説明

駆動制御装置、及び、駆動制御方法

【課題】電圧制御方式の切り替え時における電動機の制御性を改善した駆動制御装置、及び、駆動制御方法を提供する。
【解決手段】駆動制御装置は、電動機の駆動制御に用いる第1電圧指令を第1方式で生成する第1領域と、前記駆動制御に用いる第2電圧指令を第2方式で生成する第2領域との境界を前記電動機の回転数とトルク指令値とで表すマップを格納する格納部37と、前記回転数と前記トルク指令値とで決まる前記電動機の動作点が前記境界を含む所定の切替領域内にある場合は、前記第1方式で第1電圧指令を生成するとともに、前記第2方式で第2電圧指令を生成する電圧指令生成部と、前記第2方式から前記第1方式への切り替えが必要な場合は前記第1電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行い、前記第1方式から前記第2方式への切り替えが必要な場合は前記第2電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行う駆動制御部30とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の駆動制御を行う駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電圧指令値がインバータの入力電圧VのV/2を超える場合に、電圧指令値の制御方式をPWM制御方式から矩形波制御方式に切り替える電動機の制御装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−014159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような従来の電動機の制御装置では、電圧指令値がインバータの入力電圧VのV/2を超えた場合に、制御方式の切り替えは一制御周期遅れて行われる。従って、電圧指令値がインバータの入力電圧VのV/2を超えても、切り替わる前の制御方式によって電圧指令値が生成される期間がある。
【0005】
このため、電圧制御方式の切り替えが電圧指令値に反映されるまでに遅れが生じ、例えば、騒音又は振動等の発生によるドライバビリティの悪化や、非効率的な駆動制御による消費電力の増大等の問題が生じる場合があった。このような問題は、電圧制御方式の切り替え時における制御性の低下によって生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、電圧制御方式の切り替え時における電動機の制御性を改善した駆動制御装置、及び、駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面の駆動制御装置は、電動機の駆動制御に用いる第1電圧指令を第1方式で生成する第1領域と、前記駆動制御に用いる第2電圧指令を第2方式で生成する第2領域との境界を前記電動機の回転数とトルク指令値とで表すマップを格納する格納部と、前記回転数と前記トルク指令値とで決まる前記電動機の動作点が前記境界を含む所定の切替領域内にある場合は、前記第1方式で第1電圧指令を生成するとともに、前記第2方式で第2電圧指令を生成する電圧指令生成部と、前記第2方式から前記第1方式への切り替えが必要な場合は前記第1電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行い、前記第1方式から前記第2方式への切り替えが必要な場合は前記第2電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行う駆動制御部とを含む。
【0008】
本発明の一局面の駆動制御方法は、電動機の回転数とトルク指令値とで決まる前記電動機の動作点が、前記電動機の駆動制御に用いる電圧指令を第1方式で生成する第1領域と、前記電圧指令を第2方式で生成する第2領域との境界を含む所定の切替領域内にある場合は、前記第1方式で電圧指令を生成するとともに、前記第2方式で電圧指令を生成する第1ステップと、前記第2方式から前記第1方式への切り替えが必要な場合は、前記第1ステップにおいて前記第1方式で生成される電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行い、前記第1方式から前記第2方式への切り替えが必要な場合は、前記第1ステップにおいて前記第2方式で生成される電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行う第2ステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電圧制御方式の切り替え時における電動機の制御性を改善した駆動制御装置、及び、駆動制御方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードによる正弦波形、過変調波形、及び矩形波を示す図である。
【図2】(A)は、比較例の駆動制御装置において、制御モードを正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替える際の制御指令の変化の様子を示す図であり、(B)は、制御の遅れが生じない理想的な状態における制御指令の変化の様子を示す図である。
【図3】実施の形態の駆動制御装置によって駆動される電動機を含む駆動システムを示す図である。
【図4】電動機10の制御モードを定めるための制御モード設定用マップの一例を示す図である。
【図5】実施の形態の駆動制御装置30による制御モードの切り替え処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の駆動制御装置、及び、駆動制御方法を適用した実施の形態について説明する前に、図1及び図2を用いて、比較例の駆動制御装置による正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードの切り替え時に生じうる問題点について説明する。
【0012】
図1は、正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードによる正弦波形、過変調波形、及び矩形波を示す図である。
【0013】
駆動制御装置は、電動機の回転数とトルク指令値とに基づき、所定のマップを用いて、正弦波形、過変調波形、及び矩形波の制御指令を生成する。ここで、Vは、インバータの入力電圧であり、正弦波形、過変調波形、及び矩形波は、いずれも、振幅がVに収まるように調整されている。
【0014】
比較例の駆動制御装置では、制御モードが正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードの間で切り替わると、制御モードが切り替わった直後には、制御モードが切り替わる一制御周期前の制御モードによって生成される電圧指令が用いられる。
【0015】
これは、切り替わった後の制御モードによる電圧指令の生成は、制御モードの切り替えが行われた次の制御周期において行われるため、制御モードが切り替えられた直後には、制御モードが切り替わる前の正弦波制御モードによって電圧指令が生成されるからである。すなわち、制御モードが切り替わる際には、一制御周期前までの切り替わる前の制御モードによって生成される電圧指令が用いられることになる。
【0016】
ここで、例えば、制御モードが正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替わった場合について検討する。
【0017】
図2(A)は、比較例の駆動制御装置において、制御モードを正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替える際の制御指令の変化の様子を示す図であり、図2(B)は、制御の遅れが生じない理想的な状態における制御指令の変化の様子を示す図である。
【0018】
図2(A)に示すように、正弦波制御モードから過変調制御モードに制御モードを切り替えると、過変調制御モードに切り替わった一制御周期目は、過変調制御モードに切り替わる前の正弦波制御モードで生成される電圧指令を用いることになる。
【0019】
これは、過変調制御モードによる電圧指令の生成は、制御モードの切り替えが行われた次の制御周期において行われるため、制御モードが切り替え時には、制御モードが切り替わる前の正弦波制御モードによって電圧指令が生成されるからである。すなわち、制御モードが正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替わる際には、一制御周期前の正弦波制御モードによって生成される電圧指令が用いられることになる。
【0020】
このため、図2(A)に示すように、時刻t1で制御モードが正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替わっても、制御指令は時刻t1よりも後の時刻t2にならないと正弦波から過変調波に切り替わらない。
【0021】
従って、時刻t1〜t2の間は、実際には制御モードが正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替わっているのに、制御指令が正弦波から過変調波に切り替わっておらず、制御遅れが生じている状態である。
【0022】
一方、制御モードの切り替わりと同時に制御遅れが生じることなく、理想的な状態で制御指令が正弦波から過変調波に切り替わるとすると、図2(B)に示すように、制御モードが正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替わる時刻t1において、制御指令も正弦波から過変調波に切り替わっている。
【0023】
図2(B)に示すように理想的な制御指令の切り替わりは、比較例の駆動制御装置では実現することができず、実際には図2(A)に示すように制御指令の切り替わりに制御遅れが生じていた。
【0024】
このような制御遅れは、制御モードを過変調制御モードから正弦波制御モードに切り替える際においても、過変調制御モードと矩形波制御モードとの間で切り替える際においても、同様に生じていた。
【0025】
以上のように、比較例の駆動制御装置では、制御モードの切り替え時に、制御指令の切り替わりが一制御周期遅れるという問題があった。制御指令の切り替わりが一制御周期遅れることにより、その後の制御指令の生成にも影響が残る場合があった。
【0026】
従って、以下で説明する実施の形態では、上述のような問題を解決した駆動制御装置、及び、駆動制御方法を提供する。
【0027】
以下、本発明の駆動制御装置、及び、駆動制御方法を適用した実施の形態について説明する。
【0028】
図3は、実施の形態の駆動制御装置によって駆動される電動機を含む駆動システムを示す図である。
【0029】
駆動システム100は、電動機10、電源回路20、駆動制御装置30、HVECU(Hybrid Vehicle Electronic Control Unit)40、及びレゾルバ50を含み、例えば、ハイブリッド車(Hybrid Vehicle)に用いられる。
【0030】
電動機10は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、電源回路20に含まれるバッテリ21から電力が供給されるときはモータとして機能し、図示されていないエンジンによる駆動時、あるいは車両の制動時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。
【0031】
ここでは、電動機10として、1台でモータの機能と発電機の機能とを有するモータ・ジェネレータを用いる形態について説明するが、これは例示であって、モータの機能のみを有する回転電機を1台、発電機の機能のみを有する回転電機を1台用いるものとしてもよい。また、モータ・ジェネレータを複数用いてもよい。
【0032】
モータ・ジェネレータを複数用いる場合は、いずれか1つの電動機10をバッテリ21の充電のための発電機、いずれか他の電動機10を主として動力を発生する駆動モータとして用いてもよい。
【0033】
電源回路20は、バッテリ21、平滑キャパシタ22、昇降圧コンバータ23、平滑キャパシタ24、及びインバータ25を含む。
【0034】
バッテリ21は、充放電可能な二次電池である。バッテリ21としては、例えば、約200Vから約300Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池あるいはニッケル水素組電池、又はキャパシタ等を用いることができる。
【0035】
平滑キャパシタ22は、バッテリ21と昇降圧コンバータ23との間に設けられ、電源回路20内におけるバッテリ21側の電圧変動を抑制する。
【0036】
昇降圧コンバータ23は、リアクトルと、複数のスイッチング素子を含み、電源回路20内におけるバッテリ21側の電圧を昇圧してインバータ25側に出力するとともに、インバータ25側の電圧を降圧してバッテリ21側に出力する。
【0037】
昇降圧コンバータ23は、例えば、バッテリ21側の約200Vから約300V程度の電圧を、リアクトルのエネルギ蓄積作用を利用して、例えば約600Vの高電圧に昇圧する。また、昇降圧コンバータ23は、インバータ25側からの電力をバッテリ21側に充電電力として供給するときには、インバータ25の側の電圧を降圧してバッテリ21側に出力する。
【0038】
平滑キャパシタ24は、昇降圧コンバータ23とインバータ25の間に設けられ、電源回路20内におけるインバータ25側の電圧変動を抑制する。
【0039】
インバータ25は、直流電力を交流三相駆動電力に変換し、電動機10に供給するとともに、電動機10で回生された交流三相回生電力をバッテリ21に充電するための直流電力に変換する。
【0040】
インバータ25は、2つのスイッチング素子が直列に接続され、さらに各スイッチング素子にそれぞれダイオードが並列に接続されるアームを三相分有する。各アームの中点は、電動機10の三相巻線に接続される。なお、インバータ25の入力電圧及び出力電圧の電圧値を表す信号は、駆動制御装置30に入力される。
【0041】
駆動制御装置30は、電源回路20のインバータ25の駆動制御を行うことにより、電動機10の駆動制御を行う装置である。
【0042】
駆動制御装置30は、主制御部31、正弦波制御処理部32、過変調制御処理部33、矩形波制御処理部34、モード判定処理部35、切替領域判定部36、及びメモリ37を有する。
【0043】
主制御部31は、駆動制御装置30の制御処理を統括する処理部である。主制御部31は、モード判定処理部35によって正弦波制御処理部32、過変調制御処理部33、矩形波制御処理部34のいずれかが選択されると、選択された制御処理部(32〜34のうちのいずれか1つ)によって生成される電圧指令を用いてインバータ25の駆動制御を行う。
【0044】
また、主制御部31は、ある一定の条件の下において、正弦波制御処理部32と過変調制御処理部33、又は、過変調制御処理部33と矩形波制御処理部34に、同時に電圧指令を生成させる。
【0045】
なお、主制御部31、正弦波制御処理部32、過変調制御処理部33、及び矩形波制御処理部34は、駆動制御部の一例である。
【0046】
正弦波制御処理部32は、正弦波制御モードによる電動機10の駆動制御を行う。正弦波制御モードは、正弦波と三角波との比較によるパルス幅変調(PWM(Pulse Width Modulation))制御における三角波の振幅以下の振幅で、正弦波状の電圧指令(PWM信号)を生成するモードである。
【0047】
過変調制御処理部33は、過変調制御モードによる電動機10の駆動制御を行う。過変調制御モードは、三角波の振幅を超えた振幅で、正弦波状の電圧指令(PWM信号)を生成するモードである。
【0048】
矩形波制御処理部34は、矩形波制御モードによる電動機10の駆動制御を行う。矩形波制御モードは、トルク指令値に応じた電圧位相をもつ矩形波状の電圧指令を生成するモードである。
【0049】
なお、正弦波制御処理部32、過変調制御処理部33、及び矩形波制御処理部34において用いる正弦波、過変調波、及び矩形波は、電動機10の回転数とトルク指令値とに基づき、所定のマップを用いて生成される。
【0050】
モード判定処理部35は、電動機10の運転状況に応じて、正弦波制御モードと過変調制御モードとの間のモード切り替え、又は、過変調制御モードと矩形波制御モードとの間のモード切り替えが必要であるか否かを判定する第1判定部の一例である。
【0051】
制御モードの切り替えの判定基準としては、変調率又は変調率に相当する電圧指令値の振幅を用いる。変調率とは、インバータ25の出力電圧の振幅に対する入力電圧の振幅の比である。
【0052】
正弦波と三角波の比較によるPWM方式の場合は、変調率の最大は0.61であり、矩形波を信号振幅とするときの変調率の最大は0.78である。そこで、変調率が0.61以下のときに正弦波制御モード、変調率が0.61から0.78の間は過変調制御モード、変調率が0.78となれば矩形波制御モードを用いるように制御モードを切り替えるものとする。
【0053】
駆動制御装置30は、モード判定処理部35によって制御モードが判定されると、判定された制御モードの処理部(32〜34のいずれか)に主制御部31が電圧指令を生成させる。制御モードの処理部(32〜34のいずれか)によって生成された電圧指令は、主制御部31によってインバータ25のIGBTのゲートに入力される。この結果、駆動制御装置30によって生成される電圧指令によってインバータ25を介して、電動機10の駆動制御が行われる。
【0054】
切替領域判定部36は、電動機10の回転数と、トルク指令値とによって決定する電動機10の動作点が、正弦波制御モード及び過変調制御モードの境界を含む所定の切替領域、又は、過変調制御モード及び矩形波制御モードの境界を含む所定の切替領域の内部にあるか否かを判定する第2判定部の一例である。
【0055】
正弦波制御モード及び過変調制御モードの境界を含む所定の切替領域と、過変調制御モード及び矩形波制御モードの境界を含む所定の切替領域については、図4を用いて後述する。
【0056】
メモリ37は、モード判定処理部35が制御モードを決定するためのマップを格納している格納部の一例であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、又はハードディスク等であればよい。
【0057】
メモリ37が格納するマップは、電動機10の回転数とトルク指令とにより、正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードによって駆動制御を行う領域を分けたものであり、正弦波制御モードと過変調制御モードの境界と、過変調制御モードと矩形波制御モードの境界を含む。
【0058】
電動機10は、正弦波制御モード、過変調制御モード、又は矩形波制御モードのいずれかのモードによって駆動制御が行われる。
【0059】
正弦波制御モード、過変調制御モード、又は矩形波制御モードの切り替えは、モード判定処理部35によって行われるが、その詳細については後述する。
【0060】
以上のような駆動制御装置30は、車両に搭載に適した制御装置、例えばECUによって構成することもできる。
【0061】
なお、駆動制御装置30の正弦波制御処理部32、過変調制御処理部33、矩形波制御処理部34、及びモード判定処理部35は、例えば、コンピュータがソフトウェアを実行することで実現されるが、機能の一部をハードウェアによって実現するものとしてもよい。
【0062】
HVECU40は、スロットルポジションセンサに接続されており、車両の運転者がスロットルを踏み込む度合いに応じたトルク指令値を出力する。トルク指令値は、電動機10に要求されるトルクを表す。HVECU40が出力するトルク指令値は、駆動制御装置30に入力される。
【0063】
レゾルバ50は、電動機10の回転軸の回転数を検出する回転数検出部の一例である。レゾルバ50によって検出される電動機10の回転数を表す信号は、駆動制御装置30に入力される。
【0064】
図4は、電動機10の制御モードを定めるための制御モード設定用マップの一例を示す図である。
【0065】
駆動制御装置30は、図4に示す制御モード設定用マップを用いる。制御モード設定用マップは、回転数及びトルク指令値が比較的小さい領域から回転数及びトルクが大きくなるにつれて、制御モードが正弦波制御モード、過変調制御モード、矩形波制御モードという順番で移行するよう定められている。
【0066】
正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードは、正弦波制御モードと過変調制御モードとの切り替えにおいては、正弦波制御モードが第1方式の一例であり、過変調制御モードが第2方式の一例である。このため、正弦波制御モードと過変調制御モードとの切り替えにおいては、正弦波制御モードによって生成される電圧指令は、第1電圧指令の一例であり、過変調制御モードによって生成される電圧指令は、第2電圧指令の一例である。
【0067】
また、過変調制御モードと矩形波制御モードとの切り替えにおいては、過変調制御モードが第1方式の一例であり、矩形波制御モードが第2方式の一例である。このため、過変調制御モードと矩形波制御モードとの切り替えにおいては、過変調制御モードによって生成される電圧指令は、第1電圧指令の一例であり、矩形波制御モードによって生成される電圧指令は、第2電圧指令の一例である。
【0068】
駆動制御装置30は、電動機10の運転状況に応じて、モード判定処理部35により、正弦波制御モードと過変調制御モードとの間のモード切り替え、又は、過変調制御モードと矩形波制御モードとの間のモード切り替えが必要と判断されると、モードを切り替える。モードの切り替えにより、電圧指令の生成は、正弦波制御処理部32、過変調制御処理部33、又は矩形波制御処理部34のいずれかに切り替えられる。
【0069】
電動機10は、駆動制御装置30が正弦波制御モード、過変調制御モード、又は矩形波制御モードのいずれかのモードで生成する電圧指令によって駆動される。
【0070】
ここで、正弦波制御モードを行う領域と、過変調制御モードを行う領域との境界を境界(1)とし、過変調制御モードを行う領域と、矩形波制御モードを行う領域との境界を境界(2)とする。
【0071】
本実施の形態1の駆動制御装置30の制御モード設定用マップは、境界(1)を含む切替領域201、202と、境界(2)を含む切替領域203、204とを有する。
【0072】
また、制御モード設定用マップは、境界(2)を含む切替領域205、206と、境界(2)を含む切替領域207、208とを有する。
【0073】
切替領域201は、図4に破線で示すように、境界(1)よりも正弦波制御モードを行う領域側で、境界(1)に対して、回転数方向に一定の幅を有する領域である。回転数方向における幅は、一例として、正弦波制御モードの一制御周期における回転数の最大の変化幅に設定されている。
【0074】
切替領域202は、図4に一点鎖線で示すように、境界(1)よりも正弦波制御モードを行う領域側で、境界(1)に対して、トルク指令値方向に一定の幅を有する領域である。トルク指令値方向における幅は、一例として、正弦波制御モードの一制御周期におけるトルク指令値の最大の変化幅に設定されている。
【0075】
電動機10の回転数と、トルク指令値とによって決定する電動機10の動作点が、切替領域201及び切替領域202の内部にある場合は、制御モードが正弦波制御モードから過変調制御モードに切り替わる可能性がある。このため、切替領域判定部36は、動作点が領域201及び領域202の内部にあるか否かを判定する。
【0076】
切替領域203は、図4に破線で示すように、境界(1)よりも過変調制御モードを行う領域側で、境界(1)に対して、回転数方向に一定の幅を有する領域である。回転数方向における幅は、一例として、過変調制御モードの一制御周期における回転数の最大の変化幅に設定されている。
【0077】
切替領域204は、図4に一点鎖線で示すように、境界(1)よりも過変調制御モードを行う領域側で、境界(1)に対して、トルク指令値方向に一定の幅を有する領域である。トルク指令値方向における幅は、一例として、過変調制御モードの一制御周期におけるトルク指令値の最大の変化幅に設定されている。
【0078】
電動機10の回転数と、トルク指令値とによって決定する電動機10の動作点が、切替領域203及び切替領域204の内部にある場合は、制御モードが過変調制御モードから正弦波制御モードに切り替わる可能性がある。このため、切替領域判定部36は、動作点が領域203及び領域204の内部にあるか否かを判定する。
【0079】
以上のように、境界(1)を含む切替領域は、境界(1)よりも正弦波制御モードを行う領域側の切替領域201及び202と、境界(1)よりも過変調制御モードを行う領域側の切替領域203及び204とによって構成されている。
【0080】
ここで、正弦波制御モードにおける制御周期は、過変調制御モードにおける制御周期よりも長いため、切替領域201の回転数方向の幅と切替領域202のトルク指令値方向の幅は、それぞれ、切替領域203の回転数方向の幅と切替領域204のトルク指令値方向の幅よりも広く設定されている。
【0081】
切替領域205は、図4に破線で示すように、境界(2)よりも過変調制御モードを行う領域側で、境界(2)に対して、回転数方向に一定の幅を有する領域である。回転数方向における幅は、一例として、過変調制御モードの一制御周期における回転数の最大の変化幅に設定されている。
【0082】
切替領域206は、図4に一点鎖線で示すように、境界(2)よりも過変調制御モードを行う領域側で、境界(2)に対して、トルク指令値方向に一定の幅を有する領域である。トルク指令値方向における幅は、一例として、過変調制御モードの一制御周期におけるトルク指令値の最大の変化幅に設定されている。
【0083】
電動機10の回転数と、トルク指令値とによって決定する電動機10の動作点が、切替領域205及び切替領域206の内部にある場合は、制御モードが過変調制御モードから矩形波制御モードに切り替わる可能性がある。このため、切替領域判定部36は、動作点が領域205及び領域206の内部にあるか否かを判定する。
【0084】
切替領域207は、図4に破線で示すように、境界(2)よりも矩形波制御モードを行う領域側で、境界(2)に対して、回転数方向に一定の幅を有する領域である。回転数方向における幅は、一例として、矩形波制御モードの一制御周期における回転数の最大の変化幅に設定されている。
【0085】
切替領域208は、図4に一点鎖線で示すように、境界(2)よりも矩形波制御モードを行う領域側で、境界(2)に対して、トルク指令値方向に一定の幅を有する領域である。トルク指令値方向における幅は、一例として、矩形波制御モードの一制御周期におけるトルク指令値の最大の変化幅に設定されている。
【0086】
電動機10の回転数と、トルク指令値とによって決定する電動機10の動作点が、切替領域207及び切替領域208の内部にある場合は、制御モードが矩形波制御モードから過変調制御モードに切り替わる可能性がある。このため、切替領域判定部36は、動作点が領域207及び領域208の内部にあるか否かを判定する。
【0087】
ここで、正弦波制御モード及び過変調制御モードは、制御周期が一定であるため、領域201、203、205の回転数方向の幅と、領域202、204、206のトルク指令値方向の幅は一定である。
【0088】
これに対して、矩形波制御では、回転数の上昇に伴って制御周期が上昇するため、領域207の回転数方向の幅と、領域208のトルク指令値方向の幅は、ともに回転数の上昇に応じて狭まっている。
【0089】
以上のように、境界(2)を含む切替領域は、境界(2)よりも過変調制御モードを行う領域側の切替領域205及び206と、境界(2)よりも矩形波制御モードを行う領域側の切替領域207及び208とによって構成されている。
【0090】
なお、ここでは、領域201、203、205、207の回転数方向の幅が一制御周期における最大の変化幅に設定される形態について説明するが、領域201、203、205、207の回転数方向の幅は、このような幅に限られない。
【0091】
例えば、領域201、203、205、207の回転数方向の幅を一制御周期における最大の変化幅に係数(1より大きい係数、又は、1より小さい係数)を乗じた幅に設定してもよい。
【0092】
このような場合には、領域201、203、205、207の回転数方向の幅は、一制御周期における最大の変化幅に応じた値となる。
【0093】
また、領域202、204、206、208のトルク指令値方向の幅が一制御周期における最大の変化幅に設定される形態について説明するが、領域202、204、206、208のトルク指令値方向の幅は、このような幅に限られない。
【0094】
例えば、領域202、204、206、208のトルク指令値方向の幅を一制御周期における最大の変化幅に係数(1より大きい係数、又は、1より小さい係数)を乗じた幅に設定してもよい。
【0095】
このような場合には、領域202、204、206、208のトルク指令値方向の幅は、一制御周期における最大の変化幅に応じた値となる。
【0096】
領域201、203、205、207と、領域202、204、206、208の幅は、例えば、シミュレーションで求めた値、又は、実験で求めた値に設定すればよく、上述以外の値であってもよい。
【0097】
次に、図5のフローチャートを用いて、実施の形態の駆動制御装置30による制御モードの切り替え処理について説明する。
【0098】
図5は、実施の形態の駆動制御装置30による制御モードの切り替え処理を表すフローチャートである。
【0099】
実施の形態の駆動制御装置30を搭載した車両の運行が開始されると、駆動制御装置30の主制御部31は処理を開始する(スタート)。
【0100】
駆動制御装置30は、動作点が切替領域201〜204のいずれかの内部にあるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1の処理は、具体的には、切替領域判定部36によって実行される。切替領域判定部36は、現在の電動機10の回転数と、トルク指令値とによって決まる動作点が、メモリ37に格納された制御モード設定用マップに含まれる切替領域201〜204内にあるか否かを判定する。
【0101】
主制御部31は、切替領域判定部36によって動作点が切替領域201〜204内にあると判定された場合は、正弦波制御処理部32と過変調制御処理部33とに電圧指令を生成させる(ステップS2)。これにより、正弦波制御モードと過変調制御モードとの両方による電圧指令が生成される。主制御部31は、ステップS2の処理が終了すると、モード判定処理部35にステップS3の処理を実行させる。
【0102】
モード判定処理部35は、モードの切り替えがあるか否かを判定する(ステップS3)。モード判定処理部35は、正弦波制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.61から0.78の間であれば、過変調制御モードへの切り替えがあると判定する。また、モード判定処理部35は、過変調制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.61以下であれば、正弦波制御モードへの切り替えがあると判定する。
【0103】
なお、モード判定処理部35は、正弦波制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.61以下である場合と、過変調制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.61から0.78の間である場合は、モードの切り替えがないと判定する。
【0104】
ステップS3において、モードの切り替えがあると判定された場合は、主制御部31は、モード判定処理部35による判定結果が正弦波制御モードへの切り替えであるか、又は、過変調制御モードへの切り替えであるかを判定する(ステップS4)。
【0105】
主制御部31は、モード判定処理部35による判定結果が正弦波制御モードへの切り替えであると判定した場合は、ステップS2において正弦波制御処理部32が生成した電圧指令を選択する(ステップS5)。
【0106】
一方、主制御部31は、モード判定処理部35による判定結果が過変調制御モードへの切り替えであると判定した場合は、ステップS2において過変調制御処理部33が生成した電圧指令を選択する(ステップS6)。
【0107】
次いで、主制御部31は、ステップS5又はS6で選択した電圧指令を駆動制御装置30からインバータ25のIGBTのゲートに出力する(ステップS7)。
【0108】
この結果、電動機10が一制御周期前に正弦波制御モードで駆動されていた場合は、ステップS7で出力される電圧指令により、過変調制御モードによる駆動に切り替えられる。
【0109】
一方、電動機10が一制御周期前に過変調制御モードで駆動されていた場合は、ステップS7で出力される電圧指令により、正弦波制御モードによる駆動に切り替えられる。
【0110】
次いで、主制御部31は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS8)。処理の終了は、本実施の形態の駆動制御装置30を搭載した車両の運行が終了する際に行われるものであり、例えば、主制御部31は、イグニッションスイッチがオフにされた場合に、処理を終了する。
【0111】
一方、処理を終了しないと判定した場合は、主制御部31は、フローをステップS1にリターンする。引き続き、モードの切り替えを監視するためである。
【0112】
また、主制御部31は、ステップS3においてモードの切り替えがないと判定した場合においても、フローをステップS1にリターンする。引き続き、モードの切り替えを監視するためである。
【0113】
また、ステップS1において、動作点が切替領域201〜204内にないと判定された場合は、主制御部31はフローをステップS9に進行させる。
【0114】
駆動制御装置30は、動作点が切替領域205〜208のいずれかの内部にあるか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9の処理は、具体的には、切替領域判定部36によって実行される。切替領域判定部36は、現在の電動機10の回転数と、トルク指令値とによって決まる動作点が、メモリ37に格納された制御モード設定用マップに含まれる切替領域205〜208内にあるか否かを判定する。
【0115】
主制御部31は、切替領域判定部36によって動作点が切替領域205〜208内にあると判定された場合は、過変調制御処理部33と矩形波制御処理部34とに電圧指令を生成させる(ステップS10)。これにより、過変調制御モードと矩形波制御モードとの両方による電圧指令が生成される。主制御部31は、ステップS10の処理が終了すると、モード判定処理部35にステップS11の処理を実行させる。
【0116】
モード判定処理部35は、モードの切り替えがあるか否かを判定する(ステップS11)。モード判定処理部35は、過変調制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.78以上であれば、矩形波制御モードへの切り替えがあると判定する。また、モード判定処理部35は、矩形波制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.61から0.78の間であれば、過変調制御モードへの切り替えがあると判定する。
【0117】
なお、モード判定処理部35は、過変調制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.61から0.78の間である場合と、矩形波制御モードによる制御が行われている場合に、変調率が0.78以上である場合は、モードの切り替えがないと判定する。
【0118】
ステップS11において、モードの切り替えがあると判定された場合は、主制御部31は、モード判定処理部35による判定結果が過変調制御モードへの切り替えであるか、又は、矩形波制御モードへの切り替えであるかを判定する(ステップS12)。
【0119】
主制御部31は、モード判定処理部35による判定結果が過変調制御モードへの切り替えであると判定した場合は、ステップS10において過変調制御処理部33が生成した電圧指令を選択する(ステップS13)。
【0120】
一方、主制御部31は、モード判定処理部35による判定結果が矩形波制御モードへの切り替えであると判定した場合は、ステップS10において矩形波制御処理部34が生成した電圧指令を選択する(ステップS14)。
【0121】
次いで、主制御部31は、ステップS13又はS14で選択した電圧指令を駆動制御装置30からインバータ25のIGBTのゲートに出力する(ステップS7)。
【0122】
この結果、電動機10が一制御周期前に過変調制御モードで駆動されていた場合は、ステップS7で出力される電圧指令により、矩形波制御モードによる駆動に切り替えられる。
【0123】
一方、電動機10が一制御周期前に矩形波制御モードで駆動されていた場合は、ステップS7で出力される電圧指令により、過変調制御モードによる駆動に切り替えられる。
【0124】
次いで、主制御部31は、ステップS8の処理を実行する。
【0125】
また、ステップS9において、切替領域判定部36によって動作点が切替領域205〜208のいずれかの内部にもないと判定された場合は、主制御部31はフローをステップS15に進行させる。この場合は、動作点が切替領域201〜204及び205〜208のいずれの内部にも存在せず、モードが切り替わることが想定されない場合である。
【0126】
主制御部31は、一制御周期前の制御モードにおける電圧指令を算出させる(ステップS15)。一制御周期前の制御モードが正弦波制御モードであれば、主制御部31は、正弦波制御処理部32に電圧指令を算出させる。また、一制御周期前の制御モードが過変調制御モードであれば、主制御部31は、過変調制御処理部33に電圧指令を算出させる。また、一制御周期前の制御モードが矩形波制御モードであれば、主制御部31は、矩形波制御処理部34に電圧指令を算出させる。
【0127】
ステップS15で一制御周期前の制御モードで電圧指令を算出させるのは、一制御周期前と、現在の制御周期における制御モードは同一であるため、一制御周期前の制御モードと同一の制御モードで電圧指令を算出させればよいからである。
【0128】
また、ステップS11で制御モードの切り替えがないと判定された場合は、主制御部31は、フローをステップS1にリターンする。
【0129】
以上で、一連の処理が終了する。
【0130】
本実施の形態の駆動制御装置30によれば、制御モードの切り替えの可能性がある場合には、現在の制御モードでの電圧指令と、切り替わる可能性のある制御モードでの電圧指令とを両方とも生成しておく(ステップS2、S10)。
【0131】
このため、制御モードが切り替わった場合に、切り替わった後の制御モードで(ステップS2又はS10において)予め演算しておいた電圧指令を用いて電動機10の駆動制御を行うことができる。
【0132】
従って、従来のように、制御モードが切り替わった直後に、制御モードが切り替わる一制御周期前の制御モードによって演算される電圧指令を用いて電動機10を駆動することが行われない。
【0133】
すなわち、制御モードが切り替る前に、制御モードが切り替わった後の制御モードでの電圧指令を予め演算しておくことにより、制御モードが切り替わった際に、一制御周期前の制御モードによって演算される電圧指令を用いることなく、電動機10の制御性を向上させることができる。
【0134】
これにより、電動機10の騒音又は振動の発生又は増大等のドライバビリティの低下や、非効率的な駆動制御による消費電力の増大等の問題の発生を抑制することができ、電圧制御方式の切り替え時における電動機10の制御性を改善した駆動制御装置30を提供することができる。
【0135】
なお、以上では、正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードの3つの制御モードを切り替える形態について説明した。しかしながら、本実施の形態の駆動制御装置及び駆動制御方法は、制御モードがこれらのうちのいずれか2つのみであり、2つの制御モードを切り替える場合についても、同様に適用可能である。
【0136】
また、正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードの3つの制御モードを切り替える形態について説明した。しかしながら、本実施の形態の駆動制御装置及び駆動制御方法は、正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モード以外の制御モードについても適用可能である。
【0137】
以上では、本実施の形態の駆動制御装置、及び、駆動制御方法をハイブリッド車(HV車)に用いる形態について説明したが、本実施の形態の駆動制御装置は、電気自動車(Electric Vehicle)に用いることもできる。
【0138】
以上、本発明の例示的な実施の形態の駆動制御装置、及び、駆動制御方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0139】
100 駆動システム
10 電動機
20 電源回路
30 駆動制御装置
40 HVECU
50 レゾルバ
21 バッテリ
22 平滑キャパシタ
23 昇降圧コンバータ
24 平滑キャパシタ
25 インバータ
31 主制御部
32 正弦波制御処理部
33 過変調制御処理部
34 矩形波制御処理部
35 モード判定処理部
36 切替領域判定部
37 メモリ
201、202、203、204、205、206、207、208 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動制御に用いる第1電圧指令を第1方式で生成する第1領域と、前記駆動制御に用いる第2電圧指令を第2方式で生成する第2領域との境界を前記電動機の回転数とトルク指令値とで表すマップを格納する格納部と、
前記回転数と前記トルク指令値とで決まる前記電動機の動作点が前記境界を含む所定の切替領域内にある場合は、前記第1方式で第1電圧指令を生成するとともに、前記第2方式で第2電圧指令を生成する電圧指令生成部と、
前記第2方式から前記第1方式への切り替えが必要な場合は前記第1電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行い、前記第1方式から前記第2方式への切り替えが必要な場合は前記第2電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行う駆動制御部と
を含む、駆動制御装置。
【請求項2】
前記第1方式は前記第1電圧指令を正弦波制御方式で生成する方式であるとともに、前記第2方式は前記第2電圧指令を過変調制御方式で生成する方式であり、
前記切替領域は、前記第1領域内の第1切替領域と、前記第2領域内の第2切替領域とで構成されており、
前記第1領域の前記回転数方向の第1幅と前記トルク指令値方向の第2幅は、それぞれ、前記第2領域の前記回転数方向の第3幅と前記トルク指令値方向の第4幅よりも広い、請求項1記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記第1幅は、前記正弦波制御方式の一制御周期における前記回転数の最大変化幅に応じて設定される幅であり、前記第2幅は、前記正弦波制御方式の一制御周期における前記トルク指令値の最大変化幅に応じて設定される幅である、請求項2記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記第3幅は、前記過変調制御方式の一制御周期における前記回転数の最大変化幅に応じて設定される幅であり、前記第4幅は、前記過変調制御方式の一制御周期における前記トルク指令値の最大変化幅に応じて設定される幅である、請求項2記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記第1方式は前記第1電圧指令を過変調制御方式で生成する方式であるとともに、前記第2方式は前記第2電圧指令を矩形波制御方式で生成する方式であり、
前記切替領域は、前記第1領域内の第1切替領域と、前記第2領域内の第2切替領域とで構成されている、請求項1記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記第1幅は、前記過変調制御方式の一制御周期における前記回転数の最大変化幅に応じて設定される幅であり、前記第2幅は、前記過変調制御方式の一制御周期における前記トルク指令値の最大変化幅に応じて設定される幅である、請求項5記載の駆動制御装置。
【請求項7】
前記第3幅は、前記矩形波制御方式の一制御周期における前記回転数の最大変化幅に応じて設定される幅であり、前記第4幅は、前記矩形波制御方式の一制御周期における前記トルク指令値の最大変化幅に応じて設定される幅である、請求項6記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記第3幅及び前記第4幅は、前記回転数が高い側において、前記回転数が低い側よりも幅が狭い、請求項7記載の駆動制御装置。
【請求項9】
電動機の回転数とトルク指令値とで決まる前記電動機の動作点が、前記電動機の駆動制御に用いる電圧指令を第1方式で生成する第1領域と、前記電圧指令を第2方式で生成する第2領域との境界を含む所定の切替領域内にある場合は、前記第1方式で電圧指令を生成するとともに、前記第2方式で電圧指令を生成する第1ステップと、
前記第2方式から前記第1方式への切り替えが必要な場合は、前記第1ステップにおいて前記第1方式で生成される電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行い、前記第1方式から前記第2方式への切り替えが必要な場合は、前記第1ステップにおいて前記第2方式で生成される電圧指令を用いて前記電動機の駆動制御を行う第2ステップと
を含む、駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62982(P2013−62982A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200778(P2011−200778)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】