説明

高周波回路及びテレビジョン受像機

【課題】1つのSAWフィルタを3つの帯域幅に切り替え可能で、回路規模を縮小することができ、帯域幅の微調整が可能な高周波回路及びそれを用いたテレビジョン受像機を提供すること。
【解決手段】SAWフィルタ(11)の入力段に可変抵抗型スイッチ(12)を設け、SAWフィルタ11の第1の端子(a)及び第2の端子(b)に入力される中間周波数信号を切り替える。スイッチング素子(13)を介して第2の端子(b)を接地する第1のモードでは第1の通過周波数帯域に設定される。第1の端子(a)と第2の端子(b)との間をショートさせる第2のモードでは第1の通過周波数帯域より狭い第2の通過周波数帯域に設定され、調整可能な容量を有する抵抗素子(R2)を介して接続する第3のモードでは、第1の通過周波数帯域より狭く、第2の通過周波数帯域より広い第3の通過周波数帯域に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAWフィルタ入力部の端子接続状態を切り替えてバンド切替えを行う高周波回路及びそれを備えたテレビジョン受像機に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波デジタルテレビジョンの放送方式としては、デジタル音声信号と動画の信号とを直交周波数分割多重方式(OFDM)のデジタル変調(COFDM)で送信するDVB−T(Digital Video Broadcasting−Terrestrial)が欧州、台湾などを含む全世界で広く採用されている。地上波デジタル放送を受信可能なテレビジョン受像機においては、隣接周波数による妨害を低減するために、チューナから供給される中間周波数信号を増幅する中間周波数信号増幅回路の後段にSAW(表面弾性波)フィルタを接続している。地上波デジタル放送及びアナログ放送を受信可能とするため、複数のSAWフィルタを切り替え可能に構成された高周波回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−193351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、DVB−T圏内においては、同一の変調方式でありながら各国の仕様に応じて複数の帯域が使用されている。一般に欧州向けのテレビジョン受像機のチューナにおいては、7MHz/8MHzの通過周波数帯域を帯域幅に応じて切り替え可能に構成されSAWフィルタが用いられており、台湾向けのテレビジョン受像機のチューナにおいては、6MHzの通過周波数帯域の帯域幅に応じたSAWフィルタが用いられている。このため、欧州及び台湾の地上波デジタル放送を共に受信可能なチューナを実現するためには、7MHz/8MHzの帯域幅に対応したSAWフィルタと6MHzの帯域幅に対応したSAWフィルタとを別々に設ける必要がある。上記特定国の通信環境に限らず、1つのチューナで3つの帯域幅に対応しようとすれば、2つ以上のSAWフィルタを設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、複数のSAWフィルタを設ける場合には、高周波回路の回路規模を小型化する上で障害となる。また、従来の地上波デジタル放送のテレビジョン受像機においては、受信状況に応じて帯域幅の微調整が必ずしも十分にできない問題や、帯域内において減衰量の周波数変化である帯域内リップルが生じる問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされてものであり、1つのSAWフィルタを3つの帯域幅に切り替え可能で、回路規模を縮小することができ、帯域幅の微調整が可能な高周波回路及びそれを用いたテレビジョン受像機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高周波回路は、第1の切替端子及び第2の切替端子を有し、前記第2の切替端子を接地する第1のモードでは第1の通過周波数帯域に設定され、前記第1の切替端子と前記第2の切替端子との間をショートさせる第2のモードでは前記第1の通過周波数帯域より狭い第2の通過周波数帯域に設定されるSAWフィルタ回路を備えた高周波回路であり、前記第1の切替端子と前記第2の切替端子との間を、通過周波数帯域を調整可能な容量を有する抵抗を介して接続する第3のモードを有し、当該第3のモードでは前記第1の通過周波数帯域より狭く、前記第2の通過周波数帯域より広い第3の通過周波数帯域を設定することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1の切替端子と第2の切替端子との間に設けられた抵抗素子により第1のモードの周波数特性に対する第2のモードの周波数特性の影響度を変化させることができ、影響度を調整して第1及び第2の通過周波数帯域間の帯域幅を有する第3の通過周波数帯域を設定できる。これにより、第3の通過周波数帯域専用のSAWフィルタ回路を設けることなく、第1、第2及び第3の通過周波数帯域に対応することが可能となるので、高周波回路におけるSAWフィルタ回路の回路規模の削減が可能となる。また、抵抗素子の抵抗値を調整すれば、第1のモードの周波数特性に対する第2のモードの周波数特性の影響度を変化させることができ、第1、第2、及び第3の通過周波数帯域の帯域幅の微調整が可能となる。
【0009】
また本発明は、上記高周波回路において、前記抵抗の抵抗値を可変させることにより、前記第3の通過周波数帯域の帯域幅を可変可能に構成してもよい。この構成により、抵抗値を可変させることで、第3の通過周波数帯域の帯域幅が可変可能となるので、各通過周波数帯域の帯域幅の調整が容易となる。
【0010】
また本発明は、上記高周波回路において、前記第1の切替端子と前記第2の切替端子との間を接続する前記抵抗は、順方向電流の大きさに応じて抵抗値が変化するスイッチング素子で構成してもよい。
【0011】
また本発明は、上記高周波回路において、前記スイッチング素子は、PINダイオードで構成してもよい。
【0012】
本発明のテレビジョン受像機は、上記高周波回路を具備したことを特徴とする。この構成によれば、高周波回路のSAWフィルタ回路により、第1、第2、及び第3の通過周波数帯域が切替え可能となるので、チューナの回路規模を削減できる。この結果、テレビジョン受像機の小型化を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1つのSAWフィルタを3つの帯域幅に切り替え可能で、回路規模を縮小することができ、帯域幅の微調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る高周波回路の模式的な回路構成図である。
【図2】本実施の形態に係る高周波回路のバンド切替の説明図である。
【図3】本実施の形態に係るデジタルSAWフィルタの帯域特性を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る高周波回路の一例を示す回路構成図である。
【図5】可変ダイオードの電流の大きさと抵抗値との関係を示す図である。
【図6】本実施の形態に係るデジタルSAWフィルタの帯域特性の変化を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る高周波回路を備えたテレビジョン受像機の回路構成図である。
【図8】本実施の形態に係る高周波回路を備えたテレビジョン受像機のSAWフィルタのバンド切替のための回路構成を主に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る高周波回路の模式的な回路構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る高周波回路は、第1の端子a(第1ピン)から第5の端子e(第5ピン)を有するSAWフィルタ11の入力段であって、第1の端子aと第2の端子bとの間に可変抵抗型スイッチ12を備える。
【0016】
SAWフィルタ11は、第1の端子a及び第2の端子bに前段回路から中間周波数信号(IF信号)が印加され、所定帯域に変換された中間周波数信号が第4の端子d及び第5の端子eから出力される。SAWフィルタ11の第2の端子bは、可変抵抗型スイッチ12及びスイッチング素子13を介して接地可能に構成されている。第3の端子cは接地されている。
【0017】
可変抵抗型スイッチ12は、可変抵抗素子14とスイッチング素子15とを備える。可変抵抗素子14の一端がSAWフィルタ11の第2の端子bに接続され、他端がスイッチング素子13を介して接地されると共に、スイッチング素子15を介して第1の端子aに接続される。可変抵抗型スイッチ12の可変抵抗素子14(スイッチング素子15)及びスイッチング素子15を制御して、SAWフィルタ11を通過周波数帯域の異なる第1、第2、及び第3のモードに切り替える。
【0018】
第1のモードは、SAWフィルタ11の第2の端子bを接地することで設定される。第1のモードでは、第1の通過周波数帯域となる帯域幅は、例えば8MHzに設定される。第2のモードは、第1の端子aと第2の端子bとの間をショートさせることで設定される。第2のモードでは、第1の通過周波数帯域より狭い第2の通過周波数帯域となる帯域幅は例えば、6MHzに設定される。第3のモードは、第1の端子aと第2の端子bとの間を通過周波数帯域を調整可能な小容量を有する抵抗を介して接続することで設定される。第3のモードでは、第1の通過周波数帯域と第2の通過周波数帯域との中間の第3の通過周波数帯域となる帯域幅は、例えば7MHzに設定される。
【0019】
次に、SAWフィルタ11の第1、第2、及び第3モードの切り替えについて説明する。第1のモードでは、スイッチング素子13をショートさせると共に、スイッチング素子15を開放する。この結果、SAWフィルタ11の第2の端子bがグラウンドに接地され、第1の端子aと第2の端子bとの間が非導通となり、第1の通過周波数帯域に設定される。
【0020】
図2Aは、SAWフィルタ11の回路構成を模式的に示す図であり、第1のモードにおけるSAWフィルタ11内の回路構成(第1のモード回路21)を模式的に示している。同図に示すように、第1のモードでは、SAWフィルタ11の第2の端子bが接地され、第1の端子aから中間周波数信号が入力される。そして、インダクタ及びコンデンサで構成されたSAWフィルタ11内部の第1のモード回路21が有効化され、第4の端子d及び第5の端子eから出力信号が出力される。この結果、図2Bに示すように、第1の通過周波数帯域の帯域幅は、7.80MHzとなる。
【0021】
第2のモードでは、スイッチング素子13を開放すると共に、スイッチング素子15をショートさせる。可変抵抗素子14の抵抗値は、第2の通過周波数帯域(例えば、7MHz)の通過周波数帯域幅に対応した所定の値とする。この結果、SAWフィルタ11の第2の端子bとグラウンドとの間が非導通となり、第1の端子aと第2の端子bとの間が所定の抵抗値を介して電気的に接続され、第2の通過周波数帯域に切り替えられる。
【0022】
図2Cは、SAWフィルタ11の回路構成を模式的に示す図であり、第2のモードにおけるSAWフィルタ11内の回路構成(第2のモード回路22)を模式的に示している。同図に示すように、第2のモードでは、SAWフィルタ11の第1の端子aと第2の端子bとの間が導通するので、第1の端子a及び第2の端子bから中間周波数信号が入力され第1のモード回路21からの出力信号がキャンセルされる。そして、インダクタ及びコンデンサで構成されたSAWフィルタ11内の第2のモード回路22が有効化され第4の端子d及び第5の端子eから出力信号が出力される。この結果、図2Dに示すように、6.80MHzの通過周波数帯域に設定される。
【0023】
第3のモードでは、第2のモードと同様に、スイッチング素子13を開放すると共に、スイッチング素子15をショートさせる。そして、可変抵抗素子14の抵抗値は、第3の通過周波数帯域(例えば、7.5MH)の通過周波数帯域幅に対応した所定の値とする。この結果、SAWフィルタ11の第2の端子bとグラウンドとの間が非導通となり、第1の端子aと第2の端子bとの間が第2のモードに対して相対的に小さい小容量の抵抗を介して電気的に接続され、第3の通過周波数帯域に切り替えられる。
【0024】
図2Eは、SAWフィルタ11の回路構成を模式的に示す図であり、第3のモードにおけるSAWフィルタ11内の回路構成(第3のモード回路23)を模式的に示している。同図に示すように、第3のモードでは、SAWフィルタ11の第1の端子a及び第2の端子bから互いに異なる信号強度で中間周波数信号が入力される。ここで、第3のモードでは、第1の端子aから入力される中間周波数信号が、第2の端子bから入力される中間周波数信号に対して相対的に大きくなるので、第2のモード回路22に対して第1のモード回路21が負荷影響を及ぼす。この結果、一部の出力信号がキャンセルされた第1のモード回路21と第2のモード回路22とが合成された中間の第3の通過周波数帯域に設定される。
【0025】
図3に、第1、第2、及び第3の通過周波数帯域の帯域幅の概念図を示す。同図に示すように、第1のモードにおける第1の通過周波数帯域の帯域幅が最も広くなり(実線参照)、第2のモードにおける第2の通過周波数帯域の帯域幅が最も狭くなる(点線参照)。また、第3のモードにおける第3の通過周波数帯域の帯域幅は、第1の通過周波数帯域の帯域幅と第2の通過周波数帯域の帯域幅との間の帯域幅となる(一点鎖線参照)。
【0026】
図4に、本実施の形態に係る高周波回路の具体的な回路構成の一例を示す。同図に示す例では、SAWフィルタ11の第1の端子a(1番ピン)が前段回路である集積回路MOPIC40の出力端子T1に接続され、第2の端子b(2番ピン)がバイアス抵抗R1及びスイッチング素子13としてのトランジスタ41のコレクタ−エミッタ間を介してグラウンドに接続される。バイアス抵抗R1の一端が、SAWフィルタ11の第2の端子bに接続され、他端がトランジスタ41のコレクタに接続される。トランジスタ41のベースには、入力端子からDC電圧(第1のバンド切替制御信号)が印加され、トランジスタのON/OFFが制御される。トランジスタ41がON(導通)することにより、SAWフィルタ11の第2の端子bが接地される。
【0027】
SAWフィルタ11の第1の端子aと第2の端子bとの間には、可変抵抗型スイッチ12としてのPINダイオード42と、PINダイオード42へのDCを調整する抵抗素子R2とが直列接続されている。PINダイオード42は、図1に示す可変抵抗素子14及びスイッチング素子15の機能を実現している。PINダイオード42のカソードがSAWフィルタ11の第1の端子aに接続され、アノードが抵抗素子R2の一端に接続される。抵抗素子R2の他端は、SAWフィルタ11の第2の端子bに接続される。なお、抵抗素子R2は、PINダイオード42へのDCを制御できれば必ずしも必要ない。
【0028】
PINダイオード42のカソードは、バイアス抵抗R3を介してトランジスタ41のコレクタに接続される。バイアス抵抗R3は、PINダイオード42の順方向電流を調整する。トランジスタ41がON(導通)の状態でPINダイオード42に対する順方向電流の大きさが増大し、PINダイオード42の抵抗値が減少する。
【0029】
PINダイオード42のアノードには、抵抗素子R2を介して制御信号入力端となる集積回路MOPIC40の出力端子T2が接続される。PINダイオード42のアノードには、DC電圧(第2のバンド切替制御信号:例えば、0V〜5V)の出力端子T2からバイアス抵抗R1で分圧されたバイアス電圧が印加される。バイアス抵抗R1は、PINダイオード42へのバイアス電圧の供給電圧を調整する。トランジスタ41がON(導通)状態で、PINダイオード42のカソードに供給されるバイアス電圧が減少し、PINダイオード42の抵抗値が増大する。なお、抵抗素子R2とバイアス抵抗R1及びR3とを組み合わせてPINダイオード42の抵抗値を調整してもよい。
【0030】
次に、図4に示す高周波回路のバンド切替え動作について説明する。
第1のモードでは、入力端子からトランジスタ41に第1のバンド切替制御信号が入力されトランジスタ41をON(導通)にすると共に、出力端子T2から、PINダイオード42のアノードに第1の通過周波数帯域の帯域幅に応じた第2のバンド切替制御信号(例えば、0Vのバイアス電圧)を印加する。この結果、SAWフィルタ11の第2の端子bが、トランジスタ41を介して接地されると共に、第1の端子aと第2の端子bとの間のPINダイオード42の抵抗値が増大して第1の端子aと第2の端子bとの間が非導通となり、第1の通過周波数帯域に設定される。バイアス抵抗R3によってトランジスタ41側はハイインピーダンスとなるので、集積回路MOPIC40の出力端子T1から出力された中間周波数信号(IF)は、第1の端子aからSAWフィルタ11に入力される。SAWフィルタ11に入力された中間周波数信号(IF)は、第1のモード回路21で処理され、第4の端子d及び第5の端子eから出力される。
【0031】
第2のモードでは、入力端子からトランジスタ41に第1のバンド切替制御信号が入力されトランジスタ41をOFF(非導通)にする。トランジスタ41がOFFとなることで、SAWフィルタ11の第2の端子bがグラウンドから切り離されて開放された状態となる。そして、出力端子2からPINダイオード42のアノードに、バイアス抵抗R1により分圧され第2の通過周波数帯域幅に応じた第2のバンド切替制御信号(例えば、5Vのバイアス電圧)を印加する。この結果、PINダイオード42の抵抗値が低下してSAWフィルタ11の第1の端子aと第2の端子bとが電気的に接続され、第2の通過周波数帯域に設定される。集積回路MOPIC40の出力端子T1から出力された中間周波数信号(IF)は、第1の端子a及び第2の端子bからSAWフィルタ11に入力される。SAWフィルタ11に入力された中間周波数信号(IF)は、第2のモード回路22で処理され、第4の端子d及び第5の端子eから出力される。
【0032】
第3のモードでは、入力端子からトランジスタ41に第1のバンド切替制御信号が入力されトランジスタ41をOFF(非導通)にする。トランジスタ41がOFFとなることで、SAWフィルタ11の第2の端子bがグラウンドから切り離されて開放された状態となる。そして、出力端子T2からPINダイオード42のアノードに、バイアス抵抗R1により分圧され第3の通過周波数帯域幅に応じた第2のバンド切替制御信号(例えば、2Vのバイアス電圧)を印加する。ここで、図5に示すように、PINダイオード42は、順方向電流が増大するにつれて抵抗値が減少するので、SAWフィルタ11の第1の端子aと第2の端子bとは第2のモードより小さい抵抗値を介して電気的に接続される。この結果、SAWフィルタ11の第1の端子aと第2の端子bとの間が、第2のモードの際より大きい所定の抵抗値を介して電気的に接続され、第3の通過周波数帯域に設定される。集積回路MOPIC40の出力端子T1から出力された中間周波数信号(IF)は、第1の端子a及び第2の端子からSAWフィルタ11に入力される。SAWフィルタ11に入力された中間周波数信号(IF)は、第1のモード回路21及び第2のモード回路22で処理され、第4の端子d及び第5の端子eから出力される。
【0033】
また、本実施の形態では、第1のモード又は第2のモードにおいて、出力端子T2からPINダイオード42のアノードに印加される第2のバンド切替制御信号を制御して、PINダイオード42の順方向電流の大きさを微調整することにより第1の通過周波数帯域の帯域幅(又は第2の通過周波数帯域の帯域幅)の微調整が可能となる。これにより、図6Aに示すように、第1の通過周波数帯域内又は第2の通過周波数帯域内において、減衰量の周波数変化である帯域内リップルが生じた場合においても、PINダイオード19の抵抗値を調整することで、インピーダンスのマッチングを調整が可能となり、図6Bに示すように、帯域内リップルを解消することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、SAWフィルタ11の第1の端子aと第2の端子bとの間に設けられた可変抵抗型スイッチ12としてのPINダイオード42により、第1のモードの周波数特性に対する第2のモードの周波数特性の影響度を変化させることができ、影響度を調整して第1及び第2の通過周波数帯域間の帯域幅を有する第3の通過周波数帯域を設定できる。これにより、従来回路で必要であった第3の通過周波数帯域専用のSAWフィルタを設けることなく、第1、第2及び第3の通過周波数帯域に対応することが可能とあるので、高周波回路におけるSAWフィルタの回路規模の削減が可能となる。
【0035】
また本実施の形態によれば、抵抗素子としてのPINダイオード42の抵抗値の調整により、第1のモードの周波数特性に対する第2のモードの周波数特性の影響度を変化させることができる。これにより、第1、第2、及び第3の通過周波数帯域の帯域幅の微調整が可能となり、帯域内リップルを抑制できる。また、回路内の直流電源により、PINダイオード42の順方向電流の大きさを制御することにより、PINダイオード42のON、OFFを切り替えることも可能となる。
【0036】
以下、上記実施の形態に係る高周波回路を適用したテレビジョン受像機について説明する。図7は、上記実施の形態に係る高周波回路を備えたテレビジョン受像機の構成図である。図7に示すテレビジョン受像機は、アンテナ101で受信したテレビジョン信号を高周波増幅器102で増幅した後、UHF帯の受信信号を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)103、VHF帯の受信信号を通過させる2つのBPF104、105に振り分ける。各BPF103、104、105を通過した受信信号をゲインコントロール増幅器106、107、108で利得制御してからRFフィルタ111、112、113を介して各々対応する混合器114、115へ入力する。各混合器114、115には受信帯域に応じた局部発振信号を出力する発振回路116、117、118が接続されている。混合器114、115の後段には2つの帯域制限回路121、122が切替え可能に接続されている。一方の帯域制限回路121はデジタル方式に対応した狭帯域の帯域制限を有し、他方の帯域制限回路122はPAL方式に対応した広帯域の帯域制限を有する。帯域制限回路121、122を通過した信号は中間周波増幅器123で所定の信号レベルに増幅された後、デジタルSAWフィルタ125及びアナログSAWフィルタ127、128へ入力される。デジタルSAWフィルタ125の出力段にはゲインコントロール増幅器129が接続される。
【0037】
ここで、デジタルSAWフィルタ125は、6MHz/7MHz/8MHzの3つの帯域を切り替え可能に構成されている。デジタルSAWフィルタ125に対する帯域切替え指示はスイッチ部140によって与えられる。同様に、音声用アナログSAWフィルタ127はSECAM/L方式に対応して帯域を切り替え可能に構成されている。音声用アナログSAWフィルタ127に対する帯域切替え指示は切替回路126によって与えられる。デジタルSAWフィルタ125に対して設けられたスイッチ部140は、ホストからバスインターフェース131に与えられた第2のバンド切替制御信号が、DCスイッチ132でON/OFFの信号に変換して与えられる。また、音声用アナログSAWフィルタ127に対して設けられた切替回路126は、ホストからアナログ復調器130に設けられたバスインターフェース133に与えられた制御信号が、同じアナログ復調器130に設けられたDCスイッチ134でON/OFFの信号に変換して与えられる。
【0038】
図8はデジタルSAWフィルタ125のバンド切替えのための回路構成を主に示す図である。中間周波増幅器123は、カスコード接続されたトランジスタ151、152から主に構成されており、一方のトランジスタ151のベースにIF信号が入力される。他方のトランジスタ152のベースには逆相側からIF信号が入力され、トランジスタ151のドライブ能力を補正する。中間周波増幅器123はバランス型の増幅器で、一対のトランジスタ151、152と不図示の他の一対のトランジスタの2対の出力回路を持ち、ドライブ能力を補正する為のトランジスタ152と不図示の他の一対のトランジスタの一方のトランジスタのベースにはそれぞれの逆相からIF信号が入力されドライブ能力を補正する。電源側に位置するトランジスタ151のコレクタはバイアス抵抗153を介して集積回路MOPIC40の電源電圧の供給端となる電源端子T3に接続されている。また、グラウンド側に位置するトランジスタ152のエミッタはそのままグラウンドに接続されている。中間周波増幅器123の出力は一方のトランジスタ151のエミッタと他方のトランジスタ152のコレクタとの接続点から取り出されており、当該接続点にバイアス抵抗154を介して集積回路MOPIC40の高周波信号出力端となる出力端子T1が接続されている。集積回路MOPIC40の出力端子T1は、デジタルSAWフィルタ125、アナログSAWフィルタ127、アナログSAWフィルタ128の第1の端子a(1番ピン)に接続される。また、集積回路MOPIC40の出力端子T2は、デジタルSAWフィルタ125の第2の端子b(2番ピン)に接続される。集積回路MOPIC40の電源端子T3と出力端子T2との間はバイアス抵抗155を介して直流的に接続されている。
【0039】
また、他方の出力端子T2はスイッチング素子として機能するトランジスタ157のコレクタ−エミッタを介してグラウンドに接続されている。制御信号入力端となるトランジスタ157のベースにはバンド切替用ポート158からON/OFFのバンド切替制御信号が入力する。バンド切替用ポート158は、バスインターフェース131に与えられる制御信号に応じたDC出力(例えば、5V又は0V)が現れるポートである。バンド切替用ポート158のDC出力がバンド切替制御信号となる。バンド切替制御信号は、ホストからバスインターフェース131に与えられる制御信号によって制御される。トランジスタ157がON(導通)することにより、出力端子T2(デジタルSAWフィルタ125の第2の端子b)が接地されると共に、トランジスタ156がOFF(非導通)となって出力端子T1、T2間が非導通となる。
【0040】
デジタルSAWフィルタ125の第1の端子a(1番ピン)が前段回路の集積回路MOPIC40の出力端子T1に接続され、第2の端子b(2番ピン)がバイアス抵抗R1及びスイッチング素子としてのトランジスタ161のコレクタ−エミッタ間を介してグラウンドに接地される。バイアス抵抗R1の一端が、SAWフィルタ11の第2の端子bに接続され、他端がトランジスタ161のコレクタに接続される。トランジスタ161のベースには、入力端子からDC電圧(第1のバンド切替制御信号)が印加され、トランジスタ161のON/OFFが制御される。トランジスタ161がON(導通)することにより、SAWフィルタ125の第2の端子bが接地される。
【0041】
SAWフィルタ125の第1の端子aと第2の端子bとの間には、可変抵抗型スイッチとしてのPINダイオート162と、PINダイオート162へのDCを調整する抵抗素子R2とが直列接続されている。PINダイオード162のカソードがSAWフィルタ125の第1の端子aに接続され、アノードが抵抗素子R2の一端に接続される。抵抗素子R2の他端は、SAWフィルタ11の第2の端子bに接続される。なお、抵抗素子R2は、PINダイオード162へのDCを制御できれば必ずしも必要ない。
【0042】
PINダイオード162のカソードは、バイアス抵抗R3を介してトランジスタ161のコレクタに接続される。バイアス抵抗R3は、PINダイオード162の順方向電流を調整する。トランジスタ161がON(導通)の状態でPINダイオード162に対する順方向電流の大きさが増大し、PINダイオード162の抵抗値が減少する。
【0043】
PINダイオード162のアノードには、抵抗素子R2を介して第2のバンド切替制御信号入力端となる集積回路MOPIC40の出力端子T2が接続されると共に、バイアス抵抗R4を介して電源端子(Vcc)に接続される。PINダイオード162のアノードには、出力端子T2からバイアス抵抗R1及びR4で分圧されたバイアス電圧が印加される。バイアス抵抗R1は、PINダイオード162へのバイアス電圧の供給電圧を調整する。トランジスタ161がON(導通)状態で、PINダイオード162のカソードに供給されるバイアス電圧が減少し、PINダイオード162の抵抗値が増大する。なお、抵抗素子R4は、前段の集積回路MOPIC40の内蔵抵抗との整合を取ることができれば必ずしも設ける必要はない。また、抵抗素子R2とバイアス抵抗R1及びR3を組み合わせてPINダイオード162の抵抗値を調整してもよい。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、以上の説明ではテレビジョン受像機のシステムを前提に説明したが、高周波回路においてSAWフィルタの第1の端子と第2の端子の接続状態を切り替える用途であれば、同様に適用可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、1つのSAWフィルタを3つの帯域幅に切り替え可能で、回路規模を縮小することができ、帯域幅の微調整が可能となるという効果を有し、特に、中間周波回路においてSAWフィルタ入力部の端子接続状態を切り替えてバンド切替えを行うテレビジョン受像機など適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
11 SAWフィルタ
12 可変抵抗型スイッチ
13、15 スイッチング素子
14 可変抵抗素子
21 第1のモード回路
22 第2のモード回路
23 第3のモード回路
41、151、152、156、157、161 トランジスタ
42、162 PINダイオード
101 アンテナ
102 高周波増幅器
103、104、105 バンドパスフィルタ(BPF)
106、107、108 ゲインコントロール増幅器
111、112、113 RFフィルタ
114、115 混合器
116、117、118 発振回路
121、122 帯域制限回路
123 中間周波増幅器
124、126 切替回路
125 デジタルSAWフィルタ
127 音声用アナログSAWフィルタ
128 映像用アナログSAWフィルタ
129 ゲインコントロール増幅器
130 アナログ復調器
131、133 バスインターフェース
140 スイッチ部
153、154、155 バイアス抵抗
158 DCスイッチ用ポート
T1、T2 出力端子
T3 電源端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の切替端子及び第2の切替端子を有し、前記第2の切替端子を接地する第1のモードでは第1の通過周波数帯域に設定され、前記第1の切替端子と前記第2の切替端子との間をショートさせる第2のモードでは前記第1の通過周波数帯域より狭い第2の通過周波数帯域に設定されるSAWフィルタ回路を備えた高周波回路であり、
前記第1の切替端子と前記第2の切替端子との間を、通過周波数帯域を調整可能な容量を有する抵抗を介して接続する第3のモードを有し、当該第3のモードでは前記第1の通過周波数帯域より狭く、前記第2の通過周波数帯域より広い第3の通過周波数帯域を設定することを特徴とする高周波回路。
【請求項2】
前記抵抗の抵抗値を可変させることにより、前記第3の通過周波数帯域の帯域幅を可変可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の高周波回路。
【請求項3】
前記第1の切替端子と前記第2の切替端子との間を接続する前記抵抗は、順方向電流の大きさに応じて抵抗値が変化するスイッチング素子で構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高周波回路。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、PINダイオードで構成されることを特徴とする請求項3記載の高周波回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の高周波回路を具備したことを特徴とするテレビジョン受像機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−195636(P2012−195636A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56170(P2011−56170)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】