説明

食材の加熱攪拌装置

【課題】食材の全体を短時間での効率良く均一に加熱できるようにする。
【解決手段】ガス、蒸気又は電気を加熱源として下方から加熱される断面ほぼU字型の食材収容タンク(T)と、その食材収容タンク(T)内の食材(M)を加熱中に攪拌する攪拌羽根(A)と、上記食材収容タンク(T)の開口上面を被覆する開閉蓋(14)とを備えた食材(M)の加熱攪拌装置において、上記食材収容タンク(T)の加熱源と異なる伝熱方式の加熱源を開閉蓋(14)へ直かに取り付けるか、又はその開閉蓋(14)へ適当な長さの配管(68)を介して連通接続することにより、上記攪拌中の食材(M)を上方からも加熱すると共に、その加熱攪拌中にある食材(M)の表面から蒸発する水分を、上記食材収容タンク(T)と開閉蓋(14)との相互間隙又は/及び開閉蓋(14)に開口する水分放出孔(16)から抜き出すように定めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は和菓子の餡やカスタードクリーム、野菜などの炒め物、その他の各種食材を効率良く調理するための加熱攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種食材の加熱攪拌装置では、その食材収容タンクの加熱源としてガスバーナーの直火、ボイラーからの供給蒸気又は電磁誘導コイルの何れか1種が使われている通例であり、これらの2種を併用した特許第3076321号発明でも、食材収容タンク(鍋)を下方からと横方向から直かに加熱しているにとどまり、その伝熱方式(熱エネルギーの移動方式)はあくまでも伝導のみであって、上方(食材の表面)からは加熱していない。
【特許文献1】特許第3076321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、和菓子の餡を代表例に挙げて言えば、その加熱源としてガスの直火や電磁誘導コイルを使用した場合、収容タンクと直かに接触している餡の周辺部が加熱進行する割りには、その接触していない内部中心や上面(表面)の加熱が進行せず、全体の均一な加熱状態を容易に得ることができない。
【0004】
又、伝導による伝熱方式として、万一加熱し過ぎると、餡が収容タンクへ焦げ付くことになる結果、加熱力を昂めるためには、収容タンク自身を大型化して、餡との接触面積(加熱面積)を増大させる必要がある。
【0005】
他方、上記収容タンクの加熱源として蒸気を使用した場合、その収容タンクの加熱温度は基本的に蒸気のそれ以上に高温化できないため、いたづらに長時間の調理を余儀なくされる。
【0006】
そして、たとえ餡を攪拌羽根により切り返し混練したとしても、上記問題を抜本的に解決することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1ではガス、蒸気又は電気を加熱源として下方から加熱される断面ほぼU字型の食材収容タンクと、その食材収容タンク内の食材を加熱中に攪拌する攪拌羽根と、上記食材収容タンクの開口上面を被覆する開閉蓋とを備えた食材の加熱攪拌装置において、
【0008】
上記食材収容タンクの加熱源と異なる伝熱方式の加熱源を開閉蓋へ直かに取り付けるか、又はその開閉蓋へ適当な長さの配管を介して連通接続することにより、上記攪拌中の食材を上方からも加熱すると共に、
【0009】
その加熱攪拌中にある食材の表面から蒸発する水分を、上記食材収容タンクと開閉蓋との相互間隙又は/及び開閉蓋に開口する水分放出孔から抜き出すように定めたことを特徴とする。
【0010】
又、上記請求項1に従属する請求項2では、食材収容タンクの加熱源をガス、蒸気又は電気として、食材を伝導加熱する一方、その開閉蓋へ熱風供給配管を介して連通接続したファンヒーターにより、上方から食材へ熱風の対流熱を投与することを特徴とする。
【0011】
同じく請求項1に従属する請求項3では、食材収容タンクの加熱源をガス、蒸気又は電磁誘導コイルとして、食材を伝導加熱する一方、その開閉蓋へ直かに取り付けた遠赤外線輻射電気ヒーターにより、上方から食材へ遠赤外線の輻射熱を投与することを特徴とする。
【0012】
更に、上記請求項1に従属する請求項4では、食材収容タンクの加熱源とその開閉蓋に付属の加熱源とを、各別に電気制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、食材収容タンクの加熱源が蒸気、ガス又は電気として、食材を下方から伝導加熱するようになっている一方、その食材収容タンクの開口上面を被覆する開閉蓋には、上記加熱源と異なる伝熱方式の加熱源が直かに、又は適当な長さの配管を介して連通する接続状態に取り付けられており、その加熱源によって食材の表面を上方からも加熱するようになっているため、その食材が攪拌羽根の攪拌作用を受けて反転流動中にあることも相伴ない、食材の全体を内部中心まで均一に且つ短時間での効率良く加熱することができる。
【0014】
つまり、冒頭に述べた従来技術との比較から言えば、和菓子の餡を加熱攪拌するような場合、その食材の餡と食材収容タンクとの接触面積(加熱面積)が小さくても、又蒸気、ガス或いは電気での伝導加熱上、その加熱温度を低下させて餡の焦げ付きを防止し乍らも、その攪拌中にある餡の表面を上方から方式が異なる輻射熱や対流熱によって加熱でき、その内部中心までの全体的に均一な加熱状態を容易に得られるのである。
【0015】
又、その上方からの加熱により、食材の表面から浮上する水分の蒸発を促進させることもでき、その蒸発水分を食材収容タンクと開閉蓋との相互間隙や、その開閉蓋に開口する水分放出孔から自づと抜き出せるのであり、各種食材の良好な加熱攪拌状態を得ることができる。
【0016】
請求項2の構成を採用するならば、ファンヒーターから供給する熱風を食材の表面へ投与して、その対流熱により上方から加熱するようになっているため、例えば野菜などの炒め物を食材として加熱攪拌するような場合、その表面から蒸発する水分を効果的に乾燥させて、ベタツキのない調理状態に炒めることができるほか、上記ファンヒーターは食材収容タンクの開閉蓋へ直かに取り付けられていないため、その開閉蓋の軽量化にも役立つ。
【0017】
更に、請求項3の構成を採用するならば、開閉蓋へ直かに取り付けた遠赤外線輻射電気ヒーターにより、上方から食材の表面へ遠赤外線の輻射熱を投与するようになっているため、やはり攪拌羽根の攪拌作用とも相俟って、食材の表面から内部中心まで効率良く加熱することができ、その全体の均一な加熱状態を一層容易に得られる効果があり、特に和菓子の餡やカスタードクリーム、その他のペースト状食材に著しく有益となる。
【0018】
更に、請求項4の構成を採用するならば、食材収容タンクを伝導加熱するガス、蒸気又は電気の加熱源と、その開閉蓋に付属して食材を異なる伝熱方式のもとに加熱する加熱源とが、各別に電気制御されるようになっているため、その異なる2種の加熱源を終始併用する使い方のみならず、食材収容タンクの加熱源による加熱が或る程度まで進行した中途時点から、開閉蓋に付属の加熱源を併用する使い方も採ることができ、食材の種別や攪拌度合いなどに対する臨機応変性に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、先ず図1〜11はその第1実施形態に係る食材の加熱攪拌装置を示しており、(F)は作業床への据付け台、(1)はその据付け台(F)の上面に開口するタンク逃し入れ口、(2)はその開口周縁部から一体的に起立するタンク受け座用ストッパー、(3)は同じく開口周縁部から一体的に垂下する加熱器用ハンガーであって、ここから後述の電磁誘導加熱器(H)が吊り下げられることになる。
【0020】
(T)は銅製のボール鍋として具体化された食材収容タンクであり、その円錐状の底面には磁性体である鉄粉などの発熱皮膜(図示省略)が溶着一体化されている。但し、その導電性を発揮し得る限りでは、鉄とステンレスとのクラッド鋼板などから断面ほぼU字型に作成しても良い。
【0021】
(4)は食材収容タンク(T)に組み付け一体化されたタンク受け座であり、上記据付け台(F)の正面へ水平な支点軸(5)を介して、起伏的な回動自在に枢着されている。(6)はその支点軸(5)と平行な水平状態として、上記据付け台(F)の内部上段位置に横架された回動ハンドル軸であり、これが据付け台(F)から露出する先端部には、手動ハンドル(7)が嵌め付け一体化されている。
【0022】
又、(8)は同じく据付け台(F)の内部下段位置に横架された水平な伝動軸であり、これと上記回動ハンドル軸(6)との上下相互間には、ギヤ伝動機構(9)が介挿設置されている一方、その伝動軸(8)と上記食材収容タンク(T)の支点軸(5)とが、チェン伝動機構(10)を介して連結されている。
【0023】
そのため、上記手動ハンドル(7)を回動操作すれば、食材収容タンク(T)が水平な支点軸(5)を中心として、据付け台(F)から起し上げ転倒されることになり、その食材収容タンク(T)から加熱攪拌し終えた食材(M)を洩れなく安楽に取り出すことができる。
【0024】
(11)は先に一言した電磁誘導加熱器(H)の器体フレームであって、耐熱性を有する各種の非磁性材から、食材収容タンク(T)の底面と対応する円錐状に弯曲形成されており、その上端周縁部が着脱自在のネジ締結具(12)などによって、上記据付け台(F)の加熱器用ハンガー(3)へ取り付けられ、そのハンガー(3)からの吊り下げ状態にある。
【0025】
そして、電磁誘導加熱器(H)の電磁誘導コイル(13)は渦巻き状態として、このような器体フレーム(11)の上面に取り付け固定されている。その場合、図例では1本の電磁誘導コイル(13)を渦巻き状態として、食材収容タンク(T)の底面全体へ臨ませているが、その収容タンク(T)の大きさ次第では径小な渦巻き状態の第1電磁誘導コイル(13)が食材収容タンク(T)の底面中央部へ臨み、径大な渦巻き状態の第2電磁誘導コイル(13)が食材収容タンク(T)の底面周辺部へ臨むこととなるように、その複数本の電磁誘導コイル(13)を器体フレーム(11)へ同芯サークル状態に固定支持させても良い。
【0026】
他方、(14)は食材収容タンク(T)の開口上面を被覆する開閉蓋であって、図1〜3のような一定高さだけ隆起するほぼ円錐型をなしており、食材収容タンク(T)の上記支点軸(5)と直交する別個な支点軸(15)によって、上記据付け台(F)の片側面へ起伏的な回動自在に枢着されている。これを持ち上げることにより、その食材収容タンク(T)を開放できるようになっている。
【0027】
(16)は上記開閉蓋(14)の中央部に貫通形成された円形の水分放出孔であり、加熱攪拌中の食材(M)から蒸発する水分を抜き出すと共に、後述する食材用攪拌羽根(A)の回転羽根軸を逃し入れて、その干渉を防ぐことにも奉仕する。(17)は同じく開閉蓋(14)における傾斜した周辺部の内面へ、全体的な放射対称分布型に取り付けられた複数個(図例では400Wの合計9個)の遠赤外線輻射電気ヒーター(シーズヒーター)であり、これによって食材(M)の表面へ上方から遠赤外線の輻射熱を投与する。
【0028】
(18)は上記開閉蓋(14)における傾斜した周辺部の外面へ、リング形態に固定設置された配線ダクトであり、各遠赤外線輻射電気ヒーター(17)からのリード線(図示省略)を集合して、上記開閉蓋(14)の支点軸(15)が存在する方向へ導くようになっている。その配線ダクト(18)は開閉蓋(14)を補強する背骨としても兼用機能し得る。
【0029】
上記据付け台(F)の角隅部は図6〜8から明白なように、支柱受け枠(19)として増強されており、その内部には軸受け筒(20)が固定設置されている。(21)は上方から軸受け筒(20)内へ回動自在に差し込まれた支柱であり、その上端部からは水平な駆動ケース(22)が上記食材収容タンク(T)の上方位置まで一体的に張り出されている。
【0030】
(23)は上記支柱(21)の中途高さ位置から張り出す係止片であって、これが支柱受け枠(19)から一体的に立設された位置決めストッパー(24)と係止することにより、上記駆動ケース(22)の先端部が食材収容タンク(T)の真上位置へ正しく指向されるようになっている。(25)はその位置決め状態を固定するため、上記支柱(21)に套嵌されたコレットチャック、(26)はこれを締め付ける手動ロックハンドルである。
【0031】
上記駆動ケース(22)の内部基端位置には図9のような攪拌羽根用駆動モーター(27)が据え付け固定されている。(28)はその駆動モーター(27)の出力軸(29)へカップリング(30)を介して連結一本化された駆動軸であり、その先端部には駆動用ピニオンギヤ(31)が嵌め付け一体化されている。(32)(33)はその駆動軸(28)を軸受けするためのピローブロックとラジアルベアリングである。
【0032】
又、(34)は上記駆動ケース(22)の先端部へ食材収容タンク(T)の中心に向かう垂下状態として軸受けされたセンター軸であり、その上端部に嵌め付け一体化された従動用ベベルギヤ(35)が、上記駆動軸(28)上の駆動用ピニオンギヤ(31)と噛合している。
【0033】
(36)はセンター軸(34)の上部を抱持するベアリングケースであり、上記駆動ケース(22)へ下方からボルト(37)によって固定されている。(38)はそのベアリングケース(36)に挿入セットされた上下一対のラジアルベアリング、(39)は同じくスラストベアリングであり、何れも上記センター軸(34)を回転自在に支持している。
【0034】
(40)は上記センター軸用ベアリングケース(36)の下端部へ嵌め付け固定された径大な太陽ギヤ、(41)はこれと噛合回転する径小な遊星ギヤであり、これからは上記センター軸(34)と平行な偏心軸(42)が一体的に垂下されている。その遊星ギヤ(41)が偏心軸(42)の上端部へ一体回転し得るように付属されているのである。
【0035】
つまり、センター軸(34)が言わば太陽軸として、その偏心軸(42)がこれと一定の間隔距離(d)だけ偏心する遊星軸として、各々機能するようになっているわけである。(43)は上記偏心軸(42)の下端部から横向き一体的に張り出すキー凸子を示している。
【0036】
(44)は上記偏心軸(42)のベアリングケースであり、これに挿入セットされた上下一対のラジアルベアリング(45)によって、偏心軸(42)を回転自在に支持しているが、そのベアリングケース(44)の一部は上記センター軸(34)のベアリングケース(36)を下方から包囲する張り出しケース部(44a)として、連続一体に径大化されている。
【0037】
(46)はその張り出しケース部(44a)も含むベアリングケース(44)と対応する径大なカバーケースであり、偏心軸(42)の上端部に付属する遊星ギヤ(41)と、上記太陽ギヤ(40)とを上方から被覆する位置関係として、その偏心軸(42)のベアリングケース(44)と図外のボルトにより組み付け一体化されている。
【0038】
そして、上記偏心軸(42)におけるベアリングケース(44)の張り出しケース部(44a)と、これを貫通するセンター軸(34)の中途部とが、キー(47)を介して嵌合されており、そのためセンター軸(34)の回転に連れて、その周囲を偏心軸(42)のベアリングケース(44)と上記カバーケース(46)とが公転運動することになる。
【0039】
又、偏心軸(42)の上端部に付属する遊星ギヤ(41)と、センター軸(34)のベアリングケース(36)に嵌め付け一体化された太陽ギヤ(40)とは、互いに噛合しているため、上記のように偏心軸(42)がセンター軸(34)の周囲を公転運動するや、これとの一体に偏心軸(42)が自転運動も行なうことになる。その偏心軸(42)の自転運動する方向と公転運動する方向とは、同一である。
【0040】
尚、(48)は上記偏心軸(42)のベアリングケース(44)を下方から施蓋するように、その偏心軸(42)に固定されたエンドキャップ、(49)はセンター軸(34)へやはり下方から締結された固定ナットを示している。
【0041】
先に一言した食材用攪拌羽根(A)は上記偏心軸(42)へ下方から抜き差し自在に差し込み使用される竪型として、図3や図10のような伸縮し得る垂直の回転羽根軸(50)と、その下端部に枢着された揺動羽根片(51)とから正面視の全体的な錨型を呈している。
【0042】
即ち、その攪拌羽根(A)の回転羽根軸(50)は上端部にキー溝(52)を備えた差し込み芯軸(50a)と、これに套嵌された鞘軸(50b)との二重構造をなし、その内部に挿入された圧縮コイルバネ(53)によって、揺動羽根片(51)を常時食材収容タンク(T)の内面へ弾圧する如く、その伸張方向への付勢力が与えられている。その場合、キー溝(52)は上記偏心軸(42)のキー凸子(43)と対応しており、互いに嵌合されることとなる。
【0043】
(54)は上記回転羽根軸(50)の芯軸(50a)と鞘軸(50b)に貫通された抜け止めピン、(55)はそのピン受け入れ長孔であり、鞘軸(50b)の上下方向に沿って開口延在しているため、その鞘軸(50b)は芯軸(50a)に対して自由に昇降作用し得る。(56)は芯軸(50a)に嵌め付け固定された手掛け環であり、上記偏心軸(42)から回転羽根軸(50)を抜き出し操作する時に手掛け使用される。
【0044】
他方、同じく攪拌羽根(A)の揺動羽根片(51)は合成樹脂材や木材などから成り、その2枚1組として平面視のほぼ一文字型に並列している。又、その揺動羽根片(51)は食材収容タンク(T)の口径よりも小さく、上記偏心軸(42)との一体に公転運動して、その食材収容タンク(T)の内面と全体的にフィットしつつ、食材(M)を万遍なく攪拌作用する。
【0045】
尚、(57)は上記揺動羽根片(51)の2枚1組に共通するものとして、これにネジ締結具(58)を介して取り付け固定された連結ブラケットであり、その中央部が上記回転羽根軸(50)における鞘軸(50b)の下端部へ、水平な支点ピン(59)によって揺動自在に枢着されている。
【0046】
上記食材収容タンク(T)を下方から加熱する電磁誘導加熱器(H)の電磁誘導コイル(13)と、その収容タンク(T)の開閉蓋(14)に付属している遠赤外線輻射電気ヒーター(17)と、食材用攪拌羽根(A)を回転する駆動モーター(27)とは、図11の電気制御回路図から明白なように、その対応的な電磁誘導コイル加熱用インバーター(60)と遠赤外線輻射電気ヒーター用制御ユニット(61)並びに攪拌羽根回転駆動モーター用インバーター(62)により、その加熱温度も含めて各別に制御されるようになっており、そのための調整ボリューム(63)(64)(65)が操作パネル(66)へ一括して並列設置されている。その操作パネル(66)は上記駆動ケース(22)の正面に取り付けられている。
【0047】
上記した加熱攪拌装置により、例えば和菓子の餡やカスタードクリーム、野菜などの炒め物、その他の食材(M)を調理するに当っては、その食材(M)が収容された食材収容タンク(T)の底面を、電磁誘導加熱器(H)により加熱し乍ら、食材用攪拌羽根(A)をその駆動モーター(27)により回転させて、上記食材(M)を攪拌すると共に、その攪拌中にある食材(M)を上方から遠赤外線輻射電気ヒーター(17)によって輻射加熱すれば良い。
【0048】
即ち、電磁誘導加熱器(H)の電磁誘導コイル(13)へ加熱用インバーター(60)から高周波電流を供給すれば、食材収容タンク(T)の底面に渦電流が流れて、その発生したジュール熱により食材(M)が伝導加熱されることとなる一方、その伝導加熱中攪拌羽根(A)により攪拌されて、切り返し反転流動する食材(M)の表面が、上方から遠赤外線の輻射熱により加熱される結果、食材(M)の全体を短時間での効率良く、且つ内部中心まで均一に加熱することができ、そのための温度制御も容易に行なえる。
【0049】
その場合、上記電磁誘導加熱器(H)と遠赤外線輻射電気ヒーター(17)並びにこれらによる加熱温度は、各別に電気制御されるようになっているため、その2種の加熱源を終始併用する使い方のみに限らず、食材(M)の種類やその攪拌度合い、伝熱量などを総合的に考慮して、例えば或る中途時点からは電磁誘導加熱器(H)での伝導加熱を停止するか又はその加熱温度を低下させて、食材(M)の焦げ付きを防止した上、遠赤外線輻射電気ヒーター(17)の使用により、上方から食材(M)の表面をすばやく輻射加熱することができ、その2種の加熱源を経時的に使い分けることも可能である。
【0050】
何れにしても、その加熱攪拌中にある食材(M)の表面からは水分の蒸発が促進され、その水分は上記開閉蓋(14)に開口する水分放出孔(16)から抜き出されるため、遠赤外線輻射電気ヒーター(17)における遠赤外線の輻射効率が低下するおそれはなく、その加熱攪拌し終えた食材(M)を開閉蓋(14)の開放操作と、引き続く食材収容タンク(T)の起し上げ転倒操作により、その収容タンク(T)から便利良く取り出すことができる。
【0051】
図1〜11に基き説明した第1実施形態の場合、食材収容タンク(T)の加熱源を電磁誘導加熱器(H)として、食材(M)を下方から電磁誘導加熱する一方、これと異なる伝熱方式の遠赤外線輻射電気ヒーター(シーズヒーター)(17)を食材収容タンク(T)の開閉蓋(14)へ直かに取り付けて、その食材(M)の表面を上方から輻射加熱しているが、図12の第2実施形態に示す如く、食材収容タンク(T)を下方から蒸気により伝導加熱する一方、その食材(M)の表面へ上方から熱風の対流熱を投与する加熱攪拌装置として構成することも可能である。
【0052】
(67)はその熱風を起生するためのファンヒーターであり、好ましくはフレキシブルな適当長さの熱風供給配管(68)を介して、食材収容タンク(T)の開閉蓋(14)へ抜き差し自在の差し込み状態に連通接続されている。しかも、そのファン駆動モーターの回転数(熱風量)や加熱温度は電気的に制御することができるようになっている。
【0053】
このようなファンヒーター(67)は加熱攪拌装置とのユニット体として組み付け一体化するか、又はその食材収容タンク(T)の周辺部へ別個に据え付け固定すれば良い。そのファンヒーター(67)の加熱媒体としては蒸気やガス、電気、石油などを採用することができる。
【0054】
又、(69)は上記食材収容タンク(T)を気密状態に包囲する蒸気ジャケットであり、ここには図外のボイラーから蒸気供給配管(70)を介して、加熱蒸気が供給される。(71)はその蒸気供給配管(70)の途中に設置された開閉用電磁弁であり、これを電気的に制御して、蒸気供給量(加熱力)やその加熱温度を調整できるようになっている。
【0055】
尚、据付け台(F)は食材収容タンク(T)を作業床へ据え立てるスタンドとして、その蒸気ジャケット(69)から一体的に垂下されている。食材収容タンク(T)に収容された食材用の攪拌羽根(A)とその回転駆動機構は、上記第1実施形態と実質的に同一であるため、図12に図1〜11との対応符号を記入するにとどめて、その第2実施形態の詳細な説明を省略する。
【0056】
このような第2実施形態の加熱攪拌装置では食材収容タンク(T)が下方から蒸気により加熱される一方、その伝導加熱中に攪拌羽根(A)の攪拌作用を受けて、切り返し反転流動する食材(M)の表面が、上方から熱風の対流熱により加熱されることとなる結果、食材(M)の全体をやはり短時間での効率良く、且つ内部中心まで均一に加熱することができる。
【0057】
その場合、蒸気ジャケット(69)への蒸気供給量とファンヒーター(67)からの熱風量は、その加熱温度も含めて各別に電気制御されるようになっているため、上記第1実施形態に準じて、その2種の加熱源を食材(M)の種別や攪拌度合いなどとの関係上、経時的使い分けることも可能であり、何れにしても加熱攪拌中の食材(M)から蒸発する水分は、そのファンヒーター(67)の熱風によって乾燥されると共に、やはり開閉蓋(14)の水分放射孔(16)から抜き出されることになる。
【0058】
更に、図13は本発明の第3実施形態を示しており、これでは食材収容タンク(T)の加熱源をガスの直火として、これにより下方から食材(M)を伝導加熱する一方、これと異なる伝熱方式の遠赤外線輻射電気ヒーター(ハロゲンランプヒーターやカーボンランプヒーター、その他の遠赤外線ランプヒーター)(72)を、食材収容タンク(T)の開閉蓋(14)へ直かに取り付けることにより、同じく食材(M)の表面を上方から輻射加熱するように構成されている。
【0059】
(73)はそのためのガスバーナーであって、食材収容タンク(T)の底面へ臨む状態に据え付けられており、これには図外の元栓から適当な長さのガス供給配管(74)を介して、ガスが供給される。しかも、そのガス供給配管(74)の開閉用電磁弁(75)とガスの点火は電気的に行なわれ、ガス供給量(火力)やその加熱温度を調整制御できるようになっている。これと各別な遠赤外線輻射電気ヒーター(72)の制御は、上記第1実施形態の電気回路に準じて行なえる。
【0060】
その場合、据付け台(F)は食材収容タンク(T)を包囲するかまどとして、好ましくは熱しやすく冷めやすい非蓄熱性断熱材(セラミックファイバー)の内筒(76)と外筒(77)とから二重の断熱構造に形成されている。しかも、その内外相互間に介在する排気ジャケット(78)が、上記内筒(76)に開口分布する多数の排気孔(79)を経て、排気ダクト(煙突)(80)との連通状態にあり、その排気ジャケット(78)の内面にも上記セラミックファイバーなどの非蓄熱性断熱材がライニングされている。
【0061】
尚、茲に第3実施形態の食材用攪拌羽根(A)やその回転駆動機構なども、上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図13に図1〜11との対応符号を記入するにとどめて、その構成の詳細な説明を割愛する。
【0062】
そして、このような第3実施形態の加熱攪拌装置では、食材収容タンク(T)がガスバーナー(73)により加熱される一方、そのガスの直火による伝導加熱中、攪拌羽根(A)の攪拌作用を受けて反転流動する食材(M)の表面が、上方から遠赤外線輻射電気ヒーター(72)の輻射熱によって加熱されることとなり、その結果食材(M)の全体を内部中心まで均一に加熱でき、その調理を短時間での効率良く行なえるのである。
【0063】
その2種の加熱源を上記第1実施形態に準じて、食材(M)の調理中終始併用する使い方のみならず、そのガスによる伝導加熱が或る程度まで進行した中途時点から、遠赤外線の輻射加熱を併用する使い方も採ることができる。
【0064】
尚、図1〜11の第1実施形態では食材収容タンク(T)の加熱源を電磁誘導加熱器(H)として、その開閉蓋(14)へ遠赤外線輻射電気ヒーター(シーズヒーター)(17)を取り付けており、又図12の第2実施形態では食材収容タンク(T)の加熱源を蒸気ジャケット(69)への供給蒸気として、その開閉蓋(14)へファンヒーター(67)からの熱風供給配管(68)を連通接続しており、更に図13の第3実施形態では食材収容タンク(T)の加熱源をガスバーナー(73)からのガス直火として、その開閉蓋(14)へやはり遠赤外線輻射電気ヒーター(遠赤外線ランプヒーター)(72)を取り付けているが、要するに食材収容タンク(T)の加熱源と異なる伝熱方式の加熱源によって、そのタンク(T)に収容された食材(M)を上方から加熱し得る構成である限り、例えば上記第2実施形態のファンヒーター(67)と、上記第1実施形態の電磁誘導加熱器(H)又は第3実施形態のガスバーナー(73)との組み合わせ構成や、上記第2実施形態の蒸気ジャケット(69)に対する供給蒸気と、上記第1実施形態又は第3実施形態の遠赤外線輻射電気ヒーター(17)(72)との組み合わせて構成を採用しても良く、その2種として異なる加熱源同志の組み合わせ構成は自由に選定することができる。
【0065】
又、図示の第1〜3実施形態では食材用攪拌羽根(A)を竪型として、その回転羽根軸(50)を食材収容タンク(T)の内部へ垂直に挿入使用しているが、食材用攪拌羽根(A)の回転羽根軸(50)を半円筒型食材収容タンク(T)の内部へ水平に横架させて、これを回転駆動することにより、食材(M)を攪拌する加熱攪拌装置についても、本発明を適用実施することができる。その食材収容タンク(T)を下方からガス、蒸気又は電気によって伝導加熱する一方、その開口上面を被覆する開閉蓋(14)に、これと異なる伝熱方式の加熱源を付属一体化させて、その上方から食材(M)の表面へ遠赤外線の輻射熱又は熱風の対流熱を投与すれば良い。その場合、食材(M)の表面から蒸発する水分は、食材収容タンク(T)と開閉蓋(14)との相互間隙から抜き出すこともできる。
【0066】
更に、上記何れの実施形態にあっても、食材収容タンク(T)の開閉蓋(14)が食材(M)と向かい合う内面へ、遠赤外線輻射物質の皮膜(図示省略)を被覆一体化させることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る加熱攪拌装置の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】食材収容タンクの転倒機構を示す断面図である。
【図5】図4の5−5線に沿う部分断面図である。
【図6】図1の6−6線に沿う拡大断面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】食材用攪拌羽根の回転駆動機構を示す断面図である。
【図10】食材用攪拌羽根を抽出して示す断面図である。
【図11】第1実施形態の電気制御回路図である。
【図12】本発明に係る加熱攪拌装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図13】同じく本発明に係る加熱攪拌装置の第3実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
(3)・加熱器用ハンガー
(4)・タンク受け座
(5)・支点軸
(6)・回動ハンドル軸
(7)・手動ハンドル
(8)・伝動軸
(9)・ギヤ伝動機構
(10)・チェン伝動機構
(11)・器体フレーム
(13)・伝導誘導コイル
(14)・開閉蓋
(15)・支点軸
(16)・回転羽根軸逃し入れ口
(17)(72)・遠赤外線輻射電気ヒーター
(18)・配線ダクト
(19)・支柱受け枠
(21)・支柱
(23)・駆動ケース
(27)・攪拌羽根用駆動モーター
(28)・駆動軸
(29)・出力軸
(30)・カップリング
(31)・ピニオンギヤ
(34)・センター軸
(35)・ベベルギヤ
(36)・ベアリングケース
(40)・太陽ギヤ
(41)・遊星ギヤ
(42)・偏心軸
(44)・ベアリングケース
(44a)・張り出しケース部
(46)・カバーケース
(50)・回転羽根軸
(50a)・芯軸
(50b)・鞘軸
(51)・揺動羽根片
(52)・キー溝
(53)・圧縮コイルバネ
(54)・抜け止めピン
(55)・ピン受け入れ長孔
(57)・連結ブラケット
(60)・電磁誘導コイル加熱用インバーター
(61)・遠赤外線輻射電気ヒーター用制御ユニット
(62)・攪拌羽根回転駆動モーター用インバーター
(66)・操作パネル
(67)・ファンヒーター
(68)・熱風供給配管
(69)・蒸気ジャケット
(71)(75)・開閉用電磁弁
(73)・ガスバーナー
(74)・ガス供給配管
(76)・内筒
(77)・外筒
(78)・排気ジャケット
(80)・排気ダクト
(A)・食材用攪拌羽根
(F)・据付け台
(H)・電磁誘導加熱器
(T)・食材収容タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス、蒸気又は電気を加熱源として下方から加熱される断面ほぼU字型の食材収容タンク(T)と、その食材収容タンク(T)内の食材(M)を加熱中に攪拌する攪拌羽根(A)と、上記食材収容タンク(T)の開口上面を被覆する開閉蓋(14)とを備えた食材(M)の加熱攪拌装置において、
上記食材収容タンク(T)の加熱源と異なる伝熱方式の加熱源を開閉蓋(14)へ直かに取り付けるか、又はその開閉蓋(14)へ適当な長さの配管(68)を介して連通接続することにより、上記攪拌中の食材(M)を上方からも加熱すると共に、
その加熱攪拌中にある食材(M)の表面から蒸発する水分を、上記食材収容タンク(T)と開閉蓋(14)との相互間隙又は/及び開閉蓋(14)に開口する水分放出孔(16)から抜き出すように定めたことを特徴とする食材の加熱攪拌装置。
【請求項2】
食材収容タンク(T)の加熱源をガス、蒸気又は電気として、その食材(M)を伝導加熱する一方、その開閉蓋(14)へ熱風供給配管(68)を介して連通接続したファンヒーター(67)により、上方から食材(M)へ熱風の対流熱を投与することを特徴とする請求項1記載の食材の加熱攪拌装置。
【請求項3】
食材収容タンク(T)の加熱源をガス、蒸気又は電磁誘導コイル(13)として、その食材(M)を伝導加熱する一方、その開閉蓋(14)へ直かに取り付けた遠赤外線輻射電気ヒーター(17)(72)により、上方から食材(M)へ遠赤外線の輻射熱を投与することを特徴とする請求項1記載の食材の加熱攪拌装置。
【請求項4】
食材収容タンク(T)の加熱源とその開閉蓋(14)に付属の加熱源とを、各別に電気制御することを特徴とする請求項1記載の食材の加熱攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−20914(P2007−20914A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208329(P2005−208329)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000247247)有限会社ナカイ (22)
【Fターム(参考)】