説明

駆動力制御装置

【課題】目標加速度に基づいた駆動力制御がなされる場合に車両のドライバビリティの悪化を抑制する。
【解決手段】車両10におけるECT400の変速期間において、ECU100は、変速時駆動力制御を実行する。当該制御は、トルク相処理とイナーシャ相処理とが含まれ、トルク相処理においては、車両10の実加速度αrが、アクセル開度に基づいて設定される目標加速度αtに対して定まる下限値αl未満となったか否かが判別される。一方、実加速度αrが下限値αlを下回った場合、イナーシャ相処理において、目標加速度αtと実加速度αrとの間に生じた相対的に大きな偏差を解消すべく駆動力の制御を行うことによって生じる実加速度及び駆動力の大きな変化によりドライバビリティが悪化することを防止するため、下限値αlと実加速度αrとの偏差に基づいて目標加速度αtが補正され、当該偏差が減少させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動力を制御する駆動力制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、目標加減速度に基づいて制駆動力を発生させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された加減速度制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、アクセルペダルの操作量に応じて目標加減速度が設定されると共に、アクセルペダルのストローク内に部分的に不感帯領域を設けることにより、アクセルペダルの操作に対する過敏な応答を防ぐことが可能であるとされている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−88961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の駆動力制御においては、実加速度を目標加速度に追従させるべく、例えばフィードバック制御等がなされるが、例えば変速時等、駆動力の変化が生じ易い動作期間においては、一時的にしろ、実加速度と目標加速度との乖離が大きくなる場合がある。このような場合、実加速度を目標加速度に追従させるために、大きな駆動力変化を生じさせる必要があるが、このような大きな駆動力変化は、車両のドライバビリティを悪化させる要因となる。即ち、従来の技術には、実加速度が目標加速度に対して乖離し易い状況等においてドライバビリティが悪化しかねないという技術的な問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、この種の駆動力制御がなされる場合に車両のドライバビリティの悪化を抑制し得る駆動力制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る駆動力制御装置は、車両に備わり、該車両の目標加速度を設定する設定手段と、該設定された目標加速度に基づいて駆動力を制御する制御手段と、前記設定された目標加速度と前記車両の実加速度との偏差が小さくなるように前記設定された目標加速度を補正する補正手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る駆動力制御装置によれば、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る設定手段により、例えばアクセルペダルの操作量(以下、適宜「アクセル開度」と称する)等に基づいて、例えば然るべきアルゴリズムや算出式に従った数値演算や論理演算の結果として、又は例えばこのような数値演算や論理演算とは別に或いはこのような数値演算や論理演算の結果に基づいて然るべき記憶手段に記憶されたマップから該当する数値が選択的に取得された結果等として、車両の前後方向の加速度の目標値(別言すれば、ドライバが要求する前後方向の加速度)たる目標加速度が設定される。
【0008】
目標加速度が設定されると、この設定された目標加速度に基づいて、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制御手段により駆動力が制御される。
【0009】
ここで、「駆動力」とは、例えば車両に備わり得る内燃機関の出力トルクの制御(例えば、吸入空気量、点火時期遅角量或いは燃料噴射量等の制御)等を介して得られる、車両を主として前後方向に推進させる推進力として駆動力を好適な一形態として含みつつ、例えば車両に備わり得る各種ブレーキシステム等の制動装置における制動力の制御(例えば制動油圧の制御)等を介して得られる、車両の前後方向への進行を抑制力としての駆動力を含んでなる概念である。即ち、このような制御手段に係る制御の好適な一形態としては、車両の実加速度が当該目標加速度に一致するように、追従するように、漸近するように、或いは実加速度と目標加速度との間に一定の関係が保持されるように、例えば実加速度が目標加速度に対し小さければ推進力が付与され、実加速度が目標加速度に対し大きければ制動力が付与される。
【0010】
また、このような制御を経て実際に車軸或いは駆動輪等に現れる駆動力(以下、適宜「実駆動力」と称する)は、制御目標値としての目標加速度に基づいて、好適な一形態として制御手段によるフィードバック制御やフィードフォワード制御等を経て、直接的に或いは間接的に(即ち、実駆動力がリアルタイムに把握されるか否かは別として)、目標加速度に対応する目標駆動力に追従せしめられる。
【0011】
ここで特に、実駆動力を目標駆動力に追従させる(即ち、一義的に実加速度を目標加速度に追従させる)旨の制御がなされる場合において、例えば何らかの理由から実駆動力と目標駆動力との乖離が生じると、必然的に実加速度も目標加速度に対して乖離することになる。この場合、この乖離に係る乖離量(即ち、偏差)が大きい場合には特に、実加速度を目標加速度に例えば追従させるために大きく変化させる必要が生じ、ドライバに知覚され得る程度の相対的に大きなドライバビリティの悪化として顕在化しかねない。
【0012】
そこで、本発明に係る駆動力制御装置では、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る補正手段により、目標加速度と実加速度との偏差が小さくなるように、目標加速度が、例えば直接的に或いは目標駆動力の補正等の形で間接的に補正される。この際、実加速度の検出や推定等のプロセスは必ずしも必要なく、また必ずしも目標加速度の定量的な補正は必要とならない。即ち、少なくとも定性的に目標加速度の補正態様と当該偏差と変化態様との関係が得られている限りにおいて、目標加速度の補正により幾らかなり当該偏差を減少させることが可能である。
【0013】
ここで、目標加速度は、実加速度或いは実駆動力の制御目標を規定する指標であり、実現象たる実加速度及び実駆動力とは性質が異なるから、その変更自体がドライバビリティを悪化させることはない。従って、当該偏差が小さくなるように目標加速度が補正されることによって、実駆動力の変化に伴うドライバビリティの悪化を顕在化させることなく、実加速度を目標加速度に例えば追従させることが可能となる。
【0014】
即ち、本発明に係る駆動力制御装置によれば、例えば近未来的に生じ得る、或いはリアルタイムに生じている大きな駆動力変化の発生を、例えばドライバビリティの悪化を顕在化させない範囲でフレキシブルに目標加速度を変化させつつ実加速度を目標加速度に例えば追従させること等により、未然に或いは可及的に迅速に防ぐことが可能となる。即ち、目標加速度に基づいた駆動力制御の実行に伴って生じ得るドライバビリティの悪化を抑制することが可能となるのである。
【0015】
本発明に係る駆動力制御装置の一の態様では、前記補正手段は、前記偏差が許容値を超える場合に前記設定された目標加速度を補正する。
【0016】
この態様によれば、目標加速度と実加速度との偏差が、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて少なくとも実践上ドライバビリティの悪化が顕在化しないもの等として定められる許容値を超える場合に、目標加速度の補正が行われる。
【0017】
目標加速度の補正は、例えば大きな駆動力変化が発生することによるドライバビリティの悪化を防ぐための言わば次善策であって、駆動力制御の本質に鑑みれば、この種の目標加速度の補正は無論なされない方がよい。この態様によれば、目標加速度を補正する必要性が相対的にみて高い場合に限って、又はこのような場合に優先して、或いは少なくともこのような場合に、目標加速度が補正されるため、実践上極めて有益である。
【0018】
偏差が許容値を超える場合に目標加速度が補正される本発明に係る駆動力制御装置の一の態様では、前記車両の実加速度を特定する特定手段を更に具備し、前記補正手段は、前記偏差が許容値を超える場合として、前記特定された実加速度が前記設定された目標加速度に対応する下限値未満である場合に前記設定された目標加速度を補正する。
【0019】
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る特定手段により、車両の実加速度が特定される。従って、目標加速度と実加速度との偏差が許容値を超えるか否かの判断をより高精度に行うことができ、目標加速度の補正をより効果的に行うことが可能となる。
【0020】
尚、本発明に係る「特定」とは、例えば、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に物理的数値又は物理的数値に対応する電気信号等として検出すること、予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択又は推定すること、それら検出された物理的数値若しくは電気信号又は選択若しくは推定された数値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従った論理演算や数値演算の結果として導出すること、或いはこのように検出、選択、推定又は導出された値等を単に電気信号等として取得すること等を包括する広い概念である。
【0021】
更に、この態様によれば、この特定された実加速度が、例えば目標加速度に対し一義的に又はその都度個別具体的に多義的に定まる、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて目標加速度に対する乖離が少なくとも実践的にみてドライバビリティの悪化を顕在化させない程度に収まり得るもの等として規定される下限値未満(下限値の設定如何により容易に「以下」と置換し得る概念である)であるか否かにより、加速度の偏差が許容値を超えるか否かの判断を簡便に且つ正確に下すことが可能となる。
【0022】
尚、この態様では、前記補正手段は、前記特定された実加速度の変化の度合いに基づいて前記設定された目標加速度を補正してもよい。
【0023】
実加速度(即ち、一義的に実駆動力)が何らかの要因で目標加速度(即ち、一義的に目標駆動力)から大きく乖離するとして、駆動力変化がドライバビリティの悪化として顕在化するか否かは、例えば車両の物理的構成及び機械的構成、例えば、ボディ形状、車両重量、フレームの形状及び材質、並びにサスペンション等の懸架系の形状、剛性、材質、空間的配置又は設置態様等各種の要因により車両毎に相違する。
【0024】
この態様によれば、補正手段は、例えば、実加速度の変化量、変化に要した時間又はそれらの複合概念としての変化速度(傾き)等を含む概念としての、実加速度の変化の度合いに基づいて、例えば目標加速度の補正の要否及びその補正量等を決定する。従って、ドライバビリティの悪化が顕在化し得る状況に特化して目標加速度の補正を行うことが可能となり、実践上有益である。
【0025】
本発明に係る駆動力制御装置の他の態様では、前記車両は、内燃機関、及び前記内燃機関の出力軸と前記車両の車軸との間の動力伝達経路に設けられ、前記出力軸の回転速度と前記車軸の回転速度との比を変化させることにより前記出力軸の回転速度を変速可能な変速機を備え、前記補正手段は、前記変速がなされる期間において前記設定された目標加速度を補正する。
【0026】
この態様によれば、車両は、例えば複数の気筒を有し、当該気筒各々の燃焼室において、燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の出力軸を適宜介して動力として取り出すことが可能に構成された、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を包括する概念として内燃機関を備える。
【0027】
更に、車両は、この内燃機関の出力軸と、当該内燃機関の動力を最終的に駆動輪に伝達するための、例えばドライブシャフトやアクスルシャフト等の形態を採り得る車軸との間の動力伝達経路に、例えばデファレンシャル等の減速機構の前段に、例えばAT(Automatic Transmission:自動変速装置)やCVT(Continuously Variable Transmission)等の形態を採り得る変速機を備え、内燃機関の出力軸と車軸との回転速度の比たる変速比を、段階的に又は連続的に変化させることにより変速を行うことが可能に構成される。このような変速機を介して変速がなされる場合、好適な一形態としては、変速機を構成する例えばクラッチ、ワンウェイクラッチ及びブレーキ等の各種摩擦係合装置における係合状態が、例えば係合油圧の制御等を介して変化させられること等によって、変速比が従前の値から目的とする値に切り替わる。
【0028】
一方、このような変速がなされる期間としての変速期間中においては、変速比が小さくなる方向への所謂アップシフトであっても、変速比が大きくなる方向への所謂ダウンシフトであっても、例えば上述した複数の摩擦係合装置各々における係合状態の変化等各種要因により、駆動力が不安定に変化し易く、場合によっては駆動力が目標駆動力に対して大きく乖離して、実加速度と目標加速度との偏差が大きくなり易い。このため、変速期間中においては、本発明に係る駆動力制御装置による利益がより効果的に享受される。
【0029】
本発明に係る駆動力制御装置の他の態様では、前記車両における所定種類の外乱の発生状態に基づいて前記補正手段に係る補正の要否を判別する判別手段を更に具備し、前記補正手段は、前記補正が必要である旨が判別された場合に前記設定された目標加速度を補正する。
【0030】
上述した変速期間に限らず車両の走行期間においては、不定のタイミングで例えば駆動輪のスリップやロック等の外乱が発生することがある。このような外乱の発生は不規則であるが故に一時的であることが多く、また一時的でない場合にはそれ自体がドライバビリティを低下させる要因となるから、本発明に係る目標加速度の補正(即ち、一義的に目標駆動力の補正)をなさずともドライバビリティの悪化が顕在化する懸念は小さい。
【0031】
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る判別手段により、例えば上述したスリップやロック等を含む、駆動力変化に起因するドライバビリティの悪化を実践上顕在化させないものとして規定される外乱の有無や規模等、各種発生状態に基づいて、補正手段に係る補正の要否が判別される。補正手段は、係る判別の結果、当該補正が必要である旨が判別された場合に目標加速度を補正する。
【0032】
従って、この態様によれば、例えば目標加速度の補正がなされない場合にドライバビリティの悪化が顕在化しかねない状況において限定的に、或いは少なくとも優先的に目標加速度の補正を行うことが可能となり、目標加速度の補正をより効果的に実行することが可能となって実践上高い利益が提供される。
【0033】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0035】
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の要部構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。
【0036】
図1において、車両10は、ECU100、エンジン200、トルクコンバータ300、ECT(Electronic Controlled Transmission:電子制御式自動変速装置)400、ECT駆動部500及び油圧コントローラ600を備えた、本発明に係る「車両」の一例である。
【0037】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「駆動力制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する変速時駆動力制御を実行することが可能に構成されている。
【0038】
ここで、図2を参照し、ECU100の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ECU100において、本発明に係る駆動力制御装置に関連する部分の構成を表してなる機能ブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0039】
図2において、ECU100は、制御部110、目標加速度演算部120、エンジン制御部130及びECT制御部140を備える。
【0040】
制御部110は、ECU100におけるメインコントロールユニットであり、変速時駆動力制御を含む各種制御プログラムを実行することが可能に構成されている。
【0041】
目標加速度演算部120は、車両10の目標駆動力を規定する目標加速度αtを数値演算処理の結果として導出することが可能に構成された処理ユニットであり、本発明に係る「設定手段」の一例である。
【0042】
エンジン制御部130は、エンジン200の動作状態を制御することが可能に構成された処理ユニットであり、本発明に係る「制御手段」の一例である。
【0043】
ECT制御部140は、ECT400の動作状態を制御することが可能に構成された処理ユニットである。
【0044】
図1に戻り、エンジン200は、車両10の動力源として機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例である。ここで、図3を参照して、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3はエンジン200の模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0045】
図3において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205(即ち、本発明に係る「内燃機関の出力軸」の一例)の回転運動に変換することが可能に構成されている。
【0046】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、上述した制御部110が、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転速度NEを算出する構成となっている。
【0047】
尚、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図2においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。また、本発明に係る内燃機関は、エンジン200として図3に示すものに限定されず、例えば、6気筒、8気筒或いは12気筒エンジンであってもよいし、V型、水平対向型等であってもよく、各種の態様を採ることが可能である。
【0048】
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210において、インジェクタ212から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に圧送供給されている。尚、燃料を噴射する噴射手段の形態は、図示するような所謂吸気ポートインジェクタの構成を採らずともよく、例えば、フィードポンプ或いは他の低圧ポンプにより圧送される燃料の圧力を更に高圧ポンプによって昇圧せしめ、高温高圧の気筒201内部へ燃料を直接噴射することが可能に構成された、所謂直噴インジェクタ等の形態を有していてもよい。
【0049】
気筒201内部と吸気管207とは、吸気バルブ211の開閉によってその連通状態が制御されている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
【0050】
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節するスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的にはアクセル開度に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
【0051】
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。また、排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。
【0052】
図1に戻り、トルクコンバータ300は、エンジン200における前述したクランクシャフト205の後段に接続された流体伝達装置である。トルクコンバータ300は、クランクシャフト205を介して伝達されるエンジン200の回転動力を、ECT400に伝達することが可能に構成されている。尚、トルクコンバータ300の詳細な構成については後述する。
【0053】
ECT400は、クラッチ要素、ブレーキ要素及びワンウェイクラッチ要素等、不図示の油圧アクチュエータによって駆動される油圧式摩擦係合装置を複数備えた、本発明に係る「変速機」の一例たる電子制御式自動変速装置である。ECT400では、これら各油圧式摩擦係合装置各々の係合状態が変化することによって、相互に異なる複数の変速比を得ることが可能に構成される。
【0054】
ECT駆動部500は、ECT400を物理的、機械的、電気的及び磁気的に駆動することが可能に構成された、より具体的には、上述した複数の油圧式摩擦係合装置の係合状態を変化させることが可能に構成された駆動ユニットである。ECT駆動部500は、複数のリニアソレノイド及びソレノイドを備え、各々が後述するECT400の油圧式摩擦係合装置の各々を駆動する油圧アクチュエータを駆動する構成となっている。
【0055】
油圧コントローラ600は、上述したECT駆動部500におけるリニアソレノイドの励磁状態制御(例えばデューティ比制御)及びソレノイドの励磁状態制御(例えば、励磁及び非励磁の切り替え制御)等により、ECT400における各摩擦係合装置に対応する油圧アクチュエータの油圧を制御可能に構成された制御ユニットである。油圧コントローラ600は、ECU100と電気的に接続されており、その動作状態がECU100における主としてECT制御部140よって上位に制御される構成となっている。尚、ECT400の詳細な構成については、トルクコンバータ300と併せ、後に図4を参照する形で説明する。
【0056】
車両10には更に、減速機構11、左ドライブシャフトDSFL、右ドライブシャフトDSFR、左前輪FL、右前輪FR、前後加速度センサ12(以下、適宜「前後Gセンサ12」と略称する)、アクセル開度センサ13、アクセルペダル14及びシフトレバー15が備わる。
【0057】
減速機構11は、ECT400の出力回転軸に接続された差動ギアたるデファレンシャルを含み、ECT400の出力軸の回転速度を適宜減速して各ドライブシャフトに伝達することが可能に構成されたギアユニットである。
【0058】
左ドライブシャフトDSFL及び右ドライブシャフトDSFRは、夫々一端部が減速機構11に連結され、且つ夫々他端部が駆動輪たる左前輪FL及び右前輪FRに連結された駆動力伝達軸であり、本発明に係る「車軸」の一例である。このように、車両10において、エンジン200から発せられる動力は、クランクシャフト205、トルクコンバータ300、ECT400、減速機構11及び当該左右のドライブシャフトを介して駆動輪たる左右の前輪に伝達される構成となっている。このトルクコンバータ300、ECT400、減速機構11、左ドライブシャフトDSFL及び右ドライブシャフトDSFRは、全体として、車両10のパワートレインを構成している。
【0059】
前後Gセンサ12は、車両10の前後方向の加速度(即ち、本発明に係る「実加速度」の一例)αrを検出することが可能に構成されたセンサである。前後Gセンサ12は、ECU100と電気的に接続されており、検出された前後加速度αrは、ECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0060】
アクセル開度センサ13は、ドライバにより操作されるアクセルペダル14の操作量に対応するアクセル開度を検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度は、ECU100によって絶えず、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0061】
シフトレバー15は、車両10のドライバによる操作が可能に構成された変速用の操作手段である。本実施形態において、シフトレバー15には、1レンジ、2レンジ、Dレンジ、Nレンジ、Rレンジ、及びPレンジの計6種類のシフト位置が用意されており、当該シフト位置の各々に応じて前述したECT400の変速比が変化する構成となっている。尚、シフトレバー15において選択されているシフト位置に関する情報は、シフトレバー15と電気的に接続されたECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0062】
次に、図4を参照し、トルクコンバータ300及びECT400の詳細な構成について説明する。ここに、図4は、トルクコンバータ300及びECT400の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0063】
図4において、トルクコンバータ300は、ポンプインペラ310、タービンランナ320、ステータ330、ワンウェイクラッチ340及びロックアップクラッチ350を備える。
【0064】
ポンプインペラ310は、エンジン200のクランクシャフト205と連結され、クランクシャフト205の回転に同期して回転可能に構成されている。
【0065】
タービンランナ320は、ATF(Automatic Transmission Fluid)を介してポンプインペラ310と対向配置されると共に、ECT400の入力軸401に連結されている。従って、このタービンランナ320の回転速度は、ECT400の入力軸401の回転速度と等価である。尚、係るタービンランナ320の回転速度たるタービン回転速度NTは、不図示の回転センサにより検出され、当該回転センサと電気的に接続されたECU100に、ECT400の入力軸回転速度Ninとして出力される構成となっている。
【0066】
ステータ330は、ワンウェイクラッチ340を介して非回転部材であるハウジング(符号省略)に連結され、タービンランナ320からポンプインペラ310へ還流するATFの方向を変換することが可能に構成されたトルク増幅手段である。
【0067】
ロックアップクラッチ350は、その係合状態に応じて、クランクシャフト205から伝達される回転動力を、トルクコンバータ300を介することなく入力軸401に直達することが可能に構成されたクラッチである。
【0068】
一方、図4において、ECT400は、入力軸401上に同軸に配設されると共にキャリアとリングギアとが夫々相互に連結されることにより所謂CR−CR結合の遊星歯車機構を構成するシングルピニオン型の一対の第1遊星歯車機構430及び第2遊星歯車機構440と、入力軸401と平行なカウンタ軸402に同軸に配置された一組の第3遊星歯車機構450と、カウンタ軸402の軸端に固定されて、前述した減速機構11と噛み合う出力ギア403とを備える。
【0069】
これら第1遊星歯車機構430、第2遊星歯車機構440及び第3遊星歯車機構450の各構成要素、即ちサンギア、リングギア及びそれらに噛み合う遊星ギアを回転可能に支持するキャリアは、4つのクラッチC0、C1、C2及びC3により相互に選択的に連結され、また3つのブレーキB1、B2及びB3によって非回転部材であるハウジングに選択的に連結され、或いは二つのワンウェイクラッチF1及びF2により相互に又はハウジングと係合させられる構成となっている。
【0070】
これら各クラッチ及び各ブレーキは、多板式のクラッチやバンドブレーキ等、油圧アクチュエータによりその係合状態が制御される油圧式摩擦係合装置であり、既に述べたように、油圧コントローラ600によって制御されるECT駆動部500により駆動制御され、その係合力を規定する油圧が変化する構成となっている。
【0071】
このような構成の下、入力軸401と同軸上に配置された一対の第1遊星歯車機構430、第2遊星歯車機構440、クラッチC0、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2及びワンウェイクラッチF1によって、前進四段後進一段の変速段を備えた主変速部410が構成される。また、カウンタ軸402上に配置された一組の遊星歯車機構450、クラッチC3、ブレーキB3及びワンウェイクラッチF2によって、補助変速部420が構成される。尚、この補助変速部420によって前進二段の変速段が実現されることにより、ECT400全体としては前進五段の変速段が実現されている。
【0072】
<実施形態の動作>
<ECT400の動作>
ここで、図5を参照し、これら油圧式摩擦係合装置の係合状態とECT400の変速段との関係について説明する。ここに、図5は、ECT400における油圧式摩擦係合装置各々の係合状態とECT400の変速段との対応関係を説明する表である。
【0073】
図5において、縦の系列には、シフトレバー15によって選択されるシフト位置及びそれに対応する変速段が順次配されており、横の系列には、前述した各油圧式摩擦係合装置が配されている。図5において「○」は係合していることを表し、「×」は解放されていることを表している。また、「△」は、駆動時のみ係合することを表している。
【0074】
尚、図5では、Rレンジ(後進用の変速段に相当)、Pレンジ及びNレンジ(動力遮断時の変速段に相当)並びにDレンジ(前進用の変速段(5段)に相当)に対応する係合状態のみが示される。即ち、1stレンジ及び2ndレンジに相当する係合状態は、Dレンジにおいて実現される1st及び2ndの変速段に相当する係合状態と等価であるため、その図示が省略されている。
【0075】
図示するように、ECT400では、シフト位置がDレンジである場合に、図示「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」及び「5th」に相当する前進5段の変速段が実現される。尚、これら前進用変速段の変速比は、「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」及び「5th」の順で小さくなる。即ち、「1st」が最大であり、「5th」が最小となる。尚、これ以降の説明では、「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」及び「5th」を、夫々適宜「1速」、「2速」、「3速」、「4速」及び「5速」等と称することとする。また、シフトレバー15のシフト位置がDレンジである場合、変速段は、ECU100の制御により、例えばROMに格納された変速用のマップに基づいて自動的に切り替えられる。従って、ECT400において、その時点で如何なる変速段が選択されているかについては、ECU100により絶えず把握されている。
【0076】
<車両10における駆動力制御の概要>
車両10では、実加速度を目標加速度に追従させるべくエンジン200の出力トルク及び不図示のブレーキ装置における制動力の制御等を介して駆動力が制御される。例えば、この出力トルクは、エンジン200、トルクコンバータ300、ECT400、減速機構11及び各ドライブシャフト等を介して最終的に各駆動輪に駆動力として伝達される。また、例えばこの制動力は、各駆動輪に付与されることによって、各駆動輪に伝達された駆動力を減じることが可能である。
【0077】
この駆動力の制御は概ね以下の如くに実行される。尚、本実施形態では、エンジン200の出力トルクにより駆動力を制御する場合について述べる。
【0078】
駆動力の制御に際しては先ず、ECU100の目標加速度演算部120が、アクセル開度センサ13により検出されるアクセル開度に基づいて目標加速度αtを決定し、制御部110に例えば電気信号等として出力する。制御部110では、この目標加速度αtに基づいて、予めROMに格納されたトルクマップが参照され、この目標加速度αtに対応するエンジン200の出力トルク、即ち目標出力トルクが決定される。
【0079】
目標出力トルクが決定されると、エンジン制御部130は、この目標出力トルクが得られるように、例えばエンジン200のスロットルバルブモータ209を介したスロットル開度制御(即ち、吸入空気量制御)、点火装置202を介した点火時期制御及びインジェクタ212を介した燃料噴射量制御等を実行し、エンジン200をして目標出力トルクを出力せしめる。その結果、目標加速度に対応する目標駆動力が各ドライブシャフトに伝達される。この駆動力は、前後加速度センサ12により検出される車両10の実加速度αrが目標加速度αtに追従するように、実加速度αrをフィードバックする形で制御される。
【0080】
一方、目標加速度αtが決定されると、制御部110は、ECT400において実現可能な変速段のうち、エンジン200の燃料消費率が最適となる変速段を選択し、ECT制御部140に選択すべき変速段を規定する変速段情報として出力する。ECT制御部140では、この変速段情報、及び現時点で選択されている変速段に基づいて、変速の要否が判断され、変速を要する旨の判断が下された場合には、油圧コントローラ600の制御を介して適宜変速が実行される。尚、目標加速度に基づいた駆動力の制御態様は、ここに例示するものに限定されず、駆動力の制御により、実加速度を、目標加速度を指標として変化させ得る(例えば、目標加速度に追従させ得る)限りにおいて各種態様を採ることが可能である。
【0081】
<変速時駆動力制御の詳細>
変速時には、ECT400を構成する複数の油圧式摩擦係合装置各々の係合状態を適宜変化させる必要が生じる。例えば、2速から3速へのアップシフトを例に採れば、図5に示したように、ブレーキB1を係合から解放へ、反対にクラッチC0を解放から係合へ夫々制御する必要がある。一方、係合状態を変化させるに際しては、例えばECT駆動部500で生じる油圧の不足や過剰供給等により各油圧式摩擦係合装置における係合トルクが不安定になることがあり、またそのような油圧の過不足が生じないにした所で、変速期間中はECT400におけるエンジン200の出力トルクの伝達特性が不安定となり易く、結局車両10の各ドライブシャフトに伝達される駆動力が、目標駆動力から乖離し易い。このような実駆動力と目標駆動力との乖離は、必然的に目標加速度αtと実加速度αrとの乖離となって顕在化する。
【0082】
一方、このような目標加速度αtと実加速度αrとの乖離を収束させるべく、例えばエンジン200の出力トルクを増大させる等の追加の制御が生じた場合、ドライブシャフトに現れる実駆動力の変化(例えば、駆動力の揺り戻し等)が大きくなり、円滑な加速フィールを得難くなってドライバビリティの悪化を招きかねない。そこで、本実施形態では、ECU100により、このような変速期間におけるドライバビリティの悪化を防止する目的から変速時駆動力制御が実行される。
【0083】
ここで、図6を参照し、変速時駆動力制御の詳細について説明する。ここに、図6は、変速時駆動力制御のフローチャートである。尚、以下の説明においては、特に断りのない限り、制御部110、目標加速度演算部120、エンジン制御部130及びECT制御部140を包括する表現としてのECU100なる言葉を使用することとする。また、本実施形態に係る変速時駆動力制御は、アップシフト時に対応するものであるとする。ダウンシフト時については、アップシフト時と同様に変速時駆動力制御をなし得るが、説明の煩雑化を防ぐ目的から本実施形態における説明を省略することとする。
【0084】
図6において、ECU100は、変速制御中であるか否かを判別する(ステップS11)。変速制御中でない場合(ステップS11;NO)、ECU100は、後述する各種動作パラメータを全てクリアし(ステップS16)、処理をステップS11に戻して実質的に処理を待機状態に制御する。一方、車両10が変速制御中である場合(ステップS11:YES)、ECU100は、ECT制御部140により変速指令がなされた時点からの経過時間を表す経過時間の暫定値dt1_tempのカウントを開始する(ステップS12)。
【0085】
次に、ECU100は、ECT400の変速状態がトルク相に該当するか否かを判別する(ステップS13)。ここで、トルク相とは、変速に伴う駆動力の減少がECT400の入力軸回転速度Ninの減少として現れない期間を指す。変速状態がトルク相に該当する場合(ステップS13:YES)、ECU100は、後述するトルク相処理を実行する(ステップS100)。トルク相処理を実行するか、或いは変速状態がトルク相に該当しない場合(ステップS13:NO)、ECU100は、ECT400の変速状態がイナーシャ相に該当するか否かを判別する(ステップS14)。ここで、イナーシャ相とは、変速の進行に伴って入力軸回転速度Ninの減少が生じる期間であり、例えば2速から3速へのアップシフトを例に採れば、入力軸回転速度Ninが、2速に対応する値から3速に対応する値へと変化する期間を指す。
【0086】
変速状態がイナーシャ相に該当する場合(ステップS14:YES)、ECU100は、後述するイナーシャ相処理を実行する(ステップS200)。イナーシャ相処理を実行するか、或いは変速状態がイナーシャ相に該当しない場合(ステップS14:NO)、ECU100は、車両10に所定種類の外乱が発生しているか否かを判別する(ステップS15)。
【0087】
ここで、所定種類の外乱とは、このような変速期間にECT400により生じる実加速度の変化とは別に、例えば、駆動輪(左前輪FL及び右前輪FR)のスリップやロック等による一時的且つ不規則な駆動力の変化を指す。この種の外乱要素に駆動力制御を対応させると、駆動力変化がより大きくなってドライバビリティの悪化を招きかねない。そこで、ECU100は、外乱が発生している旨の判別を下した場合には(ステップS15:YES)、後述するトルク相処理、イナーシャ相処理及び補償処理において主として設定される各種パラメータを初期化する(ステップS16)。外乱が発生している旨の判別が下されない場合(ステップS15:NO)或いはステップS16に係る処理によりパラメータが初期化された場合、ECU100は、処理をステップS11に戻し、一連の処理を繰り返す。変速時駆動力制御は、基本的にこのように実行される。
【0088】
<トルク相処理の詳細>
次に、図7を参照し、トルク相処理の詳細について説明する。ここに、図7は、トルク相処理のフローチャートである。
【0089】
図7に示すトルク相処理において、ECU100は、前後Gセンサ12を介して得られる車両10の実加速度αrが、下限値αl未満であるか否かを判別する(ステップS101)。この下限値αlは、目標駆動力αtに応じて一義的に定まる、例えば目標加速度αtに対し一律の又は不定の比率を乗じてなる、或いは例えば目標加速度αtから一律の又は不定のマージンを減算してなる、ドライバビリティの悪化が顕在化するか否かを規定する判断指標であり、本発明に係る「下限値」の一例である。
【0090】
実加速度αrが当該下限値αl以上である場合(ステップS101:NO)、ECU100は、目標加速度αtと実加速度αrとの偏差が、相対的にみて小さいものとしてトルク相処理を終了する。一方、実加速度αrが下限値αl未満である場合(ステップS101:YES)、ECU100は、下限値αlと実加速度αrとの偏差を、暫定的な偏差et_tempとして設定する(ステップS102)。
【0091】
次に、ECU100は、この暫定的な偏差et_tempが、トルク相に対応する期間における、目標加速度αtと実加速度αrとの偏差の最大値として規定される最大偏差etよりも大きいか否かを判別する(ステップS103)。ここで、暫定的な偏差et_temp及び最大偏差etを含む各種パラメータは、変速期間中でない場合、即ち初期状態において、既に述べたようにクリアされており(即ち、ゼロであり)、最初に訪れるステップS103に係る判別処理においては、暫定的な偏差et_tempが有意な値を有する限り、暫定的な偏差et_tempは常に最大偏差etよりも大きくなる。
【0092】
暫定的な偏差et_tempが最大偏差et以下である場合(ステップS103:NO)、ECU100はトルク相処理を終了すると共に、暫定的な偏差et_tempが最大偏差etよりも大きい場合(ステップS103:YES)、ECU100は、暫定的な偏差et_tempを最大偏差etとして設定する(ステップS104)。ステップS104に係る処理が終了すると、ECU100は、トルク相処理を終了する。
【0093】
尚、補足すれば、トルク相処理が一旦終了した後、変速状態が未だトルク相に該当する状態であれば、図6のステップS14に係る処理は「NO」となり、外乱が発生しない限りトルク相処理は繰り返される。従って、トルク相処理におけるステップS103及びS104に係る処理によって、トルク相における下限値αlと実加速度αrとの偏差の最大値が最大偏差etとして設定される。
【0094】
次に、図8を参照し、イナーシャ相処理の詳細について説明する。ここに、図8は、イナーシャ相処理のフローチャートである。
【0095】
図8に示すイナーシャ相処理において、ECU100は、目標加速度αtが未補正であるか否かを判別する(ステップS201)。尚、目標加速度αtの補正は、後段のステップにおいて実現されるため、この段階において、目標加速度αtは未補正である。目標加速度αtが補正されている場合(ステップS201:NO)、ECU100は、イナーシャ相処理を終了する一方、目標加速度αtが未補正である場合(ステップS201:YES)、ECU100は、図6におけるステップS12に係る処理においてカウントされる、経過時間の暫定値dt1_tempを、経過時間の確定値dt1として設定する(ステップS202)。この経過時間の確定値dt1とは即ち、変速指令がなされた時点からイナーシャ相の開始時点までの時間に相当する。
【0096】
経過時間dt1の確定値を設定すると、続いてECU100は、先のトルク相処理において設定された最大偏差et及びこの設定された経過時間の確定値dt1が、夫々所定の条件を満たすか否かを判別する(ステップS203)。より具体的には、この際、最大偏差etがゼロより大きいか否か、即ちトルク相において、一時的にしろ実加速度αrが下限値αlを下回ったか否かが判別され、且つ経過時間の確定値dt1が、目標加速度αt及びアクセル開度をパラメータとしROMにマップとして格納される判断時間T1よりも大きいか否かが判別される。
【0097】
ステップS203に係る判別処理は、最大偏差etと経過時間の確定値dt1とに基づいてなされることに鑑みれば、即ち実加速度αrの変化速度(即ち、本発明に係る「変化の度合い」の一例)に対応付けられた判別処理であり、当該変速期間中にドライバビリティの悪化が顕在化するか否かを判別するための処理となる。
【0098】
尚、本実施形態において、本発明に係る「目標加速度と実加速度との偏差」に相当する指標値は、最大偏差etであるから、本来、この最大偏差etのみに基づいてドライバビリティ悪化の有無に関する判別が行われてもよい。但し、このように経過時間が考慮されることにより、車両10の物理的構成及び機械的構成(例えば、ボディ形状、フレームの形状及び材質、並びにサスペンション等の懸架系の形状、剛性、材質、空間的配置又は設置態様等各種の要因)に起因して車両毎に相異する、ドライバビリティの感度特性が考慮され、より実践的な判断を下すことが可能となる。別言すれば、車両10の物理的構成及び機械的構成によっては、最大偏差etが等しいとして、ドライバビリティの悪化が顕在化する場合もあり、また顕在化しない場合もあるのである。
【0099】
ステップS203に係る処理において、両条件が満たされる場合(ステップS203:YES)、ECU100は、目標加速度αtと実加速度αrとの偏差を減少させるべき条件が満たされたものとして(即ち、何らの対策がなされないまま実加速度αrを目標加速度αtへと追従させた場合にドライバビリティの悪化が顕在化する旨の判断を下し得るものとして)、次ステップ以降において、目標加速度αtの補正を実行する。
【0100】
先ず、ECU100は、最大偏差etをパラメータとして例えばROMにマップとして格納される一次元の適合係数Hを取得すると共に、下記(1)式に従った数値演算処理を実行して加速度補正比率αnextを算出する(ステップS204)。
【0101】
αnext=αr/αt×H・・・・・(1)
加速度補正比率αnextを算出すると、ECU100は更に、下記(2)式に従った数値演算を実行して(即ち、補正を実行して)、新たな(即ち、補正後の)目標加速度αtを算出する(ステップS205)。尚、(2)式において、αtaft及びαtbefは、夫々補正後の目標加速度及び補正前の目標加速度を便宜的に表す。
【0102】
αtaft=αtbef−αtbef×αnext・・・(2)
即ち、補正後の目標加速度αtは、補正前の目標加速度αtから最大偏差etに対応する実加速度αrと適合係数Hとの積を減算したものであり、補正前の目標加速度αtと比較して小さい値となる。従って、目標加速度と実加速度との偏差は、補正前と比較して減少する。尚、ここに挙げた目標加速度αtの補正態様は一例に過ぎず、補正前後で目標加速度と実加速度との偏差が減少し得る限りにおいて、補正態様は何ら限定されず各種態様を採ることが可能である。
【0103】
一方、目標加速度αtの補正が実行されると、ECU100は、目標加速度の徐変処理を開始する(ステップS206)。ここで、目標加速度の徐変処理とは、現時点の(即ち、補正前の)目標加速度αtから、近未来的な到達目標としての目標加速度(即ち、補正後の目標加速度αt)まで、段階的に或いは連続的に目標加速度を変化(本実施形態では減少)させる処理を指し、例えばN(Nは自然数)回のステップで補正後の目標加速度αtに到達するように徐変処理がなされる場合には、例えば目標加速度αtの設定タイミング毎に、1ステップ前の目標加速度をαt(n−1)として、「αt(n−1)−(αtbef−αtaft)/N」なる徐変演算が行われ、且つN回繰り返されることを意味する。
【0104】
ステップS206に係る処理において徐変処理が開始されると、イナーシャ相処理或いは変速時駆動力制御の実行過程に非同期した形で目標加速度αtの徐変が行われる。目標加速度αtの徐変処理が開始されると、イナーシャ相処理は終了する。尚、目標加速度αtの補正がなされると、当該補正がなされた旨を表すフラグが設定され、次回以降のイナーシャ相処理において上述したステップS201に係る判別処理が「NO」となって、実質的にイナーシャ相処理は終了する。
【0105】
ここで、ステップS203に係る判別処理において、目標加速度αtの補正を行うべき旨を表す条件が満たされない場合(ステップS203:NO)、即ち、トルク相において、ドライバビリティの悪化を顕在化させる程度の実加速度αrの変化が生じていない場合、ECU100は、補償処理を実行する(ステップS300)。補償処理は、トルク相ではなくイナーシャ相において何らかの理由で実加速度αrが不安定となった場合の補償を行うための処理である。
【0106】
ここで、図9を参照し、補償処理の詳細について説明する。ここに、図9は、補償処理のフローチャートである。
【0107】
図9に示す補償処理は、基本的に既に説明したトルク相処理と同様に実行される。即ち、ECU100は、前後Gセンサ12を介して得られる車両10の実加速度αrが、下限値αl未満であるか否かを判別する(ステップS301)。
【0108】
実加速度αrが当該下限値αl以上である場合(ステップS301:NO)、ECU100は、目標加速度αtと実加速度αrとの偏差が、相対的にみて小さいものとして処理をステップS305に移行させる。一方、実加速度αrが下限値αl未満である場合(ステップS301:YES)、ECU100は、下限値αlと実加速度αrとの偏差を、暫定的な偏差ei_tempとして設定する(ステップS302)。
【0109】
次に、ECU100は、この暫定的な偏差ei_tempが、イナーシャ相に対応する期間における、目標加速度αtと実加速度αrとの偏差の最大値として規定される最大偏差eiよりも大きいか否かを判別する(ステップS303)。ここで、暫定的な偏差ei_temp及び最大偏差eiを含む各種パラメータは、変速期間中でない場合、即ち初期状態において、既に述べたようにクリアされており、最初に訪れるステップS303に係る判別処理においては、暫定的な偏差ei_tempが有意な値を有する限り、暫定的な偏差ei_tempは最大偏差eiよりも大きくなる。
【0110】
暫定的な偏差ei_tempが最大偏差ei以下である場合(ステップS303:NO)、ECU100は、処理をステップS305に移行させる。ステップS305においては、変速進行度Sが算出され、当該算出された変速進行度Sが閾値Sthよりも大きいか否かが判別される。
【0111】
ここで、「変速進行度」とは、変速の進行度合いを規定する指標であり、ECT400の入力軸回転速度Ninに基づいて算出される。例えば、2速から3速へのアップシフトの場合、入力軸回転速度Ninは、2速に対応する回転速度から3速に対応する回転速度まで低下する。従って、入力軸回転速度Ninが3速に対応する回転速度に近付く程、変速が進行していることとなる。そこで、ECU100は、到達予測値としての3速に対応する入力軸回転速度NinをNin2とし、現時点の入力軸回転速度NinをNin1とし、下記(3)式に従って変速進行度Sを算出する。
【0112】
S=Nin2/Nin1・・・(3)
従って、この場合、変速進行度Sは1以下の値を採り、変速の進行に応じて1に漸近する。この変速進行度Sの閾値Sthは、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて、目標加速度αtの補正によってドライバビリティの悪化を防止することが実践上困難となり得る程度に変速が進行している状態を規定する値として設定される。
【0113】
変速進行度Sが閾値Sth以下である場合(ステップS305:NO)、ECU100は、処理を変速時駆動力制御のステップS11に戻し、一連の処理を繰り返す。この際、変速時駆動力制御におけるステップS13に係る判別処理の結果は「NO」となり、ステップS14に係る判別処理の結果は「YES」となり、更にイナーシャ相処理におけるステップS201に係る判別処理の結果は「YES」となり、且つステップS203に係る判別処理の結果は「NO」となって、補償処理が繰り返し実行されることとなる。即ち、補償処理では、変速進行度がSthに達さない限りにおいて、実加速度αrの監視が継続され、下限値αlを下回る実加速度αrについては、その最低値(即ち、偏差の最大値)が記憶されることとなる。
【0114】
このような処理過程を辿り、変速進行度Sが閾値Sthよりも大きくなると(ステップS305:YES)、ECU100は、最大偏差eiがゼロよりも大きいか否か、即ち実加速度αrが一時的にしろ下限値αlを下回ったか否かが判別される。イナーシャ相に対応する期間中に、実加速度αrが下限値αlを下回らなかった場合(即ち、実加速度と目標加速度との偏差が許容値を超えなかった場合)、ECU100は、処理を変速時駆動力制御におけるステップS11に移行するが、この際、目標加速度αtの補正が行われた旨を表すフラグを便宜的に設定する。従って、イナーシャ相処理におけるステップS201に係る判別処理の結果が「NO」となり、処理が補償処理に移行することなくイナーシャ相処理が終了し、実質的に、残りの変速期間については前述した目標加速度αtの徐変処理のみが繰り返される。
【0115】
一方、最大偏差eiがゼロよりも大きい場合(ステップS306:YES)、ECU100は、処理をイナーシャ相処理におけるステップS204に移行する。この際、前述した適合係数Hは、最大偏差eiに対応するものとして取得される。即ち適合係数は、最大偏差et及びeiの双方をパラメータとしてROMにマップとして格納されている。尚、この際、適合係数Hは、最大偏差et及びeiの各々について個別に設定されていてもよいし、各々が共に加速度偏差の次元であることに鑑みれば、各々の別無く設定されていてもよい。
【0116】
補償処理からイナーシャ相処理におけるステップS204へ処理が移行された場合、ステップS204からステップS206に至る処理過程により目標加速度αtの補正が実行され、実加速度αrと目標加速度αtとの偏差が減少する。
【0117】
ここで、図10を参照し、このような変速時駆動力制御の実行過程を視覚的に説明する。ここに、図10は、変速時駆動力制御の実行過程における加速度の変化の模式図である。
【0118】
図10において、横軸には時刻が表されており、縦軸には上段及び下段に夫々加速度及びECT400の入力軸回転速度Ninが表されている。
【0119】
今、時刻T0において、ECT制御部140により変速実行の判断がなされ、変速を開始すべき旨の変速指令がなされたとする(図示白丸M0参照)。この変速指令に従って実際に時刻T1において変速が開始されると、図示PRF_αr(太実線参照)として表される車両10の実加速度αrは、ECT400における各油圧式摩擦係合装置の係合状態の変化に伴って減少を開始する。
【0120】
一方、車両10の目標加速度αtは、アクセル開度ベースで設定されるため、上述した補正以前においては基本的に変速制御の有無とは無関係に、図示PRF_αtbef(細実線参照)に従って推移する。下限値αlは、この補正以前の目標加速度αtに応じて一義的に定まる構成となっており、PRF_αtと同等の傾きを有する図示PRF_αl(破線参照)に従って推移する。
【0121】
ここで、実加速度αrが減少し続けた結果、時刻T2において実加速度αrが下限値αlを下回る(図示白丸M1参照)。更に、時刻T3に至るまで実加速度αrが減少し続け、実加速度αrと目標加速度αtとの偏差は、時刻T3において最大となり(図示白丸M2参照)、その時点の下限値αl(図示白丸M3参照)との偏差たる最大偏差etが設定される。尚、目標加速度αtと下限値αlとは等しい傾きを有しており、本発明に係る「許容量」に相当する目標加速度αtと下限値αlとの偏差は一定値を採る。従って、実加速度αrが下限値αlを下回る場合には、常に許容量を超えた加速度偏差が生じていることとなり、また下限値αlと実加速度αrとの偏差が最大である場合には、必然的に目標加速度αt(図示白丸M4参照)と実加速度αrとの偏差も最大となる。
【0122】
ここで、時刻T3以降、各油圧式摩擦係合装置の係合油圧が機能し始め、図示PRF_Ninとして表される入力軸回転速度Ninは増加から減少に転じる。即ち、時刻T3においてイナーシャ相が開始される。従って必然的に時刻T1から時刻T3までの期間がトルク相となる。
【0123】
時刻T3において、即ち、イナーシャ相の開始時点において、ECU100は先に述べたように、最大偏差etと、変速指令がなされた時点からイナーシャ相開始時点までの経過時間dtとに基づいて、目標加速度αtの補正の要否を判断する。即ち、最大偏差etがゼロより大きく、且つ経過時間dtが、急激な加速度変動による実践上無視し得ないドライバビリティの悪化が生じ得るものとして規定された判断時間T1よりも大きい場合に、目標加速度αtの補正が実行される。尚、図10では、係る条件が満たされているものとする。
【0124】
目標加速度αtの補正が実行されると、イナーシャ相の開始時点(時刻T3)において、補正前の目標加速度αt(図示白丸M5参照)よりも小さい、補正後の目標加速度αt(図示白丸M6参照)が設定され、この補正後の目標加速度αtを目標値として、時刻T3から上述した徐変処理が開始される。その結果、補正後の目標加速度αtは、図示PRF_αtaft(一点鎖線参照)に従って推移する。
【0125】
ここで、車両10においてなされる駆動力制御に鑑みれば、目標加速度αtの補正がなされない場合、例えば図示時刻T4において図示白丸M5に相当する目標加速度αtが得られるように、即ち、相対的にみて大きな加速度偏差を解消すべくエンジン200の出力トルクの制御を行う必要が生じる。従って、このような出力トルクの制御による駆動力の制御過程においては、必然的に駆動力変化が大きくなって、ドライバビリティの悪化が顕在化しかねない。
【0126】
一方、目標加速度αtが補正された場合、駆動力の制御によって解消すべき加速度偏差自体が減少するため、必然的に車両10における駆動力変化も抑制されることとなる。このため、車両10においては、目標加速度αtが未補正である場合と較べてドライバに知覚され得る加速度及び駆動力の変動が明らかに小さくなり、ドライバビリティの悪化が抑制される。
【0127】
このように、本実施形態に係る変速時駆動力制御によれば、変速期間において目標加速度と実加速度との偏差が大きくなった場合には、本来の目標加速度αtへ実加速度αrを追従させる代わりに、目標加速度αtを実加速度αrに近付けることによって、実現象としての加速度変化(駆動力変化)を伴うことなく解消すべき加速度の偏差を減少させることができる。従って、実加速度αrを目標加速度αtへ追従させるに際してのドライバビリティの悪化を抑制することが可能となるのである。
【0128】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う駆動力制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の要部構成を概念的に且つ模式的に表してなる概略構成図である。
【図2】図1の車両に備わるECUにおいて、本発明に係る駆動力制御装置に関連する部分の構成を説明する機能ブロック図である。
【図3】図1の車両に備わるエンジンの模式図である。
【図4】図1の車両に備わるトルクコンバータ及びECTの構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図5】ECTにおける油圧式摩擦係合装置各々の係合状態と変速段との対応関係を説明する表である。
【図6】ECUにより実行される変速時駆動力制御のフローチャートである。
【図7】変速時駆動力制御において実行されるトルク相処理のフローチャートである。
【図8】変速時駆動力制御において実行されるイナーシャ相処理のフローチャートである。
【図9】変速時駆動力制御において実行される補償処理のフローチャートである。
【図10】変速時駆動力制御の実行過程における加速度の変化の模式図である。
【符号の説明】
【0130】
10…車両、12…前後加速度センサ、13…アクセル開度センサ、100…ECU、200…エンジン、300…トルクコンバータ、400…ECT、500…ECT駆動部、600…油圧コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備わり、
該車両の目標加速度を設定する設定手段と、
該設定された目標加速度に基づいて駆動力を制御する制御手段と、
前記設定された目標加速度と前記車両の実加速度との偏差が小さくなるように前記設定された目標加速度を補正する補正手段と
を具備することを特徴とする駆動力制御装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記偏差が許容値を超える場合に前記設定された目標加速度を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動力制御装置。
【請求項3】
前記車両の実加速度を特定する特定手段を更に具備し、
前記補正手段は、前記偏差が許容値を超える場合として、前記特定された実加速度が前記設定された目標加速度に対応する下限値未満である場合に前記設定された目標加速度を補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動力制御装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記特定された実加速度の変化の度合いに基づいて前記設定された目標加速度を補正する
ことを特徴とする請求項3に記載の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記車両は、内燃機関、及び前記内燃機関の出力軸と前記車両の車軸との間の動力伝達経路に設けられ、前記出力軸の回転速度と前記車軸の回転速度との比を変化させることにより前記出力軸の回転速度を変速可能な変速機を備え、
前記補正手段は、前記変速がなされる期間において前記設定された目標加速度を補正する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動力制御装置。
【請求項6】
前記車両における所定種類の外乱の発生状態に基づいて前記補正手段に係る補正の要否を判別する判別手段を更に具備し、
前記補正手段は、前記補正が必要である旨が判別された場合に前記設定された目標加速度を補正する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−273364(P2008−273364A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118519(P2007−118519)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】