説明

高放熱型電子部品収納用パッケージ

【課題】安価であると共に、Agのマイグレーションを防止する信頼性の高い高放熱型電子部品収納用パッケージを提供する。
【解決手段】平板状からなるヒートシンク板12の上面に窓枠形状からなるセラミック枠体13の一方の主面の全面と、セラミック枠体13の他方の主面の所定面に1、又は複数の平板状からなる外部接続リード端子15の先端部下面とが、それぞれの間に接合材層14、14aを設けて接合される高放熱型電子部品収納用パッケージ10であって、接合材層14、14aが、ヒートシンク板12、及び/又はセラミック枠体13に、Cu金属粉末に無鉛ガラス粉末と溶剤を混合させたCuペーストで印刷して形成するCuメタライズ膜を設けた後、ヒートシンク板12、セラミック枠体13、及び外部接続リード端子15を重ね合わせてCuメタライズ膜を焼成して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク板の上面にセラミック枠体と、このセラミック枠体の上面に外部接続リード端子を接合する高放熱型電子部品収納用パッケージに関し、より詳細には、ヒートシンク板上面と、セラミック枠体の内周側壁面で形成されるキャビティ部のヒートシンク板上面に、半導体素子等の電子部品が搭載され、金属板等からなる外部接続リード端子のワイヤボンドパッド部と、電子部品をボンディングワイヤで接続して電気的に導通状態とされ、蓋体で電子部品が気密に封止されるのに用いられる高放熱型電子部品収納用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、従来から、高放熱型電子部品収納用パッケージ50には、例えば、RF(Radio Frequency)基地局用等のシリコンや、ガリウム砒素電界効果トランジスタ等の高周波、高出力の半導体素子等の電子部品51を収納したりするためのものがある。このような高放熱型電子部品収納用パッケージ50は、実装される電子部品51から高温、且つ大量の熱を発生するので、この熱を放熱するために、高熱伝導率を有する金属製のヒートシンク板52が必要となっている。また、高放熱型電子部品収納用パッケージ50には、電子部品51を囲繞して中空状態で収納するためのキャビティ部53を形成するために、ヒートシンク板52にAg−Cuろう材でろう付け接合させる窓枠形状からなるセラミック枠体54が必要となっている。このセラミック枠体54は、アルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁性のセラミックからなっている。なお、ヒートシンク板52には、セラミック枠体54をろう付け接合させることで反りを発生させたり、セラミック枠体54にクラック等を発生させたりするのを防止するために、熱膨張係数をセラミック枠体54の熱膨張係数(例えば、アルミナ:7.2×10−6/℃)と近似させることが必要となっている。
【0003】
上記のようなヒートシンク板52には、例えば、セラミックと熱膨張係数が近似するタングステン(W)を用い、これをポーラス状にして、この部分に熱伝導性に優れる銅を含浸させたりして作製される銅とタングステンの複合金属板(熱伝導率:190W/mK、熱膨張係数:7.0×10−6/℃)がある。また、最近では、電子部品51からの発熱量の増大に対応するために、ヒートシンク板52には、銅とモリブデン系金属板の両面のそれぞれに同一厚さの銅板をクラッドして反りの発生を抑えながら熱伝導率を更に向上させた金属板(熱伝導率:240W/mK、熱膨張係数:10.1×10−6/℃)も用いられている。
【0004】
更に、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ50には、外部と電気的に導通状態とするために、外部接続リード端子55が必要となっている。この外部接続リード端子55は、セラミック枠体54の上面にAg−Cuろう材でろう付け接合するので、セラミックと熱膨張係数が近似するKV(Fe−Ni−Co系合金、商品名「Kovar(コバール)」)や、42アロイ(Fe−Ni系合金)等の金属板からなっている。そして、ヒートシンク板52の上面にセラミック枠体54の一方の主面の全面をAg−Cuろう材でろう付け接合すると共に、セラミック枠体54の他方の主面の所定面に外部接続リード端子55の先端部下面をAg−Cuろう材でろう付け接合した上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ50には、電子部品51を実装させたり、外部との酸化や硫化を防止する等のために、表面に露出する全ての金属部分にNiめっき被膜、及びAuめっき被膜が形成されている。
【0005】
上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ50は、セラミック枠体54の作製に、電気絶縁性の高い、例えば、アルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック粉末に焼結助剤、樹脂、溶剤、可塑剤等を混合させ、これをシート状に成形したセラミックグリーンシートを用いている。そして、セラミックグリーンシートには、セラミック枠体54となる位置のヒートシンク板52や、外部接続リード端子55とろう付け接合させるための接合部となる位置に、タングステン(W)や、モリブデン(Mo)等の金属粉末に溶剤等を混合させた導体金属ペーストでスクリーン印刷して導体印刷パターンを形成している。更に、この導体印刷パターンと、セラミックグリーンシートは、還元雰囲気中で同時焼成して、メタライズ膜を設けたセラミック枠体54を形成している。あるいは、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ50は、セラミック枠体54の作製に、セラミックグリーンシートのみを焼成した焼成済のセラミック枠体用基板の上面、及び下面にモリブデン−マンガン(MoMn)の金属粉末に溶剤等を混合させた導体金属ペーストでスクリーン印刷して導体印刷パターンを形成している。更に、この導体印刷パターンが形成されたセラミック枠体用基板は、還元雰囲気中で焼成して、メタライズ膜を設けたセラミック枠体54を形成している。そして、セラミック枠体54のメタライズ膜上には、Niめっき被膜が形成された後に、Niめっき被膜面との間にAg−Cuろう材を介し、加熱することでヒートシンク板52の上面にセラミック枠体54の下面と、セラミック枠体の上面に外部接続リード端子55をろう付け接合している。
【0006】
しかしながら、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ50は、メタライズ膜を設けるセラミック枠体54の形成、更にはこのメタライズ膜上にNiめっき被膜の形成が必要であるので、パッケージのコストアップとなっている。
そこで、従来の金属板とセラミック基板を直接ろう材を用いて接合する高放熱型電子部品収納用パッケージには、Cu等の金属粒子に活性金属を混練させたペースト状ろう材を金属板と、メタライズ膜を設けないセラミック基板との間に介在させて加熱して接合するものが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、前記Ag−Cuろう材はもとより、上記の活性金属には、通常、Agが含まれている。これらを用いた高放熱型電子部品収納用パッケージは、これに電子部品が実装されて環境試験を行ったときに、キャビティ部内の水分が露結し、そこに電圧が掛けられると、Agがイオン化し、Agが析出して樹枝状に成長して、セラミック枠体の側面に樹枝状晶(デントライト)を発生させる、所謂、Agのマイグレーションが避けられない状態となっている。従って、このような高放熱型電子部品収納用パッケージは、セラミック枠体の上、下面に設ける外部接続リード端子と、ヒートシンク板間に短絡を発生させるという問題を抱え、信頼性の低いパッケージとなっている。
【0008】
Agのマイグレーションを避ける高放熱型電子部品収納用パッケージには、外部接続端子用のリードフレームとリング状のセラミック枠体及び放熱用の金属板を有する基体と、樹脂で封止する蓋体を有する半導体パッケージにおいて、基体はリードフレームと金属板をセラミック枠体の両面に形成されたメタライズ層を介してそれぞれ接合される接合材を有し、しかもリードフレームとセラミック枠体とを接合する第1の接合材と、セラミック枠体と金属板とを接合する第2の接合材のいずれか一方に金ろう、他方に銀ろうからなる接合材を有するものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。これによれば、高放熱型電子部品収納用パッケージは、外部接続端子用のリードフレームと放熱用の金属板との間で短絡の発生しないパッケージが提供できるとしているものである。
【0009】
また、Agを用いないでセラミック板とCu板を接合する高放熱の銅板付きセラミック基板には、セラミック板とCu板の間にCuメタライズ中間層を介在せしめてセラミック板とCu板を接合したものが提案されている(例えば、特許文献5参照)。これによれば、銅板付きセラミック基板は、Cuメタライズ中間層が、セラミック板上にCuペーストを塗布し焼成して形成したもので、セラミック板表面を粒界にCuOを有するCuの多結晶体のメタライズ面とするものである。そして、このメタライズ面上には、銅板を載置させて850〜1065℃で熱処理を行うことによりCuOの共晶融液が生じCuの融点以下の温度で銅とセラミックとの接合を可能としているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−120973号公報
【特許文献2】特開2008−208013号公報
【特許文献3】特開2005−112677号公報
【特許文献4】特開2003−197803号公報
【特許文献5】特開平3−12371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述したような従来の高放熱型電子部品収納用パッケージは、次のような問題がある。
(1)特開2003−197803号公報で開示されるような高放熱型電子部品収納用パッケージは、Agのマイグレーションを防止して、外部接続端子用のリードフレームと放熱用の金属板との間で短絡の発生しないパッケージが提供できるものの、逆に、タングステン等のメタライズ膜を設けるセラミック枠体の形成、更にはこのメタライズ膜上にNiめっき被膜の形成が必要であり、しかも、高価なAuろうを使用しているので、パッケージのコストアップを防止することができなくなっている。
(2)特開平3−12371号公報で開示されるような高放熱型電子部品収納用パッケージは、Cuメタライズ膜を設けたセラミック板には、Cu板のみがCuOの共晶融液を利用する銅とセラミックとの直接接合法であり、Cu板以外のヒートシンク板や、外部接続リード端子の接続が不可能となっている。また、この高放熱型電子部品収納用パッケージでは、セラミック板と、Cu板を接合させるのに2度の加熱が必要であるので、パッケージのコストアップを防止することができなくなっている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、安価であると共に、Agのマイグレーションを防止する信頼性の高い高放熱型電子部品収納用パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的に沿う本発明に係る高放熱型電子部品収納用パッケージは、平板状からなるCuを含有する金属製ヒートシンク板の上面に窓枠形状からなるセラミック枠体の一方の主面の全面と、セラミック枠体の他方の主面の所定面に1、又は複数の平板状からなるFe−Ni、又はFe−Ni−Co合金製外部接続リード端子の先端部下面とが、それぞれの間に接合材層を設けて接合される高放熱型電子部品収納用パッケージであって、接合材層が、ヒートシンク板、及び/又はセラミック枠体に、Cu金属粉末に無鉛ガラス粉末と溶剤を混合させたCuペーストで印刷して形成するCuメタライズ膜を設けた後、ヒートシンク板、セラミック枠体、及び外部接続リード端子を重ね合わせてCuメタライズ膜を焼成して設けられている。
【0013】
ここで、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージは、Cuペーストが、Cu金属粉末を80〜90wt%と、無鉛ガラス粉末を3〜10wt%と、残部に複数種の溶剤を含有して設けられていると共に、接合材層が、Cuメタライズ膜を窒素雰囲気中の750〜950℃で焼成して設けられているのがよい。
【0014】
また、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージは、セラミック枠体が、バインダを混合させたセラミック粉末をプレス成形した成形体を焼成して設けられているのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高放熱型電子部品収納用パッケージは、平板状からなるCuを含有する金属製ヒートシンク板の上面に窓枠形状からなるセラミック枠体の一方の主面の全面と、セラミック枠体の他方の主面の所定面に1、又は複数の平板状からなるFe−Ni、又はFe−Ni−Co合金製外部接続リード端子の先端部下面とが、それぞれの間に接合材層を設けて接合される高放熱型電子部品収納用パッケージであって、接合材層が、ヒートシンク板、及び/又はセラミック枠体に、Cu金属粉末に無鉛ガラス粉末と溶剤を混合させたCuペーストで印刷して形成するCuメタライズ膜を設けた後、ヒートシンク板、セラミック枠体、及び外部接続リード端子を重ね合わせてCuメタライズ膜を焼成して設けられているので、セラミック枠体に事前にタングステンや、モリブデン等の高融点金属からなるメタライズ膜を形成、焼成することなく、Agを全く含まないCu金属粉末に無鉛ガラス粉末と溶剤を混合させたミックスボンドからなるCuペーストを直接印刷しただけの状態で、ヒートシンク板、セラミック枠体、及び外部接続リード端子を重ね合わせて一度だけのメタライズ膜の焼成で強固な接合材層を設ける接合体が形成でき、安価であると共に、Agのマイグレーションを防止する信頼性の高い高放熱型電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【0016】
特に、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージは、Cuペーストが、Cu金属粉末を80〜90wt%と、無鉛ガラス粉末を3〜10wt%と、残部に複数種の溶剤を含有して設けられていると共に、接合材層が、Cuメタライズ膜を窒素雰囲気中の750〜950℃で焼成して設けられているので、Cuペーストに用いたようなCuを含有するヒートシンク板や、Cuとの親和性の高いNiを含有する外部接続リード端子との接合面での活性化による金属結合や、絶縁物であるセラミック枠体とのガラスの濡れ接合の接合体からなる高放熱型電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【0017】
また、特に、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージは、セラミック枠体が、バインダを混合させたセラミック粉末をプレス成形した成形体を焼成して設けられているので、粉体プレス成形した成形体を大気中で焼成しただけの安価なセラミック枠体ができ、安価な高放熱型電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る高放熱型電子部品収納用パッケージの斜視図、A−A’線拡大縦断面図である。
【図2】同高放熱型電子部品収納用パッケージに電子部品を実装した状態の斜視図である。
【図3】従来の高放熱型電子部品収納用パッケージの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施するための形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、実装される電子部品11から発生する高温、且つ大量の熱を放熱するための高放熱特性を有する略長方形平板状のCuを含有する金属製ヒートシンク板12の上面に、窓枠形状からなるセラミック枠体13の一方の主面の全面を間に接合材層14を設けて接合している。また、この高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、セラミック枠体13の他方の主面の所定面に、1、又は複数の平板状からなるFe−Ni、又はFe−Ni−Co合金製外部接続リード端子15の先端部下面を間に上記の接合材層14と同様の接合材層14aを設けて接合している。そして、この接合体からなる高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、電子部品11を載置して接合するためのヒートシンク板12の上面と、電子部品11を囲繞するためのセラミック枠体13の内周側壁面とで電子部品11を収納するためのキャビティ部16を設けている。そして、高放熱型電子部品収納用パッケージ10の表面に露出する全ての金属部分には、Niや、Ni−Co等からなるNiめっき被膜(図示せず)、更に、この上にAuめっき被膜(図示せず)が形成されて有している。この高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、接合材層14、14aにAgを含有していないので、Agのマイグレーションを防止して、セラミック枠体13の上、下面に設ける外部接続リード端子15と、ヒートシンク板12間の短絡を防止する信頼性の高いパッケージとすることができる。
【0020】
上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、ヒートシンク板12に、セラミックと熱膨張係数が近似するタングステンをポーラス状にして、この部分に熱伝導性に優れる銅を含浸させた銅とタングステンの複合金属板や、セラミックと熱膨張係数が近似するモリブデンと銅の合金板や、複合金属板や、合金板の両面のそれぞれに同一厚さの銅板をクラッドして反りの発生を抑えながら熱伝導率を更に向上させた接合金属板等が用いられている。また、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、セラミック枠体13に、例えば、アルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックからなり、曲げ強度が高く、電気絶縁性、熱伝導性、電気的特性等に優れたものが用いられている。更に、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、外部接続リード端子15に、通称、これを形成するFe−Niが42アロイ、Fe−Ni−CoがKV(商品名「Kovar(コバール)」)と呼ばれたりして、いずれもセラミックと熱膨張係数が近似したものが用いられている。そして、この外部接続リード端子15には、電子部品11とボンディングワイヤ17を介して直接接続して電気的に導通状態とするためのワイヤボンドパッド部と、外部と電気的に導通状態とするための端子部が設けられ、外部接続リード端子15が2つの役目を行うことができるようになっている。
【0021】
上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、ヒートシンク板12と、セラミック枠体13と、外部接続リード端子15の接合体を形成するためのそれぞれの接合材層14、14aが、Cu金属粉末に、例えば、SiO−B−ZnO系の無鉛ガラス粉末と、溶剤を混合させたCuペーストで印刷するCuメタライズ膜を焼成することで設けられている。ヒートシンク板12と、セラミック枠体13の接合材層14の形成には、ヒートシンク板12の上面となる部分、又はセラミック枠体13の下面となる部分にCuペーストでスクリーン印刷するCuメタライズ膜を設けている。また、セラミック枠体13と、外部接続リード端子15の接合材層14aの形成には、セラミック枠体13の上面となる部分にCuペーストでスクリーン印刷するCuメタライズ膜を設けている。そして、接合体は、ヒートシンク板12の上面にセラミック枠体13、セラミック枠体13の上面に外部接続リード端子15を重ね合わせて焼成し、Cuメタライズ膜の接合材層14、14aを設けることで形成している。上記の接合材層14、14aは、Cu金属粉末と、Cuを含有するヒートシンク板12や、Cuとの親和性の高いNiを含有する外部接続リード端子15との焼成での活性化で金属間接合を強固にでき、無鉛ガラス粉末の焼成での溶融によるセラミック枠体13との濡れ接合を強固にできるようになっている。
【0022】
上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、Cuペーストが、Cu金属粉末を80〜90wt%と、無鉛ガラス粉末を3〜10wt%と、残部に複数種の溶剤を含有して設けられているのがよい。これと共に、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、接合材層14、14aが、Cuメタライズ膜を窒素雰囲気中の750〜950℃で焼成して設けられているのがよい。CuペーストのCu金属粉末は、割合量が80wt%を下まわる場合には、Cu金属粉末と、ヒートシンク板12や、外部接続リード端子15との活性化による金属接合の強度が低下することとなる。また、CuペーストのCu金属粉末は、割合量が90wt%を超える場合には、逆に無鉛ガラス粉末量が少なくなるので、セラミック枠体13とのガラスの濡れ接合の強度が低下することとなると共に、Cuペーストするための溶剤量が少なくなるので、Cuペーストでファインなパターンをスクリーン印刷を行うための印刷性が得られなくなる。一方、Cuペーストの無鉛ガラス粉末は、割合量が3wt%を下まわる場合には、セラミック枠体13とのガラスの濡れ接合の強度が低下することとなる。また、Cuペーストの無鉛ガラス粉末は、割合量が10wt%を超える場合には、逆にCu金属粉末量が少なくなるので、ヒートシンク板12や、外部接続リード端子15との活性化による金属接合の強度が低下することとなる。Cuメタライズ膜の焼成温度は、750℃を下まわる場合には、十分な活性化の温度に到達しないので、Cu金属粉末と、ヒートシンク板12や、外部接続リード端子15との活性化による金属接合の強度が低下することとなる。また、Cuメタライズ膜の焼成温度は、950℃を超える場合には、無鉛ガラス粉末が液状近くなり、Cuメタライズ膜の形状が保てなくなる。なお、上記のCuペーストに含有する溶剤には、例えば、テレピオネール、ブチルカルビトールアセテート、ポリイソブチルアクリレート等の溶剤を用いることができる。また、Cuメタライズ膜の焼成温度は、Cu金属粉末にナノ粒子径の粉末が含まれている場合には、900℃程度が最も好ましい焼成温度となっている。
【0023】
上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、セラミック枠体13が、バインダを混合させたセラミック粉末を、上、下金型とダイスからなる粉体プレス金型を用いてプレス成形し、例えば、セラミック粉末がアルミナからなる場合には、大気中の1500〜1600℃程度の高温度で焼成して設けられているのがよい。上記のバインダを混合させたセラミック粉末は、外形が異形状の数μm程度のセラミック微粉原料粉末に、シリカや、マグネシアや、カルシア等の焼結助剤を混合させ、これにポリブチルアセテート(PVA)等のバインダと、水を混合させた混合物をスプレードライヤーで造粒しながら乾燥して外形が80μm程度の球状に形成している。この球状に造粒したセラミック粉末は、ダイスと下金型とで形成される空間部に、原料供給機であるフィーダを介する安息角を利用して均一な密度で充填される。そして、ダイス内で均一密度で充填されたセラミック粉末は、それぞれ上金型を下方に、下金型を上方に稼動させて、ダイス内でプレス成形した後、ダイスの外に取り出すことでセラミック枠体13の焼成前の成形体を形成している。更に、成形体は、従来のような、セラミックと、そこに形成したタングステン膜を同時焼成する場合のように還元雰囲気のような特別な焼成雰囲気中での焼成を必要としないで、単なる大気中で焼成を行っている。従って、セラミック粉末をプレス成形し、焼成して設けられるセラミック枠体13は、所望する厚み、形状のセラミック枠体13を容易、且つ簡単に形成できるので、安価にすることができ、これを用いた高放熱型電子部品収納用パッケージ10を安価にすることができる。
【0024】
図2に示すように、上記の高放熱型電子部品収納用パッケージ10には、キャビティ部16のヒートシンク板12の上面のAuめっき被膜面に電子部品11がAu−Siろう材で等で接合している。この接合は、電子部品11に形成されているAu蒸着面と、キャビティ部16のヒートシンク板12の上面のAuめっき被膜面との間にAu−Siろう材等のろう材を挟み込んで加熱し、電子部品11を加圧しながらスクラブして擦り付けることで、強固な接着強度を確保している。そして、キャビティ部16に搭載された電子部品11は、外部接続リード端子15との間をボンディングワイヤ17で直接接続して電気的導通状態を形成している。高放熱型電子部品収納用パッケージ10には、電子部品11がキャビティ部16に実装された後、樹脂や、セラミックや、金属等からなる蓋体18が外部接続リード端子15を含むセラミック枠体13の上面に樹脂や、ガラス等の絶縁性接着材19で接合されて、電子部品11がキャビティ部16内で気密に封止されるようになっている。そして、電子部品11が収納された高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、外部接続リード端子15の端子部下面が配線回路パターンの形成されたボード基板(図示せず)等に半田で接合されるようになっている。また、電子部品11が収納された高放熱型電子部品収納用パッケージ10は、ヒートシンク板12の長手方向両端部に設けられている取付部19で放熱性の向上を兼ねる金属製からなる基台(図示せず)にネジ20でネジ止めするようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の高放熱型電子部品収納用パッケージは、シリコンや、ガリウム砒素電界効果トランジスタ等の高周波、高出力の半導体素子等の電子部品を実装させて、例えば、RF(Radio Frequency)基地局用等の電子装置とするのに用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
10:高放熱型電子部品収納用パッケージ、11:電子部品、12:ヒートシンク板、13:セラミック枠体、14、14a:接合体層、15:外部接続リード端子、16:キャビティ部、17:ボンディングワイヤ、18:蓋体、19:取付部、20:ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状からなるCuを含有する金属製ヒートシンク板の上面に窓枠形状からなるセラミック枠体の一方の主面の全面と、前記セラミック枠体の他方の主面の所定面に1、又は複数の平板状からなるFe−Ni、又はFe−Ni−Co合金製外部接続リード端子の先端部下面とが、それぞれの間に接合材層を設けて接合される高放熱型電子部品収納用パッケージであって、
前記接合材層が、前記ヒートシンク板、及び/又は前記セラミック枠体に、Cu金属粉末に無鉛ガラス粉末と溶剤を混合させたCuペーストで印刷して形成するCuメタライズ膜を設けた後、前記ヒートシンク板、前記セラミック枠体、及び前記外部接続リード端子を重ね合わせて前記Cuメタライズ膜を焼成して設けられていることを特徴とする高放熱型電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
請求項1記載の高放熱型電子部品収納用パッケージにおいて、前記Cuペーストが、前記Cu金属粉末を80〜90wt%と、前記無鉛ガラス粉末を3〜10wt%と、残部に複数種の前記溶剤を含有して設けられていると共に、前記接合材層が、前記Cuメタライズ膜を窒素雰囲気中の750〜950℃で焼成して設けられていることを特徴とする高放熱型電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
請求項1又はこれに従属する請求項2記載の高放熱型電子部品収納用パッケージにおいて、前記セラミック枠体が、バインダを混合させたセラミック粉末をプレス成形した成形体を焼成して設けられていることを特徴とする高放熱型電子部品収納用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−64616(P2012−64616A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205139(P2010−205139)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(391039896)株式会社住友金属エレクトロデバイス (276)
【Fターム(参考)】