説明

高強度部を有する溶融接合製品及びその製造方法

【課題】所要の精度の高強度部を有する一方で、接合部における所要の強度を維持できる溶融接合製品を提供すること。
【解決手段】本発明は、Cの含有量が0.45%未満の低炭素鋼よりなる第一低炭素鋼部分と、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼よりなる高炭素鋼部分と、が摩擦圧接で一体とされて構成された第一中間加工製品と、Cの含有量が0.45%未満の第二低炭素鋼よりなる第二低炭素鋼部分を有する第二中間加工製品と、を備え、第一中間加工製品の高炭素鋼部分には、予め所望の形状に成形され焼入れされた高強度部が設けられており、第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分は、予め所定の形状に成形されており、第一中間加工製品の第一低炭素鋼部分と第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分とが、溶融溶接によって接合されていることを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度部を有する溶融接合製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、形状の異なる二つの部材を接合して接合製品を成形する技術として、摩擦圧接が知られている。例えば、特開平5−84614号公報には、精密鍛造により成形された歯形を有する第一中間加工製品と第二中間加工製品とが、摩擦圧接によって接合されて、歯形部を有する複合歯車が成形されることが開示されている。
【0003】
また、形状の異なる二つの部材を接合して接合製品を成形する他の技術として、レーザ溶接が知られている。例えば、特表2006−509172号公報には、高強度を要するリングギヤとデフケースとが、レーザ溶接されて、歯形部を有するデフケースが成形されることが開示されている。
【0004】
特開平5−84614号公報に開示された技術、すなわち、精密鍛造により成形された歯形を有する第一中間加工製品及び第二中間加工製品を摩擦圧接により接合する技術においては、第一中間加工製品及び第二中間加工製品の何れか一方が高速回転されながら他方に圧接されて、第一中間加工製品の端部及び第二中間加工製品の端部が摩擦熱により溶融して接合が果たされる。このため、摩擦圧接された接合製品は、第一中間加工製品の軸心と第二中間加工製品の軸心とがずれた状態で接合されてしまったり、第一中間加工製品の端部と第二中間加工製品の端部との溶融によって軸線方向長さがばらつくことがある。このような場合には、摩擦圧接された接合製品において必要な精度を得ることができないという問題がある。摩擦圧接された接合製品について必要な精度を得ようとすると、摩擦圧接された接合製品に切削加工を施さなければならず、加工コストが著しく高くなる。
【0005】
一方、特表2006−509172号公報に開示された技術では、特に当該文献の段落0017及び図1Bに示されているように、第一中間加工製品である第一デフケースと、第二中間加工製品であるリングギヤを有する第二デフケースと、が各々固定されて、レーザ溶接によって接合されて接合製品であるデフケースが成形される。このように第一デフケースと第二デフケースとが固定されて溶接される場合、固定時に第一デフケースの軸心と第二デフケースの軸心とが一致するように調整されれば、接合されて形成されるデフケースにおいても、軸心のずれが発生せず、必要な精度を得ることができる。
【0006】
しかしながら、リングギヤは高強度が必要であるために、C(炭素)を多く含んでいる高炭素鋼で構成されることが多い。そのような場合、高炭素鋼からなる第二デフケースがレーザ溶接のような溶融溶接にさらされると、高炭素鋼の溶融した接合部が硬化して、接合部に割れが発生することがある。すなわち、第一デフケースと第二デフケースの接合部の強度が弱くなるという問題が生じることがある。
【特許文献1】特開平5−84614号公報
【特許文献2】特表2006−509172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、高強度部を有する高炭素鋼部分と低炭素鋼部分とからなる溶融接合製品であって、所要の精度の高強度部を有する一方で、接合部における所要の強度を維持できる溶融接合製品を提供することを目的とする。また、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、Cの含有量が0.45%未満の低炭素鋼よりなる第一低炭素鋼部分と、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼よりなる高炭素鋼部分と、が摩擦圧接で一体とされて構成された第一中間加工製品と、Cの含有量が0.45%未満の第二低炭素鋼よりなる第二低炭素鋼部分を有する第二中間加工製品と、を備え、第一中間加工製品の高炭素鋼部分には、予め所望の形状に成形され焼入れされた高強度部が設けられており、第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分は、予め所定の形状に成形されており、第一中間加工製品の第一低炭素鋼部分と第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分とが、溶融溶接によって接合されていることを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品である。
【0009】
本発明によれば、第一中間加工製品の高炭素鋼部分の高強度部に焼入れがされていることにより、所要の強度を得ることができる。また、第一中間加工製品の第一低炭素鋼部分と第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分とが溶融溶接により接合されているため、当該接合部において高炭素鋼部分の溶融による硬化が生じることが防止され、当該硬化による割れの発生を防止することができる。すなわち、第一中間加工製品と第二中間加工製品との接合部において、所要の強度を維持することができる。また、溶融溶接は、第一中間加工製品と第二中間加工製品とを固定した状態で行うことができるので、所要の精度を有する接合製品を得ることが容易である。更に、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼とCの含有量が0.45%未満の低炭素鋼とを摩擦圧接して第一素材を成形し、その後に、所定の形状の第一中間加工製品に成形できるため、摩擦圧接による第一素材の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきが、その後の成形工程において修正可能である。
【0010】
例えば、高強度部は、歯形に形成され得る。
【0011】
また、例えば、第一中間加工製品は、第一デフケースを構成し、第二中間加工製品は、第二デフケースを構成し、第一中間加工製品の第一低炭素鋼部分と第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分とが、溶融溶接によって接合されて、デフケースが構成され得る。この場合、ボルト等の接合部品を少なくすることができ、デフケースの軽量化を実現することができる。
【0012】
高炭素鋼部分のCの含有量は、例えば、0.45%乃至0.60%程度である。また、第一低炭素鋼部分のCの含有量は、例えば、0.10%乃至0.40%である。また、第二低炭素鋼部分のCの含有量も、例えば、0.10%乃至0.40%である。
【0013】
また、本発明は、Cの含有量が0.45%未満の低炭素鋼よりなる第一予備素材と、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼よりなる第二予備素材と、を摩擦圧接して一体の第一素材を成形する工程と、前記第一素材の摩擦圧接によるバリを除去する工程と、前記第一素材の第二予備素材の領域に所定の形状の焼き入れ予定部を成形すると共に、前記第一素材の第一予備素材の領域に所定の形状の第一低炭素鋼部分を形成して、第一中間加工製品を形成する工程と、前記焼き入れ予定部を焼入れして高強度部を形成する工程と、Cの含有量が0.45%未満の第二低炭素鋼よりなる第二素材から、所定の形状の第二低炭素鋼部分を有する第二中間加工製品を形成する工程と、第一中間加工製品の第一低炭素鋼部分と第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分とを、溶融溶接によって接合する工程と、を備えたことを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品の製造方法である。
【0014】
本発明によれば、高炭素鋼よりなる焼き入れ予定部に焼入れがされることにより、所要の強度の高強度部を得ることができる。また、第一中間加工製品の第一低炭素鋼部分と第二中間加工製品の第二低炭素鋼部分とが溶融溶接により接合されるため、当該接合部において高炭素鋼部分の溶融による硬化が生じることが防止され、当該硬化による割れの発生を防止することができる。すなわち、第一中間加工製品と第二中間加工製品との接合部において、所要の強度を維持することができる。また、溶融溶接は、第一中間加工製品と第二中間加工製品とを固定した状態で行うことができるので、所要の精度を有する接合製品を得ることが容易である。更に、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼(第二予備素材)とCの含有量が0.45%未満の低炭素鋼(第一予備素材)とを摩擦圧接して第一素材を成形し、その後、所定の形状の第一中間加工製品に成形するため、摩擦圧接による第一素材の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきが、その後の成形工程において修正可能である。
【0015】
例えば、所定の形状の焼き入れ予定部は、鍛造によって成型され得る。また、所定の形状の第一低炭素鋼部分も、鍛造によって成型され得る。さらには、所定の形状の第二低炭素鋼部分も、鍛造によって成型され得る。これらの場合、第一素材もしくは第二素材の歩どまりがよい。また、摩擦圧接による第一素材の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきも鍛造工程中に修正できるため、加工コストを低減することができる。
【0016】
以上の考察は、主として、炭素量によって鋼材の性質が概ね決定される炭素鋼材についてなされたものである。本件発明者は、さらに、炭素以外の鋼材成分の量によって鋼材の性質が影響される構造用鋼鋼材について検討した。その結果、そのような構造用鋼鋼材については、炭素量の代わりに炭素当量を基準にすべきであることを知見した。
【0017】
炭素当量とは、JISにおいて、以下のように規定されている。
炭素当量=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
ここで、Cは炭素量(%)、Mnはマンガン量(%)、Siはシリコン量(%)、Niはニッケル量(%)、Crはクロム量(%)、Moはモリブデン量(%)、Vはバナジウム量(%)である。
【0018】
そして、本件発明者が当初知見した閾値である「0.45%」という炭素量の炭素鋼材は、一般の炭素鋼材(例えばS45C等)の成分データを用いて換算すれば、「0.60%」という炭素当量の構造用鋼鋼材と等価であり、本件発明においてもそのような置換が可能であることが実際に確かめられた。(S45Cの一例:C=0.46、Mn=0.72、Si=0.18、Ni=0.04、Cr=0.11、V=0.00:炭素量=0.46%、炭素当量=0.613%)
【0019】
すなわち、本発明は、炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第一鋼材部分と、炭素当量が0.60%以上の鋼材よりなる焼入れ用鋼材部分と、が摩擦圧接で一体とされて構成された第一中間加工製品と、炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第二鋼材部分を有する第二中間加工製品と、を備え、第一中間加工製品の焼入れ用鋼材部分には、予め所望の形状に成形され焼入れされた高強度部が設けられており、第二中間加工製品の第二鋼材部分は、予め所定の形状に成形されており、第一中間加工製品の第一鋼材部分と第二中間加工製品の第二鋼材部分とが、溶融溶接によって接合されていることを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品である。
【0020】
本発明によれば、第一中間加工製品の焼入れ用鋼材部分の高強度部に焼入れがされていることにより、所要の強度を得ることができる。また、第一中間加工製品の第一鋼材部分と第二中間加工製品の第二鋼材部分とが溶融溶接により接合されているため、当該接合部において焼入れ用鋼材部分の溶融による硬化が生じることが防止され、当該硬化による割れの発生を防止することができる。すなわち、第一中間加工製品と第二中間加工製品との接合部において、所要の強度を維持することができる。また、溶融溶接は、第一中間加工製品と第二中間加工製品とを固定した状態で行うことができるので、所要の精度を有する接合製品を得ることが容易である。更に、炭素当量が0.60%以上の焼入れ用鋼材と炭素当量が0.60%未満の第一鋼材とを摩擦圧接して第一素材を成形し、その後に、所定の形状の第一中間加工製品に成形できるため、摩擦圧接による第一素材の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきが、その後の成形工程において修正可能である。
【0021】
この場合も、例えば、高強度部は、歯形に形成され得る。
【0022】
また、この場合も、例えば、第一中間加工製品は、第一デフケースを構成し、第二中間加工製品は、第二デフケースを構成し、第一中間加工製品の第一鋼材部分と第二中間加工製品の第二鋼材部分とが、溶融溶接によって接合されて、デフケースが構成され得る。この場合、ボルト等の接合部品を少なくすることができ、デフケースの軽量化を実現することができる。
【0023】
なお、第一中間加工製品の第一鋼材部分と第二中間加工製品の第二鋼材部分とが溶融溶接により接合される際、第一鋼材部分の高温割れ感受性の値と第二鋼材部分の高温割れ感受性の値との和が7以下であれば、割れの発生をより確実に防止することができる。ここで、高温割れ感受性の値は、以下の式で算出される。
高温割れ感受性=1000×C(S+P+(Si/25)+(Ni/100))/(3Mn+Cr+Mo+V)
ここで、Cは炭素量(%)、Sは硫黄量(%)、Pはリン量(%)、Siはシリコン量(%)、Niはニッケル量(%)、Mnはマンガン量(%)、Crはクロム量(%)、Moはモリブデン量(%)、Vはバナジウム量(%)である。
【0024】
また、本発明は、炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第一予備素材と、炭素当量が0.60%以上の鋼材よりなる第二予備素材と、を摩擦圧接して一体の第一素材を成形する工程と、前記第一素材の摩擦圧接によるバリを除去する工程と、前記第一素材の第二予備素材の領域に所定の形状の焼き入れ予定部を成形すると共に、前記第一素材の第一予備素材の領域に所定の形状の第一鋼材部分を形成して、第一中間加工製品を形成する工程と、前記焼き入れ予定部を焼入れして高強度部を形成する工程と、炭素当量が0.60%未満の第二鋼材よりなる第二素材から、所定の形状の第二鋼材部分を有する第二中間加工製品を形成する工程と、第一中間加工製品の第一鋼材部分と第二中間加工製品の第二鋼材部分とを、溶融溶接によって接合する工程と、を備えたことを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品の製造方法である。
【0025】
本発明によれば、第二予備素材よりなる焼き入れ予定部に焼入れがされることにより、所要の強度を得ることができる。また、第一中間加工製品の第一鋼材部分と第二中間加工製品の第二鋼材部分とが溶融溶接により接合されるため、当該接合部において第二予備素材の溶融による硬化が生じることが防止され、当該硬化による割れの発生を防止することができる。すなわち、第一中間加工製品と第二中間加工製品との接合部において、所要の強度を維持することができる。また、溶融溶接は、第一中間加工製品と第二中間加工製品とを固定した状態で行うことができるので、所要の精度を有する接合製品を得ることが容易である。更に、炭素当量が0.60%以上の第二予備素材と炭素当量が0.60%未満の第一予備素材とを摩擦圧接して第一素材を成形し、その後、所定の形状の第一中間加工製品に成形するため、摩擦圧接による第一素材の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきが、その後の成形工程において修正可能である。
【0026】
この場合も、例えば、所定の形状の焼き入れ予定部は、鍛造によって成型され得る。また、所定の形状の第一鋼材部分も、鍛造によって成型され得る。さらには、所定の形状の第二鋼材部分も、鍛造によって成型され得る。これらの場合、第一素材もしくは第二素材の歩どまりがよい。また、摩擦圧接による第一素材の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきも鍛造工程中に修正できるため、加工コストを低減することができる。
【0027】
また、この場合も、第一中間加工製品の第一鋼材部分と第二中間加工製品の第二鋼材部分とが溶融溶接により接合される際、第一鋼材部分の高温割れ感受性の値と第二鋼材部分の高温割れ感受性の値との和が7以下であれば、割れの発生をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態の溶融接合製品であるディファレンシャル装置の断面図である。図2A及び図2Bは、本発明の一実施の形態の製造方法における、第一素材の成形工程を説明する断面図である。図3A及び図3Bは、本発明の一実施の形態の製造方法における、第一素材から第一デフケースを成形する成形工程を説明する断面図である。図4は、本発明の一実施の形態の溶融接合製品における第一中間加工製品の断面図である。図5A乃至図5Cは、本発明の一実施の形態の製造方法における、第二素材から第二中間加工製品を成形する成形工程を説明する断面図である。図6は、本発明の一実施の形態の溶融接合製品であるディファレンシャル装置の、溶接前の状態の断面図である。
【0029】
まず、図1を参照して、ディファレンシャル装置1を説明する。本発明の一実施の形態の溶融接合製品であるディファレンシャル装置1のデフケース2は、第一中間加工製品である第一デフケース2aと、第二中間加工製品である第二デフケース2bとから構成されている。第一デフケース2aは、車軸方向に延びる第一ボス部13を有してCの含有量が0.45%以上である高炭素鋼部分Hと、Cの含有量が0.45%未満である第一低炭素鋼部分L1と、を有している。第二デフケース2bは、車軸方向に成形された第二ボス部14を有し、Cの含有量が0.45%未満である第二低炭素鋼部分L2からなる。
【0030】
高炭素鋼部分HのCの含有量は、例えば、0.45%乃至0.60%程度である。また、第一低炭素鋼部分L1のCの含有量は、例えば、0.10%乃至0.40%である。また、第二低炭素鋼部分L2のCの含有量も、例えば、0.10%乃至0.40%である。
【0031】
第一デフケース2aの高炭素鋼部分Hには、高強度部である歯形9が成形されている。第一デフケース2aの第一低炭素鋼部分L1には、後述されるピニオンシャフト3を第一デフケース2a内に挿入するためのデフケース孔10、後述される固定ピン15を第一デフケース2a内に挿入するための固定ピン挿入孔16、及び、嵌合用の凹部11、が成形されている。また、第二デフケース2bの第二低炭素鋼部分L2には、嵌合用の凸部12が成形されている。嵌合用の凹部11と嵌合用の凸部12とが、電子ビーム溶接、レーザ溶接、及び抵抗溶接の何れか一の溶接方法によって接合されている。これにより、デフケース2が構成されている。
【0032】
デフケース2内には、デフケース2と一体に回転するピニオンシャフト3、ピニオンシャフト3をデフケース2内に固定する固定ピン15、デフケース孔10に挿入されるピニオンシャフト3によって回転自在に軸支されるピニオンギヤ6、ピニオンギヤ6とデフケースと2の間に取り付けられるピニオンギヤ用スラストワッシャー4、ピニオンギヤ6と噛合する第一サイドギヤ17及び第二サイドギヤ18、第一サイドギヤ17及び第二サイドギヤ18とデフケース2との間に取り付けられるサイドギヤ用スラストワッシャー5、が配置されている。
【0033】
次に、第一デフケース2aの成形方法について、図2A乃至図4に基づいて説明する。
【0034】
図2Aに示すように、まず、Cの含有量が0.45%未満である低炭素鋼の第一予備素材20と、Cの含有量が0.45%以上である高炭素鋼の第二予備素材21と、が準備される。そして、これらの第一予備素材20及び第二予備素材21が、図示しない摩擦圧接装置に取り付けられ、第一予備素材20のみが高速回転されながら、第二予備素材21に摩擦圧接される。これにより、図2Bに示すように、第一予備素材20及び第二予備素材21が接合され、接合部の周りにバリ22を有する第一素材23が成形される。
【0035】
次に、第一素材23のバリが除去されて、図3Aに示すように、Cの含有量が0.45%以上である高炭素鋼部分Hと、Cの含有量が0.45%未満である第一低炭素鋼部分L1と、を有する第一素材23が成形される。ここでの摩擦圧接では、第一予備素材20と第二予備素材21とが軟化することによって接合されるので、接合部におけるブローホールの発生や、接合部における硬化による割れの発生が、防止される。すなわち、高炭素鋼部分H及び第一低炭素鋼部分L1を有する第一素材23は、強固に一体に接合されている。
【0036】
第一素材23は、熱間鍛造による塑性変形によって、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼部分Hの領域に、焼き入れ予定部9aである歯形、第一ボス部13、及び、第一ボス部13の内部の第一貫通孔31、が成形される。また、高炭素鋼部分H及び低炭素鋼部分L1の内部には、第一予備ギヤ室32が成形される。さらに、低炭素鋼部分L1の外周端部には、周状の嵌合用凹部11が形成される。以上により、予備第一デフケース30が完成される。
【0037】
図4に示すように、予備第一デフケース30の第一貫通孔31には、内径仕上がなされ、第一潤滑溝33が切削加工される。また、第一予備ギヤ室32の内部は、当接するピニオンギヤ用スラストワッシャー4及びサイドギヤ用スラストワッシャー5の形状に対応するように切削加工されて、第一ギヤ室35が形成される。更に、予備第一デフケース30の外周と第一ギヤ室35との間にデフケース孔10が切削加工され、当該デフケース孔10に直交するように固定ピン挿入孔16が切削加工される。加えて、焼き入れ予定部9aである歯形についても、所要の形状に切削加工される。そして、焼き入れ予定部9aである歯形部分のみに高周波焼入れが施され、所要の形状及び硬度の歯形9を有する第一デフケース2aが完成される。
【0038】
次に、第二デフケース2bの成形方法について、図5に基づいて説明する。まず、図5Aに示すように、Cの含有量が0.45%未満の低炭素鋼からなる第二素材40が用意される。そして、熱間鍛造によって、図5Bに示すように、外部に第二ボス部14が成形され、内部に第二貫通孔41及び第二予備ギヤ室42が成形され、外周端部に予備第一デフケース30の嵌合用凹部11と嵌合する周状の嵌合用凸部12が成形されて、予備第二デフケース50が完成される。
【0039】
そして、図5Cに示すように、第二予備ギヤ室42の内部が、当接するピニオンギヤ用スラストワッシャー4及びサイドギヤ用スラストワッシャー5の形状に対応するように切削加工されて、第二ギヤ室45が形成される。また、第二貫通孔41には、内径仕上がなされ、第二潤滑溝43が切削加工される。以上により、第二デフケース2bが完成される。
【0040】
続いて、図6に基いて、ディファレンシャル装置1の組み付け方法について説明する。
【0041】
最初に、第一デフケース2a内に、サイドギヤ用スラストワッシャー5が反歯形側に取り付けられた第一サイドギヤ17が、当該第一サイドギヤ17の歯形側がデフケース中央Yに向くように、デフケース2の回転軸X上に載置される。
【0042】
次に、ピニオンギヤ用スラストワッシャー4が反歯形側に取り付けられたピニオンギヤ6が、第一サイドギヤ17の上に載置される。このとき、各ピニオンギヤ6の歯形は、デフケース2の回転軸Xに向くと共に、デフケース回転軸Xを中心に互いに対向する。また、ピニオンギヤ6のピニオンギヤ孔7と第一デフケース2aのデフケース孔10とピニオンギヤ用スラストワッシャー4の孔とが、同一直線上に整列される。
【0043】
そして、ピニオンシャフト3が、デフケース孔10、ピニオンギヤ用スラストワッシャー4の孔、及び、ピニオンギヤ6に成形されたピニオンギヤ孔7を貫通して、デフケース2の回転軸Xまで挿入され、更に、当該回転軸Xを挟んで対称のピニオンギヤ孔7、ピニオンギヤ用スラストワッシャー4の孔、及び、デフケース孔10に案内される。次に、第一デフケース2aにピニオンギヤ6が位置決めされる。そして、第一デフケース2aの固定ピン挿入孔16及びピニオンシャフト3の固定ピン挿通孔19に固定ピン15が挿入される。これにより、ピニオンギヤ6が第一デフケース2aに対して抜け落ち不能に組付けられる。
【0044】
続いて、サイドギヤ用スラストワッシャー5が反歯形側に取り付けられた第二サイドギヤ18が、ピニオンギヤ6の上に載置される。このとき、第二サイドギヤ18の歯形がピニオンギヤ6側に向くように載置される。
【0045】
そして、第二デフケース2bの嵌合用凸部12と第一デフケース2aの嵌合用凹部11とが嵌合される。そして、第一低炭素鋼部分L1の嵌合用凹部11と第二低炭素鋼部分L2の嵌合凸部12とが電子ビーム溶接によって溶融接合されて、ディファレンシャル装置1のデフケース2の組み付けが完了する。
【0046】
以上のようなデフケース2によれば、第一デフケース2aの高炭素鋼部分Hの焼き入れ予定部9aに焼入れがなされることにより、所要の強度の高強度部9を得ることができる。また、第一デフケース2aの第一低炭素鋼部分L1と第二デフケース2bの第二低炭素鋼部分L2とが電子ビーム溶接により接合されているため、接合部において高炭素鋼部分Hの溶融による硬化が生じることがなく、当該硬化による割れの発生を防止することができる。すなわち、第一デフケース2aと第二デフケース2bとの接合部において、所要の強度を有することができる。また、電子ビーム溶接は、第一デフケース2aと第二デフケース2bとを固定した状態で行うことができるので、所要の精度を有する接合製品を得ることが容易である。更に、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼とCの含有量が0.45%未満の低炭素鋼とを摩擦圧接して第一素材23を成形し、その後、所定の形状の第一デフケース2aに成形するため、摩擦圧接による第一素材23の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきが、その後の成形工程において修正可能である。
【0047】
また、第一デフケース2aと第二デフケース2bとが、溶接によって接合されることにより、ボルト等の接合部品を少なくすることができる。すなわち、ボルト等の接合部品の部品点数を削減することができる。従って、デフケース2の軽量化を実現することができる。
【0048】
また、焼き入れ予定部9aである歯形の成形、第一デフケース2aの成形、及び、第二デフケース2bの成形が鍛造により行われる場合、それらを切削加工する場合より、第一デフケース2a及び第二デフケース2bの歩どまりがよい。また、摩擦圧接による第一素材23の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきが、鍛造工程中に修正できるので、所要の寸法精度の達成に必要な加工コストを削減することができる。
【0049】
尚、以上の実施の形態では、高強度部9として歯形が成形されているが、高強度が必要な部分は、異なる形状に成形されてもよい。また、摩擦圧接工程の後の第一デフケース2a及び第二デフケース2bの成形は、熱間鍛造によって行われる他、冷間鍛造、温間鍛造、あるいは、切削加工によって行われても良い。
【0050】
また、以上の実施の形態では、デフケース2について説明されているが、異なる接合製品にも本発明は適用され得る。また、第一デフケース2aと第二デフケース2bとを溶融させて接合する一例として、電子ビーム溶接での接合が説明されているが、レーザ溶接、抵抗溶接など、他の溶融溶接が用いられてもよい。
【0051】
また、第一デフケース2aに嵌合用凹部11が成形され、第二デフケース2bに嵌合用凸部12が成形されて、溶接の際の位置決めが行われているが、第一デフケース2aに嵌合用凸部が成形され、第二デフケース2bに嵌合用凹部が成形されて位置決めが行われてもよい。
【0052】
また、第二デフケース2bは、第二低炭素鋼部分L2のみから構成されているが、溶融溶接による接合部が低炭素鋼部分であれば、高炭素鋼部分を有していてもよい。
【0053】
また、焼き入れとして、高周波焼き入れが採用されているが、更に高度を高めるために、浸炭焼き入れが採用されてもよい。
【0054】
以上の説明は、主として、炭素量によって鋼材の性質が概ね決定される炭素鋼材についてなされたものである。本件発明者は、さらに、炭素以外の鋼材成分の量によって鋼材の性質が影響される構造用鋼鋼材について検討した。その結果、そのような構造用鋼鋼材については、炭素量の代わりに炭素当量を基準にすべきであることを知見した。
【0055】
炭素当量とは、JISにおいて、以下のように規定されている。
炭素当量=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
ここで、Cは炭素量(%)、Mnはマンガン量(%)、Siはシリコン量(%)、Niはニッケル量(%)、Crはクロム量(%)、Moはモリブデン量(%)、Vはバナジウム量(%)である。
【0056】
そして、本件発明者が当初知見した閾値である「0.45%」という炭素量の炭素鋼材は、一般の炭素鋼材(例えばS45C等)の成分データを用いて換算すれば、「0.60%」という炭素当量の構造用鋼鋼材と等価であり、本件発明においてもそのような置換が可能であることが実際に確かめられた。(S45Cの一例:C=0.46、Mn=0.72、Si=0.18、Ni=0.04、Cr=0.11、V=0.00:炭素量=0.46%、炭素当量=0.613%)
【0057】
すなわち、前記の実施の形態との対比において、高炭素鋼部分Hの替わりに、炭素当量が0.60%以上の鋼材(焼入れ用鋼材)を用いることができ、第一低炭素鋼部分L1の替わりに、炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第一鋼材部分を用いることができ、
第二低炭素鋼部分L2の替わりに、炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第二鋼材部分を用いることができる。
【0058】
この場合でも、第一デフケース2aの焼入れ用鋼材Hの焼き入れ予定部9aに焼入れがなされることにより、所要の強度の高強度部9を得ることができる。また、第一デフケース2aの第一鋼材部分L1と第二デフケース2bの第二鋼材部分L2とが電子ビーム溶接等により接合されて、接合部において焼入れ用鋼材Hの溶融による硬化が生じることがなく、当該硬化による割れの発生を防止することができる。すなわち、第一デフケース2aと第二デフケース2bとの接合部において、所要の強度を有することができる。また、電子ビーム溶接は、第一デフケース2aと第二デフケース2bとを固定した状態で行うことができるので、所要の精度を有する接合製品を得ることが容易である。更に、炭素当量が0.60%以上の焼入れ用鋼材Hと炭素当量が0.60%未満の第一鋼材部分とを摩擦圧接して第一素材23を成形し、その後、所定の形状の第一デフケース2aに成形することにより、摩擦圧接による第一素材23の軸心のずれや軸線方向長さのばらつきが、その後の成形工程において修正可能である。
【0059】
なお、第一中間加工製品の第一鋼材部分L1と第二中間加工製品の第二鋼材部分L2とが溶融溶接により接合される際、第一鋼材部分の高温割れ感受性の値と第二鋼材部分の高温割れ感受性の値との和が7以下である時、割れの発生をより確実に防止することができる。ここで、高温割れ感受性の値は、以下の式で算出される。
高温割れ感受性=1000×C(S+P+(Si/25)+(Ni/100))/(3Mn+Cr+Mo+V)
ここで、Cは炭素量(%)、Sは硫黄量(%)、Pはリン量(%)、Siはシリコン量(%)、Niはニッケル量(%)、Mnはマンガン量(%)、Crはクロム量(%)、Moはモリブデン量(%)、Vはバナジウム量(%)である。
【0060】
図7に、本件発明者が実際に検討した鋼材のデータを示す。表中、Ceqが炭素当量であり、HCSが高温割れ感受性である。そして、図7に示された各鋼材を、前記実施の形態における焼入れ用鋼材Hないし溶融接合用鋼材L1,L2として用いた際の評価結果を、図8及び図9に示す。
【0061】
図8に示すように、焼入れ用鋼材Hとしては、焼き入れ後の歯形9の硬度(強度)という観点で、S45C、S50C、S55Cが好ましかった。その他の鋼材は、所望の歯形の高度を実現することができず、焼入れ用鋼材Hとしては不適格であった。
【0062】
一方、図9に示すように、溶融接合用鋼材L1,L2としては、炭素量0.45%ないし炭素当量0.60%を閾値として適否が分かれた。また、接合される二つの鋼材の高温割れ感受性の値の和が7以下であるとき、割れの発生がより確実に防止されることも実際に知見された。
【0063】
なお、鋼材選択の際には、その加工性が合わせて考慮される(所望の加工が困難であるような加工性の悪い鋼材は利用されない)ことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態の溶融接合製品であるディファレンシャル装置のデフケースの断面図。
【図2A】本発明の一実施の形態の製造方法における、第一素材の成形工程を説明する断面図である。
【図2B】本発明の一実施の形態の製造方法における、第一素材の成形工程を説明する断面図である。
【図3A】本発明の一実施の形態の製造方法における、第一素材から第一デフケースを成形する成形工程を説明する断面図。
【図3B】本発明の一実施の形態の製造方法における、第一素材から第一デフケースを成形する成形工程を説明する断面図。
【図4】本発明の一実施の形態の溶融接合製品における第一中間加工製品の断面図。
【図5A】本発明の一実施の形態の製造方法における、第二素材から第二中間加工製品を成形する成形工程を説明する断面図。
【図5B】本発明の一実施の形態の製造方法における、第二素材から第二中間加工製品を成形する成形工程を説明する断面図。
【図5C】本発明の一実施の形態の製造方法における、第二素材から第二中間加工製品を成形する成形工程を説明する断面図。
【図6】本発明の一実施の形態の溶融接合製品であるディファレンシャル装置のデフケースの、溶接前の状態の断面図。
【図7】本件発明者が実際に検討した鋼材のデータを示す表。
【図8】図7の鋼材についての、焼入れ用鋼材としての評価結果を示す表。
【図9】図7の鋼材についての、溶融溶接用鋼材としての評価結果を示す表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cの含有量が0.45%未満の低炭素鋼よりなる第一低炭素鋼部分(L1)と、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼よりなる高炭素鋼部分(H)と、が摩擦圧接で一体とされて構成された第一中間加工製品(2a)と、
Cの含有量が0.45%未満の第二低炭素鋼よりなる第二低炭素鋼部分(L2)を有する第二中間加工製品(2b)と、
を備え、
第一中間加工製品(2a)の高炭素鋼部分(H)には、予め所望の形状に成形され焼入れされた高強度部(9)が設けられており、
第二中間加工製品(2b)の第二低炭素鋼部分(L2)は、予め所定の形状に成形されており、
第一中間加工製品(2a)の第一低炭素鋼部分(L1)と第二中間加工製品(2b)の第二低炭素鋼部分(L2)とが、溶融溶接によって接合されている
ことを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項2】
高強度部(9)は、歯形である
ことを特徴とする請求項1に記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項3】
第一中間加工製品(2a)は、第一デフケースを構成し、
第二中間加工製品(2b)は、第二デフケースを構成し、
第一中間加工製品(2a)の第一低炭素鋼部分(L1)と第二中間加工製品(2b)の第二低炭素鋼部分(L2)とが、溶融溶接によって接合されて、デフケース(2)が構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項4】
高炭素鋼部分(H)のCの含有量は、0.45%乃至0.60%である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項5】
第一低炭素鋼部分(L1)のCの含有量は、0.10%乃至0.40%である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項6】
第二低炭素鋼部分(L2)のCの含有量は、0.10%乃至0.40%である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項7】
Cの含有量が0.45%未満の低炭素鋼よりなる第一予備素材(20)と、Cの含有量が0.45%以上の高炭素鋼よりなる第二予備素材(21)と、を摩擦圧接して一体の第一素材(23)を成形する工程と、
前記第一素材(23)の摩擦圧接によるバリ(22)を除去する工程と、
前記第一素材(23)の第二予備素材(21)の領域に所定の形状の焼き入れ予定部(9a)を成形すると共に、前記第一素材(23)の第一予備素材(20)の領域に所定の形状の第一低炭素鋼部分(L1)を形成して、第一中間加工製品(2a)を形成する工程と、
前記焼き入れ予定部(9a)を焼入れして高強度部(9)を形成する工程と、
Cの含有量が0.45%未満の第二低炭素鋼よりなる第二素材(40)から、所定の形状の第二低炭素鋼部分(L2)を有する第二中間加工製品(2b)を形成する工程と、
第一中間加工製品(2a)の第一低炭素鋼部分(L1)と第二中間加工製品(2b)の第二低炭素鋼部分(L2)とを、溶融溶接によって接合する工程と、
を備えたことを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項8】
所定の形状の焼き入れ予定部(9a)は、鍛造によって成型される
ことを特徴とする請求項7に記載の高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項9】
所定の形状の第一低炭素鋼部分(L1)は、鍛造によって成型される
ことを特徴とする請求項7または8に記載の高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項10】
所定の形状の第二低炭素鋼部分(L2)は、鍛造によって成型される
ことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項11】
炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第一鋼材部分(L1)と、炭素当量が0.60%以上の鋼材よりなる焼入れ用鋼材部分(H)と、が摩擦圧接で一体とされて構成された第一中間加工製品(2a)と、
炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第二鋼材部分(L2)を有する第二中間加工製品(2b)と、
を備え、
第一中間加工製品(2a)の焼入れ用鋼材部分(H)には、予め所望の形状に成形され焼入れされた高強度部(9)が設けられており、
第二中間加工製品(2b)の第二鋼材部分(L2)は、予め所定の形状に成形されており、
第一中間加工製品(2a)の第一鋼材部分(L1)と第二中間加工製品(2b)の第二鋼材部分(L2)とが、溶融溶接によって接合されている
ことを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項12】
高強度部(9)は、歯形である
ことを特徴とする請求項11に記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項13】
第一中間加工製品(2a)は、第一デフケースを構成し、
第二中間加工製品(2b)は、第二デフケースを構成し、
第一中間加工製品(2a)の第一鋼材部分(L1)と第二中間加工製品(2b)の第二鋼材部分(L2)とが、溶融溶接によって接合されて、デフケース(2)が構成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項14】
第一鋼材部分(L1)の高温割れ感受性の値と第二鋼材部分(L2)の高温割れ感受性の値との和が7以下であるように、第一鋼材部分(L1)及び第二鋼材部分(L2)が選定されている
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の高強度部を有する溶融接合製品。
【請求項15】
炭素当量が0.60%未満の鋼材よりなる第一予備素材(20)と、炭素当量が0.60%以上の鋼材よりなる第二予備素材(21)と、を摩擦圧接して一体の第一素材(23)を成形する工程と、
前記第一素材(23)の摩擦圧接によるバリ(22)を除去する工程と、
前記第一素材(23)の第二予備素材(21)の領域に所定の形状の焼き入れ予定部を成形すると共に、前記第一素材(23)の第一予備素材(20)の領域に所定の形状の第一鋼材部分(L1)を形成して、第一中間加工製品(2a)を形成する工程と、
前記焼き入れ予定部(9a)を焼入れして高強度部(9)を形成する工程と、
炭素当量が0.60%未満の第二鋼材よりなる第二素材(40)から、所定の形状の第二鋼材部分(L2)を有する第二中間加工製品(2b)を形成する工程と、
第一中間加工製品(2a)の第一鋼材部分(L1)と第二中間加工製品(2b)の第二鋼材部分(L2)とを、溶融溶接によって接合する工程と、
を備えたことを特徴とする高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項16】
所定の形状の焼き入れ予定部(9a)は、鍛造によって成型される
ことを特徴とする請求項15に記載の高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項17】
所定の形状の第一鋼材部分(L1)は、鍛造によって成型される
ことを特徴とする請求項15または16に記載の高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項18】
所定の形状の第二鋼材部分(L2)は、鍛造によって成型される
ことを特徴とする請求項15乃至17のいずれかに記載の高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。
【請求項19】
第一予備素材(20)の高温割れ感受性の値と第二素材(40)の高温割れ感受性の値との和が7以下であるように、第一予備素材(20)及び第二素材(40)が選定される
ことを特徴とする請求項15乃至18のいずれかに記載の高強度部を有する溶融接合製品の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−161937(P2008−161937A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315069(P2007−315069)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000238360)武蔵精密工業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】