説明

高ドップラー環境においてAlamouti符号化信号をデコードする時空間デコーダおよび方法

高ドップラー環境においてAlamouti符号化信号をデコードする時空間デコーダおよび方法の実施形態が開示される。他の実施形態も記載されて請求される。いくつかの実施形態では、受信されたシンボル、チャネル変化率、および、チャネル係数に基づき、軟シンボル出力が生成される。最尤デコーディングが実行されて、前記軟シンボル出力に基づき硬シンボル出力が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの実施形態は、無線通信システムに関する。本発明のいくつかの実施形態は、高ドップラー環境において複数のアンテナにより送信されたAlamouti符号化信号をデコードする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送信機の中には、2つ以上のアンテナを用いて特殊な符号化信号を送信することにより、それらの信号を処理する受信機の能力を高めるものがある。例えば、いくつかのMIMO(multiple−input multiple−output)システムでは、時空間エンコーダにより生成されたAlamouti符号化信号が送信されることにより、受信機のデコーディングゲインを高め、ビット誤り率(BER)を減らすことができる。モバイル環境では、送信機および/または受信機は動く可能性があるので、受信されたシンボルは、ドップラーシフトによって歪められる。この歪みが受信機のデコーディングゲインを低下させ、特に高いSNR(信号対雑音比)レベルでは受信機のBERは著しく上昇する可能性がある。
【0003】
したがって、ドップラーシフトによって歪む可能性のある受信信号をデコードするための受信機および方法が必要とされている。また、高ドップラーシフト環境においてデコーディングゲインを高める時空間デコーダおよび方法も必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本発明のいくつかの実施形態における無線通信システムを示す。
【0005】
【図2】本発明のいくつかの実施形態における時空間デコーダのブロック図である。
【0006】
【図3】本発明のいくつかの実施形態における高ドップラーシフトのチャネル内の信号をデコードする手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の記載および図面において、本発明の特定の実施形態を当業者が実施できるように十分な説明がなされる。他の実施形態も取り入れることができ、構造的、機械的プロセス、他の変更も可能である。複数の例は、一般的に可能なバリエーションに過ぎない。いくつかの実施形態の部分および特徴は、他の実施形態の部分および特徴において示されてよく、または、それらと置き換えられてよい。請求項に記載される本発明の実施形態は、これら請求項のすべての利用可能な等価物を含む。本発明の実施形態は、便宜上、本願明細書中において個別に、または、集合的に「本発明」と称されるが、実際に複数の実施形態が開示されている場合に本出願を単一の発明または発明の概念に限定する意図はない。
【0008】
図1は、本発明のいくつかの実施形態における無線通信システムを示す。無線通信システム100は、送信機102および受信機106を有してよい。送信機102は、2つ以上のアンテナ112を用い、チャネル104を介して受信機106によって受信される高周波(RF)信号を送信してよい。受信機106は、1つ以上のアンテナ116を用い、チャネル104を介して送信機102からRF信号を受信してよい。
【0009】
いくつかのMIMOの実施形態では、送信機102は、アンテナ112を用いて符号化された対のシンボル(α, α1)を送信してよい。いくつかの実施形態では、送信機102は、以下の送信マトリックスに従い、シンボル(α, α1)を符号化してよい。
【数1】

当該マトリックスは、シンボル(α, α1)のAlamouti符号化送信に対応する。シンボルα, α1は、送信機102で変調された入力ビットの振幅または位相を示す。当該送信マトリックスが示すように、第1の時点では、第1の送信アンテナがシンボルαを送信する間に第2の送信アンテナがシンボルα1を送信してよい。第2の時点では、第1の送信アンテナがシンボル−α1を送信する間に第2の送信アンテナがシンボルαを送信してよく、は、複素共役を示す。これらの符号化されたシンボルは、送信機102内の時空間ブロックエンコーダによって生成されてよい。これは、2つ以上のアンテナ112を用いてデータストリームの多重コピーを生成し、データのさまざまな受信バージョンを利用してデータ転送の信頼性を高めるという技法である。その結果、受信機106のデコーディングゲインが向上し、および/または、ビット誤り率(BER)が減少しうる。
【0010】
2つの送信アンテナ112および1つの受信アンテナ116を用いる実施形態では、チャネル104は、送信機102と受信機106との間に2つのチャネル(チャネル113Aおよび113Bとして示す)を有してよい。チャネルのそれぞれは、チャネル104のチャネル伝達関数を示すチャネル係数(h,h)により表されうる異なるチャネル特性を有してよい。チャネル104で示すように、チャネル係数hを有する第1のチャネル113Aは、第1の送信アンテナ112により送信されたシンボル−SおよびSに作用し、チャネル係数hを有する第2のチャネル113Bは、第2の送信アンテナ112により送信されたシンボルSおよびSに作用してよい。送信されたシンボルSおよびSは、上述の送信マトリックスのシンボルαおよびαにそれぞれ対応してよい。さらに図示するように、チャネル113Aおよび113Bからの信号は、チャネル104内で結合し、nおよびnと示されたノイズの影響を受け、受信機106によって受信されて図に示されるような受信シンボルrおよびrとなる。受信シンボルrおよびrは、受信機106によって受信される信号の積分結果である複素数または値を含む。受信されたシンボルrおよびrは、アンテナ116を介し受信されたRF信号から受信機106内で実際には生成されるが、図1では、図示の目的からチャネル104内に示される。
【0011】
ドップラーシフトがない状況(すなわち安定したチャネル)では、受信されたシンボルrおよびrは、以下の方程式で表される。
【数2】

【0012】
これらの方程式では、RおよびRは、第1および第2の時点の受信シンボルrおよびrにそれぞれ対応し、αおよびα1は、送信マトリックスの送信信号を表し、hおよびhは、チャネル113Aおよび113Bのチャネル係数をそれぞれ表し、nおよびnは、第1および第2の時点の平均白色ガウス雑音(AWGN)成分をそれぞれ表す。従来の受信機では、デコーダは、雑音は考慮に入れずに、以下の方程式に従い送信されたシンボルαおよびα1を評価してよい。
【数3】

【0013】
これらの方程式では、βおよびβは、従来のデコーダからの出力決定を表す。送信機または受信機が動いている高ドップラー環境では、チャネル104の時間依存性が原因で、受信されたシンボルは歪むことがある。高ドップラーシフトは、例えば自動車または列車などの車両(例えば時速300キロ未満の)において送信機102および/または受信機106が動く状況により生じうる。歪みは、以下の方程式により表されうる。
【数4】

これらの方程式において、δは、チャネル113Aのチャネル変化率を表し、δは、チャネル113Bのチャネル変化率を表す。いくつかの実施形態では、受信機106内のチャネル推定器は、異なる時間に測定されたチャネル係数に基づき、チャネル変化率δおよびδを計算してよい。これらの実施形態は、以下でさらに詳しく説明される。
【0014】
従来の受信機では、Alamoutiデコーダの出力は、以下のように示されうる。
【数5】

これらの値は、以下の方程式によっても表される。
【数6】

これらの方程式は、前述された方程式(3)の安定したチャネルのケースでのAlamoutiデコーダ出力と比べ、チャネル変化率δおよびδによってβおよびβが歪められたことを示す。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、受信機106は、高ドップラーシフトによる時間依存性チャネルの歪みを補償しうる時空間デコーダを有してよい。いくつかの実施形態では、受信機106は、受信されたシンボルrおよびr、チャネル変化率δおよびδ、および、チャネル係数hおよびhに基づき、軟シンボル出力vおよびvを生成する。これらの実施形態は、以下で詳しく説明される。いくつかの実施形態では、時空間デコーダは、最尤デコーディングを実行することにより、軟シンボル出力vおよびvから硬シンボル出力xおよびxを生成する。いくつかの実施形態では、硬シンボル出力xおよびxは、軟シンボル出力vおよびvまでの最小ユークリッド距離を有する信号点配置における点を検出することにより、軟シンボル出力vおよびvから計算されてよい。これらの実施形態は、以下でさらに詳しく説明される。
【0016】
いくつかの実施形態では、受信機106は、初期硬シンボル出力xおよびx、受信されたシンボルrおよびr、チャネル変化率チャネル変化率δおよびδ、および、チャネル係数hおよびhに基づき、修正軟シンボル出力θおよびθも生成してよい。これらの実施形態では、最終硬シンボル出力xおよびxは、修正軟シンボル出力θおよびθに対し最尤デコーディングを実行することにより生成されてよい。これらの実施形態は、以下でさらに詳しく説明される。チャネル変化率δおよびδは、高ドップラーシフトによるチャネル104内の歪みを少なくとも一部補償するために用いられてよい。これらの実施形態では、最尤デコーディングにより生成される最終硬シンボル出力xおよびxは、送信機102により送信されたAlamouti符号化シンボルαおよびαの推定値であってよい。いくつかの実施形態では、修正軟シンボル出力θおよびθと、暫定硬シンボル出力とが反復的に生成されることにより、最終硬シンボル出力xおよびxが生成されるが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0017】
軟シンボル出力vおよびv(ならびに修正軟シンボル出力θおよびθ)は、送信されたシンボルαおよびαにそれぞれ対応する複素平面における点を示してよい。硬シンボル出力xおよびxは、対応する軟シンボル出力vおよびvまでの最小ユークリッド距離を有する信号点配置における点を表わしてよい。送信機102が2位相偏移変調(BPSK)を用いる場合、硬シンボル出力xおよびxは、硬ビット出力を有し、軟シンボル出力vおよびvは、軟ビット出力を有しうるので、さらなる復調は必要ない。いくつかの非BPSKの実施形態では、硬シンボル出力xおよびxは、受信機106内でさらに復調されて硬ビット出力vおよびvを生成し、軟シンボル出力vおよびvは、受信機106内でさらに復調されて軟ビット出力を生成してよい。これらの非BPSKの実施形態では、送信機102は、4位相偏移変調(QPSK)および8位相偏移変調、あるいは、16QAMまたは64QAMなどの直交振幅変調などの高い変調レベルでシンボルを変調してよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0018】
図2は、本発明のいくつかの実施形態における時空間デコーダのブロック図である。時空間デコーダ200は、受信機106(図1)で用いられるのに適してよく、高ドップラーシフトによる時間依存性チャネルの歪みを補償してよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、時空間デコーダ200は、受信されたシンボル(r,r)201、チャネル変化率(δ,δ)205、および、チャネル係数(h,h)203に基づき、軟シンボル出力(v,v)207を生成するコンバイナ206を有する。時空間デコーダ200は、最尤デコーディングを実行して軟シンボル出力(v,v)207から硬シンボル出力(x,x)213を生成する最尤検出器208も有してよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、硬シンボル出力(x,x)215は、初期硬シンボル出力であってよい。いくつかの実施形態では、時空間デコーダ200は、初期硬シンボル出力(x,x)215、受信されたシンボル(r,r)201、チャネル変化率(δ,δ)205、および、チャネル係数(h,h)203に基づき、修正軟シンボル出力(θ,θ)211を生成するコレクタ210をさらに有してよい。これらの実施形態では、最尤検出器208は、修正軟シンボル出力(θ,θ)211に最尤デコーディングを実行することにより、最終硬シンボル出力(x,x)213を生成してよい。
【0021】
これらの実施形態では、受信されたシンボル(r,r)201は、送信アンテナ112(図1)などの2つ以上の送信アンテナによって送信されたAlamouti符号化シンボル(対のシンボルs,s1など)を含んでよい。コンバイナ206およびコレクタ210は、チャネル変化率(δ,δ)205を適用し、高ドップラーシフトによるチャネル104(図1)内の歪みを少なくとも一部補償してよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。これらの実施形態では、最尤検出器208によって生成される最終硬シンボル出力(x,x)213は、上記の送信されたAlamouti符号化シンボル(α,α)の推定値であってよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、時空間デコーダ200は、チャネル113A(図1)およびチャネル113B(図1)を介して送信されたトレーニング信号に基づき、チャネル係数(h,h)203を計算するチャネル係数推定器202を有してよい。いくつかの実施形態では、チャネル係数推定器202は、チャネル係数203の2つ以上の組からチャネル変化率(δ,δ)205を計算してもよい。いくつかの実施形態では、トレーニング信号がそれぞれの送信アンテナ112(図1)により別々に(異なる時間に)送信されることにより、チャネル係数推定器202は、チャネル113A(図1)およびチャネル113B(図1)のチャネル係数203を個別に決定できるようになる。
【0023】
いくつかの実施形態では、コレクタ210は、修正軟シンボル出力(θ,θ)211を生成し、最尤検出器208は、最終硬シンボル出力(x,x)213を生成する前に、暫定硬シンボル出力215を反復的に(すなわち1回以上)を生成するが、本発明の範囲はこれに限定されない。いくつかの実施形態では、1回の繰り返しで十分な場合もある。
【0024】
いくつかの実施形態では、時空間デコーダ200は、最尤検出器208の入力をコンバイナ206の出力からコレクタ210の出力へと切り替えるスイッチング回路220を有してよい。また、時空間デコーダ200は、コレクタ210が修正軟シンボル出力211を生成し、最尤検出器208が暫定硬シンボル出力215を生成する場合、最尤検出器208の出力をコレクタ210の入力に切り替えるスイッチング回路222も有してよい。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、受信されたシンボル(r,r)201は、不均一な受信シンボルを含んでよい。これらの実施形態では、受信されたシンボル(r,r)201は、前もってチャネル係数が適用されることなくコンバイナ206によって処理されてよい。したがって、これらの実施形態では、チャネルイコライザは不要である。
【0026】
いくつかの実施形態では、コンバイナ206は、以下の方程式に実質的に基づき、軟シンボル出力(v,v)207を生成してよい。
【数7】

これらの方程式は、ドップラーシフトによる歪みを少なくとも一部補償しうる。これらの方程式において、rは、第1の時点で受信されたシンボルを表し、rは、第2の時点で受信されたシンボルを表し、hは、チャネル113A(図1)のチャネル係数を表し、hは、チャネル113B(図1)のチャネル係数を表し、δは、チャネル113A(図1)の変化率を表し、δは、チャネル113B(図1)の変化率を表し、は、複素共役を表す。方程式(7)において、分母は、受信されたシンボルの振幅および位相をスケーリングするのに用いられる複素スケーリング係数である。
【0027】
いくつかの実施形態では、付加的な処理が実行されてよい。これらの実施形態では、軟シンボル出力(v,v)207によって表される決定は、高ドップラー環境に対してさらに改善されてよい。これらの実施形態では、コレクタ210は、以下の方程式に実質的に基づき、修正軟シンボル出力(θ,θ)211を生成してよい。
【数8】

これらの方程式では、
【数9】

は、軟シンボル出力vに基づく最尤検出器208の暫定出力を表す。修正軟シンボル出力(θ,θ)211の値に基づき、最尤検出器208は、最終決定を硬シンボル出力213として生成してよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、デコーダの効率を高めるべく、暫定出力
【数9】

および、修正軟シンボル出力θは、以下の方程式により表されるように再計算されてよい。
【数10】

これらの実施形態では、修正軟シンボル出力θおよびθとして示される修正軟決定は、方程式(8)に従い計算されてよい。このプロセスは、何回か繰り返されてよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。複素チャネルの変化率(δ)に対してはレイリー分布を有し、分散が約0.25の実数部および虚数部に対しては正規分布を有するチャネルにBPSK変調を用いる実施形態では、標準的なAlamoutiデコーディングにおけるBERを著しく減少させうるが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0029】
直交周波数分割多重(OFDM)信号を通信するいくつかの実施形態では、受信機106は、アンテナ116(図1)によって受信される時間領域信号から、受信されたシンボル201に対応する周波数領域信号を生成するフーリエ変換回路も有してよい。これらの実施形態では、受信機106は、硬ビット出力および/または軟ビット出力に誤り訂正デコーディングを実行する前方誤り訂正(FEC)デコーダなどの誤り訂正回路も有してよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。いくつかの実施形態では、硬ビット出力および軟ビット出力は、硬シンボル出力213および軟シンボル出力207をそれぞれ復調することによって生成されてよい。受信機106(図1)は、個別に図示されてはいないが、当該受信機106の物理層の一部でありえ、送信されたシンボルに対応するデコードビットストリームを生成する他の機能構成要素を有してもよい。
【0030】
時空間デコーダ200は、いくつかの個別の機能構成要素を有するように図示されているが、機能構成要素の1つ以上が組み合わされるか、または、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)を含む処理要素などのソフトウェア設定要素、および/または、他のハードウェア要素の組合せによって実装されてもよい。例えば、いくつかの要素は、1つ以上のマイクロプロセッサ、DSP、特定用途向け集積回路(ASIC)、および、本願明細書中に記載される機能を少なくとも実行するさまざまなハードウェアと論理回路との組合せを含んでよい。いくつかの実施形態では、時空間デコーダ200の機能要素は、1つ以上の処理要素に対して実行される1つ以上のプロセスを指してよい。
【0031】
図3は、本発明のいくつかの実施形態における、高ドップラーシフトのチャネルにおける信号のデコーディング手順を示すフローチャートである。手順300は、時空間デコーダ200(図1)などの時空間デコーダにより実行されてよいが、他のデコーダでも適応可能である。手順300は、高ドップラーシフトのチャネル内で信号をデコードするのに適用可能であるが、ドップラーシフトがほとんどないチャネルの信号をデコードするのにも適用できる。
【0032】
動作302では、チャネル係数(h,h)が計算される。いくつかの実施形態では、チャネル係数推定器202(図1)が送信機102(図1)などの送信機から受信されたトレーニング信号に基づき、1つ以上の組のチャネル係数を計算してよい。
【0033】
動作304では、チャネル係数に基づきチャネル変化率(δ,δ)が計算される。いくつかの実施形態では、チャネル係数推定器202(図2)は、動作302において生成されたチャネル係数に基づきチャネル変更率を計算してよい。
【0034】
動作306では、初期軟シンボル出力(v,v)が生成される。いくつかの実施形態では、コンバイナ206(図2)は、受信されたシンボル(r,r)、チャネル変化率(δ,δ)、および、チャネル係数(h,h)に基づき、初期軟シンボル出力v,vを生成してよい。いくつかの実施形態では、初期軟シンボル出力v,vは、上記方程式(7)に実質的に基づき生成されてよい。
【0035】
動作308では、初期硬シンボル出力(x,x)が生成される。いくつかの実施形態では、初期硬シンボル出力x,xは、動作306において生成された初期軟シンボル出力v,vに基づき、最尤検出器208(図2)によって生成されてよい。
【0036】
動作310では、修正軟シンボル出力(θ,θ)が生成される。いくつかの実施形態では、コレクタ210(図2)は、初期硬シンボル出力x,x、受信されたシンボルr,r、チャネル変化率δ,δ、および、チャネル係数h,hに基づき、修正軟シンボル出力θ,θを生成してよい。いくつかの実施形態では、修正軟シンボル出力θ,θは、上記方程式(8)に基づき生成されてよい。
【0037】
動作312では、修正硬シンボル出力(x,x)が生成される。いくつかの実施形態では、修正硬シンボル出力x,xは、動作310で生成された修正軟シンボル出力θ,θに基づき、最尤検出器208(図2)によって生成されてよい。
【0038】
動作314では、動作310および312が繰り返されることにより、修正硬シンボル出力(x,x)が生成されてよい。いくつかの実施形態では、動作314はオプションである。これらの実施形態では、修正硬シンボル出力x,xは、動作310および312を1回繰り返すことにより生成されてよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0039】
動作312または314が終了すると、送信機102(図1)によって符号化されたシンボルストリームに対応しうる出力シンボルストリームを生成する次なる処理を実行すべく、最終硬シンボル出力x,xが時空間デコーダ200(図2)により提供されてよい。出力シンボルストリームが変調レベルに基づき復調され、送信機102(図1)によって変調されたビットストリームに対応しうる出力ビットストリームが生成されてよい。
【0040】
手順300のそれぞれの動作は別々の動作として図示され、説明されているが、それぞれの動作の1つ以上は同時に実行されてよく、また、動作は図示されている順序で実行される必要はない。
【0041】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、送信機102および受信機106は、マルチキャリア通信チャネルを介してOFDM通信信号を伝達してよい。マルチキャリア通信チャネルは、予め決められた周波数スペクトル内にあってよく、複数の直交サブキャリアを有してよい。いくつかの実施形態では、マルチキャリア信号は、密集したOFDMサブキャリアによって定められてよい。いくつかの実施形態では、送信機102および受信機106は、直交周波数分割多元接続(OFDMA)などの多元接続技術に従い通信してよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。いくつかの実施形態では、送信機102および受信機106は、スペクトラム拡散信号を用いて通信してよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態では、送信機102および/または受信機106は、WiFi通信ステーション、アクセスポイント(AP)、または、モバイルステーション(MS)を含む無線LAN(WLAN)通信ステーションなどの通信ステーションの一部であってよい。いくつかの実施形態では、送信機102および/または受信機106は、WiMax(Worldwide Interoperability for Microwave Access)通信ステーションなどのBWA(broadband wireless access)ネットワーク通信ステーションの一部であってよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0043】
いくつかの実施形態では、送信機102および/または受信機106は、無線通信能力を備えたPDA(パーソナル携帯情報機器)、ラップトップ、または、ポータブルコンピュータ、ウェブタブレット、無線電話、無線ヘッドセット、ポケベル、インスタントメッセージングデバイス、デジタルカメラ、アクセスポイント、テレビ、医療機器(心拍数計、血圧計など)、または、情報を無線で受信および/または送信できる他のデバイスの一部であってよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、送信機102および受信機106によって用いられる通信信号の周波数スペクトルは、5ギガヘルツ(GHz)周波数スペクトル、または、2.4GHz周波数スペクトルを含んでよい。これらの実施形態では、5ギガヘルツ(GHz)周波数スペクトルは、約4.9から5.9GHzの範囲の周波数を含んでよく、2.4GHz周波数スペクトルは、約2.3から2.5GHzの範囲の周波数を含んでよいが、本発明の範囲はこれらに限定されず、他の周波数スペクトルも同様に適用可能である。BWAネットワークのいくつかの実施形態では、通信信号の周波数スペクトルは、2から11GHzの周波数を含んでよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態では、送信機102および受信機106は、IEEE 802.11(a)、802.11(b)、802.11(g)、802.1l(h)および/または802.1l(n)規格を含むIEEE(米国電気電子学会)規格などの特定の通信規格、および、または、無線LAN用に提案された仕様に従い通信してよいが、本発明の範囲はこれらに限定されず、他の技術および規格に従い送信および/または受信を実行するのにも適用しうる。BWAネットワークのいくつかの実施形態では、送信機102および受信機106は、さまざまに進化したWMAN(無線メトロポリタンネットワーク)のIEEE 802.16−2004およびIEEE 802.16(e)規格に従い通信してよいが、本発明の範囲はこれらに限定されず、他の技術または規格に従い送信および/または受信を実行するのにも適用しうる。IEEE802.11およびIEEE802.16規格に関するさらなる情報は、「情報技術のためのIEEE規格−システム間の電気通信および情報交換−ローカルエリアネットワーク−特定要件−パート11、「無線LAN媒体アクセスコントロール(MAC)および物理層(PHY)、ISO/IEC8802−11:1999年」、および、メトロポリタンエリアネットワーク−特定要件−パート16「Air Interface for Fixed Broadband Wireless Access Systems」2005年5月、および関連の改訂版を参照されたい。いくつかの実施形態は、データの優先順位付け、音声および動画像通信を含むサービス品質(QoS)機能を備えたIEEE802.11WLAN仕様の強化を意図したIEEE802.11eに関連する。
【0046】
送信アンテナ112および受信アンテナ116は、例えば、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、パッチアンテナ、ループアンテナ、マイクロストリップアンテナ、または、RF信号の送信に適した他のタイプのアンテナ含む、1つ以上の指向性または全方向性アンテナを含んでよい。MIMO(Multiple Input Multiple Output)のいくつかの実施形態では、2つ以上のアンテナが用いられてよい。いくつかの実施形態では、2つ以上のアンテナに代わり、複数の開口を有する単一のアンテナが用いられてよい。これらの実施形態では、各開口は、別々のアンテナと考えられてよい。
【0047】
いくつかの他の実施形態では、送信機102および受信機106は、GSM(Global System for Mobile Communications)と称される汎欧州移動システム規格などの規格に従い、通信してよい。送信機102および受信機106は、GPRS(General Packet Radio Service)パケットデータ通信サービスなどのパケット無線通信サービスに従い動作してもよい。いくつかの実施形態では、送信機102および受信機106は、例えば、3GPPのLTE(ロングタームエボリューション)を含む、2.5Gおよび3G無線規格(3GPP技術仕様、バージョン3.2.0、2000年3月を参照されたい)に従う通信技術を実装しうる次世代GSM用のUMTS(Universal Mobile Telephone System)に従い通信してよい。これらの実施形態のいくつかでは、送信機102および受信機106は、パケットデータプロトコル(PDP)を利用したパケットデータサービス(PDS)を提供してよい。いくつかの実施形態では、送信機102および受信機106は、他の規格、または、EDGE(enhanced data for GSM evolution)規格(3GPP技術仕様、バージョン3.2.0、2000年3月を参照されたい)と互換性のあるインターフェースを含む他のエアインターフェースに従い通信してよいが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0048】
特に明記しない限り、処理、計算、算出、決定、表示などの用語は、処理システムのレジスタおよびメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを処理し、処理システムのレジスタまたはメモリ内の物理量として同様に表される他のデータに変換しうる1つ以上の処理またはコンピューティングシステム、または、同様のデバイス、あるいは、他のこのような情報記憶、伝送またはディスプレイデバイスの動作および/またはプロセスのことを指してよい。さらに、本願明細書中で用いられるようなコンピューティングデバイスは、揮発または不揮発性メモリ、あるいは、それらの組合せでありうるコンピュータ可読メモリに結合された1つ以上の演算処理部を有する。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、および、ソフトウェアの1つまたはそれらの組合せに実装されてよい。本発明の実施形態は、本願明細書中に記載される動作を実行する少なくとも1つのプロセッサにより読み出されて実行されうる機械可読媒体に格納される命令として実装されてもよい。機械可読媒体は、機械(例えばコンピュータ)によって読み取られることができる形態で情報を格納または伝送するいかなるメカニズムを有してよい。例えば、機械可読媒体は、ROM(リードオリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ素子、電気、光、音波、または、他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、およびその他を含みうる。
【0050】
要約書は、米国特許施行規則1.72(b)に則り、技術的開示の性質および要旨を読者が確認できるようにしている。要約書は、本発明の範囲および趣旨を限定または解釈されるために用いられるのではないという理解のもとに提出される。以下の請求項は、本願明細書中における詳細な説明に組み込まれ、それぞれの請求項は、独立した好適な実施形態として個々に成り立っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信されたシンボル、チャネル変化率、および、チャネル係数に基づき、軟シンボル出力を生成するコンバイナと、
最尤デコーディングを実行し、前記軟シンボル出力に基づく硬シンボル出力を生成する最尤検出器と、
を備える時空間デコーダ。
【請求項2】
前記硬シンボル出力は、初期硬シンボル出力であり、
前記デコーダは、前記初期硬シンボル出力、前記受信されたシンボル、前記チャネル変化率、および、前記チャネル係数に基づき、修正軟シンボル出力を生成するコレクタをさらに有し、
前記最尤検出器は、前記修正軟シンボル出力に対して最尤デコーディングを実行することにより、最終硬シンボル出力を生成する、
請求項1に記載のデコーダ。
【請求項3】
前記受信されたシンボルは、2つの送信アンテナによって送信されたAlamouti符号化シンボルを含み、
前記コンバイナおよび前記コレクタは、前記チャネル変化率を適用することにより、高ドップラーシフトによって生じるチャネル内の歪みを少なくとも一部補償し、
前記最尤検出器により生成される前記最終硬シンボル出力は、前記送信されたAlamouti符号化シンボルの推定値である、請求項2に記載のデコーダ。
【請求項4】
送信機と受信機との間で2つ以上のチャネルを介し送信されるトレーニング信号に基づき、前記チャネル係数を計算するチャネル係数推定器をさらに備え、
前記チャネル係数推定器は、前記チャネル係数の2つ以上の組に基づき、前記チャネル変化率をさらに計算する、請求項1に記載のデコーダ。
【請求項5】
前記最終硬シンボル出力を生成する前に、前記コレクタによる前記修正軟シンボル出力の生成と、前記最尤検出器による暫定硬シンボル出力の生成とが反復的に行われる、請求項2に記載のデコーダ。
【請求項6】
前記コレクタおよび前記最尤検出器が反復的に暫定硬シンボル出力を生成した場合、
前記最尤検出器の入力を前記コンバイナの出力から前記コレクタの出力に切り替え、
前記最尤検出器の出力を前記コレクタの入力に切り替えるスイッチング回路をさらに備える、請求項5に記載のデコーダ。
【請求項7】
前記受信されたシンボルは、不均一な受信シンボルを含む、請求項3に記載のデコーダ。
【請求項8】
前記チャネル変化率は、送信機と受信機との間における第1のチャネルのチャネル変化率と、前記送信機と前記受信機との間における第2のチャネルのチャネル変化率とを含み、
前記チャネル係数は、前記第1のチャネルのチャネル係数と、前記第2のチャネルのチャネル係数とを含み、
前記受信されたシンボルは、第1および第2の連続して受信されたシンボルを含み、
前記コンバイナは、1に前記第1のチャネルの前記チャネル変化率の複素共役を加算した値に、前記第1のチャネルの前記チャネル係数の複素共役と、第1の受信された信号とを乗算した値に基づき、第1の軟シンボル出力を生成する、請求項2に記載のデコーダ。
【請求項9】
前記コンバイナは、1に前記第2のチャネルの前記チャネル変化率の複素共役を加算した値に、前記第2のチャネルの前記チャネル係数の複素共役と、前記第1の受信された信号とを乗算した値に基づき、第2の軟シンボル出力を生成する、請求項8に記載のデコーダ。
【請求項10】
前記受信されたシンボルは、直交周波数分割多重(OFDM)方式による周波数領域信号であり、受信された時間領域信号に対してフーリエ変換を実行することにより生成される、請求項2に記載のデコーダ。
【請求項11】
受信されたシンボルをデコードする方法であって、
受信されたシンボル、チャネル変化率、および、チャネル係数に基づき、軟シンボル出力を生成する段階と、
最尤デコーディングを実行し、前記軟シンボル出力に基づく硬シンボル出力を生成する段階と、
を備える方法。
【請求項12】
前記硬シンボル出力は、初期硬シンボル出力であり、
前記方法は、
前記初期硬シンボル出力、前記受信されたシンボル、前記チャネル変化率、および、前記チャネル係数に基づき、修正軟シンボル出力を生成する段階と、
前記修正軟シンボル出力に対して最尤デコーディングを実行することにより、最終硬シンボル出力を生成する段階と、
をさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記受信されたシンボルは、2つの送信アンテナによって送信されたAlamouti符号化シンボルを含み、
前記方法は、
前記チャネル変化率を適用することにより、高ドップラーシフトによって生じるチャネル内の歪みを少なくとも一部補償する段階をさらに備え、
前記最終硬シンボル出力は、前記送信されたAlamouti符号化シンボルの推定値を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
送信機と受信機との間で2つ以上のチャネルを介し送信されるトレーニング信号に基づき、前記チャネル係数を計算する段階と、
前記チャネル係数の2つ以上の組に基づき、前記チャネル変化率を計算する段階と、をさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記最終硬シンボル出力を生成する段階の前に、前記修正軟シンボル出力と暫定硬シンボル出力とを反復的に生成する段階をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記軟シンボル出力はコンバイナによって生成され、前記暫定硬シンボル出力および前記最終硬シンボル出力は最尤検出器によって生成され、前記修正軟シンボル出力はコレクタによって生成され、
前記方法は、
前記最尤検出器の入力を前記コンバイナの出力から前記コレクタの出力に切り替える段階と、
前記コレクタおよび前記最尤検出器が反復的に前記暫定硬シンボル出力を生成した場合、前記最尤検出器の出力を前記コレクタの入力に切り替える段階と、
をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記受信されたシンボルは、不均一な受信シンボルである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記受信されたシンボルは、直交周波数分割多重(OFDM)方式による周波数領域信号であり、受信された時間領域信号に対してフーリエ変換を実行することにより生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
コンバイナおよび最尤検出器を有する時空間デコーダと、
受信されたシンボルを含む信号を受信する略全方向性アンテナと、
を備え、
前記コンバイナは、前記受信されたシンボル、チャネル変化率、および、チャネル係数に基づき、軟シンボル出力を生成し、
前記最尤検出器は、最尤デコーディングを実行して、前記軟シンボル出力に基づく硬シンボル出力を生成する、
受信機。
【請求項20】
前記硬シンボル出力は、初期硬シンボル出力であり、
前記時空間デコーダは、前記初期硬シンボル出力、前記受信されたシンボル、前記チャネル変化率、および、前記チャネル係数に基づき、修正軟シンボル出力を生成するコレクタをさらに有し、
前記最尤検出器は、前記修正軟シンボル出力に対して最尤デコーディングを実行することにより、最終硬シンボル出力を生成する、
請求項19に記載の受信機。
【請求項21】
前記受信されたシンボルは、2つの送信アンテナによって送信されたAlamouti符号化シンボルを含み、
前記コンバイナおよび前記コレクタは、前記チャネル変化率を適用することにより、高ドップラーシフトによって生じるチャネル内の歪みを少なくとも一部補償し、
前記最尤検出器により生成される前記最終硬シンボル出力は、前記送信されたAlamouti符号化シンボルの推定値である、請求項20に記載の受信機。
【請求項22】
送信機と前記受信機との間で2つ以上のチャネルを介し送信されるトレーニング信号に基づき、前記チャネル係数を計算するチャネル係数推定器をさらに備え、
前記チャネル係数推定器は、前記チャネル係数の2つ以上の組に基づき、前記チャネル変化率をさらに計算する、請求項19に記載の受信機。
【請求項23】
前記最終硬シンボル出力を生成する前に、前記コレクタによる前記修正軟シンボル出力の生成と、前記最尤検出器による暫定硬シンボル出力の生成とが反復的に行われる、請求項20に記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−509836(P2010−509836A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536190(P2009−536190)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/RU2006/000600
【国際公開番号】WO2008/060177
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】