説明

高分岐ポリマーを用いた光パターニング組成物

【課題】高分岐ポリマーを用いた光パターニング組成物を提供すること。
【解決手段】
本発明の高分岐ポリマーを用いた光パターニング組成物は、分子内に2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーAと、分子内に酸分解性基および1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーBを、該ラジカル重合性モノマーAおよび該ラジカル重合性モノマーBの合計モル数に対して5モル%以上200モル%以下の重合開始剤Cの存在下で重合させることにより得られる高分岐ポリマーを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な高分岐ポリマー、該高分岐ポリマーの製造方法および該高分岐ポリマーを光パターニング材料のベースポリマーとして含む光パターニング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーと共にデンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類されている。従来の高分子が一般的に紐状の形状であるのに対し、これらのデンドリティックポリマーは、積極的に枝分かれを導入しているため、特異な構造を有する点、ナノメートルオーダーのサイズである点、多くの官能基を保持する表面を形成することができる点、線状ポリマーに比べて低粘度化できる点、分子間の絡み合いが少なく微粒子的挙動を示す点、非晶性になり溶媒溶解性を制御できる点等において様々な特性を有しており、これらの特性を利用した応用が期待されている。
【0003】
ハイパーブランチポリマーのデンドリマーに対する利点としては、その合成の簡便さが挙げられ、特に工業的生産においては有利である。一般にデンドリマーが、保護−脱保護を繰り返し合成されるのに対し、ハイパーブランチポリマーは1分子中に2種類の置換基を合計3個またはそれ以上もつ、いわゆるABx型モノマーの1段階重合により合成される。
【0004】
一般に、本発明における高分岐ポリマーの合成法としては、ラジカル重合性不飽和二重結合を2個以上有するモノマーをラジカル重合開始剤の存在下、重合させる方法が知られている。例えば、2個のビニル基を有するスチレン化合物およびアゾ系重合開始剤による高分岐ポリマーの合成法等(特許文献1並びに非特許文献1、2、3及び4参照。)、及びメタクリル基を2個有するメタクリル化合物およびアゾ系重合開始剤による高分岐ポリマーの合成法等(非特許文献5,6参照。)が知られている。
【0005】
しかしながら、現在までのところ、かかる高分岐ポリマーの合成法にて得られる高分岐ポリマーにおいて、光パターニングに必要な、露光による加工性を付与するための分子設計については報告がない。
【0006】
また一方、ハイパーブランチポリマーをレジスト材料のベースポリマーとして含む、微細パターンを形成可能なレジスト組成物が知られている(特許文献2、3)。
【0007】
しかしながら、特許文献2、3に記載の方法で得られるハイパーブランチポリマーは、銅触媒存在下でリビングラジカル重合することで得られるものであるため、得られるハイパーブランチポリマーが銅触媒を含む場合がある。触媒由来の金属量が100ppb以上であると、露光工程において、混入金属元素により照射光が吸収されてレジスト感度が低下し、微細なパターンの形成に影響を与えることがある。そのため、レジスト材料向けのハイパーブランチポリマーの合成工程においては、活性アルミナろ過等により触媒を除去する工程が必要となる。
【0008】
さらに、特許文献2、3に記載の方法で得られるハイパーブランチポリマーは、ハロゲン原子をポリマー成長末端に含有する構造体となる。一般に、ハロゲン原子が共有結合した炭素原子は、化学的に活性であるため、露光の際、高エネルギーな紫外光を照射した場合、炭素ラジカルや塩素ラジカル等を発生し、パターニング形成に悪影響を与える恐れがある。そのため、レジスト材料向けのハイパーブランチポリマーの合成工程において、水素化トリ−n−ブチルすずに代表されるような脱ハロゲン化剤を用いて、ハイパーブランチポリマーの脱ハロゲン化を行うことも必要となる。しかし、脱ハロゲン化剤として用いられる水素化トリ−n−ブチルすずは毒性が高く、大量製造において使用可能な脱ハロゲン化剤であるとは言い難い。
【特許文献1】特許第4009700号公報
【特許文献2】国際公開第05/061566号パンフレット
【特許文献3】特開2007−241121号公報
【非特許文献1】Tsuneyuki Sato, Nobuyuki Sato, Makiko Seno, Tomohiro Hirano, J.Polymm.Sci.Part A, 41, 3038−3047(2003)
【非特許文献2】Tsuneyuki Sato, Naoki Higashida, Tomohiro Hirano, Makiko Seno, J.Polymm.Sci.Part A, 42, 1609−1617(2004)
【非特許文献3】Tomohiro Hirano, Naoki Higashida, Hongwai Wang, Makiko Seno, Tsuneyuki Sato, J.Appl.Polym.Sci., 100, 664−670(2006)
【非特許文献4】Tsuneyuki Sato, Hiroki Nobutane, Tomohiro Hirano, Makiko Seno, Macromol.Mater.Eng., 291, 162−172(2006)
【非特許文献5】Tsuneyuki Sato, Takashi Miyagi, Tomohiro Hirano, Makiko Seno, Polym.Int., 53, 1503−1511(2004)
【非特許文献6】Tomohiro Hirano, Hiroshi Ihara, Takashi Miyagi, Hongwei Wang, Makiko Seno, Tsuneyuki Sato, Macromol.Chem.Phys., 206, 860−868(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、合成工程において金属触媒を使用せずとも合成が簡便な高分岐ポリマーであって、構造中にハロゲン原子を含まない高分岐ポリマー及び該高分岐ポリマーの製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明の別な目的は、光パターニング材料のベースポリマーとして有用な光パターニング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、すなわち、分子内に2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーAと、分子内に酸分解性基および1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーBを、該ラジカル重合性モノマーAと該ラジカル重合性モノマーBの合計モル数に対して5モル%以上200モル%以下の重合開始剤Cの存在下で重合させることによって、合成工程において金属触媒を使用せずとも合成が簡便で、かつ構造中にハロゲン原子を含まない高分岐ポリマーを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、第1観点として、分子内に2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーAと、分子内に酸分解性基および1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーBを、該ラジカル重合性モノマーAおよび該ラジカル重合性モノマーBの合計モル数に対して5モル%以上200モル%以下の重合開始剤Cの存在下で重合させることで得られる高分岐ポリマー、
第2観点として、前記ラジカル重合性モノマーAに対して、モル比で10%以上500
%以下の前記ラジカル重合性モノマーBを用いて得られる、第1観点に記載の高分岐ポリマー、
第3観点として、前記重合開始剤Cがアゾ系重合開始剤である、第1観点又は第2観点に記載の高分岐ポリマー、
第4観点として、前記ラジカル重合性モノマーAがジビニルベンゼンである、第1観点ないし第3観点のいずれか1つに記載の高分岐ポリマー、
第5観点として、前記ラジカル重合性モノマーBがt−ブチルアクリレートである、第1観点ないし第4観点のいずれか1つに記載の高分岐ポリマー、
第6観点として、前記重合開始剤Cが2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルである、第3観点ないし第5観点のいずれか1つに記載の高分岐ポリマー、
第7観点として、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が1,000ないし200,000である、第1観点ないし第6観点のいずれか1項に記載の高分岐ポリマー、
第8観点として、分子内に2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーAと、分子内に酸分解性基および1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーBを、該ラジカル重合性モノマーAおよび該ラジカル重合性モノマーBの合計モル数に対して5モル%以上200モル%以下の重合開始剤Cの存在下で重合させることを特徴とする、第1観点ないし第7観点のいずれか1つに記載の高分岐ポリマーの製造方法、
第9観点として、第1観点ないし第7観点のいずれか1つに記載の高分岐ポリマーを含有する光パターニング組成物、
第10観点として、更に光酸発生剤を含有する、第9観点に記載の光パターニング組成物、
第11観点として、第1観点に記載の高分岐ポリマー中の酸分解性基の少なくとも一部が分解することにより生じる酸性基を有する高分岐ポリマー、
第12観点として、前記ラジカル重合性モノマーBとしてt−ブチルアクリレートを用い得られた第1観点に記載の高分岐ポリマー中の、t−ブチルエステル基の少なくとも一部が分解することにより生じるカルボキシル基を有する、第11観点に記載の高分岐ポリマー、
第13観点として、第1観点ないし第7観点のいずれか1つに記載の高分岐ポリマーを酸で処理し、酸分解性基の少なくとも一部を分解することにより酸性基を生じさせることを特徴とする、第11観点又は第12観点に記載の高分岐ポリマーの製造方法、
第14観点として、前記酸がトリフルオロ酢酸である、第13観点に記載の高分岐ポリマーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、合成工程において金属触媒を使用せずとも合成が簡便な高分岐ポリマーであって、構造中にハロゲン原子を含まない高分岐ポリマーを提供することができる。
また、本発明によれば、前記高分岐ポリマーを光パターニング材料のベースポリマーとして用いることによって、アルカリ水溶液に対する溶解性に優れ、また露光された部分のアルカリ溶液による除去により微細パターンの形成が可能な光パターニング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の高分岐ポリマーは、分子内に2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーAと、分子内に酸分解性基および1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーBを、重合開始剤Cの存在下で重合させることにより得られるものである。また、前記重合において前記重合開始剤Cは、前記モノマーAおよびモノマーBの合計モル数に対して5モル%以上200モル%以下の量で使用される。また本発明の高分岐ポリマーは、前記ラジカル重合性モノマーAおよびBの合計モル数に
対する重合開始剤Cのモル%が高いほど、該高分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は低下する。
【0014】
本発明の高分岐ポリマーは、前記ラジカル重合性モノマーAに対して、モル比で10%以上200%以下の前記ラジカル重合性モノマーBを用いて得られる。また本発明の高分岐ポリマーは、前記ラジカル重合性モノマーAのモル数に対する前記ラジカル重合性モノマーBのモル%が高いほど該高分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は低下する。
【0015】
前記ラジカル重合性モノマーAは、1分子中にラジカル重合性不飽和二重結合を2個有するものである。このようなラジカル重合性モノマーとしては、好ましくはラジカル重合性基としてビニル基を有するものであり、具体的には、以下の(A1)ないし(A7)に示した有機化合物が例示される。
(A1)ビニル系炭化水素:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタリロキシエタン等
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイロキシ−3−メタクリロイロキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイロキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレノキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,4−ジビニルオクタフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン、1,8−ジビニルヘキサデカフルオロオクタン等
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素化合物、(A2)群のビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテルおよびビニルケトン、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物であり、特に好ましいのは、(A1−3)群に属するジビニルベンゼン、(A2)群に属するフタル酸ジアリル、(A3)群に属するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、並びに(A5)群に属するメチレンビス(メタ)アクリルアミドであり、これらの中でもジビニルベンゼンがより好ましい。
【0016】
前記ラジカル重合性モノマーBは、1分子中に酸分解性基およびラジカル重合性不飽和二重結合を1個有するものである。
本発明における酸分解性基とは、酸の作用により分解し、ヒドロキシ基、カルボキシル基などのアルカリ可溶性基が生じる基をいう。酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等であり、更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
例えば、前記ラジカル重合性モノマーの例として下記式(1)及び(2)で表されるものが挙げられる。
【化1】

[式(1)ないし(2)中、
1は水素原子又は炭素原子数1ないし3のアルキル基を表し、
2は水素原子、炭素原子数1ないし30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、
又は炭素原子数6ないし30のアリール基を表し、及び
3は炭素原子数1ないし40の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、トリアルキ
ルシリル基、オキソアルキル基、又は下記式(3)
【化2】

(式中、R4は直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の炭素原子数1ないし10のアルキル基
を表し、
5、R6は互いに独立して水素原子、炭素原子数1ないし10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表すか、或いはR5、R6が炭素原子数1ないし10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表すとき、互いに一緒になって環を形成しても良い)で表される基を表す。]
前記式(1)で表されるモノマーの具体例としては、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン、シクロヘキシルオキシスチレン、トリメチルシロキシスチレン、4−(1−メトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、テトラヒドロピラニルオキシスチレン等が挙げられる。このうち、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、テトラヒドロピラニルオキシスチレンが好ましい。
前記式(2)で表されるモノマーの具体例としては、(メタ)アクリレートメチル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−(2−メチル)アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。このうち、t−ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−(2−メチル)アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記式(1)及び(2)で表されるモノマーのうち、t−ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0017】
前記重合開始剤Cとしては、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、油溶性アゾ重合開始剤及び水溶性アゾ重合開始剤等が使用できる。
油溶性アゾ重合開始剤としては、
(1)アゾニトリル系;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等、
(2)アゾアミド系;2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等、
(3)その他;2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等、等が挙げられる。
これらのうちで好ましいものは(1)アゾニトリル系、(3)その他であり、特に好ましいものは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルである。
水溶性アゾ重合開始剤としては、
(1)アゾニトリル系;2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等、
(2)アゾアミド系;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]等、
(3)脂環式アゾアミド系;2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等、等が挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、(1)アゾニトリル系、(2)アゾアミド系であり、特に好ましいものは、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}である。
これらのうち、油溶性アゾ重合開始剤である2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が特に好ましい。
【0018】
本発明の高分岐ポリマーにおいて、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000ないし200,000、さらに好ましくは2,000ないし100,000である。
【0019】
本発明の高分岐ポリマーは、重合開始剤Cの存在下で前記ラジカル重合性モノマーAおよび前記ラジカル重合性モノマーBを重合して得られる。前記Cを前記Aおよび前記Bに添加する方法は、以下の方法が好ましく例示される。
(1)ラジカル重合性モノマーAおよびBに予め重合開始剤Cを混合した後重合する方法(2)ラジカル重合性モノマーAおよびBに予め重合開始剤Cの一部を混合し重合を開始した後、さらに残りの重合開始剤Cを重合中に添加する方法
(3)ラジカル重合性モノマーAおよびBの重合を開始した後、重合開始剤Cを重合反応物中に添加して重合を行う方法
【0020】
ラジカル重合性モノマーAおよびBの重合方法としては、公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合および塊状重合等が挙げられる。これらのうち好ましいものは溶液重合および塊状重合である。分子量調節の点から有機溶剤中で重合を行うのが好ましい。
【0021】
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系またはエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドン等の複素環式化合物系溶剤、ならびにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、芳香族炭化水素系溶剤、塩素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン
、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等である。また本発明の高分岐ポリマーは、前記有機溶剤として非極性有機溶剤を使用する場合、該高分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は低下する。
本発明の重合反応を有機溶剤の存在下で行う場合、前記ラジカル重合性モノマーAに対する前記有機溶剤の質量は、好ましくは5ないし50質量部、さらに好ましくは10ないし30質量部である。また本発明の高分岐ポリマーは、前記ラジカル重合性モノマーAに対する前記有機溶剤の質量が高いほど該高分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は低下する。
また、有機溶剤の存在下で重合を行う場合、以下の方法が好ましく例示される。
(1)ラジカル重合性モノマーA、Bおよび重合開始剤Cを有機溶剤に溶解させた後、加熱して重合する方法
(2)ラジカル重合性モノマーA、Bおよび重合開始剤Cを有機溶剤に溶解させた溶液を、加熱中の有機溶剤へ滴下して重合する方法
【0022】
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の点から、好ましくは50℃以上200℃以下、さらに好ましくは80℃以上150℃以下である。また、前記ラジカル重合性モノマーA、Bおよび重合開始剤Cを有機溶剤に溶解させた溶液の重合温度が高いほど得られる該高分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は低下する。
反応時間は、反応温度や、ラジカル重合性モノマーA、Bおよび重合開始剤Cの種類および割合、有機溶剤種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは20分以上480分以下、さらに好ましくは40分以上360分以下である。
【0023】
前記高分岐ポリマーの1次粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは4nm以上50nm以下である。
上記平均粒子径の測定法は透過型電子顕微鏡測定、沈降法、エレクトロゾーン法、静的光散乱法、動的光散乱法、小角散乱法(SAXS)、広角散乱(XRD)、超小角散乱(USAXS)等が挙げられるが、測定粒度範囲の適合性より、静的光散乱法、動的光散乱法、小角散乱法、および透過型電子顕微鏡測定が好ましい。
【0024】
本発明の高分岐ポリマーの特徴として、高分岐で多数の多様な官能性末端基を含む三次元ポリマーである点、該高分岐ポリマー末端に開始剤残基を組み込むことができる点、種々の溶剤に対して溶解性が高い点、種々の溶剤に対する溶解性が該高分岐ポリマー末端の開始剤残基の影響を強く受ける点、油溶性及び水溶性のいずれのモノマーにも適用できる点並びに任意の架橋密度の粒子状ポリマーを得ることができる点等を挙げることができる。
【0025】
本発明の光パターニング組成物は、前記高分岐ポリマーを含有する。また本発明の光パターニング組成物は、前記本発明の高分岐ポリマーの他、光酸発生剤、その他の成分、及び溶剤を含むことができる。該光パターニング組成物の総質量における該高分岐ポリマーの含量は、好ましくは1ないし30質量%、さらに好ましくは3ないし20質量%である。
【0026】
さらに、本発明の光パターニング組成物は光酸発生剤を含有することにより、紫外線によって該光酸発生剤が分解し、それにより発生した酸の作用により酸分解性基が分解し、ヒドロキシ基、カルボキシル基などのアルカリ可溶性基が生じる。従って、本発明の光パターニング組成物はパターンを形成させることができる。
光酸発生剤としては、露光により直接若しくは間接的に酸を発生する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宣選択することができる。なかでも、感度や保存安定性の観点から、CGI1380(チバ・ジャパン社製、5−(カンファースルホキシ)−イミノ−5H−チオフェン−2−イリデン−o−トリルアセトニトリル)及びPAG121(チバ・ジャパン社製、3−(p−トルエンスルホキシ)−イミノ−2H−チオフェン−3−イリデン−o−トリルアセトニトリル)などの光酸発生剤を用いることが好ましい。また、これらは1種又は2種以上を併用して使うこともできる。
本発明の光パターニング組成物における該高分岐ポリマーに対する光酸発生剤の含量は、好ましくは1ないし30質量%、さらに好ましくは3ないし20質量%である。
【0027】
前記溶剤としては、前記成分等を溶解することができる限り特に制限はなく、光パターニング組成物に安全に使用可能なものの中から適宜選択することができ、例えば、ケトン、環状ケトン、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、およびその他の溶剤等が挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン等が挙げられる。
前記環状ケトンとしては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
前記その他の溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
これらの溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0028】
本発明の高分岐ポリマーにおいて、高分岐ポリマーを構成する酸分解性基は、酸による分解反応、例えば脱エステル化反応により、カルボキシル基又はフェノール性水酸基などの酸性基に変換することができる。
上記酸の具体例としては、塩酸、硫酸、リン酸および臭化水素酸等の無機酸の他、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびギ酸等の有機酸が挙げられる。好ましくは塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、さらに好ましくはトリフルオロ酢酸が好適である。
【0029】
本発明の酸分解反応における、酸分解性基を有する本発明の高分岐ポリマーに対する上記酸の使用質量は、好ましくは0.5ないし5質量部、さらに好ましくは1ないし3質量部である。
【0030】
本発明の酸分解反応は、有機溶剤の存在下で行うことが好ましい。
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;酢酸エチ
ル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系またはエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤、ならびにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、芳香族炭化水素系溶剤、塩素系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等である。さらに最も好ましいものはクロロホルムである。
前記ラジカル重合性モノマーAに対する前記有機溶剤の質量は、好ましくは3ないし20質量部、さらに好ましくは5ないし10質量部である。
【0031】
反応温度は、0℃以上80℃以下で行うことが好ましい。さらに好ましくは10℃以上60℃以下である。
【0032】
反応時間は、30分以上480分以下で行うことが好ましい。さらに好ましくは60分以上360分以下である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例において、試料の調製および物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:Shodex KF−804L、KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(2)1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−ECA700、ECX−300
溶媒:CDCl3、DMSO−d6
内部標準:テトラメチルシラン
(3)粒径測定
装置:動的光散乱光度計 大塚電子(株)製 FDLS−3000
(4)スピンコーター
装置:MIKASA(株)製 MS−A100
(5)ホットプレート
装置:AS ONE(株)製 MH−180CS、MH−3CS
(6)UV照射装置
装置:アイグラフィック(株)製 H02−L41
(7)フォトマスク
装置:メレグリオ(株)製 USAF1951クローム、ネガティブ
(8)高精度微細形状測定機(膜厚測定)
装置:(株)小阪研究所製 ET−4000A
(9)反射型光学顕微鏡
装置:OLYMPUS(株) BX51/BX52
(10)走査型電子顕微鏡(SEM)
装置:日本電子データム(株)製 JSM 7400F
【0034】
[実施例1]
<ジビニルベンゼン、t−ブチルアクリレートおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチルを用いた高分岐ポリマー1の合成>
500mLの反応フラスコに、トルエン89gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込み、内温が温度100℃になるまで加熱した。別の200mLの反応フラスコに、ジビニルベンゼン(A−1)(新日鐵化学製、製品名:DVB−960)5.2g(40mmol)、t−ブチルアクリレート(B−1)(Aldrich製)5.1g(40mmol)、2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル(C−1)(大塚化学製、製品名:MAIB)6.4g(28mmol)、トルエン89gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込んだ。この200mLの反応フラスコから滴下ポンプを用いて、90分間かけて500mL反応フラスコ中の100℃に加熱してあるトルエン中に滴下していった。滴下が終了した後、30分間熟成させた。このとき、AおよびBの合計モル数に対するCの割合は35モル%、Aのモル数に対するBのモル数は100%の割合である。
次に、この反応液をロータリーエバポレーターを用いてトルエンを留去後、温度0℃に冷却したヘプタン800gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物7.6gを得た。1H−NMRおよび13
−NMRスペクトルの測定結果を図1および図2に示した。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは82,000、分子量分布Mw/Mnは3.3であった。ここで、Mnは数平均分子量である。
【0035】
[実施例2]
<ジビニルベンゼン、t−ブチルアクリレートおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチルを用いた高分岐ポリマー2の合成>
実施例1において、t−ブチルアクリレート(B−1)の仕込み量を10g(80mmol)とした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。このとき、AおよびBの合計モル数に対するCの割合は約23モル%、Aのモル数に対するBのモル数は200%の割合である。
次に、この反応液をロータリーエバポレーターを用いてトルエンを留去後、メタノール/水=1/1の混合溶媒800gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物15.8gを得た。1H−NMRお
よび13C−NMRスペクトルの測定結果を図3および図4に示した。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは51,000、分子量分布Mw/Mnは2.4であった。
【0036】
[実施例3]
<ジビニルベンゼン、t−ブチルアクリレートおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチルを用いた高分岐ポリマー3の合成>
実施例1において、t−ブチルアクリレート(B−1)の仕込み量を21g(160mmol)とした以外は、実施例2と同様にして重合、精製を行い、白色粉末の目的物23.1gを得た。このとき、AおよびBの合計モル数に対するCの割合は14モル%、Aのモル数に対するBのモル数は400%の割合である。1H−NMRおよび13C−NMRス
ペクトルの測定結果を図5および図6に示した。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは20,000、分子量分布Mw/Mnは
3.8であった。
【0037】
実施例1ないし3の結果を表1に示す。また、13C−NMRによる高分岐ポリマー中のA、BおよびC断片の組成比および動的光散乱光度計による平均粒径を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0038】
[実施例4]
<高分岐ポリマー1の脱t−ブチル体4の合成>
50mL反応フラスコに、1gの実施例1において合成した高分岐ポリマー1、9gのクロロホルムを仕込み攪拌しながら5分間窒素を流し込み、窒素置換を行った。高分岐ポリマー溶液中へトリフルオロ酢酸(純正化学(株)製)を3g添加し、室温で6時間攪拌した。
次に、この反応液をジイソプロピルエーテル50gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物0.84gを得た。1H−NMRスペクトルの測定結果を図7に示した。ゲル浸透クロマトグラフィーに
よるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは40,000、分子量分布Mw/Mnは2.5であった。
【0039】
[実施例5]
<高分岐ポリマー2の脱t−ブチル体5の合成>
1gの実施例2において合成した高分岐ポリマー2を使用した以外は、実施例4と同様にして反応、精製を行い、白色粉末の目的物0.86gを得た。1H−NMRスペクトル
の測定結果を図8に示した。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは22,000、分子量分布Mw/Mnは1.8であった。
【0040】
[実施例6]
<高分岐ポリマー3の脱t−ブチル体6の合成>
1gの実施例3において合成した高分岐ポリマー3を使用した以外は、実施例4と同様にして反応、精製を行い、白色粉末の目的物0.84gを得た。1H−NMRスペクトル
の測定結果を図9に示した。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,000、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。
【0041】
[実施例7]
<現像液可溶性の評価>
実施例4ないし6で得られた脱t−ブチル体4ないし6の現像液への可溶性を評価した。脱t−ブチル体10mgをメタノール(MeOH)およびテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)2質量%水溶液100mgに溶解させて評価した。
また、比較として、実施例1ないし3で得られた高分岐ポリマー1ないし3についても同様の評価を行った。結果を表3に示す。
[評価基準]
○ ・・・ 完全に溶解する状態
× ・・・ 溶け残りのある状態
【表3】

【0042】
[実施例8]
<光パターニング組成物の調製1>
実施例1及び2において合成した高分岐ポリマー1及び2をそれぞれ0.5gと、光酸発生剤(チバ・ジャパン製、製品名:Ciba IRGACURE PAG121)を0.05gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.45gとを混合して、高分岐ポリマー1及び2の光パターニング組成物を調製した。
得られた各光パターニング組成物をシリコンウエハー上にスピンコーティングし、90℃にて1分間の熱処理で溶媒を蒸発させて、製膜した。
【0043】
[実施例9]
<光パターニング組成物の調製2>
実施例3おいて合成した高分岐ポリマー3を2.0g、光酸発生剤(チバ・ジャパン製、製品名:Ciba IRGACURE PAG121)を0.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート17.8gを使用した以外は実施例8と同様にして、高分岐ポリマー3の光パターニング組成物を調製した。
【0044】
[実施例10]
<光パターニング化>
実施例8ないし9において製膜した高分岐ポリマー1ないし3の試料薄膜に対して、フォトマスクを乗せ、UV照射装置にて3分間、露光量16mJ/cm2にて露光した。露
光した各試料薄膜を、120℃にて90秒の熱処理を行い、MeOHもしくは2質量%TMAH水溶液に数秒浸漬させ、水洗、乾燥を行った。高精度微細形状測定機により測定し
た試料薄膜の膜厚および結果を表4に示す。高分岐ポリマー1ないし3の試料薄膜に対して、光パターニングを行い、現像した結果の反射型光学顕微鏡の画像を図10ないし12の(a)およびSEM観察した画像を図10ないし12の(b)に示す。それぞれ観察した画像は、図13に示したフォトマスクの点線枠内を示す。
[評価基準]
○ ・・・ 溶け残りなくパターン良好
× ・・・ 溶け残りがあり、パターンが不明確
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、実施例1で得た高分岐ポリマー1の1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例1で得た高分岐ポリマー1の13C−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例2で得た高分岐ポリマー2の1H−NMRスペクトルである。
【図4】図4は、実施例2で得た高分岐ポリマー2の13C−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例3で得た高分岐ポリマー3の1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例3で得た高分岐ポリマー3の13C−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例4で得た脱t−ブチル体4の1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例5で得た脱t−ブチル体5の1H−NMRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例6で得た脱t−ブチル体6の1H−NMRスペクトルである。
【図10】図10(a)は、実施例10で光パターニングを行った高分岐ポリマー1の反射型光学顕微鏡画像であり、(b)は該高分岐ポリマー1のSEM画像である。
【図11】図11の(a)は、実施例10で光パターニングを行った高分岐ポリマー2の反射型光学顕微鏡画像であり、(b)は該高分岐ポリマー2のSEM画像である。
【図12】図12の(a)は、実施例10で光パターニングを行った高分岐ポリマー3の反射型光学顕微鏡画像であり、(b)は該高分岐ポリマー3のSEM画像である。
【図13】図13は、実施例10で使用したフォトマスクを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーAと、分子内に酸分解性基および1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーBを、該ラジカル重合性モノマーAおよび該ラジカル重合性モノマーBの合計モル数に対して5モル%以上200モル%以下の重合開始剤Cの存在下で重合させることで得られる高分岐ポリマー。
【請求項2】
前記ラジカル重合性モノマーAに対して、モル比で10%以上500%以下の前記ラジカル重合性モノマーBを用いて得られる、請求項1記載の高分岐ポリマー。
【請求項3】
前記重合開始剤Cがアゾ系重合開始剤である、請求項1又は請求項2記載の高分岐ポリマー。
【請求項4】
前記ラジカル重合性モノマーAがジビニルベンゼンである、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の高分岐ポリマー。
【請求項5】
前記ラジカル重合性モノマーBがt-ブチルアクリレートである、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の高分岐ポリマー。
【請求項6】
前記重合開始剤Cが2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルである、請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の高分岐ポリマー。
【請求項7】
ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が1,000ないし200,000である、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の高分岐ポリマー。
【請求項8】
分子内に2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーAと、分子内に酸分解性基および1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーBを、該ラジカル重合性モノマーAおよび該ラジカル重合性モノマーBの合計モル数に対して5モル%以上200モル%以下の重合開始剤Cの存在下で重合させることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の高分岐ポリマーの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の高分岐ポリマーを含有する光パターニング組成物。
【請求項10】
更に光酸発生剤を含有する、請求項9記載の光パターニング組成物。
【請求項11】
請求項1記載の高分岐ポリマー中の酸分解性基の少なくとも一部が分解することにより生じる酸性基を有する高分岐ポリマー。
【請求項12】
前記ラジカル重合性モノマーBとしてt−ブチルアクリレートを用い得られた請求項1記載の高分岐ポリマー中の、t−ブチルエステル基の少なくとも一部が分解することにより生じるカルボキシル基を有する、請求項11記載の高分岐ポリマー。
【請求項13】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の高分岐ポリマーを酸で処理し、酸分解性基の少なくとも一部を分解することにより酸性基を生じさせることを特徴とする、請求項11又は請求項12記載の高分岐ポリマーの製造方法。
【請求項14】
前記酸がトリフルオロ酢酸である、請求項13記載の高分岐ポリマーの製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−24330(P2010−24330A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186586(P2008−186586)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】