説明

高分子化合物及びそれを用いた有機トランジスタ

【課題】電界効果移動度が高い有機トランジスタ作製に有用な高分子化合物を提供する。
【解決手段】式(1−1)〜式(1−3)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、アリーレン基または2価の芳香族複素環基からなる構造単位とを含む高分子化合物とする。


式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。Rは、炭素数が2以上のアルキル基を表す。Eは、−O−、−S−、−Se−または−N(R)−を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。環Aは、芳香環または複素環を表す。nは0以上の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物及びそれを用いた有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を利用した有機トランジスタは、従来の無機半導体材料を利用したトランジスタと比較して、デバイスの軽量化や、製造コストの低下、低温で製造できることが期待されるため、盛んに研究開発が行われている。
【0003】
有機トランジスタの性能の一つである電界効果移動度は、活性層に含まれる有機半導体材料の電界効果移動度に大きく依存するため、様々な有機半導体材料を有機トランジスタの活性層に用いることが検討されている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、有機トランジスタに用いる有機半導体材料として、アルコキシチオフェンを構造単位として有する、下記高分子化合物が提案されている。
【0005】
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chemistry of Materials、2011年、23巻、2185項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記高分子化合物を用いた有機トランジスタは、電界効果移動度が十分高くはなかった。
【0008】
本発明の目的は、電界効果移動度が十分高い高分子化合物およびそれを用いた有機トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(1−1)で表される構造単位、式(1−2)で表される構造単位および式(1−3)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、式(2)で表される構造単位とを含む高分子化合物を提供する。
【化2】

[式中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
は、炭素数が2以上のアルキル基を表す。
Eは、−O−、−S−、−Se−または−N(R)−を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。
環Aは、芳香環または複素環を表す。
は0以上の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。]
【化3】

[式中、
Arは、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の芳香族複素環基を表す(式(1−1)で表される構造単位、式(1−2)で表される構造単位および式(1−3)で表される構造単位とは異なる)。複数存在するArは、同一であっても異なっていてもよい。
は3〜10の整数を表す。]
【0010】
また、本発明は、前記高分子化合物を含む有機半導体材料を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記有機半導体材料を含む有機層を有する、有機半導体素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電界効果移動度が十分に高い高分子化合物を提供することができる。また、本発明の高分子化合物を活性層に含み、電界効果移動度が十分に高い有機トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の有機トランジスタの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【図9】本発明の有機トランジスタの他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照することにより、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
<式(1−1)で表される構造単位>
前記式(1−1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環またはハロゲン原子を表す。
【0016】
前記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルキル基の炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基のいずれでもよく、シクロアルキル基であってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,7,11−トリメチルドデシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルドデシル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアルキル基の具体例としては、メトキシエチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
前記アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルコキシ基の炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。アルコキシ基は、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基のいずれでもよく、シクロアルコキシ基であってもよい。
アルコキシ基の具体例としては、n−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0018】
前記アルキルチオ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルキルチオ基の炭素数は、通常1〜60であり、1〜20であることが好ましい。アルキルチオ基は、直鎖アルキルチオ基、分岐アルキルチオ基のいずれでもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。
アルキルチオ基の具体例としては、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、n−ドデシルチオ基等が挙げられる。
アルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0019】
前記アリール基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素化合物から芳香環に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を有する基、縮合環を有する基、独立した芳香環および縮合環から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。
芳香族炭化水素化合物の置換基を除いたアリール基の炭素数は、通常6〜60であり、6〜20であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、4−フェニルフェニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素化合物が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの基を含むアリール基としては、4−ヘキシルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。芳香族炭化水素化合物が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0020】
前記1価の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、芳香環または複素環に直接結合する水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環を有する基、独立した複素芳香族環および縮合環から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。
複素環式化合物の置換基を除いた1価の芳香族複素環基が有する炭素数は、通常2〜60であり、3〜20であることが好ましい。
1価の芳香族複素環基としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基等が挙げられる。
複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの基を含む1価の芳香族複素環基としては、5−オクチル−2−チエニル基、5−フェニル−2−フリル基等が挙げられる。複素環式化合物が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0021】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、前記Rは、水素原子、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、水素原子、アルコキシ基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0023】
前記Rは、置換基を有していてもよい炭素数が2以上のアルキル基を表す。
で表される、置換基を除いたアルキル基の炭素数は、通常2〜60であり、2〜24であることが好ましい。Rで表されるアルキル基としては、直鎖アルキル基、分岐アルキル基のいずれでもよく、シクロアルキル基であってもよい。
で表されるアルキル基の具体例としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,7,11−トリメチルドデシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルドデシル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有しているアルキル基の具体例としては、メトキシエチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
印刷法により有機半導体素子の作成を行うために溶解性を高める観点から、前記Rは、炭素数が8以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数が12以上のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が16以上のアルキル基であることがさらに好ましい。
また、印刷法により有機半導体素子の作製を行うために溶解性を高める観点から、Rは、分岐アルキル基であることが好ましい。
【0025】
前記Eは、−O−、−S−、−Se−又は−N(R)−を表す。
【0026】
前記Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。アルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義の定義および具体例と同様である。
【0027】
合成の容易さの観点から、前記Eは、−S−であることが好ましい。
【0028】
前記式(1−1)で表される構造単位の具体例としては、式(1−1−1)〜式(1−1−11)で表される構造単位が挙げられる。印刷法により有機半導体素子の作成を行うために溶解性を高める観点から、式(1−1)で表される構造単位は、式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−1−4)〜式(1−1−11)であることが好ましく、式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−1−5)〜式(1−1−9)、式(1−1−11)であることがより好ましい。また、合成の容易さの観点からは、式(1−1)で表される構造単位は、式(1−1−1)〜式(1−1−6)であることが好ましい。
【化4】

【0029】
<式(1−2)で表される構造単位>
前記式(1−2)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子の定義、具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子の定義、具体例と同様である。
【0030】
前記nは0以上の整数を表す。
【0031】
前記式(1−2)中、Rは、炭素数が2以上のアルキル基を表す。炭素数が2以上のアルキル基の定義、具体例および好ましい例は、前記式(1−1)におけるRで表される炭素数が2以上のアルキル基の定義、具体例および好ましい例と同様である。
【0032】
前記式(1−2)中、Eは、−O−、−S−、−Se−又は−N(R)−を表す。
は、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。アルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義および具体例と同様である。
Eの好ましい例は、前記式(1−1)におけるEの好ましい例と同様である。
【0033】
前記環Aは、芳香環または複素環を表す。環Aは、前記Eを含む5員環と縮合するものである。
【0034】
前記環Aで表される芳香環が有する炭素数は、通常6〜60であり、6〜20であることが好ましく、また、前記環Aで表される複素環が有する炭素数は、通常2〜60であり、3〜20であることが好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ペンタセン環等が挙げられ、複素環としては、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、ピロール環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環等が挙げられる。本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、環Aとしては、複素環が好ましく、チオフェン環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環がより好ましい。
【0035】
前記式(1−2)で表される構造単位の具体例としては、式(1−2−1)〜式(1−2−9)で表される構造単位が挙げられる。本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、式(1−2)で表される構造単位としては、式(1−2−1)〜式(1−2−3)が好ましく、式(1−2−1)がより好ましい。
【化5】

【0036】
<式(1−3)で表される構造単位>
前記式(1−3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例と同様である。
【0037】
前記nは1〜3の整数を表す。
【0038】
前記式(1−3)中、Eは、−O−、−S−、−Se−又は−N(R)−を表す。
は、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。アルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義および具体例と同様である。
Eの好ましい例は、前記式(1−1)におけるEの好ましい例と同様である。
【0039】
前記式(1−3)で表される構造単位の具体例としては、式(1−3−1)〜式(1−3−6)で表される構造単位が挙げられる。印刷法により有機半導体素子の作成を行うために溶解性を高める観点から、式(1−3)で表される構造単位は、式(1−3−2)、式(1−3−3)であることが好ましく、式(1−3−2)であることがより好ましい。また、合成の容易さの観点からは、式(1−3)で表される構造単位は、式(1−3−1)〜式(1−3−4)であることが好ましい。
【0040】
【化6】

【0041】
<式(1−A)、式(1−B)および式(1−C)で表される構造単位>
前記式(1−1)で表される構造単位は、2個連結した、式(1−A)、式(1−B)または式(1−C)で表される構造単位として、高分子化合物に含まれることが好ましい。
【化7】

[式中、
、RおよびEは、それぞれ独立に、前記と同じ意味を表す。]
【0042】
前記式(1−A)〜前記式(1−C)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子の定義および具体例と同様である。
【0043】
前記式(1−A)〜前記式(1−C)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数が2以上のアルキル基を表す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。炭素数が2以上のアルキル基の定義、具体例および好ましい例は、前記式(1−1)におけるRで表される炭素数が2以上のアルキル基の定義、具体例および好ましい例と同様である。
【0044】
前記式(1−A)〜前記式(1−C)中、Eは、それぞれ独立に、−O−、−S−、−Se−又は−N(R)−を表す。複数存在するEは、同一であっても異なっていてもよい。
は、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。アルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アリール基および1価の芳香族複素環基の定義および具体例と同様である。
Eの好ましい例は、前記式(1−1)におけるEの好ましい例と同様である。
【0045】
前記式(1−A)で表される構造単位の具体例としては、式(1−A−1)〜式(1−A−8)で表される構造単位が挙げられる。合成の容易さの観点からは、式(1−A)で表される構造単位は、式(1−A−1)〜式(1−A−3)であることが好ましい。
【化8】

【0046】
前記式(1−B)で表される構造単位の具体例としては、式(1−B−1)〜式(1−B−8)で表される構造単位が挙げられる。合成の容易さの観点からは、式(1−B)で表される構造単位は、式(1−B−1)〜式(1−B−3)であることが好ましい。
【化9】

【0047】
前記式(1−C)で表される構造単位の具体例としては、式(1−C−1)〜式(1−C−8)で表される構造単位が挙げられる。合成の容易さの観点からは、式(1−C)で表される構造単位は、式(1−C−1)〜式(1−C−3)であることが好ましい。
【化10】

【0048】
<式(2)で表される構造単位>
前記式(2)中、Arは、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の芳香族複素環基を表す。複数存在するArは同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
前記式(2)中、mは3〜10の整数を表し、合成の容易さの観点から、mは3〜7の整数であることが好ましく、3〜5の整数であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
【0050】
前記アリーレン基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素化合物から芳香環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた原子団であり、縮合環を有する基を含む。なお、独立した2価の基である芳香環および縮合環から選ばれる2個以上が直接結合した基は該アリーレン基には含まれない。
該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基およびハロゲン原子の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基およびハロゲン原子の定義および具体例と同様である。置換基を含まないアリーレン基の炭素数は、通常6〜60であり、6〜20であることが好ましい。
【0051】
前記アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、テトラセンジイル基、ピレンジイル基、ペンタセンジイル基、ペリレンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。
【0052】
前記2価の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、芳香環または複素環に直接結合する水素原子2個を除いた原子団であり、縮合環を有する基を含む。なお、独立した2価の基である複素芳香族環および縮合環から選ばれる2個以上が直接結合した基は該2価の芳香族複素環には含まれない。
複素環式化合物の置換基を除いた2価の芳香族複素環基が有する炭素数は、通常2〜60であり、3〜20であることが好ましい。
該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基およびハロゲン原子が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基およびハロゲン原子の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基およびハロゲン原子の定義および具体例と同じである。
【0053】
前記Arの少なくとも1つは、本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、
電子吸引性置換基および/またはカルボニル基を有するアリーレン基、
電子吸引性置換基および/またはsp窒素原子および/またはカルボニル基を有する2価の芳香族複素環基であることが好ましく、
電子吸引性置換基および/またはsp窒素原子および/またはカルボニル基を有する2価の芳香族複素環基であることがより好ましく、
電子吸引性置換基および/またはsp窒素原子およびカルボニル基を有する2価の芳香族複素環基であることがさらに好ましい。
【0054】
前記電子吸引性置換基は、ハメットのσ値が正である置換基を表す。置換基のハメットのσ値は、例えば、ケミカル レビュー(Chemical Review)、1991年、第91巻、p.165−195に記載されている。置換基のハメットのσ値は、計算で求めてもよい。計算で求める場合は、ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー エー(Journal of Physical Chemistry A)、1997年、第101巻、p.5593−5595に記載の方法で化合物の酸解離平衡定数を算出し、置換基のハメットのσ値を求めることができる。
ハメットのσ値としては、0.01〜1.00の範囲であることが好ましく、具体的にはニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチルカルボニル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基、アセチル基、塩素原子、フッ素原子等が挙げられ、シアノ基、トリフルオロメチル基、塩素原子、フッ素原子が特に好ましい
【0055】
前記2価の芳香族複素環基としては、オキサジアゾールジイル基、チアジアゾールジイル基、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、セレノフェンジイル基、ピリジンジイル基、トリアジンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ベンゾピロールジイル基、ベンゾフランジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、チエノチオフェンジイル基、ベンゾジチオフェンジイル基、シクロペンタジチオフェンジイル基、および、式(Ar−1)〜式(Ar−14)で表される基等が挙げられる。2価の芳香族複素環基としては、本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、式(Ar−1)〜式(Ar−11)で表される基であることがさらに好ましく、式(Ar−1)、式(Ar−2)、式(Ar−3)、式(Ar−6)、式(Ar−7)で表される基であることが特に好ましく、式(Ar−6)で表される基であることが最も好ましい。
【化11】

[式中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Yは、それぞれ独立に、−S−、−O−または−Se−を表す。Yが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【0056】
本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、前記Rは、水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。
【0057】
本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、前記Rは、水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。
【0058】
前記Arの少なくとも1つは、本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、単環式のアリーレン基または単環式の2価の芳香族複素環基であることが好ましく、無置換のアリーレン基または無置換の2価の芳香族複素環基であることがより好ましく、無置換のフェニレン基または無置換のチオフェンジイル基であることが更に好ましい。
該単環式のアリーレン基または単環式の2価の芳香族複素環基は、前記式(Ar−1)〜前記式(Ar−11)で表される基と組み合わせることが、本発明の高分子化合物の電界移動度をより高める観点から、好ましい。
【0059】
式(2)で表される構造単位の具体例としては、式(2−1)〜式(2−25)で表される構造単位が挙げられる。本発明の高分子化合物の電界移動度をより高める観点から、式(2)で表される構造単位としては、式(2−1)〜式(2−6)、式(2−12)〜式(2−16)、式(2−23)〜式(2−25)が好ましく、式(2−1)、式(2−3)、式(2−5)、式(2−6)がより好ましい。
【化12】

【0060】
【化13】

【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
<他の構造単位>
本発明の高分子化合物は、前記式(1−1)で表される構造単位、前記式(1−2)で表される構造単位、前記式(1−3)で表される構造単位、前記式(1−A)で表される構造単位、前記式(1−B)で表される構造単位、前記式(1−C)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位以外の構造単位(以下、「他の構造単位」という場合がある。)を含んでいてもよい。他の構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0064】
前記他の構造単位としては、例えば、式−CR−で表される基、式−CR=CR−で表される基、式−C(=O)−で表される基等が挙げられる。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。RおよびRで表される、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基およびハロゲン原子の定義および具体例は、前記式(1−1)におけるRで表されるアルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基およびハロゲン原子の定義および具体例と同じである。
【0065】
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点からは、共役高分子化合物であることが好ましい。
【0066】
本発明の高分子化合物は、前記式(1−1)で表される構造単位、前記式(1−2)で表される構造単位および前記式(1−3)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、前記式(2)で表される構造単位と、他の構造単位からなる高分子化合物であるが、
高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、式(1−1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、他の構造単位からなる高分子化合物であることが好ましく、
前記式(1−A)で表される構造単位、前記式(1−B)で表される構造単位および前記式(1−C)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、式(2)で表される構造単位と、他の構造単位からなる高分子化合物であることがより好ましい。
【0067】
本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、
高分子化合物が有する構造単位の合計に対する、前記式(1−1)で表される構造単位、前記式(1−2)で表される構造単位、前記式(1−3)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位の合計の割合が、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0068】
本発明の高分子化合物の電界効果移動度をより高める観点から、
前記式(1−1)で表される構造単位、前記式(1−2)で表される構造単位または前記式(1−3)で表される構造単位と、前記式(2)で表される構造単位との共重合体であることが好ましく、
式(1−1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位との共重合体であることがより好ましく、
前記式(1−A)で表される構造単位、前記式(1−B)で表される構造単位および前記式(1−C)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、式(2)で表される構造単位との共重合体であることがさらに好ましい。
【0069】
本発明の高分子化合物の好ましい具体例としては、
前記式(1−A)で表される構造単位、前記式(1−B)で表される構造単位または前記式(1−C)で表される構造単位と、前記式(2)で表される構造単位との共重合体である、式(3−1)〜式(3−32)で表される高分子化合物が挙げられ、
前記式(1−1)で表される構造単位、前記式(1−2)で表される構造単位または前記式(1−3)で表される構造単位と、前記式(2)で表される構造単位との共重合体である、式(3−33)〜式(3−38)で表される高分子化合物が挙げられる。
【表1】

【0070】
<高分子化合物の製造方法>
次に、本発明の高分子化合物の製造方法を説明する。
本発明の高分子化合物は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、式:X11−A11−X12で表される化合物と、式:X13−A12−X14で表される化合物とを、必要に応じて有機溶媒に溶解し、必要に応じて塩基を加え、適切な触媒を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法により合成することができる。
【0071】
前記式中、A11は、前記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−A)、(1−B)または(1−C)で表される構造単位を示し、A12は、前記式(2)で表される構造単位を示す。前記式中、X11、X12、X13およびX14は、それぞれ独立に、重合反応性基を表す。
【0072】
前記重合反応性基としては、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、3つのアルキル基で置換されたスタンニル基等が挙げられる。
【0073】
前記重合反応性基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0074】
前記重合反応性基であるホウ酸エステル残基としては、下記式で示される基が挙げられる。
【化16】

【0075】
前記重合反応性基である3つのアルキル基で置換されたスタンニル基としては、3つのメチル基で置換されたスタンニル基、3つのブチル基で置換されたスタンニル基が挙げられる。
【0076】
前記アリールカップリング等の重合方法としては、Suzukiカップリング反応により重合する方法(Chemical Review、1995年、第95巻、2457−2483項)、Stilleカップリング反応により重合する方法(European Polymer Journal、2005年、第41巻、2923−2933項)等が挙げられる。
【0077】
前記重合反応性基は、Suzukiカップリング反応等のニッケル触媒またはパラジウム触媒を用いる場合には、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基等である。重合反応の簡便さの観点からは、臭素原子、ヨウ素原子、ホウ酸エステル残基が好ましい。
本発明の高分子化合物をSuzukiカップリング反応により重合する場合は、前記重合反応性基である、臭素原子、ヨウ素原子の合計モル数とホウ酸エステル残基の合計モル数との比率が0.7〜1.3とすることが好ましく、0.8〜1.2とすることがより好ましい。
【0078】
前記重合反応性基は、Stilleカップリング反応等のパラジウム触媒を用いる場合には、ハロゲン原子、3つのアルキル基で置換されたスタンニル基等である。重合反応の簡便さの観点からは、臭素原子、ヨウ素原子、3つのアルキル基で置換されたスタンニル基が好ましい。
本発明の高分子化合物をStilleカップリング反応により重合する場合は、前記重合反応性基である、臭素原子、ヨウ素原子の合計モル数と3つのアルキル基で置換されたスタンニル基の合計モル数との比率が0.7〜1.3とすることが好ましく、0.8〜1.2とすることがより好ましい。
【0079】
前記重合に用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0080】
前記重合に用いられる塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。
【0081】
前記重合に用いられる触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、パラジウムアセテート、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム等のパラジウム錯体等の遷移金属錯体と、必要に応じて、トリフェニルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の配位子とからなる触媒である。これらの触媒は、予め合成したものを用いてもよいし、反応系中で調製したものをそのまま用いてもよい。また、これらの触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0082】
前記重合の反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは0〜150℃であり、更に好ましくは0〜120℃である。
【0083】
前記重合の反応時間は、通常、1時間以上であり、好ましくは2〜500時間である。
【0084】
前記重合の後処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、メタノール等の低級アルコールに前記重合で得られた反応液を加えて析出させた沈殿を濾過、乾燥させる方法で行うことができる。
【0085】
本発明の高分子化合物の純度が低い場合には、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の方法にて精製すればよい。
【0086】
本発明の高分子化合物は、分子鎖末端に重合反応に活性である基が残っていると、該高分子化合物の電界効果移動度が低下する可能性がある。そのため、分子鎖末端は、アリール基、1価の芳香族複素環基等の安定な基であることが好ましい。
【0087】
本発明の高分子化合物は、いかなる種類の共重合体であってもよく、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0088】
本発明の高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、1×10〜1×10である。薄膜作製時に良好な薄膜を形成する観点から、数平均分子量は2×10以上が好ましい。溶媒への溶解性を高め、薄膜作製を容易にする観点から、数平均分子量は1×10以下であることが好ましい。
【0089】
<有機半導体素子>
本発明の高分子化合物は、電界効果移動度が高いことから、有機半導体材料として、例えば、有機半導体素子の有機層に含ませて用いることができる。有機半導体素子としては、有機トランジスタ、有機太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス素子等が挙げられる。本発明の高分子化合物は、中でも、有機トランジスタの電荷輸送材料として特に有用である。
【0090】
<有機半導体材料>
有機半導体材料は、本発明の高分子化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。また、有機半導体材料は、本発明の高分子化合物に加え、電界効果移動度を有する低分子化合物又は高分子化合物を更に含んでいてもよい。有機半導体材料が、本発明の高分子化合物以外の成分を含む場合は、本発明の高分子化合物を30重量%以上含むことが好ましく、50重量%以上含むことがより好ましい。本発明の高分子化合物の含有量が30重量%未満である場合、薄膜化が困難となる場合がある。
【0091】
電界効果移動度を有する化合物としては、
アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、オキサジアゾール誘導体、フラーレン類およびその誘導体等の低分子化合物、
ポリ(N−ビニルカルバゾール)およびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体等の高分子化合物が例示できる。
【0092】
有機半導体材料は、高分子化合物材料を高分子バインダーとして含有していてもよい。該高分子バインダーの例としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0093】
<有機トランジスタ>
有機トランジスタとしては、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられる。このような構成を有する有機トランジスタとしては、電界効果型有機トランジスタ、静電誘導型有機トランジスタ等が挙げられる。
【0094】
電界効果型有機トランジスタは、通常、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極と、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層とを有する有機トランジスタである。特に、ソース電極およびドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0095】
静電誘導型有機トランジスタは、通常、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となり、本発明の高分子化合物を含む活性層と、該電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを有し、該ゲート電極が活性層中に設けられている有機トランジスタである。特に、ソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極が、活性層に接して設けられている有機トランジスタが好ましい。
【0096】
ゲート電極は、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成でき、かつ、ゲート電極に印加した電圧で該電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし型電極が挙げられる。
【0097】
図1は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の一例を示す模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0098】
図2は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2およびドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の領域上の絶縁層3を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0099】
図3は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6の一部を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2とを備えるものである。
【0100】
図4は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域の一部を覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5の一部を覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0101】
図5は、本発明の有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一であっても異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0102】
図6は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6の一部を覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4とを備えるものである。
【0103】
図7は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、活性層2の一部を覆うように活性層2上に形成されたソース電極5と、活性層2の一部を覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6とを備えるものである。
【0104】
図8は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図8に示す有機トランジスタ170は、ゲート電極4と、ゲート電極4上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、を備えるものである。この場合、ゲート電極4は基板1を兼ねる構成となっている。
【0105】
図9は、本発明の有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の他の例を示す模式断面図である。図9に示す有機トランジスタ180は、ゲート電極4と、ゲート電極4上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6の一部を覆うように絶縁層3上に形成された活性層2とを備えるものである。
【0106】
上述した本発明の有機トランジスタにおいては、活性層2および/または活性層2aは、本発明の高分子化合物を含有する膜によって構成され、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0107】
このような電界効果型有機トランジスタは、公知の方法、例えば特開平5−110069号公報記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタは、特開2004−006476号公報に記載の方法等の公知の方法により製造することができる。
【0108】
前記基板1の材料は、有機トランジスタの特性を阻害しない材料であればよい。基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板を用いることができる。
【0109】
前記絶縁層3の材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、SiOx、SiNx、Ta25、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジスト等を用いることができるが、低電圧化の観点からは、誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0110】
前記絶縁層3の上に前記活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3の表面を処理して表面改質した後に活性層2を形成することも可能である。
【0111】
有機電界効果トランジスタの場合、電子やホール等の電荷は、一般に絶縁層と活性層の界面付近を通過する。従って、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が提案されている(例えば、表面化学、2007年、第28巻、第5号、242項−248項)。
【0112】
前記シランカップリング剤の例としては、アルキルクロロシラン類(オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等)、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前に、絶縁層表面をオゾンUV処理、Oプラズマ処理してもよい。このような処理によって、絶縁層として用いられるシリコン酸化膜等の表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、活性層を構成している膜の絶縁層上での配向性が向上し、高い電荷輸送性(移動度)が得られる。
【0113】
前記ゲート電極4には、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。これらの材料は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、ゲート電極4としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性能とともに、基板としての性能も併有する。このような基板としての性能も有するゲート電極4を用いる場合には、前記基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。
【0114】
前記ソース電極5および前記ドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成されることが好ましく、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン等から構成されることが特に好ましい。これらの材料は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0115】
前記有機トランジスタにおいて、前記ソース電極5および前記ドレイン電極6と、前記活性層2との間には、更に他の化合物から構成された層が介在していてもよい。このような層としては、電子輸送性を有する低分子化合物、ホール輸送性を有する低分子化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、これらの金属と有機化合物との錯体、ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン、硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物、硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物、過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物、アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0116】
また、上述したような有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、その形成工程における有機トランジスタへの影響も該保護膜により低減することができる。
【0117】
前記保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等で覆う方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、有機トランジスタを大気にさらすことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)保護膜を形成することが好ましい。
【0118】
このように構成された有機トランジスタの一種である電界効果型有機トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子等として適用できる。そして、上述した実施形態の有機電界効果トランジスタは、活性層として、本発明の高分子化合物を含有し、そのことにより電荷輸送性が向上した活性層とを備えているため、その電界効果移動度が高いものとなる。したがって、十分な応答速度を持つディスプレイの製造等に有用である。
【実施例】
【0119】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0120】
<NMR分析>
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0121】
<分子量分析>
高分子化合物の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、Waters社製、商品名:Alliance GPC 2000)を用いて求めた。測定する高分子化合物は、オルトジクロロベンゼンに溶解させ、GPCに注入した。GPCの移動相にはオルトジクロロベンゼンを用いた。カラムは、TSKgel GMHHR−H(S)HT(2本連結、東ソー製)を用いた。検出器にはUV検出器を用いた。
【0122】
<合成例1:3−(2−オクチルドデシルオキシ)チオフェンの合成>
【化17】

フラスコに、3−メトキシチオフェンを5.00g(43.8mmol)、1−ヒドロキシ−2−オクチルドデカンを26.1g(87.6mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物を0.833g(4.38mmol)、トルエン100mLを入れて16時間還流させた。反応液を水に注ぎ、水で洗浄した。トルエン溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた液体をヘキサンを展開溶媒として用いてシリカゲルカラムで精製を行い、3−(2−オクチルドデシルオキシ)チオフェンを得た。得量は15.2gであり、収率は91%であった。
3−(2−オクチルドデシルオキシ)チオフェンのH−NMR分析の結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.16(m,1H),6.75(m,1H),6.22(m,1H),3.81(d,2H),1.74(m,1H),1.00−1.70(m,34H),0.88(t,6H).
【0123】
<合成例2:3,3’−ビス(2−オクチルドデシルオキシ)−2,2’−ビチオフェンの合成>
【化18】

フラスコに、3−(2−オクチルドデシルオキシ)チオフェンを17.5g(46.0mmol)、臭素を7.35g(46.0mmol)、テトラヒドロフラン200mLを入れ、2時間撹拌した。この溶液に、2,2’−ビピリジルを28.7g(184mmol)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(0)を13.9g(50.6mmol)を加えて60℃で3時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、ろ液をエバポレーターで濃縮した。ここへトルエンと水を加え、トルエンで抽出した。塩酸水溶液で洗浄し、続いて水で洗浄した。トルエン溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた液体をヘキサンとクロロホルムの4/1混合液を展開溶媒として用いたシリカゲルカラム精製を行い、3,3’−ビス(2−オクチルドデシルオキシ)−2,2’−ビチオフェンを得た。得量は7.72gであり、収率は44%であった。
3,3’−ビス(2−オクチルドデシルオキシ)−2,2’−ビチオフェンのH−NMR分析の結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=7.07(d,2H),6.83(d,2H),4.09(d,4H),0.80−1.90(m,82H).
【0124】
<合成例3:化合物M1の合成>
【化19】

フラスコに、3,3’−ビス(2−オクチルドデシルオキシ)−2,2’−ビチオフェンを7.72g(10.2mmol)、テトラヒドロフラン200mLを入れ、0℃に冷却した。この溶液に、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.6mol/L、15.6mL)を滴下し、室温まで昇温して1時間撹拌した。反応液を再度0℃に冷却し、塩化トリブチルスズを13.2g(40.7mmol)加えた。反応液を室温まで昇温して2時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出し、水で洗浄した。トルエン溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた液体をアセトニトリルとテトラヒドロフランの1/1混合液を展開溶媒として用いた逆相シリカゲルカラムで精製を行い、化合物M1を得た。得量は11.6gであり、収率は85%であった。
化合物M1のH−NMR分析の結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=6.82(d,2H),4.01(d,4H),0.80−1.90(m,136H).
【0125】
<実施例1:高分子化合物P1の合成>
【化20】

フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物M1を0.300g(0.224mmol)、化合物M2を0.0987g(0.215mmol)、トルエンを50mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを3.1mg、トリオルトトリルホスフィンを6.1mg入れて、5時間還流させた。反応液に、ブロモベンゼンを35mg加えて、1時間還流させた。反応液をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をろ取した。析出物に、トルエンと水とN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を加えて、3時間還流させた。その後、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を酢酸水溶液および水で洗浄した後、トルエン溶液をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をアセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、高分子化合物P1を得た。得量は0.15gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は6.6×10であり、重量平均分子量は1.3×10であった。
なお、化合物M2は、「Chemistry of Materials、2008年、20巻、4045項」に記載の方法に従って合成した。
【0126】
<実施例2:高分子化合物P2の合成>
【化21】

化合物M2にかえて化合物M3を0.0937g(0.202mmol)を用いた以外は実施例1と同様に高分子化合物P2を合成した。得量は0.13gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は1.7×10であり、重量平均分子量は2.4×10であった。
なお、化合物M3は、「Chemistry A European Journal、2010年、16巻、3743項」に記載の方法に従って合成した。
【0127】
<実施例3:高分子化合物P3の合成>
【化22】

化合物M2にかえて化合物M4を0.138g(0.220mmol)を用いた以外は実施例1と同様に高分子化合物P3を合成した。得量は0.21gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は3.1×10であり、重量平均分子量は8.8×10であった。
なお、化合物M4は、「Synthetic Metals、2010年、160巻、2422項」に記載の方法に従って合成した。
【0128】
<合成例4:化合物M5の合成>
【化23】

化合物M5−1を、「Tetrahedron、2010年、66巻、1837項」に記載の方法に従って合成した。
フラスコに、化合物M5−1を4.30g(13.1mmol)、N−ブロモスクシンイミドを4.90g(27.5mmol)、クロロホルム300mLを入れ、3時間撹拌した。反応液を濃縮し、メタノールに注いだ。得られた沈殿をろ過し、メタノール及びアセトンで洗浄し化合物M5を得た。得量は3.17gであり、収率は50%であった。
化合物M1のH−NMR分析の結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=8.66(d,2H),7.26(d,2H),3.57(s,6H).
【0129】
<実施例4:高分子化合物P4の合成>
【化24】

化合物M2にかえて化合物M5を0.0872g(0.179mmol)を用いた以外は実施例1と同様に高分子化合物P4を合成した。得量は0.12gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は2.5×10であり、重量平均分子量は1.5×10であった。
【0130】
<合成例5:高分子化合物PAの合成>
【化25】

化合物M2にかえて4,7−ジブロモベンゾ−2,1,3−チアジアゾールを0.0653g(0.222mmol)を用いた以外は実施例1と同様に高分子化合物PAを合成した。得量は0.12gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は2.7×10であり、重量平均分子量は1.1×10であった。
【0131】
<実施例5:有機トランジスタ1の作製および評価>
高分子化合物P1を含む溶液を用いて、図9に示す構造を有する有機トランジスタ1を作製した。
ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板の表面を熱酸化し、シリコン酸化膜(以下、「熱酸化膜」という。)を形成した。熱酸化膜は絶縁層として機能する。次に、フォトリソグラフィー工程により熱酸化膜上にソース電極およびドレイン電極を作製した。該ソース電極および該ドレイン電極は、熱酸化膜側からクロム(Cr)層と金(Au)層とを有し、チャネル長が20μm、チャネル幅が2mmであった。こうして得られた熱酸化膜、ソース電極およびドレイン電極を形成した基板をアセトンで超音波洗浄を行ない、オゾンUVクリーナーでUVオゾン処理を行なった。その後、β−フェネチルトリクロロシランで熱酸化膜の表面を修飾し、ペンタフルオロベンゼンチオールでソース電極およびドレイン電極の表面を修飾した。次に、上記表面処理した熱酸化膜、ソース電極およびドレイン電極上に、0.5重量%の高分子化合物P1のオルトジクロロベンゼン溶液を1000rpmの回転速度でスピンコートし、有機半導体層(活性層)を形成した。その後、有機半導体層を170℃で30分間加熱し、有機トランジスタ1を製造した。
【0132】
得られた有機トランジスタ1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、1.6×10−2cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0133】
<実施例6:有機トランジスタ2の作製および評価>
高分子化合物P1にかえて高分子化合物P2を用いた以外は実施例5と同様に有機トランジスタ2を作製した。
【0134】
得られた有機トランジスタ2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、1.4×10−2cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0135】
<実施例7:有機トランジスタ3の作製および評価>
高分子化合物P1にかえて高分子化合物P3を用いた以外は実施例5と同様に有機トランジスタ3を作製した。
【0136】
得られた有機トランジスタ3のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、3.6×10−2cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0137】
<実施例8:有機トランジスタ4の作製および評価>
高分子化合物P1にかえて高分子化合物P4を用いた以外は実施例5と同様に有機トランジスタ4を作製した。
【0138】
得られた有機トランジスタ4のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、2.7×10−1cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0139】
<比較例1:有機トランジスタC1の作製および評価>
高分子化合物P1にかえて高分子化合物PAを用いた以外は実施例5と同様に有機トランジスタC1を作製した。
【0140】
得られた有機トランジスタC1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。電界効果移動度は、3.5×10−4cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0141】
【表2】

【符号の説明】
【0142】
1…基板。
2、2a…活性層。
3…絶縁層。
4…ゲート電極。
5…ソース電極。
6…ドレイン電極。
100、110、120、130、140、150、160、170、180…有機トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−1)で表される構造単位、式(1−2)で表される構造単位および式(1−3)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位と、
式(2)で表される構造単位とを含む高分子化合物。
【化1】

[式中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、1価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
は、炭素数が2以上のアルキル基を表す。
Eは、−O−、−S−、−Se−または−N(R)−を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の芳香族複素環基を表す。
環Aは、芳香環または複素環を表す。
は0以上の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。]
【化2】

[式中、
Arは、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の芳香族複素環基を表す(式(1−1)で表される構造単位、式(1−2)で表される構造単位および式(1−3)で表される構造単位とは異なる。)。複数存在するArは、同一であっても異なっていてもよい。
は3〜10の整数を表す。]
【請求項2】
前記式(1−1)で表される構造単位と、前記式(2)で表される構造単位とを含む、請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
式(1−A)で表される構造単位、式(1−B)で表される構造単位および式(1−C)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む、請求項1または2に記載の高分子化合物。
【化3】

[式中、
、RおよびEは、それぞれ独立に、前記と同じ意味を表す。]
【請求項4】
前記式(1−A)で表される構造単位、前記式(1−B)で表される構造単位または前記式(1−C)で表される構造単位と、
前記式(2)で表される構造単位との交互共重合体である、請求項3に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記Rが、炭素数8以上のアルキル基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
前記Rが、炭素数8以上の分岐アルキル基である、請求項5に記載の高分子化合物。
【請求項7】
前記Eが、−S−である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
前記Arの少なくとも1つが、
電子吸引性置換基および/またはカルボニル基を有するアリーレン基と
電子吸引性置換基および/またはsp窒素原子および/またはカルボニル基を有する2価の芳香族複素環基と
からなる群から選ばれる群からなる少なくとも1種の基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項9】
前記Arの少なくとも1つが、
電子吸引性置換基および/またはsp窒素原子および/またはカルボニル基を有する2価の芳香族複素環基である、請求項8に記載の高分子化合物。
【請求項10】
前記Arの少なくとも1つが、式(Ar−1)で表される基〜式(Ar−11)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【化4】

[式中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、2価の芳香族複素環基またはハロゲン原子を表す。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または2価の芳香族複素環基を表す。Rが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
Yは、それぞれ独立に、−S−、−O−または−Se−を表す。Yが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項11】
前記RおよびRが、水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基である、請求項10に記載の高分子化合物。
【請求項12】
前記Arの少なくとも1つが、単環式のアリーレン基または単環式の2価の芳香族複素環基である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項13】
前記Arの少なくとも1つが、無置換のアリーレン基または無置換の2価の芳香族複素環基である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項14】
前記Arの少なくとも一つが、無置換のフェニレン基または無置換のチオフェンジイル基である、請求項13に記載の高分子化合物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む、有機半導体材料。
【請求項16】
請求項15に記載の有機半導体材料を含む有機層を有する、有機半導体素子。
【請求項17】
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極および活性層を有し、該活性層に請求項15に記載の有機半導体材料を含む、有機トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−56959(P2013−56959A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194758(P2011−194758)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】