説明

駆動伝達装置及び画像形成装置

【課題】 慣性体を大きくせずに、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動を駆動源や伝達機構の振動の周波数と異ならせることができる駆動伝達装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 弾性体たるダンパ220が、フランジ170と慣性体たるフライホイール210との間に挟まれてネジ止めされている。このダンパ220により、回転体を含んだ駆動装置全体の剛性が変更され、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動を駆動源たる駆動モータ130や各ギヤ140、160の振動の周波数と異ならせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置及び画像形成装置に備えられる駆動伝達装置及びこの装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、感光体ベルトなどベルト部材を回転させる駆動ローラや、感光体ドラムなどの回転体を一定の回転速度で回転させるためにモータ等の駆動源からの駆動力を回転体に伝達する駆動伝達装置が設けられている。この駆動伝達装置は、回転体から延びる回転軸にギヤなどを介してモータの駆動力を伝達している。
しかし、モータの回転による振動やギヤの噛合いによる振動などの駆動伝達系の振動の影響で、回転軸の速度が変動し、回転体の回転速度が安定せず回転ムラを起こしてしまう。回転体が感光体の場合、このような回転ムラが生じると、バンディングや色ずれを引き起こしてしまう。
【0003】
回転体の回転速度を一定速度とする方法として、慣性体たるフライホイールを設け、回転軸の慣性モーメントを大きくするものが知られている(例えば、特許文献1)。このフライホイールの慣性モーメントによって、回転軸が等速回転を維持しようとする力が強くなる。これにより、ギヤやモータの振動があっても、フライホイールの慣性モーメントによって、回転軸を等速で回転させることができる。その結果、回転体は、ギヤやモータの振動に影響されることなく等速で回転することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−262567号公報
【特許文献2】特開2003−206993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転体と駆動伝達装置全体の剛性や、回転体やフライホイールなどそれぞれの慣性モーメントの影響により、回転体を含んだ駆動伝達装置全体がねじり振動する。その回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動が、モータの振動やギヤの噛合い振動などの駆動伝達系の振動の周波数とほぼ同じ場合、共振してしまう。この共振により、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり振動が大きくなり、回転ムラが増大してしまっていた。
【0006】
そこで、フライホイールのイナーシャを大きくして、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動を変更して、モータの回転による振動やギヤの噛合いによる振動などの駆動伝達系の振動の周波数と共振させないようにすることも考えられる。しかしながら、フライホイールが大きくなり、装置の大型化や、重量増大による軸倒れなどの問題が生じる。また、回転軸を回転させるときに大きな駆動力が必要となり、モータの負荷が大きくなる。また、立ち上がりの応答性が悪く、回転体が所定速度となるまで時間を要してしまうという問題も生じる。
【0007】
特許文献2には、以下のような構成を備えた駆動伝達装置が記載されている。感光体に連結される軸にフライホイールを回転自在に取り付け、このフライホイールを駆動源の駆動ギヤと噛合う軸固定の従動ギヤの側面に弾性体からなる押し付け部材によって押し付るという構成である。このような構成とすることで、フライホイールが摩擦力を介して従動ギヤと締結される。フライホイールと従動ギヤとの間の最大静止摩擦力を越える回転トルクが従動ギヤに加わったとき、フライホイールが従動ギヤに対して滑りを生じる。これにより、装置の立ち上がりなど、従動ギヤに大きな回転トルクが加わるときは、フライホイールが従動ギヤに対して滑って従動ギヤの回転に追随することがない。その結果、立ち上がり時にフライホイールの慣性力の影響をなくすことができる。よって、立ち上がり時の応答性が改善され、回転体が所定速度となるまで時間を短縮することができる。しかしながら、この特許文献2においても、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり振動を、モータの回転による振動やギヤの噛合いによる振動などの駆動伝達系の振動の周波数と共振させないようにするためにはフライホイールを大きくする必要があり、装置が大型化するなどの問題がある。
【0008】
なお、上記問題は、感光体に限られない。例えば、中間転写ベルトなど転写ベルトを回転させる駆動ローラなども、回転ムラがあるとバンディングや色ずれを引き起こしてしまう。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは慣性体を大きくせずに、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動を駆動源や伝達機構の振動の周波数と異ならせることができる駆動伝達装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動源と、該駆動源の駆動力を回転体に伝達する伝達機構と、該回転体とともに回転し慣性力を発揮する慣性体とを備えた駆動伝達装置において、該慣性体は、弾性体を介して軸に固定された固定部材の側面と該慣性体の側面とに上記弾性体を挟みこんで、該固定部材にネジによってネジ止めされることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の駆動伝達装置において、上記ネジのネジ頭と上記慣性体側面との間にも弾性体が挟みこまれていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の駆動伝達装置において、上記弾性体は、軸方向に突出する突起部が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の駆動伝達装置において、上記弾性体は、ネジが挿入される貫通孔を有しており、上記突起の一部が貫通孔から突出していることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3または4の駆動伝達装置において、上記突起の一部が外側へ突出していることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3乃至5いずれかの駆動伝達装置において、上記突起部は、上記弾性体の同一側面に少なくとも3個以上等間隔に設けていることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかの駆動伝達装置において、上記慣性体と当接する電荷除去部材を備えていることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかの駆動伝達装置において、上記回転体を、上記軸から着脱可能に構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、表面に静電潜像を形成し周方向に回転移動する像担持体と、駆動源からの回転駆動力を該像担持体に伝達する駆動伝達手段と、該像担持体上の静電潜像を顕像化する現像手段と、顕像化されるトナー像を記録材に転写する転写手段と、転写される記録材上のトナー像を定着する定着手段とを有する画像形成装置において、上記駆動伝達手段として、請求項1乃至8いずれかの駆動伝達装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記像担持体と、現像手段と転写手段のうち少なくともひとつとを一体としてユニット化して装置本体から着脱可能に構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至8の発明によれば、弾性体が、軸に固定された固定部材と慣性体との間に挟まれてネジ止めされている。これにより、回転体を含んだ駆動装置全体の剛性が変更され、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動を駆動源の回転による振動や伝達機構の噛合いによる振動の周波数と異ならせることができる。よって、回転体を含んだ駆動装置全体が駆動源の回転による振動や伝達機構の噛合いによる振動の周波数と共振することがなくなり、回転体を含んだ駆動装置全体が大きくねじり振動するのを抑制することができる。その結果、回転体を安定的に回転させることができ、バンディングや色ずれを抑制することができる。
また、慣性体のイナーシャを大きくせずとも、回転体を含んだ駆動装置全体のねじり固有振動数を駆動源の回転による振動や伝達機構の噛合いによる振動の周波数と異ならせることができる。よって、慣性体のイナーシャを必要最低限にすることができ、装置の大型化や、重量増大による軸倒れを抑制することができる。また、慣性体の慣性モーメントを必要最低限に抑えることができるので、モータの負荷が増大するのを抑制することができるとともに、立ち上がり時の応答性を良くすることができ、回転体が所定速度となるまで時間を短縮することができる。
さらに弾性体は、軸に固定された固定部材と慣性体との間に挟まれてネジ止めされているだけであるので、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動数に応じて容易に弾性体を交換することができる。これにより、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動数を容易に、駆動源の回転による振動や伝達機構の噛合いによる振動の周波数と異ならせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真式のカラー画像形成装置の一実施形態について説明する。図1は、本発明の実施例に係わるカラー画像形成装置の全体構成の概略図である。このカラー画像形成装置は、像担持体たる可撓性の感光体ベルト1を備えている。感光体ベルト1は、複数の回動ローラ2、31、32間に架設され、回動ローラ2の回転駆動により、図中の矢印A方向(時計方向)に回動(副走査)され、ベルト表面が画像形成面となるように構成する。感光体ベルト1に静電潜像、トナー像を形成するための手段として、感光体ベルト1のまわりには、帯電装置としての帯電チャージャ4と、露光装置としての光書込ユニット5と、カラー現像装置6a、6b、6c、6dと、中間転写体としての中間転写ベルト10と、感光体クリーニング装置15等が配設されている。カラー現像装置6a、6b、6c、6dは、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の一成分系現像剤を収納する一成分現像装置である。カラー画像形成装置6a、6b、6c、6dは、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の4色のトナー像を、それぞれ感光体ベルト1上に個別に形成する。そして、これらを中間転写ベルト10に順次重ね合わせて中間転写した後、4色重ね合わせ像として図示しない転写紙に一括2次転写するものである。
【0013】
中間転写ベルト10は、回動ローラ11、12の間に架設され、回動ローラ12の回転駆動により、図中の矢印B方向(反時計方向)に回動される。感光体ベルト1と中間転写ベルト10は、感光体ベルト1の回動ローラ32を設けた部分で接触している。この接触部の中間転写ベルト10側には、導電性を有するバイアスローラ13が中間転写ベルト10裏面に所定の条件で接触している。また、中間転写ベルト10をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置16が設けられている。
【0014】
また、転写紙の処理に係わる構成要素として、給紙台(給紙カセット)17、給紙ローラ18、搬送ローラ対19a、19b、レジストローラ対20a、20bよりなる給紙ユニットと、中間転写ベルト10からの画像を転写する2次転写ローラ14と、定着ユニット80と、排紙ローラ対81a、81bと、排紙スタック部82とを備えている。
【0015】
次に、上記カラー画像形成装置の動作を説明する。まず、フルカラー画像形成時の動作について説明する。カラー画像形成装置がフルカラーの画像データを受け取ると、感光体ベルト1が図1中A方向に回転する。感光体ベルト1は、帯電チャージャ4により一様に帯電された後、光書込ユニット5により、画像情報に基づいて発光が制御されるレーザの走査露光をうけ、表面には静電潜像が形成される。感光体ベルト1を回転させながら走査露光し、静電潜像を形成する1工程に用いる画像情報は、所望のフルカラー画像をマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の色情報に分解した単色の画像情報であり、この情報により、半導体レーザの発光を制御する。発生するレーザビームは、光学装置により走査、及び光路調整し、書き込みビーム光Lとして出力する。単色の画像情報に基づいて形成された静電潜像が、カラー現像装置6a、6b、6c、6dの位置に達すると、潜像が形成された色に対応する現像装置6a、6b、6c、6dのいずれかを選択的に感光体ベルト1に対向させる。そして、対向した現像装置6a、6b、6c、6dのいずれかにより感光体ベルト1上の静電潜像にトナーが供給され、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)のいずれかのトナーで単色現像され、トナー像が形成される。感光体ベルト1上のトナー像は、感光体ベルト1と同期して、同図中の矢印B方向に回転する中間転写ベルト10上に、バイアスローラ13に印加された所定の転写バイアスの作用により一旦転写される。一方、トナー像転写後の感光体ベルト1の表面は、感光体クリーニング装置15により残トナーがクリーニングされる。このようなサイクルを各色で繰り返し、中間転写ベルト10上にマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の画像が順次重ね転写される。中間転写ベルト10上に重ね合わされたマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の画像は、給紙台(給紙カセット)17から給紙ローラ18、搬送ローラ対19a、19b、レジストローラ対20a、20bを経て、転写部へ搬送された転写紙上に2次転写ローラ14により一括転写される。転写終了後、転写紙は、定着ユニット80により定着されて、フルカラー画像が完成し、排紙ローラ対81a、81bを経て、排紙スタック部82にプリント画像を排出する。また、トナー像が転写紙上に一括転写後の中間転写ベルト10は、中間転写ベルトクリーニング装置16により残トナーがクリーニングされる。中間転写ベルトクリーニング装置16のクリーニングブラシ16aは、画像形成動作中には中間転写ベルト10表面から離間した位置に保持され、形成像が転写紙上に転写された後に、中間転写ベルト10表面に当接される。
【0016】
次に、この画像形成装置の白黒画像形成時の動作を説明する。この画像形成装置が白黒の画像データを受け取ると、感光体ベルト1が図1中A方向に回転する。感光体ベルト1は、帯電チャージャ4により一様に帯電された後、光書込ユニット5により、画像情報に基づいて発光が制御されるレーザの走査露光をうけ、表面には静電潜像が形成される。そして、ブラック(Bk)の現像装置6dが選択的に感光体ベルト1に対向させる。対向したブラック(Bk)の現像装置6dにより感光体ベルト1上の静電潜像にトナーが供給され、ブラック(Bk)のトナーで現像され、トナー像が形成される。感光体ベルト1上のトナー像は、感光体ベルト1と同期して、同図中の矢印B方向に回転する中間転写ベルト10上に、バイアスローラ13に印加された所定の転写バイアスの作用により転写される。一方、トナー像転写後の感光体ベルト1の表面は、感光体クリーニング装置15により残トナーがクリーニングされる。中間転写ベルト10上のブラック(Bk)の画像は、転写部へ搬送された転写紙上に転写ローラ14により転写される。転写終了後、転写紙は、定着ユニット80により定着されて、白黒画像が完成する。また、トナー像が転写紙上に一括転写後の中間転写ベルト10は、中間転写ベルトクリーニング装置16により残トナーがクリーニングされる。
【0017】
また、感光体ベルト1、帯電チャージャ4、中間転写ベルト10、感光体クリーニング装置15、中間転写ベルトクリーニング装置16を一体化し、プロセスカートリッジとして、本体に対して着脱可能に構成することができる。
【0018】
図2は、駆動伝達装置たる駆動装置の概略構成図である。この駆動装置は、駆動源たる駆動モータ130を備えている。伝達機構は、この駆動モータ130に取り付けられた駆動ギヤ140と、従動軸150に取り付けられた従動ギヤ160とで構成されており、駆動ギヤ140と従動ギヤ160とは噛み合っている。この従動軸150の図中左端には、駆動側カップリング180が設けられており、この駆動側カップリング180は、回転体たる感光体ベルトの回動ローラ2から延びる回転軸200の一端に設けられた感光体側カップリング190と係合している。
【0019】
この従動軸150の図中右端には、従動軸のねじり振動を抑制する振動抑制装置が設けられている。この振動抑制装置は、固定部材たるフランジ170と、慣性体たるフライホイール210と、弾性体たるダンパ220とからなっている。フランジ170は、従動軸に固定されている。フライホイール210は、図3に示すようにダンパ220を介してフランジ170の側面に段付きネジ230により取り付けられている。また、フライホイール210の側面には、電荷除去部材たるアース板240が取り付けられており、フライホイール210を除電している。これにより、フライホイール210が帯電して電磁波や放電などが発生しないようにしないようにして、他の機器に影響が及ぶのを防止している。
【0020】
フライホイール210は、図4に示すように、中心孔211と、この中心孔211に連結したダンパ取り付け部212が円周上等間隔に3箇所設けられている。この中心孔211にはフランジ170の突出部171が挿入され、3箇所のダンパ取り付け部212には、弾性体たるダンパ220がそれぞれ取り付けられる。中心孔211とダンパ取り付け部212とが連結されているので、ダンパ220を容易にフライホイール210に取り付けることができ、ダンパ220の組付け性を向上させることができる。
【0021】
駆動モータ130の回転によるや振動、駆動ギヤ140と従動ギヤ160との噛合いによる振動によって速度変動が生じても、フライホイール210の慣性力によって、回動ローラ2を等速で回転させている。フライホイール210のイナーシャは、回動ローラ2の慣性力や、駆動モータ130やギヤなどの駆動伝達系の速度変動に基づいて、必要最低限に抑えられている。フライホイール210のイナーシャを必要以上に大きくすると、回動ローラ2を回転させるときに大きな駆動力が必要となり、駆動モータ130の負荷が大きくなってしまう。また、立ち上がりの応答性が悪く、回動ローラ2が所定速度となるまで時間を要してしまうなどの問題が生じてしまう。また、装置の大型化や、重量増大による軸倒れなどの問題も生じてしまう。このように問題を抑制するため、フライホイール210のイナーシャは、必要最低限に抑える必要がある。
【0022】
図5は、ダンパ220の概略斜視図である。ダンパ220は、フランジ170の側面部とフライホイール210の感光体側の側面との間に挟まれる第1吸収部221と、フライホイール210のアース板側側面とネジ230のネジ頭との間に挟まれる第2吸収部222と、この第1吸収部211と第2吸収部222とを連結する連結部223とからなっている。また、ダンパ220には、図中手前側から奥側に延びる貫通孔225が設けられており、この貫通孔225に段付きネジ230が挿入される。
【0023】
ところで、回動ローラ2等を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動数が、駆動モータ130の回転により生じる振動や各ギヤの噛合いにより生じる振動の周波数と近いと、共振して、回転ムラが増大してしまう。このような、共振現象を抑制するためには、回動ローラ等を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動数を、駆動モータ130の回転による振動や各ギヤの噛合いによる振動の周波数と大きく異ならせることが最も効果的となる。この回動ローラ等を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動数は、以下の式で表すことができる。
【数1】

【0024】
ここで、Kは、回動ローラ2や回転軸200、従動軸150、フライホイール210など、駆動モータ130や各ギヤから伝達された駆動力で回転する回転系に関する剛性である。Jは、フライホイール210や、回動ローラ2など、駆動モータ130や各ギヤから伝達された駆動力で回転する回転系に関する慣性モーメントである。そして、本実施形態においては、ダンパ220は、フライホイール210と段付きネジ230でネジ止めされているだけである。よって、ダンパ220を容易に組替えることができ、回動ローラ2等を含んだ駆動伝達装置全体の回転系の剛性Kを容易に変更することができる。その結果、回動ローラ2等を含んだ駆動伝達装置全体の回転系のねじり固有振動数fを、駆動モータ130や各ギヤなどから生じる駆動伝達系の振動の周波数と容易に大きく異ならせることができる。
【0025】
また、第1吸収部221、第2吸収部222を柔らかい材質のもので構成するのが好ましい場合、第1吸収部221および第2吸収部222を柔らかくしすぎると、フライホイール210のような質量の重い部材を垂直に支持することができなかったり、耐久性が悪くなったりする。よって、材質を変更することで、吸収部を所望の弾性係数Kにすることができない場合がある。このような場合においては、図5に示すように、第2吸収部222の円周上3箇所等間隔に突起部224を設けて、この突起部224にネジ230の頭を当接させる。これにより、第2吸収部222の突起部224は、他の部分に比べて剛性が低くなっており、ネジ230と第2吸収部222との間に隙間がないものに比べて第2吸収部222の弾性係数Kを低くすることができる。また、第2吸収部222の突起部以外の部分は、剛性が高いので、十分フライホイール210を支えることができる。また、突起部224の数は3個以上が好ましい。3個以上とすることで、ネジの頭が突起部222に安定的に当接することができ、第2吸収部222をフライホイール210に均等な当接圧で当接させることができる。
【0026】
また、各突起部224の一部を貫通孔225から突出させることで、貫通孔225の孔径よりも小さい直径の段付きネジを容易にフランジにネジ止めできるようにできる。貫通孔225の孔径よりも小さい直径の段付きネジがこの貫通孔に挿入されるとき、この各突起部の貫通孔225から突出した部分が、段付きネジを案内する。これにより、貫通孔の孔径より、段部の直径が小さい段付きネジが貫通孔に斜めに挿入されることを抑制できる。よって、貫通孔の内周面を傷つけずに、段部の直径が小さい段付きネジでフライホイール220を固定することができる。貫通孔225の孔径よりも小さい直径の段付きネジを用いて固定することで、ダンパ220が弾性変形し易くなり、ダンパ220の弾性係数を低くすることができる。
【0027】
また、図5においては、第2吸収部222にのみ突起を設けているが、第1吸収部221にも突起部を設けてもよい。これにより、ダンパ220の弾性係数をさらに低くすることができる。
【0028】
さらに、吸収部のフライホイール220を支持する側や、フランジ170を支持する側のように、吸収部の外径よりも大きい面と各突起部224が当接する場合、各突起部の一部を吸収部の外周から突出させるようにしても良い。このように、吸収部の外周から各突起部の一部を突出させることで、フライホイール220やフランジなどの側面と突起部とが安定的に当接することができる。
【0029】
また、本実施形態においては、段付きネジ230を用いてフライホイール210を、ダンパ220を介してフランジ170に固定しているが、普通のネジを用いて固定するようにしても良い。この場合は、図6や図7に示すようにダンパ220の貫通孔225の内周面に樹脂などからなるスペーサ250を設けて、ネジ260がダンパ220の内周面と当接してダンパ220を傷つけないようにしている。図7に示すように、連結部223の中央部にのみスペーサ250を設けた方が、図6の内周部全体にスペーサ250を設けたものに比べてダンパ220が弾性変形しやすくすることができ、弾性係数を低くすることができる。
【0030】
本実施形態の駆動伝達装置に用いられるダンパ220や、ネジ230は、回動ローラ2等を含んだ駆動伝達装置全体の回転系のねじり固有振動数と、駆動モータ130の回転による振動や各ギヤの噛合いによる振動など、駆動伝達系の振動周波数との関係に応じて、決定される。すなわち、回転系の剛性Kを大幅に低くする必要がある場合は、弾性係数の低いダンパ220を用いる。一方、回転系の剛性Kをあまり低くする必要がない場合は、弾性係数の高いダンパ220を用いる。
【0031】
また、本実施形態においては、ダンパ220をフライホイール210に取り付けてからフランジ170にネジ止めすることで、フライホイール210を固定しているが、これに限られない。図8に示すように、フランジ170にダンパ220を取り付けた後、フライホイール220をネジ止めするようにしても良い。この図8に示す形態においては、フランジ170にダンパ取り付け孔172を設け、このダンパ取り付け孔172にダンパ220を挿入して固定する。ダンパ220の内周面には、内周面にネジ溝を有するインサート270が設けられている。そして、フライホイール210のアース板と接触する側面側からネジ260を挿入して、インサート270にネジ260をネジ止めする。これにより、フライホイール210がダンパ220を介して従動軸150に固定される。このような構成においても、フライホイール210とフランジ170との間に挟まれた吸収部221が従動軸150のねじれを吸収し、従動軸のねじり振動を小さくすることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、感光体ベルト1の回動ローラ2を駆動させる駆動装置について説明したが、これに限らず、中間転写ベルト10の回動ローラを駆動させる駆動装置に用いても良い。
【0033】
(1)
以上、本実施形態の駆動伝達装置によれば、弾性体たるダンパが、軸に固定された固定部材たるフランジと慣性体たるフライホイールとの間に挟まれてネジ止めされている。これにより、回転体を含んだ駆動装置全体の剛性が変更され、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動を駆動源たる駆動モータの回転による振動や伝達機構たる各ギヤの噛合いによる振動の周波数と異ならせることができる。よって、回転体を含んだ駆動装置全体が駆動モータの回転による振動や各ギヤの噛合いによる振動の周波数と共振することがなくなる。その結果、回転体を安定的に回転させることができ、バンディングや色ずれを抑制することができる。
また、ダンパで回転体を含んだ駆動装置全体の剛性を変更することができるので、フライホイールのイナーシャを必要最低限にすることができる。その結果、装置の大型化や、重量増大による軸倒れを抑制することができる。また、フライホイールの慣性モーメントを必要最低限に抑えることができるので、駆動モータの負荷が増大するのを抑制することができるとともに、立ち上がり時の応答性を良くすることができ、回転体が所定速度となるまで時間を短縮することができる。
さらに、ダンパは、フランジとフライホイールとの間に挟まれてネジ止めされているだけであるので、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動数に応じて容易にダンパを交換することができる。これにより、回転体を含んだ駆動伝達装置全体のねじり固有振動数を容易に、駆動モータや各ギヤの駆動伝達系の振動数と異ならせることができる。
また、フランジの側面とフライホイールの側面とにダンパの吸収部を挟みこんで、回転体を含んだ駆動伝達装置全体の剛性Kを変更している。フライホイールの内周面とフランジの外周面との間にダンパを挟みこんで、回転体を含んだ駆動伝達装置全体の剛性Kを変更する場合、ダンパが周方向にねじれたときにフライホイールの回転偏差が大きくなる。その結果、フライホイールの偏心により、従動軸の回転速度が変動してしてしまうおそれがある。一方、フランジの側面とフライホイールの側面とにダンパの吸収部を挟みこむことで、ダンパがねじれてもフライホイールと従動軸との間の回転偏差が増大することがない。その結果、フライホイールの偏心により、従動軸の回転速度が変動するおそれがなく、回転体を一定の速度で回転させることができる。
(2)
また、本実施形態の駆動伝達装置によれば、ネジのネジ頭と上記フライホイールとの間にもダンパの吸収部が挟みこまれている。これにより、フランジとフライホイールとの間の吸収部及びネジ頭と上記フライホイールとの間の吸収部とが、ねじり変形する。よって、この2つの吸収部で回転体を含む全体の剛性を変更することができる。よって、ネジ頭と上記フライホイールとの間の吸収部の弾性係数と、フランジとフライホイールとの間の吸収部の弾性係数を変化させれば、様々な弾性係数を有するダンパを作成することができる。よって、回転体を含む全体のねじり固有振動数を、駆動モータや各ギヤの振動数に対して最も効果的な振動数にできるダンパを容易に作成することができる。
(3)
また、本実施形態の駆動伝達装置によれば、上記ダンパは、軸方向に突出する突起部を設けている。これにより、ダンパの吸収部がフライホイールとフランジまたはネジ頭との間に挟みこまれたときに、吸収部の周方向に隙間ができる。この隙間によって、吸収部の周方向の弾性性能を確保することができる。その結果、ダンパを所望の弾性係数を得るために柔らかい材質を用いなくても所望の弾性係数を得ることができる。よって、吸収部の材質が柔らかすぎてフライホイールを支持することができずに、フライホイールが傾いてしまうなどの問題を抑制することができる。
(4)
また、本実施形態の駆動伝達装置によれば、上記突起部の一部を、貫通孔から突出させている。これにより、貫通孔の孔径に対して直径の短いネジを突起部の貫通孔から突出した部分で案内することができる。よって、貫通孔の孔径に対して直径の短いネジが貫通孔に対して斜めに挿入されることが抑制され、容易にフランジにネジ止めすることができる。また、貫通孔の孔径と同一の直径を貫通孔に挿入してフランジにネジ止めしたものに比べて、ダンパの弾性係数を低くすることができる。
(5)
また、本実施形態の駆動伝達装置によれば、上記突起部の一部を、吸収部から突出させている。これにより、ネジやフライホイール、フランジなどと突起部が安定的に当接することができ、フライホイールを安定的に支持することができる。
(6)
また、本実施形態の駆動伝達装置によれば、軸方向に突出する突起は、上記ダンパの同一側面に少なくとも3個以上等間隔に設けている。これにより、ダンパの吸収部は、フライホイールの側面とフランジまたはネジ頭との間で均一に圧縮される。これにより、吸収部のねじれ変形を良好にすることができる。
(7)
また、本実施形態の駆動伝達装置によれば、フライホイールに電荷除去部材たるアース板を接触させて、フライホイールが帯電するのを防止している。これにより、フライホイールが放電して、装置の誤動作や、故障が発生するのを抑制することができる。また、フライホイールがアンテナとなって電磁波を発生するのを防止することができる。
(8)
また、本実施形態の駆動伝達装置によれば、回転体が従動軸に対して着脱可能となっている。これにより、回転体の交換作業を容易に行うことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
(9)
また、本実施形態の画像形成装置によれば、上記(1)〜(7)の特徴を有する駆動伝達装置を像担持体たる感光体ベルトの駆動装置として用いるので、バンディングや色ずれが抑制された良好な画像を得ることができる。
(10)
また、本実施形態の画像形成装置によれば、感光体ベルト1、帯電チャージャ4、中間転写ベルト10、感光体クリーニング装置15、中間転写ベルトクリーニング装置16を一体化し、プロセスカートリッジとして、本体に対して着脱可能に構成している。これにより、感光体ベルトや、帯電チャージャなどの交換作業を容易に行うことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】駆動装置の概略構成図。
【図3】フライホールの取り付け状態を説明する図。
【図4】フライホールの概略構成図。
【図5】ダンパの斜視図。
【図6】スペーサを備えたダンパを用いたときのフライホールの取り付け状態を説明する図。
【図7】他のスペーサを備えたダンパを用いたときのフライホールの取り付け状態を説明する図。
【図8】他のフライホールの取り付け状態を説明する図。
【符号の説明】
【0035】
1 感光体ベルト
2 回動ローラ
4 帯電チャージャ
5 光書込ユニット
6a、6b、6c、6d カラー現像装置
10 中間転写ベルト
11、12 回動ローラ
13 バイアスローラ
14 2次転写ローラ
15 感光体クリーニング装置
16 中間転写ベルトクリーニング装置
17 給紙台(給紙カセット)
18 給紙ローラ
19a、19b 搬送ローラ対
20a、20b レジストローラ対
80 定着ユニット
81a、81b 排紙ローラ対
82 排紙スタック部
130 モータ
140 駆動ギヤ
150 従動軸
160 従動ギヤ
210 フライホイール
220 ダンパ
240 アース板
250 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、該駆動源の駆動力を回転体に伝達する伝達機構と、該回転体とともに回転し慣性力を発揮する慣性体とを備えた駆動伝達装置において、
該慣性体は、弾性体を介して軸に固定された固定部材の側面と該慣性体の側面とに上記弾性体を挟みこんで、該固定部材にネジによってネジ止めされることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、
上記ネジのネジ頭と上記慣性体側面との間にも弾性体が挟みこまれていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項1または2の駆動伝達装置において、
上記弾性体は、軸方向に突出する突起部が設けられていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項3の駆動伝達装置において、
上記弾性体は、ネジが挿入される貫通孔を有しており、上記突起の一部が貫通孔から突出していることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項3または4の駆動伝達装置において、
上記突起の一部が外側へ突出していることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項3乃至5いずれかの駆動伝達装置において、
上記突起部は、上記弾性体の同一側面に少なくとも3個以上等間隔に設けていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかの駆動伝達装置において、
上記慣性体と当接する電荷除去部材を備えていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかの駆動伝達装置において、
上記回転体を、上記軸から着脱可能に構成したことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項9】
表面に静電潜像を形成し周方向に回転移動する像担持体と、駆動源からの回転駆動力を該像担持体に伝達する駆動伝達手段と、該像担持体上の静電潜像を顕像化する現像手段と、顕像化されるトナー像を記録材に転写する転写手段と、転写される記録材上のトナー像を定着する定着手段とを有する画像形成装置において、
上記駆動伝達手段として、請求項1乃至8いずれかの駆動伝達装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
上記像担持体と、現像手段と転写手段のうち少なくともひとつとを一体としてユニット化して装置本体から着脱可能に構成したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−317474(P2006−317474A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136757(P2005−136757)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】