説明

駆動システム

【課題】電動機用インバータのゲート遮断を実行する際に、電動機制御手段において、主制御手段からの指令に応じて実行しているという状態にする。
【解決手段】モータECUと通信可能でシステム全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニットにおいて、モータを駆動するインバータを制御するモータECUから異常発生指令を受信したときには、モータECUなどに異常が生じていると正常に確定するかモータECUなどに異常が生じていると確定されずに所定時間が経過したときに(S200,S210)、インバータのゲート遮断指令をモータECUに送信する(S220)。これにより、モータECUにおいて、ハイブリッド用電子制御ユニットからのゲート遮断指令によりインバータのゲート遮断を行なっているという状態にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システムに関し、詳しくは、駆動用の動力を出力する電動機と、電動機を駆動する電動機用インバータと、電動機用インバータと電力をやりとり可能な蓄電手段と、電動機用インバータを制御する電動機制御手段と、電動機制御手段と通信可能であると共にシステム全体を制御する主制御手段と、を備える駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の駆動システムとしては、車両に搭載され、モータと、モータを駆動するインバータと、相手側から受信したデータを書き込むためのメモリを有する車両コントローラおよびモータコントローラと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この駆動システムでは、両コントローラがそれぞれ自己のメモリを監視し、監視の結果、相手側からデータの受信がないと判定したコントローラは、インバータへのゲート遮断を行なっている。
【特許文献1】特開平5−122801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の駆動システムにおいて、モータコントローラなどに異常が生じたときに、できるだけ迅速にインバータのゲート遮断を行なうために、モータコントローラが、その異常を車両コントローラに送信するが車両コントローラからインバータのゲート遮断指令を受信する前にインバータのゲート遮断を行なうものがある。こうした駆動システムにおいて、駆動システム全体の制御の関係上、車両コントローラ側からの指令に応じてモータコントローラがインバータのゲート遮断を行なっている状態にすることが望まれることがある。
【0004】
本発明の駆動システムは、電動機用インバータのゲート遮断を実行する際に、電動機制御手段において、主制御手段からの指令に応じて実行しているという状態にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の駆動システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の駆動システムは、
駆動用の動力を出力する電動機と、該電動機を駆動する電動機用インバータと、該電動機用インバータと電力をやりとり可能な蓄電手段と、前記電動機用インバータを制御する電動機制御手段と、前記電動機制御手段と通信可能であると共にシステム全体を制御する主制御手段と、を備える駆動システムであって、
前記主制御手段は、前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示していないときであって該電動機制御手段により該電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である、
ことを要旨とする。
【0007】
この本発明の駆動システムでは、主制御手段は、電動機を駆動する電動機用インバータのゲート遮断を電動機制御手段に指示していないときであって電動機制御手段により電動機用インバータのゲート遮断が実行されているときには、電動機用インバータのゲート遮断を電動機制御手段に指示する。これにより、電動機制御手段において、主制御手段から電動機用インバータのゲート遮断の指示を受信する前に電動機用インバータのゲート遮断を行なったときに、主制御手段からの指示によりそのゲート遮断を行なったという状態にすることができる。
【0008】
こうした本発明の駆動システムにおいて、前記主制御手段は、前記電動機と前記電動機用インバータと前記電動機制御手段とを含む電気駆動系に異常が生じて該電動機制御手段により該電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記電気駆動系の異常を確定したときに前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段であるものとすることもできる。この態様の本発明の駆動システムにおいて、前記主制御手段は、前記電気駆動系に異常が生じて前記電動機制御手段により前記電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記電気駆動系の異常を確定できないときでも所定時間が経過したときには前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段であるものとすることもできる。こうすれば、主制御手段において、電気駆動系の異常を確定できないときでも、電動機用インバータのゲート遮断を電動機制御手段に指示することができる。この場合、前記主制御手段に電力を供給する電力供給手段を備え、前記主制御手段は、前記電気駆動系の異常を確定する前に前記電力供給手段の電圧が所定電圧未満に至ったときに前記電気駆動系の異常が確定できないとして前記所定時間が経過したときに前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である、ものとすることもできる。
【0009】
また、本発明の駆動システムにおいて、運転者に所定の情報を報知する報知手段を備え、前記主制御手段は、前記電動機用インバータのゲート遮断を指示すると共に前記電動機用インバータのゲート遮断を行なうことに関する情報が報知されるよう前記報知手段を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、電動機用インバータのゲート遮断を行なうことに関する情報を運転者に報知することができる。ここで、「報知手段」としては、警告灯などが含まれる。
【0010】
さらに、本発明の駆動システムにおいて、内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記電動機の回転軸が接続された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記発電機を駆動する発電機用インバータと、を備え、前記蓄電手段は、前記電動機用インバータに加え、前記発電機用インバータと電力をやりとり可能な手段であり、前記主制御手段は、前記発電機用インバータおよび前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示していないときであって該電動機制御手段により該発電機用インバータおよび該電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記発電機用インバータおよび前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である、ものとすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例である駆動システムを搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、駆動システム全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、ハイブリッド用電子制御ユニット70などに電力供給する電源としての補機バッテリ90と、を備える。
【0013】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0014】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0015】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40は、CPU40aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU40aの他に処理プログラムを記憶するROM40bと、データを一時的に記憶するRAM40cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0016】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0017】
補機バッテリ90は、インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54に電圧を変換するDC/DCコンバータ92を介して接続され、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ハイブリッド用電子制御ユニット70,図示しない補機などに電力を供給している。DC/DCコンバータ92は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により駆動制御されている。
【0018】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、警告灯89への点灯信号などが出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0019】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0020】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にモータMG1,MG2を制御できなくなる異常がモータECU40に生じたときの動作について説明する。図2は、実施例のモータECU40により実行される異常発生時モータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、モータMG1,MG2を制御できなくなる異常がモータECU40に生じたときに実行される。
【0021】
異常発生時モータ制御ルーチンが実行されると、モータECU40のCPU40aは、まず、異常発生指令をハイブリッド用電子制御ユニット70に送信し(ステップS100)、インバータ41,42をゲート遮断し(ステップS110)、ローカルゲート遮断フラグG1に値1を設定する(ステップS120)。ここで、ローカルゲート遮断フラグG1は、初期値として値0が設定され、ハイブリッド用電子制御ユニット70からゲート遮断指令を受信する前にモータECU40によりインバータ41,42のゲート遮断を行なうときに値1が設定されるフラグである。このようにハイブリッド用電子制御ユニット70からゲート遮断指令を受信する前にモータECU40によりインバータ41,42のゲート遮断を行なうのは、モータECU40に異常が生じてモータMG1,MG2を制御できないときにはモータMG1,MG2やインバータ41,42を保護するためや乗員の安全を確保するためにできるだけ迅速にインバータ41,42をゲート遮断することが望まれる、という理由による。
【0022】
続いて、ハイブリッド用電子制御ユニット70からゲート遮断指令を受信するのを待って(ステップS130)、初期値として値0が設定されると共にハイブリッド用電子制御ユニット70からのゲート遮断指令の受信に伴って値1が設定されるメインゲート遮断フラグG2に値1を設定すると共に(ステップS140)、ローカルゲート遮断フラグG2に値0を設定して(ステップS150)、異常発生時モータ制御ルーチンを終了する。このとき、インバータ41,42のゲート遮断は継続される。このようにローカルゲート遮断フラグG1が値1の状態からメインゲート遮断フラグが値1の状態に置き換えるのは、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの指令とは独立してモータECU40によりインバータ41,42がゲート遮断されているという状態ではなく、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの指令に基づいてモータECU40によりインバータ41,42がゲート遮断されているという状態にしたいという理由による。
【0023】
次に、モータECU40から異常発生指令を受信したときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される処理について説明する。図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される異常発生指令受信時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、モータECU40から異常発生指令を受信したときに実行される。
【0024】
異常発生指令受信時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、モータECU40に異常が生じていると確定してよいか否かを判定する(ステップS200)。この判定は、実施例では、所定時間t1(例えば、200msecなど)に亘ってモータECU40から異常発生指令を受信しているか否かなどに基づいて行なうものとした。ところで、こうした車両では、ハイブリッド用電子制御ユニット70に電力を供給する補機バッテリ90の電圧が低下したときなどには、モータECU40に異常が生じていると確定してよいか否かの判定を行なうことができなくなることがある。実施例では、定格電圧が12Vの補機バッテリ90を用いるものとし、この判定が可能な下限電圧Vminを9.5Vと定めるものものとした。なお、これらの電圧は、補機バッテリ90やハイブリッド用電子制御ユニット70の仕様などにより異なる。
【0025】
モータECU40に異常が生じていると確定していないときには、所定時間t2が経過したか否かを判定し(ステップS210)、所定時間t2が経過していないと判定されたときには、ステップS200に戻る。ここで、所定時間t2は、モータECU40に異常が生じていると確定するのに要する時間としての所定時間t1よりも長い時間として定められ、例えば、400msecなどを用いることができる。
【0026】
ステップS200,S210で所定時間t2が経過する前にモータECU40に異常が生じていると確定してもよいと判定されたとき、即ち、モータECU40に異常が生じていると正常に確定したときには、インバータ41,42のゲート遮断指令をモータECU40に送信し(ステップS220)、モータECU40に異常が生じていることを運転者に報知するために警告灯89を点灯して(ステップS230)、異常発生指令受信時制御ルーチンを終了する。インバータ41,42のゲート遮断を指令を受信したモータECU40は、前述したように、メインゲート遮断フラグG2に値1を設定する。これにより、モータECU40において、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの指令に基づいてモータECU40によりインバータ41,42がゲート遮断されているという状態にすることができる。また、このときに警告灯89を点灯することにより、インバータ41,42のゲート遮断状態を運転者に報知することができる。
【0027】
一方、モータECU40に異常が生じていると確定してよいと判定されずに所定時間t2が経過したとき(実施例では、モータECU40に異常が生じていると確定する前に補機バッテリ90の電圧が下限電圧Vmin未満に至ったとき)には、モータECU40に異常が生じていると確定はしていないが、インバータ41,42のゲート遮断指令をモータECU40に送信し(ステップS220)、警告灯89を点灯して(ステップS230)、異常発生指令受信時制御ルーチンを終了する。これにより、補機バッテリ90の電圧の一時的な低下などによってモータECU40に異常が生じていると確定できないときでも、モータECU40において、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの指令に基づいてモータECU40によりインバータ41,42がゲート遮断されているという状態にすることができる。
【0028】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、モータECU40から異常発生指令を受信したとき(ハイブリッド用電子制御ユニット70からインバータ41,42のゲート遮断指令を受信する前にモータECU40によりインバータ41,42のゲート遮断が行なわれているとき)には、モータECU40に異常が生じていると正常に確定するかモータECU40に異常が生じていると確定されずに所定時間t2が経過したときにインバータ41,42のゲート遮断指令をモータECU40に送信することにより、モータECU40において、ハイブリッド用電子制御ユニット70からのゲート遮断指令によりインバータ41,42のゲート遮断を行なっているという状態にすることができる。
【0029】
実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド用電子制御ユニット70において、モータECU40に異常が生じていると確定する前に補機バッテリ90の電圧が下限電圧Vmin未満に至ったときに、モータECU40に異常が生じていると確定できず所定時間t2が経過するのを待ってインバータ41,42のゲート遮断指令をモータECU40に送信するものとしたが、補機バッテリ90の電圧が下限電圧Vmin未満に至る以外の理由によりモータECU40に異常が生じていると確定できないときも、所定時間t2が経過するのを待ってインバータ41,42のゲート遮断指令をモータECU40に送信するものとしてもよい。
【0030】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータECU40に異常が生じたときについて説明したが、モータECU40に限られず、モータMG1,MG2やインバータ41,42などに異常が生じたときについても同様に、モータECU40により図2の異常発生時モータ制御ルーチンを実行し、ハイブリッド用電子制御ユニット70により図3の異常発生指令受信時制御ルーチンを実行するものとしてもよい。
【0031】
実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド用電子制御ユニット70において、インバータ41,42のゲート遮断指令をモータECU40に送信する際に警告灯89を点灯するものとしたが、モータECU40に異常が生じていることを運転者に報知するものであれば、警告灯89に限られず、音声出力によるものを用いるものとしてもよい。また、こうした運転者への報知を行なわないものとしてもよい。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、主としてエンジン22や動力分配統合機構30,モータMG1,MG2,インバータ41,42,バッテリ50,エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52,ハイブリッド用電子制御ユニット70を備えるものとしたが、エンジン22やモータMG1,インバータ41,エンジンECU24を備えないものとするなど、駆動用の動力を出力する電動機と、電動機を駆動する電動機用インバータと、電動機用インバータと電力をやりとり可能な蓄電手段と、電動機用インバータを制御する電動機制御手段と、電動機制御手段と通信可能であると共にシステム全体を制御する主制御手段と、を備える駆動システムを搭載する自動車であればよい。
【0033】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される駆動システムの形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた駆動システムの形態としても構わない。
【0034】
ここで、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「電動機」に相当し、インバータ42が「電動機用インバータ」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、モータECU40などに異常が生じたときに異常発生指令をハイブリッド用電子制御ユニット70に送信すると共にインバータ42をゲート遮断し、ローカルゲート遮断フラグG1に値1を設定し、その後にハイブリッド用電子制御ユニット70からゲート遮断指令を受信するのを待ってメインゲート遮断フラグG2に値1を設定すると共にローカルゲート遮断フラグG2に値0を設定する図2の異常発生時モータ制御ルーチンを実行するモータECU40が「電動機制御手段」に相当し、モータECU40から異常発生指令を受信したとき、モータECU40に異常が生じていると確定するかモータECU40に異常が生じていると確定されずに所定時間t2が経過したときにインバータ42のゲート遮断指令をモータECU40に送信する図3の異常発生指令受信時制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「主制御手段」に相当する。また、補機バッテリ90が「電力供給手段」に相当し、警告灯89が「報知手段」に相当する。さらに、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、インバータ41が「発電機用インバータ」に相当する。
【0035】
ここで、本発明の駆動システムにおいて、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「電動機用インバータ」としては、インバータ42に限定されるものではなく、電動機を駆動するものであれば如何なるタイプのインバータとしても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「電動機制御手段」としては、モータECU40などに異常が生じたときに異常発生指令をハイブリッド用電子制御ユニット70に送信すると共にインバータ42をゲート遮断し、ローカルゲート遮断フラグG1に値1を設定し、その後にハイブリッド用電子制御ユニット70からゲート遮断指令を受信するのを待ってメインゲート遮断フラグG2に値1を設定すると共にローカルゲート遮断フラグG2に値0を設定するモータECU40に限定されるものではなく、電動機用インバータを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「主制御手段」としては、モータECU40から異常発生指令を受信したとき、モータECU40に異常が生じていると確定するかモータECU40に異常が生じていると確定されずに所定時間t2が経過したときにインバータ42のゲート遮断指令をモータECU40に送信するハイブリッド用電子制御ユニット70に限定されるものではなく、電動機制御手段と通信可能であると共にシステム全体を制御し、電動機用インバータのゲート遮断を電動機制御手段に指示していないときであって電動機制御手段により電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、電動機用インバータのゲート遮断を電動機制御手段に指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「電力供給手段」としては、補機バッテリ90に限定されるものではなく、主制御手段に電力を供給するものであれば如何なるものとしても構わない。「報知手段」としては、警告灯89に限定されるものではなく、運転者に所定の情報を報知するものであれば如何なるものとしても構わない。「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれかに軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機用インバータ」としては、インバータ41に限定されるものではなく、発電機を駆動するものであれば如何なるタイプのインバータとしても構わない。なお、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0036】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、駆動システムの製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のモータECU40により実行される異常発生時モータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される異常発生指令受信時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 警告灯、90 補機バッテリ、92 DC/DCコンバータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の動力を出力する電動機と、該電動機を駆動する電動機用インバータと、該電動機用インバータと電力をやりとり可能な蓄電手段と、前記電動機用インバータを制御する電動機制御手段と、前記電動機制御手段と通信可能であると共にシステム全体を制御する主制御手段と、を備える駆動システムであって、
前記主制御手段は、前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示していないときであって該電動機制御手段により該電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である、
駆動システム。
【請求項2】
前記主制御手段は、前記電動機と前記電動機用インバータと前記電動機制御手段とを含む電気駆動系に異常が生じて該電動機制御手段により該電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記電気駆動系の異常を確定したときに前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である請求項1記載の駆動システム。
【請求項3】
前記主制御手段は、前記電気駆動系に異常が生じて前記電動機制御手段により前記電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記電気駆動系の異常を確定できないときでも所定時間が経過したときには前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である請求項2記載の駆動システム。
【請求項4】
請求項3記載の駆動システムであって、
前記主制御手段に電力を供給する電力供給手段を備え、
前記主制御手段は、前記電気駆動系の異常を確定する前に前記電力供給手段の電圧が所定電圧未満に至ったときに前記電気駆動系の異常が確定できないとして前記所定時間が経過したときに前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である、
駆動システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の駆動システムであって、
運転者に所定の情報を報知する報知手段を備え、
前記主制御手段は、前記電動機用インバータのゲート遮断を指示すると共に前記電動機用インバータのゲート遮断を行なうことに関する情報が報知されるよう前記報知手段を制御する手段である、
駆動システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の駆動システムであって、
内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、前記電動機の回転軸が接続された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記発電機を駆動する発電機用インバータと、を備え、
前記蓄電手段は、前記電動機用インバータに加え、前記発電機用インバータと電力をやりとり可能な手段であり、
前記主制御手段は、前記発電機用インバータおよび前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示していないときであって該電動機制御手段により該発電機用インバータおよび該電動機用インバータのゲート遮断が実行されているとき、前記発電機用インバータおよび前記電動機用インバータのゲート遮断を前記電動機制御手段に指示する手段である、
駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−38866(P2009−38866A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199443(P2007−199443)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】