説明

高分散性金属コロイドの調製方法としての金属塩の電気化学的還元ならびに金属塩の電気化学的還元による基材に固定された金属クラスター

【課題】粒子寸法が制御され、顕著な副生物がなく、安定化された金属コロイドを提供する。
【解決手段】周期律表のIb族、IIb族、III族、IV族、V族、VI族、VIIb族、VIII族、ランタノイド族及び/又はアクチノイド族の金属を含んで成り、粒子寸法が50nm以下であり、支持電解質及び/又は安定剤として、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩(それぞれR又はRであって、R、R、R、Rは同じ又は異なり、C1−18アルキル又はアリール基である。)が存在する、有機媒体に溶解性もしくは再分散性である金属コロイド、2成分系金属コロイドまたは多成分系金属コロイドである。更に、同様の水溶性金属コロイド、2成分系金属コロイドまたは多成分系金属コロイドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性金属コロイドおよび基材に固定された金属クラスターを調製する電気化学的方法に関係する。本発明は、また、可溶性のバイメタル(金属2成分系)のコロイドおよび基材に固定されたバイメタルクラスターも含むものである。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、可溶性または基材に固定された微細に分散された金属、金属コロイドおよび金属クラスターは、有機化学および無機化学ならびに電気化学(燃料電池(fuel cell))において価値のある触媒である[例えば、ゲー・シュミット(G. Schmid)、クラスターズ・アンド・コロイズ(Clusters and Colloids)、VCH、ヴァインハイム(Weinheim)、1994年;ジェイ・ピー・ファックラー(J. P. Fackler)、メタル−メタル・ボンズ・アンド・クラスターズ・イン・ケミストリー・アンド・キャタリシス(Metal-Metal bonds and Clusters in Chemistry and Catalysis)、プレナム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク、1990年;ビー・シー・ゲイツ(B. C. Gates)、エル・グッツィ(L. Guczi)、エイチ・クネツィンガー(H. Knoezinger)、メタル・クラスター・イン・キャタリシス(Metal Cluster in Catalysis)、エルスフィール(Elseviel)、アムステルダム(Amsterdam)、1986年;エス・シー・デイビス(S. C. Davis)、ケイ・ジェイ・クラブンデ(K. J. Klabunde)、ケミカル・レヴューズ(Chem. Rev.)、第82号、1982年、第153頁を参照]。これには、還元剤、例えば水素、アルコール、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、アルカリ金属、アントラセンにより活性化されたマグネシウムまたは水素化硼素などによる金属塩の還元が関連する。
【0003】
この合成には、望ましくない金属粉末の生成を防止する安定剤がしばしば用いられる。これらには、配位子(例えば、フェナントロリン誘導体など)、ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンなど)および界面活性剤(例えば、テトラアルキルアンモニウム塩など)が関連する[例えば、ゲー・シュミット、ベー・モルン(B. Morun)、ヨット・オー・マルム(J. -O. Malm)、アンゲバンテ・ヒェミー(Angew. Chem.)、第101号、1989年、第772頁;アンゲバンテ・ヒェミー・インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ、(Angew. Chem., Int. Ed. Engl.)、第28号、1989年、第778頁;エム・エヌ・ヴァルガフティック(M. N. Vargaftik)、ブイ・ピー・ザゴロドニコフ(V. P. Zagorodnikov)、アイ・ピー・ストラロフ(I. P. Stolarov)、アイ・アイ・モイセエフ(I. I. Moiseev)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・キャタリシス(J. Mol. Catal.)、第53巻、1989年、第315頁;ジェイ・エス・ブラッドレイ(J. S. Bradley)、ジェイ・エム・ミラー(J. M. Millar)、イー・ダブリュ・ヒル(E. W. Hill)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J. Am. Chem. Soc.)、第113号、1991年、第4016頁;エフ・ポルタ(F. Porta)、エフ・ラゲーニ(F. Ragaini)、エス・セニーニ(S. Cenini)、ジー・スカリ(G. Scari)、ガゼッタ・キミカ・イタリアナ(Gazz. Chim. Ital.)、第122巻、1992年、第361頁;エイチ・ベンネマン(H. Boennemann)、ダブリュ・ブリヨクス(W. Brijoux)、アール・ブリンクマン(R. Brinkmann)、イー・ディニュス(E. Dinjus)、ティー・ヨウッセン(T. Joussen)、ビー・コラル(B. Korall)、アンゲバンテ・ヒェミー、第103号、1991年、第1344頁;アンゲバンテ・ヒェミー・インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ、第30号、1991年、第1312頁;エム・ボウトネット(M. Boutonnet)、ジェイ・キツリング(J. Kizling)、ピー・ステニウス(P. Stenius)、ジー・マイレ(G. Maire)、コロイズ・アンド・サーフェスイズ(Colloids Surf.)、第5号、1982年、第209頁;エム・ボウトネット、ジェイ・キツリング、アール・トウロウデ(R. Touroude)、ジー・マイレ、ピー・ステニウス、アプライド・キャタリシス(Appl. Catal.)、第20号、1986年、第163頁;エヌ・トシマ(N. Toshima)、ティ・タカハシ(T. Takashashi)、エイチ・ヒライ(H. Hirai)、ケミストリー・レターズ(Chem. Lett.)、1985年、第1245頁;ケイ・メグロ(K. Meguro)、エム・トリユカ(M. Toriyuka)、ケイ・エスミ(K. Esumi)、ブリテン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ・オブ・ジャパン(Bull. Chem. Soc. Jpn.)、第61号、1988年、第341頁;エヌ・トシマ、ティ・タカハシ、ブリテン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ・オブ・ジャパン、第65号、1992年、第400頁;ジェイ・ブルム(J. Blum)、ワイ・サッソン(Y. Sasson)、エイ・ゾラン(A. Zoran)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・キャタリシス、第11巻、1981年、第293頁;エヌ・サトー(N. Satoh)、ケイ・キムラ(K. Kimura)、ブリテン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ・オブ・ジャパン、第62号、1989年、第1758頁などを参照]。
【0004】
場合によって、金属気化が用いられている[例えばゲー・シュミット、クラスターズ・アンド・コロイズ、VCH、ヴァインハイム、1994年;ジェイ・ピー・ファックラー、メタル−メタル・ボンズ・アンド・クラスターズ・イン・ケミストリー・アンド・キャタリシス、プレナム・プレス、ニューヨーク、1990年;ビー・シー・ゲイツ、エル・グッツィ、エイチ・クネツィンガー、メタル・クラスター・イン・キャタリシス、エルスフィール、アムステルダム、1986年;エス・シー・デイビス、ケイ・ジェイ・クラブンデ、ケミカル・レヴューズ、第82号、1982年、第153頁を参照]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの方法の問題点は、中でも、(1)金属気化およびいくつかの還元剤が高コストであること、(2)金属粉末の部分的または望ましくない生成、(3)金属クラスターまたはコロイドを精製するための長時間にわたる分離工程、(4)還元剤(例えば、水素または硼素など)が部分的に混入することによる汚染、ならびに(5)粒子寸法を制御することが容易でないか、または制限があることである。しかしながら、とりわけ、金属コロイドおよび金属クラスターの触媒的特性は粒子寸法に依存するので、合成および単離が簡単でありながら、粒子寸法を特定にかつ簡単な粒子寸法のコントロールは大いに進歩をもたらすと思われる[エイ・デュテイル(A. Duteil)、アール・クイー(R. Queau)、ビー・シャウドレット(B. Chaudret)、アール・マゼル(R. Mazel)、シー・ロウカウ(C. Roucau)、ジェイ・エス・ブラッドレイ(J. S. Bradley)、ケム・マテル(Chem. Mater.)、第5号、1993年、第341頁を参照]。
【0006】
上述の方法の問題点は、中でも、いくつかの還元剤が高コストであること;副生物の分離に時間を要すること;還元剤(例えば、水素または硼素など)の望ましくない部分的混入から不純な生成物が生じること;および/または粒子寸法を制御することが容易でないか、または制限されていることである。
【0007】
常套の金属粉末の製造法において、電気化学的方法を用いることも知られており、そこでは、陽極溶解または溶出(anodic dissolution)に続く金属塩の陰極における還元または金属塩の陰極における還元のいずれかが用いられている[エヌ・アイブル(N. Ibl)、ヒェミー・インゲニール・テヒニーク(Chem. Ing. -Tech.)、第36号、1964年、第601頁]。これらの方法は、低コストであり、副生物の生成に関してはしばしば不純物が混入しない[アール・ウォーカー(R. Walker)、エイ・アール・ビー・サンフォード(A. R. B. Sanford)、ケミカル・インダストリー(Chem. Ind.)、1979年、第642頁;アール・ウォーカー、ケミカル・インダストリー、1980年、第260頁を参照]。これには、大部分の場合に硫酸を含んでなる水性電解液を使用することが含まれる。このようにすると、異なる形態(morphology)の金属と合金を調製することができるが、一つの問題点は、陰極においてHが発生し、金属水素化物が同時に生じることがしばしば観察されることである[エヌ・アイブル、ジー・グート(G. Gut)、エム・ウェーバー(M. Weber)、エレクトロキミカ・アクタ(Electrohim. acta)、第18号、1973年、第307頁]。しかしながら、主たる問題点は、30μmまでの範囲の可溶性のナノストラクチャード・コロイド(nanostructured colloids、ナノメーターオーダーのコロイド)の調製が現在まで達成されていないことである。むしろ、nmまたはμmの範囲で大きなクリスタリット(crystallite)の形態で金属粉末の析出が一般に起る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の発明者は、第1の態様において、ナノストラクチャード金属クラスターまたはコロイドを調製するための新規な電気化学的方法をここに開発したものであって、それによれば、金属シートからなる陽極(アノード)が金属ソース(source)として機能する[エム・ティ・リーツ(M. T. Reetz)、ダブリュ・ヘルビッグ(W. Helbig)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー、第116号、1994年、第7401頁]。驚くべきことに、可溶性金属コロイドの電気化学的合成は、不活性な有機性の非プロトン性溶媒中において、支持電解質(supporting electrolyte)として加えられる界面活性を有するコロイド安定剤を用いて操作することによって達成できることが見出され、この電解質は、一方で、金属のプレーティング(plating、薄層での付着)を防止し、他方で、クラスター段階においてかなり小さな金属核を保護または安定化する。金属シートは溶解すべき陽極として機能し、金属またはガラス状の炭素電極は陰極(カソード)として機能する(化1)。陽極における溶解の後、放出された金属塩(イオン)は、安定剤(化1)として機能するテトラアルキルアンモニウム塩によって、陰極において再度還元される。有機溶媒が用いられる。
【0009】
(化1)
陽極: Mebulk ────→ Mez+ + ze
陰極: Mez+ + ze ────→ Mecol
────────────────────────────────
全体として: Mebulk ────→ Mecol
Mebulk = 金属シート
Mez+ = 中間体塩の形態の酸化された金属
Mecol = 金属コロイド
【0010】
支持電解質として、同時にコロイド用の安定剤として、第4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩(それぞれRおよびR)が適している。R、R、RおよびRの広範な種々の組合せが可能である。その例には、R=R=R=R=n−ブチルまたはn−オクチルである対称テトラアルキルアンモニウム塩、R=R=R=メチルおよびR=セチルである混合テトラアルキルアンモニウム塩、または4つの異なる残基を有するキラルテトラアルキルアンモニウム塩が含まれる。アリールトリアルキルアンモニウム塩を使用することもできる。適当な対イオンには、種々のアニオン、例えば、ハロゲン化物(halogenides)(Cl、Br、I)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、カルボキシレートR'CO(R'=アルキル、アリール)またはスルホネートR"SO(R"=アルキル、アリール)などが含まれる。テトラアリールホスホニウム塩、例えばテトラフェニルホスホニウムブロミドなどを含めて、同様に種々のホスホニウム塩を使用することができる。テトラブチルアンモニウムクロリド、ブロミドまたはヘキサフルオロホスフェート、テトラオクチルアンモニウムブロミド、またはトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを使用することが好ましい。金属としては、特に遷移金属、例えば、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Ir、Rh、Cu、AgまたはAuなどを使用する。適当な溶媒は、非プロトン性有機溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトニトリル(ACN)またはこれらの混合物などである。電解槽中の温度は、−78℃〜+120℃、好ましくは15〜30℃または室温の範囲であってよい。
【0011】
このようにして、種々の寸法を有し、第4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩によって安定化された種々の金属および金属合金の金属コロイドを合成することができる。金属コロイドの寸法は、陰極の還元電位に直接に影響を及ぼす電流密度を変えることによって決定することができる。過電圧(overvoltage)(これは平衡電位からの還元電位の逸脱(偏差)として規定される)が高ければ高い程、電解境界層において金属核の最大寸法が小さくなる。これらの核は捕捉され(封じ込められ)、これは支持電解質として用いられる界面活性剤が核の回りで保護殻(protective shell、保護シェル)を形成することにより達成され、従って、更に成長することが防止される。従って、金属コロイドの寸法を制御することができる。例えば、テトラオクチルアンモニウムブロミドによって安定化された可溶性Pdコロイドは、同じ安定剤濃度で、適用する電流密度に応じて、即ち、3.4、1および0.4mA/cmに応じてそれぞれ、約2nm、5nmまたは10nmの選択した直径でもって調製することができる。
【0012】
この方法は、顕著な副生物なしに、Rによって安定化された金属コロイドが生成し、従って、容易に単離することができ、電流密度および/または過電圧を調節することによる粒子寸法の制御が可能であり、ならびにコロイドを基材上に固定することによるコロイドの固定化を容易に行うことができるという利点を有する。ある種の金属シートはそれぞれの金属塩よりも高コストであるし、ある種の金属シートは、特に酸化に対してかなりの耐性を有する場合、陽極溶解が全くできないか、またはわずかしかできない。関連文献[ハンドブック・オブ・ケミストリー・アンド・フィジクス(Handbook of Chemistry and Physics)、シー・アール・シー・プレス(CRC Press)、ボカ・レイトン(Boca Rayton)、フロリダ(USA)、1988年]の中の表から見出すことができる金属の酸化還元電位(redox potential)から、後者の挙動を理解することができる。金属、例えば、PtまたはRhなどは、化1に基づいて上述した媒体において条件付きでのみ陽極溶解させることができる。しかしながら、溶解は、上述の態様を成功させるための前提条件である。
【0013】
電気化学的方法のもう一つの態様が今や判明しており、それによれば、金属塩を使用して、陰極において還元して、ナノメートルの範囲の安定化されたクラスターが形成される。本発明は、金属塩であって、その対応する金属シートが陽極において容易に溶解するような金属塩を使用する場合であっても、うまく進行する。
【0014】
このもう1つの態様例に基づいて本発明の金属コロイド合成を行うために、電気化学的還元に金属塩MXnが用いられるが、そこでは全く種々の配位子Xが適している。ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)に加えて、特に、単純なカルボン酸からのカルボキシレートRCO(例えば、R=CH、CF、C、C、C、Cなど)、脂肪酸からのカルボキシレート(例えば、R=C1735など)、キラルカルボン酸からのカルボキシレート(例えば、R=CH(CH)Cなど)、スルホネートRSO(例えば、R=CH、CF、CHなど)ならびにアセチルアセトネート(アセチルアセトナト)を挙げることができる。塩MXnの中の金属は、主族元素(典型元素)、例えばGa、InもしくはTlなどならびに遷移金属、例えばFe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、PtもしくはAuなどであってよい。上述のアンモニウムまたはホスホニウム塩は、コロイド用の安定剤として機能する。
【0015】
上述の有機溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、プロピレンカーボネート、アセトニトリル(ACN)もしくはこれらの混合物、ならびにTHFおよびHOの混合物またはACNおよびHOの混合物などが溶媒として機能する。THFとアルコール、例えば、メタノール、エタノールなどとの混合物または、ACNとアルコールとの混合物を使用することもできる。電解槽中の温度は上述の範囲内であってよい。電気化学的に通常用いられる不活性電極材料、例えば、Ptシートまたはグラファイトなどが、陽極および陰極として選択される。
【0016】
上述の安定化アンモニウム塩またはホスホニウム塩による金属クラスターは有機溶媒に可溶性であり、他方、場合により支持電解質、例えば、リチウムクロライド、リチウムアセテートまたはテトラメチルアンモニウムアセテートなどを存在させて、水に容易に溶解するイオン性(カチオン、アニオン、両性)または非イオン性安定剤を用いることによって、水溶性が達成される。カチオン性安定剤として、例えば、完全にまたは部分的にエステル化されたメチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムもしくはホスホニウム塩、ならびに例えばR=(CHCH(OH)CHCl)、R2−4=アルキルまたはアリールなどであるRまたはRの種類の化合物などを用いることができる。アニオン性安定剤には、例えばアミノ酸誘導体のアルカリ金属塩など、例えば、ナトリウムアルキルアミド−N−ヒドロキシエチルグリシネートまたはナトリウムスクシネート(コハク酸ナトリウム)などが含まれる。適当な両性安定剤には、例えば、(CH)(C1225)CHCHCHSO、(CH)(C1225)(CH)xCO(X=1−3)、またはココスアミドプロピル(cocosamidopropyl)・ベタインなどが含まれる。非イオン性安定剤の群には、例えば、糖誘導体、例えばトゥーン(TWEEN)(登録商標)の群の市販の物質、変性シクロデキストリン、ポリグリコシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド(メガ(MEGA)−8)、ヘプチルグルコピラノシド、ポリ(ビニルアルコール)ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテル(BRIJ 35)などが含まれる。
【0017】
本発明は、異なる寸法を有する種々の金属の第2の態様による金属コロイドの調製を提供する。金属コロイドの寸法は、陰極の還元電位に直接に影響を及ぼす電流密度を変化させることによって決定される。過電圧(これは平衡電位からの還元電位の偏差として規定される)が高ければ高い程、粒子寸法は小さくなる。
【0018】
2種の金属(バイメタル)、3種の金属(トリメタル)または多種の金属(マルチメタル)の金属コロイドを調製するため、2種またはそれ以上の金属塩の混合物が用いられる。安定化されたコロイドの形態の合金を調製するためのもう一つの方法は、通常の溶媒の中に金属塩MXnを加えて、容易に溶解しうる金属陽極(例えば、Al、Ti、Sn、Ni、Cu、Pd、AgまたはAuなどのシート)および不活性陰極(例えば、白金シートなど)を電極として用いることに存する。全体としての電気化学的プロセスは、陽極が酸化的に溶解して第2の金属塩を生成し、両金属塩が陰極において共に還元されて、2種の金属の安定化されたコロイドを生成することに存する。
金属コロイドを特徴付けるために、常套の分析的方法特に、透過型電子顕微鏡(TEM)および元素分析が用いられる。
【0019】
本発明の態様例は、低コストなだけでなく、以下の利点も有している。
1)金属コロイドの簡単な単離(分離)、
2)実質上副生物が生じないこと、
3)異物質、例えば、水素化物または硼素などが混入しないこと、
4)既知の電気化学的方法によっては調製することができない金属コロイド、2種金属または多種金属コロイドが得られること、
5)電流密度(または過電圧(overpotential))を調節することによって粒子寸法を簡単に制御することができること、
6)2種の異なる金属塩を用いるか或いは、金属塩の添加と組み合わせて金属陽極の溶解(溶出)を用いるかのいずれかによる2種金属コロイドの簡単な調製、
7)安定剤を選択することによる金属コロイドの溶解性の簡単な変化(ペンタンから水までの範囲の溶解性)、
8)触媒として重要なハロゲン無含有触媒の調製。
【0020】
1リットル当たり4ミリモルを越える金属含量を有する安定な水溶液を調製するために、本発明に従って調製された水溶性コロイドを使用できる。電気メッキおよび電鋳技術、例えば無電解メッキなどに用いられる、塩酸または硫酸によって酸性化された水溶液の調製も可能である[オー・ジェイ・マーフィー(O. J. Murphy)ら、「エレクトロケミストリー・イン・トランジション:フロム・ザ・トェンティエス・トゥー・ザ・トェンティーファースト・センチュリィー(Electrochemistry in transition: From the 20th to the 21st century)」、プレナム・プレス、ニューヨーク、1992年、第39頁]。
【0021】
基材に固定された金属クラスターを調製するため、未ドーピングのまたはドーピングされた基材または担体(キャリアー、carrier)(例えば、TiOなど)を、水溶性コロイドのHO溶液によって覆い(またはコーティングし)、HOを分離する。このようにして、固定された金属クラスターが簡単な方法で得られる。或いは、電解液中で基材のスラリーを生成させて、基材の存在下で電解を行ってもよい。生成する金属クラスターは、基材(例えば、石炭など)上にその場で固定される。使用することのできるその他の基材は、活性炭(active charcoal)、金属酸化物(例えば、SiO、Al、MgOなど)、または不溶性有機ポリマー(例えば、ケブラー(Kevlar)(登録商標)などのポリアミド)などである。基材は一種またはそれ以上の金属によってドーピングされていてもよく、そのようなドーピング方法(dotation)は、伝統的な方法によって行っても、本明細書に記載した電気化学的方法によって行ってもよい。粒子寸法の測定は、透過型電子顕微鏡写真によると都合よく行うことができる。
【0022】
本発明の金属コロイドを、通常の触媒担体のような不活性基材の特に表面に、担体(基材)の本体の内部に浸透させることなく、良好な接着性でコロイドの特に単分子、2分子または多分子層を担体(基材)表面に対して供給して、被覆させることができるということが見出された。
【0023】
本発明に従って調製されたコロイドを使用して、未ドーピングのまたはドーピングされた表面上において微細に分散された形態で金属に適用し、活性の高い不均一触媒を調製することができる。他方で、本発明によって調製されたコロイドを、均一系触媒として使用することもできる。本発明により調製された基材に固定された金属クラスターは、不均一系触媒としてまたは燃料電池における電極触媒として用いることができる。従って、固体ポリマーまたはガラスに吸着させたパラジウムコロイドは、無電解メッキおける触媒として機能し、不導体を金属化(金属被覆)する。本発明に従って調製された溶解性コロイドおよび基材に固定された金属クラスターのもう一つの適用分野には、特異な電子的特性を有し、量子点アレイ(quantum point array)に基づいた高度に集積された記憶媒体および新規な感受性を有する電子要素の開発における重要な刺激を与える新しい材料の開発が含まれる。
【0024】
本発明に従って調製された未ドーピングのまたはドーピングされた基材上のコロイドは、高い活性を有する不均一系触媒である。これらは、例えば、オレフィンまたは芳香族化合物の水素化における水素化触媒などとして有用である。技術的に重要な用途には、例えば、基材に固定されたルテニウムコロイドまたは2種金属コロイド(例えば、Ru/Snなど)による、ベンゼンの部分的水素化によるシクロヘキセンの生成などがある。本発明に従って調製された基材に固定された金属クラスターは、ヘック(Heck)反応、例えば、ブロモベンゼンとスチレンとからスチルベンを生成するPd-コロイドによる触媒反応などにおける触媒として使用することもできる。不均一系触媒(特に、基材に固定されたPtおよびPt/Ruクラスター)は、燃料電池における電極触媒としても有用である。本発明に従って調製された基材に固定された金属コロイドは、均一系触媒としても有用であって、これには2相系(例えば、HO/トルエンなど)の中での使用も含まれ、HOに溶解し得るベタインによって安定化されたPdクラスターなどを使用することもできる。可溶性金属クラスターをポリマーに埋設して、電子的、光学的および磁気的用途のための材料を調製することも可能である。これらの複合材料を埋設するための成分としては、有機ポリマー、例えばポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリシランおよびポリスチレンなど、または無機ポリマー、例えば、ゼオライト、シリケートおよび金属酸化物などがある。この技術分野において周知のゾルゲル法を用いて、金属クラスターを無定形金属酸化物材料(例えばSiOなど)に含ませることもできる。
【0025】
可溶性金属クラスターを電気泳動によって表面に付着させることができ、例えばHOPG(highly oriented pyrolytic graphite、高度に配向された熱分解グラファイト)上にPdを付着させたもののように、光学および電子的技術における用途の新しい材料を提供することもできる。
【0026】
金属コロイドを特徴付けるために、常套の分析方法、特に、透過型電子顕微鏡(TEM)および元素分析が用いられる。分析のための実施可能な別の方法には、安定化保護殻(stabilizing protective shell)を精度をもって特徴付けすることができるTEM/STM(走査型トンネル顕微鏡)による比較検討が含まれる。
以下の実施例は、新しい方法を詳細に説明するものであり、その方法について何ら限定するものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1
THF中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セル(電解槽)に加える。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。マグネチックスターラーにより激しく撹拌しながら、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で17mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程において、電解液は暗黒色となる。640Cの電荷を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、90%のアノード効率に対応して300mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水30mlを電解液に加え、激しく振盪すると茶〜灰色の析出物が生成する。これを24時間放置し、その清澄な上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、X線回折により非結晶であると判る灰〜茶色の粉末411mg(溶解Pd基準で99%の収率)が得られる。この粉末は、THF、アセトン、トルエン、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果: Pd:72.80%、 C:19.13%、 H:3.27%、 N:0.60%、 Br:3.98%
【0028】
元素分析ならびにマススペクトルおよびNMRスペクトルは、(オクチル)NBrの存在を示し、これはコロイド粉末の成分であり、固体状態であるパラジウム粒子の凝集を効果的に防止し、従って、粉末は何カ月も十分に再分散可能なままである。
マススペクトル:m/z=353(トリオクチルアミン)
透過型電子顕微鏡写真により、直径が全て2nm以下であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが示される。THF/ペンタン(1/1)またはTHF/ジエチルエーテル(1/1)の混合電解液における電解は殆ど同様に進行する。−35℃にて、あるいはTHF還流下で実施される電解によっても同じ結果が得られる。
【0029】
実施例2
THF/ACN(4/1)中0.05Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波作用の下、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程において、電解液は暗黒色となる。320Cの電荷を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、93%の電流効率に対応して155mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水20mlを電解液に加え、激しく振盪すると茶〜灰色の析出物が生成する。これを24時間放置し、その清澄な上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、灰〜茶色の粉末207mg(溶解Pd基準で99%の収率)が得られる。この粉末は、THF、アセトン、トルエン、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果: Pd:75.11%、 C:11.34%、 H:1.58%、 N:2.57%、 Br:3.31%
マススペクトル:m/z=353(トリオクチルアミン)、41(ACN)
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て2nm以下であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布が示される。
【0030】
実施例3
THF/ACN(4/1)中0.05Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波作用の下、3mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で5mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程において、電解液は暗黒色となる。320Cの電荷を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、88%の電流効率に対応して145mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水20mlを電解液に加え、激しく振盪すると茶〜灰色の析出物が生成する。これを24時間放置し、その清澄な上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、灰〜茶色の粉末180mg(溶解Pd基準で99%の収率)が得られる。この粉末は、THF、アセトン、トルエン、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 74%
マススペクトル:m/z=353(トリオクチルアミン)、41(ACN)
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て6nm以下(最大直径4〜6nm)であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布を示す。
【0031】
実施例4
THF/ACN(4/1)中0.05Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波作用の下、1mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で2mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程において、電解液は暗黒色となる。320Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、85%の電流効率に対応して140mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水20mlを電解液に加え、激しく振盪すると茶〜灰色の析出物が生成する。これを24時間放置し、その清澄な上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、灰〜茶色の粉末175mg(溶解Pd基準で99%の収率)が得られる。この粉末は、THF、アセトン、トルエン、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 74%
マススペクトル:m/z=353(トリオクチルアミン)、41(ACN)
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て12nm以下であり、球状のコロイドに加えて角を有するものも含むコロイドの狭い寸法分布を示す。(Me)(ドデシル)NBrまたは(Me)(オクチル)NBrを支持電解質として使用する場合、実施例1〜4の実験の過程はほぼ同様である。(Meはメチル基、ドデシルはドデシル基、オクチルはオクチル基を意味する。)
【0032】
実施例5
ACN中0.05Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セル(電解槽)に加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で20mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程において、電解液は暗黒色となる。320Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、95%の電流効率に対応して156mgのPdが陽極溶解している。電解液を24時間放置すると、この間に茶〜灰色ないし黒色の析出物が沈殿し、その清澄な上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、灰〜黒色の粉末205mg(溶解Pd基準で99%の収率)が得られる。この粉末は、THF、アセトン、トルエン、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 74%
マススペクトル:m/z=353(トリオクチルアミン)、41(ACN)
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て6nm以下(最大直径4〜6nm)であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布を示す。
【0033】
実施例6
THF中0.0125Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、2mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で9mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程において、電解液は暗黒色となる。160Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、90%の電流効率に対応して75mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水20mlを電解液に加えると、激しく振盪すると茶〜灰色の析出物が生成する。この電解液を24時間放置し、その清澄な上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、灰〜黒色の粉末102mgが得られる(溶解Pd基準で99%の収率)。この粉末は、THF、アセトン、トルエン、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 74%
マススペクトル:m/z=353(トリオクチルアミン)
透過型電子顕微鏡写真によれば、2〜50nmの範囲にある非常に広い寸法分布のコロイドであることが判る。
【0034】
実施例7
プロピレンカーボネート中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波作用の下、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で17mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程において、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、85%の電流効率に対応して283mgのPdが陽極溶解している。ジエチルエーテル30mlを電解液に加え、激しく振盪すると茶〜灰色の析出物が生成する。これを24時間放置し、その清澄な上澄みをサイホン除去する。次に、析出物を5mlのジエチルエーテルおよび5mlのペンタンにより次々に洗浄する。高真空下で4時間乾燥すると、灰〜黒色の粉末346mg(溶解Pd基準で93%の収率)が得られる。この粉末は、THF、アセトン、トルエン、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 76%
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て6nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布を示す。
【0035】
実施例8
THF中0.03Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。この溶液に、3gの3−(ジメチルドデシルアンモニオ)プロパンスルホネート(9ミリモル)を懸濁させる。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波作用の下、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で13mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを28℃に維持する。この間、電解液は暗黒色となる。400Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、92%の電流効率に対応して190mgのPdが陽極溶解している。24時間以内に灰〜黒色の析出物が生成する。僅かに赤く着色した上澄みを保護ガスの下で押し出して除去し、析出物を10mlのTHF(30℃にて温度調節)により2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で20分間乾燥すると、灰〜黒色の粉末304mg(溶解Pd基準で88%の収率)が得られる。この粉末は、水およびエタノールに容易に溶解するが、ジエチルエーテル、アセトニトリル、THF、DMFおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 50%
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て16nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0036】
実施例9
THF中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。マグネチックスターラーにより激しく撹拌して、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で12mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを28℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、83%の電流効率に対応して275mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水10mlを電解液に加えて激しく振盪すると、茶〜灰色の析出物が生成する。この電解液を24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分間乾燥すると、灰〜黒色の粉末375mg(溶解Pd基準で99%の収率)が得られる。この粉末は、THFおよびトルエンに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果: Pd:72.58%、 C:9.87%、 H:2.02%、 N:0.75%、 Br:11.12%
マススペクトル:m/z=521(トリドデシルアミン)
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て4nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0037】
実施例10
THF中0.1Mの臭化テトラブチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウム(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1nmの厚さ)を電極として使用する。マグネチックスターラーにより激しく撹拌して、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で12mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを28℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、93%の電流効率に対応して308mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水10mlを電解液に加えて激しく振盪すると、茶〜灰色の析出物が生成する。この電解液を24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分間乾燥すると、灰〜黒色の粉末350mg(溶解Pd基準で99%の収率)が得られる。この粉末は、DMFに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果: Pd:86.46%、 C:8.98%、 H:1.68%、 N:0.76%、 Br:2.06%
マススペクトル:m/z=242(テトラブチルアンモニウム)、185(トリブチルアミン)
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て4nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが示される。
NBuCl(Bu=ブチル基)、NBuIおよびPBuClを安定剤として使用する電解は、同じように進行する。
【0038】
実施例11
THF中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。この溶液に、2.8gの絶乾状態のモルタル−粉砕活性炭を懸濁させる。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。320Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、93%の電流効率に対応して155mgのPdが陽極溶解している。その後の処理には、40mlのエタノールの添加および激しい撹拌が含まれる。D4フリットによる濾過ならびにその後の10mlのエタノールでの2回の洗浄およびオイルポンプによる真空下での乾燥により、灰〜黒色の粉末2.9gが得られる。このようにして得られる触媒は、5.5%のPdを含んで成る。透過型電子顕微鏡写真によれば、活性炭上に吸着された2nmの範囲のPdのコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0039】
実施例12
THF中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。金属コロイドは空気および湿気(水分)に非常に敏感であるので、溶媒が水および酸素を含まないように特に注意する必要がある。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純ニッケルのシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、5mAの電流をNi電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。320Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、ニッケルにより2電子が吸収され、96%の電流効率に対応して89mgのNiが陽極溶解している。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させると、5gの黒色の粘稠物が得られる。30mlのエーテル/エタノール(9/1)混合物を加え、激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。10mlのペンタンにより洗浄し、オイルポンプによる真空下で20分間乾燥すると、灰〜黒色の粉末178mg(溶解Ni基準で80%の収率)が得られ、これはX線回折によれば非結晶性である。この粉末は、THFおよびトルエンに容易に溶解するが、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。このコロイドは空気および水分に非常に敏感である。
元素分析結果:Ni 40.05%
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て10nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0040】
実施例13
THF中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。金属コロイドは空気および湿気に非常に敏感であるので、溶媒が水および酸素を含まないように特に注意する必要がある。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純コバルトのシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、5mAの電流をCo電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。320Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、コバルトにより2電子が吸収され、96%の電流効率に対応して89mgのCoが陽極溶解している。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させると、5gの黒色の粘稠物が得られる。30mlのエーテル/エタノール(9/1)混合物を加え、激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。10mlのペンタンにより洗浄し、オイルポンプによる真空下で20分間乾燥すると、灰〜黒色の粉末178mg(溶解Co基準で80%の収率)が得られ、これはX線回折によれば非結晶性である。この粉末は、THFおよびトルエンに容易に溶解するが、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。このコロイドは空気および水分に非常に敏感である。
元素分析結果:Co 39.23%
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て3nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0041】
実施例14
THF中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。金属コロイドは空気および湿気に非常に敏感であるので、溶媒が水および酸素を含まないように特に注意する必要がある。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の電気銅のシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、5mAの電流を銅電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、銅により1電子が吸収され、96%の電流効率に対応して336mgのCuが陽極溶解している。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させると、5.2gの黒色の粘稠物が得られる。このコロイドは空気および水分に非常に敏感である。このようにして得られたコロイドはTHF中において再分散性である。溶液を非常に希釈すると、微細な結晶のようなCu粉末が析出し、これはX線回折によれば非結晶性である。
コロイドの元素分析結果:Cu 6.4%
粉末の元素分析結果:Cu 98%
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て10nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0042】
実施例15
THF中0.1Mの臭化トリブチルヘキサデシルホスホニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純金のシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、5mAの電流を金電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗赤ないし黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、金により電子が吸収され、96%の電流効率に対応して1300mgのAuが陽極溶解している。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させると、6.2gの黒色の粘稠物が得られる。このコロイドは空気および水分に敏感である。このようにして得られたコロイドはTHF中において再分散性である。溶液を非常に希釈すると、ナノメーターオーダーで結晶のようなAu粉末が析出し、これはX線回折によれば無定型である。
コロイドの元素分析結果:Au 20%
粉末の元素分析結果:Au 97%
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て12nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0043】
実施例16
THF/ACN(4/1)中0.1Mの臭化テトラオクチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。金属コロイドは空気および湿気に非常に敏感であるので、溶媒が水および酸素を含まないように特に注意する必要がある。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純ニッケル(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用下、5mAの電流をニッケル電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。320Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、ニッケルにより2電子が吸収され、96%の電流効率に対応して89mgのNiが陽極溶解している。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させると5gの粘稠物が得られる。エーテル/エタノール混合物(9/1)を30ml加えて激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。10mlのペンタンにより洗浄し、オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、灰〜黒色の粉末178mg(溶解Ni基準で80%の収率)が得られる。この粉末は、THFおよびトルエンに容易に溶解するが、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。コロイドは空気および湿気に非常に敏感である。
元素分析結果: Ni:36.46%、 C:28.29%、 H:4.01%、 N:13.22%、 Br:2.72%
透過型電子顕微鏡写真によれば、直径が全て6nm以下であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0044】
実施例17
ACN中0.2Mの臭化テトラブチルアンモニウム60mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、30mAの電流を白金電極間で流し、この電流を20分間で100mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを30℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。3200Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、白金により2電子が吸収され、10%の電流効率に対応して330mgのPdが陽極溶解している。酸素を含まない水30mlを加えて激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で乾燥すると、灰〜黒色の粉末410mgが得られ、これはX線回折によると非結晶性である。この粉末は、ACNおよびDMFに容易に溶解するが、THF、ジエチルエーテル、ペンタン、水およびトルエンには非溶解性である。
元素分析結果:Pt 80%
透過型電子顕微鏡写真によれば、2nm以下の寸法範囲のPtコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0045】
実施例18
ACN中0.2Mの塩化テトラブチルアンモニウム60mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純ロジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、20mAの電流をロジウム電極間で流し、この電流を20分間で75mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを30℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。800Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、ロジウムにより1電子が吸収され、25%の電流効率に対応して207mgのRhが陽極溶解している。酸素を含まない水30mlを加えて激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で乾燥すると、灰〜黒色の粉末2900mgが得られ、これはX線回折によると非結晶性である。この粉末は、ACNおよびDMFに非常に容易に溶解するが、THF、ジエチルエーテル、ペンタン、水およびトルエンには非溶解性である。
元素分析結果:Rh 70%
透過型電子顕微鏡写真によれば、2nm以下の寸法範囲のRhコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0046】
実施例19
DME中0.2Mのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート60mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純ロジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、30mAの電流をロジウム電極間で流し、この電流を20分間で100mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを30℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。800Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、ロジウムにより1電子が吸収され、25%の電流効率に対応して207mgのRhが陽極溶解している。酸素を含まない水30mlを加えて激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で乾燥すると、灰〜黒色の粉末258mgが得られ、これはX線回折によると非結晶性である。この粉末は、ACNおよびDMFに非常に容易に溶解するが、THF、ジエチルエーテル、ペンタン、水およびトルエンには非溶解性である。
元素分析結果:Rh 80%
透過型電子顕微鏡写真によれば、2nm以下の寸法範囲のRhコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0047】
実施例20
DME中0.2Mのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート60mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、30mAの電流を白金電極間で流し、この電流を20分間で100mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを30℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。100Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、白金により2電子が吸収され、30%の電流効率に対応して330mgのPtが陽極溶解している。酸素を含まない水30mlを加えて激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で乾燥すると、灰〜黒色の粉末410mgが得られ、これはX線回折によると非結晶性である。この粉末は、ACNおよびDMFに非常に容易に溶解するが、THF、ジエチルエーテル、ペンタン、水およびトルエンには非溶解性である。
元素分析結果:Pt 80%
透過型電子顕微鏡写真によれば、2nm以下の寸法範囲のPtコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0048】
実施例21
THF/ACN(4/1)中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。金属コロイドは空気および湿気に対して非常に敏感であるので、溶媒が酸素および水を含まないように特に注意する必要がある。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純ニッケルのシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、6mAの電流をニッケル電極間で流す。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。320Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、ニッケルにより2電子が吸収され、96%の電流効率に対応して89mgのNiが陽極溶解している。オイルポンプによる真空の下で溶媒を蒸発させると、5gの黒色の粘稠物が得られる。エーテル/エタノール混合物(9/1)30mlを加えて激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。10mlのペンタンにより洗浄し、オイルポンプによる真空下で20分乾燥すると、灰〜黒色の粉末178mg(溶解Ni基準で80%の収率)が得られる。この粉末は、THFおよびトルエンに容易に溶解するが、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。このコロイドは空気および水分に対して非常に敏感である。
元素分析結果:Ni 60%
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径30nm未満であり、球状または多面体の幾何学的構造を有するコロイドの広い寸法分布であることが判る。このコロイド粒子は、より低い電流密度を使用した実施例16の場合より相当大きい(実施例2〜4:Pd参照)。
【0049】
実施例22
THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純銀のシート(2×2.5cmの幾何学的電極面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。超音波の作用の下、5mAの電流を銀電極間で流し、この電流を20分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、銀により電子が吸収され、96%の電流効率に対応して712mgのAgが陽極溶解している。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させると、700mgの黒色の粘稠物が後に残る。このコロイドは空気および湿気に対して敏感である。このようにして得られる微細結晶状の粉末はTHF中にて再分散性でない。
元素分析結果:Ag 93%
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径12nm以下であり、球状または六角形の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0050】
実施例23
Pd/Niの2成分金属コロイドの調製のための実験記録
THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド80mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。純白金のシート(5×5cmの幾何学的電極表面積)をカソードとして使用する。カソードから4mmの距離で横並びに配置された純ニッケルの電極および純パラジウムの電極(2.5×5cmの幾何学的電極面積)をアノードとして使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴン)下で実施する必要がある;全ての溶媒は完全に乾燥し、新たに蒸留する必要がある。30℃の温度において超音波の作用の下、二重の電源装置により、30mAの電流をニッケルと白金との間およびパラジウムと白金との間で流し、双方の電流を独立してコントロールする。電解の過程にて、電解液は暗褐色〜黒色となる。合わせて1Ahを流した後に、電解を停止する。この間、350mgのニッケル(=65%の電流効率)および600mgのパラジウム(=61%の電流効率)が溶解している。溶媒を蒸発させ、粘稠性の残渣を良好なオイルポンプの真空下で乾燥する。このようにして得られる黒色の残渣を初めに50mlのペンタンで洗浄し、その後、40mlのエタノール/ペンタン混合物(1.5/10)により5回洗浄する。オイルポンプの真空の下で乾燥した後、1.1gの灰〜黒色粉末が得られる。この粉末はTHFおよびアセトンに容易に溶解し、トルエンおよびエタノールには溶解性が小さく、エーテル、ペンタン、アセトニトリルおよび水には非溶解性である。このようにして得られるTHFコロイドは何カ月も安定である。
透過型電子顕微鏡写真によれば、十分に離れた球形のコロイドが0.5〜4nmの寸法範囲であることが判る。エネルギー分散X線(EDX)スポット分析は、大部分のコロイド粒子が双方の金属を含むことを示す。元素分析試験ではPd/Ni比が42/18であることを示す。
【0051】
実施例24
Pd/Niの2成分金属コロイドの調製のための実験記録
THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド80mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。純白金のシート(5×5cmの幾何学的電極表面積)をカソードとして使用する。カソードから4mmの距離で横並びに配置された純ニッケルの電極および純パラジウムの電極(2.5×5cmの幾何学的電極面積)をアノードとして使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴン)下で実施する必要がある;全ての溶媒は完全に乾燥し、新たに蒸留する必要がある。30℃の温度において超音波の作用の下、二重の電源装置により、30mAの電流をニッケルと白金との間および5mAの電流をパラジウムと白金との間で流し、双方の電流を独立してコントロールする。電解の過程にて、電解液は暗褐色〜黒色となる。合わせて1Ahを流した後に、電解を停止する。この間、670mgのニッケル(=80%の電流効率)および290mgのパラジウム(=90%の電流効率)が溶解している。Pd/Ni比が5/25である合金からできたアノードを使用した場合も、同様の物質が観察される。溶媒を蒸発させ、粘稠性の残渣を良好なオイルポンプの真空下で乾燥する。このようにして得られる黒色の残渣をまず50mlのペンタンで洗浄し、その後、40mlのエタノール/ペンタン混合物(1.5/10)により5回洗浄する。オイルポンプによる真空下で乾燥した後、灰〜黒色粉末1.1gが得られる。この粉末はTHFおよびアセトンに非常に容易に溶解し、トルエンおよびエタノールには溶解性が小さく、エーテル、ペンタン、アセトニトリルおよび水には非溶解性である。このようにして得られるTHFコロイドは何カ月も安定である。透過型電子顕微鏡写真によれば、十分に離れた球形のコロイドが0.5〜4nmの寸法範囲であることが判る。EDXスポット分析は、大部分のコロイド粒子が双方の金属を含むことを示す。元素分析試験ではPd/Ni比が5/25であることを示す。これを実施例23の結果と比較すると、コロイド組成物は2つの金属アノードを通る電流によってコントロールし得ることがわかる。
【0052】
実施例25
トルエン中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極表面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。マグネチックスターラーを用いた激しい撹拌によって、または超音波を用いることによって、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を10分間で17mAに増やす。ジャケット加熱により、電解セルを60〜130℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、90%の陽極効率に対応して300mgのパラジウムが陽極溶解している。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させると、黒色の固体4.4gが後に残る。これを40〜50mlのエタノール/ペンタン混合物(3/7)で3回洗浄すると、灰〜黒色の粉末360mgが得られ、これはX線回折によると非結晶である。この粉末はTHF、アセトンおよびトルエンに容易に溶解するが、水、ジエチルエーテルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 72.5%;残部の27.5%は、コロイド安定剤として粒子を保護するテトラオクチルアンモニウムブロミドから成る。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径5nm以下であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0053】
実施例26
THF中0.1Mのテトラオクタデシルアンモニウムブロミド90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。電解容器が60℃の温度に維持される場合、塩は完全に溶解する。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極表面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。マグネチックスターラーを用いた激しい撹拌によって、または超音波を用いることによって、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を10分間で17mAに増やす。ジャケット加熱により、電解セルを60℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、パラジウムにより2電子が吸収され、90%の陽極効率に対応して300mgのパラジウムが陽極溶解している。オイルポンプによる真空の下で溶媒を蒸発させると、黒色の固体9.5gが後に残る。これは、エタノール/水混合物(6/1)30mlが加えられたトルエン60ml中に溶解する。激しく振盪した後、褐〜灰色の析出物が生成する。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分間乾燥すると、灰〜黒色の粉末500mg(溶解パラジウム基準で95%の収率)が得られ、これはX線回折によると非結晶性である。この粉末はペンタンおよびトルエンには容易に溶解し、THFには溶解しにくく、水およびアセトンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 58.8%;残部の41.2%は、コロイド安定剤として粒子を保護するテトラオクタデシルアンモニウムブロミドから成る。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径6nm以下であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。コロイド粉末の溶解性は使用された保護コロイドに左右され、水溶性からペンタン溶解性までの範囲で選択して調節することができる。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例27
THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウム過塩素酸塩90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極表面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。激しい撹拌によって、または超音波を使って、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を20分間で17mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを16℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となり、褐色〜灰色の粉末が析出する。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、90%の陽極効率に対応して300mgのパラジウムが陽極溶解している。析出物を24時間放置し、褐色の上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で20分間乾燥した後、灰〜黒色の固体320mgが得られ、これは、透過型電子顕微鏡写真によると8nm以下の寸法の凝集したPd粒子から成る。元素分析結果から、92%のPd含量が示される(残りはテトラオクチルアンモニウム過塩素酸塩)。このように得られた粉末は、THFまたはその他の溶媒には完全には溶解性でないが、これは安定剤によってコロイド粒子があまり湿めらされていないことを示す。同様の結果が、BFのような他の大きい非配位アニオンでも得られる。例えばハロゲン化物のような配位アニオンは、コロイドの安定化、従って再分散性にも極めて重要である。
【0056】
実施例28
キラル保護殻を有するコロイドの調製−第4級N原子のキラリティ
THF中0.1Mのブチルベンジルオクチルドデシルアンモニウムブロミド90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極表面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。マグネチックスターラーを用いた激しい撹拌によって、または超音波を使って、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を10分間で17mAに増やす。ジャケット加熱により、電解セルを30℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、90%の陽極効率に対応して300mgのパラジウムが陽極溶解している。酸素を含まない水25mlを加えると、褐色〜灰色析出物が生じる。これを24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で乾燥した後、灰〜黒色の固体350mgが得られる。この固体は、THFおよびトルエンには容易に溶解し、水およびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 72%;残部の28%は、コロイド安定剤として粒子を保護するブチルベンジルオクチルドデシルアンモニウムブロミドから成る。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径4nm未満のPdコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0057】
実施例29
キラル保護殻を有するコロイドの調製−側鎖におけるキラリティ
THF中0.1Mのトリブチル(1−メチルベンジル)アンモニウムブロミド90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極表面積、厚さ1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。マグネチックスターラーを用いた激しい撹拌によって、または超音波を使って、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を10分間で17mAに増やす。ジャケット加熱により、電解セルを35℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となり、褐色〜灰色の析出物が生成する。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、90%の陽極効率に対応して300mgのパラジウムが陽極溶解している。析出物を24時間放置し、清澄な上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で乾燥した後、灰〜黒色の固体310mgが得られる。この固体は、DMFには容易に溶解し、THFには溶解しにくいが、水およびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:Pd 74%;残部の26%は、コロイド安定剤として粒子を保護するトリブチル(1−メチルベンジル)アンモニウムブロミドから成る。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径6nm以下のPdコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0058】
実施例30
2,5−ジメチルテトラヒドロフラン中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純パラジウムのシート(2×2.5cmの幾何学的電極表面積、1mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。マグネチックスターラーを用いた激しい撹拌によって、5mAの電流をパラジウム電極間で流し、この電流を10分間で17mAに増やす。ジャケット加熱により、電解セルを39℃に維持する。電解の過程にて、電解液は褐色となり、褐色〜灰色の析出物が生成する。640Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を150mlの窒素含有容器に圧入する。この間、90%の陽極効率に対応して300mgのパラジウムが陽極溶解している。析出物を39℃で3時間放置し、少し褐色がかった上澄み液をサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で乾燥した後、灰〜黒色の固体350mgが得られる。この固体は、THFおよびトルエンには容易に溶解し、水およびペンタンには非溶解性である。この実験の過程はNi、CoおよびFeの場合と同様である。
元素分析結果:Pd 72%;残部の28%は、コロイド安定剤として粒子を保護するテトラオクチルアンモニウムブロミドから成る。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径2nm未満のPdコロイドの狭い寸法分布であることが判る。
【0059】
実施例31
THF中0.1Mの酢酸テトラブチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(1.5×2cmの幾何学的電極表面積、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波の作用の下、PtCl 0.5gを電解液に溶解し、5mAの電流を白金電極間で流し、この電流を10分間で30mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを20℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。365Cの電気量を流した後、電解を停止して電解液を200mlの窒素含有容器に圧入する。2〜5時間で灰〜黒色析出物が生じる。少し褐色がかった清澄な上澄み液を、不活性ガス下で加圧除去し、析出物をジエチルエーテル10mlで2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で1時間乾燥すると、灰〜黒色の粉末645mgが得られる。この粉末は、DMFには容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 51%。残部はアンモニウム塩から成る。これは、白金イオン1個あたり2個の電子の取り込みがあり、90%の効率に対応する。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径3〜5nmで球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。これらのコロイド(DMF溶液から吸着、基材:テンパックス(Tempax)石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層を有する金属コアの被覆が明らかに判る。PtBr、PtIおよびアセチルアセトン白金(II)を用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0060】
実施例32
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF/ACN(4/1)中0.1Mの酢酸テトラブチルアンモニウム100ml。金属塩:PdCl 0.5g。電流:5mA、10分間で20mAに増やす。通過電気量:500C。生成物:灰〜黒色粉末440mg。この粉末は容易にDMFに溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 62%。収率:93%。寸法:5nm未満。PdBr、PdIおよびアセチルアセトンパラジウム(II)を用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0061】
実施例33
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF中0.1Mのテトラブチルアンモニウムトリフルオロ酢酸100ml。金属塩:PdCl 0.5g。通過電気量:500C。生成物:灰〜黒色粉末458mg。この粉末は容易にDMFに溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 54%。収率:84%。直径:5nm未満。PdBr、PdIおよびアセチルアセトンパラジウム(II)を用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0062】
実施例34
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド50ml。金属塩:THF中0.05MのMo(OAc)450ml(Ac=アセチル基)。通過電気量:480C。電解液を200mlの窒素含有容器に圧入し、20mlのジエチルエーテルを加えて激しく振盪すると、灰〜黒色析出物が生成する。生成物:黒色の粉末265mg。この粉末はTHFおよびトルエンに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:モリブデン 37%。収率:72%。直径:1〜5nm。安定剤としてのN(C17)Cl、N(C17)ClO、N(C17)PF、N(C17)BF、N(C17)OTf(Tf=トリフルオロメタンスルホニル基)、N(C17)OTs(Ts=パラトルイルスルホニル基)、P(C17)ClまたはP(C17)Brを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0063】
実施例35
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF中0.1Mの酢酸テトラブチルアンモニウム50mlおよびTHF中0.1Mの塩化テトラブチルアンモニウム50ml。金属塩:0.5gのRhCl・xHO。通過電気量:700C。生成物:灰〜黒色の粉末440mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ロジウム 46%。収率:92%。直径:2〜3nm。RhBr・xHOおよびRhClを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0064】
実施例36
手順と処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(4×4cmの幾何学的電極表面、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。金属塩:RuCl・HO 0.5g。ジャケット冷却により、電解セルを18℃に維持する。通過電気量:650C。24時間で灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色粉末290mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ルテニウム 55%。収率:73%。直径:5nm未満。RuClを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0065】
実施例37
手順と処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(4×4cmの幾何学的電極表面、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。金属塩:CoBr 0.5g。ジャケット冷却により、電解セルを18℃に維持する。通過電気量:400C。少し褐色がかった清澄な上澄み液を不活性ガス下で加圧除去し、析出物を純ペンタン10mlで2回洗浄する。生成物:灰〜黒色の粉末250mg。この粉末は容易にDMFに溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:コバルト 44%。収率:88%。直径:5nm未満。CoIを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0066】
実施例38
手順と処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(4×4cmの幾何学的電極表面、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。金属塩:NiBr 0.5g。ジャケット冷却により、電解セルを18℃に維持する。通過電気量:500C。少し褐色がかった清澄な上澄み液を不活性ガス下で加圧除去し、析出物を純ペンタン10mlで2回洗浄する。生成物:灰〜黒色粉末250mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ニッケル 38%。収率:86%。直径:5nm未満。NiIを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0067】
実施例39
手順と処理は実施例31と同様である。金属塩:OsCl 0.5g。ジャケット冷却により、電解セルを18℃に維持する。電流:5mA、5分間で15mAに増やす。通過電気量:500C。24時間で灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末360mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:オスミウム 62%。収率:69%。直径:3nm未満。
【0068】
実施例40
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF中0.05Mの酢酸テトラブチルアンモニウム100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。電流:2mA、10分間で30mAに増やす。通過電気量:430C。生成物:黒色の粉末318mg。この粉末は容易にDMFに溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 70%。収率:95%。直径:1〜5nm。Pd(II)トリフルオロアセテートおよびPd(II)トリフルオロメタンスルホネートを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0069】
実施例41
手順と処理は実施例31と同様である。金属塩:GaBr 0.6g。電流:2mA、10分間で20mAに増やす。通過電気量:550C。生成物:黒色の粉末195mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、トルエン、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ガリウム 61%。収率:89%。直径:10nm未満。GaClを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0070】
実施例42
THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド100mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(1.5×2cmの幾何学的電極表面積、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波の作用の下、In(OAc) 0.6gを電解液に溶解し、2mAの電流を白金電極間で流し、この電流を10分間で20mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを20℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。600Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を200mlの窒素含有容器に圧入する。電解液に酸素を含まない水15mlを加えて激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。24時間後、少し褐色がかった清澄な上澄み液を、不活性ガス下で加圧除去し、析出物をジエチルエーテル10mlで2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥すると、黒色の粉末380mgが得られる。この粉末は、THFおよびトルエンには容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
【0071】
元素分析結果:インジウム 55%。これは、インジウムイオンにより3電子が吸収され、89%の電流効率に対応する。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径10nm未満のコロイドの狭い寸法分布であり、球状の幾何学的構造を有することが判る。安定剤としてN(C17)Cl、N(C17)ClO、N(C17)PF、N(C17)BF、N(C17)OTf、N(C17)OTs、P(C17)ClまたはP(C17)Brを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0072】
実施例43
手順と処理は実施例31と同様である。金属塩:Tl(OAc) 0.5g。通過電気量:370C。生成物:黒色の粉末530mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、トルエン、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:タリウム 36%。収率:72%。直径:1〜5nm。
【0073】
実施例44
手順と処理は実施例42と同様である。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。通過電気量:430C。生成物:黒色の粉末288mg。この粉末はTHFおよびトルエンに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 72%。収率:88%。直径:3〜4nm。これらのコロイド(THF溶液から吸着、基質:テンパックス石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層を有する金属コアの被覆が明らかに判る。安定剤としてN(C17)Cl、N(C17)ClO、N(C17)PF、N(C17)BF、N(C17)OTf、N(C17)OTs、P(C17)ClまたはP(C17)Brを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0074】
実施例45
手順と処理は実施例42と同様である。電解液:THF/水(10/1)中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド100ml。金属塩:PtBr 0.5g。通過電気量:270C。生成物:黒色の粉末420mg。この粉末はTHFおよびトルエンに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 41%。収率:63%。直径:1〜10nm。安定剤としてN(C17)Cl、N(C17)ClO、N(C17)PF、N(C17)BF、N(C17)OTf、N(C17)OTs、P(C17)ClまたはP(C17)Brを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0075】
実施例46
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF/水(10/1)中0.1Mのテトラブチルアンモニウムブロミド100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。通過電気量:430C。生成物:黒色の粉末294mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 71%。収率:89%。直径:3〜4nm。これらのコロイド(DMF溶液から吸着、基質:テンパックス石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層を有する金属コアの被覆が明らかに判る。安定剤としてNBuCl、NBuI、NBuClO、NBuPF、NBuBF、NBuOTf、NBuOTs、NBuClまたはNBuBrを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0076】
実施例47
THF中0.1Mのテトラオクタデシルアンモニウムブロミド100mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える(サーモスタット;60℃)。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(1.5×2cmの幾何学的電極表面積、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波の作用の下、またはマグネチックスターラーを用いた激しい撹拌によって、Pd(OAc) 0.5gを電解液に溶解し、2mAの電流を白金電極間で流し、この電流を10分間で10mAに増やす。溶媒の中の安定剤を保つために、ジャケット加熱により電解セルを60℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。430Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を200mlの窒素含有容器に圧入する。オイルポンプによる真空の下で溶媒を蒸発させると、黒色の固体が後に残る。これをトルエン100mlに溶解し、エタノール/水混合物(10/1)20mlをゆっくりと加える。激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。24時間後、少し褐色がかった清澄な上澄み液を、不活性ガス下で加圧除去し、析出物をジエチルエーテル10mlで2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥すると、灰色の粉末457mgが得られる。この粉末は、トルエンおよびペンタンには容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、THFおよびアセトニトリルには非溶解性である。
【0077】
元素分析結果:パラジウム 34%。これは、パラジウムイオン1個あたり2個の電子の取り込みがあり、66%の収率に対応する。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径1〜5nmであり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。これらのコロイド(ペンタン溶液から吸着、基質:テンパックス石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層を有する金属コアの被覆が明らかに判る。
【0078】
実施例48
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF中0.1Mのテトラブチルアンモニウムブタノエート100ml。金属塩:PdBr 0.5g。通過電気量:270C。生成物:灰〜黒色の粉末316mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 79%。収率:91%。直径:1〜10nm。PtCl、PtIおよびアセチルアセトン白金(II)を用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0079】
実施例49
手順と処理は実施例42と同様である。電解液:THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムプロパノエート100ml。金属塩:PtCl 0.5g。通過電気量:370C。生成物:灰〜黒色の粉末508mg。この粉末はTHFおよびトルエンに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 71%。収率:98%。直径:1〜10nm。PtBr、PtIおよびアセチルアセトン白金(II)を用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0080】
実施例50
手順と処理は実施例42と同様である。電解液:THF中0.1Mの(−)−N−ドデシル−N−メチルエフェドリニウムブロミド100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。通過電気量:430C。生成物:灰〜黒色の粉末325mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 65%。収率:90%。直径:1〜5nm。NMRスペクトルの結果によれば、安定剤のシグナルが明らかに判る。
【0081】
実施例51
手順と処理は実施例42と同様である。電解液:THF中0.1Mのベンジルブチルドデシルオクチルアンモニウムブロミド100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。通過電気量:430C。生成物:灰〜黒色の粉末274mg。この粉末はTHFおよびトルエンに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 78%。収率:91%。直径:1〜5nm。NMRスペクトルの結果によれば、安定剤のシグナルが明らかに判る。安定剤としてトリブチル(1−メチルベンジル)アンモニウムブロミドを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0082】
実施例52
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:THF中0.1Mの3−(ジメチルドデシルアンモニオ)プロパンスルホネート・LiCl 100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。電流:2mA、10分間で15mAに増やす。ジャケット冷却により、電解セルを40℃に維持する。通過電気量:430C。生成物:灰〜黒色の粉末402mg。この粉末は水、メタノールおよびエタノールに容易に溶解し、THF、トルエン、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 52%。収率:89%。直径:1〜10nm。安定剤として3−(N,N−ジメチルステアリルアンモニオ)プロパンスルホネートを用いる電解もほぼ同様にして進む。これらのコロイド(水溶液から吸着、基質:テンパックス石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層を有する金属コアの被覆が明らかに判る。様々に安定化されたコロイドの溶解性の研究結果を以下に示す:
【0083】
【表2】

【0084】
実施例53
手順と処理は実施例52と同様である。電解液:THF中0.1Mの3−(ジメチルドデシルアンモニオ)プロパンスルホネート・LiOAc 100ml。金属塩:RuCl・HO 0.5g。通過電気量:650C。生成物:黒色の粉末270mg。この粉末は水に容易に溶解し、DMF、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ルテニウム 58%。収率:75%。直径:1〜2nm。これらのコロイド(水溶液から吸着、基質:テンパックス石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層を有する金属コアの被覆が明らかに判る。
【0085】
実施例54
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:プロピレンカーボネート中0.05Mのテトラブリルアンモニウムブロミド100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。通過電気量:430C。生成物:黒色の粉末550mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 41%。収率:96%。直径:1〜5nm。安定剤としてのNBuCl、NBuI、NBuClO、NBuPF、NBuBF、NBuOTf、NBuOTs、NBuClまたはNBuBrを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0086】
実施例55
手順と処理は実施例31と同様である。電解液:アセトニトリル中0.05Mのテトラブチルアンモニウムブロミド100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。通過電気量:430C。生成物:黒色の粉末367mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:パラジウム 57%。収率:89%。直径:1〜5nm。安定剤としてのNBuCl、NBuI、NBuClO、NBuPF、NBuBF、NBuOTf、NBuOTs、NBuClまたはNBuBrを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0087】
実施例56
手順と処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(4×4cmの幾何学的電極表面積、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。電流:1mA。生成物:灰〜黒色の粉末630mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 52%。収率:90%。直径:6〜15nm。実施例31および実施例57と比較すると、低い電流密度による電解によって、より大きなコロイドが生成する。
【0088】
実施例57
手順と処理は実施例31と同様である。電流:195mA。生成物:灰〜黒色の粉末788mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 38%。収率:82%。直径:2nm未満。実施例31および実施例56と比較すると、高い電流密度による電解によって、より小さなコロイドが生成する。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例58
THF中0.1Mの酢酸テトラブチルアンモニウム100mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。乳鉢で粉砕した乾燥アルミナ3.5gをこの溶液に基材物質として懸濁させる。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(4×4cmの幾何学的電極表面積、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。撹拌によって、RuCl・HO 0.5gを電解液に溶解し、5mAの電流を白金電極間で流し、この電流を10分間で30mAに増やす。溶媒の中の安定剤を保つために、ジャケット冷却により電解セルを18℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。635Cの電気量を流した後に、電解を停止する。2時間後、上澄み液を不活性ガス下で加圧除去し、固体残渣をジエチルエーテル20mlで2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥すると、淡灰色の粉末3.8gが得られる。
【0091】
元素分析結果:ルテニウム 3.9%。これは、ルテニウムイオン1個あたり3個の電子の取り込みがあり、68%の効率に対応する。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径5nm未満であり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの狭い寸法分布であることが判る。活性炭、SiO、TiO、La、Y、MgOまたはケブラー(登録商標)を用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0092】
実施例59
150mlの窒素含有容器にてパラジウムコロイド(実施例52参照、金属含量:26%、平均寸法:3〜5nm)250mgを、酸素を含まない水100mlに溶解する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。激しい撹拌によって、乳鉢で粉砕した乾燥二酸化チタン5.0gを加え、さらに50分間撹拌を続ける。2時間後、オイルポンプによる真空下で24時間乾燥すると、淡灰色の粉末2.25gが得られる。
元素分析結果:パラジウム 1.3%。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径3〜5nm未満であり、球状の幾何学的構造を有し、それぞれが基材に固定されているコロイドの狭い寸法分布を有することが判る。このようにして、基材固定前と同様の寸法分布が観察される。基材物質として活性炭、Al、SiO、La、Y、MgOまたはケブラー(登録商標)を用いる基材固定もほぼ同様にして進む。
【0093】
実施例60
50mlの窒素含有容器にてパラジウムコロイド(実施例44参照、金属含量:72%、平均寸法:1〜5nm)100mgを、THF10mlに溶解する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波を使って、乾燥したポリ(p−フェニレン−ビニレン)0.5gのTHF10ml中溶液に加える。10分後、オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させる。オイルポンプの真空下で2時間乾燥すると、暗色の粉末600mgが得られる。
元素分析結果:パラジウム 12%。このように調製された粉末は、フィルムおよび加工物の調製に非常に有用である。PMMAおよびポリスチレンを用いる埋設もほぼ同様にして進む。
【0094】
実施例61
手順と処理は実施例31と同様である。金属塩:PtCl 0.25gおよびRhCl・3HO 0.25g。通過電気量:530C。生成物:灰〜黒色の粉末360mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 42%およびロジウム:24%。収率:86%。直径:3nm未満。それぞれの粒子のエネルギー分散X線(EDX)スポット分析は、コロイドに白金とロジウムの双方が存在することを示す。これらのコロイド(DMF溶液から吸着、基質:テンパックス石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層を有する金属コアの被覆が明らかに判る。PtBr、PtI、アセチルアセトン白金(II)からの白金の電解、ならびにRhCl、RhBr・xHOからのロジウムの電解もほぼ同様にして進む。
【0095】
実施例62
手順と処理は実施例31と同様である。金属塩:PtCl 450mgおよびRhCl・3HO 50mg。通過電気量:400C。生成物:灰〜黒色の粉末340mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 62%およびロジウム:4%。収率:83%。直径:3nm未満。それぞれの粒子のエネルギー分散X線(EDX)スポット分析は、コロイドに白金とロジウムの双方が存在することを示す。PtBr、PtI、アセチルアセトン白金(II)からの白金の電解、ならびにRhCl、PhBr・xHOからのロジウムの電解もほぼ同様にして進む。
【0096】
実施例63
THF中0.1Mのテトラオクチルアンモニウムブロミド100mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。以下のものを電極として使用する:約3mmの距離で離れた純白金のシートをカソードとして、純銅のシートをアノードとして使用する(1.5×2cmの幾何学的電極表面積、0.5mmの厚さ)。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波の作用の下、PdBr 0.5gを電解液に溶解し、2mAの電流を電極間で流し、この電流を10分間で20mAに増やす。ジャケット冷却により電解セルを20℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。490Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を200mlの窒素含有容器に圧入する。酸素を含まない水15mlを電解液に加え激しく振盪すると、灰〜黒色の析出物が生成する。24時間後、わずかに茶色の透明な上澄み液を不活性ガス下で加圧除去し、析出物をジエチルエーテル10mlで2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥すると、黒色の粉末570mgが得られる。この粉末はTHFおよびトルエンに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
【0097】
元素分析結果:パラジウム 35%および銅:15%。残部は、テトラオクチルアンモニウムブロミド安定剤である。これは、97%の電流効率に相当する。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径1〜5nmであり、球状の幾何学的構造を有するコロイドの寸法分布であることが判る。個々の粒子のエネルギー分散型X線(EDX)スポット分析は、コロイド中に明らかにパラジウムと銅の双方が存在することを示す。安定剤としてN(C17)Cl、N(C17)ClO、N(C17)PF、N(C17)BF、N(C17)OTf、N(C17)OTs、P(C17)ClまたはP(C17)Brを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0098】
実施例64
手順と処理は実施例63と同様である。金属塩:PtCl 0.5g。通過電気量:495C。生成物:黒色の粉末675mg。この粉末はTHFおよびトルエンに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、DMF、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:白金 53%および銅:23%。収率:98%。直径:1〜5nm。個々の粒子のエネルギー分散型X線(EDX)スポット分析は、コロイドに白金と銅の双方が存在することを示す。安定剤としてN(C17)Cl、N(C17)ClO、N(C17)PF、N(C17)BF、N(C17)OTf、N(C17)OTs、P(C17)ClまたはP(C17)Brを用いる電解もほぼ同様にして進む。
【0099】
実施例65
手順と処理は実施例63と同様である。電解液:THF中0.1Mのテトラブチルアンモニウムブロミド100ml。電極として、約3mmの距離で離れた純白金のシートをカソードに、またスズのシートをアノードに使用する。(1.5×2cmの幾何学的電極面積、0.5mmの厚さ)通過電気量:800C。生成物:黒色の粉末745mg。この粉末はDMFに容易に溶解し、水、THF、トルエン、ジエチルエーテル、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
【0100】
元素分析結果:白金 49%およびスズ:36%。収率:98%。直径:3〜5nm。個々の粒子のエネルギー分散型X線(EDX)スポット分析は、コロイドに白金とスズの双方が存在することを示す。これらのコロイド(DMF溶液から吸着、基材:テンパックス(Tempax)石英担体上200nmの金)のTEM/STM比較観察によれば、安定剤の単分子層により金属コアが被覆されていることが明らかに判る。安定剤としてN(ブチル)Cl、N(ブチル)I、N(ブチル)ClO、N(ブチル)PF、N(ブチル)BF、N(ブチル)OTf、N(ブチル)OTs、P(ブチル)ClまたはP(ブチル)Brを用いる電解もほぼ同様にして進む。(ブチルは、ブチル基を意味する。)
【0101】
実施例66
THF/水(10/1)中0.1Mの酢酸テトラブチルアンモニウム90mlを、電解液20〜100ml用の多目的電解セルに加える。乳鉢粉砕活性炭5.0gを基材物質としてこの溶液中に懸濁させる。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(1.5×2cmの幾何学的電極表面積、0.5mmの厚さ)を電極として使用する。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。超音波の作用の下、PtCl 0.25gおよびRhCl・3HO 0.25gを電解液に溶解し、5mAの電流を白金電極間で流し、この電流を10分間で30mAに増やす。ジャケット冷却により電解セルを20℃に維持する。電解の過程にて、電解液は暗黒色となる。530Cの電気量を流した後に、電解を停止して電解液を200mlの窒素含有容器に圧入する。少し褐色がかった上澄み液を不活性ガス下で加圧除去し、残留固体をジエチルエーテル10mlで2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で1時間乾燥すると、黒色の粉末5.36gが得られる。
【0102】
元素分析結果:白金 3.1%およびロジウム:1.7%。これは、1白金イオン当たり2個の電子による吸収および1ロジウムイオン当たり3個の電子による吸収により83%の電流効率に相当する。透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径3nm未満であり、球状の幾何学的構造を有し、個々に基材に固定されたコロイドの狭い寸法分布であることが判る。それぞれの粒子のエネルギー分散型X線(EDX)スポット分析は、コロイド中に明らかに白金とロジウムの双方が存在することを示す。PtBr、PtI、アセチルアセトン白金(II)からの白金、ならびにRhCl、RhBr・xHOからのロジウムの電解もほぼ同様にして進む。
【0103】
実施例67
ミニオートクレーブにおいて、活性炭上パラジウム85mg(実施例59と同様、金属含量5%)を20mlのDMF中で懸濁させる。ブロモベンゼン2ミリモル、スチレン2ミリモルおよび酢酸テトラブチルアンモニウム4ミリモルを加えた後に、振盪しながら120℃で加熱する。16時間後、スチルベン267mgを反応溶液から分離できる。これは、74%の転化率に相当する。
【0104】
実施例68
ミニオートクレーブにおいて、ロジウムコロイド25mg(実施例45と同様、金属含量38%)を20mlのTHF中で溶解させる。シクロヘキセン5ミリモルを加えた後に、容器を20℃で振盪しながら水素雰囲気(1バール)にさらす。1時間後、水和が終了、反応溶液のガスクロマトグラムにより、シクロヘキサンおよびTHFが個別に検知できる。これは、100%の転化率に相当する。
【0105】
実施例69
オートクレーブにおいて、ルテニウム/アルミナ触媒150mg(実施例58と同様、金属含量3.9%)を25mlのベンゼンおよび水5ml中で懸濁させる。その後、懸濁液を145℃で加熱し、振盪しながら水素(全圧力50バール)で加圧する。25分後、ガスクロマトグラムはシクロヘキセン31%およびシクロヘキサン69%の生成を示す。
【0106】
実施例70
電解液20〜100ml用の多目的電解セルにおいて、パラジウムコロイド10mg(実施例32参照、金属含量62%)を20mlのDMFに溶解する。電極として、約6mmの距離で離れた純白金のシートをカソードに、新たに延伸したグラファイト(HOPG)をアノードに使用する(1×1cmの幾何学的電極表面積)。全ての操作は不活性ガス雰囲気(アルゴンまたは窒素)下で実施する必要がある。30秒間、電圧30ボルトを電極の間に適用する。続いて、グラファイトの電極を取り除き、ジエチルエーテル3mlで2回洗浄する。走査顕微鏡写真で調べると、はっきりとコロイドで表面が被覆されているのが判る。
【0107】
実施例71
2mlのプラスチック容器において、0.1Mのフッ化ナトリウム水溶液160μlに、撹拌しながらMg(OEt) [=Mg(OC)]4ミリモル(Etは、エチル基を意味する。)、メチルトリメトキシシラン 1ミリモル、パラジウムコロイド1mg(金属含量44%)およびTHF200μlを加える。50℃で24時間乾燥した後、さらに24時間オイルポンプによる真空下で残留した揮発性成分を除去する。その後、エタノール中乳鉢粉砕した残渣を24時間還流する。デカンテーション後、オイルポンプによる真空下で固体を乾燥させる。
元素分析結果:パラジウム 0.1%
【0108】
実施例72
60mlのミニオートクレーブにおいて、ゾル−ゲルマトリックス中パラジウム85mg(実施例71参照、金属含量0.1%)を20mlのDMF中で懸濁させる。ヨードベンゼン2ミリモル、スチレン2ミリモルおよび酢酸テトラブチルアンモニウム4ミリモルを加えた後に、振盪しながら60℃で加熱する。12時間後、スチルベン288mgを反応溶液から分離できる。これは、80%の収率に相当する。
【0109】
実施例73
手順および処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(幾何学的電極表面積4×4cm、厚さ0.5mm)を電極として使用する。金属塩:YCl 0.5g。ジャケット冷却により、電解槽を18℃に維持する。通過電気量:750C。24時間以内に、灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末420mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:イットリウム 22%。収率40%
直径:<5nm
【0110】
実施例74
手順および処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(幾何学的電極表面積4×4cm、厚さ0.5mm)を電極として使用する。金属塩:ZrCl 0.5g。ジャケット冷却により、電解槽を18℃に維持する。通過電気量:825C。24時間以内に、灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末244mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ジルコニウム 36%。収率45%
直径:<3nm
【0111】
実施例75
手順および処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(幾何学的電極表面積4×4cm、厚さ0.5mm)を電極として使用する。金属塩:NbBr 0.5g。ジャケット冷却により、電解槽を18℃に維持する。通過電気量:500C。24時間以内に、灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末114mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ニオブ 50%。収率60%
直径:1〜3nm
【0112】
実施例76
手順および処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(幾何学的電極表面積4×4cm、厚さ0.5mm)を電極として使用する。金属塩:ReCl 0.5g。ジャケット冷却により、電解槽を18℃に維持する。通過電気量:500C。24時間以内に、灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末423mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:レニウム 55%。収率73%
直径:<5nm
【0113】
実施例77
手順および処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(幾何学的電極表面積4×4cm、厚さ0.5mm)を電極として使用する。金属塩:YbCl 0.5g。ジャケット冷却により、電解槽を18℃に維持する。通過電気量:550C。24時間以内に、灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末400mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:イッテルビウム 24%。収率31%
直径:<5nm
【0114】
実施例78
手順および処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(幾何学的電極表面積4×4cm、厚さ0.5mm)を電極として使用する。金属塩:UBr 0.5g。ジャケット冷却により、電解槽を18℃に維持する。通過電気量:300C。24時間以内に、灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末425mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ウラン 36%。収率61%
直径:<3nm
【0115】
実施例79
手順および処理は実施例31と同様である。約3mmの距離で離れた2枚の純白金のシート(幾何学的電極表面積4×4cm、厚さ0.5mm)を電極として使用する。金属塩:CdBr 0.5g。ジャケット冷却により、電解槽を18℃に維持する。通過電気量:350C。24時間以内に、灰〜黒色の析出物が生成する。生成物:灰〜黒色の粉末260mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、水、ジエチルエーテル、THF、アセトニトリル、トルエンおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:カドミウム 72%。収率91%
直径:2〜10nm
【0116】
実施例80
手順および処理は実施例31と同様である。金属塩:Bi(OAc) 0.5g。通過電気量:400C。生成物:黒色の粉末223mg。この粉末は、DMFに容易に溶解し、水、THF、ジエチルエーテル、トルエン、アセトニトリルおよびペンタンには非溶解性である。
元素分析結果:ビスマス 68%。収率56%
直径:5〜10nm
【0117】
実施例81
手順および処理は実施例31と同様である。水中0.1Mの3−(ジメチルドデシルアンモニオ)プロパンスルホネートの電解液100ml。金属塩:Pd(OAc) 0.5g。電流:10mA、10分で50mAに増加。通過電気量:430C。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させ、残渣をエタノール/エーテル(1:10)混合物により2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥すると、淡灰色の粉末548mgが生成する。
元素分析結果:パラジウム 39%。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径10nm未満であるコロイドの狭い寸法分布が判る。
【0118】
実施例82
手順および処理は実施例81と同様である。金属塩:PtCl 0.5g。通過電気量:365C。オイルポンプによる真空下で溶媒を蒸発させ、残渣をエタノール/エーテル(1:10)混合物により2回洗浄する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥すると、淡灰色の粉末720mgが生成する。
元素分析結果:白金 46%。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径10nm未満であるコロイドの狭い寸法分布が判る。
【0119】
実施例83
150mlのベッセルにおいて、100mgのパラジウムコロイド(実施例52参照、金属含量57%、平均寸法3〜5nm)を水100mlに溶解する。強く撹拌しながら、乳鉢で粉砕したアルミナ5.0gを加え、撹拌を更に3時間継続する。30分後、無色の上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥して淡灰色の粉末5.1gを得る。
元素分析結果:パラジウム 1.1%。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径3〜5nmであり、球状構造を有し、基材に個々に付着したコロイドの狭い寸法分布が判る。これらの担持されたパラジウムクラスターはグロー・エバポレーション(glow evaporation)によりカーボン中に埋設する。グロー・エバポレーションとは、炭素線維を気化させ、気化した炭素を担持されたパラジウムクラスター上に付着(または析出)させ、クラスターを炭素分中に埋め込む操作である。この物質のウルトラミクロトーム断面によれば、アルミナの粒の表面にのみ金属コロイドが存在することが判る。
【0120】
実施例84
150mlのベッセルにおいて、150mgのパラジウムコロイド(実施例52参照、金属含量57%、平均寸法3〜5nm)を水100mlに溶解する。強く撹拌しながら、3.0gの乳鉢粉砕カーボンブラック(バルカン(Vulcan、登録商標)XC−72)を加え、撹拌を更に3時間継続する。30分後、無色の上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥して黒色の粉末3.15gを得る。
元素分析結果:パラジウム 2.7%。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径3〜5nmであり、球状構造を有し、基材に個々に付着したコロイドの狭い寸法分布が判る。基材固定前と同様の寸法分布が認められる。Al、TiO、SiO、La、Y、MgOまたはケブラー(Kevlar、登録商標)を基材物質として使用する基材固定も同様に進行する。
【0121】
実施例85
50mlのベッセルにおいて、15mgのパラジウムコロイド(実施例52参照、金属含量57%、平均寸法3〜5nm)を水100mlに溶解する。強く振盪しながら、孔がコントロールされたガラスであるバイオラン(Bioran、登録商標、孔直径101nm、粒子寸法130〜250μm)250mgを加え、振盪を更に3時間継続する。30分後、無色の上澄みをサイホン除去する。オイルポンプによる真空下で24時間乾燥して灰色の物質264mgを得る。
元素分析結果:パラジウム 3.2%。
透過型電子顕微鏡写真によれば、全てが直径3〜5nmであり、球状構造を有し、基材に個々に付着したコロイドの狭い寸法分布が判る。基材固定前と同様の寸法分布が認められる。シラン(Siran、登録商標)を基材物質として使用する基材固定も同様に進行する。
【0122】
以下に、本発明の主な態様を記載する。
1.
周期律表のIb族、IIb族、III族、IV族、V族、VI族、VIIb族、VIII族、ランタノイド族及び/又はアクチノイド族の金属を含んで成り、
粒子寸法が50nm以下であり、
支持電解質及び/又は安定剤として、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩(それぞれR又はRであって、R、R、R、Rは同じ又は異なり、C1−18アルキル又はアリール基である。)が存在する、
有機媒体に溶解性もしくは再分散性である金属コロイド、2成分系金属コロイドまたは多成分系金属コロイド。
2.
有機溶媒、有機溶媒の混合物、有機溶媒及び水の混合物又は水中において、−78℃〜+120℃の温度範囲内で、
支持電解質及び/又は安定剤として、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩(それぞれR又はRであって、R、R、R、Rは同じ又は異なり、C1−18アルキル又はアリール基である。)の存在下、
周期律表のIb族、IIb族、III族、IV族、V族、VI族、VIIb族、VIII族、ランタノイド族および/またはアクチノイド族の1種またはそれ以上の金属の金属塩を陰極還元して、金属コロイド状溶液または再分散性金属コロイド粉末を生成することを特徴とする、粒子寸法が50nm以下である金属コロイドを電気化学的に調製する方法。
3.
不活性基材及び/又はそれぞれの金属の溶解性金属塩の存在下で、陰極還元することを特徴とする上記2に記載の方法。
4.
第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩(それぞれR又はRであって、R、R、R、Rは同じ又は異なり、C1−18アルキル、フェニル、ベンジル又はナフチルである。)を使用する上記2に記載の方法。
5.
支持電解質のアニオンとして、ハロゲン化物(Cl、Br、I)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、カルボキシレート(R'CO、R'=アルキルまたはアリール)またはスルホネート(R"SO、R"=アルキル又はアリール)を使用する上記2に記載の方法。
6.
キラルなテトラアルキルアンモニウム塩(R≠R≠R≠R)又は配位子にキラル中心を有するテトラアルキルアンモニウム塩を使用する上記2に記載の方法。
7.
金属としてFe、Co、Ni、Pd、Pt、Ir、Rh、Cu、Ag、Auを使用する上記2に記載の方法。
8.
該溶解性金属塩のアニオンは、ハロゲン化物から選択される上記3に記載の方法。
9.
溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトニトリル(ACN)またはこれらの混合物を使用する上記2に記載の方法。
10.
電解を室温にて実施する上記2に記載の方法。
11.
電流密度を0.1mA/cm〜40mA/cmの範囲で変えることにより、粒子寸法を2nm以下〜15nmに調節する上記2に記載の方法。
12.
1つの不活性電極及び陽極溶出させる1又はそれ以上の金属電極を含む電解槽に1種又はそれ以上の金属塩を加えることを特徴とする、上記2〜11のいずれかに記載の方法に基づいて、2成分系金属コロイドまたは多成分系金属コロイドを調製する方法。
13.
周期律表のIb族、IIb族、III族、IV族、V族、VI族、VIIb族、VIII族、ランタノイド族及び/又はアクチノイド族の金属を含んで成り、
粒子寸法が50nm以下であり、
水溶性、特にカチオン性、アニオン性、ベタイン性またはノニオン性安定剤の存在下で安定化される水溶性金属コロイド、2成分系金属コロイドまたは多成分系金属コロイド。
14.
上記1又は13に記載の金属コロイドにより被覆された、カーボンブラック、活性炭、ガラス、無機酸化物及び有機ポリマーから選択される不活性基材。
15.
上記1又は13に記載の金属コロイドの単分子層、2分子層又は多分子層により表面が被覆された上記14に記載の不活性基材。
16.
有機合成における触媒として使用される、上記14又は15に記載の被覆された不活性基材。
17.
上記2〜12のいずれかに記載の方法において、電気化学的調製の間又は別の工程において、不活性基材の存在下で、上記1又は13に記載の金属コロイドを生成させて、該不活性基材の表面に該金属コロイドを適用する上記14〜16のいずれかに記載の被覆不活性基材の製造方法。
18.
上記1又は13に記載の金属コロイドの溶液により該不活性基材を処理して、該金属コロイドを該不活性基材の表面に吸着させ、その後溶媒を除去することを特徴とする上記17に記載の製造方法。
19.
上記1又は13に記載の金属コロイドの存在下、ゾル−ゲル法によりテトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、マグネシウムアルコキシレート及び/もしくはこれらの混合物を加水分解並びに/又は重合して、その中に該金属コロイドを組み込むことによって得られる固定化された金属コロイド。
20.
上記1又は13に記載の金属コロイドの存在下でモノマーを重合して、その中に該金属コロイドを組み込むことによって得られる固定化された金属コロイド。
21.
溶液1リットルあたりの金属含量が1ミリモルを越える中性、アルカリ性もしくは酸性の有機又は水性溶液を調製するために、特に無電解メッキ用に調製するために使用される上記1又は13に記載の金属コロイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表のIb族、IIb族、III族、IV族、V族、VI族、VIIb族、VIII族、ランタノイド族及び/又はアクチノイド族の金属を含んで成り、
粒子寸法が50nm以下であり、
支持電解質及び/又は安定剤として、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩(それぞれR又はRであって、R、R、R、Rは同じ又は異なり、C1−18アルキル又はアリール基である。)が存在する、
有機媒体に溶解性もしくは再分散性である金属コロイド、2成分系金属コロイドまたは多成分系金属コロイド。
【請求項2】
周期律表のIb族、IIb族、III族、IV族、V族、VI族、VIIb族、VIII族、ランタノイド族及び/又はアクチノイド族の金属を含んで成り、
粒子寸法が50nm以下であり、
支持電解質及び/又は安定剤として、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩(それぞれR又はRであって、R、R、R、Rは同じ又は異なり、C1−18アルキル又はアリール基である。)が存在する、
水溶性金属コロイド、2成分系金属コロイドまたは多成分系金属コロイド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属コロイドにより被覆された、カーボンブラック、活性炭、ガラス、無機酸化物及び有機ポリマーから選択される不活性基材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属コロイドの単分子層、2分子層又は多分子層により表面が被覆された請求項3に記載の不活性基材。
【請求項5】
有機合成における触媒として使用される、請求項3又は4に記載の被覆された不活性基材。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の金属コロイドの存在下、ゾル−ゲル法によりテトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、マグネシウムアルコキシレート及び/もしくはこれらの混合物を加水分解並びに/又は重合して、その中に該金属コロイドを組み込むことによって得られる固定化された金属コロイド。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の金属コロイドの存在下でモノマーを重合して、その中に該金属コロイドを組み込むことによって得られる固定化された金属コロイド。
【請求項8】
溶液1リットルあたりの金属含量が1ミリモルを越える中性、アルカリ性もしくは酸性の有機又は水性溶液を調製するために、特に無電解メッキ用に調製するために使用される請求項1又は2に記載の金属コロイド。

【公開番号】特開2008−285764(P2008−285764A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196491(P2008−196491)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願平7−54364の分割
【原出願日】平成7年3月14日(1995.3.14)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】