光のみを通過させる。アパーチャ1112を通過した光ビームは、更にシリンドリカルレンズ1113に入射する。
【0091】
シリンドリカルレンズ1113は、光源ユニット1100から出力された光を、ミラー1117を介してポリゴンミラー1114の偏向反射面近傍に集光する。
【0092】
ポリゴンミラー1114は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向反射面が形成されている。 そして、不図示の回転機構により、矢印Yに示す方向に一定の角速度で回転されている。
【0093】
従って、光源ユニット1100から出射され、シリンドリカルレンズ1113によってポリゴンミラー1114の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー1114の回転により一定の角速度で偏向される。
【0094】
fθレンズ1115は、ポリゴンミラー1114からの光の入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー1114により一定の角速度で偏向される光の像面を、主走査方向に関して等速移動させる。 トロイダルレンズ1116は、fθレンズ1115からの光をミラー1118を介して、感光体ドラム1030の表面に結像する。
【0095】
トロイダルレンズ1116は、fθレンズ1115を介した光束の光路上に配置されている。そして、このトロイダルレンズ1116を介した光束が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー1114の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
【0096】
ポリゴンミラー1114と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施の形態では、走査光学系は、fθレンズ1115とトロイダルレンズ1116とから構成されている。なお、fθレンズ1115とトロイダルレンズ1116の間の光路上、及びトロイダルレンズ1116と感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されてもよい。
【0097】
本実施の形態におけるレーザプリンタ1000では、第1から第4のいずれかの実施の形態における面発光レーザモジュールを用いているため、照射される光量が安定しており、精密で高精細な印刷することができる。
【0098】
図21に示されるように、面発光レーザ素子がVCSELアレイLAの場合では、各VCSELの中心から副走査方向に対応する方向に垂線を下ろした時の副走査方向に対応する方向における各面発光レーザ素子の位置関係が等間隔(間隔d2とする)となるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で光源が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。例えば、副走査方向に対応した方向に関する面発光レーザ素子のピッチd1が26.5μmであれば、前記間隔d2は2.65μmとなる。そして、光学系の倍率を2倍とすれば、感光体ドラム1030上では副走査方向に5.3μm間隔で書き込みドットを形成することができる。これは、4800dpi(ドット/インチ)に対応している。すなわち、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査方向に対応する方向のVCSELの数を増加したり、前記ピッチd1を狭くして間隔d2を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、光源の点灯のタイミングで容易に制御できる。
【0099】
尚、本実施の形態における説明では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0100】
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であってもよい。
【0101】
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
【0102】
〔第6の実施の形態〕
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態は、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000である。
【0103】
図22に基づき、本実施の形態におけるカラープリンタ2000について説明する。本実施の形態におけるカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
【0104】
各感光体ドラムは、図22において示される矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転順にそれぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
【0105】
光走査装置2010は、第1から第4のいずれかの実施の形態における面発光レーザモジュールを含む光源ユニットを、各々の色毎に有しており、第5の実施の形態において説明した光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、第5の実施の形態におけるレーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
【0106】
よって、本実施の形態におけるカラープリンタ2000では、第1から第4のいずれかの実施の形態における面発光レーザモジュールを有しているため、安定的に高品質の画像を形成することができる。
【0107】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0108】
100 面発光レーザモジュール
101 ベース部
102 キャップ部
103 窓ガラス
104 第1の支持部
105 第2の支持部
106 ミラー機構部
107a 固定ミラー
107b 可動ミラー
110 面発光レーザ素子
120 受光素子
131 ミラー制御回路
150 光源装置
151 駆動回路
152 制御回路
1000 レーザプリンタ(画像形成装置)
1010 光走査装置
2000 カラープリンタ(画像形成装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2004−287085号公報
【特許文献2】特開平8−330661号公報
【特許文献3】特開2004−87816号公報
【特許文献4】特開2007−328334号公報
【特許文献5】特開平6−309685号公報
【特許文献6】特開平10−303513号公報
【特許文献7】特開2006−261494号公報
【特許文献8】特開2007−335540号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光レーザが形成されている面発光レーザ素子と、
前記面発光レーザから出射されたレーザ光を検出する受光素子と、
前記面発光レーザから出射されたレーザ光を反射するミラーと、
前記面発光レーザ素子、前記受光素子及び前記ミラーが設置されるベース部と、
前記面発光レーザの光を透過する窓ガラスを有する前記ベース部と接合されるキャップ部と、
前記ミラーの傾斜角度を変化させるミラー機構部と、
を有し、前記ミラーは、前記ミラー機構部により、前記面発光レーザから出射されたレーザ光が前記窓ガラスより出射される第1の位置と、前記受光素子に入射する第2の位置と、に可動する面発光レーザモジュールにおける面発光レーザの制御方法において、
前記面発光レーザから出射したレーザ光が、前記第2の位置となる前記ミラーにより反射され前記受光素子に入射した際の出力信号に基づき、前記面発光レーザにおける出射光量が制御されることを特徴とする面発光レーザの制御方法。
【請求項2】
前記面発光レーザモジュールより出射されたレーザ光は、アパーチャにより前記レーザ光の中心部の所定の範囲に制限されるものであって、
前記受光素子の出力信号に基づき、前記アパーチャ通過後の光量が所定の値となるよう、前記面発光レーザにおける出射光量が制御されることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザの制御方法。
【請求項3】
前記面発光レーザ素子は複数の面発光レーザを有しており、
前記ミラーは複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の面発光レーザの制御方法。
【請求項4】
前記面発光レーザ素子は1次元の面発光レーザアレイであって、
前記ミラーは前記複数の面発光レーザに対応して複数設けられており、
前記複数のミラーにより1次元のミラーアレイが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の面発光レーザの制御方法。
【請求項5】
前記面発光レーザ素子は2次元の面発光レーザアレイであって、
前記複数のミラーにより1次元のミラーアレイが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の面発光レーザの制御方法。
【請求項6】
前記面発光レーザ素子は2次元の面発光レーザアレイであって、
前記ミラーは前記複数の面発光レーザに対応して複数設けられており、
前記複数のミラーにより2次元のミラーアレイが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の面発光レーザの制御方法。
【請求項7】
前記2次元のミラーアレイに照射された前記面発光レーザの光スポット内におけるミラーを前記第2の位置に可動し、
前記第2の位置となったミラーにより反射されたレーザ光を前記受光素子に入射することを特徴とする請求項6に記載の面発光レーザの制御方法。
【請求項8】
面発光レーザモジュールを有する光源と、
前記光源からの光を偏向する光偏向部と、
前記光偏向部により偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と、
を有する光によって被走査面を走査する光走査装置の制御方法において、
前記光源は、請求項1から7のいずれかに記載の面発光レーザの制御方法により制御されるものであることを特徴とする光走査装置の制御方法。
【請求項9】
像担持体と、
前記像担持体に対して画像情報に応じて変調された光を走査する光走査装置と、
を有する画像形成装置の制御方法において、
前記光走査装置は、請求項8に記載の光走査装置の制御方法により制御されるものであることを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
前記像担持体は複数であって、前記画像情報は、多色のカラー情報であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−58564(P2013−58564A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195393(P2011−195393)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】