説明

高い構造緩衝性を有する支持構造

高い構造緩衝性を有し、簡単な構造を有し、および耐腐食性対策のために多くの費用を要求しない支持構造を完成させるために、少なくとも一つの支持要素(2)を有する支持構造(1)において、支持要素(2)が少なくとも一つの空洞部(5)および、この空洞部と通じる少なくとも一つのロッド(4)を備え、その際、空洞部(5)が物質で満たされており、その際、支持要素(2)が変形されると、ロッド(4)がその長手方向の延在に沿って支持要素(2)に対して相対的にスライド可能であり、その際、ロッド(4)が少なくとも一箇所において支持要素(2)に対してスライド不可能に固定されており、および、支持要素(2)に対する相対的スライドの発生の際に、このロッドがエネルギーを消散させるよう形成されている支持構造(1)が提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの支持要素を有する、請求項1の上位概念部に記載の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
支持構造は、例えば、高層建築物、煙突、塔、または橋であり得る。
【0003】
一つの支持構造は、例えばロッド、ビーム、ディスク、またはプレートのような支持要素からなっている。一つの支持要素は、建築エンジニアリングの体系の適用範囲においては、少なくとも一つの受け部を備えている。受け部としては、支承部または基礎構造部が使用される。
【0004】
支持構造内では、動的な影響(地震、風、橋の上を行く歩行者など)によって振動が励起されることがある。この振動を減少するための様々な方法が存在する。
・周波数状況の変更
振動を減少するために、カウンターメジャーとして固有周波数のスライドが考えられる。その結果、励起周波数の間隔は出来るだけ大きくなる。
・振動遮断
支承部の強度、緩衝性および重量を調整することによって、支持構造の固有周波数と、これに伴う振動の減少に影響を与えることができる。
・粘性の緩衝特性を有する振動緩衝部
振動緩衝部とは、支持構造にばねおよび緩衝要素によって連結された付加物であると解される。
・減衰器
減衰器とは、ばねによって支持構造に連結された付加物であると解される。
・構造緩衝性の変更
緩衝性の高さは、共振領域にある振動の減少に決定的な影響を与える。それは、建築材料中の緩衝性、部材および接続手段中の緩衝性、並びに支承部および建築基礎の間で異なる。
【0005】
周波数状況の変更は、例えばある機械の運転より所定の周波数において、励起周波数がわかっているとき、振動減少のための優秀なメソッドである。建築の体系において、歩行者の橋およびスタンドの固有周波数を、歩行者または群集によって引き起こされる周波数領域からずらす試みが行われている。
【0006】
振動遮断は、例えば振動が遮断された建築物において地震の際に発生する大きな水平方向のスライドを吸収し、および建築物から遮断するのは、大きな追加的コストを要する。
【0007】
振動緩衝部および減衰器は、高い設置コストおよびメンテナンスコストの原因となる構造物である。
【0008】
構造緩衝性を大きくすることは、共振領域にある支持構造の振動減少のため、および例えば地震の影響下におけるエネルギー消散のための適切なメソッドである。
【0009】
地震によって供給されるエネルギーは、指示構造を振動させる。供給されるエネルギーの消散によるエネルギー吸収が、出来るだけ多くの箇所でオこなれ、および同時に垂直方向の負荷(自重および実用荷重)が確実に行われるとき、支持構造の破綻は回避されることができる。スチールから成る支持構造内では、例えば対角方向のロッドがビームに接続されることがある。地震負荷の結果としての支持構造の横方向の撓みの際に、ビーム内に塑性ヒンジを形成する。この塑性ヒンジ内では、周期的な塑性変形によってエネルギーが消散される。
【0010】
クリスチャン・ペーターセンによる非特許文献1の第二章43および44頁には、支柱ブリッジの懸垂部のための構造緩衝性を高めるための対策が記載されている。二つのスチールロッドが、懸垂部(支持構造)に固定されており、および複数の箇所でビンディングによって懸垂部とスライド可能に接続されている。振動負荷の際には、摩擦力はビンディング内において、明らかに高められた構造緩衝性として作用する。ペーターセンは、彼によって記載された解決策は、技術的に実現困難であって、特に耐腐食性の面で問題があると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「土木工学における振動緩衝」、クリスチャン・ペーターセン著、マウアー・ゼーネ出版、ミュンヘン、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高い構造緩衝性を有し、簡単な構造を有し、および耐腐食性対策のために多くの費用を要求しない支持構造を完成させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する支持構造によって解決される。
【0014】
本発明に係る支持構造は、少なくとも一つの空洞部、およびこの空洞部と通じる少なくとも一つのロッドを有する少なくとも一つの支持要素を備えている。空洞部は、物質で満たされており、その際支持要素が変形されると、ロッドはその長手方向の延在に沿って支持要素に対して相対的にスライド可能である。その際、ロッドは少なくとも一箇所で支持要素にスライド不可能に固定されており、および支持要素に対する相対的スライドが発生する際に、これがエネルギーを消散するように形成されている。「消散する」は、熱へのエネルギー状態の移行であると介される。
【0015】
本発明の実施形においては、支持要素は、少なくとも一つの空洞部を有している。この空洞部内にロッドは設けられる。空洞部内に設けられる各ロッドの全ての総計断面積は、この空洞部の断面積よりも小さく、および空洞部の残容積は、物質で満たされている。支持要素が変形されると、ロッドは、その長手方向の延在に沿って支持要素に対して相対的にスライド可能である。この形態によって高いエネルギー消散が達成可能である。更に、ロッドの高い変形可能性に対して、ロッドが、一箇所のみで支持要素に対してスライド不可能に固定されており、および、支持要素に対する相対的スライド発生の際に、これがエネルギーを消散するよう形成されていることが意図されることが可能である。
【0016】
本発明に係る支持構造の特に簡単に製造可能な実施形においては、ロッドが管形状に形成されており、その内部空間内に空洞部を定め、この空洞部内に物質が収容される。その際、物質は流体として形成され、その際ロッドは、支持要素の変形の際に、空洞部の容積を変更し、これによって物質とロッドの間のスライドが生じる。
【0017】
「ロッド」は、建築論上では、張力および圧縮力にみを吸収することができると定義される。当然ロッド内にはねじりモーメントも発生しうるが、これはビームと比較して著しく小さい程度である。本発明の意味におけるロッドとしては、円形または角型断面を有するスチールロッド、テンショニングワイヤーコード、相当の強度を有するスチールケーブル、スチールからなる中空輪郭、並びに、繊維強化材料からなるコードおよびワイヤーが考慮される。
【0018】
ロッドを支持要素に対して唯一の箇所で固定することによって、および支持要素に対して長手方向に相対的にスライド可能な実施形によって、支持要素の変形の際にロッドと支持要素の間の相対的スライドが発生する。相対的スライドは、ロッドが支持要素に対して固定されている箇所ではゼロである。この固定箇所から間隔が開くにつれて、ロッドと支持要素の間の相対的スライドは大きくなる。支持構造への動的影響により、ロッドの各箇所において、ロッドと支持要素の間の相対的スライドが周的に発生する。
【0019】
ロッド表面と支持要素の間には、例えば摩擦によってや、または空洞部内に存在する物質によって付着応力がもたらされ得る。付着応力・相対的スライドの関係の周期的連続によってエネルギーを消散する可能性が提供される。ロッドの実施形と、相対的スライドによって発生する付着応力に応じて、エネルギーはロッドに沿って消散される。良好な消散のために、ロッドが金属材料から成ることまたは繊維強化材料から成ることが推奨される。
【0020】
ロッドと空洞部内表面の間の摩擦を高め、これによって消散を促進するために、ロッドの表面及び/又は空洞部の内表面が、リブ、ねじ山、パターン、ビードまたはインデントを有していると有利である。同じ目的のため、ロッドの表面に固定されるストリップ状、プリズム状またはシリンダー状の要素が使用可能である。
【0021】
相当の消散を行うことを図るために、本発明の改良形では、空洞部の長さが、その最大の直径の少なくとも10倍であることが意図される。この意味において、空洞部がシリンダー状またはプリズム状の形状を有するとき、有利であることが証明された。
【0022】
例えば、ロッドの断面の高さまたは直径は、10mmから200mmの間にあり、よって慣性半径は、2.5mmから58mmの間にある。
【0023】
ロッド表面と支持要素の間の空洞部の容積を満たす物質は、有利には流体、粒状材料、気体またはこれら物質の混合物からなる。
【0024】
流体が、空洞部を満たす物質として使用されると、ロッドと支持要素の間の相対的スライドが発生する際に、流体中にせん断応力が伝えられる。せん断応力の発生とこれに伴う流体のスレッドの間の摩擦の発生は、エネルギー消散という結果に通じる。層流においても乱流においても、流れの運動エネルギーは熱へと移行される。
【0025】
異なる粘性を有する流体、特に10−6[m2/s]から1[m2/s]の間の動粘性を有する流体が、空洞を満たすための物質として適切である。例えば、室温において10−6[m2/s]の動粘性を有する水や、室温において10−2[m2/s]の動粘性を有するハイドロリックオイルが使用可能である。
【0026】
緩衝要素のための、一つの有利な充填媒体はシリコンオイルである。シリコンオイルは、10−6[m2/s]から1[m2/s]の間の動粘性を有する広い適用範囲に対して製造される。メチルシリコンオイルは、特に意味がある。これは、色が無く、においが無く、有毒でなく、および疎水性である。これは、酸およびアルカリに対して高い耐性を有する。これは、周辺温度において、実質的に揮発性でない。融点は、−50°Cであり、引火点は250°Cであって、および着火温度は、略400°Cである。密度は、略970kg/mである。
【0027】
メチルシリコンオイルは、広い粘性範囲を有しており、およびこの粘性は温度にあまり依存しない。別の特徴は、高い圧縮性である。これによって、高い圧力要求下においても、シリコンオイルの効果の危険性が無い。
【0028】
粒状の物質からなる空洞部を満たす物質は、例えば、砂、砂利、スチール球、プラスチック球、アルミニウム球またはプラスチックカバーを有する金属球を含む。固体の充填物質、例えば粒状材料と流体のコンビネーションも、空洞部を満たす物質として適している。
【0029】
気体状の充填媒体としては、特に空気または窒素が使用可能である。
【0030】
充填媒体としては、揺変性の流体もまた使用可能である。多くの非ニュートン流体中では、機械的要求の際に粘性が減少する。要求が無くなった後に、出力粘性は再び上昇する。
【0031】
本発明に係る指示構造を良好に維持するために、ロッド及び/又は物質が交換可能であることができる。
【0032】
コロージョンを回避し、または汚染が空洞部に入り込むのを回避するために、空洞部が密に密閉可能であると有利である。
【0033】
ロッドが案内されている空洞部の少なくとも一部がカーブを有すると、ロッドによる消散を更に高めることが図られる。
【0034】
本発明に係る指示構造の有利な実施形においては、支持要素内の空洞部が、支持要素の重心軸に対して感覚を空けて設けられている。間隔が大きく選択されるほど、ロッドの相対的スライド性が上がるとともに、消散も高められる。
【0035】
発明に従う支持構造中の振動の良好な緩衝は、自身の重心軸に沿う支持構造の寸法が、重心軸に直行して設けられる断面におけるものより10倍大きいとき、および支持要素が支持構造の重心軸に対して間隔をあけておりおよび略平行に設けられているとき達成される。
【0036】
本発明の有利な実施形においては、支持要素がコンクリートまたはレンガ壁からなっており、その際空洞部は被覆管によって形成されている。被覆管は、支持要素の製造の間に、コンクリートまたはレンガ壁内にもたらされる。
【0037】
摩擦を更に高めるために、空洞部の方を向いた被覆管の表面、及び/又は、支持要素の方を向いた被覆管の表面が、リブ、パターン、ビードまたはインデントを有していると有利である。
【0038】
本発明に係る支持構造のさらに有利な実施形は、ロッドが支持要素の外側で中空輪郭内に設けられており、中空輪郭が支持要素に隣接して設けられ、および少なくとも三箇所でこれと堅固に接続されており、ロッドの断面積が、中空輪郭の内部断面積よりも小さく、および中空輪郭中の残容積が物質で満たされていることを特徴としている。
【0039】
発明にしたがい、以下に添付の図面中に表された実施例に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】支持要素内に設けられた空洞部を有する支持構造の断面図
【図2】図1のセンII-IIに沿う断面の図
【図3】支持要素内に組み込まれたロッドを有する図1の支持構造1の断面図。このロッドは支持構造1の受け部に固定部を有している。
【図4】図3の支持構造の断面図。変形した状態の図。
【図5】ロッドと支持要素の間のロッドに沿った相対的スライドΔの推移。
【図6】ロッドに沿ったせん断応力τの推移
【図7】ロッドに沿った張力Zの推移
【図8】各負荷サイクルにおいてエネルギーを消散する物質の、せん断応力τと相対的スライドΔの関係。その際、τ-Δの関係は弾性・塑性比率によって特徴づけられる。
【図9】各負荷サイクルにおいてエネルギーを消散する物質の、せん断応力τと相対的スライドΔの関係。その際、τ-Δの関係は粘性比率によって特徴づけられる。
【図10】図3の線X−Xに沿った断面
【図11】ロッドの上端部に固定部を有する支持構造の、図3に対応する断面図
【図12】図11の支持構造の断面図。変形された状態。
【図13】支持構造の外側に設けられた中空輪郭を有する支持構造の別の実施形。この中空輪郭の中にはロッドが存在している。
【図14】図13の支持構造の断面。変形された状態の図。
【図15】図13の線XV−XVに沿う断面の図
【図16】ロッド中央に固定部有するロッドを有する支持構造の別の実施形
【図17】図16の線XVII−XVIIに沿った断面の図
【図18】支柱、ビームおよび、壁部内に丸められて組み込まれたロッドからなる支持構造の図
【図19】図18に対応する支持構造の図。壁部内に組み込まれた5つのロッドを有する。
【図20】図19の線XX−XXに沿う断面図
【図21】図20の線XXI−XXIに沿う断面図
【図22】支柱ブリッジの図
【図23】支柱ブリッジの懸垂部の図。接続された中空輪郭を有しており、この中空輪郭内にロッドが設けられている。
【図24】図22または図23の線XXIV−XXIVに沿った断面図
【図25】支持構造内部に設けられた中空輪郭を有する別の支持構造の図。この中空輪郭内にロッドが存在している。
【図26】図25の支持構造の断面。変形された状態。
【図27】図25の線XXVII−XXVIIに沿った断面の図
【図28】支柱、ビームおよび、壁部内に丸められて組み込まれたロッドからなる他の支持構造の図。
【図29】支柱、ビームおよび、壁部内に丸められて組み込まれた管形状のロッドからなる支持構造の図。
【図30】図29の線XXX−XXXに沿った断面の図。
【図31】図30の線XXXI−XXXIに沿った断面の図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の説明は、まず図1から図10と関係してなさる。
【0042】
上端部に加えられる力F(t) の受容のための支持構造1が、図1に変形されていない状態(F(t) = 0)で表されている。この支持構造1の支持要素2は、ロッドおよびビームからなっている。鋼管として形成される支持構造2内には、空洞部5が存在している。支持構造1の重心軸は9で表され、および支持要素2の重心軸は8で表されている。支持構造の受け部21として基礎部16が使用される。図2は、空洞部5を有する支持要素2の断面を示している。
【0043】
図3には、図1の支持構造1の断面が、組み込まれたロッド4を有して、および空洞部5の残容積を物質6により満たして表されている。ロッド4は、受け部21において固定部3とスライド不可能に固定されている。良好な理解のために、固定部3から出発して、ロッド4に沿って経路座標xが導入されている。ロッド2の長さは、図3においてlで表されている。
【0044】
図4のように支持構造1は力F(t) によって変形する。この力は、時間的に変化する値を有している。組み込まれたロッド4を有する支持要素2は、引伸ばされおよび同時に短縮されることによって、図4に表されるように変形する。反対の方向に加えられる力F(t) において、支持要素2は押し付けられ、よって短縮される。空洞部5が物質によって満たされており、およびロッド4と支持要素2の間の摩擦がゼロであったならば、ロッド4は、支持要素2の変形の際にゆがめられるのみであり、その長さは変化せず、および押し付けられた変形の結果としての従属する曲げ応力のみを有する。ロッド4の各断面における標準応力の合計は、ゼロである。つまり、ロッド4における垂直力はゼロである。支持要素2とロッド4の変形の際に物質6中に引き起こされる応力の値に応じて、ロッド2中に標準応力が発生する。ロッド4の任意断面にわたるこれら標準応力の合計または積分は、ロッド4中の垂直力に相当し、およびゼロである。
【0045】
図4においては、ロッド4が支持要素2中で物質6によって取囲まれている。支持要素1に力F(t) でもって負荷を加えると、ロッド4中における垂直力も発生するし、ロッド4と支持要素2の間の相対的スライドΔ(x)も発生する。
【0046】
ロッド4に沿う、相対的スライドΔ(x)のある推移が図5に表されている。相対的スライドτ(x)の結果として発生するロッド4の表面のせん断応力τ(x)は、図6に表されている。ロッド4の表面にわたるせん断応力τ(x)の積分は、図7に表されるロッド4に沿った垂直力N(x)の推移を生じる。図4に示された例に対して、垂直力N(x)は張力である。
【0047】
相対的スライドΔとせん断応力τの間のある関係が負荷サイクルとして図8に表されている。図8に表されるτ-Δの関係は、弾性・塑性材料関係を有している。周期的に発生する相対的スライドΔによってエネルギーは消散される。負荷サイクルでのτ-Δの関係中における面積Aの値は、消散するエネルギーの尺度である。線型的なτ- Δ関係においては、エネルギーは消散されない。
【0048】
相対的スライドΔとせん断応力τの間の別のある関係が図9にあらわされている。図9にあらわされるτ-Δ関係は、粘性の材料関係を有している。
【0049】
図10は、ロッド4、支持要素2および物質6の断面を示している。τ-Δ関係の実際の形は、尺度として、ロッド4と支持要素2の表面の特性によっておよび物質6の材料選択によって影響される。図8および9にあらわされるτ-Δ関係は、単に例示的な材料モデルとして理解される。物質6のバリエーションおよびロッド4と支持要素2の表面によって、多くの異なるτ-Δ関係が確立可能である。
【0050】
本発明の第二の実施例に係る支持構造1が、図11および12に表されている。ロッド4と支持要素2のスライド不可能な固定のための固定部3は、この例においては支持要素2の上端部に設けられている。支持要素1の変形の際には、力F(t)によってロッド4と支持要素2の間の相対的スライドΔが発生する。相対的スライドΔの最大値は、x=0の箇所で発生する。
【0051】
本発明の第三の実施例に係る支持構造1が、図13から15に表されている。この支持構造1は、壁部15からなっており、および水平に加えられる力F(t)によって上端部に負荷を加えられている。支持構造1は、ディスクによって形成される唯一の支持要素2からなっている。支持構造1の右方の外側には、中空輪郭10が固定部11によって接続されている。中空輪郭10の中には、ロッド4が設けられており、このロッドは固定部3によって基礎部16と接続されている。本発明に係る支持構造1のこの例において示される実施形は、存在している支持要素2にロッド4の中空輪郭10と物質6を取り付けることによって作り出される。中空輪郭10は、鋼管またはプラスチック管から成ることが可能である。
【0052】
本発明に係る支持構造1の第四の実施形が、図16および17に表されている。この時事構造1は、ビームによって形成される唯一の支持要素2からなっている。支持構造1および支持要素2の重心軸8,9は、よってこの例においては同一物である。被覆管7によって、鉄筋コンクリートかなる支持構造1中に空洞部5が設けられる。被覆管7は、PSコンクリート構造の通常リブ状とされるかまたは波状とされる薄鋼板からなる。図16は、ロッド4を空洞部5に導入した後の組立て状態を示す。ロッド4は、固定部3によって中央で支持要素2と接続されている。図16および17中において表されていない後の組立ステップにおいて、空洞部5は物質6によって充填される。
【0053】
本発明に係る支持構造1の第五の実施例が、図18に表されている。支持構造1は、複数の支持要素2、詳しく言うと、壁部15またはディスク、支柱13およびビーム14からなる。壁部15中には、複数のカーブを有する空洞部5が設けられている。丸められた空洞部5の中に設けられるロッド4は、支持構造1の変形の際に、ロッド4と支持要素2の間の摩擦力によって負荷を受ける。例えば地震による支持構造1の動的な負荷の際には、摩擦力によってエネルギーが消散される。図18に表される支持構造1の順当な機能のためには、空洞部5の直径と、軸方向強度およびたわみ強度が互いに調和されており、よって負荷サイクル中において圧力垂直力がロッド4中に作用し、ロッド4が折れ曲がることがないということが重要である。ロッド4は、圧力負荷の際に、支持要素2の表面にあてがわれるが、局所的な折れ曲がりによって破損すべきではない。
【0054】
本発明に係る支持構造1の第六の実施形が、図19から21に表されている。図19に表される支持構造1の支持要素2は、図18の支持構造に相当する。壁部15中には、五つの空洞部5が設けられており、これら空洞部は壁部15を鉄筋コンクリートから製造する際に、被覆管7を挿入することにより設けられる。空洞部5中には、ロッド4が挿入される。このロッドには、白板12が溶接されている。図21に表されているように、ロッド4と支持要素2の間の相対的スライドΔの際に、高いせん断応力τを作用させるために、白板は穴部を有している。被覆管7は、両側にリブを有しており、一方で、被覆管7と支持要素2または壁部15の間のスライド不可能な接続を確実なものとし、および他方で、ロッド4と支持要素2の間の高いせん断応力τを促進する。
【0055】
本発明に係る支持構造1の支柱ブリッジ17形式の第七の実施形が、図22から24に表されている。図22は、ブリッジ支持部19、アーチ部18、懸垂部20および受け部21からなる支柱ブリッジ17を示す。懸垂部20は、丸い鋼パターンからなる。この鋼パターンは、固定部11によって中空輪郭10と接続されている。中空輪郭10中には、ロッド4および物質6が設けられている。ロッド4は、固定部3によってブリッジ支持部19とスライド不可能に接続されている。ロッド4と支持要素2または懸垂部20の間の相対的スライドΔの際に発生する高い構造緩衝性は、風によって引き起こされる懸垂部20の振動を減少させる。
【0056】
本発明に係る支持構造1の第八の実施形が図25から27に表されている。図25から27に表される支持構造1の図11および12による支持構造1に対する相違点は、支持要素2の内部に中空輪郭10が設けられ、この中空輪郭が支持要素2と接続されていない点にある。よって支持構造1の変形の際には、力F(t)によってロッド2と中空輪郭10の間の相対的スライドΔが発生する。この相対的スライドは、ロッドの長さにわたって一定である。ロッド2に沿って一定の値で発生する相対的スライドΔによって、ここでもまた物質6とロッド2および中空輪郭10の表面に依存するτ-Δ関係に依存して、ロッド長さにそって変化する相対的スライドΔを有する、図11および12の例中におけるものよりも大きなエネルギー消散がロッド長さにそって発生する。
【0057】
図18のそれに類似する、本発明に係る支持構造1のさらなる実施形が図28に表されている。この支持構造1は、複数の支持要素2、詳しく言うと壁部15またはディスク、支柱13およびビーム14からなる。壁部15中には、複数のカーブおよび空洞部を有する管7が設けられている。管7の空洞部には、ロッド4が設けられている。このロッド4は、表されているように、図20に表される薄板を有するロッド4の断面形状を有している。さらに代替として、ロッド4は、図10に表されるような断面形状を有することも可能である。管7もロッド4も両端部において固定部3によって固定されている。管7は、物質6によって満たされている。図18の実施形に対して異なり、この実施形においては、動的な負荷の際に物質6は、管7およびロッド4に対して相対的にスライドし、これによってエネルギーを消散する。物質6は、好ましくは流体または粘性材料である。
【0058】
本発明に係る支持構造1のさらに別の実施形が、図29から31に表されている。この支持構造1も、複数の支持要素2、詳しく言うと壁部15またはディスク、支柱13およびビーム14からなる。壁部15中には、複数のカーブを有する管7が設けられている。管7は流体の物質6によって満たされている。その点で、この実施形は図28のそれと類似している。管7は、一方の端部を固定部3により固定される。しかしまた両方の端部を固定されることも可能である。別の固定部が、例えばジョイント部に設けられることが可能である。例えば、管7を支持要素2中でコンクリート中に入れることもまた可能である、というのはその際、支持要素2の動的な負荷の際に、管7と支持要素2の間により小さな相対的スライドが発生するからである。図28の実施形に対して異なり、本実施形の場合、管7がロッド4の機能も担う。言い換えると、管7は管形状のロッド4として設けられることが可能である。動的な負荷の際には、壁部15と管形状のロッド4が変形し、および伸ばされ、および/または押し付けられる。その際、物質6は関係上のロッド4に対してスライドする、というのは流体の物質6の体積は一定のままであるからであり、しかし管7またはロッド4中の空洞部の体積が変化するからである。
【符号の説明】
【0059】
1 支持構造
2 支持要素
3 固定部
4 ロッド
5 空洞部
6 物質
7 被覆管
8 支持要素の重心軸
9 支持構造の重心軸
10 中空輪郭
11 中空輪郭の固定部
12 薄板
13 支柱
14 ビーム
15 壁部
16 基礎部
17 支柱ブリッジ
18 アーチ部
19 ブリッジ支持部
20 懸垂部
21 受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの支持要素(2)を有する支持構造(1)において、支持要素(2)が少なくとも一つの空洞部(5)および、この空洞部と通じる少なくとも一つのロッド(4)を備え、その際、空洞部(5)が物質で満たされており、その際、支持要素(2)が変形されると、ロッド(4)がその長手方向の延在に沿って支持要素(2)に対して相対的にスライド可能であり、その際、ロッド(4)が少なくとも一箇所において支持要素(2)に対してスライド不可能に固定されており、および、支持要素(2)に対する相対的スライドの発生の際に、このロッドがエネルギーを消散させるよう形成されていることを特徴とする支持構造(1)。
【請求項2】
支持要素(2)が、少なくとも一つの空洞部(5)を備えており、この空洞部内に少なくとも一つのロッド(4)が設けられ、その際、それぞれ空洞部(5)に設けられた全ロッド(4)の総計断面が、この空洞部(5)の断面よりも小さく、および空洞部(5)の残容積が物質(6)で満たされており、その際、支持要素(2)が変形されると、ロッド(4)が、その長手方向の延在に沿って支持要素(2)に対して相対的にスライド可能であることを特徴とする、少なくとも一つの支持要素(2)を有する請求項1に記載の支持構造(1)。
【請求項3】
ロッド(4)が、支持要素(2)に対して一箇所のみでスライド不可能に固定されており、およびこのロッドが支持要素(2)に対する相対的スライド発生の際にエネルギーを消散することを特徴とする請求項2に記載の支持構造(1)。
【請求項4】
ロッド(4)が管形状に形成されており、およびその内部空間内に空洞部(5)を定め、この空洞部内に物質(6)が収容され、その際物質(6)が流体として形成されており、その際ロッド(4)は、支持要素(2)の変形の際に空洞部(5)の容積を変化させ、これによって物質(6)とロッド(4)の間のスライドが生じることを特徴とする請求項1に記載の支持構造(1)。
【請求項5】
空洞部(5)の長さが、その最大の直径の少なくとも10倍であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項6】
空洞部が、シリンダー状またはプリズム状の形状を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項7】
ロッド(4)が、金属材料または繊維強化材料からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項8】
ロッド(4)の表面及び/又は空洞部(5)の内表面が、リブ、ねじ山、パターン、ビードまたはインデントを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項9】
ロッド(4)の表面に、ストリップ状、プリズム状、またはシリンダー状の要素が固定されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項10】
物質(6)が、粘性の流体からなり、好ましくは10−6[m/s]から1[m/s]の動粘性を有する、例えば水またはハイドロリックオイルまたはシリコンオイルであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項11】
物質(6)が粒状の物質、例えば砂、砂利、スチール球、プラスチック球、アルミニウム球またはプラスチックカバーを有する金属球からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項12】
物質(6)が、固体材料からなる堆積した成分を有する流体からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項13】
物質(6)が、気体、例えば空気または窒素からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項14】
ロッド(4)及び/又は物質(6)が交換可能であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項15】
空洞部(5)が、密に密閉可能であることを特徴とする請求子1から14のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項16】
空洞部(5)の少なくとも一つの部分がカーブを有することを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項17】
空洞部(5)が、支持要素(2)内で支持要素(2)の重心軸(8)に対して間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項18】
自身の重心軸(9)に沿った指示構造(1)の寸法が、重心軸(9)に直行する断面におけるものの少なくとも10倍であること、および支持要素(2)が指示構造(1)の重心軸に対して略平行および間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項19】
支持要素(2)が、コンクリートまたはレンガ壁からなり、および空洞部(5)が、被覆管(7)によって形成されていることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の支持構造(1)。
【請求項20】
空洞部(5)の方を向いた、被覆管(7)の表面及び/又は、支持要素(2)の方を向いた、被覆管(7)の表面が、リブ、パターン、ビードまたはインデントを備えることを特徴とする請求項19に記載の支持構造(1)。
【請求項21】
ロッド(4)が、支持要素(2)の外側で中空輪郭(10)内に設けられていること、および中空輪郭(10)が支持要素(2)の横に設けられており、およびこれと少なくとも三箇所(11)で固定されていること、およびロッド(4)の断面が、中空輪郭(10)の内部断面よりも小さいこと、および中空輪郭(10)の残容積が物質(6)で満たされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の支持構造(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2012−520954(P2012−520954A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500219(P2012−500219)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053345
【国際公開番号】WO2010/106047
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511226524)ファウ・エス・エル・インターナツイオナール・アクチエンゲゼルシヤフト (8)
【Fターム(参考)】