説明

風力発電システム、永久磁石の配置構造および電気・力変換装置

【課題】 微風に対しても羽根車の回転が停止せず、効率よく発電することができる風力発電システムを提供する。
【解決手段】 フレームと、そのフレームによって回転自在に支持される羽根車12と、羽根車12に設けた、その回転中心から等距離で配列される複数個の永久磁石31と、フレームに設けた環状に配列されるコイル群32とからなる風力発電システム10。永久磁石31とコイル群32とが近接して相対的に運動することにより、リニアモータと逆の作用でコイル群32が電力を発生する。コイル群32はフレームに設けたリングに取り付け、永久磁石31は羽根車の縦羽根26の下端に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力発電システム、永久磁石の配置構造および電気・力変換装置に関する。さらに詳しくは、リニアモータの原理を発電機して採用した風力発電システムならびにその風力発電システムに好適に採用しうる永久磁石の配置構造および電気・力変換装置に関する。なお、ここにいう「電気・力変換装置」とは、機械的エネルギ力を電気エネルギに変換する発電機能を備えた装置と、電気的エネルギを機械的エネルギに変換するモータ(原動機)機能を備えた装置の両方、ならびに操作によって両方の機能を発揮する装置を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特公平3−10037号公報
【0003】
特許文献1には、羽根車の軸をリングギヤに連結し、そのリングギヤと内接する複数個の遊星ギヤを介して羽根車の軸心と同心状に配置される太陽ギヤを回転させ、その太陽ギヤの軸を発電機に連結した風力発電装置が開示されている。これらのリングギヤ、遊星ギヤ、太陽ギヤは遊星歯車減速機を構成しており、リングギヤに連結される羽根車の回転は、その減速機で増速されて発電機に伝えられる。それにより風力が弱く、羽根車の回転数が少ない場合でも、効率よく発電機を作動させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風力発電装置が利用する風は、自然現象であり、弱風の状態から強風の状態まで、かなり変動が大きい。そのため、風力発電装置にはその変動に対して機敏に対応できることが求められる。従来の風力発電機では、そのような広範囲の風力の変動に対応するため、広範囲の回転数に対応できる性能の発電機が採用されているが、微風から強風まで広く対応できる発電機は実用化されていない。前述の特公平3−10037号公報の風力発電装置は遊星歯車減速機の出力側であるリングギヤに入力し、太陽ギヤ側から出力させることで効率的な増速作用を得ることを意図しているが、微風の状態ではトルクが足らず、一旦止まってしまう。そのため、静止摩擦抵抗を超える強い風が吹き始めるまで、発電することができない。また、周辺部の縦羽根から中心軸まで支持棒などでトルクを伝達する必要があるので、羽根車の重量が重くなる。そのため微風での回転が一層困難である。
【0005】
本発明は、従来の装置では止まってしまうような微風に対しても羽根車の回転が停止せず、効率よく発電することができる風力発電システムを提供することを技術課題としている。さらに本発明はそのような風力発電システムに好適に用いられる電気・力変換装置を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の風力発電システム(請求項1)は、フレームと、そのフレームによって回転自在に支持される羽根車と、その羽根車またはフレームのうち、いずれか一方に羽根車の回転中心から等距離で配列される複数個の界磁用磁石(磁界磁石)と、他方に環状に配列されるコイル群とからなり、前記界磁用磁石とコイル群とが近接して相対的に運動することにより、リニアモータと逆の作用でコイル群が電力を発生するように構成していることを特徴としている。界磁用磁石は永久磁石でもよく、電磁石でもよい。
【0007】
このような風力発電システムにおいては、前記界磁用磁石が羽根車の外周部近辺ないし中間部に環状に配列されており、前記フレームにおけるそれらのコイル群と近接する位置に、リング状の部材が設けられ、そのリング状の部材に前記コイル群が取り付けられているものが好ましい(請求項2)。界磁用磁石は周方向に間隔をあけて設けるのが好ましい。
【0008】
さらに前記コイル群が取りつけられているリング状の部材が、羽車に環状に取りつけられる界磁用磁石を内周側および外周側から挟むように一対で設けられており、内周のコイル群および外周のコイル群が、交流を発生させるように、それぞれ交互にまたは循環的に配列される複数のコイル群を備えており、内周の特定の位相のコイル群と、その位相に対応する位相の外周のコイル群とが周方向にずれて配列されるとともに、内周のコイル群と、そのコイル群と対応する位相のコイル群とが、直列に接続されているものが好ましい(請求項3)。
【0009】
また、前記内周および外周のコイル群が、3相交流を発生させるように、それぞれ循環的に配列される第1コイル群、第2コイル群および第3コイル群を備えており、内周の第1コイル群が外周の第2コイル群または第3コイル群と対向するように互いにずれているものが好ましい(請求項4)。また、前記リング状の部材が、上下方向に重ねられた複数枚の金属からなるコアと、その外周に巻き付けられる導線からなるコイル群と、それらを一体に固める合成樹脂とからなる所定の長さのリング片を複数個、リング状に連結したものであるものが好ましい(請求項5)。
【0010】
さらに前記羽根車の外周部または途中部分とフレームとの間に、羽根車の回転を許しながら羽根車の重量の少なくとも一部を支持する円環状の支持手段が介在されている風力発電システム(請求項6)が好ましい。
【0011】
そのような支持手段は、フレームと羽根車のうち、いずれか一方に設けられる転動体群と、他方に設けられ、転動体群と接触する走行路とから構成することができる(請求項7)。また、前記支持手段は、フレームに設けられる第1の磁石群と、それらの磁石群と互いに反発するように羽根車に設けられる第2の磁石群とから構成することもできる(請求項8)。さらに前記第1磁石群がフレームに対して実質的に連続する環状に配列されており、前記羽根車が放射状に配列される複数枚の羽根を有し、前記第2の磁石群がそれらの羽根を支持するように、放射状に配列されているものが好ましい。
【0012】
さらに本発明の風力発電システムでは、前記フレームないし羽根車が周囲の温度変化で膨張・収縮したときでも、前記フレームと羽根車に設けられる複数個の界磁用磁石とコイル群との隙間を所定の範囲に維持するための間隔調整手段を備えているものが好ましい(請求項10)。
【0013】
また、風力が一時的に弱くなったとき、前記コイル群の一部ないし全部に電流を流し、界磁用磁石とコイル群にリニアモータの作用を生じさせ、それにより風車に回転トルクを与えるように構成しているものが好ましい(請求項11)。
【0014】
前記支持手段は、前記フレームまたは羽根車のうち一方に回転中心を中心とする円環状のガイドと、他方に設けられ、そのガイドに沿って走行するスライダとから構成するのが好ましい(請求項12)。
【0015】
本発明の風力発電システムの第2の態様(請求項13)は、フレームと、そのフレームによって回転自在に支持される羽根車と、その羽根車の回転によって発電する発電機とからなり、前記フレームまたは羽根車のうち一方に回転中心を中心とする円環状のガイドが設けられ、他方にそのガイドに沿って走行するスライダが設けられていることを特徴としている。
【0016】
前記ガイドおよびスライダで羽根車を回転自在に支持している場合は、ガイドおよびスライダをリニアスライドボールベアリングのガイドとスライダによって構成するのが好ましい(請求項10)。前記円環状のガイドが内面および外面に平滑な円筒状のガイド面を有し、前記スライダがそれらのガイド面に沿って転動する、垂直方向の軸周りに回転するガイドローラを備えているものが好ましい(請求項15)。また、羽根車の回転中心は水平方向を向いていてもよい(請求項16)。もちろん鉛直方向を向いていてもよい。
【0017】
本発明の電気・力変換装置の第1の態様(請求項17)は、移動子と、その両側に配置される固定子とを有し、前記移動子の両面に、N極とS極の対で構成した磁石部を、N極とS極、S極とN極とが交互に位置するように移動子の周方向に沿って配置している。このような電気・力変換装置では、隣り合った磁石部を非磁性金属体で結合するのが望ましい(請求項18)。なお、ここにいう「移動子」には、回転するものと、直進状に走行するものの両方が含まれる。
【0018】
本発明の永久磁石の配置構造(請求項19)では、永久磁石の一面を同じ極面に並設すると共に、両永久磁石の間に該永久磁石の厚みより短い磁性体を介在させていることを特徴としている。
【0019】
本発明の電気・力変換装置の第2の態様(請求項20)では、移動子の磁極の両側に固定子を持ち、前記両側の固定子に巻装する固定子コイルを同相間で互いに交差させている。この場合、一方の固定子コイルの相順をu−z−v−x−w−y相とした場合に、他方の固定子コイルの相順をx−w−y−u−z−v相として、これらを対向して配列すると共に、両側の固定子コイルを同相間で互いに交差させるのが望ましい(請求項21)。
【0020】
本発明の風力発電システムの第3の態様(請求項22)は、複数枚の羽根と、それらの羽根を環状に配列して保持する環状の支持部材と、その支持部材と対向して設けられ、前記支持部材を支持するガイド部材と、前記支持部材とガイド部材の一方に設けられる界磁用磁石と、他方に設けられ、前記界磁用磁石と相対的に運動することにより電気を発生するコイルとを備え、羽根の中心部に軸を有しないことを特徴としている。
【0021】
本発明の電気・力変換装置の第3の態様(請求項23)は、移動子と、その移動子と協働して発電作用および(または)モータ作用を奏する固定子と、前記移動子と一緒に移動するように配置される移動側反発磁石と、その移動側反発磁石と反発する固定側反発磁石とを備えていることを特徴としている。このような装置では、前記移動子を中立位置に付勢するように前記移動側反発磁石および固定側反発磁石のうちいずれか一方が他方を挟むように両側に配置されているものが好ましい(請求項24)。さらにこのような装置では、前記移動側反発磁石が移動子を挟んで一対で配置され、前記固定側反発磁石が固定子を挟んで一対で配置されているものが好ましい(請求項25)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の風力発電システム(請求項1)では、羽根車が回転すると、フレームと羽根車にそれぞれ環状に配列した界磁用磁石とコイルとで、いわばリニアモータと逆の作用で発電する。そしてそのような界磁用磁石やコイルは、羽根車の周囲ないし途中の円周に沿って多数配列することができ、相対的な速度はかなり速くなる。さらに風を受ける羽根車の外周部で発電するので、中心部に大きい力を伝達する必要がなく、羽根車を軽量にすることができる。そのため微風でも羽根車が回転しやすく、また、羽根車の回転速度が遅い場合でも、コイル群から充分な発電量を得ることができる。
【0023】
前記界磁用磁石が羽根車の外周部近辺ないし中間部に環状に配列されており、前記フレームにおけるそれらのコイル群と近接する位置に、リング状の部材が設けられ、そのリング状の部材に前記コイル群が取り付けられている風力発電システム(請求項2)においては、電気配線を必要とするコイル群を静止しているフレームに設けているので、構造が簡単になる。さらに摺動する部品、たとえばブラシなどが不要であるので、回転抵抗が少ない。そのため微風でも回転しやすい。また、フレームに設けたリング状の部材でコイル群を支持することができるので、フレーム全体の形状は比較的任意に選択することができる。
【0024】
前記コイル群が取りつけられているリング状の部材が、羽車に環状に取りつけられる界磁用磁石を内周側および外周側から挟むように一対で設けられており、内周のコイル群および外周のコイル群が、交流を発生させるように、それぞれ交互にまたは循環的に配列される複数のコイル群を備えており、内周の特定の位相のコイル群と、その位相に対応する位相の外周のコイル群とが周方向にずれて配列されるとともに、内周のコイル群と、そのコイル群と対応する位相のコイル群とが、直列に接続されてい場合(請求項3)は、外側のコイル群と界磁用磁石の間に生ずる磁力と、内側のコイル群と界磁用磁石の間に生ずる磁力とが自然とバランスする。そのため、界磁用磁石と外側のコイル群との間の隙間、および界磁用磁石と内側のコイル群との間の隙間をそれほど大きくしなくても、内側または外側に一方的に大きい力が加わることがない。
【0025】
その場合、前記内周および外周のコイル群が、3相交流を発生させるように、それぞれ循環的に配列される第1コイル群、第2コイル群および第3コイル群を備えており、内周の第1コイル群が外周の第2コイル群または第3コイル群と対向するように互いにずらしている場合(請求項4)は、羽根車が回転して界磁用磁石が外側のコイル群と内側のコイル群の間を走行するにしたがって、第1コイル群、第2コイル群および第3コイル群から3相交流を取り出すことができる。
【0026】
前記リング状の部材が、上下方向に重ねられた複数枚の金属板からなるコアと、その外周に巻き付けられる導線からなるコイル群と、それらを一体に固める合成樹脂とからなる所定の長さのリング片を複数個、リング状に連結したものである場合(請求項5)は、リング片を小さくすることができるので、製造および組立が容易になる。
【0027】
前記羽根車の外周部または途中部分とフレームとの間に、羽根車の回転を許しながら羽根車の重量の少なくとも一部を支持する円環状の支持手段が介在されている場合(請求項6)は、羽根車の軸と軸受けの抵抗が少なくなる。そのため、微風でも回転しやすく、止まりにくい。
【0028】
前記支持手段が、フレームと羽根車のうち、いずれか一方に設けられる転動体群と、他方に設けられ、転動体群と接触する走行路とからなる場合(請求項7)は、個々の転動体が羽根車の重量を分担し、しかもころがり摩擦となるので、支持部材における回転抵抗が少なくなる。
【0029】
前記支持手段が、フレームに設けられる第1の磁石群と、それらの磁石群と互いに反発するように羽根車に設けられる第2の磁石群とからなる場合(請求項8は、無接触で支持することができるので、支持部材における抵抗が一層少なくなる。その場合、前記第1磁石群がフレームに対して実質的に連続する環状に配列されており、前記羽根車が放射状に配列される複数枚の羽根を有し、前記第2の磁石群がそれらの羽根を支持するように、放射状に配列されている場合(請求項9)は、重量が集中する羽根の部分で第2の磁石群がフレームの第1の磁石群から磁力の反発を受ける。そのため、羽根車が安定して効率よく支持される。
【0030】
前記フレームないし羽根車が周囲の温度変化で膨張・収縮したときでも、前記フレームと羽根車に設けられる複数個の界磁用磁石とコイル群との隙間を所定の範囲に維持するための間隔調整手段を備えている風力発電システム(請求項10)の場合は、界磁用磁石と各コイルの隙間を小さくすることができる。そのため発電効率が向上し、回転数が低い場合でも、発電量が多い。
【0031】
風力が一時的に弱くなったとき、前記コイル群の一部ないし全部に電流を流し、界磁用磁石とコイル群にリニアモータの作用を生じさせ、それにより風車に回転トルクを与えるように構成している風力発電システム(請求項11)は、風が一時的に弱くなっても羽根車を止めずに回転を維持させることができる。そのため、静止摩擦抵抗に抗して回転を開始させる必要がなく、微風であっても効率よく発電をすることができる。
【0032】
前記支持手段が、フレームまたは羽根車のうち一方に回転中心を中心とする円環状のガイドと、他方に設けられ、そのガイドに沿って走行するスライダとから構成する場合(請求項12)は、羽根車の重量を支持するだけでなく、半径方向の力も支持し、ガイドすることができる。そのため、羽根車の中心シャフトの強度および剛性は高くする必要はなく、シャフトや軸受けを省略することもできる。それにより羽根車を一層軽量にすることができる。
【0033】
本発明の風力発電システムの第2の態様(請求項13)は、フレームに対する羽根車の支持を、円環状のガイドとそのガイドに沿って走行するスライダとで行っているので、羽根車の中心軸の強度および剛性は高くする必要はなく、中心社具とや軸受けを省略することもできる。それにより羽根車を軽量に構成することができ、羽根車の大型化にも容易に対応することができる。
【0034】
前記ガイドおよびスライダで羽根車を回転自在に支持しているシステムにおいて、ガイドおよびスライダをリニアスライドボールベアリングのガイドとスライダによって構成する場合(請求項14)は、摺動抵抗が少なく、羽根車の回転がスムーズである。さらに前記円環状のガイドが内面および外面に平滑な円筒状のガイド面を有し、前記スライダがそれらのガイド面に沿って転動する、垂直方向の軸周りに回転するガイドローラを備えている場合(請求項15)は、上下方向の厚さを大きくしなくても、スライダが確実にガイドされる。それにより界磁用磁石とコイル群との隙間を適接に維持しながら安定して回転する。上記構成を、羽根車の回転中心が水平方向を向いているタイプの風車に適用する場合(請求項16)は、風の向きが一定の場合に、効率的に発電することができる。
【0035】
本発明の電気・力変換装置の第1の態様(請求項17)では、移動子の両側の磁極(磁石)を対にして構成しているので、同じ磁気回路上で両側の磁石が動作することになり、移動子の偏芯が生じても、両側の磁石の磁気吸引力がバランスして、移動子全体では、力がゼロになり、更に移動子を移動させる力の発生することは計算上無くなる。また、同じ磁気回路上に磁石を取り付けるので、従来構造の考えでは必要とした隣り合った磁極間の回転子ヨーク部を必要とせずに、移動子の重量低減と移動子の幅(移動方向に対して横方向の幅)を低減できるという効果を奏する。また、隣り合った磁石部を非磁性金属体で結合している場合は(請求項18)、隣の磁極に磁束が漏れることも無くなる。
【0036】
本発明の永久磁石の配置構造(請求項19)では、隣り合った永久磁石の反発力と吸引力を低減でき、そのため、永久磁石の取り付け作業が容易になり、現地での組み立て作業時間を短縮することができる。また、永久磁石間の吸引力が低減するので、発電機の分解点検作業が容易であり、さらに、永久磁石間の反発力対策として、永久磁石を固定する構造物を必要としない効果がある。
【0037】
本発明の電気・力変換装置の第2の態様(請求項20)は、両固定子の磁束分布の差異に伴う誘起電圧の差異を、回転子の磁極対の両側の固定子コイルを交差させることで、両側の固定子コイルに常時流れる循環電流の発生を防ぎ、両側の固定子の発生電圧を同じにして、負荷電流の流れを均等にでき、負荷時の磁束分布を両側の固定子とも同じにすることで、磁気吸引力を低減させることができる。特に、外側の固定子コイルの配列をu−z−v−x−w−yとし、内側の固定子コイルの配列をx−w−y−u−z−vとして、これらのコイルの配列を対向させ、各同相間で固定子コイルを交差させる場合は(請求項21)、発生電圧が均等になり、両側の固定子コイル間での循環電流の発生を抑えることができる。
【0038】
本発明の風力発電システムの第3の態様は、中心部に軸を有しないので、軽量に構成することができ、少ない風で回転することができる。
【0039】
本発明の電気・力変換装置の第3の態様(請求項23)では、移動側反発磁石と固定側反発磁石とが互いに反発し、移動子が一方に付勢される。それにより移動子の移動が安定する。移動子が回転子の場合は、中心位置が安定する。また前記移動子を中立位置に付勢するように前記移動側反発磁石および固定側反発磁石のうちいずれか一方が他方を挟むように両側に配置されている場合(請求項24)は移動子が中立位置に来るように付勢される。すなわち一方に近づくように変位すると、その側の反発磁石同士の反発力が強くなり、元の位置に戻る。したがって移動子は一層安定して移動する。移動子が回転子である場合は安定して回転する。
【0040】
このような電気・力変換装置において、前記移動側反発磁石が移動子を挟んで一対で配置され、前記固定側反発磁石が固定子を挟んで一対で配置されている場合(請求項25)は、固定子の両側で上記の安定化作用が得られるので、左右の傾きが少なくなり、一層安定して移動する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
つぎに図面を参照しながら本発明の風力発電システムの実施の形態を説明する。図1は本発明の風力発電システムの一実施形態を概念的に示す平面図、図2はその風力発電システムの全体を示す斜視図、図3はそのシステムの立断面図、図4は図2の風力発電システムにおけるフレームを示す斜視図、図5は図2の風力発電システムの平面図、図6は図2の風力発電システムにおける羽根車を示す斜視図、図7は図2の風力発電システムの要部立面断面図、図8、図9a〜c、図10および図11はそれぞれ本発明の風力発電システムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図、図12は本発明の風力発電システムのさらに他の実施形態を示す要部斜視図、図13はそのシステムの要部断面図、図14aおよび図14bはそれぞれ図12の風力発電システムの全体を示す縦断面図および平面図、図15aおよび図15bはそれぞれ本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図、図16aおよび図16bはそれぞれ本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す正面図および側面図、図17および図18はそれぞれ本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す斜視図、図19、図20aおよび図20bはそれぞれ本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図、図21は本発明のシステムの他の実施形態を示す要部断面図、図22は図21のXXII-XXII 線断面図、図23および図24はそれぞれ本発明のシステムの回転子および固定子の実施形態を示す斜視図、図25は本発明のシステムの固定子の磁界用コイルの結線状態を示す結線図、図26a〜cおよび図27a〜bはそれぞれ本発明のシステムに関わる磁気浮上構造の他の実施形態を示す断面図である。
【0042】
図28は本発明の電気・力変換装置の第1の態様の一実施形態を従示す断面図、図29は本発明に関わる発電機の磁極と回転子ヨーク部の構造を示す説明図、図30は本発明に関わる両側に固定子を持つ発電機の他の実施形態を示す構造図、図31は本発明に関わる回転子の両側の磁極を従来構造で構成した発電機で軸の偏芯が生じた場合を示す説明図、図32は本発明の永久磁石を使用した回転機のモデルの磁気回路を示す説明図、図33は本発明の回転子の両側の磁石を対にして両側の固定子との間で磁気回路を1つに構成を示す説明図、図34は本発明の磁石を対にした場合の磁気回路のモデル図、図35は本発明の電気・力変換装置の具体的な構成を示す図、図36は本発明の有限要素法による磁気吸引力の計算結果を示すグラフである。
【0043】
図37は本発明の永久磁石の配置構造を備えた磁気浮上装置の一実施形態を示す断面図、図38はその磁気浮上装置の一部を示す説明図、図39は本発明の2つの高性能磁石を近接させた時の流体の磁束分布を示す説明図、図40は本発明の空気中に置かれた高性能磁石の反発力を示す説明図、図41は本発明の磁石の側面に磁性体を取り付けた時の端部の磁束分布を示す説明図、図42は本発明の空気中に置かれた2つの高性能磁石の間に磁性体をサンドイッチした時の吸引力を示す説明図、図43は本発明の磁石の側面に磁性体を取り付けた時の端部の磁束分布を示す説明図、図44は本発明の空気中に置かれた2つの高性能磁石の間に磁性体をサンドイッチした時の吸引力を示す説明図である。
【0044】
図45は本発明の電気・力変換装置の第2の態様の実施形態を示す断面構造図、図46は本発明の回転子の磁石の外側固定子と内側固定子の距離を検討するための説明図、図47は本発明の外側固定子と内側固定子の磁束密度分布を示す図、図48は本発明の回転子磁石の外側固定子と内側固定子の距離を示す説明図、図49は本発明の固定子コイルの配列を示すモデル図、図50は本発明の磁石の位置を磁束密度の大きさを示すモデル図、図51は本発明の外側と内側の固定子コイルを交差した場合の発生電圧の評価を固定子コイルの相順との関係で示す図、図52は本発明の固定子コイルの交差を示す模式図、図53は本発明の固定子コイルの具体的な結線方法を示す図、図54は本発明に関わる羽根車の他の実施形態を示す斜視図、図55は本発明に関わる羽根車のさらに他の実施形態を示す斜視図、図56a、図56bおよび図56cはそれぞれ本発明に関わる発電部のさらに他の実施形態を示す概略平面図、断面図および概略平面図、図57aは本発明に関わる回転子の他の実施形態を示す要部斜視図、図57bはその要部断面図、図57cはその要部平面断面図、図58aおよび図58bはそれぞれ本発明に関わる回転子のさらに他の実施形態を示す要部断面図である。図59a〜cはそれぞれ本発明に関わる回転子のさらに他の実施形態を示す概略平面図、図60は本発明の電気・力変換装置のさらに他の実施形態を示す断面図、図61はその電気・力変換装置を用いた風力発電システムの一実施形態を示す要部断面斜視図、図62は本発明の電気・力変換装置のさらに他の実施形態を示す要部断面図である。
【0045】
始めに図2を参照して風力発電システムの全体を説明する。図2に示す風力発電システム10は、フレーム11と、そのフレーム内に上下2段で設けられる羽根車12とを備えており、羽根車12は、フレーム11に対して鉛直方向の軸心回りに回転自在に設けられている。そして羽根車12の下端部とフレーム11のリング18との間で、リニアモータの作用と逆の作用で発電する発電部(いわばリニアジェネレータ)14を備えている。
【0046】
前記フレーム11は図3および図4に示すように、上下方向に延びる3本の脚15と、それらの脚を円周方向等間隔に連結する連結部材16とを備えている。連結部材16は脚15の上端と、下端からある程度上側の位置と、それらの中間の3段で設けられている。各連結部材16の間のスペースS1、S2には、前記羽根車12が収容される。連結部材16は、放射状に延びる3本のスポーク17と、それらのスポーク17の外側の端部近辺同士をつなぐ前述のリング18とを備えている。さらに各連結部材16のスポーク17の中心部には、羽根車12を回転自在に支持するための軸受け19、20が上下一対で設けられている。
【0047】
前記羽根車12は、図5および図6に示すように、上下方向に延びるシャフト22と、そのシャフトに固定されている上下一対のボス23、24と、各ボスから放射状に延びる5本の横羽根25と、上下の横羽根25の先端に固定される縦羽根26とから構成されている。すなわちこの実施形態では、5枚の縦羽根26と、その倍の10枚の横羽根25を備えている。さらに各縦羽根26の上端同士および下端同士は、それらの内周に取り付けられる補強リング21、21によって互いに連結されており、それにより羽根車12全体の強度を向上させている。ただし補強リング21は設けなくてもよい。横羽根25は、この実施形態ではシャフト22が上から見たときの反時計方向に回転したときに上向きに浮力が働くような断面形状を有する翼型を呈している。なお、回転方向に関して前端が上向きになるように傾いていてもよく、特定の翼型と特定の傾きとを組み合わせてもよい。さらに傾きを調節できるようにしてもよい。また縦羽根26の枚数は、3枚程度でもよく、10枚以上であってもよい。なお、想像線のように、羽根車12の上下のシャフト22同士を連結して上下を貫通する1本のシャフトとすることもできる。
【0048】
前記縦羽根26は横方向からの風を受けるときに、5枚の縦羽根26に生ずる力の合力が上から見たときに反時計方向のモーメントを生ずるような翼型を呈している。縦羽根26も、鉛直方向の軸心回りに傾いていてもよく、翼型と傾きを組み合わせてもよい。さらに傾きを調節するようにしてもよい。
【0049】
図3に示すように、各羽根車12のシャフト22の上端および下端はそれぞれ上側の軸受け19および下側の軸受け20によって回転自在に支持されている。図2のように取り付けられた状態では、羽根車12の重量は基本的に、下側の軸受け20によって支持される。ただし後述するように、車輪や磁気浮上などで支持することもできる。また、回転するに従って、横羽根25が生ずる揚力によっても支持される。
【0050】
図7の実施形態では、各縦羽根26の下端に車輪27が回転自在に取り付けられている。そしてフレーム11のリング18の内側の部分が環状の走行路28となっている。そのため、縦羽根26や横羽根25の重量の全部または一部が車輪27を介してフレーム11で支えられる。そのため、軸受け19、20の負担が少ない。また、横羽根25の撓みが少なくなるので、発電部14の作用が安定する。さらに撓みが少ないため、羽根車12全体を発泡樹脂や繊維強化プラスチックなどの軽量の材料で構成する場合でも、回転が安定する。
【0051】
前記発電部14は、羽根車12の縦羽根26の下端近辺に設けられた永久磁石31からなる界磁用磁石と、フレームのリング18に設けられたコイル群32と、図1に示される制御部33と、蓄電部34とから構成されている。コイル群32は、図7に示すように環状のカバー38によって覆われている。なお、界磁用磁石としては、永久磁石のほか、電磁石を用いることもできる。しかし永久磁石の方が、配線が不要なため、設置工事およびメンテナンスが容易である。ただし大規模な風力発電システムの場合は、電磁石の方が取り扱いやすい利点がある。以下の実施の形態でも同様に永久磁石あるいは電磁石のいずれも界磁用磁石として採用することができる。
【0052】
前記コイル群32は、図1に示すように、3個一組で順に並んだ第1コイル列35、第2コイル列36および第3コイル列37から構成されている。そしてそれぞれのコイル列35、36、37の各コイルの端部は、電力を取り出すための第1送電線41、第2送電線42および第3送電線43に並列で接続されている。ただし直列で接続することもできる。また、各送電線41、42、43は2本としているが、アース線を共通にすることもできる。各送電線41、42、43は、制御部33に導かれ、外部送電線45によって外部に送電できるようにしている。また、制御部33に送電線46によって接続されている蓄電部34は、発電された電力の一部を蓄えておく部位であり、後述するように、発電部14をモータとして利用するときに電力を供給する。なお、コイル群32のコイルの個数は、縦羽根26の枚数で割り切れる数とするのが好ましい。この実施形態では、3つのグループに分けているので、3×5=15の倍数、たとえば15個、30個あるいは45個程度である。ただし60個以上でもよい。
【0053】
コイル群32の各コイルは、ほぼ等間隔で配置されている。そしてそれぞれの縦羽根26の下端外面に設けられる永久磁石31とコイルとの間は、充分接近させて配置しており、永久磁石とコイルとの間隔S3は、たとえば1〜5mm程度である。コイル群32のそれぞれのコイルには、鉄心を入れてもよく、また、入れなくてもよい。
【0054】
上記のように、構成される風力発電システム10においては、風が吹くと、羽根車12が上から見たときの反時計方向(図1の矢印P1)に回転する。そして永久磁石の磁力線がコイル群32のコイルを順に横切っていくので、リニアモータと逆の作用により、コイルに起電力が生じ、両端から電力を取り出すことができる。なお、この実施形態では、3組のコイル列35、36、37で順番に発電するので、3相交流の形で発電される。得られた電力は、送電線41、42、43によって制御部33まで送られる。制御部33では、電力の脈動を平坦にしたり、あるいはきれいなサインカーブを組み合わせた3相交流の状態で外部に送電する。そのとき、一部の電力は蓄電部34に蓄える。
【0055】
上記の風力発電システム10では、永久磁石31が羽根車12の外周近辺に設けられるので、羽根車の慣性が大きくなり、そのため回転の開始時の必要トルクは大きいが、一旦回転すると、止まりにくく、風力が変化しても回転数が変化しにくい。そのため、安定した発電を行うことができる。さらに風を受けて回転力を発生する縦羽根と、発電の反作用で負荷となる発電部32とが、いずれも縦羽根26の外周円の接線方向となる。そのため横羽根25でトルクを伝達する必要がなく、強度も低くてよい。したがって発泡樹脂成形品や、繊維強化プラスチックなどの軽量の材料で羽根車12を構成することができる。そのため回転の抵抗も少なく、発電効率が高い。
【0056】
また、風力が低下して羽根車の回転数が低下したときは、制御部33で蓄電部34と接続する送電線46の結線状態を切り換え、蓄電部34からコイル群32に電力を供給するように構成するのが好ましい。それにより発電部14はリニアモータとして作用し、羽根車12を同じ方向に回転させることができる。そのため、羽根車12が停止せず、遅くても回転を継続する。なお、その間は発電できないので、送電をやめるか、あるいは蓄電部34から送電する。そして再び風が強く吹き始めると、制御部33と蓄電部34の送電線46を元に戻し、発電させるようにする。その場合、羽根が停止していないので、停止状態から回転を始める場合のような静止摩擦力に抗して回転させる必要がない。したがって全体としては電力を無駄にせず、効率のよい発電を行うことができる。なお、上記のモータ作用と発電作用の切り替えは、たとえば回転数を検出センサを設け、所定の回転数の基準値より回転数が減じたか、あるいは増加したかによって自動的に切り換えるようにしてもよい。
【0057】
図1の場合は、すべてのコイルが第1送電線41、第2送電線42、第3送電線のいずれかに常時連結されているが、コイルと各送電線との間に遮断機の接点を介在させると共に、それらのコイル群をたとえば4つのグループに分け、いずれかのグループから電力を取り出すか、遮断機の入り切りで選択できるようにしてもよい。その場合は、風羽根車12の回転の負荷を変化させることができるので、微風状態では少ないコイルで発電させ、風力が回復すると、発電させるコイルの数を増やすように制御することができる。それによって風力の広い範囲に渡って効率のよい発電を行うことができる。なお、稼働させるコイルの増減は、各組1個ずつ増減するほか、2個ずつ、あるいは3個ずつなどとすることもできる。なおシャフト22に関して対称位置にある2〜3台のコイルを一緒に遮断する方が、羽根車12の回転抵抗についてバランスがとれる。また、一部のコイルで発電させると共に、他のコイルでモータとして駆動させることもできる。
【0058】
また図7の実施形態では、縦羽根26の下端に車輪27が取り付けられ、フレーム11の側に走行路28を設けているが、逆にフレーム11のリング18に複数個の車輪27を上向きにして設け、羽根車12にそれらの車輪27と当接するリング状の走行路28を設けることもできる。さらにフレーム11または羽根車12に、橇または橇状のスライダを設け、橇やスライダを走行路に対して摺動させることもできる。
【0059】
図8に示す実施形態では、縦羽根26の下端およびフレーム11のリング18に対し、上下方向で互いに対向するように磁石47とコイル48を設け、互いに磁力で反発するように構成している。それにより磁気浮上により羽根車の重量の全部あるいは一部を負担させることができる。このものは接触せずに重量の支持ができるので、高速回転でも抵抗が少ない。なお、コイル48に代えて永久磁石を設けてもよい。さらに前記磁気浮上の構成は、磁石の吸着力を利用して、羽根車12の上端側とフレーム11との間で行わせることもできる。さらに羽根車の下端側で反発させる方式に加えて、縦羽根26の上端とその上側のフレームのリング18との間に互いに反発する磁石を設けることもできる。その場合は羽根車12が上下に反発されて重量と釣り合う高さで回転する。そのため回転時の安定性が高い。前記コイル48についても、鉄心を入れてもよく、入れなくてもよい。上記の磁気浮上の構成は、羽根車の周囲近辺だけでなく、後述するように横羽根25の途中とフレームのスポークの途中の間に設けることもできる。
【0060】
前記実施形態ではコイル群32をフレーム11の側に固定しているが、図9aに示すように、羽根車12の側に設けてもよい。また、図9bに示すように、コイル群32を半径方向に隙間をあけて一対で設け、その隙間に永久磁石31などの界磁用磁石を通すようにしてもよい。逆に図9cに示すように、永久磁石31などの界磁用磁石を隙間をあけて設け、その隙間にコイル群32を通すようにしてもよい。
【0061】
さらに前記実施形態では、縦羽根26の外側面とリング18の間に発電部14を設けているが、図10aに示すように、縦羽根26の下端とリング18の上面との間に、上下方向で向かい合うように設けることもできる。その場合は車輪27を横羽根25の途中に設け、走行路28はスポーク17の途中に設ければよい。なお、車輪27と走行路28に代えて、磁気浮上のための磁石を両者に設けることもできる。また、図10bに示すように、横羽根25の途中に支持リング52を設け、フレーム18のスポーク17の上面の途中に、前記支持リング52と対向する支持リング53を設け、両方の支持リング52、53の間に永久磁石31などの界磁用磁石とコイル部32とからなる発電部54を設置することもできる。なおこの構成は、図7などの羽根車の外周に設ける発電部32に加えて第2発電部として設けることもできる。
【0062】
前述のように、コイル群32と永久磁石31などの界磁用磁石とは1〜5mm程度の隙間であり、両者は高速で相対的に移動する。そのため、羽根車12が太陽熱などで熱膨張すると、隙間がなくなって干渉するおそれがある。逆に熱収縮で隙間が拡がり、発電効率が低下する場合がある。フレーム11と羽根車12の材料が同じであれば、両者の熱膨張係数が同じであるが、フレーム11に強度が高い鋼材を用い、羽根車に軽量の合成樹脂を用いる場合は、とくに熱膨張係数の差による隙間の増大および減少が大きくなる。図11は、そのような場合に用いられる間隔調整装置の実施の形態を示している。
【0063】
図11に示す間隔調整装置56では、コイル群32をコイルケース57に収容し、そのコイルケースをリング18に対して半径方向に移動自在に設け、コイルケース57をリングに対して半径方向に駆動する電動式または油圧式の駆動機構58を設け、さらに横羽根25の伸縮量を検出するセンサ59を設け、横羽根25の伸縮量に合わせて駆動機構58を制御する制御装置60を設けている。駆動機構58はボールネジとモータで回転するナットとを組み合わせたもの、あるいはリニアモータを用いたものなどが用いられる。なお固定したナットとモータで回転するボールネジとを組み合わせてもよい。
【0064】
伸縮量のセンサ59としては、たとえば横羽根25およびフレーム11のスポーク17にそれぞれ設けた歪みゲージなどが用いられる。その場合は各センサの検出値の差を演算させ、それに基づいて補償すべき値が定められる。また、たとえば横羽根25に発光ダイオードを設け、フレームのスポーク17に光センサを半径方向に多数配列させたものを設けることにより、構成することができる。その場合は、相対的な長さ変化、すなわち熱膨張量の差を直接検出することができる。前記間隔調整装置56は、通常は羽根車12を停止させた状態で作動させる。ただし運転中に自動的に作動させるように構成することも可能である。
【0065】
このような間隔調整装置56を設けた風力発電システムは、太陽熱や気候によって羽根車が熱膨張あるいは熱収縮をしても、コイル群32と永久磁石31などの界磁用磁石の隙間がほとんど変化しない。そのため、両者の隙間を小さくすることができ、効率的な発電を行うことができる。しかも四季の気候あるいは一日の気温が大きく変化する地域にも設置することが可能である。また、フレームと羽根車の材質が異なってもよいので、羽根車に軽量の発砲樹脂や繊維強化プラスチックを用いることができる。
【0066】
上記の風力発電システム10は、従来の風力発電用の風車と同様に、たとえば海岸線に沿って設置したり、山や台地などの小高い地形を利用して、風を多く受けることができるような位置に設置する。ただしビルの屋上など、都会に設けることもできる。そして風が吹くと、縦羽根26が風を受けて羽根車12が図5の反時計方向に回転する。そのとき、横羽根25が断面翼型の場合、あるいは前述の磁気浮上タイプの場合は、上向きの揚力ないし反発力を生ずるので、羽根車12の重量を支えている下側の軸受け20の負担が少ない。それにより回転抵抗が少なく、少ない風であっても、羽根車12が効率よく回転する。羽根車12が回転すると、稼働しているコイルが発電し、その電気は図1の送電線36、37によって消費地に送られ、あるいは蓄電部34に保存される。送電する地域が遠方の場合は、交流発電機を用い、変圧器で変圧してから送電する。ただし直流発電機を用い、インバータなどで一旦交流に変換してから変圧し、送電するようにしてもよい。
【0067】
前記実施の形態では、シャフト22の上端および下端を軸受け19、20で回転自在に支持しているが、逆に軸受け19、20側に軸を設け、それらの軸で上下のボス23、24を回転自在に支持するようにしてもよい。また前記実施形態では、羽根車12の縦羽根26とボス23、24とを横羽根25で連結しているが、単なる棒材などの支持部材を採用することもできる。その場合は横羽根による揚力は生じない。
【0068】
図12および図13に示す風力発電システム62では、フレーム11のリング18の内面に筒状の支持リング63を取り付け、その支持リング63の上に、同心状に2列のコイル群32を対向するように、かつ、隙間をあけて配列している。そしてその隙間に羽根車12に取り付けられる一群の永久磁石64が界磁用磁石として配置されている。界磁用磁石として電磁石を採用することもできる。とくに大型のシステムでは、電磁石の方が好ましい場合がある。前記コイル群32はたとえばブラケット65によって支持リング63に取り付けている。なお、それらのブラケット65は調整ネジ66によって羽根車の半径方向(図13では左右方向)の位置を調節できるようにしている。
【0069】
他方、縦羽根26の下端から外向きに羽根保持アーム67が設けられ、その羽根保持アーム67に取り付けた補強リング68の外周面および内周面にそれぞれ前記磁石64、64が固定されている。補強リング68は湾曲させた角パイプによってリング状に構成しており(図14b参照)、断面コ字状のカバー70の下面にネジ70aなどで固定されている。そのカバー70は、前述のコイル群32を取り付けたブラケット65の外側を覆っており、それにより雨水がコイル群32に侵入しないようにしている。さらに支持リング63の外側のリング18の上面とカバー70の間、およびカバー70の下端とブラケット65との間にも、雨水の侵入を防ぐためのラビリンス72、72が設けられている。
【0070】
補強リング68の上面には、カバー70の天面を挟んで羽根保持部材73が取り付けられている。そしてその羽根保持部材73に前記羽根保持アーム67がその長手方向に摺動自在に嵌合されている。それにより補強リング68や横羽根(図12の符号25)の熱膨張・熱収縮を自由にさせる構造にしている。横羽根に代えて、支持ステーを用いることもできる。羽根保持アーム67や羽根保持部材73には繊維強化樹脂(FRP)などが用いられる。この羽根支持部材73による羽根保持アーム67の摺動自在の保持構造、あるいは前述の調整ネジ66は、いずれも簡易な間隔調整装置を構成している。
【0071】
前記支持リング63の上には、2列のコイル群32のほぼ中心を通るように、環状のガイド74が羽根車と同心状に配置され、ネジなどで支持リング63に固定されている。そしてこのガイド74に複数個のスライダ75が摺動自在に設けられ、そのスライダ75に前記補強リング68の下面が固定されている。この実施形態では、ガイド74およびスライダ75として、いわゆるリニアスライドボールベアリングのガイドとスライダが採用されている。ただしガイド74は横方向に湾曲され、複数本の湾曲したガイド片を組み合わせて環状の軌道を形成するようにしている。
【0072】
リニアスライドボールベアリングは、ボールスプラインなどと同様の構成を有する。すなわちスライダ側には、複数の無端状のボール軌条が設けられており、そのボール軌条に保持されるボール群は「行き行程」でスライダの表面に現れ、「帰り行程」でスライダ内に隠れるようにしている。そして表面に出ているボール群は、ガイド74の係合溝74aなどと噛み合って、スライダ75がガイド74から抜けないように保持し、かつ、スライダ75がガイド74に沿って少ない摩擦抵抗でスムーズに転動するように案内する。このようなリニアスライドベアリングとしては、たとえばTHK社製のLMガイドなどを用いることができる。
【0073】
前記スライダ75の個数はとくに限定されないが、羽根車12の重量を支持する羽根保持部材73の近辺では密に配置し、他の部位では疎に配置するのが好ましい。ただし等ピッチで設けてもよい。このようなガイド構造77を採用することにより、羽根車12はフレーム11に対して自軸回りに回転自在に支持される。したがって図14aおよび図14bに示すように、羽根車12の中心部にシャフト(図3の符号22参照)や軸受けを設ける必要はない。また、縦羽根26が受けた風による回転トルクは、横羽根を経由せずに羽根保持アーム67、羽根保持部材73および補強リング68を経由して、コイル群32と永久磁石64の相対運動に伝えられ、その部位で発電時に生ずる抵抗やリニアガイドによる摩擦抵抗などに抗して羽根車12を回転させることができる。それにより、リニアモータと逆の原理で発電させることができる。
【0074】
前記実施形態では横羽根やシャフトを備えていないが、図14aおよび図14bに想像線で示すように、横羽根25を設け、それらの中心に設けたボス24やシャフト22で羽根車12を支持することもできる。このような横羽根25を設ける場合は、図14bに想像線で示すように、横羽根25の途中に補強リング68および支持リングを設け、それらの補強リング68に取り付けたスライダと支持リングに設けたガイドとで羽根車12を回転自在に支持することもできる。その場合も永久磁石を補強リング68に取り付け、支持リングにコイル群を取り付けることにより、リニアモータと逆の原理で発電させることができる。
【0075】
また、図15a、図15bに示すように、縦羽根26の縦方向の中間位置に補強リング68を取り付け、前フレーム11の対応する部位に支持リング63を設けることもできる。図15aのシステムでは、補強リング68にスライダを横向きに取り付け、支持リング63の内面側にスライダを案内するガイド74を取り付けている。また、支持リング63の内面側にコイルを設け、補強リング68の上下の面に永久磁石を取り付けている。他方、図15bのシステムでは、支持リング63の上方に補強リング68を配置し、図13の場合と同様に、スライダ、ガイド、コイル、永久磁石を配置している。このようなシステムでは、縦長の羽根車であっても安定して保持することができる。
【0076】
前記実施形態では、羽根車は鉛直方向に延びる回転中心まわりに回転させているが、図16a、図16bに示すように、回転中心Ctが水平方向に延びるように羽根車12を保持することもできる。このものはリング18、脚15およびスポーク17などからなるフレーム11の構成が異なるだけで、羽根車12およびその支持構造は図3などの風力発電システムと実質的に同じである。このような横向きタイプの風車は、羽根車を回転させる風の向きが制限されるので、風の方向が一定の土地に設置するのが好ましい。また、軸方向に複数個設けることが容易であるので、大規模な発電設備に適する。
【0077】
図17は横向きタイプの風車を備え、フレーム11に設けたリング18と羽根車12に設けた補強リング63の間にスライドガイドを介在させ、中心のシャフトや横羽根を省略した場合を示している。このようなシステムでは、図13の場合と同様のガイドおよびスライダからなるガイド構造77を採用するのが好ましい。
【0078】
図18の横向きタイプの風力発電システムは、複数枚のプロペラ状の羽根78を放射状に設けた羽根車12を採用している。このものも羽根車12に設けた補強リング68と、フレーム11に設けた支持リング63との間に前述のようなガイド構造を介在させることにより、羽根車12をフレーム11によって回転自在に支持することができる。なお、想像線で示すように、羽根車12の中心に設けたボス23をシャフト22で回転自在に支持することもできる。また羽根車12の中心に設けたシャフトをフレーム11に設けた軸受けで回転自在に支持することもできる。それらの場合も、補強リング68と支持リング63の間に介在させるコイル群と、それに対向する永久磁石などの界磁用磁石との組み合わせで、リニアモータと逆の原理で発電させることができる。
【0079】
図19は磁気浮上方式によるガイド構造80の実施形態を示している。このガイド構造80では、磁石47とくに永久磁石を、電磁石(コイル48)の外側に設けたガイド突起81で水平方向に案内をしており、上下方向については、永久磁石と電磁石による磁気浮上構造としている。他の部分については、前述の発電システムと実質的に同様である。このものは回転の抵抗が少ないので、発電効率が高い。なお、回転する上側の磁石を電磁石とし、下側の固定側を永久磁石とすることもできる。さらに上下とも永久磁石としてもよく、上下とも電磁石とすることもできる。
【0080】
図20aのガイド構造83は、円環状のガイド84と、その両側面および上面を囲むように配置され、それらに沿って転動するローラ85を備えたスライダ86とから構成されている。スライダ86の個数は前述のリニアスライドボールベアリングにおけるスライダと同じ程度でよい。このようなガイド構造83を、羽根車12に取り付けた補強リング68と、フレーム11に取り付けた支持リング63の間に介在させることにより、羽根車12をフレーム11に対して回転自在に支持することができる。
【0081】
図20bのガイド構造では、補強リング68の側にリニアスライドボールベアリング用の環状のガイド74を取り付け、支持リング63の側にそのガイド74に案内されるスライダ75を取り付けている。他の構成は図13の場合と同様である。このものは羽根車12にガイド74を設けているので、羽根車12の重量が重くなるが、その強度および剛性が高くなる利点がある。なお、上記のリニアスライドボールベアリング用の環状のガイド74と、その環状ガイドと摺動(実際は転動)するスライダ75との組み合わせは、リニアモータと反対の原理で発電する発電機を備えた発電システムに限らず、他の発電機を用いた発電システムでも適用することができ、同じ作用効果を奏する。たとえば、羽根車の周縁部あるいは途中に環状の歯列を設け、その歯列と噛み合うギヤを入力軸に取り付けた通常の発電機を、フレーム11(とくにリング18)に、複数台環状に配置することもできる。また、羽根車の中心部に回転するシャフト22を設けた発電システムでは、そのシャフト22に通常の発電機の入力軸を連結するようにしてもよい。
【0082】
図21の風力発電システム88では、支持リング63の上部に取りつけた永久磁石89と、羽根保持アーム67の下面に取りつけた永久磁石90とを向かい合わせて構成した磁気浮上構造J1を設けている。それにより、永久磁石89、90同士の磁気反発力で羽根車の重量を支持することができる。すなわちこの実施形態では、プレート状の支持リング63の半径方向内側(図21の右側)から複数列の支持ロッド91を立ち上げ、その上端に内側リングプレート92を固定し、その内側リングプレート92の上面に多数の永久磁石89を環状に配列している。そして羽根保持アーム67の下面に、数個の永久磁石90を取りつけている。なおこの実施形態では図22に示すように、矩形状の内側プレート92aを複数枚環状に配置して内側リングプレート92を構成しており、1枚の内側プレート92aには、たとえば複数個3個の矩形状の永久磁石89を所定の隙間をあけて配列し、それらの隙間に磁石で吸着する鉄片93を介在させている。
【0083】
それらの永久磁石89と鉄片93は、枠体94で固定支持されている。永久磁石89の磁極の向きは、同じ向きである。すなわち上側をN極に揃えるか、あるいはS極に揃える。このように鉄片93を介在させるのは、永久磁石90同士を直接隣接させると、強い反発力(たとえば図42の場合で10N程度)が働くので、取りつける作業が大変であるからである。そして上記のように鉄片93を介在させると、それぞれの永久磁石89が鉄片93と磁着するので、鉄片93を介して磁石群が一体に磁着され、取り付けが容易になる。なお、羽根保持アーム67の下面に配列した永久磁石90についても、同様に隙間をあけてその隙間に鉄片を介在させ、枠体95で囲むようにして羽根保持アーム67に取りつけている。
【0084】
なお、前記支持リング63は、図22に示すように、所定の幅の矩形状のプレート63aで構成し、環状に配列して構成している。また、支持ロッド91は、内側1列と外側1列の全体の2列で内側リングプレート92を支持している。また、この風力発電システム88では、支持リング63の外側にも2列の支持ロッド91aを立ち上げて、その上端に外側リングプレート96を固定している。そして外側の支持ロッド91aの内側の列および内側の支持ロッド91の外側の列には、それぞれ高さ方向の中間部に固定子を構成するコイル群32、32を取りつけている。そして両者の間に永久磁石64を設けた回転子を配置し、その回転子を羽根車に固定している。
【0085】
前記永久磁石64は、図23に示すように矩形状を呈し、中間の補強リング68の内面および外面の両側に、それぞれ隙間をあけて配列固定している。それらの隙間にも、鉄片を介在させるのが好ましい。永久磁石64は、内側をN極にしたもの64aと、S極にしたもの64bを交互に配列している。外側の永久磁石64についても同様であり、通常は内側の永久磁石の極と、それと対応する外側の永久磁石の極は同極にしている。補強リング68の中間部には上下に貫通する孔68aが形成されており、図21に示すように、その孔68aに吊りロッド97が通されている。
【0086】
その吊りロッド97は、上から上端スペーサ98、上ガイド円板99、上側スペーサ100、補強リング(コア)68、下側スペーサ101および下側ガイド円板102を貫通し、全体を締め付けて固定している。上端スペーサ98、上側スペーサ100、下側スペーサ101はそれぞれステンレス鋼などの非磁性の金属などで構成することができる。また、内側リングプレート92の外縁部および外側リングプレート96の内縁部には、上ガイド円板99の上面と隙間をあけて対向するガイドローラ103、103が回転自在に支持されている。さらに下側の支持リング63には、下ガイド円板102の下面と隙間をあけて対向するガイドローラ104、104がそれぞれ回転自在に支持されている。それらのガイドローラ103、104の回転中心は、水平に配置され、羽根車の半径方向を向いている。それらのガイドローラ103、104と上下のガイド円板99、102とは、磁気浮上構造J1の不調などで回転子が上下方向に移動しても、回転子と固定子とが接触しないように最低限の隙間を維持する安全機構である。
【0087】
前記コイル群32は、図24に示すように、多数のケイ素鋼板などの金属板を重ねて形成したコア32aの外周に、電線32bを巻き付けたものであり、支持ロッド91、91aを通すため、上下方向に孔108が形成されている。そして図21に示すように、支持ロッド91、91aの上下方向の中間部に固定され、支持されている。なお、コイル群32を支持する支持ロッド91、91aの上部には上ガイド円板99の内周面または外周面と隙間をあけて対向するガイドローラ105、105が回転自在に設けられている。そしてコイル群32を支持する支持ロッド91、91aの下部には、下ガイド円板102の内周面または外周面と隙間をあけて対向するガイドローラ106、106が回転自在に設けられている。それらのガイドローラ105、106と上下のガイド円板99、102は、回転子が半径方向外側あるいは内側に移動しても、固定子と回転子の隙間を適切に維持するための安全機構である。なお、図23および図24では、回転子および固定子をそれぞれ直線状の部材で構成している。そして風力発電システムでは、これらの直線状の部材をいくらか角度をつけて多角形状に配列し、環状の回転子および固定子を構成する。このように多数の部材を連結して環状部材を構成することにより、取り扱いが容易になる。なお、それぞれの固定子および回転子の部品をいくらか湾曲させ、連結したときに円環状になるように構成することもできる。また、回転子および固定子は、回転するときに互いに、あるいは他の周囲のものと干渉しないように、ガラス繊維強化合成樹脂で固めて所定の寸法に仕上げるのが好ましい。
【0088】
さらに図21の風力発電システム88では、吊りロッド97の下端あるいは下ガイド円板102の下面の間に、互いに反発する磁石群107、108を配置して、羽根車の重量、とくに回転子の重量を支持させる補助磁気浮上構造J2を設けている。すなわち前述の上部に設けた磁気浮上構造J1は、片車側の永久磁石を羽根保持アーム67ごとに設けているので、複数枚の縦羽根の重量をそれらの直下で支持することができるが、縦羽根の間の回転子の重量は充分に支持できない。そのため、補助磁気浮上構造J2により、その間の回転子の重量を支持させるようにしている。
【0089】
つぎに図25を参照して、固定子のコイル群32の配列および結線状態を説明する。外側および内側の固定子のコイル群32は、3相交流の電流を得るために、それぞれ3組のコイル群111a、112a、113a、111b、112b、113bによって構成している。そして内側の第1コイル群111aと外側の第1コイル群111bとは、長手方向に1ブロック分だけずらせて配置され、しかも、内側の第1コイル群111aの端部と外側の第1コイル群111bの端部とは接続線111cで連結されている。第2コイル群および第3コイル群についても同様である。各コイル群のブロックの巻き数は同一にしている。
【0090】
上記のように構成される固定子のコイル群32の間に回転子の永久磁石64が一方向に走行すると、走行する永久磁石64の磁界は固定子のコイル群に対してほぼサイン曲線となる磁界変化を付与し、それに基づいてそれぞれのコイル群32に交流が生ずる。したがって各コイル群32から交流の電気を取り出すことができる。そしてこの実施形態では、第1コイル群、第2コイル群、第3コイル群から3相交流を取り出すことができる。
【0091】
また、上記のようにして各コイル群32に電流が流れると、固定子のコイル群32に磁界が生じ、その磁界と固定子の永久磁石64の間に吸引力および反発力が生ずる。しかし内側と外側の対応するコイル群同士が接続線111c、112c、113cでそれぞれ接続されているので、内側に引っ張られる力と外側に押される力がバランスする。すなわち内側の第1コイル群111aの電流が減少すると、外側の第1コイル群111bの電流も同等に減少するため、内側に引っ張られる力と外側に押される力がバランスし、同様に第2コイル群112a、112b同士および第3コイル群113a、113b同士の力もバランスする。そのため、回転子は固定子に対してほぼ一定の間隔を維持しながら走行することになる。したがって回転数が変化しても、全体としてスムーズな回転が得られる。
【0092】
図26aに示す磁気浮上構造J3は、回転する羽根車側、たとえば羽根保持アームに取りつけられる永久磁石90が下向きに開口する断面略コ字状を呈している。固定されたフレーム側、たとえば支持リングに取りつけられる永久磁石89は縦向きの板状である。このような断面コ字状の永久磁石90は、水平に配置される中央の板状の磁石90aと、縦向きに配置される内側および外側の板状の磁石90b、90cの3枚の磁石をたとえばN極を内側にするように組み合わせることにより得ることができる。その場合は相手側の縦向きの永久磁石89の上端側を同じN極にする。コ字状の永久磁石90の内面側をS極にする場合は、縦向きの永久磁石の上端側もS極にする。そして基準状態では、固定側の永久磁石89の先端は、回転側の永久磁石90の先端同士を結ぶ線Lにほぼ一致させておく。なお、固定側の永久磁石90をほぼ連続する環状に配置し、回転側の永久磁石89を羽根保持アームの部分のみに設ける点については、前述の図21の磁気浮上構造J1の場合と同様である。ただし固定側を部分的に設け、回転側をほぼ連続する環状に配置してもよい。
【0093】
このように構成される磁気浮上構造J3は、回転側の中央の磁石90aのN極と固定側の永久磁石89の上端のN極とが反発するので、羽根車の重量を支えることができる。また、回転側に中央に向かう力が加わっても、内側の磁石90bと縦向きの永久磁石89とが反発するので、上記の力に対応する力が生ずる。逆に外側に向かう力が加わっても、外側の磁石90cと縦向きの永久磁石89との間で元に戻そうとする力が働く。そのため、この磁気浮上構造J3は、常に基準位置を維持させる機能を備えている。また、回転側の永久磁石90の幅は、図22からもわかるように、羽根保持アームの幅と同じでよいため、磁石の節約になる。また、いずれも板状の磁石を用いるので、市販の磁石から容易に構成することができる。
【0094】
図26bに示す磁気浮上構造J4は、図26aの場合とは逆に、回転側に縦向きの永久磁石90を設け、固定側に断面コ字状の永久磁石89を設けている。この磁気浮上構造J4も図26aに示す磁気浮上構造J3と同様に、羽根車の磁気浮上作用と、中心維持作用の両方の機能を備えており、実質的に同じ作用効果を奏する。
【0095】
図26cに示す磁気浮上構造J5は、固定側の永久磁石89として、内向きに開くコ字状断面を備えた外側の磁石89cと、外向き開くコ字状断面を備えた内側の磁石89bとからなる。そして回転側の永久磁石90は、固定側の永久磁石の間に水平に配置される板状のものが用いられる。回転側の永久磁石90はたとえばステンレススチールなどの非磁性体材料からなる支持部材119で羽根車側、たとえば羽根保持アームなどに取りつけられる。なお、外側のコ字状の磁石90cの内面側をN極にする場合は、内側のコ字状の磁石90bの内面側を反対のS極とし、回転側の永久磁石90は外側の端部をN極に、内側の端部をS極にする。それにより、強力な上向きの磁気浮上作用と中心維持作用とを発揮することができる。
【0096】
図27aの磁気浮上構造J6は図26cの磁気浮上構造J5とは逆に、回転型の永久磁石90として、外側および内側に配置されるそれぞれ断面コ字状の磁石90c、90bを採用し、固定側の永久磁石89として水平方向に配置される板状の磁石を採用している。なお、この実施形態では、回転側の外側の磁石90cと内側の磁石90bの上部同士をステンレススチールなどの非磁性体材料からなる部材で連結している。それにより取り扱いが容易になる。
【0097】
図27bに示す磁気浮上構造J7は、固定側の磁石120として、図26bの場合とほぼ同様の上向きに開く断面コ字状の磁石121と、その間に介在される電磁石122とを組み合わせたものを採用している。このものは電磁石122のコイルに流す電流を制御することにより、電磁石122の磁力を調整することができる。それにより必要に応じて磁気浮上力を調整することができる。
【0098】
つぎに図28〜36を参照して、本発明の電気・力変換装置の第1の態様の実施形態を説明する。図28は風力発電システムの先の実施形態における図21に示すような両側に磁極を持つ回転子を持つ発電機のブロック構成図(断面図)を示しており、両側に永久磁石126を持つ回転子127と、この回転子127を軸支する軸受け部128と、この軸受け部128を支持する台129と、回転子127を回転駆動する羽根車12などから構成される原動機部130と、回転子127の永久磁石126と対峙している固定子131とで構成されている。なお、上記軸受け部128の代わりに上述した永久磁石などによる磁気浮上構造としても良い。電気・力変換装置は紙面に対して直角方向に延びている。風力発電装置に用いる場合は円環状に配置されるが、直線状あるいは緩やかな曲線状に延びていてもよい。以下の説明では、円環状に配置される場合を説明する。
【0099】
回転子127の両側に2つの固定子131を持つ発電機の回転子127は、ドーナツ状の回転子で円周状に分布配置されている。このような発電機においては、固定子131の寸法低減のために回転子127の内外径の差が小さいことと、回転子127の軸受け荷重の軽減のために回転子127の重量が軽いことが求められる。
【0100】
図29は片側に固定子131を持つ発電機の回転子ヨーク部132の構造を示している。なお、図28と同様の機能を有する要素には同一の番号を付している。回転子127の固定子131と対向している面にはN極とS極と交互に永久磁石126を配置しており、また、矢印は磁束を示している。この片側に固定子131を持つ発電機の回転子127は、N極の磁極とS極の磁極の間に磁束が通り易くするため、鉄でできた磁気回路が必要である。この回転子127の磁気回路の幅は、磁極幅(永久磁石126の幅)の半分の大きさである。
【0101】
他方、固定子131が回転子127の両側にある発電機で、両側に磁極(永久磁石126)を持つ回転子127を構成した場合には、図30に示すように、半径方向に対して大きな幅の回転子ヨーク部132が必要となる。したがって、回転子127の内外径の差が大きく、二重に回転子ヨーク部132が必要となり、回転子127の重量が重くなる。
【0102】
この回転子127の両側に磁極を持つ構成で、磁極に永久磁石126を使用した時に、軸の偏芯(回転子127が軸芯からずれて固定子131側に寄ること)が生じた場合には、固定子131と回転子127の空隙が狭くなるために、寄った側の永久磁石126は、回転子127に独自のヨーク部を持つので、残りの回転子127側の永久磁石126とは無関係に、独自の磁気抵抗だけに左右されて、消費アンペアターンが減少し、永久磁石126の発生磁束量が増加する。また、残り側も独自のヨーク部を持つので、永久磁石126の発生磁束量は減少する。これを図31に示す。これにより図31の上側の回転子127の半径方向に作用する磁気吸引力が大きくなり、上側の固定子131側に回転子127が更に移動する。この力を式にて説明する。
【0103】
図32は永久磁石134を使用した回転機のモデルの磁気回路を示し、略コ字型の珪素鋼板からなる磁性体135の対向する先端の一方に永久磁石134を配置し、この永久磁石134と磁性体135の他方の先端との間に空隙を設けている。一般に永久磁石134の発生する空隙の磁束密度Bは、図32の位置関係の時に、
B=Br・(t/μ)/(t/μ+A) ・・・(1)
(但し、Br:永久磁石134の残留磁束密度、t:永久磁石134の厚み、μ:永久磁石134の透磁率、A:空隙の長さ)
と、示される。
【0104】
両側にヨーク部を持つ回転子構造では、外側磁石の磁気吸引力P1及び内側磁石の磁気吸引力P2は、
仮に、磁石(永久磁石134)の厚さtを、10.5mm、空隙Aを10mm、kを磁極面積とした時、
P1=k・((Br・(t/μ)/(t/μ+A))2
=k・(Br)2 /4 ・・・・(2)
P2=k・((Br・(t/μ)/(t/μ+A))2
=k・(Br)2 /4 ・・・・(3)
である。したがって、同じ空隙の時の磁気吸引力は同じとなり、回転子127は移動しない。
【0105】
ところが仮に回転子127が5mm中心からずれて回転子127側に寄った時、回転子127の(図31で上側の空隙が狭くなった時の)P1、P2は、以下のようになる。
P1=k・((Br・(t/μ)/(t/μ+A))2
=k・(Br)2 *4/9 ・・・・(4)
P2=k・((Br・(t/μ)/(t/μ+A))2
=k・(Br)2 *4/25 ・・・・(3)
これにより磁気吸引力に差が生じ、回転子127を更に偏芯させるように力が作用する。
【0106】
更に、回転子127の両側に磁極(永久磁石126)を持つ場合の磁気吸引力は、回転子127の片側のみに磁極(永久磁石126)を持つ発電機に比して、回転軸に対して180°の位置にも回転子127の両側に磁極(永久磁石126)が存在するので、2倍の磁気吸引力が作用することになる。
【0107】
したがって、回転子127の両側に永久磁石126の磁極を持つ発電機を片側に磁極を持つ構造の考えのままで製作すると回転子127の重量が重く、また軸偏芯時の磁気吸引力が大きいという問題がある。
【0108】
この構造の考えの問題点は、回転子127の重量が重く、また軸偏芯時の磁気吸引力が大きいということである。すなわち、回転子127の構成にあることになる。その回転子127の構成で、二重に必要とする回転子ヨーク部132にあることになる。回転子ヨーク部132の幅の低減、回転子ヨーク部132の共有化が考えられる。
【0109】
この回転子ヨーク部132の幅の低減は、重量低減にはなるが、回転子ヨーク部132の磁気抵抗を増加させて、永久磁石126の能力を低減させることになり、磁気吸引力が大きいという問題解決にはならない。また、回転子ヨーク部132の共有化は、回転子127の外側の磁極と内側の磁極の位置を、磁極の極ピッチの半分ずらすことが考えられ、重量低減には効果があるが、共有化では、外側と内側の磁極が独自に動き、磁気吸引力が大きいことの解決にはならない。
【0110】
したがって、回転子127の両側の磁極が、偏芯が生じてもそれぞれの独自の磁気回路で磁石が動作しないように、回転子127の外側と内側の両者の磁気回路を一本化できれば、回転子ヨーク部132が同じになり、重量も低減でき、磁気吸引力が低減できることになる。よって、課題は、回転子127の外側と内側の永久磁石126の磁気回路を一本化することである。
【0111】
そこで、回転子127の両側の磁極、N極とS極の永久磁石を対に構成すれば、磁気回路の一本化を図ることができる。この構成を図33に示す。図33において、N極とS極の磁石136、136を対にした部材である磁石部137を等間隔で該磁石部137のN極とS極が交互に反対側に位置するように周方向に配置して回転子127を形成し、この回転子127の両側に固定子131を配置している。このような構成にすることで、同じ磁力線が回転子127の両側の磁石部137及び両側の固定子131を通ることになり、両側の空隙の磁束密度も同じになり、磁気吸引力も同じになる。
【0112】
この状態をモデル化した状態を図34に示す。このモデルでの両側の磁極の磁束密度は、以下のようになる。2つの磁石(磁石部137)は、同じ磁気回路上にあるので、磁石厚さと空隙は合算されて、
B=Br・(2t/μ)/(2t/μ+A+B) ・・・・(6)
(但し、Br:磁石の残留密度、t:磁石の厚み、μ:磁石の透磁率、AとB:空隙の長さ)
と示される。
【0113】
今、仮に、A磁石とB磁石の厚みtを10.5mm、μを1.05、空隙AとBを10mmとした時、回転子127の両側の磁石に作用する磁気吸引力P1、P2は、
P1=k・((Br・(2t/μ)/(2t/μ+A+B))2
=k・(Br)2 /4 ・・・・(7)
P2=k・((Br・(2t/μ)/(2t/μ+A+B))2
=k・(Br)2 /4 ・・・・(8)
で示される。
【0114】
更に、仮に、回転子127の回転軸が5mm偏芯した場合(磁石Aと磁石Bが空隙A側に5mm移動したとする)の磁気吸引力P1、P2は、空隙の(A−5)+(B+5)が当初のA+Bのままであるので、同じ磁気吸引力となる。
【0115】
したがって、両側の磁石の磁気吸引力は回転子127の両側でバランスするので、回転子127全体が受ける力はゼロになり、偏芯があっても、回転子127を更に径方向に移動させる力は生じないことが計算上示される。
【0116】
また、図33に示すように、回転子127の周方向で、隣り合った磁極を非磁性金属体138で結合することで、隣の磁極に磁束が漏れることも無くすことができる。
【0117】
かかる構成とすることで、回転子127の両側の磁石136、136をN極とS極と対にし、磁気回路を1つにした構成とすることで、回転子127の周方向で隣り合った磁極を非磁性金属体138で結合でき、そのため、従来構造の鉄の磁気回路を必要とせずに、回転子127の軸が偏芯が生じても、回転子127全体では磁気吸引力が計算上は発生しないという作用効果を生ずる。また、前述の構造の回転機で必要としていた周方向で隣り合った磁極間の回転子ヨーク部を必要としないという作用効果を生む。
【0118】
図35に具体的な実施形態を示す。図示するように、回転子127の両側にそれぞれ固定子131があり、回転子127はN極とS極の磁石136、136を全周に設けた非磁性金属体138の上に設置したものである。回転子127の周方向上に隣り合った磁石136、136(磁石部137)同士の間は、非磁性金属体138で結合されている。この時に、回転子127の両側の磁石136、136間を非磁性金属体138に代えて磁性金属で接続すれば、両側の磁石136、136間の磁気抵抗が減少する。この回転子127の両側の磁石136、136間の磁性金属は、回転子127の両側の磁石136、136と同じ磁気回路上にあるので、図31の構造の周方向上に存在する鉄の磁気回路とは、その作用が異なるので、本発明の原理には触れない。
【0119】
理論的には、上記(6)式と(7)式で示したように、回転子127の両側の磁石136、136で生じる磁気吸引力は同じである。しかし、実際は、一般に磁束は磁束密度を低減させるために空間に広がる性質を持ち、固定子131が周方向に存在するために、上記(6)式と(7)式の磁極面積の定数kが、回転子127が近接した側と離れた側では異なる。近接した側ではkが大きくなり、離れた側では小さくなる。このために、近接した側の磁気吸引力が、離れた側より大きくなる。この二次的な現象は、本発明の原理には直接触れないが、この二次的な現象も含めた磁気吸引力の有限要素法による磁界解析による磁気吸引力の計算結果を図36に示す。この計算は、図32の構造と図35の両側の磁石寸法と空隙を同じとし、図32の周方向の隣り合った磁極間の鉄の回転子ヨーク部を磁石の幅の半分で行なったものである。この結果にも示すように、図35に示す構造の磁気吸引力は、従来構造の場合よりも小さいものである。
【0120】
このように本実施形態では、回転子127の両側の磁極を対にして構成すると、同じ磁気回路上で両側の磁石136、136が動作することになり、回転子127の偏芯が生じても、両側の磁石136、136の磁気吸引力がバランスして回転子127全体では力がゼロになり、更に回転子127を移動させる力の発生することは計算上無くなる。また、同じ磁気回路上に磁石136、136を取り付けるので、従来構造の考えでは必要とした隣り合った磁極間の回転子ヨーク部を必要とせずに、回転子127の重量低減と回転子127の径方向の幅を低減できるという効果を奏する。
【0121】
つぎに図37〜図44を参照して本発明の永久磁石の配列構造の実施形態を説明する。以下の実施形態では、本発明の永久磁石の配列構造を磁気浮上装置に適用する場合を説明する。しかしこの永久磁石の配列構造は、これに限らず、複数個の永久磁石を同じ極を同じ向きになるように並べる場合の種々の構成にに適用することができる。図37は両側に固定子をもつ回転子の磁気浮上の構造を示すものであり、先の実施形態と同様の原動機部153にて回転駆動される回転子151の両側には固定子152を持ち、この回転子151は磁気浮上構造J10にて浮上する構造となっている。この磁気浮上構造J10は、回転子151側の永久磁石154と、台156側に固定されている固定側の永久磁石155とで構成されており、永久磁石154と永久磁石155の対向面は互いに反発するN極同士、あるいはS極同士となっている。
【0122】
図37に示すように、両側に固定子152をもつ発電機の回転子151は、水平に置かれ、周方向に分布配置されている。このような構造の発電機の回転子151は上述したように水平に設置できるがために、永久磁石154、155により磁気浮上させることができる。しかし、永久磁石154、155の取り扱いの際には、近接する磁性金属に接着しても、取り外すことができるようにしている。あるいは、所定の位置にアルミ材などの非磁性体を介して永久磁石154、155を取り付けた後は、このアルミ材などを取り外す必要がある。永久磁石154、155の取り付けのためには、アルミ材などが必要であり、取り付けのために有効利用できないスペースが必要となっている。
【0123】
また、永久磁石154、155の反発力により磁気浮上させている状態で回転子151が移動している場合には、固定側と回転側に隙間なく多量の磁石(永久磁石154、155)を取り付ける必要がある。高性能磁石は、最大寸法に制限があり、多くの個数が必要となる。図38に示すように、磁気浮上のためには同じ極の磁石(永久磁石154、155)をそれぞれ横に配置する必要がある。図38では、移動側の永久磁石154の空隙側をN極とし、固定側の永久磁石155の空隙側をS極として反発力を得ている。
【0124】
しかし、図39に示すように、同じ方向の磁極面を持つ磁石の側面を近接させると、反発力が生じ、並設して取り付けることは容易ではなく、多くの人力を必要として固定している。すなわち、図39は高性能の磁石Aと磁石Bを近接させた時の両磁石A、Bの流体の磁束分布の状態を示し、磁石Aと磁石Bを近接させても、端部では、同じN極から発生した磁束(図中の端部の漏れ磁束)が近接するために(磁束が鎖交しないので)反発力を生じる。したがって、両磁石A、Bを近接して保持することは困難である。
【0125】
また、図40は空気中に置かれた高性能磁石A、Bの反発力(磁石Aを固定とした場合)の説明図を示し、両磁石A、Bの厚さを5mm、長さを20mm、幅を10mmとして、磁石Aの端面に磁石Bを吸着させた場合に、磁石Bに作用する反発力は、約30Nであり、人の手で長時間保持し続けることは非常に困難である。
【0126】
なお、全体機器を分解点検するために、設置した磁石がこの反発力のために飛ぶことがないように、磁石固定用の非磁性材を取り外す作業にも時間を要することになる。更に、この取り付け・分解作業を、設備を用いて効率良く工場で行なうのではなく、現場で実施するとなれば、更に時間を要することになる。このように、高性能磁石を機器(風力発電システムなどに)に組み込むには、取り付け作業に時間を要する。
【0127】
このようにして高性能磁石の組み込む際の作業性の悪化は、その磁石が高性能であるが故に、磁束が空気中に漏れて、近接した磁性体との間に吸引力が発生することである。計画した方向に向いている磁束が磁性体との間に吸引力が発生すること、あるいは浮上のための磁石間での反発力は、高性能磁石を使用する目的でもあるので、この磁束が生む吸引力の対策は機能上必要なことであり、問題ではない。しかし、所定方向以外の磁石の側面を通る磁束は、漏れ磁束であり、この漏れ磁束が近接した磁性体との不要な吸引力を生むこと、あるいは、同じ方向を向いた磁石との間に不要な反発力を生じることを防止することができれば、作業性を向上させることができる。
【0128】
永久磁石を鉄のような磁性体に取り付けると、この磁性体の外側にある磁性体の吸引力が低減することは周知の事実である。この周知の事実により、例えば、1cm立法の磁石を単純に数cmの厚い鉄で側面を囲むと、不用意な吸引力は発生しないが、作業場内での運搬する重量が増し、逆に作業性が悪くなる。また、図41に示すように、磁石を磁性体158で囲ったものに、別の高性能磁石を配置すると大きな吸引力が発生し、これらを分離するためには、大きな力を必要とする。
【0129】
すなわち、図41は磁石Aの側面に磁性体158を取り付けた時の端部の磁束分布を示す図であり、磁石Aの側面に磁性体158を取り付けた場合には、磁石Bの端部の磁束がその磁性体158に浸入し、吸引力が生じる。また、図42は、空気中に置かれた高性能磁石Aと磁石Bとの間に磁性体158をサンドイッチした時の吸引力を示している。この図42において、両磁石A、B共に、厚さを5mm、長さを20mm、幅を10mmとし、磁性体158の厚さを5mm、長さを1mm、幅を10mmとした場合、磁石Bが磁性体158側から受ける吸引力は、約30Nであり、磁石Bを磁性体158から分離しようとすると大きな力を必要とする。そのため、両磁石A、Bの分離は困難である。
【0130】
更に、反発形の磁気浮上では、磁石側面に取り付けた磁性体が、磁石表面より突き出ると、この部分の表面に相手方の磁石の磁束が集中して、浮上用の反発力の低下を招く。
【0131】
したがって、同じ極面同士の高性能磁石を近接した時に、反発力と吸引力が小さくなるような磁石側面に取り付けた磁性体あるいは磁石側面を囲む磁性体の構成が磁石に密に並んでいるような薄い磁性体の厚みを求めることが課題となる。
【0132】
同じ極面間で、高性能永久磁石を近接させると、反発し、また高性能磁石に磁性体を取り付けると吸引して離れない。この反発と吸引の両者の状態を、磁性体を用いて発生させることができれば、同じ極面の高性能磁石を密接に並べても反発と吸引が生じないことになる。このために、図43に示すように磁石の側面の磁性体160の外側を一部磁束が漏れるように、磁性体160の高さを磁石の厚みより短くするようにしたものである。
【0133】
そして、図44に示すように、この一部を切り欠いた磁性体160を高性能磁石AとBの間に側面でサンドイッチする。高性能磁石A、Bの漏れ磁束が、この磁性体160の高さを欠いた部分から漏れた磁束が互いに反発し、反発力を発生していて、磁性体160の部分では、磁性体160に互いに高性能磁石A,Bが吸引している状態になる。したがって、磁界解析によりその磁石A、Bに応じて反発力と吸引力がバランスするように磁性体160の高さと厚みを適切に設定することができるので、課題を解決することができる。
【0134】
このように、高性能磁石A,Bの厚さよりも短い磁性体160を磁石A、Bの側面に取り付けるという工夫により、隣り合った磁石A、Bの反発力と吸引力をバランスさせる作用が生じる。また、磁性体160の長さは、磁石A、Bの長さより小さく、磁石が密に並んでいる状態でもある。更に、磁性体160は磁石A、Bの面より内側に引っ込んでおり、浮上側の磁石154と固定側の磁石155よりの磁束がこの部分に集中することはないという作用をもち、磁気浮上に悪影響を及ぼすことはない。
【0135】
図44は具体的実施形態を示し、図示するように、磁石A、Bの厚みより、短い磁性体160を磁石A、Bの側面に取り付けたものである。また、この時の磁性体160の長さは約1mmで、磁石A、Bの長さ20mmより短い。したがって、多数の磁石が密に並んでいる状態に近い。この磁石の配列で、磁界解析を行なった計算結果を図44に示す。
【0136】
磁石A、Bの厚み5mmより、1.2mm短い磁性体160(厚さ3.8mm、長さ1mm、幅10mm)を磁石Aの側面に取り付けた時の磁石Bに作用する力は、吸引力で、約1Nである。この力は、図44に示す同じ大きさの磁石Aと磁石Bを磁性体160無しで接した場合の反発力(図40)約30Nより小さい。また、磁石の厚さと同じ高さの磁性体を介在させた時の吸引力(図42)約10Nより小さい。したがって、この実施形態に示すように、磁石の厚さより短い磁性体160を介在させることで、磁石の設置が容易となり、特別に反発力対策として磁石を固定する構造物を必要としないものである。
【0137】
このように本実施形態では、高性能磁石A、B(永久磁石154、155)の厚さよりも短い磁性体160を該磁石A、Bの側面に取り付けて、隣り合った磁石A、Bの反発力と吸引力を低減させたので、磁石A、B(永久磁石154、155)の取り付け作業が容易になり、現地にての組み立ての作業時間を短縮することができる。また、磁石A、B間の吸引力が低減したので、発電機の分解点検作業が容易となる。更に、磁石A、B間の反発力対策として、磁石A、Bを固定する構造物を必要としないという種々の効果を奏するものである。
【0138】
なお、図44に示すような構成の磁性体160を、図38に示す移動側の多数の永久磁石154の間に磁性体160を介在させているものである。また、同様に固定側の多数の永久磁石155の間にも磁性体160を介在させている。
【0139】
つぎに図45〜51を参照して本発明の電気・力変換装置の第3の態様の実施形態を説明する。図45は、風力発電システムの先の実施形態における図21に示すような両側に磁極を持つ回転子を持つ発電機のブロック構成図を示しており、両側に永久磁石163を持つ回転子164と、この回転子164を軸支する軸受け部165と、この軸受け部165を支持する台166と、回転子164を回転駆動する羽根車12などから構成される原動機部167と、回転子164の永久磁石163と対峙している固定子170とで構成されている。なお、上記軸受け部165の代わりに上述した永久磁石などによる磁気浮上構造としても良い。
【0140】
回転子164の両側に固定子170を持つ発電機では、外側と内側の固定子コイルを幾何学的にコイルを配置しても、図46に示すように回転子164の内側と外側の磁束分布が相違するが、外側の固定子170aと内側の固定子170bでのU相、V相、W相の発生電圧の波形とピーク値および位相に差が生じる可能性がある。
【0141】
図46は、回転子164の磁石163の外側固定子170aと内側固定子170bの距離を示すものであり、磁石163の磁束分布が外側固定子170aと内側固定子170bでは異なることを説明するために距離の差で示した図である。図46において、磁石163を直方体とした時に、磁石163と外側固定子170a及び内側固定子170bとの距離は部位毎に以下のようにする。
a:磁石163の一方の端と外側固定子170aの距離
b:磁石163の中央部と外側固定子170aの距離
c:磁石163の他方の端と外側固定子170aの距離
d:磁石163の一方の端と内側固定子170bの距離
e:磁石163の中央部と内側固定子170bの距離
f:磁石163の他方の端と内側固定子170bの距離
【0142】
この時に、磁石163と外側固定子170aの内径との距離について、以下のようになる。
b>a、b>c、a=c
であり、内側固定子170bの外径については、以下のようになる。
d>e、f>e、d=f
また、b=eとすると、a<b<dとなる。
これは、磁石163の部位毎に磁路長が異なり、外側固定子170aと内側固定子170bで磁束分布が異なることになる。この磁束分布の推定を図47に示す。
【0143】
図47(a)は外側固定子170aの磁束密度分布を示し、図47(b)は内側固定子170bの磁束密度分布を示している。図46に示したように、外側固定子170aと内側固定子170bとの間の空隙で、磁石163の部位により磁路長が異なるので、両固定子170a、170bでは磁束密度分布が図47に示すように異なる。
【0144】
図47に示すように、外側固定子170aの磁束密度分布は台形状で、内側固定子170bの磁束密度分布は三角状であることが推定される。したがって、外側固定子170aと内側固定子170bのコイルに誘起される電圧のピーク値と波形が異なることが予想され、外側固定子170aと内側固定子170bの電圧のピーク値と波形が異なることは、両固定子170a、170bの誘起電圧の基本波成分の位相も異なる可能性がある。
【0145】
また、回転子164の両側に固定子170を持つ発電機で、外側と内側のコイルを横切る磁束密度Bが同じ場合には、外側固定子170aの発生電圧をe1、内側固定子170bの発生電圧をe2とした時、以下の式で示される。
e1=B・l・v1
e2=B・l・v2
但し、lはコイルの長さ、v1、v2は、外側と内側のコイルを横切る磁束の速度とする。
この時に、v1=v2・rl/r2である。但し、r1は外側固定子170aの内径、r2は内側固定子170bの外径である。
【0146】
このように、回転子164の両側に固定子170を持つ発電機では、コイルを横切る磁束の速度が、外側と内側で異なるので、発生電圧が異なる。また、上記では、外側と内側の固定子コイル部での磁束密度も同じとしたが、前述のようにこれも同じではない。これを単純に結線すると外側と内側のコイルの間に循環電流が流れる可能性があり、不要な損失あるいは、更なる温度上昇を生じる可能性があった。
【0147】
ここで若干補足すると、従来の一般の発電機は、回転子の外径側に固定子を配置しているので、固定子コイルと回転子の磁極を周方向に幾何学的に周期的に配置すれば、U相、V相、W相の発生電圧は、片側の同じ周方向にあるので、位相差は生じにくい。
【0148】
更に、一般に永久磁石を使用している発電機では、偏芯により回転子の磁極が近接した側では、空隙の寸法が狭くなるので、磁石の消費アンペアターンが少なくなり、起磁力のバランスが崩れて、近接する側に、近接する前の状態の起磁力より、近接した方が固定子表面の磁束密度は大きくなり、磁束密度の高い領域は広がる。また、離れた側の磁束密度は低くなり、その面積も狭くなる。このために、回転子の作用する磁気吸引力には、差分が生じて、磁極に近接した側に更に偏芯することが生じていた。これに対して、回転子の左右に磁極を持ち回転子の両側に固定子を持つこの発電機では磁極構造に関して対策を行ない、これを低減する工夫を行なっているが、図46及び図47で示したように、磁束密度分布に関して本質的に均等でないので、偏芯側に更に近接する可能性はある。
【0149】
回転子164の両側に固定子170を持つ発電機の問題をまとめると、以下のようになる。
(1)外側と内側の固定子170の発生電圧の大きさ及び波形、位相に差が生じる。したがって、それぞれの固定子コイルを結線すると両固定子170a、170b間で循環電流が流れることになり、常時損失が発生する。
(2)回転子164の偏芯時には、偏芯した側に更に偏芯する可能性があるので、更に、両側の固定子170a、170bの発生電圧に差を生じる可能性がある。
【0150】
この原因は磁石163の形状にあるので、この磁束密度分布の解明を行ない、これに適切な磁石形状を決めることも出来るが、解明に要する時間と費用と適切な磁石形状を製作するための金型等の費用を考慮すると、経済的ではない。また、回転子164の偏芯時の発生電圧の問題については、正常状態の磁石形状では、対応できないと予想されるので、磁石側だけで解決できる問題ではない。
【0151】
したがって、解決しようとする課題は、固定子コイル側で、磁束密度分布の差に起因した発生電圧の差と磁気吸引力の低減を図る必要がある。この固定子コイル側で、解決策を見いだすことが課題となる。
【0152】
課題を解決するための手段として、問題は、両側の固定子の磁束密度分布が異なることにより発生しているので、この分布の違いを考慮して、固定子コイルを巻き、電圧を発生するようにすればよい。この発電機は、固定子コイルを両側にもつので、この同相の固定子コイルを交差させると、固定子コイルの発生電圧は、偏芯のない正常状態では同じになる。この時に、回転子164の偏芯があっても、正常状態と同じような発生電圧であれば、更に、偏芯していく度合いを低減できることになる。このような交差を固定子コイルで行なえばよい。
【0153】
永久磁石の場合には、磁石の磁束密度は磁石の磁気回路の消費アンペアターンと固定子の電機子反作用で決まる。このうち磁気回路の消費アンペアターンは図46で示したように固定子170a、170bと磁石163の間の空隙の大きさで大部分決まる。回転子164の偏芯が生じた場合の両固定子170a、170bでの磁束密度を磁石163と固定子170a、170bの間の空隙の寸法で図48にて検討する。
【0154】
図48は回転子164の偏芯時の磁束密度の大きさとコイルの配列についての回転子164側の磁石163の外側固定子170aと内側固定子170bの距離(空隙)の検討用の図であり、該図では磁石163を直方体とした時に、磁石163と固定子170a、170bとの距離を部位に次のようにする。ここでは便宜上、磁石163の番号を磁石1、磁石2、磁石3として説明し、a1、a2、a3の1、2、3の添字は、これら磁石1〜3の番号に対応させている。
【0155】
a:磁石の一方の端と外側固定子170aの距離
b:磁石の中央部と外側固定子170aの距離
c:磁石の他方の端と外側固定子170aの距離
d:磁石の一方の端と内側固定子170bの距離
e:磁石の中央部と内側固定子170bの距離
f:磁石の他方の端と内側固定子170bの距離
【0156】
回転子164の偏芯時の磁石163と固定子170a、170bの距離の大きさの順は、次のようになる。
a1<b1<c2<a2<b2<e2<d2<f2<e1<d1
また、
a1=c1、d1=f1、f2=d3、e2=e3、d2=f3
したがって、偏芯時の固定子170a、170bの磁石163の各部位の磁束密度の順は、上記の逆となる。
a1>b1>c2>a2>b2>e2>d2>f2>e1>d1
【0157】
図49は固定子コイル172の配列を示す図であり、固定子コイル172は、u−z−v−x−w−yの相順で配置される。外側固定子170aの固定子コイル172をこの順で配列した時に、回転子164に図49に示すように磁極(磁石163(磁石2、磁石1、磁石3)を取り付けた場合には、内側固定子170bの固定子コイル172の配列は、u−z−v−x−w−yの相順と、x−w−y−u−z−vの相順がある。この固定子コイル172の並びの時の磁石163の位置と空隙部の位置a,b,c,d,e,fを図49に示す。
【0158】
図50は、磁石163の位置と磁束密度の大きさを示す図であり、仮に、a1を10、b1を9として、磁石163の部位毎に大きさを図50に示す。この時に正常状態に近い空隙距離となっているのは、d2とf3であるので、正常状態では磁束密度も4と仮定できる。図50に示すように、相により誘起電圧が異なることが判る。回転子164の偏芯が生じた場合も考慮すると単純に両側の固定子コイル172を交差できないことになる。
【0159】
図49及び図50のモデル図により外側の固定子コイル172aと内側の固定子コイル172bを交差した場合の発生電圧(合計した磁束密度)の評価を固定子コイル172との相順との関係で図51に示す。なお、固定子コイル172の交差は同相間で行なっている。上記のことから、固定子コイル172の交差を行なう場合、偏芯があった場合の発生電圧は、外側の固定子コイル172aの相順と内側の固定子コイル172bの相順に関係することになる。この時に、正常状態が8であるので、各相の発生電圧が8に近い状態をもつ相順、すなわち、x−w−y−u−z−vの場合が全体として大きな発生電圧がなく、固定子コイル172に流れる電流も小さくなる。固定子コイル172のu−z−v−x−w−yの配列時には発生電圧は大きく、固定子コイル172の流れる電流も大きい。
【0160】
図52は、外側の固定子コイル172aの配列をu−z−v−x−w−yとし、内側の固定子コイル172bの配列をx−w−y−u−z−vとして、これらのコイルの配列を対向させ、各同相間でコイルを交差させたものである。図53は外側固定子170aと内側固定子170bへの固定子コイル172の具体的な結線方法を示す図であり、この図では相順を外側と内側で、180°変えている。
【0161】
このように、両固定子170a、170bの磁束分布の差異に伴う誘起電圧の差異を、回転子164の磁極対の両側の固定子コイル172を交差させることで、両側の固定子コイル172に常時流れる循環電流の発生を防ぎ、両側の固定子170a、170bの発生電圧を同じにして、負荷電流の流れるを均等にでき、負荷時の磁束分布を両側の固定子170a、170bとも同じにすることで、磁気吸引力を低減させることができる。特に、外側の固定子コイル172aの配列をu−z−v−x−w−yとし、内側の固定子コイル172bの配列をx−w−y−u−z−vとして、これらのコイルの配列を対向させ、各同相間で固定子コイル172を交差させることで、発生電圧が均等になり、両側の固定子コイル172間での循環電流の発生を抑えることができる。
【0162】
前述の電気・力変換装置の実施形態では、いずれも風力発電装置に適用できるように、円環状に配列された回転子とその両側の円環状の固定子の対について説明したが、左右一対の固定子が直線状ないし蛇行する曲線状に配列し、その間を所定長さの移動子を走行させるようにすることもできる。それによりリニアジェネレータとなる。また、前述の実施形態では、風力発電用の発電機に用いる場合を説明したが、他の動力を利用した発電機として利用することができる。逆に固定子のコイルに交流を流すことにより、モータとして利用することもできる。モータとして利用する場合は、回転型の交流モータとして動力源に用いることができる。また、リニアモータとして用いる場合は、各種の搬送機、乗り物、ジェットコースタなどの遊戯具など、種々の動力源として用いることができる。
【0163】
図54は、図14a、図14bの羽根車12とほぼ同様の中心部に軸も軸受けも設けない羽根車173を示している。放射状に設ける横羽根も有しない。また、図14a、図14bの羽根車12では、縦羽根26が支持リングの内周に設けられているが、図54の羽根車173では、複数枚の縦羽根26の上端および下端を支持リング52、53で連結し、全体として籠型に構成している。この籠型の羽根車173は、上端および下端の支持リング52、53をフレームのリング18で走行自在に支持することができる。支持リング52、53とそれを支持するリング18には、それぞれ図12などに示される発電機が設けられる。なお、上または下の片方だけに発電機を設けてもよい。すなわち支持リング52、53とリング18のうち、一方に界磁用磁石が設けられ、他方にコイル群が設けられる。
【0164】
図55に示す羽根車174は、図54の羽根車173とほぼ同様で、縦羽根26の上端近辺および下端近辺が支持リング52、53を貫通して全体として籠型を呈している。このものも横羽根や中心部の軸を有しない。そしてフレームのリング18は、縦羽根26の上端および下端とそれぞれ対向するように設けられている。
【0165】
前記実施形態では、回転子(移動子)の両側に固定子を配置し、フレームやそのフレームに固定したリングなどに固定しているが、図56aに示す発電部180のように、コイル群(固定子)32を半径方向(幅方向)にずらせるように位置調節自在に構成してもよい。このような構成は、たとえば図21のコイル群32を支持している支持ロッド91、91aの位置を半径方向外側または内側に移動可能に、かつ、移動した位置に固定できるように構成することにより、実現できる。このものは、外側のコイル群32を外側に移動させ、内側のコイル群32を内側に移動させて、固定子と回転子の隙間が広がるように調節すると、発電量が少なくなる。逆に狭くなるように調節すると、発電量が増加する。なお、円環状に配列した固定子の場合は、多数の固定子を隙間をあけて配列しておく。半径方向内側に移動させる場合はそれらの隙間が詰まっていくが、通常の調節範囲では問題がない。なお、図56の場合は円環状に配列しているが、通常のリニアモータのように直線状に配列することもできる。
【0166】
また、図56bに示す発電部のように、コイル群(固定子)32を上下方向に位置調節自在に構成してもよい。その場合も、固定子と回転子の上下方向の位置をずらせると発電量を少なくすることができ、上下方向の位置を合わせると、発電量が増加する。なお、図56aの半径方向(幅方向)の位置調節と図56bの上下方向の位置調節を組み合わせてもよい。このような位置調節機構は、組立時に調節するか、メンテナンスのときに調節できればよいが、モータなどの駆動源によって遠隔操作で調節できるように構成してもよい。その場合は、たとえば必要な電力に応じて、あるいはそのときの風力に応じて自動的に調節するように構成することもできる。
【0167】
図56cに示す発電部181は、中心部の支持枠182の外側と内側にそれぞれ永久磁石(界磁用磁石)31を半径方向に位置調節可能に取りつけた回転子を備えている。このような調節機構は、たとえば支持枠182に設けた楔部材183と、永久磁石31に設けた楔部材184とを摺動自在に、かつ、位置調節した位置で固定できるように構成することにより実現できる。ただしネジなど、他の位置調節機構を用いることもできる。このように回転子の永久磁石31の幅(厚さ)を調節できるように構成する場合は、コイル群(固定子)32と回転子の永久磁石31のギャップを拡げると発電量が低下し、狭くすると発電量が増加する。したがって風量の増減あるいは必要な発電量の増減に応じて発電量を調節することができる。
【0168】
図23などに示す回転子では、積層した珪素鋼板57などからなるコアの内面および外面にそれぞれ永久磁石を取りつけて、ガラス繊維強化樹脂で一体に固めた構成としているが、図57aに示すように、一枚の永久磁石31で外側の永久磁石と内側の永久磁石を兼用させてもよい。この回転子では、それぞれ板状の上ガイド円板99と下ガイド円板102の間に保持枠186を取りつけて、その保持枠で永久磁石31を保持している。保持枠186の上下には、それぞれ吊りロッド97aを溶接などで固定し、それらの吊りロッド97aを上ガイド円板99および下ガイド円板102にナット97bで取りつけている。回転子185は、図57cに示すように、平角状の永久磁石31を多角形状に配列し、それらをガラス繊維や炭素繊維などの補強繊維で補強した繊維強化合成樹脂31aで円環状に固めたものである。そして隣接する永久磁石31の間の繊維強化合成樹脂31aの部位に半径方向の貫通孔を形成し、図57bに示すようにボルト187およびナット188で支持枠186に固定している。なお、永久磁石31の配列は、図57cに示すように、N極とS極とが交互に外向きになるように配列している。
【0169】
図57aに示す薄型の回転子185は、外側の永久磁石と内側の永久磁石を1枚の永久磁石で兼用するので、発電能力をそれほど低下させることなく、大幅に軽量化およびコストの軽減を図ることができる。
【0170】
なお、図57bに示すように、ボルト187およびナット188の出っ張りを少なくするため、支持枠186に凹部を形成し、その部分にボルト187の頭部やナット188が入るようにするのが好ましい。また、前記吊りロッド97a、97aは上下に分かれているが、繊維強化合成樹脂31aを上下に貫通させた1本の吊りロッドなどで保持することもできる。
【0171】
図57aなどでは、保持枠186で永久磁石31の全周を保持しているが、たとえば図58aに示すように、永久磁石31の上端と下端のみをコ字状の保持枠186a、186bで保持するようにしてもよい。また、それらの保持枠は、コ字状の外枠190で保持させることもできる。また、図58bに示すように、永久磁石31の上端と下端を角パイプ状の上スペーサ100および下スペーサ101を介して上ガイド円板99および下ガイド円板102で挟むことにより、永久磁石31を保持させることもできる。
【0172】
図59aに示す回転子(ないし移動子)は、図57aに示す回転子185とほぼ同様の中心部に対し、表裏交互に追加の永久磁石31を貼り付けたものである。このように追加の永久磁石31を設けることにより、重量は増加するが、磁力を増加させることができ、発電量の増加をはかることができる。
【0173】
図59bは図58aの回転子と同様の中心部に対し、両面に永久磁石31を貼り付けて3列にしたものである。永久磁石31の表面の磁極はS極とN極が交互に表面に現れるように、かつ、表面側と裏面側とで磁極が逆になるように配置する。このものも簡易な構成で磁力を増大させることができ、発電量を増大させることができる。
【0174】
図59cに示す回転子(ないし移動子)は、図56cの回転子とほぼ同様で、支持枠182の表面および裏面にそれぞれ永久磁石31を取りつけている。それぞれの側の永久磁石31はN極とS極が交互に外側に現れるように配列しており、表面側と裏面側とでは、互いに逆の磁極となるように配列している。この回転子(ないし移動子)ものも軽量化と発電量の増大とを達成することができる。図59a、図59bおよび図59cのいずれの回転子も、永久磁石31の隙間および表面に繊維強化合成樹脂を充填して一体化するのが好ましい。
【0175】
前記の風力発電装置の実施形態では、羽根車と回転子(ないし移動子)とを機械的にしっかりと結合しているが、可撓性を有する索条ないし「ひも」で連結することもできる。その場合は、引っ張り方向の駆動力を索条を介して回転子に伝達することができる。また、羽根を支持する横羽根などの伸び縮みにも柔軟に対応することができる。さらに羽根車と回転子とをリンクで連結することもできる。それぞれリンクの一端は羽根車に回動自在に連結し、他端は回転子(ないし移動子)に回動自在に連結する。羽根車と回転子とをひもやリンクで柔軟に連結する場合は、羽根車に横羽根などのスポーク状の支持部材と軸受けないし軸とを設けて、あるいは他のガイド機構ないし支持機構を設けて、羽根車の中心を安定させる。
【0176】
図60に示す電気・力変換装置190は、図57の回転子185の上下方向に構造材を延長して円筒状の回転板191とすると共に、その回転板の上端近辺および下端近辺にローラガイド192を設けている。さらに回転板191の上部および下部に、発電用の永久磁石31とは別個に、移動側反発磁石193、194を配置している。そして上側の移動側反発磁石193の内側および外側に、上側の固定側反発磁石195、195を配置し、下側の移動側反発磁石194の内側および外側に、下側の固定側反発磁石196、196を配置している。それぞれの反発磁石は通常は永久磁石で構成するが、電磁石でもよい。固定側反発磁石195、196はそれぞれボルト197およびナット198などのネジ構造で回転板191との間隔を調整できるように支持されている。
【0177】
上記のように構成される電気・力変換装置190は、ローラガイド192で回転中心がほぼ確保されるが、実際にはローラガイド192と回転板191の表面との間にいくらかの隙間を設ける必要がある。そしてこの状態で回転すると左右に振れようとする。その場合、移動側反発磁石193、194がそれらの両側に配置されている固定側反発磁石195、196により挟まれているので、一方に移動したときは逆方向の反発力が強くなり、元の左右の力が均衡する位置に戻ろうとする。したがって安定した回転運動が行われる。なお回転板191はリング状であるので、内側または外側の反発磁石の組を省略することができる。直線状の移動子を用いる場合も、片側をガイドローラなどで案内すれば、その側の反発磁石の組を省略することができる。図60の電気・力変換装置190では、筒状の回転板191の下端にも移動側反発磁石202が設けられ、その下方にその移動側反発磁石と反発する固定側反発磁石201が配置されている。そのため回転板191の重量が支持され、安定して回転する。
【0178】
図60の電気・力変換装置190は、たとえば円筒状の回転板191の上端に羽根を取りつけて風力発電機として使用することができる(図12、図21参照)。また、逆に固定子に交流を流して回転磁場を形成することによりモータとして使用することもできる。さらに直進運動をするリニアモータカーなどに用いることもできる。回転機の場合は中心軸を設けてもよく、設けないコアレス回転機とすることもできる。
【0179】
図60の電気・力変換装置190では円筒状の回転板191の内側および外側にコイルを内蔵する固定子200および固定側反発磁石195、196を配置しているが、図61に示す風力発電機のように、回転板191を中央を抜いた円板状(ディスク状)とし、その上下に固定子200および固定側反発磁石195、196を配置することもできる。図60の場合は半径方向のスペースを少なくすることができ、図61の場合は上下方向のスペースを少なくすることができる。ディスクタイプの回転板191を用いる場合においても、内側および外側に移動側反発磁石202を設け、それらと対応する固定側反発磁石201を配置することができる。この場合も前述の場合と同様に、内側あるいは外側の反発磁石の組を省略することができる。なお、このようなディスクタイプの回転板を採用する構成は、図12あるいは図21などの風力発電機ないし電動機、回転機においても用いることができる。
【0180】
また図62に示すように、回転板191に厚さ方向に分かれた一対の移動側反発磁石194、195を設け、それらの間に固定側反発磁石196を配置することができる。この場合も回転板191は中立位置側に戻るように付勢されるので、安定して移動ないし回転することができる。この構成は図61のように円筒状の回転板191に採用することもでき、同様に回転を安定にする作用を奏する。
【0181】
前記実施形態では、固定子200および回転板191をそれぞれ連続する円環状にしているが、固定子20を実質的に連続するように配置する場合は、回転板(移動子)191は部分的に、たとえば羽根がある部位のみに設けてもよい。逆に回転板(移動子)191を連続的に設ける場合は、固定子200を部分的に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の風力発電システムの一実施形態を概念的に示す平面図である。
【図2】図1の風力発電システムの全体を示す斜視図である。
【図3】その風力発電システムの立断面図である。
【図4】図2の風力発電システムにおけるフレームを示す斜視図である。
【図5】図2の風力発電システムの平面図である。
【図6】図2の風力発電システムにおける羽根車を示す斜視図である。
【図7】図2のシステムの要部立面断面図である。
【図8】本発明の風力発電システムの他の実施形態を示す要部立面断面図である。
【図9】図9a、図9bおよび図9cはそれぞれ本発明の風力発電システムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図である。
【図10】図10aおよび図10bはそれぞれ本発明の風力発電システムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図である。
【図11】本発明の風力発電システムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図である。
【図12】本発明の風力発電システムのさらに他の実施形態を示す要部斜視図である。
【図13】そのシステムの要部断面図である。
【図14】図14aおよび図14bはそれぞれ図12の風力発電システムの全体を示す縦断面図および平面図である。
【図15】図15aおよび図15bはそれぞれ本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図である。
【図16】図16aおよび図16bはそれぞれ本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す正面図および側面図である。
【図17】本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図18】本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図19】本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図である。
【図20】図20aおよび図20bはそれぞれ本発明のシステムのさらに他の実施形態を示す要部立面断面図である。
【図21】本発明のシステムの他の実施形態を示す要部断面図である。
【図22】図21のXXII-XXII 線断面図である。
【図23】本発明のシステムの回転子の実施形態を示す斜視図である。
【図24】本発明のシステムの固定子の実施形態を示す斜視図である。
【図25】本発明のシステムの固定子の磁界用コイルの結線状態の実施形態を示す結線図である。
【図26】図26a〜cはそれぞれ本発明のシステムに関わる磁気浮上構造の他の実施形態を示す断面図である。
【図27】図27a〜bはそれぞれ本発明のシステムに関わる磁気浮上構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図28】本発明の電気・力変換装置の第1の態様の一実施形態を示す断面図である。
【図29】本発明に関わる発電機の磁極と回転子ヨーク部の構造を示す説明図である。
【図30】本発明に関わる両側に固定子を持つ発電機の他の実施形態を示す構造図である。
【図31】本発明に関わる回転子の両側の磁極を従来構造で構成した発電機で軸の偏芯が生じた場合を示す説明図である。
【図32】本発明の永久磁石を使用した回転機のモデルの磁気回路を示す説明図である。
【図33】本発明の回転子の両側の磁石を対にして両側の固定子との間で磁気回路を1つに構成を示す説明図である。
【図34】本発明の磁石を対にした場合の磁気回路のモデル図である。
【図35】本発明の電気・力変換装置の具体的な構成を示す図である。
【図36】本発明の有限要素法による磁気吸引力の計算結果を示すグラフである。
【図37】本発明の永久磁石の配列構造を備えた磁気浮上装置の一実施形態を示す断面図である。
【図38】本発明の回転子を磁石反発力による浮上時の磁石の円周状の一部の配置を示す説明図である。
【図39】本発明の2つの高性能磁石を近接させた時の流体の磁束分布を示す説明図である。
【図40】本発明の空気中に置かれた高性能磁石の反発力を示す説明図である。
【図41】本発明の磁石の側面に磁性体を取り付けた時の端部の磁束分布を示す説明図である。
【図42】本発明の空気中に置かれた2つの高性能磁石の間に磁性体をサンドイッチした時の吸引力を示す説明図である。
【図43】本発明の磁石の側面に磁性体を取り付けた時の端部の磁束分布を示す説明図である。
【図44】本発明の空気中に置かれた2つの高性能磁石の間に磁性体をサンドイッチした時の吸引力を示す説明図である。
【図45】本発明の電気・力変換装置の第2の態様の実施形態を示す断面構造図である。
【図46】本発明の回転子の磁石の外側固定子と内側固定子の距離を検討するための説明図である。
【図47】本発明の外側固定子と内側固定子の磁束密度分布を示す図である。
【図48】本発明の回転子磁石の外側固定子と内側固定子の距離を示す説明図である。
【図49】本発明の固定子コイルの配列を示すモデル図である。
【図50】本発明の磁石の位置を磁束密度の大きさを示すモデル図である。
【図51】本発明の外側と内側の固定子コイルを交差した場合の発生電圧の評価を固定子コイルの相順との関係で示す図である。
【図52】本発明の固定子コイルの交差を示す模式図である。
【図53】本発明の固定子コイルの具体的な結線方法を示す図である。
【図54】本発明に関わる羽根車の他の実施形態を示す斜視図である。
【図55】本発明に関わる羽根車のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図56】図56a、図56bおよび図56cはそれぞれ本発明に関わる発電部のさらに他の実施形態を示す概略平面図、断面図および概略平面図である。
【図57】図57aは本発明に関わる回転子の他の実施形態を示す要部斜視図、図57bはその要部断面図、図57cはその要部平面断面図である。
【図58】図58aおよび図58bはそれぞれ本発明に関わる回転子のさらに他の実施形態を示す要部断面図である。
【図59】図59a〜cはそれぞれ本発明に関わる回転子のさらに他の実施形態を示す概略平面図である。
【図60】本発明の電気・力変換装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図61】図60の電気・力変換装置を用いた風力発電システムの一実施形態を示す要部断面斜視図である。
【図62】本発明の電気・力変換装置のさらに他の実施形態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0183】
10 風力発電システム
11 フレーム
12 羽根車
14 発電部
15 脚
16 連結部材
17 スポーク
18 リング
19、20 軸受け
21 補強リング
22 シャフト
23、24 ボス
25 横羽根
26 縦羽根
27 車輪
28 走行路
31 永久磁石
32 コイル群
33 制御部
34 蓄電部
35 第1コイル列
36 第2コイル列
37 第3コイル列
38 カバー
41 第1送電線
42 第2送電線
43 第3送電線
45 外部送電線
46 送電線
47 磁石
48 コイル
50 隙間
52、53 支持リング
54 発電部
56 間隔調整装置
57 コイルケース
58 駆動機構
59 センサ
60 制御装置
62 風力発電システム
63 支持リング
64 永久磁石
65 ブラケット
66 調整ネジ
67 羽根保持アーム
68 補強リング
69 羽根保持部材
70 カバー
70a ネジ
72 ラビリンス
73 羽根保持部材
74 ガイド
74a 係合溝
75 スライダ
77 ガイド構造
Ct 回転中心
78 羽根
80 ガイド構造
83 ガイド構造
84 ガイド
85 ローラ
86 スライダ
88 風力発電システム
89、90 永久磁石
J1 磁気浮上構造
91、91a 支持ロッド
92 内側リングプレート
93 鉄片
94 枠体
95 枠体
64a、64b 永久磁石
68a 孔
97 吊りロッド
98 スペーサ
99 上ガイド円板
100 上側スペーサ
101 下側スペーサ
102 下ガイド円板
103、104、105、106 ガイドローラ
32a コア
107、108 磁石群
J2 補助磁気浮上構造
111a、111b 第1コイル群
112a 112b 第2コイル群
113a、113b 第3コイル群
111c、112c、113c 接続線
J3 磁気浮上構造
90a 中央の磁石
90b 内側の磁石
90c 外側の磁石
J4 磁気浮上構造
J5 磁気浮上構造
J6 磁気浮上構造
J7 磁気浮上構造
120 固定側の磁石
121 断面コ字状の磁石
122 電磁石
126 永久磁石
127 回転子
128 軸受け部
129 台
130 原動機部
131 固定子
132 回転子ヨーク部
134 永久磁石
135 磁性体
136 磁石
137 磁石部
138 非磁性金属体
151 回転子
152 固定子
154 永久磁石
155 永久磁石
160 磁性体
163 永久磁石
164 固定子
165 軸受け部
166 台
167 原動機部
170 固定子
170a、170b 固定子
172 固定子コイル
170a 外側固定子
170b 内側固定子
173 羽根車
174 羽根車
180 発電部
181 発電部
182 支持枠
183 楔部材
184 楔部材
185 回転子
186、186a、186b 保持枠
97a 吊りロッド
31a 繊維強化合成樹脂
187 ボルト
188 ナット
190 電気・力変換装置
191 回転板
192 ローラガイド
193、194 移動側反発磁石
195、196 固定側反発磁石
197 ボルト
198 ナット
200 回転子
201 固定側反発磁石
202 移動側反発磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、そのフレームによって回転自在に支持される羽根車と、その羽根車またはフレームのうち、いずれか一方に羽根車の回転中心から等距離で配列される複数個の界磁用磁石と、他方に環状に配列されるコイル群とからなり、
前記界磁用磁石とコイル群とが近接して相対的に運動することにより、リニアモータと逆の作用でコイル群が電力を発生するように構成している風力発電システム。
【請求項2】
前記界磁用磁石が羽根車の外周部近辺ないし中間部に環状に配列されており、前記フレームにおけるそれらのコイル群と近接する位置に、リング状の部材が設けられ、そのリング状の部材に前記コイル群が取り付けられている請求項1記載の風力発電システム。
【請求項3】
前記コイル群が取りつけられているリング状の部材が、羽車に環状に取りつけられる界磁用磁石を内周側および外周側から挟むように一対で設けられており、
内周のコイル群および外周のコイル群が、交流を発生させるように、それぞれ交互にまたは循環的に配列される複数のコイル群を備えており、
内周の特定の位相のコイル群と、その位相に対応する位相の外周のコイル群とが周方向にずれて配列されるとともに、内周のコイル群と、そのコイル群と対応する位相のコイル群とが、直列に接続されている、
請求項2記載の風力発電システム。
【請求項4】
前記内周および外周のコイル群が、3相交流を発生させるように、それぞれ循環的に配列される第1コイル群、第2コイル群および第3コイル群を備えており、内周の第1コイル群が外周の第2コイル群または第3コイル群と対向するように互いにずれている請求項3記載の風力発電システム。
【請求項5】
前記リング状の部材が、上下方向に重ねられた複数枚の金属板からなるコアと、その外周に巻き付けられる導線からなるコイル群と、それらを一体に固める合成樹脂とからなる所定の長さのリング片を複数個、リング状に連結したものである請求項2記載の風力発電システム。
【請求項6】
前記羽根車の外周部または途中部分とフレームとの間に、羽根車の回転を許しながら羽根車の重量の少なくとも一部を支持する円環状の支持手段が介在されている請求項1記載の風力発電システム。
【請求項7】
前記支持手段が、フレームと羽根車のうち、いずれか一方に設けられる転動体群と、他方に設けられ、転動体群と接触する走行路とからなる請求項3記載の風力発電システム。
【請求項8】
前記支持手段が、フレームに設けられる第1の磁石群と、それらの磁石群と互いに反発するように羽根車に設けられる第2の磁石群とからなる請求項3記載の風力発電システム。
【請求項9】
前記第1磁石群がフレームに対して実質的に連続する環状に配列されており、前記羽根車が放射状に配列される複数枚の羽根を有し、前記第2の磁石群がそれらの羽根を支持するように、放射状に配列されている請求項8記載の風力発電システム。
【請求項10】
前記フレームないし羽根車が周囲の温度変化で膨張・収縮したときでも、前記フレームと羽根車に設けられる複数個の界磁用磁石とコイル群との隙間を所定の範囲に維持するための間隔調整手段を備えている請求項1記載の風力発電システム。
【請求項11】
風力が一時的に弱くなったとき、前記コイル群の一部ないし全部に電流を流し、界磁用磁石とコイル群にリニアモータの作用を生じさせ、それにより風車に回転トルクを与えるように構成している請求項1記載の風力発電システム。
【請求項12】
前記支持手段が、前記フレームまたは羽根車のうち一方に回転中心を中心とする円環状のガイドと、他方に設けられ、そのガイドに沿って走行するスライダとからなる請求項3記載の風力発電システム。
【請求項13】
フレームと、そのフレームによって回転自在に支持される羽根車と、その羽根車の回転によって発電する発電機とからなり、
前記フレームまたは羽根車のうち一方に回転中心を中心とする円環状のガイドが設けられ、他方にそのガイドに沿って走行するスライダが設けられている風力発電システム。
【請求項14】
前記ガイドおよびスライダがリニアスライドボールベアリングのガイドとスライダである請求項12または13記載の風力発電システム。
【請求項15】
前記円環状のガイドが内面および外面に平滑な円筒状のガイド面を有し、前記スライダがそれらのガイド面に沿って転動する、垂直方向の軸周りに回転するガイドローラを備えている請求項12または13記載の風力発電システム。
【請求項16】
前記羽根車の回転中心が水平方向を向いている請求項1または9記載の風力発電システム。
【請求項17】
移動子と、その両側に配置される固定子とを有し、前記移動子の両面に、N極とS極の対で構成した磁石部を、N極とS極、S極とN極とが交互に位置するように移動子の周方向に沿って配置している電気・力変換装置。
【請求項18】
隣り合った磁石部を非磁性金属体で結合している請求項17記載の電気・力変換装置。
【請求項19】
永久磁石の一面を同じ極面に並設すると共に、両永久磁石の間に該永久磁石の厚みより短い磁性体を介在させている永久磁石の配置構造。
【請求項20】
移動子の磁極の両側に固定子を持ち、前記両側の固定子に巻装する固定子コイルを同相間で互いに交差させている電気・力変換装置。
【請求項21】
一方の固定子コイルの相順をu−z−v−x−w−y相とした場合に、他方の固定子コイルの相順をx−w−y−u−z−v相として、これらを対向して配列すると共に、両側の固定子コイルを同相間で互いに交差させている請求項20記載の電気・力変換装置。
【請求項22】
複数枚の羽根と、それらの羽根を環状に配列して保持する環状の支持部材と、その支持部材と対向して設けられ、前記支持部材を支持するガイド部材と、前記支持部材とガイド部材の一方に設けられる界磁用磁石と、他方に設けられ、前記界磁用磁石と相対的に運動することにより電気を発生するコイルとを備え、羽根の中心部に軸を有しない風力発電システム。
【請求項23】
移動子と、その移動子と協働して発電作用および(または)モータ作用を奏する固定子と、前記移動子と一緒に移動するように配置される移動側反発磁石と、その移動側反発磁石と反発する固定側反発磁石とを備えた電気・力変換装置。
【請求項24】
前記移動子を中立位置に付勢するように前記移動側反発磁石および固定側反発磁石のうちいずれか一方が他方を挟むように両側に配置されている請求項23記載の電気・力変換装置。
【請求項25】
前記移動側反発磁石が移動子を挟んで一対で配置され、前記固定側反発磁石が固定子を挟んで一対で配置されている請求項23または24記載の電気・力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【公開番号】特開2006−219981(P2006−219981A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−20578(P2004−20578)
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【出願人】(599140172)
【Fターム(参考)】