説明

駆動システム

【課題】エンジンの再始動等で消費するエネルギを削減する。
【解決手段】内燃機関10と、内燃機関10の下流側に配置された第1変速機30と、第1変速機30の下流側に配置された第1ワンウェイクラッチ60と、第1ワンウェイクラッチ60の下流側に足軸83を介して配置された駆動輪115L,115Rと、駆動輪115L,115Rの動力を第1変速機30および第1ワンウェイクラッチ60を迂回して内燃機関10に伝達する減速動力伝達経路と、を備える駆動システム1であって、減速動力伝達経路は、第2変速機70と、第2変速機70と内燃機関10の間に配置された第2ワンウェイクラッチ75と、を有し、第2変速機70は、足軸83の回転速度が低下すると変速比がアンダードライブ側に変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、てこクランク機構による偏心体駆動装置(変速機)と、ロック可能なフリーホイール装置(ワンウェイクラッチ機構)とを有し、駆動軸から被駆動軸への変速比を無段階に変更可能な駆動装置(駆動システム)が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の駆動システムは、回生側に設けられた電気機械をジェネレータとし運転することにより足軸から回生されるエネルギを電力として回生することができる。
電気機械をジェネレータとして使用しない場合や、そもそも回生側にジェネレータを備えないシステムでは、駆動輪の回転力をエンジンに伝達して減速を行うエンジンブレーキが行われる。
エンジンブレーキを実施する際は燃料供給が停止されているが、エンジンのクランク軸の回転速度が所定の下限回転速度以上の場合、燃料供給を再開するだけで、エンジンを再始動させることができるが、クランク軸の回転速度が所定の下限回転速度未満の場合、燃料供給を再開するだけではエンジンを再始動させることができず、例えば、セルモータでクランク軸の回転速度を上昇させたり、第2変速機の変速比を変更してクランク軸の回転速度を上昇させたりする必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンの再始動等で消費するエネルギを削減する駆動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、内燃機関と、前記内燃機関の下流側に配置された第1変速機と、前記第1変速機の下流側に配置された第1ワンウェイクラッチと、前記第1ワンウェイクラッチの下流側に足軸を介して配置された駆動輪と、前記駆動輪の動力を前記第1変速機および前記第1ワンウェイクラッチを迂回して前記内燃機関に伝達する減速動力伝達経路と、を備える駆動システムであって、前記減速動力伝達経路は、第2変速機と、前記第2変速機と前記内燃機関の間に配置された第2ワンウェイクラッチと、を有し、前記第2変速機は、前記足軸の回転速度が低下すると変速比がアンダードライブ側に変更されることを特徴とする駆動システムである。
【0007】
このような構成によれば、足軸の回転速度に応じて第2変速機の変速比を変更することができ、複雑な制御やシステムを用いずに、内燃機関のエンジンブレーキ状態から再始動する際に要するクランク軸の回転速度を確保できる足軸の回転速度の区間を増加させることができる。これにより、エンジン再始動等で消費するエネルギを削減することができる。
【0008】
また、前記駆動システムにおいて、前記第2変速機は、前記足軸の回転による遠心力が低下すると変速比がアンダードライブ側に機械的に変更される遠心力レシオ変速機であることが好ましい。
【0009】
また、前記駆動システムにおいて、前記第1変速機の目標変速比が前記第2変速機の変速比に対して小さくなると、前記第1変速機の目標変速比を前記第2変速機の変速比より大きくすることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、第1変速機の変速比が前記第2変速機の変速比より小さくなることにより引き起こされる変速機の破損やドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0011】
また、前記駆動システムにおいて、前記減速動力伝達経路は、動力の伝達可能状態および遮断状態を切り替え可能な断接手段を更に有し、前記第1変速機の目標変速比が前記第2変速機の変速比に対して小さくなると、前記断接手段を遮断状態とすることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、第1変速機の変速比が前記第2変速機の変速比より小さくなることにより引き起こされる変速機の破損やドライバビリティの悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンジンの再始動等で消費するエネルギを削減する駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る駆動システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る第1変速機及び第1ワンウェイクラッチの断面図である。
【図3】本実施形態に係る第1変速機及び第1ワンウェイクラッチの側面図である。
【図4】本実施形態に係る第1変速機及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、(a)は回転半径r1(偏心量)が最大、(b)は回転半径r1が中間、(c)は回転半径r1が0、の状態を示している。
【図5】(a)〜(d)は第1変速機及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「最大」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図6】(a)〜(d)は第1変速機及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「中間」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図7】(a)〜(d)は第1変速機及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「0」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図8】入力軸(第2軸)の回転角度θ1と外リング(揺動部)の角速度ω2との関係を示すグラフである。
【図9】入力軸(第2軸)の回転角度θ1と外リング(揺動部)の摺動速度との関係を示すグラフである。
【図10】(a)〜(f)は第2変速機の動作を説明する図である。
【図11】本実施形態に係る駆動システムの動作を示すフローチャートである。
【図12】(a)はエンジンの正味燃料消費率のマップの例であり、(b)は第2変速機の第2変速比の特性テーブルの例である。
【図13】本実施形態に係る駆動システムの一効果を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
【0016】
≪駆動システムの構成≫
図1に示す本実施形態に係る駆動システム1は、図示しない車両に搭載されており、車両の駆動力を発生するシステムである。なお、車両は、四輪車の他、二輪車、三輪車でもよい。
【0017】
駆動システム1は、エンジン10(内燃機関)と、モータジェネレータ20と、第1変速機30と、複数(ここでは6つ)の第1ワンウェイクラッチ60と、第2変速機70と、第2ワンウェイクラッチ75と、第1軸81、第2軸82、第3軸83(足軸)及び第4軸84と、第1クラッチ91及び第2クラッチ92と、デフ装置110と、バッテリ121と、システムを電子制御するECU200(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
なお、以下の説明において、「正方向」とは、第2軸82(第1軸81、エンジン10の図示しないクランク軸(出力軸))の回転力(動力)を第3軸83(足軸)に伝達する方向であるものとする。また、「減速動力伝達」とは、第3軸83(足軸)の回転力(動力)を第2軸82(第1軸81、エンジン10の図示しないクランク軸(出力軸))に伝達することをいうものとする。
【0018】
<エンジン>
エンジン10は、本実施形態では、シリンダブロック(図示しない)に2つのシリンダ11、11を有する直列2気筒型で構成されたレシプロエンジンである。ただし、シリンダの数・配列はこれに限定されず、適宜に変更自由である。
【0019】
エンジン10は、ECU200からの指令に従って、燃料(ガソリン)を燃焼させ、4サイクル(吸気、圧縮、燃焼、排気)で運転するようになっている。すなわち、エンジン10には、燃料を噴射する燃料インジェクタ、吸気空気の流量を制御するスロットル弁、燃料に点火する点火プラグ(いずれも図示しない)等が取り付けられており、ECU200がこれらを電子制御することで、エンジン10の作動(燃焼サイクル)を制御するようになっている。
【0020】
<第1軸>
第1軸81は、エンジン10の図示しないクランク軸(出力軸)と連結されている。そして、第1軸81は、前記クランク軸と一体に回転するようになっている。
【0021】
<第2軸、第1クラッチ>
第2軸82は、第1クラッチ91を介して、第1軸81と連結されている。また、第2軸82には、ギヤ82aが固定されている。
【0022】
第1クラッチ91は、ECU200の指令に従って、第1軸81と第2軸82との間における動力の伝達を断接、つまり、ON(接続状態)/OFF(切断状態)するものである。第1クラッチ91としては、例えば、電磁クラッチを使用できる。第2クラッチ92についても同様である。
【0023】
また、第2軸82には、回転速度センサ82dが取り付けられている。回転速度センサ82dは、第2軸82の回転速度R82(rpm)を検出し、ECU200に出力するようになっている。
【0024】
<モータジェネレータ>
モータジェネレータ20は、ECU200の指令に従って、モータ(電動機)又はジェネレータ(発電機)として機能するようになっている。そして、モータジェネレータ20の出力軸にはギヤ21が固定されており、ギヤ21は前記したギヤ82aと噛合している。また、モータジェネレータ20は、バッテリ121と接続されており、バッテリ121との間で電力を授受するようになっている。
【0025】
すなわち、モータとして機能する場合、モータジェネレータ20は、バッテリ121を電源として回転(駆動)し、第2軸82を回転(駆動)するようになっている。
一方、ジェネレータとして機能する場合、モータジェネレータ20は、第2軸82の回転力によって発電し、その発電電力がバッテリ121に充電されるようになっている。
また、エンジン10の始動時において、モータジェネレータ20は、ギヤ21、ギヤ82a、第2軸82、第1クラッチ91および第1軸81を介して、エンジン10の図示しないクランク軸(出力軸)を所定の回転速度まで回転させるセルモータとして機能するようになっている。
【0026】
<第1変速機>
第1変速機30は、図1〜図3に示すように、ECU200の指令に従って、第2軸82の回転力(動力)を、変速する4節クランク機構式の変速機である。すなわち、第1変速機30は、第2軸82の回転運動を揺動運動に変換し、その揺動運動を第1ワンウェイクラッチ60に伝達すると共に、第1変速比i1(レシオ)を無限無段階で変速することで、後記する揺動部42の角速度ω2(揺動速度)・揺動角度θ2(揺動振幅)を可変する機構である(図3参照)。
なお、「第1変速比i1=第2軸82の回転速度/第3軸83の回転速度」であり、この場合の「第3軸83の回転速度」は、「外リング62の正方向の揺動(動力)のみで回転した場合における第3軸83の回転速度」である。
【0027】
第1変速機30は、図2、図3に示すように、第2軸82の回転運動を揺動運動に変換する複数(ここでは6本)の揺動変換ロッド40(揺動変換手段)と、各揺動変換ロッド40の回転リング41(回転部)の回転半径r1を無段階で可変することで、各揺動変換ロッド40の揺動部42の角速度ω2(揺動速度)及び揺動角度θ2(揺動振幅)を可変する回転半径可変機構50と、を備えている。
【0028】
ここで、回転半径r1は、入力軸51(第2軸82)の中心軸線O1とディスク52の中心である第1支点O3との距離である。因みに、揺動部42の揺動中心は、第3軸83の中心軸線O2で固定であり、揺動半径r2(第2支点O4と中心軸線O2の距離)も固定である。
なお、揺動変換ロッド40、偏心部51b、ディスク52等の数は変更自由である。
【0029】
<第1変速機−回転半径可変機構>
回転半径可変機構50は、第2軸82と連結され第2軸82の動力が入力される入力軸51と、6枚のディスク52と、入力軸51とディスク52とを相対回転させることで、回転半径r1(偏心半径、偏心量)を可変するピニオン53と、ピニオン53を回動させるDCモータ54と、減速機構55と、を備えている。
【0030】
入力軸51は、変速機ケース58を構成する壁部58a、壁部58bに、軸受59a、軸受59bを介して、回転自在に支持されている。なお、入力軸51の中心軸線O1と、第2軸82の回転軸線とは一致している(図2参照)。
【0031】
図2において、入力軸51の右端側(一端側)は、第2軸82と連結されている。そして、入力軸51は第2軸82と一体に角速度ω1で回転するようになっている。
【0032】
また、入力軸51は、その中心軸線O1上に、ピニオン53が回転自在に挿入される中空部51aを有している。なお、中空部51aは部分的に径方向外に開口しており、ピニオン53が内歯車52bと噛合するようになっている(図3参照)。
【0033】
さらに、入力軸51は、中心軸線O1に対して一定の偏心距離で偏倚した軸方向視で略円形(略三日月形)の偏心部51bを6つ有している(図2参照)。6つの偏心部51bは、本実施形態では、入力軸51の軸方向において等間隔で配置されると共に(図2参照)、周方向において等間隔(60°間隔)で配置されている。
これにより、後記する6つの第1ワンウェイクラッチ60の6つの外リング62の揺動運動の位相が等間隔(60°間隔)でずれることになり(図9参照)、その結果、位相がずれて揺動運動する6つの外リング62から内リング61に、6つの外リング62の揺動運動の正方向における動力が連続的に伝達されることになる。
【0034】
6枚のディスク52は、6つの偏心部51bにそれぞれ設けられている(図2参照)。
さらに説明すると、図3に示すように、各ディスク52は円形を呈している。そして、ディスク52の中心である第1支点O3から外れた位置には、円形の偏心孔52aが形成されており、偏心孔52aには偏心部51bが回転可能に内嵌している。また、偏心孔52aの内周面には内歯車52bが形成されており、内歯車52bはピニオン53と噛合している。
【0035】
ピニオン53は、(1)偏心部51bとディスク52とをロック(相対位置を保持)し、回転半径r1を保持する機能と、(2)偏心部51bとディスク52とを相対回転させ、回転半径r1を可変する機能と、を備えている。
【0036】
すなわち、ピニオン53が、偏心部51b(入力軸51、第2軸82)と同期して回転すると、つまり、ピニオン53が、偏心部51b(入力軸51、第2軸82)と同一の回転速度で回転すると、偏心部51bとディスク52との相対位置が保持され、つまり、偏心部51bとディスク52とが一体化して回転し、回転半径r1が保持されるようになっている。
【0037】
一方、ピニオン53が、偏心部51bと異なる回転速度(上回る回転速度/下回る回転速度)で回転すると、ピニオン53に内歯車52bで噛合するディスク52が偏心部51bの周りに相対回転し、その結果、回転半径r1が可変するようになっている。
【0038】
DCモータ54は、ECU200の指令に従って回転し、ピニオン53を適宜な回転速度にて回動させるものである。DCモータ54の出力軸は、減速機構55(遊星歯車機構)を介して、ピニオン53に接続されており、DCモータ54の出力は、120:1程度に減速されて、ピニオン53に入力されるようになっている。
【0039】
<第1変速機−揺動変換ロッド>
揺動変換ロッド40は、図3に示すように、入力軸51の回転運動が入力される回転リング41と、回転リング41と一体であり、その揺動運動を第1ワンウェイクラッチ60に出力する揺動部42と、軸受43と、を備えている。
【0040】
回転リング41は、軸受43を介して、ディスク52に外嵌するように設けられている。揺動部42は、ピン44を介して、第1ワンウェイクラッチ60の外リング62に回動自在に連結されている。
【0041】
これにより、回転リング41とディスク52とは、相対的に回動自在となっている。したがって、回転リング41は、中心軸線O1を中心として回転半径r1で回転するディスク52に同期して回転するものの、回転リング41はディスク52に対して相対的に回動するので、揺動変換ロッド40全体は回転せず、揺動変換ロッド40はその姿勢を略維持したままとなる。
そして、回転リング41が一回転すると、回転半径r1の大小に関わらず、揺動部42が円弧状で一往復揺動運動し、外リング62も円弧状で一往復揺動運動するようになっている。
【0042】
<第1ワンウェイクラッチ、第3軸>
各第1ワンウェイクラッチ60は、各揺動変換ロッド40の揺動部42の正方向のみの動力を、第3軸83に伝達させるものである。
【0043】
図2に示すように、第3軸83は、変速機ケース58を構成する壁部58a、壁部58bに、軸受59c、軸受59dを介して、中心軸線O2を中心として、回転自在に支持されている。
【0044】
そして、図3に示すように、各第1ワンウェイクラッチ60は、第3軸83の外周面に一体に固定され第3軸83と一体で回転する内リング61(クラッチインナ)と、内リング61に外嵌するように設けられた外リング62(クラッチアウタ)と、内リング61と外リング62との間で周方向に複数設けられたローラ63と、各ローラ63を付勢するコイルばね64(付勢部材)と、を備えている。
【0045】
外リング62は、ピン44を介して、揺動変換ロッド40の揺動部42と回動自在に連結されており、外リング62は揺動部42の揺動運動に連動して、正方向(矢印A1参照)/逆方向(矢印A2参照)に揺動運動する。
【0046】
ローラ63は、内リング61と外リング62とを互いにロック状態/非ロック状態とするものであり、各コイルばね64は、ローラ63を前記ロック状態となる方向に付勢している。
【0047】
そして、図9に示すように、外リング62の正方向の揺動速度が、内リング61(第3軸83)の正方向の回転速度を超えた場合、ローラ63によって外リング62と内リング61とがロック状態(動力伝達状態)となる。そうすると、揺動変換ロッド40の揺動運動する揺動部42の正方向の動力が、第1ワンウェイクラッチ60を介して、第3軸83に伝達し、第3軸83が正方向で回転するようになっている。
【0048】
なお、図9では、外リング62から内リング61に動力が伝達する状態を太線で示している。
【0049】
<回転半径r1の可変状況>
ここで、図4を参照して回転半径r1が可変する状況を説明し、次いで、図5〜図7を参照して、異なる回転半径r1におけるディスク52(回転リング41)の回転運動と、揺動部42の揺動運動を説明する。
【0050】
図4(a)に示すように、第1支点O3(ディスク52の中心)と中心軸線O1とが最も遠ざかると、回転半径r1が「最大」となるように構成されている。
そして、ピニオン53が偏心部51bと異なる回転速度で回転し、偏心部51bとディスク52とが相対回転すると、図4(b)に示すように、第1支点O3と中心軸線O1とが近づき、回転半径r1が「中」となるように構成されている。
さらに、偏心部51bとディスク52とが相対回転すると、図4(c)に示すように、第1支点O3と中心軸線O1とが重なり、回転半径r1が「0」なるように構成されている。
このように、回転半径r1は、「最大」と「0」との間で、無段階で制御可能となっている。
【0051】
次に、図4(a)に示す回転半径r1が「最大」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図5に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「最大」で保持したまま回転するようになっている。
【0052】
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2の振幅が「最大」となる(図8参照)。
また、「第1変速比i1=入力軸51(第2軸82)の回転速度/第3軸83の回転速度」であり、「外リング62の揺動速度=外リング62の半径(固定値)×角速度ω2」であるから、第1変速比i1は「小」となる。
【0053】
次に、図4(b)に示す回転半径r1が「中」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図6に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「中」で保持したまま回転するようになっている。
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2の振幅が「中」となる(図8参照)。そして、第1変速比i1は「中」となる。
【0054】
次に、図4(c)に示す回転半径r1が「0」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図7に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「0」で保持したまま回転するようになっている。つまり、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53が、回転リング41内で空転し、揺動変換ロッド40が動作しないことになる。
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2が「0」となる(図8参照)。そして、第1変速比i1は「∞(無限大)」となる。
【0055】
このようにして、回転半径r1が保持された状態(偏心部51bとピニオン53とが同期回転する状態)では、回転半径r1の大小に関わらず、入力軸51の回転周期と、揺動部42及び外リング62の揺動周期とは、同期(回転半径r1=0の場合を除く)することになる。
【0056】
すなわち、本実施形態では、揺動変換ロッド40、回転半径可変機構50及び第1ワンウェイクラッチ60によって、中心軸線O1、第1支点O3、第2支点O4、中心軸線O2の4つの節を回動点とする4節リンク機構が構成されている。
そして、中心軸線O1を中心とする第1支点O3の回転運動によって、第2支点O4が中心軸線O2を揺動中心として揺動運動するようになっている。
また、回転半径可変機構50により、回転半径r1を可変することで、第2支点O4の角速度ω2及び揺動角度θ2が可変されるようになっている。
【0057】
<第3軸−その他>
図1に戻って説明を続ける。
第3軸83には、ギヤ83aが固定されており、ギヤ83aは後記するリングギヤ112と噛合している。よって、第3軸83は、駆動輪115L、115Rと一体に回転するようになっている。
【0058】
また、第3軸83には、回転速度センサ83dが取り付けられている。回転速度センサ83dは、第3軸83の回転速度R83(rpm)を検出し、ECU200に出力するようになっている。
【0059】
<第4軸、第2クラッチ>
第4軸84は、第2クラッチ92を介して、第3軸83と接続されている。
第2クラッチ92は、第1クラッチ91と同様に、ECU200の指令に従って、第3軸83と第4軸84との間における動力の伝達を断接、つまり、接続(ON)/切断(OFF)するものである。
【0060】
ここで、本実施形態において、第3軸83の動力を、第1変速機30及び第1ワンウェイクラッチ60をバイパス(迂回)して第2軸82に伝達する減速動力伝達経路は、第4軸84と、第2変速機70と、第2ワンウェイクラッチ75とを備えて構成されている。
そして、第2クラッチ92は、前記減速動力伝達経路に設けられ、この減速動力伝達経路を介しての動力の伝達を断接(接続(ON)/切断(OFF))する機能を備えている。また、第2変速機70は、前記減速動力伝達経路に設けられ、この減速動力伝達経路を介しての動力を変速する機能を備えている。
【0061】
<第2変速機>
第2変速機70は、第4軸84の回転力(動力)を変速する変速機である。なお、第2変速機70は、第4軸84の回転速度によって、第2変速機70の変速比(第2変速比i2)を変更することができるようになっている。
【0062】
以下の説明において、第2変速機70は、ベルト式無段変速機であるものとして説明する。
図10に示すように、第2変速機70は、第4軸84に固定されたドライブフェイス71と、第4軸84の軸方向に移動可能な可動プーリ72と、第2軸82の側に設けられたプーリ73(後記する第2ワンウェイクラッチ75の外リング(図示せず))と、可動プーリ72(ドライブフェイス71)とプーリ73とを接続するベルト74と、を備えている。
可動プーリ72の内部は、図10(b)および図10(e)に示すように、第4軸84に固定されたプレート72aと、可動プーリ72をドライブフェイス71側に付勢する付勢部材72bと、第4軸84の径方向に移動可能なウェイトローラ72cとを備えている。
【0063】
ここで、第2変速機70の第2変速比i2は、「プーリ73の回転速度/可動プーリ72(ドライブフェイス71)の回転速度」で与えられる。なお、可動プーリ72(ドライブフェイス71)の回転速度は、第4軸84の回転速度と等しい。また、第2クラッチ92がON(接続)された状態において、第4軸84の回転速度は、第3軸83の回転速度と等しくなる。また、後記する第2ワンウェイクラッチ75が動力伝達状態において、プーリ73の回転速度は、第2軸82の回転速度と等しくなる。
即ち、第2クラッチ92がON(接続)された状態かつ第2ワンウェイクラッチ75が動力伝達状態において、第2変速比i2は、「第2軸82の回転速度/第3軸83の回転速度」で与えられる。
【0064】
低車速時(即ち、第4軸84が低回転速度で回転している時)、ウェイトローラ72cに作用する遠心力が小さいので、図10(a)および図10(b)に示すように、可動プーリ72は付勢部材72bによりドライブフェイス71方向に付勢され、ドライブフェイス71と可動プーリ72との間は狭い状態となり、巻きかけ径が大きくなる。これにより、図10(c)に示すように、第2変速比i2が高い状態(UD(アンダードライブ)側)となっている。
【0065】
一方、高車速時(即ち、第4軸84が高回転速度で回転している時)、図10(d)および図10(e)に示すように、遠心力によりウェイトローラ72cが径方向外側に移動して、ドライブフェイス71と可動プーリ72との間は広い状態となり、巻きかけ径が小さくなる。これにより、図10(f)に示すように、第2変速比i2が低い状態(OD(オーバードライブ)側)となっている。
【0066】
<第2ワンウェイクラッチ>
第2ワンウェイクラッチ75は、外周面に第2変速機70のプーリ73が一体に固定されプーリ73と一体で回転する外リング(図示せず)と、第2軸82の外周面に一体に固定され第2軸82と一体で回転する内リング(図示せず)と、内リングと外リングとの間で周方向に複数設けられたローラ(図示せず)と、各ローラを付勢する付勢部材(図示せず)と、を備えている。
そして、外リングの正方向の回転速度が、内リングの正方向の回転速度を超えた場合、動力伝達状態となり、第4軸84の回転力(動力)が第2軸82に伝達するようになっている。
【0067】
<デフ装置>
デフ装置110のデフケース111には、リングギヤ112が固定されており、リングギヤ112は、第3軸83に固定されたギヤ83aと噛合している。そして、ピニオンギヤ及びサイドギヤから構成されたデフギヤ113は、左右の駆動軸114L、駆動軸114Rを介して、左右の駆動輪115L、駆動輪115Rにそれぞれ連結されている。これにより、駆動輪115L及び駆動輪115Rは、第3軸83(足軸)と略一体で回転するようになっている。
【0068】
<バッテリ>
バッテリ121は、例えば、リチウムイオン型で充放電可能に構成された蓄電装置である。バッテリ121は、モータジェネレータ20との間で電力を授受し、DCモータ54に電力を供給するようになっている。
【0069】
バッテリ121には、SOCセンサ122が取り付けられている。そして、SOCセンサ122は、バッテリ121のSOC(State Of Charge(%)、残量)を検出し、ECU200に出力するようになっている。
【0070】
<その他センサ>
アクセル開度センサ131は、アクセルペダル(図示しない)のアクセル開度を検出し、ECU200に出力するようになっている。
車速センサ132は、車速を検出し、ECU200に出力するようになっている。
【0071】
<ECU>
ECU200は、駆動システム1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、各種機器を制御するようになっている。
【0072】
ECU200は、EV走行モード、エンジン走行モード、パラレル走行モードのいずれかを選択し、選択したモードに従って、駆動システム1を制御する機能を備えている。
なお、EV走行モードはモータジェネレータ20を動力源とするモードであり、エンジン走行モードはエンジン10を動力源とするモードであり、パラレル走行モードはエンジン10及びモータジェネレータ20を動力源とするモードである。
【0073】
具体的には、ECU200は、アクセル開度と現在の第3軸83の回転速度R83とに基づいて、マップ検索により、第3軸83に要求される要求トルクを算出するように設定されている。
そして、例えば、「要求トルク≦第1閾値」である場合、EV走行モードを選択し、「第1閾値<要求トルク≦第2閾値」である場合、エンジン走行モードを選択し、「第2閾値<要求トルク」である場合、パラレル走行モードを選択するように設定されている。
【0074】
≪駆動システムの動作≫
次に、駆動システム1の動作について説明する。
【0075】
図11を参照して、エンジン走行中における第1変速機30の第1変速比i1および第2クラッチ92の制御について説明する。なお、前提として、駆動システム1が搭載された車両は走行しており、第1クラッチ91がON(接続)された状態であるものとする。
【0076】
ステップS1において、ECU200は、第1変速機30の目標変速比iBSFCを算出する。
まず、ECU200は、アクセル開度センサ131で検出されたアクセル開度等に基づいてドライバ要求出力を算出する。なお、アクセル開度が大きくなるほどドライバ要求出力も大きくなり、アクセル開度が小さくなるほどドライバ要求出力も小さくなる。
次に、図12(a)に示すようなエンジン10の正味燃料消費率(BSFC:Brake Specific Fuel Consumption)のマップに基づいて、ドライバ要求出力に対して正味燃料消費率が小さくなるエンジン10の目標回転速度(ENG回転速度)ωBSFCを算出する。
【0077】
そして、ECU200は、式(1)に基づいて、目標変速比iBSFCを算出する。
BSFC =ωBSFC/(V/L) ……(1)
ここで、Vは、車速センサ132で検出された車速[m/s]である。Lは、駆動輪115L,115Rの周長[m/回転]であり、ECU200にあらかじめ記憶されている。なお、(V/L)は、現在の第3軸83(足軸)の回転速度(rpm)となる。
【0078】
ステップS2において、ECU200は、第2変速機70の第2変速比i2を算出する。
ECU200は、図12(b)に示すような特性テーブルに基づいて、回転速度センサ83dで検出した第3軸83の回転速度R83(足軸回転速度)に対応する第2変速比i2を算出する。なお、図12(b)には、エンジンブレーキ時の第2軸82(エンジン10のクランク軸)の回転速度R82も図示されているが、これについては後記する。
【0079】
ステップS3において、ECU200は、ステップS1で算出した目標変速比iBSFCがステップS2で算出した第2変速比i2に所定値Aを加えたもの以上であるか否かを判定する。ここで、所定値Aは、公差やセンシング誤差を考慮して設定される値である。
目標変速比iBSFCが第2変速比i2に所定値Aを加えたもの以上である場合(S3・Yes)、ECU200の処理はステップS4に進む。一方、目標変速比iBSFCが第2変速比i2に所定値Aを加えたもの以上でない場合(S3・No)、ECU200の処理はステップS6に進む。
【0080】
ステップS4において、ECU200は、第2クラッチ92をON(接続)された状態とする。
ステップS5において、ECU200は、第1変速機30の第1変速比i1が目標変速比iBSFCとなるように、DCモータ54を制御する。
そして、ECU200の第1変速機30の第1変速比i1および第2クラッチ92の制御の処理を終了する。
【0081】
ステップS6において、ECU200は、ステップS1で算出したドライバ要求出力が0以下であるか否かを判定する。
ここで、ドライバ要求出力が0未満とは、例えば、ブレーキペダル(図示せず)を操作された場合である。また、ドライバ要求出力が0とは、例えば、アクセルペダル(図示せず)およびブレーキペダル(図示せず)が操作されていない場合である。
ドライバ要求出力が0以下である場合(S6・Yes)、ECU200の処理はステップS7に進む。一方、ドライバ要求出力が0以下でない場合(S6・No)、ECU200の処理は、ステップS9に進む。
【0082】
ステップS7において、ECU200は、第2クラッチ92をON(接続)された状態とする。
ステップS8において、ECU200は、第1変速機30の第1変速比i1が第2変速比i2に所定値Aを加えたものとなるように、DCモータ54を制御する。
そして、ECU200の第1変速機30の第1変速比i1および第2クラッチ92の制御の処理を終了する。
【0083】
ステップS9において、ECU200は、車両が減速中であるか否かを判定する。
車両が減速中である場合(S9・Yes)、ECU200の処理はステップS7に進む。一方、車両が減速中でない場合(S9・No)、ECU200の処理は、ステップS10に進む。
【0084】
ステップS10において、ECU200は、第2クラッチ92をOFF(切断)された状態とする。
ステップS11において、ECU200は、第1変速機30の第1変速比i1が目標変速比iBSFCとなるように、DCモータ54を制御する。
そして、ECU200の第1変速機30の第1変速比i1および第2クラッチ92の制御の処理を終了する。
【0085】
≪駆動システムの効果≫
次に、駆動システム1の効果について説明する。
【0086】
エンジンブレーキなどの第3軸83(足軸)の動力が第2軸82(エンジン10のクランク軸)に伝達する減速動力伝達時において、第2軸82(エンジン10のクランク軸)の回転速度R82は、第3軸83(足軸)の回転速度と第2変速機70の第2変速比i2の積となる。なお、第1変速比i1が第2変速比i2より大きくなるように制御されるため(図11参照)、エンジンブレーキ時において、第1ワンウェイクラッチ60は非ロック状態となっている。
【0087】
エンジンブレーキを実施する際は燃料供給が停止されているが、エンジン10のクランク軸の回転速度が下限回転速度Rlim以上の場合、燃料供給を再開するだけで、エンジン10を再始動させることができる。
【0088】
一方、エンジン10のクランク軸の回転速度が下限回転速度Rlim未満の場合、燃料供給を再開するだけではエンジン10を再始動させることができず、例えば、モータジェネレータ20をセルモータとして機能させ、エンジン10のクランク軸の回転速度を上昇させる必要がある。
【0089】
第2変速機の変速比を変更しない従来例(図12(b)の太い破線参照)においては、第3軸(足軸)の回転速度がRc未満となると、第2軸(エンジンのクランク軸)の回転速度が下限回転速度Rlim未満となり、燃料供給を再開するだけではエンジンを再始動させることができず、エンジンの再始動に電力等を必要とする。
【0090】
これに対し、本実施形態に係る駆動システム1は、第3軸(足軸)の回転速度がRb未満となると、第3軸(足軸)の回転速度の減少に伴い、ウェイトローラ72cに作用する遠心力が小さくなり(図10(b)参照)、第2変速機70の第2変速比i2が大きくなり(図12(b)参照)、アンダードライブ(UD)側に変更される。これにより、第2軸82(エンジン10のクランク軸)の回転速度R82が下限回転速度Rlim以上となる領域が拡大する。即ち、第3軸(足軸)の回転速度がRd以上であれば、燃料供給を再開するだけで、エンジン10を再始動させることができる。
【0091】
このように、本実施形態に係る駆動システム1によれば、第3軸(足軸)側の回転速度(遠心力)に応じて変速比(第2変速比i2)が変化する第2変速機70を有することにより、複雑な電子制御やシステムを用いずに、燃料供給を再開するだけで、エンジン10を再始動させることができる第3軸(足軸)の回転速度の区間を増加させることができる。これにより、エンジン10の再始動等で消費するエネルギを削減することができる。
【0092】
≪駆動システムの一動作例≫
図13は、本実施形態に係る駆動システム1の一効果を示すタイムチャートである。
図13には、第3軸(足軸)の回転速度R83(車速Vに相当)と、第1変速機30の第1変速比i1と、第2変速機70の第2変速比i2と、第2クラッチ92のON(接続状態)/OFF(切断状態)と、を示している。
【0093】
タイムT1において、第3軸の回転速度R83がRa以上となったことにより、第2変速比i2は回転速度R83に応じて変化する(図12(b)参照)。なお、第2クラッチ92はON(接続)状態であり(ステップS4参照)、第1変速比i1は、目標変速比iBSFCとなるように制御する(ステップS5参照)。
【0094】
タイムT2において、第1変速比i1の目標変速比iBSFCが第2変速比i2より低い状態となる。これは、エンジン10の出力が小さい場合、BSFCの良い回転速度ωBSFCが低いため、小さな目標変速比iBSFC(第1変速比i1)を必要とするためである。
このため、第2クラッチ92をOFF(切断)状態として(ステップS10参照)、第1変速比i1が目標変速比iBSFCとなるように制御する(ステップS11参照)。
これにより、「第1変速比i1<第2変速比i2」となることにより引き起こされる変速機(第1変速機30、第2変速機70)の破損を防止することができる。また、第1変速比i1が目標変速比iBSFCとなるように制御することができ、ドライバビリティが悪化することを防止することができる。
【0095】
タイムT3において、第1変速比i1が第2変速比i2より高い状態となると、第2クラッチ92をON(接続)状態とし(ステップS4参照)、第1変速比i1が目標変速比iBSFCとなるように制御する(ステップS5参照)。
【0096】
タイムT4において、第3軸の回転速度R83がRb以上となったことにより、第2変速比i2はOD側で一定となる(図12(b)参照)。なお、第2クラッチ92はON(接続)状態であり(ステップS4参照)、第1変速比i1は、目標変速比iBSFCとなるように制御する(ステップS5参照)。
【0097】
タイムT5において、第1変速比i1の目標変速比iBSFCが第2変速比i2より低い状態となる。ここでは、減速中であるため(ステップS9・Yes)、第2クラッチ92をOFF(切断)状態とせず、ON(接続)状態として(ステップS7参照)、第1変速比i1が第2変速比i2よりもUD側となるように制御する(ステップS8参照)。
このように、減速要求(ステップS6・Yes)、緩減速中(ステップS9・Yes;例えば、エンジン出力が走行抵抗に負けて減速)等のその後の減速が予測されているときは第2クラッチ92をOFF(切断)状態とせず、ON(接続)状態としている。
これにより、「第1変速比i1<第2変速比i2」となることにより引き起こされる変速機(第1変速機30、第2変速機70)の破損を防止することができる。
【0098】
タイムT6において、第1変速比i1の目標変速比iBSFCが第2変速比i2より高い状態となる。なお、第2クラッチ92はON(接続)状態であり(ステップS4参照)、第1変速比i1は、目標変速比iBSFCとなるように制御する(ステップS5参照)。
仮に、タイムT5において第2クラッチ92をOFF(切断)状態とした場合、タイムT6において第2クラッチ92をON(接続)状態とすることとなるが、減速中に第2クラッチ92をON(接続)状態とすると、接続に要する時間を要したり、接続時のショックが生じることとなる。これに対し、本実施形態に係る駆動システム1は、タイムT5において第2クラッチ92をON(接続)状態としているため接続時のショックが生じることを解消することができる。
これにより、ドライバビリティが悪化することを防止することができる。
【0099】
タイムT7において、第3軸の回転速度R83がRb未満となったことにより、第2変速比i2は回転速度R83に応じて変化する(図12(b)参照)。なお、第2クラッチ92はON(接続)状態であり(ステップS4参照)、第1変速比i1は、目標変速比iBSFCとなるように制御する(ステップS5参照)。
【0100】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更できる。
【0101】
前記した実施形態では、第2変速機70は、ベルト式無段変速機であるものとして説明したが、これに限られるものではない。第2変速機70は、第4軸84の回転速度によって、第2変速機70の変速比(第2変速比i2)を変更することができるようになっていればよく、また、有段変速機であってもよい。
【0102】
前記した実施形態では、第2クラッチ92は、第3軸83(足軸)と第2変速機70との間に配置されるものとして説明したが、これに限られるものではなく、第2変速機70と第2ワンウェイクラッチ75との間に配置される構成であってもよい。
【0103】
前記した実施形態では、回転半径可変機構50は、偏心部51bと、ディスク52と、ピニオン53とを備えて構成したが、これに限定されない。
例えば、入力軸51と同軸で同期回転する円板を設け、この円板の径方向に延びるスライド溝等によって、第1支点O3(図3参照)を径方向にスライド可能に構成し、アクチュエータによって第1支点O3を径方向にスライドさせ、回転半径r1を可変する構成としてもよい。
【0104】
前記した実施形態では、第1支点O3の回転半径r1を可変する構成としたが(図3参照)、これに代えて又は加えて、アクチュエータによって第2支点O4を径方向にスライドすることで、揺動半径r2を可変し、角速度ω2及び揺動角度θ2を可変する構成としてもよい。
また、揺動変換ロッド40を伸縮可能に構成し、アクチュエータによって、第1支点O3と第2支点O4との距離を可変することで、角速度ω2及び揺動角度θ2を可変する構成としてもよい。
【0105】
前記した実施形態では、エンジン10(内燃機関)がレシプロエンジンである構成を例示したが、その他に例えば、ロータリエンジン、ガスタービンエンジン等でもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
【0106】
前記した実施形態では、エンジン10がガソリンを燃焼させるガソリンエンジンである構成を例示したが、その他に例えば、軽油を燃焼させるディーゼルエンジン、水素を燃焼させる水素エンジン等でもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 駆動システム
10 エンジン(内燃機関)
20 モータジェネレータ
30 第1変速機
60 第1ワンウェイクラッチ
70 第2変速機(減速動力伝達経路)
75 第2ワンウェイクラッチ(減速動力伝達経路)
81 第1軸
82 第2軸
83 第3軸(足軸)
84 第4軸(減速動力伝達経路)
91 第1クラッチ91
92 第2クラッチ92(断接手段)
115L、115R 駆動輪
200 ECU
i1 第1変速比
i2 第2変速比
BSFC 目標変速比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関の下流側に配置された第1変速機と、
前記第1変速機の下流側に配置された第1ワンウェイクラッチと、
前記第1ワンウェイクラッチの下流側に足軸を介して配置された駆動輪と、
前記駆動輪の動力を前記第1変速機および前記第1ワンウェイクラッチを迂回して前記内燃機関に伝達する減速動力伝達経路と、を備える駆動システムであって、
前記減速動力伝達経路は、
第2変速機と、
前記第2変速機と前記内燃機関の間に配置された第2ワンウェイクラッチと、を有し、
前記第2変速機は、
前記足軸の回転速度が低下すると変速比がアンダードライブ側に変更される
ことを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
前記第2変速機は、
前記足軸の回転による遠心力が低下すると変速比がアンダードライブ側に機械的に変更される遠心力レシオ変速機である
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記第1変速機の目標変速比が前記第2変速機の変速比に対して小さくなると、
前記第1変速機の目標変速比を前記第2変速機の変速比より大きくする
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記減速動力伝達経路は、
動力の伝達可能状態および遮断状態を切り替え可能な断接手段を更に有し、
前記第1変速機の目標変速比が前記第2変速機の変速比に対して小さくなると、
前記断接手段を遮断状態とする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−67355(P2013−67355A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209302(P2011−209302)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】