説明

駆動装置および画像形成装置

【課題】駆動力伝達経路に用いられる減速機構の部品管理や作業に要するコスト上昇を抑えると共に、入力側と出力側との回転軸の軸心合わせが正確に行える構成を備えた駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動モータからの駆動力を被駆動部材に伝達する伝達経路に遊星歯車減速機構を備えた駆動装置において、減速機構は、機構本体を構成する筐体が分割されて第1,第2の支持ユニット11,12で構成され、第1の支持ユニット11には、少なくとも1段のキャリア13,13’とこれに支持されるピニオンギヤ14,14’とが備えられると共に最終段のキャリア13’に出力部13B’が設けられ、第2の支持ユニット12には、出力部13B’に対して着脱可能な出力軸16および出力軸16の支持部17が設けられ、出力軸16は、互いに接合される第1,第2の支持ユニット11,12内部にてキャリア13,13’の出力部13B’に対して挿脱可能に支持されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、駆動力の伝達経路に用いられる減速機構における入力側の回転軸と出力側の回転軸との位置決め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、複写機やプリンタあるいは印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像が現像装置から供給される現像剤によって可視像処理される。可視像処理された画像は、記録紙などに転写され、定着されることで複写出力とされる。
【0003】
潜像担持体は、単一色のみでなく複数色の画像形成にも用いられる部材でる。複数色の画像を重畳形成する場合には、例えば、タンデム方式のように潜像担持体を転写体の移動方向に沿って複数並べて配置するような場合には、各色の画像を形成されるタイミングが整合する必要がある。
このタイミングが整合しないと色ずれなどの異常画像が発生する原因となる。
従来、潜像担持体を駆動する機構には、駆動モータの駆動力を減速機構により減速した上で潜像担持体に伝達する構成が用いられており、その一例として、駆動モータの出力軸を入力軸とする遊星歯車機構を減速機構として用いる構成がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、次のような構成が開示されている。
つまり、図12は、上記特許文献に開示されている構成を示す図であり、同図において、駆動モータMの出力軸M1に支持されている太陽歯車Sの周囲を転動する複数の遊星歯車Pを支持した状態で回転するキャリアCに出力軸Dが設けられており、出力軸Dが遊星歯車機構を収容する減速機ケースKに取り付けられた軸受けUにより回転自在に支持された構成である。この構成では、駆動モータMの出力軸が入力側の回転軸に相当し、キャリアCに設けられている出力軸Dが出力側の回転軸に相当している。なお、図13において符号K1は、減速機ケース内面に設けられて遊星歯車Pと噛み合う内歯を示している。
【0005】
一方、潜像担持体は経時により感光層の劣化を生じることから交換対象となる部材である。
従来、潜像担持体を交換できるようにするための構成として、上述した特許文献1に開示されているような減速機構の出力軸と感光体とをカップリングを介して連結することにより着脱できるようにした構成が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
上述した特許文献においては、減速機構のキャリアに一体化された出力軸と潜像担持体との連動関係を、出力軸自体を延長して潜像担持体に支持される構成(特許文献1)、あるいは、出力軸と潜像担持体の支軸とがカップリングを介して連結される構成(特許文献2)を用いるようになっている。
【0007】
しかし、いずれの構成においても出力軸の軸長は長くなることから潜像担持体に隣接する減速機構の占有スペースが大きくなる。
そこで、減速機構を潜像担持体内に収納し、駆動モータを潜像担持体の外部に配置した構成が提案されている(例えば、特許文献3)。この構成のおいては、駆動モータから潜像担持体に延長される出力軸の軸方向での減速機構が占有する空間を小さくすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献に開示されている構成では、いずれも筐体内に各ギヤ群を収容した減速機構の出力軸を潜像担持体の駆動軸として用いていることから、潜像担持体に対する組み付け精度が要求され、加工時での歩留まりが悪く、作業コストや部品の管理コストが高い部品となる。
【0009】
一方、減速機構を用いた駆動装置そのものは、使用する潜像担持体のサイズなどにより出力軸の構成も変更されものであるが、筐体内に各ギヤを収容した減速機構そのものを仕様変更に応じて部品管理することが必要となり、管理コストの上昇を招く虞がある。しかも、減速機構の保守は、潜像担持体の駆動部に取り付けられている減速機構そのものを取り外すことが必要となるため、保守に要する作業が煩雑となる。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の減速機構を備えた駆動装置における問題に鑑み、駆動力伝達経路に用いられる減速機構の部品管理や作業に要するコスト上昇を抑えると共に、入力側と出力側との回転軸の軸心合わせが正確に行える構成を備えた駆動装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)駆動モータからの駆動力を被駆動部材に伝達する伝達経路に遊星歯車減速機構を備えた駆動装置において、
前記減速機構は、機構本体を構成する筐体が分割されて第1,第2の支持ユニットで構成され、
前記第1の支持ユニットには、少なくとも1段のキャリアとこれに支持されるピニオンギヤとが備えられると共に最終段のキャリアに出力部が設けられ、
前記第2の支持ユニットには、前記出力部に対して着脱可能な出力軸および該出力軸の支持部が設けられ、
前記出力軸は、互いに接合される第1,第2の支持ユニット内部にて前記キャリアの出力部に対して挿脱可能に支持されることを特徴とする駆動装置。
【0012】
(2)前記第1,第2の支持ユニット同士の接合部には、スラスト方向おおよびラジアル方向の少なくとも一つの方向の位置決め部が設けられていることを特徴とする(1)に記載の駆動装置。
【0013】
(3)前記出力軸の支持部には、該出力軸の軸方向に沿って複数の軸受け部材が設けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の駆動装置。
【0014】
(4)前記第2の支持ユニットは装置本体側に取り付け支持され、前記第1の支持ユニットは前記接合部の位置決め部を介して前記第2の支持ユニットに取り付けられることを特徴とする(1)乃至(3)のうちの一つに記載の駆動装置。
【0015】
(5)前記キャリア側の出力部と前記出力軸とはスプライン係合構造が用いられて軸方向に挿脱可能であることを特徴とする(1)乃至(4)のうちの一つに記載の駆動装置。
【0016】
(6)前記最終段のキャリアに設けられている出力部は浮動支持されていることを特徴とする(1)乃至(5)のうちの一つに記載の駆動装置。
【0017】
(7)前記出力部と出力軸との挿脱部にはオルダムカップリングが設けられていることを特徴とする(1)乃至(6)のうちの一つに記載の駆動装置。
【0018】
(8)(1)乃至(7)のうちの一つに記載の駆動装置を用いる画像形成装置であって、
前記出力軸には潜像担持体が着脱可能に支持されることを特徴とする画像形成装置。
【0019】
(9)前記潜像担持体における前記出力軸との支持部として端板に形成された係合部が用いられることを特徴とする(8)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、減速機構に用いられる筐体が分割されて第1,第2の支持ユニットで構成され、第1,第2の支持ユニット内部において遊星歯車減速機構の最終段に位置するキャリアの出力部に対して出力軸が挿脱可能に設けられているので、キャリアの出力部から直接出力軸を延長する必要がない。
これにより、出力軸の軸長が長くなる場合に生じる軸振れになどの振動を起こすことがないので、被駆動部材側での偏心動作などの誤動作を防止できるとともに、出力軸の交換やギヤ類の保守を行う際には支持ユニットのいずれかを取り外すだけで行えるので、筐体自体を取り外す場合と違って、部品個々を対象とした交換、保守が可能となり、部品管理コストや作業性において有利となる。
【0021】
しかも、支持ユニット内にて挿脱可能な出力軸は、支持ユニット同士の接合部および出力軸の軸方向に沿った複数の軸受けにより軸振れやスラスト方向およびラジアル方向の位置ずれを防止されるので、減速機構内での入力側と出力側との回転軸同士の軸心ずれをほとんど発生させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による駆動装置を備えた被駆動部材である潜像担持体が適用される画像形成装置の一例を示す外観図である。
【図2】本発明による駆動装置の要部構成に関する第1実施例を示す図である。
【図3】図2に示した要部構成の正面図である。
【図4】図2に示した要部構成の一態様を示す図である。
【図5】図2に示した要部構成の他の態様を示す図である。
【図6】図2に示した要部構成を被駆動部材との関係について説明するための図である。
【図7】本発明による駆動装置の要部構成に関する第2実施例を示す図である。
【図8】図7に示した要部構成の一態様を示す図である。
【図9】図7に示した要部構成の他の態様を示す図である。
【図10】図7に示した要部構成を被駆動部材との関係について説明するための図である。
【図11】本発明による第1実施例の要部変形例を示す図である。
【図12】駆動装置に用いられる減速機構部の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による駆動装置を用いる被駆動部材である潜像担持体を備えた画像形成装置を示す図である。
図1は、タンデム方式を用いた電子写真方式のカラー複写機を示しており、乾式二成分系現像剤を用いる二成分現像方式により静電潜像が可視像処理されるようになっている。なお、本発明の実施例では複写機を対象としているが、本発明はこれに限ることなく、プリンタやファクシミリ装置、あるいは印刷機やこれら機能を複合した複合機を対象とすることも可能である。
【0024】
図1に示す複写機は、図示しない画像読取部から画像情報である画像データを受け取って画像形成処理を行う。この複写機には、図に示すように、イエロー(以下、「Y」と省略する。)、マゼンタ(以下、「M」と省略する。)、シアン(以下、「C」と省略する。)、ブラック(以下、「Bk」と省略する。)の各色用の4個の回転体としての潜像担持体である感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkが並設されている。これら感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkは、駆動ローラを含む回転可能な複数のローラに支持された無端ベルト状の中間転写ベルト5に接触するように、そのベルト移動方向に沿って並んで配置されている。
また、感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkの周りには、それぞれ、帯電器2Y,2M,2C,2Bk、各色対応の現像装置9Y,9M,9C,9Bk、クリーニング装置4Y,4M,4C,4Bk、除電ランプ3Y,3M,3C,3Bk等の電子写真プロセス用部材がプロセス順に配設されている。
【0025】
本実施例に示す複写機でフルカラー画像を形成する場合、後述する感光体ドラム駆動装置により、感光体ドラム1Yを図中矢印の方向に回転駆動しながら帯電器2Yで一様帯電した後、図示しない光書込装置からの光ビームLYを照射して感光体ドラム1Y上にY静電潜像を形成する。
このY静電潜像は、現像装置9Yにより、現像剤中のYトナーにより現像される。現像時には、現像ローラと感光体ドラム1Yとの間に所定の現像バイアスが印加され、現像ローラ上のYトナーは、感光体ドラム1Y上のY静電潜像部分に静電吸着する。
【0026】
このように現像されて形成されたYトナー像は、感光体ドラム1Yの回転に伴い、感光体ドラム1Yと中間転写ベルト5とが接触する1次転写位置に搬送される。この1次転写位置において、中間転写ベルト5の裏面には、1次転写ローラ6Yにより所定のバイアス電圧が印加される。そして、このバイアス印加によって発生した1次転写電界により、感光体ドラム1Y上のYトナー像を中間転写ベルト5側に引き寄せ、中間転写ベルト5上に1次転写する。
以下、同様にして、Mトナー像、Cトナー像、Bkトナー像も、中間転写ベルト5上のYトナー像に順次重ね合うように1次転写される。
このように、中間転写ベルト5上に4色重なり合ったトナー像は、中間転写ベルト5の回転に伴い、2次転写ローラ7と対向する2次転写位置に搬送される。また、この2次転写位置には、図示しないレジストローラにより所定のタイミングで転写紙が搬送される。そして、この2次転写位置において、2次転写ローラ7により転写紙の裏面に所定のバイアス電圧が印加され、そのバイアス印加により発生した2次転写電界及び2次転写位置での当接圧により、中間転写ベルト5上のトナー像が転写紙上に一括して2次転写される。その後、トナー像が2次転写された転写紙は、定着ローラ対8により定着処理がなされた後に装置外に排出される。
【0027】
以上のような構成の画像形成装置を対象として本発明の特徴を説明すると次の通りである。
本発明の特徴は、感光体ドラムを被駆動部材とする駆動装置に特徴があり、具体的には、駆動装置に用いられる遊星歯車減速機構の構成に特徴がある。
つまり、遊星歯車減速機構は、筐体が分割されて第1,第2の支持ユニットからなり、少なくとも1段のキャリアとこれに支持されているピニオンとを備え、最終段のキャリアに設けられた出力部を有する第1の支持ユニットと、その出力部に対して着脱可能な出力軸をおよび出力軸の支持部を有する第2の支持ユニットからなり、出力軸は、互いに接合される部分に少なくともスラスト方向およびラジアル方向の一つを対象とする位置決め部が設けられているユニット内にて出力部に対して挿脱可能に支持されている。以下、その詳細を第1実施例として説明する。
【0028】
図2は、感光体ドラムを被駆動部材とするドラム駆動装置を示す図であり、同図において、ドラム駆動装置10は、筐体が第1の支持ユニット11と第2の支持ユニット12とに分割可能に構成されている。
第1の支持ユニット11には、少なくとも1段の回転可能なキャリアおよびこれに支持されて支持ユニット11内を転動可能な遊星歯車であるピニオンが備えられており、図2に示す構成では、2段のキャリア13,13’およびピニオン14,14’が備えられている。
このような段数の設定は、必要とされる減速比を得るための処置であって、本実施例の場合、段数によっては1/10〜1/100の減速比を得ることができるようになっている。
【0029】
1段目のキャリア13およびピニオン14は、動力伝達経路での入力側に位置する駆動モータMの出力軸M1に取り付けられた太陽歯車であるサンギヤ15および第1の支持ユニット11の内歯11Aにピニオン14が噛み合い、内歯11Aとサンギヤ15とピニオン14との歯数比による減速比で回転するキャリア13が支持ピン14Aによりピニオン14を上記内歯11Aに沿って転動可能に支持する関係で設けられている。
【0030】
2段目のキャリア13’およびピニオン14’は、1段目のキャリア13に設けられた2段目のサンギヤ15’に噛み合うようにピニオン14’が設けられており、ピニオン14’は、最終段のキャリア13’に設けられている支持ピン14A’により回転自在に支持されて上記内歯11Aに沿って転動できるようになっている。
【0031】
ピニオン14,14’は、図3に示すように、キャリア13、13’の周方向に沿って3等分位置に配置されて支持されている。
最終段のキャリア13’には、感光体ドラム軸16が着脱可能に支持される出力部13B’がスプライン係合孔により設けられている。
【0032】
一方、第2の支持ユニット12には、第1の支持ユニット11側の最終段のキャリア13’の出力部13B’に挿脱可能な軸方向一端を有する感光体ドラム軸16と、このドラム軸16の軸方向に沿って複数箇所に設けられた軸受け17、17’が備えられている。 軸受け17,17’の一つ17は、第2の支持ユニットの軸方向端部に位置し、他の一つ17’は、後述する支持壁部10Aの挿通支持孔10A1に対応するように位置決めされて設けられている。なお、図において符号18は、止め輪、いわゆる、Eリングを示している。
【0033】
第1,第2の支持ユニット11,12は、それぞれ装置本体の支持壁部10Aに取り付けられるようになっているが、減速機構内での入力側軸と出力側軸との軸心位置を位置決めするための構成が用いられている。
つまり、第1の支持ユニット11は、その端部開口11B内に第2の支持ユニット12を嵌合できる構成となっており、第2の支持ユニット12は、感光体ドラム軸16が挿通されるボス部12Aが装置本体の支持壁部10Aに設けられた挿通支持孔10A1に挿入できる構成となっている。
【0034】
第2の支持ユニット12のボス部12Aは、第1の支持ユニット11に有する端部開口11Bの内面に当接可能なフランジ部12Fを有している。
第2の支持ユニット12は、フランジ部12Fが支持壁部10Aの挿通支持孔10A1内に挿入されて第1の支持ユニット11の端部開口11B内面に当接することにより、スラスト方向およびラジアル方向のうちの少なくとも一つの方向に対する位置決めができるようになっている。
図に示す構成では、スラスト方向が支持壁部10Aの内面によって規制され、ラジアル方向が第1の支持ユニット11内に第2の支持ユニット12が挿入されることにより規制される。
【0035】
このため、第1,第2の支持ユニット11,12同士は、第2の支持ユニット12のボス部12Fが挿入される支持壁部10Aの挿通支持孔10A1を基準として第1の支持ユニット11の端部開口11B内面にフランジ部12Fを当接させることでほぼ一体化されることになるので、遊星歯車機構での入力側の軸心、つまり、モータ軸M1の軸心と出力部13B’が相当する出力側の軸心とが一致するように位置決めされることになる。
【0036】
一方、最終段のキャリア13’の出力部13B’に挿脱可能な感光体ドラム軸16は、第2の支持ユニット12のボス部12Aにおいて軸方向に沿って設けられている複数の軸受け17,17’によって回転自在に支持されており、各軸受け同士の配置間隔を適宜設定することで感光体ドラム軸16に大きな曲げ応力が発生するのを低減して軸振れの原因をなくすことができるようになっている。特に、支持壁部10Aの挿通支持孔10A1内周面と対応する位置に軸受けの一つを設けることで挿通支持孔内面を受け部として感光体ドラム軸16の支持抗力を高めることができる。
【0037】
感光体ドラム軸16は、第2の支持ユニット12内で軸受け17,17’により支持されると、前述したように、遊星歯車機構における入力側と軸心位置が一致させてある最終段のキャリア13’の出力部13B’に一体化されることになるので、上記の入力側に対して軸心を一致させることになる。
そして、感光体ドラム軸16とキャリア13’に有する出力部13B’とは、スプライン係合による一体回転ができるようになっており、入力側と出力側との軸心位置が一致していることで、軸振れなどの振動を起こすことなく回転ができる。
【0038】
感光体ドラム軸16の軸方向他端は、テーパ状のセレーションカップリングが設けられており、被駆動部材である感光体ドラム(便宜上、図1に示した符号1を用いる)の端板1Aに形成されたセレーションカップリングの凹部1A1内に挿入されて感光体ドラム1と一体回転できるようになっている。
【0039】
図4は、感光体ドラム1を感光体ドラム軸16に挿嵌する前の状態を示しており、この状態では、第2の支持ユニット12のボス部12Aから外側に突出している感光体ドラム軸16に対して感光体ドラム1の端板1Aを挿入することにより、セレーションカップリングを介して感光体ドラム1が感光体ドラム軸16に一体化される。
上述したように、遊星歯車機構内での入力側と出力側との軸心が一致する関係にあるので、出力側に位置する感光体ドラム軸16に係合する感光体ドラム1もその軸心が入力側と一致されることになる。これにより、軸心のずれによる感光体ドラム1の偏心回転を抑制することができる。
【0040】
一方、図5は、第1,第2の支持ユニット同士が一体化される前の状態、特に、第2の支持ユニット12が取り付けられている支持壁部10Aに対して第1の支持ユニット11を取り付ける前の状態を示している。
この状態において、第1の支持ニット11が第2の支持ユニット12を端部開口11B内に嵌合させて支持壁部10Aに取り付けられると、第2の支持ユニット12の断面中心、いわゆる、軸心位置が第1の支持ユニット11での軸心位置に一致されることになるので、遊星歯車機構内の入力側と出力側との軸心を一致させた状態で両方の支持ユニットが固定されることになる。
【0041】
図6は、感光体ドラム軸16に対してセレーションカップリングを介して連結された感光体ドラム1の状態を示している。
同図において感光体ドラム1は、軸方向一方側の端板1Aを感光体ドラム軸16に連結される一方、装置の他の一つの支持壁部10Bに設けられた面板10B1に対して軸方向他方側の支軸が軸受け17を介して支持される。面板10B1は支持壁部10Bに対して着脱できる構成であり、感光体ドラム1の着脱時には取り外すことができる。
【0042】
面板10B1と感光体ドラム1の軸方向他方側の端部1Bとの間には、バネ19が配置されており、感光体ドラム1と感光体ドラム軸16とのセレーション結合を維持できるようにしている。
【0043】
以上のような実施例においては、遊星歯車減速機構内で感光体ドラム軸16を挿脱できるようになっているので、部品交換や保守の際に筐体そのものを取り外す必要がない。これにより、交換や保守を必要とするユニットのみを対象とした作業が行えるので、作業性を向上させることができる。
しかも、装置の仕様変更に応じてユニットを管理できるので、部品管理や仕様変更の際の筐体全体を対象とした設計変更などを要しない分、管理コストの上昇を抑えることができる。
この場合の仕様変更による設計変更とは、例えば感光体ドラム軸16の外径寸法が変更となった場合には、この外径に対応する第2の支持ユニットを準備すれば筐体の一部品として構成することができるので、筐体全体を新たに準備する場合に比べてコスト低減が図れることなどを意味する。
【0044】
次に本発明の第2実施例について説明する。
第2実施例の特徴は、第1,第2の支持ユニットにおけるスラスト方向およびラジアル方向での位置決め機構と調心機能を備えた点にある。
図7は、第2実施例によるドラム駆動装置を示しており、同図において、図2に示した部材と同じものは同符号により示してあることを前置きしておく。
【0045】
図7において、第1の支持ユニット11と第2の支持ユニット12とは、支持壁部10Aに対向する端部が重ねられている。つまり、第2の支持ユニット12の支持壁部10A側端部近傍には、直角な辺部L1,L2を有する凹部12Dが形成されており、この凹部12Dに第1支持ユニット11の支持壁部10A側端部が搭載されるようになっている。直角な辺部のうちで軸方向、本実施例では水平方向の辺L2には、第1の支持ユニット11側の端部開口11B内面が対応するようになっている。
【0046】
第1,第2の支持ユニット11,12は、凹部12Dに搭載されて重ねられた状態となるので、その部分を支持壁部10Aに対して締結することで支持壁部10Aに対して一体的に支持される。
凹部12Dの形状が直角方向の辺部L1,L2を有しているので、その凹部12Dのうちで軸方向に沿った辺L2に第1支持ユニット11の端部開口11B内面を位置させることによりラジアル方向の位置ずれが規制され、軸方向と直角な縦方向の辺L1に第1支持ユニット11の端部開口11B端面を位置させることでスラスト方向のずれが規制される。
これにより、第2支持ユニット12のフランジ部12Fと共に第1支持ユニット11を支持壁部10Aに共締め状態で締結すると、スラスト方向およびラジアル方向のずれを防止された状態で各ユニットが一体化される。このように、スラスト方向およびラジアル方向でのいずれかもしくは両方でのずれを防止されると、ユニット内に収容されている遊星歯車機構内での入力側と出力側との軸心位置が一致された状態を維持することができる。
【0047】
一方、最終段のキャリア13’に設けられている出力部13B’には、スプライン係合部を有するオルダムカップリング20が設けられて調心機能を発揮させるようになっている。オルダムカップリング20は、キャリア13’の出力部13B’に相当する位置に形成された凸部に嵌合して固定される。
なお、図8は、図7に示した構成を有するドラム駆動装置10における第1,第2の支持ユニット同士が一体化される前の状態を示す図4相当の図であり、図9は、同じく図5相当の図であり、図10は、図6相当の図である。
【0048】
上記の各図から明らかなように、本実施例においては、第1,第2の支持ユニットが互いに接合部の一部同士を重ねた状態で一体化されているので、ユニット内に位置する遊星歯車機構の入力側と出力側との軸心位置を一致させることができる。
特に、一体化のための構成として、ユニット同士が個別に支持壁部10Aに取り付けられるのではなく、一体化された状態で取り付けられるので、取り付けの際の誤差を生じることがない。これによって、遊星歯車機構内での入力側と出力側との軸心位置の整合性が維持された状態を確保することができる。
【0049】
また、最終段のキャリア13’の出力部13B’と感光体ドラム軸16とがオルダムカップリング20を介して連結されるようになっているので、仮に感光体ドラム1側での支持部が原因して出力部13B’との間にずれが生じた場合でもそのずれを吸収しながら回転させることができるので、感光体ドラム1の偏心回転による振動の発生を抑制することができる。
【0050】
上述した実施例では、減速機構に用いられる遊星歯車機構の構成として、ギヤの歯数比に基づく減速比を得るようにしているが、本発明はこの構成に限らない。
図11は、噛み合い以外の係合関係による減速比を得るための変形例を示す図であり、同図には、ギヤに代えてローラが用いられており、ローラの外径比による減速比を得るようになっている。つまり、図11は、オルダムカップリング20を用いた場合を示しており、同図において駆動モータMの出力軸M1にはサンギヤはなく、キャリア130に支持されているピニオンローラ140が接触している。
キャリア130には、最終段に位置するキャリア130’に支持されているピニオンローラ140’が外周面に接触しており、キャリア130における出力部130B’には、オルダムカップリング20が取り付けられている。
各ローラは、その外周面を摩擦接触させる構成とされ、ギヤを用いた場合と同様な原理による減速比を得るようになっている。
この構成においては、ギヤの波面形成が不要となるので、加工コスト、さらには噛み合い音の低減が図れる。
【0051】
なお、上述した第1,第2の支持ユニット同士の一部を重ねる構成は、図2に示した構成の一部を変更して用いることができる。
つまり、図2(B)は、この場合の構成を示しており、同図において、第1の支持ユニット11と第2の支持ユニット12とは、支持壁部10Aに対向する端部側において、第2の支持ユニット12に設けられている凹部12Dに対して第1の支持ユニット11側の支持壁部10A側端部が搭載されている。
段部12Dでは、直角な辺部のうちの一辺、図2(B)では水平方向の辺L2には、第1の支持ユニット11側の端部開口11B内面が対応するようになっている。
段部12Dに搭載された端部を有する第1の支持ユニット11は、第2の支持ユニット12とともに支持壁部10Aに対して共締めされることにより、図7に示した構成の場合と同様に、スラスト方向およびラジアル方向のずれを防止された状態で各ユニットが一体化される。
【符号の説明】
【0052】
1 感光体ドラム
1A 端板
1A1 セレーションカップリング用凹部
10 ドラム駆動装置
10A 支持壁部
10A1 挿通支持孔
11 第1の支持ユニット
11A 内歯
12 第2の支持ユニット
12F フランジ
13,13’ キャリア
13B’ 出力部
14,14’ ピニオン
15 サンギヤ
16 感光体ドラム軸
17 軸受け
20 オルダムカップリング
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特許第4360162号公報
【特許文献2】特開2001−200858号公報
【特許文献3】特開2004−219836号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータからの駆動力を被駆動部材に伝達する伝達経路に遊星歯車減速機構を備えた駆動装置において、
前記減速機構は、機構本体を構成する筐体が分割されて第1,第2の支持ユニットで構成され、
前記第1の支持ユニットには、少なくとも1段のキャリアとこれに支持されるピニオンギヤとが備えられると共に最終段のキャリアに出力部が設けられ、
前記第2の支持ユニットには、前記出力部に対して着脱可能な出力軸および該出力軸の支持部が設けられ、
前記出力軸は、互いに接合される第1,第2の支持ユニット内部にて前記キャリアの出力部に対して挿脱可能に支持されることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1,第2の支持ユニット同士の接合部には、スラスト方向おおよびラジアル方向の少なくとも一つの方向の位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記出力軸の支持部には、該出力軸の軸方向に沿って複数の軸受け部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第2の支持ユニットは装置本体側に取り付け支持され、前記第1の支持ユニットは前記接合部の位置決め部を介して前記第2の支持ユニットに取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の駆動装置。
【請求項5】
前記キャリア側の出力部と前記出力軸とはスプライン係合構造が用いられ、軸方向に挿脱可能であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの一つに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記最終段のキャリアに設けられている出力部は浮動支持されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちの一つに記載の駆動装置。
【請求項7】
前記出力部と出力軸との挿脱部にはオルダムカップリングが設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの一つに記載の駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちの一つに記載の駆動装置を用いる画像形成装置であって、
前記出力軸には潜像担持体が着脱可能に支持されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記潜像担持体における前記出力軸との支持部として端板に形成された係合部が用いられることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−196450(P2011−196450A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63100(P2010−63100)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】