説明

駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】 グリス等の潤滑剤を塗布することなく、歯車の端面とモールド成形品からなる側板等の板状部材とが摺接するのを防止することができ、像担持体を安定して回転駆動することができ、いわゆるバンディングと呼ばれる画質欠陥が発生するのを防止して高画質化が可能な駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 歯車の一側面をモールド成形によって成形された板状部材で支持し、当該歯車を介して駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、前記歯車と板状部材との間に、高摺動性部材を介装して課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式を採用したプリンターや複写機等の画像形成装置に好適に用いられる駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平10−246313号公報
【特許文献2】特許第3407257号公報
【特許文献3】特開平7−304233号公報
【0003】
従来、この種の電子写真方式を採用したプリンターや複写機等の画像形成装置は、像担持体としての感光体ドラムの表面を所定の電位に帯電した後、画像情報に応じて画像露光を施して静電潜像を形成し、この静電潜像を顕像化することによりトナー像として、当該トナー像を直接転写用紙上に転写定着するか、中間転写体を介して転写用紙上に転写定着することで、画像を形成するように構成されている。
【0004】
かかる画像形成装置においては、感光体ドラムや中間転写体等を回転駆動するため、駆動モータの駆動力を感光体ドラムや中間転写体等に伝達する駆動力伝達装置が用いられている。この駆動力伝達装置としては、例えば、板金または合成樹脂で形成されたハウジングにスタッドをかしめ等によって立設し、当該スタッドにポリアセタール等の摺動性樹脂で成形されたハスバ歯車を取り付け、ガラス繊維等のフィラーを混合して強化した合成樹脂で成形された側板に、スタッドが嵌入される孔を設けて、当該側板をハウジングに取り付けることで歯車を保持するように構成したものが用いられている。
【0005】
上記駆動力伝達装置に関連する技術としては、例えば、特開平10−246313号公報や特許第3407257号公報、あるいは特開平7−304233号公報等に開示されたものが、既に提案されている。
【0006】
上記特開平10−246313号公報に係るハスバ歯車の倒れ防止機構は、モールドで成形され、軸受け部と歯部との間が肉抜きされたハスバ歯車に用いられ、前記ハスバ歯車の軸受け部回りに形成され歯部の歯底を補強する円筒状の補強リブと、前記ハスバ歯車を軸支する側板に設けられ、前記補強リブと摺接する倒れ防止手段と、を有するように構成したものである。
【0007】
また、上記特許第3407257号公報に係る画像形成装置の駆動ユニットは、像担持体と、該像担持体の静電潜像を顕像化する現像手段と、転写材を画像形成装置本体内に搬送させるとともに、前記転写材上に転写されたトナー像を定着させるための転写材定着搬送手段との各々に対して駆動源からの駆動力を伝達する複数のギヤ列と、前記複数のギヤ列を保持するための相対接する一対のケーシングと、を備えた画像形成装置の駆動ユニットにおいて、前記ギヤと前記ギヤの軸を、摺動性を有する樹脂によって一体に形成し、前記一対のケーシングの各々を、該ケーシングの対向位置の各々に突設されて前記ギヤ列を回転自在に保持するための軸受け部と一体に、無機物によって強化された摺動性樹脂にて形成したものである。
【0008】
さらに、上記特開平7−304233号公報に係るプリンタ装置は、箱体を呈した外郭をもつ装置本体と、該装置本体に対して着脱可能であり、少なくとも感光体又は現像器の何れか一方を内蔵したイメージングカートリッジと、該カートリッジに設けられ、前記感光体及び現像器に駆動力を伝達する受動ギヤと、該受動ギヤと噛合可能に装置本体側に設けられた複数の中間ギヤと、該中間ギヤを駆動する駆動ギヤと、該駆動ギヤを駆動する駆動源と、装置本体の側壁内方に設けられた側板フレームと、該側板フレームの内方側に並設され、該側板フレームと結合して隔閉空間域を形成する駆動カバーとを備え、前記隔閉空間域内に駆動ギヤが配設されるように構成したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特開平10−246313号公報や特許第3407257号公報、あるいは特開平7−304233号公報等に開示された駆動力伝達装置に関連する技術の場合には、近年の装置軽量化の要請により、側板をモールド成形によって形成する、特に側板の剛性を向上させるために、ガラス繊維を混合した樹脂成形品によって形成することがある。すると、かかる駆動力伝達装置の場合には、ハウジングと歯車の端面は、スタッドに適宜座部を設けることで摺擦を防止することができるが、側板と歯車との端面は、摺擦を免れない。
【0010】
上記駆動力伝達装置で使用されるハスバ歯車は、回転方向によって決定される軸方向の片側にスラスト力が作用するので、複数の歯車を組み合わせて構成した駆動力伝達装置では、いずれかの歯車と側板とが強く摺擦することになり、特に負荷の大きい駆動力伝達装置では、摺擦力が大きくなる。
【0011】
また、上記駆動力伝達装置では、上述したように、側板として剛性を向上させるために、ガラス繊維等のフィラーを混合して強化した合成樹脂が用いられ、フィラーが研磨材の様に働き、歯車の端面が研削されることになる。
【0012】
そのため、上記駆動力伝達装置によって像担持体を駆動する場合には、歯車の端面と側板とが強く摺接することで、歯車に振動が発生し、像担持体の回転ムラを引き起し、いわゆるバンディングと呼ばれる画質欠陥を招来するという問題点を有していた。
【0013】
また、かかる問題点に対しては、歯車の端面と側板との間に、グリス等の潤滑剤を塗布して、摺擦を緩和することも従来から行われているが、この場合には、グリス等の潤滑剤を塗布する必要があり、その分だけ作業工数が増加するばかりか、潤滑剤の塗布の仕方や塗布量によって、潤滑効果が変動してしまい、寿命に変化が生じるという別の問題点を有している。
【0014】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、グリス等の潤滑剤を塗布することなく、歯車の端面とモールド成形品からなる側板等の板状部材とが摺接するのを防止することができ、像担持体を安定して回転駆動することができ、いわゆるバンディングと呼ばれる画質欠陥が発生するのを防止して高画質化が可能な駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、歯車の一側面をモールド成形によって成形された板状部材で支持し、当該歯車を介して駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、
前記歯車と板状部材との間に、高摺動性部材を介装したことを特徴とする駆動力伝達装置である。
【0016】
また、請求項2に記載された発明は、モールド成形されたハスバ歯車と、前記ハスバ歯車を回転自在に軸支するスタッドと、前記スタッドを備えたハウジングと、前記ハウジングを取り付け可能なモールド成形された板状部材と、前記ハスバ歯車と前記板状部材との摺擦部に介装される高摺動性部材とを備えたことを特徴とする駆動力伝達装置である。
【0017】
さらに、請求項3に記載された発明は、前記板状部材は、フィラーを充填した合成樹脂で成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動力伝達装置である。
【0018】
又、請求項4に記載された発明は、前記高摺動性部材は、ステンレス板からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動力伝達装置である。
【0019】
更に、請求項5に記載された発明は、前記請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動力伝達装置を用いて像担持体を回転駆動することにより、画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、グリス等の潤滑剤を塗布することなく、歯車の端面とモールド成型品からなる側板とが摺接するのを防止することができ、像担持体を安定して回転駆動することができ、いわゆるバンディングと呼ばれる画質欠陥が発生するのを防止して高画質化が可能な駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
実施の形態1
図2はこの発明の実施の形態1に係る駆動力伝達装置を適用した画像形成装置としてのタンデム型のフルカラープリンターを示すものであり、図3はこの発明の実施の形態1に係る駆動力伝達装置を適用した画像形成装置としてのタンデム型のフルカラープリンターの画像形成部を示すものである。尚、図3中の矢印は、各回転部材の回転方向を示している。
【0023】
このフルカラープリンター01は、図2及び図3に示すように、イエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)用の各感光体ドラム(像担持体)11, 12, 13, 14を有する画像形成ユニット1, 2, 3, 4と、これら感光体ドラム11, 12, 13, 14に接触又は近接する一次帯電用の帯電ロール(帯電手段)21, 22, 23, 24と、イエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のレーザ光31, 32, 33, 34を照射して静電潜像を書き込む図2に示すレーザ光学ユニット(潜像書き込み手段)03と、現像装置(現像手段)41, 42, 43, 44と、上記4つの感光体ドラム11, 12, 13, 14のうちの2つの感光体ドラム11, 12に接触する第1の一次中間転写ドラム(中間転写体)51及び他の2つの感光体ドラム13, 14に接触する第2の一次中間転写ドラム(中間転写体)52と、上記第1、第2の一次中間転写ドラム51, 52に接触する二次中間転写ドラム(中間転写体)53と、この二次中間転写ドラム53に接触する転写ロール(転写部材)60とで、その主要部が構成されている。なお、この実施の形態では、メンテナンス性を向上させるため、現像装置41, 42, 43, 44を除いた感光体ドラム11, 12, 13, 14や中間転写ドラム51,52,53等からなるプロセスカートリッジ02が、プリンター本体100 に対して交換自在に構成されている。
【0024】
感光体ドラム11, 12, 13, 14は、図3に示すように、共通の接平面M を有するように一定の間隔をおいて互いに平行に配置されている。また、第1の一次中間転写ドラム51及び第2の一次中間転写ドラム52は、各回転軸が該感光体ドラム11, 12, 13, 14軸に対し平行かつ所定の対称面を境界とした面対称の関係にあるように配置されている。さらに、二次中間転写ドラム53は、該感光体ドラム11, 12, 13, 14と回転軸が平行であるように配置されている。
【0025】
各色毎の画像情報に応じた信号は、図示しない画像処理ユニットによりラスタライジングされて図2に示すレーザ光学ユニット03に入力される。このレーザ光学ユニット03では、イエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のレーザ光31, 32, 33, 34が画像情報に応じて変調され、対応する色の感光体ドラム11, 12, 13, 14に照射されて静電潜像が書き込まれる。
【0026】
上記各感光体ドラム11, 12, 13, 14の周囲では、周知の電子写真方式による各色毎の画像形成プロセスが実行される。まず、上記感光体ドラム11, 12, 13, 14としては、例えば、直径24mmのOPC感光体を用いた感光体ドラムが用いられ、これらの感光体ドラム11, 12, 13, 14は、例えば、161mm/secの回転速度で回転駆動される。上記感光体ドラム11, 12, 13, 14の表面は、図3に示すように、接触型帯電手段としての帯電ロール21, 22, 23, 24に、約-800VのDC電圧を印加することによって、例えば約-300V程度に帯電される。なお、上記接触型の帯電手段としては、ロールタイプのもの、フィルムタイプのもの、ブラシタイプのもの等が挙げられるが、どのタイプのものを用いても良い。この実施の形態では、近年、電子写真装置で一般に使用されている帯電ロールを採用している。また、感光体ドラム11, 12, 13, 14の表面を帯電させるために、この実施の形態では、DCのみ印加の帯電方式をとっているが、AC+DC印加の帯電方式を用いても良い。
【0027】
その後、感光体ドラム11, 12, 13, 14の表面には、露光手段としてのレーザ光学ユニット03によってイエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応したレーザ光31, 32, 33, 34が照射され、各色毎の入力画像情報に応じた静電潜像が形成される。感光体ドラム11, 12, 13, 14は、レーザ光学ユニット03で静電潜像が書き込まれた際に、その画像露光部の表面電位は-60 V以下程度にまで除電される。
【0028】
また、上記感光体ドラム11, 12, 13, 14の表面に形成されたイエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応した静電潜像は、対応する色の現像装置41, 42, 43, 44によって現像され、感光体ドラム11, 12, 13, 14上にイエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として可視化される。
【0029】
この実施の形態では、現像装置41, 42, 43, 44として、磁気ブラシ接触型の二成分現像方式を採用しているが、この現像方式に限定されるものではなく、一成分現像方式や非接触型の現像方式など、他の現像方式においてもこの発明を充分に適用することができることは勿論である。
【0030】
現像装置41, 42, 43, 44には、それぞれ色の異なったイエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)色のトナーと、キャリアからなる二成分現像剤が充填されている。これらの現像装置41, 42, 43, 44は、図2に示すトナーカートリッジ04Y,04M,04C,04K からトナーが補給されると、この補給されたトナーは、図3に示すように、オーガー404 で充分にキャリアと攪拌されて摩擦帯電される。現像ロール401 の内部には、複数の磁極を所定の角度に配置したマグネットロール(不図示)が固定した状態で配置されている。この現像ロール401 に現像剤を搬送するパドル403 によって、当該現像ロール401 の表面近傍に搬送された現像剤は、現像剤量規制部材402 によって現像部に搬送される量が規制される。この実施の形態では、上記現像剤の量は、30〜50g/m2 であり、また、このとき現像ロール401 上に存在するトナーの帯電量は、概ね-20 〜35μC/g 程度である。
【0031】
上記現像装置41, 42, 43, 44で使用されるトナーとしては、次式で規定される形状係数MLS2が100〜140、例えば、MLS2=130程度のもので、平均粒径が3μm〜10μmの所謂" 球形トナー" が用いられる。
MLS2={(トナー粒子の絶対最大長)×2)}
/{(トナー粒子の投影面積)×π×1/4×100}
【0032】
上記現像ロール401 上に供給されたトナーは、マグネットロールの磁力によって、キャリアとトナーで構成された磁気ブラシ状となっており、この磁気ブラシが感光体ドラム11, 12, 13, 14と接触している。この現像ロール401 にAC+DCの現像バイアス電圧を印加して、現像ロール401 上のトナーを感光体ドラム11, 12, 13, 14上に形成された静電潜像に現像することにより、トナー像が形成される。この実施の形態では、現像バイアス電圧はACが4 kHz、1.5 kVppで、DCが-230V程度である。
【0033】
次に、上記各感光体ドラム11, 12, 13, 14上に形成されたイエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像は、第1の一次中間転写ドラム51及び第2の一次中間転写ドラム52上に、静電的に二次転写される。感光体ドラム11, 12上に形成されたイエロー(Y)及びマジェンタ(M)色のトナー像は、第1の一次中間転写ドラム51上に、感光体ドラム13, 14上に形成されたシアン(C)及びブラック(K)色のトナー像は、第2の一次中間転写ドラム52上に、それぞれ転写される。従って、第1の一次中間転写ドラム51上には、感光体ドラム11または12のどちらから転写された単色像と、感光体ドラム11及び12の両方から転写された2色のトナー像が重ね合わされた二重色像が形成されることになる。また、第2の一次中間転写ドラム52上にも、感光体ドラム13,14 から同様な単色像と二重色像が形成される。
【0034】
上記第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 上に感光体ドラム11,12,13,14 からトナー像を静電的に転写するために必要な表面電位は、+250〜500 V程度である。この表面電位は、トナーの帯電状態や雰囲気温度、湿度によって最適値に設定されることになる。この雰囲気温度や湿度は、図2に示すように、雰囲気温度及び湿度を検出する環境センサによって検出される。上述のように、トナーの帯電量が-20 〜35μC/g の範囲内にあり、常温常湿環境下にある場合には、第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 の表面電位は、+380V程度が望ましい。
【0035】
この実施の形態で用いる第1、第2の一次中間転写ドラム51, 52は、例えば、外径が42mmに形成され、抵抗値は108 Ω程度に設定される。第1、第2の一次中間転写ドラム51, 52は、図4に示すように、単層、あるいは複数層からなる表面が可撓性、もしくは弾性を有する円筒状の回転体であり、一般的にはFeやAl等からなる金属製芯材としての金属パイプ55の上に、導電性シリコーンゴム等で代表される低抵抗弾性ゴム層56(R=102 〜103 Ω)が、厚さ0.1 〜10mm程度に設けられている。更に、第1、第2の中間転写ドラム51, 52の最表面は、代表的にはフッ素樹脂微粒子を分散させたフッ素ゴムを厚さ3 〜100 μmの高離型層57(R=105 〜109 Ω)として形成し、シランカップリング剤系の接着剤(プライマ)58で接着されている。ここで重要なのは、抵抗値と表面の離型性であり、高離型層の抵抗値がR=105 〜109 Ω程度であり、高離型性を有する材料であれば、特に材料は限定されない。
【0036】
このように第1、第2の一次中間転写ドラム51, 52上に形成された単色又は二重色のトナー像は、二次中間転写ドラム53上に静電的に二次転写される。従って、二次中間転写ドラム53上には、単色像からイエロー(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)色の四重色像までの最終的なトナー像が形成されることになる。
【0037】
この二次中間転写ドラム53上へ第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 からトナー像を静電的に転写するために必要な表面電位は、+600〜1200V程度である。この表面電位は、感光体ドラム11, 12, 13, 14から第1の一次中間転写ドラム51及び第2の一次中間転写ドラム52へ転写するときと同様に、トナーの帯電状態や雰囲気温度、湿度によって最適値に設定されることになる。また、転写に必要なのは、第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 と二次中間転写ドラム53との間の電位差であるので、第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 の表面電位に応じた値に設定することが必要である。上述のように、トナーの帯電量が-20 〜35μC/g の範囲内にあり、常温常湿環境下であって、第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 の表面電位が+380V程度の場合には、二次中間転写ドラム53の表面電位は、+880V程度、つまり第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 と二次中間転写ドラム53との間の電位差は、+500V程度に設定することが望ましい。
【0038】
この実施の形態で用いる二次中間転写ドラム53は、例えば、外径が第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 と同じ42mmに形成され、抵抗値は1011Ω程度に設定される。また、上記二次中間転写ドラム53も第1、第2の一次中間転写ドラム51, 52と同様、単層、あるいは複数層からなる表面が可撓性、もしくは弾性を有する円筒状の回転体であり、一般的にはFeやAl等からなる金属製コアとしての金属パイプの上に、導電性シリコーンゴム等で代表される低抵抗弾性ゴム層(R=102 〜103 Ω)が、厚さ0.1 〜10mm程度に設けられている。更に、二次中間転写ドラム53の最表面は、代表的にはフッ素樹脂微粒子を分散させたフッ素ゴムを厚さ3 〜100 μmの高離型層として形成し、シランカップリング剤系の接着剤(プライマ)で接着されている。ここで、二次中間転写ドラム53の抵抗値は、第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 よりも高く設定する必要がある。そうしないと、二次中間転写ドラム53が第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 を帯電してしまい、第1及び第2の一次中間転写ドラム51,52 の表面電位の制御が難しくなる。このような条件を満たす材料であれば、特に材料は限定されない。
【0039】
次に、上記二次中間転写ドラム53上に形成された単色像から四重色像までの最終的なトナー像は、最終転写ロール60によって、用紙搬送路を通る転写用紙P上に3次転写される。この転写用紙Pは、図2に示すように、給紙カセット91から紙送り工程を経てレジストローラ90を通過し、二次中間転写ドラム53と転写ロール60のニップ部に送り込まれる。この最終転写工程の後、転写用紙P上に形成された最終的なトナー像は、熱定着手段としての定着器70によって熱及び圧力で定着され、フルカラープリンター本体100 の上部に設けられた排出トレイT上に排出され、一連の画像形成プロセスが完了する。上記定着器70は、内部にハロゲンランプ等の加熱源を有する加熱ローラ71と加圧ベルト72とを互いに圧接させ、未定着トナー像が転写された転写用紙Pを加熱加圧することにより、未定着トナー像を転写用紙P上に定着するように構成されている。
【0040】
転写ロール60は、例えば、外径が20mmに形成され、抵抗値は108 Ω程度に設定される。この転写ロール60は、金属シャフトの上にウレタンゴム等からなる半導電性の被覆層を設け、この被覆層の上にポリイミド樹脂またはポリエーテルイミド樹脂に相当する値以上の表面微小硬度を有するチューブを被覆して構成されている。具体的には、チューブ63としてポリイミド樹脂またはポリエーテルイミド樹脂からなるものが用いられる。転写ロール60に印加される電圧は、雰囲気温度、湿度、用紙の種類(抵抗値等)等によって最適値が異なり、概ね+1200 〜5000V程度である。この実施の形態では、定電流方式を採用しており、常温常湿環境下で約+10 μAの電流を通電して、ほぼ適正な転写電圧(+1600〜2000V) を得ている。
【0041】
また、上記転写用紙Pの両面に画像を形成する場合には、図2に示すように、片面に画像が形成された転写用紙Pをそのまま排出トレイT上に排出せずに、表裏を反転した状態で転写用紙Pを両面用の用紙搬送路07を介して、当該転写用紙Pを再度転写部へと搬送し、転写用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0042】
なお、図2中、符号08は図示しない手差しトレイから供給される転写用紙Pを搬送する給紙ロール、09は制御回路、10は電源回路をそれぞれ示している。
【0043】
ところで、この実施の形態では、歯車の一側面をモールド成形によって成形された板状部材で支持し、当該歯車を介して駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、前記歯車と板状部材との間に、高摺動性部材を介装するように構成されている。
【0044】
また、この実施の形態では、モールド成形されたハスバ歯車と、前記ハスバ歯車を回転自在に軸支するスタッドと、前記スタッドを備えたハウジングと、前記ハウジングを取り付け可能なモールド成形された板状部材と、前記ハスバ歯車と前記板状部材との摺擦部に介装される高摺動性部材とを備えるように構成されている。
【0045】
さらに、この実施の形態では、前記板状部材は、フィラーを充填した合成樹脂で成形されるように構成されている。
【0046】
又、この実施の形態では、前記高摺動性部材は、ステンレス板からなるように構成されている。
【0047】
すなわち、上記駆動力伝達装置100 は、図4に示すように、プリンター本体100 の板状部材としての側板101 に取付けられており、当該プリンター本体100 の側板101 は、ABS樹脂等の合成樹脂にガラス繊維等のフィラーを充填して、モールド成形によって図5に示すように所定の形状に形成されている。上記駆動力伝達装置100 は、図6に示すように、板金からなるハウジング102 を備えており、当該ハウジング102 には、金属製のスタッド103 〜108 がかしめ等によって複数本(図示例では、6本)立設されている。また、上記ハウジング102 には、後述する駆動モータの駆動軸を挿通するための円形状の開口部109 が設けられている。なお、図示例では、第2番目のスタッド104 が他のスタッドに比べて短く設定されているとともに、第6番目のスタッド108 は、極短く形成されている。
【0048】
上記第2番目のスタッド104 には、図7に示すように、駆動モータ110 の駆動歯車111 と噛み合う第1の減速ハスバ歯車112 が回転自在に軸支されており、当該第1の減速ハスバ歯車112 は、直径の大きなハスバ歯車113 と直径の小さなハスバ歯車114 を軸方向に沿って一体的に設けて構成されている。また、上記第1番目のスタッド103 には、第1の減速ハスバ歯車112 の直径の小さなハスバ歯車114 と噛み合う第2の減速ハスバ歯車115 が回転自在に軸支されており、当該第2の減速ハスバ歯車115 は、直径の大きなハスバ歯車116 と直径の小さなハスバ歯車117 を軸方向に沿って一体的に設けて構成されている。上記第1の減速ハスバ歯車112 及び第2の減速ハスバ歯車115 は、ポリアセタール等の高摺動性樹脂によってモールド成形によって形成されている。
【0049】
また、上記第2の減速ハスバ歯車115 の直径の小さなハスバ歯車117 は、図4、図8及び図9に示すように、二次中間転写ドラム53の端部に設けられた従動ハスバ歯車118 と噛み合わされており、当該二次中間転写ドラム53を回転駆動するように構成されている。また、上記二次中間転写ドラム53の端部に設けられた従動ハスバ歯車118 には、第1の一次中間転写ドラム51の端部に設けられた従動ハスバ歯車119 が噛み合わされているとともに、当該従動ハスバ歯車119 には、感光体ドラム11,12の端部に設けられた従動ハスバ歯車120 、121 が噛み合わされている。
【0050】
ところで、上記ハウジング101 に立設された第1及び第2のスタッド103 、104 の先端は、図1に示すように、プリンター本体100 の板状部材としての側板101 に設けられた挿通孔122 等に嵌入されている。このプリンター本体100 の側板101 は、上述したように、ガラス繊維等のフィラーを充填して強化したガラス入りABS樹脂等からなる合成樹脂を、モールド成形することによって形成されている。
【0051】
この実施の形態では、図1に示すように、第2の減速ハスバ歯車115 の直径の小さなハスバ歯車117 におけるボス部117 aの端部と、側板101 との摺擦部に、高摺動性部材として厚さ0.1mmのステンレス製の薄板123 が介装されている。
【0052】
また、この実施の形態では、図9に示すように、第1の減速ハスバ歯車112 の直径の小さなハスバ歯車114 の端部と、側板101 との摺擦部にも、高摺動性部材として厚さ0.1mmのステンレス製の薄板123 が介装されている。
【0053】
上記第1の減速ハスバ歯車112 及び第2の減速ハスバ歯車114 は、図9に示すように、その回転方向によって決定される軸方向にスラスト力Fが作用しており、第1の減速ハスバ歯車112 及び第2の減速ハスバ歯車115 には、側板101 側を向いたスラスト力Fが作用している。
【0054】
ところで、上記ステンレス製の薄板123 は、図10に示すように、第1のスタッド103 及び第2のスタッド104 を挿通する部分124 、125 が、略円形状乃至半円形状に形成されているとともに、当該第1のスタッド103 及び第2のスタッド104 を挿通する部分124 、125 に、第1のスタッド103 及び第2のスタッド104 を挿通する挿通孔126,127 が穿設されている。また、上記ステンレス製の薄板123 は、第1のスタッド103 及び第2のスタッド104 を挿通する部分124 、125 が、一体的に連結されているとともに、第2のスタッド104 を挿通する部分125 の近傍には、当該ステンレス製の薄板123 を側板101 に固定するため、図5に示すように、側板101 の突起128 に嵌合する板バネ状の嵌合部129 が設けられている。
【0055】
なお、上記高摺動性部材としては、ステンレス製の薄板123 以外に、一般的な金属板や、ガラス繊維等のフィラーが充填されていない合成樹脂板等を用いても良い。ただし、上記高摺動性部材としてステンレス製の薄板123 を用いた場合には、ステンレスの防錆性によって、長期間にわたって高摺動性を維持することが可能となる。
【0056】
以上の構成において、この実施の形態に係る駆動力伝達装置を適用したフルカラープリンターでは、次のようにして、グリス等の潤滑剤を塗布することなく、歯車の端面とモールド成型品からなる側板とが摺接するのを防止することができ、像担持体を安定して回転駆動することができ、いわゆるバンディングと呼ばれる画質欠陥が発生するのを防止して高画質化が可能となっている。
【0057】
すなわち、この実施の形態に係る駆動力伝達装置を適用したフルカラープリンターでは、図9に示すように、駆動モータ110 を回転駆動することによって、当該駆動モータ110 の駆動力を駆動力伝達装置100 を介して、二次中間転写ドラム53、第1・第2の一次中間転写ドラム51、52及び感光体ドラム11,12,13,14からなる像担持体を、所定の速度で回転駆動して、フルカラーの画像を形成するようになっている。
【0058】
その際、上記駆動力伝達装置100 では、図7及び図9に示すように、駆動モータ110 の回転駆動力が、第1の減速ハスバ歯車112 及び第2の減速ハスバ歯車115 を介して、二次中間転写ドラム53等に伝達されるが、第1の減速ハスバ歯車112 及び第2の減速ハスバ歯車115 には、回転に伴ってスラスト方向Fに力が作用し、例えば、第1の減速ハスバ歯車112 には、図9に示すように、側板101 に向かってスラスト力Fが作用し、当該第1の減速ハスバ歯車112 のボス部117 aが側板101 と摺擦されることになる。
【0059】
ところで、この実施の形態では、第1の減速ハスバ歯車112 のボス部117 aと側板101 との間に、ステンレス製の薄板123 が介装されているため、第1の減速ハスバ歯車112 のボス部117 aと側板101 とが直接摺擦することがなく、ステンレス製薄板123 の高摺動性によって第1の減速ハスバ歯車112 を滑らかに回転させることができる。
【0060】
したがって、上記駆動力伝達装置100 では、第1の減速ハスバ歯車112 のボス部117 aと側板101 とが摺擦して、第1の減速ハスバ歯車112 の端部が削られ、第1の減速ハスバ歯車112 の回転が不安定となることがなく、二次中間転写ドラム53、第1・第2の一次中間転写ドラム51、52及び感光体ドラム11,12,13,14を安定して回転駆動することができ、バンディングの発生を防止して高画質化が可能となっている。
【0061】
このように、上記実施の形態によれば、グリス等の潤滑剤を塗布することなく、歯車の端面とモールド成型品からなる側板とが摺接するのを防止することができ、像担持体を安定して回転駆動することができ、いわゆるバンディングと呼ばれる画質欠陥が発生するのを防止して高画質化が可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1はこの発明の実施の形態1に係る駆動力伝達装置の要部を示す断面図である。
【図2】図2はこの発明の実施の形態1に係る駆動力伝達装置を適用した画像形成装置としてのタンデム型フルカラープリンターを示す構成図である。
【図3】図3はこの発明の実施の形態1に係る駆動力伝達装置を用いた画像形成装置としてのタンデム型フルカラープリンターの画像形成部を示す構成図である。
【図4】図4はこの発明の実施の形態1に係る駆動力伝達装置を適用したプリンター本体の側板を示す斜視図である。
【図5】図5はプリンター本体の側板を示す斜視図である。
【図6】図6は駆動力伝達装置のハウジングを示す斜視図である。
【図7】図7は歯車を取り付けた駆動力伝達装置のハウジングを示す斜視図である。
【図8】図8はこの発明の実施の形態1に係る駆動力伝達装置を適用したプリンター本体の側板を示す平面図である。
【図9】図9は駆動力伝達装置を示す断面図である。
【図10】図10はステンレス製薄板を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
100:駆動力伝達装置、101:側板、112:第1の減速ハスバ歯車、123:ステンレス製の薄板(高摺動性部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車の一側面をモールド成形によって成形された板状部材で支持し、当該歯車を介して駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、
前記歯車と板状部材との間に、高摺動性部材を介装したことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項2】
モールド成形されたハスバ歯車と、前記ハスバ歯車を回転自在に軸支するスタッドと、前記スタッドを備えたハウジングと、前記ハウジングを取り付け可能なモールド成形された板状部材と、前記ハスバ歯車と前記板状部材との摺擦部に介装される高摺動性部材とを備えたことを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項3】
前記板状部材は、フィラーを充填した合成樹脂で成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動力伝達装置。
【請求項4】
前記高摺動性部材は、ステンレス板からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動力伝達装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動力伝達装置を用いて像担持体を回転駆動することにより、画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−38132(P2006−38132A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220131(P2004−220131)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】