説明

高耐圧MOSトランジスタ装置

【課題】ドレイン配線の幅を従来よりも大きくして、ドレイン配線を導通可能な最大電流量を大きくすること。
【解決手段】高耐圧MOSトランジスタ装置10は、基板102に設けられたPウエル領域103中に形成されており、20V以上のソース−ドレイン間耐圧を有している。そして、Pウエル領域中のソース104a,104b及びドレイン108の間の領域部分が、外部電界の影響を受けて導電型が反転するのを防止する導電性膜を備えている。この導電性膜は、ゲート電極120a,120bと連続的に帯状層12として一体形成されており、基板の表面を平面的に見たとき、帯状層は、ソース及びドレインの一方又は双方を囲んで設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソース−ドレイン間のリーク電流を抑制することができる高耐圧MOSトランジスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の主面に形成された半導体装置では、主面の上方に設けられた配線層に由来する外部電界の影響により、主面近傍の基板の導電型が反転した反転層が形成されることがある。そして、この反転層は、半導体装置間のリークの原因となることがある。
【0003】
外部電界の影響による反転層の形成を防止するために、配線層と基板の主面との間に導電層を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術では、この導電層に所定のバイアス電圧を印加することにより、配線層に由来する外部電界を遮蔽して、反転層の形成を防止している。
【0004】
特許文献1に開示された技術の応用例として、例えば、図7〜図9に示すような高耐圧MOSトランジスタ装置が知られている。ここで、図7は、高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。図8は、層間絶縁膜、及び層間絶縁膜上の配線を除いた、高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。図9(A)は、図7のA−A線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。また図9(B)は、図7のB−B線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。
【0005】
図7〜図9を参照すると、トランジスタ装置101は、2個の高耐圧MOSトランジスタ(以下、単に「トランジスタ」とも称する。)100a,100bを備えている。トランジスタ装置101は、導電型がP型の基板102に形成されている。
【0006】
より詳細には、トランジスタ100a,100bは、基板102の表面付近に形成された平面形状が矩形状のPウエル領域103中に形成されている。トランジスタ100aは、両トランジスタ100a及び100bに共通に用いられる1個のドレイン108、ソース104a及びゲート106aを備えている。同様に、トランジスタ100bは、両トランジスタ100a及び100bに共通に用いられる1個のドレイン108、ソース104b及びゲート106bを備えている。
【0007】
Pウエル領域103は、基板102よりもP型不純物の濃度が高い領域である。また、Pウエル領域103の表面には、フィールド酸化膜118が形成されている。
【0008】
より詳細には、フィールド酸化膜118は、後述するゲート酸化膜122a及び122bが形成された領域、ドレイン108の高濃度N型領域112、並びに、ソース104a及び104bの高濃度N型領域128a及び128bを除いたPウエル領域103の表面領域に形成されている。
【0009】
ガードリング110は、Pウエル領域103よりもP型不純物の濃度が高く形成された帯状体であり、Pウエル領域103の内周に沿って設けられている。
【0010】
ガードリング110には、複数のコンタクト136,136,・・・が接続されている。ガードリング110は、これらのコンタクト136,136,・・・を介して、基板102の表面側に設けられた層間絶縁膜105を貫通してガードリング配線138と接続されている。
【0011】
ガードリング配線138は、ガードリング110とほぼ対応する形状を有している。つまり、ガードリング配線138は、後述するドレイン配線116及びゲート配線126a,126bの領域を除いて、Pウエル領域103を囲むように形成されている。さらに、ガードリング配線138には、後に詳述するメタルカバー140a,140bが設けられている。
【0012】
ドレイン108は、Pウエル領域103のほぼ中央部に形成されている、平面形状が矩形状の領域である。ドレイン108は、高濃度N型領域112と低濃度N型領域114a,114bとから形成されている。
【0013】
高濃度N型領域112は、導電型がN型の領域である。高濃度N型領域112には、複数のコンタクト113,113,・・・が接続されている。高濃度N型領域112は、これらのコンタクト113,113,・・・を介して、基板102の厚み方向上方に設けられたドレイン配線116と接続されている。ドレイン配線116は、ガードリング配線138の切れ目から、Pウエル領域103の外側に引き出されている。
【0014】
低濃度N型領域114a,114bは、高濃度N型領域112よりもN型不純物濃度が低い領域であり、高濃度N型領域112を囲って、ゲート長方向に延在している。低濃度N型領域114a及び114bは、ドレイン108端部の電界集中を緩和するために設けられるものである。低濃度N型領域114a及び114bの上方には、低濃度N型領域114a及び114bに接して、フィールド酸化膜118がそれぞれ形成されている。
【0015】
ゲート106a,106bは、それぞれゲート電極120a及び120bと、ゲート酸化膜122a及び122bとを備えている。ゲート106a,106bは、Pウエル領域103中において、ドレイン108を挟んで対称的に配置されている。
【0016】
ゲート電極120a及び120bは、周知のように、ポリシリコンを材料として形成されており、ゲート幅方向に関して、ゲート幅よりも長く形成されている。そして、ゲート電極120a及び120bの長手方向の片方の端部は、コンタクト124a及び124bを介して、基板102の表面側の全面に設けられた層間絶縁膜105を貫通してゲート配線126a及び126bとそれぞれ接続されている。ゲート配線126a及び126bは、ガードリング配線138の切れ目から、Pウエル領域103の外側に引き出されている。
【0017】
ソース104a,104bは、Pウエル領域103中において、ドレイン108を挟んで、ゲート106a,106bの外側に対称的に配置されている。ソース104a及び104bは、平面形状が矩形状の領域である。ソース104aは、高濃度N型領域128a,128bと低濃度N型領域130a,130bとから形成されている。また、ソース104bは、高濃度N型領域128bと低濃度N型領域130b,130bとから形成されている。
【0018】
高濃度N型領域128a及び128bは、導電型がN型の領域である。高濃度N型領域128a及び128bには、複数のコンタクト132,132,・・・が接続されている。高濃度N型領域128a及び128bは、これらのコンタクト132,132を介して、層間絶縁膜105を貫通してガードリング配線138と接続されている。
【0019】
低濃度N型領域130a,130bは、高濃度N型領域128a及び128bよりもN型不純物濃度が低い領域であり、高濃度N型領域128a及び128bを囲って、ゲート長方向に延在している。低濃度N型領域130a,130bの上方には、低濃度N型領域130に接してフィールド酸化膜118が形成されている。
【0020】
ここで、図9(B)を参照して、メタルカバー140a,140bについて、より詳細に説明する。メタルカバー140a,140bは、ガードリング配線138が、Pウエル領域103の内側に突出した突出部として形成されている。基板102の表面側から見た場合、メタルカバー140a,140bは、それぞれ、ゲート電極120a,120bとオーバーラップするようにそれぞれ形成されている(図中、破線で挟まれた領域)。
【0021】
メタルカバー140a,140bは、ゲート電極120a,120b及びゲート配線126a,126bと相俟って、外部電界の影響により、Pウエル領域103に反転層の形成を防止する機能を有する。
【0022】
つまり、メタルカバー140a,140bは、外部電界を遮蔽して、外部電界が直接Pウエル領域103の表面に印加されることを防ぐ。これにより、反転層の発生を抑え、反転層を介してのソース104a及び104bと、ドレイン108との間で生じるリークを防止する。
【0023】
しかし、この技術では、図より明らかなように、ドレイン配線116が、ゲート配線126a,126b間の間隙の幅Wによって規制されてしまう。つまり、ドレイン配線116を幅W以上に大きくすることができなかった。その結果として、ドレイン配線116を導通可能な最大電流量を大きくすることが困難であった。
【0024】
また、ソース及びドレインの間で生じるリークを防止する技術としては、ドレインの周囲をゲート電極で切れ目無く囲む技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)
しかし、特許文献2に開示された技術では、矩形状のドレインの4隅に電界集中が生じ、トランジスタの電圧耐性を十分に大きくすることが困難であった。
【特許文献1】特開2000−311898号公報
【特許文献2】特開平9−134966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
発明者らは、鋭意検討の結果、高耐圧MOSトランジスタ装置において、ゲート電極と協働してソース及びドレインの一方又は双方を囲む導電性膜からなる帯状層を設ければ、高耐圧MOSトランジスタ装置の電圧耐性を損なうことなく、ソース及びドレイン間のリークを防止できることに想到した。
【0026】
したがって、この発明の目的は、
(1)電圧耐性を損なうことなく、
(2)ソース及びドレイン間のリーク電流を防止し、
(3)ドレイン配線の幅を従来よりも大きくして、ドレイン配線を導通可能な最大電流量を大きくすることができる高耐圧MOSトランジスタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述した目的の達成を図るために、この発明の高耐圧MOSトランジスタ装置は、基板に設けられた一方の導電型のウエル領域中に形成されており、20V以上のソース−ドレイン間耐圧を有している。
【0028】
そして、ウエル領域中のソース及びドレイン間の領域部分が、外部電界の影響を受けて導電型が反転するのを防止する導電性膜を備えており、この導電性膜は、ゲート電極と、ゲート電極と連続的に形成された部分とを含み、全体的に帯状層として形成されている。
【0029】
そして、基板の表面を平面的に見たとき、帯状層は、ソース及びドレインの一方又は双方を囲んで設けられている。
【0030】
ここで、該ゲート電極と連続的に形成された部分を、遮蔽用配線とすることが好ましい。
【0031】
また、帯状層が、以下に記載するような第1遮蔽用配線と第2遮蔽用配線とを備えてることが好ましい。
【0032】
第1遮蔽用配線は、ゲート電極と、ゲート電極と一体に形成された遮蔽用配線とを含み、かつ、基板の表面を平面的に見たとき、C字形に前記ソース及びドレインの一方又は双方を囲んでいる。
【0033】
第2遮蔽用配線は、基板の表面を平面的に見たとき、ウエル領域を囲むガードリング配線と、第1遮蔽用配線とは異なる高さのメタルカバーであって、ガードリング配線から延びて、基板の表面を平面的に見たとき、第1遮蔽用配線と重複する当該メタルカバーと、第1遮蔽用配線とは異なる高さであって、ゲート電極に電圧を供給するゲート配線とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
この発明の高耐圧MOSトランジスタ装置によれば、(1)電圧耐性を損なうことなく、(2)ソース及びドレイン間のリークを防止し、及び(3)ドレイン配線の幅を従来よりも大きくして、ドレイン配線を導通可能な最大電流量を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、構成要素の断面を表す各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例に過ぎない。したがって、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。
【0036】
(実施の形態1)
図1〜図3を参照して、実施の形態1の高耐圧MOSトランジスタ装置について説明する。図1は、高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。図2は図1に示した構成要素から、層間絶縁膜及び層間絶縁膜上の配線を除いた、高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。図3は、図1のA−A線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。なお、図1〜図3において、図7〜図9に示した従来技術と同様の構成要素には同符号を付し、説明の必要がある場合を除き、その説明を省略する。
【0037】
(構造)
まず、実施の形態1の高耐圧MOSトランジスタ装置10の構造について説明する。なお、以下、「高耐圧MOSトランジスタ装置」を単に、「トランジスタ装置」と称することもある。
【0038】
高耐圧MOSトランジスタ装置10は、ソース−ドレイン間耐圧が20V以上のものであって、基板102に設けられた一方の導電型領域、例えば、Pウエル領域103中に形成されている。この実施の形態で例示するトランジスタ装置10は、共通の1つのドレイン108と、その両側にそれぞれ設けられたソース104a及び104bを備えるデュアルゲートタイプのものとする。
【0039】
そして、Pウエル領域103中のソース104a,104b及びドレイン108間の領域部分が、外部電界の影響を受けて導電型が他方の導電型へと反転するのを防止する導電性膜12を備えている。
【0040】
この導電性膜12は、ゲート電極120a,120bを含む帯状層として形成されている。さらに、帯状層12は、基板102の表面の上側、すなわち一方の導電型のウエル領域、ここではPウエル領域103の上側に設けられている。この帯状層12は、基板102の表面を平面的に見たとき、ソース104a,104b及びドレイン108の一方又は双方を囲んで設けられていてよいが、この実施の形態では、帯状層12でドレインを囲んだ構成例を示している。
【0041】
なお、図1は断面図ではないが、構成要素の領域を強調するために、帯状層12にはハッチングを施して示してあり、特にゲート電極120a,120bの部分には、ハッチングの密度を高めて示してある。
【0042】
この実施の形態においては、帯状層12のゲート電極120a,120bと一体に形成された部分は、遮蔽用配線14とする。この遮蔽用配線14の幅は、設計に応じて好適な幅とすればよい。
【0043】
図7及び図8に示した従来技術の構成と、図1及び図2に示した実施の形態の構成とを比較すると明らかなように、この実施の形態のトランジスタ装置10は、以下の2点が従来技術のトランジスタ装置101と異なっている。
【0044】
(1)ゲート電極120a及び120bが、遮蔽用配線14a及び14bを介して接続されていて、あたかもゲート電極120a及び120bが一体となってドレイン108を囲んでいるように構成されている。
【0045】
(2)ガードリング配線16にメタルカバー140a及び140bが設けられていない。
【0046】
以下、従来技術のトランジスタ装置101との相違点を中心に説明する。
【0047】
この実施の形態のトランジスタ装置10においては、遮蔽用配線14aをゲート電極120aの周囲を囲むように、ゲート電極120aと一体的に形成し、かつ、遮蔽用配線14bをゲート電極120bの周囲を囲むように、ゲート電極120bと一体的に形成しているが、それぞれの遮蔽用配線14a及び14bのゲート電極120a及び120bとの接続部分を、ゲート電極120a及び120bのゲート長方向の幅を一致させて、ゲート電極120a及び120bのソース及びドレイン側の辺とは一体的に形成されないように構成してもよい。
【0048】
いずれの場合であっても、ゲート電極120aとゲート電極120bとが遮蔽用配線14aで接続されている。同様に、ゲート電極120aとゲート電極120bとが遮蔽用配線14bで接続されている。
【0049】
遮蔽用配線14a及び14bは、ゲート電極120a及び120bを形成する工程において、導電性膜を帯状層12としてパターニングすることによって、ゲート電極120a及び120bとともに同時に形成される。よって、遮蔽用配線14a及び14bは、ゲート電極120a及び120bと同様に、導電性材料すなわちポリシリコンが材料となっている。
【0050】
図3に示す切断端面図から明らかなように、この遮蔽用配線14a及び14bは、Pウエル領域103を覆うフィールド酸化膜118上に形成されている。
【0051】
さらに、遮蔽用配線14aには、フィールド酸化膜118上にトランジスタ100aのソース104aの側方に突出する端子部14cが設けられている(図1及び図2)。この端子部14cは、層間絶縁膜105上をPウエル領域103の外側に向かって延びるゲート配線18と、層間絶縁膜105を貫通して設けられたコンタクト20,20,・・・を介して、接続されている。
【0052】
これにより、ゲート電極120a及び120bと、遮蔽用配線14a及び14bとで、基板102の表面を平面的に見たときに、ドレイン108を一周に渡って切れ目無く連続的に矩形状に囲む帯状層12が形成されている。
【0053】
また、トランジスタ装置10においては、従来のトランジスタ装置101におけるガードリング配線138にメタルカバー140a,140bが設けられる構造に対して、ガードリング配線16に従来のようなメタルカバーが設けられていない(図1,図7及び図9(B)参照)。この理由については、作用の説明の項において詳述する。
【0054】
(作用)
次に、トランジスタ装置10、特に、帯状層12の作用について説明する。ドレイン108を囲む帯状層12には、端子部14cを介して、所望のゲート電圧が印加される。これにより、帯状層12を構成するゲート電極120a及び120bは、ゲート電圧の高低により、トランジスタ100a,100bのオン/オフを制御する。
【0055】
帯状層12の遮蔽用配線14a及び14bは、ゲート電極120a及び120bとは異なる働きをする。具体的には、遮蔽用配線14a及び14bは、導電性材料で形成されているので、遮蔽用配線14a及び14bの下側の領域への外部電界の影響を遮蔽する働きをする。
【0056】
つまり、例えば、トランジスタ装置10を遮蔽用配線14a及び14bを設けていない構造とすると、トランジスタ装置10の上方に設けられた配線が高電位(例えば、20V以上)に帯電した場合、この配線から生じる電界(外部電界)により、Pウエル領域103の表面近傍のP導電型がN導電型へと反転してしまうことがある。
【0057】
このように導電型が反転して反転層が形成されると、たとえ、トランジスタ100a,100bがオフ状態、すなわちゲート電極120a及び120bに電圧が印加されていない状態、であっても、反転層を介して、ソース−ドレイン間にリーク電流が流れてしまう。
【0058】
しかしながら、この実施の形態の構成によれば、Pウエル領域103の上方に設けられた遮蔽用配線14a及び14bの遮蔽効果により、外部電界が直接Pウエル領域103の表面に印加されることが防止される。したがって、遮蔽用配線14a及び14bの直下のPウエル領域103の導電型が反転して、ソース−ドレイン間に導通路が形成されることはない。よって、ソース−ドレイン間のリーク経路が遮断される。
【0059】
(効果)
次に、この実施の形態のトランジスタ装置10の効果について説明する。
【0060】
(1)この実施の形態のトランジスタ装置10においては、ガードリング配線16に、従来のようなメタルカバー140a,140bが設けられていない(図7及び図9(B)参照)。その結果、従来、メタルカバー140a,140b間の距離により規制されていたドレイン配線116の幅、すなわちゲート長方向の長さを大きくすることができる。その結果、ドレイン配線116のドレイン配線116を導通可能な最大電流量を大きくすることができ、耐サージ特性を向上することができる。
【0061】
(2)この実施の形態のトランジスタ装置10においては、遮蔽用配線14a及び14bと、ゲート電極120a及び120bとからなる帯状層12でドレイン108を囲んでいる。これにより、例えば、トランジスタ装置10の上方に設けられた高電位に帯電した配線層からの外部電界の影響で、ソース−ドレイン間に反転層からなるリーク経路が形成されることを防止することができる。
【0062】
(3)また、特許文献2に記載されている従来技術とは異なり、この実施の形態のトランジスタ装置10では、ドレイン108の4隅に電界が集中することがない。その結果、トランジスタ装置10の電圧耐性を、特許文献2の技術に比較して高くすることができる。
【0063】
(実施の形態2)
次に、この実施の形態のトランジスタ装置10の実施の形態2の構成について説明する。
【0064】
実施の形態1においては、帯状体12が、ドレイン108を囲むように設けられた場合について説明した。しかし、帯状体は、ソース104a及び104bのそれぞれを個別に囲むように設けてもよい。このようにすることによっても、ソース−ドレイン間のリーク電流を防止することができる。
【0065】
図4〜図6を参照して、実施の形態2の高耐圧MOSトランジスタ装置について説明する。図4は、高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。図5は図4に示した構成要素から、層間絶縁膜及び層間絶縁膜上の配線を除いた、高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。図6は、図4のA−A線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。なお、図4〜図6において、図7〜図9に示した従来技術と同様の構成要素には同符号を付し、説明の必要がある場合を除き、その説明を省略する。
【0066】
(構造)
まず、実施の形態2の高耐圧MOSトランジスタ装置30の構造について説明する。
【0067】
この実施の形態においては、帯状層32が、第1遮蔽用配線36a,36b及び第2遮蔽用配線40a,40bを含む。
【0068】
一方の第1遮蔽用配線36aは、ゲート電極120aと、ゲート電極120aと一体に形成された遮蔽用配線34a及び34bとを含む。この遮蔽用配線34a及び34bは、基板102の表面を平面的に見たとき、C字形にソース104a及びドレイン108の一方又は双方を囲んで形成できる。
【0069】
他方の第1遮蔽用配線36bは、ゲート電極120bと、ゲート電極120bと一体に形成された遮蔽用配線34c及び34dとを含む。この遮蔽用配線34c及び34dは、基板102の表面を平面的に見たとき、C字形にソース104b及びドレイン108の一方又は双方を囲んで形成できる。
【0070】
なお、図4及び図5に示す構成例では、第1遮蔽用配線36a及び36bは、それぞれソース104a及び104bを囲んで形成した例を示している。
【0071】
第2遮蔽用配線40a,40bは、それぞれ、ガードリング配線38と、メタルカバー140a及び140bと、ゲート配線126a及び126bとを含んでいる。
【0072】
ガードリング配線38は、基板102の表面を平面的に見たとき、Pウエル領域103を囲んで層間絶縁膜105上に形成されている。
【0073】
メタルカバー140a及び140bは、それぞれ、第1遮蔽用配線36a,36bとは異なる高さで、ガードリング配線38から延在させて層間絶縁膜105上に形成されていて、基板102の表面を平面的に見たとき、第1遮蔽用配線36a,36bと重複、すなわち、上側から重なり合うように設けられている。
【0074】
ゲート配線126a及び126bは、層間絶縁膜105上にゲート電圧供給源側へと延在して設けられている。これらゲート配線126a及び126bは、ゲート電極120a,120bに、電圧を供給する。
【0075】
以下、トランジスタ装置30につき、既に説明した実施の形態1のトランジスタ装置10との相違点を中心に説明する。
【0076】
図5に示すように、帯状層32を構成する一方の第1遮蔽用配線36aは、ゲート電極120aと、遮蔽用配線34a,34bとを備えている。第1遮蔽用配線36aは、平面形状がC字形であり、矩形状の一方のソース104aの一つの長辺と2つの短辺を囲むように形成されている。
【0077】
より詳細には、実施の形態1の場合と同様に、遮蔽用配線34aをゲート電極120aの周囲を囲むように、ゲート電極120aと一体に形成して、両者が接続されている。この遮蔽用配線34aは、ゲート電極120aのゲート幅方向の一端部120a1側のソース104aの一方の短辺に沿って延在している。
【0078】
図5に示すように、この遮蔽用配線34aには、コンタクト20a,20a,20aが設けられている。これらのコンタクト20a,20a,20aは、層間絶縁膜105上をPウエル領域103の外側に向かって延びるゲート配線126aと接続されている。その結果、ゲート電極120aには、ゲート配線126aから、コンタクト20a,20a,20aを介して、所望のゲート電圧が供給される。
【0079】
また、ゲート電極120aのゲート幅方向の他端部120a2側に、一方の遮蔽用配線34aの場合と同様にして、他方の遮蔽用配線34bが接続されている。遮蔽用配線34bは、ソース104aの他方の短辺に沿って延在している。
【0080】
遮蔽用配線34a及び34bは、実施の形態1で説明した遮蔽用配線の場合と同様に、ゲート電極120aを形成する工程において、ゲート電極120aとともに同時に形成される。よって、遮蔽用配線34a及び34bは、ゲート電極120aと同様に、導電性材料すなわちポリシリコンが材料となっている。
【0081】
同様に、帯状層32を構成する他方の第1遮蔽用配線36bは、ゲート電極120bと、遮蔽用配線34c,34dとを備えている。第1遮蔽用配線36bは、平面形状がC字形であり、矩形状の他方のソース104bの一つの長辺と2つの短辺を囲むように形成されている。
【0082】
第1遮蔽用配線36bは、第1遮蔽用配線36aとドレイン108を挟んで線対称的に配置されている。したがって、第1遮蔽用配線36bの構造の詳細については説明を省略する。
【0083】
図4に示すように、帯状層32を構成する一方の第2遮蔽用配線40aは、メタルカバー140aと、ガードリング配線38と、ゲート配線126aとを備えている。
【0084】
メタルカバー140aは、層間絶縁膜105上に設けられたガードリング配線38から、Pウエル領域103の上方をソース104aの内側に向かって延在している。図6を参照すると、メタルカバー140aと第1遮蔽用配線36aとは、層間絶縁膜105を介して互いに重複しあっている。つまり、基板102の表面側から見たときに、メタルカバー140aと一方の第1遮蔽用配線36a(遮蔽用配線34b)とは、オーバーラップしている。
【0085】
従来技術の項で説明したように、ガードリング配線38は、Pウエル領域103の内周に沿って設けられている。
【0086】
また、実施の形態1で説明したと同様に、ゲート配線126aは、コンタクト20a,20a,20aを介して、ゲート電極120aと一体に形成された一方の遮蔽用配線34aに接続されている。
【0087】
これらの構成要素により、一方の第2遮蔽用配線40aの平面形状は、開口が一方の第1遮蔽用配線36aと反対側を向いたC字形に形成されており、一方のソース104aを囲んで設けられている。
【0088】
帯状層32を構成する他方の第2遮蔽用配線40bは、他方のメタルカバー140bと、ガードリング配線38と、他方のゲート配線126bとを備えている。
【0089】
他方の第2遮蔽用配線40bは、一方の第2遮蔽用配線40aとドレイン108を挟んで線対称的に配置されている。したがって、他方の第2遮蔽用配線40bの構造の詳細については説明を省略する。
【0090】
(作用)
続いて、トランジスタ装置30、特に、帯状層32の作用について説明する。
【0091】
帯状層32のメタルカバー140a及び140bと、第1遮蔽用配線36a及び36bは、外部電界の影響を遮蔽する作用を果たす。
【0092】
つまり、例えば、トランジスタ装置30の上方に設けられた配線が高電位に帯電した場合、この配線から生じる電界(外部電界)により、Pウエル領域103の表面近傍の領域の導電型が、反対の導電型に反転してしまうことがある。
【0093】
このように導電型が反転した反転層が形成されると、たとえ、トランジスタ100a及び100bがオフ状態、すなわちゲート電極120a及び120bに電圧が印加されていない状態、であっても、反転層を介して、ソース−ドレイン間の導通路が形成されてしまうため、ソース−ドレイン間にリーク電流が流れてしまう。
【0094】
Pウエル領域103の上方に設けられたメタルカバー140a,140b及び第1遮蔽用配線36a,36bは、実施の形態1で既に説明したと同様な理由で外部電界が直接Pウエル領域103の表面に印加されることを防止する。そして、第1遮蔽用配線36a及び36bの直下のPウエル領域103の導電型が反転することを防止する。つまり、ソース−ドレイン間のリーク経路を遮断する。
【0095】
(効果)
次に、この実施の形態のトランジスタ装置30の効果について説明する。
【0096】
(1)この実施の形態のトランジスタ装置30では、ゲート配線126a,126bが、ゲート電極120a,120bではなく、ゲート電極120a,120bよりも広い間隔を有する遮蔽用配線34a,34cにそれぞれ接続されている。また、メタルカバー140a,140bも、ゲート電極120a,120bではなく、ゲート電極120a,120bよりも広い間隔を有する遮蔽用配線34b,34dにそれぞれ接続されている。
【0097】
その結果、従来、メタルカバー140a,140b間の距離により規制されていたドレイン配線116の幅(ゲート長方向の長さ)を大きくすることができる。結果として、ドレイン配線116の、ドレイン配線116を導通可能な最大電流量を大きくすることができ、耐サージ特性を向上することができる。
【0098】
(2)この実施の形態のトランジスタ装置30においては、第1遮蔽用配線36a,36b及び第2遮蔽用配線40a,40bとからなる帯状層32でドレイン108を囲んでいる。これにより、例えば、トランジスタ装置10の上方に設けられた高電位に帯電した配線層からの外部電界の影響で、ソース−ドレイン間に反転層からなるリーク経路が形成されることを防止することができる。
【0099】
(3)また、特許文献2に記載されている従来技術とは異なり、この実施の形態のトランジスタ装置10では、ドレイン108の4隅に電界が集中することがない。その結果、トランジスタ装置10の電圧耐性を、特許文献2の技術に比較して高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施の形態1の高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図2】層間絶縁膜、及び層間絶縁膜上の配線を除いた、実施の形態1の高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図3】は、図1のA−A線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。
【図4】実施の形態2の高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図5】層間絶縁膜、及び層間絶縁膜上の配線を除いた、実施の形態2の高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図6】図4のA−A線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。
【図7】従来技術の高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図8】層間絶縁膜、及び層間絶縁膜上の配線を除いた、従来技術の高耐圧MOSトランジスタ装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図9】(A)は、図7のA−A線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。また(B)は、図7のB−B線に沿った切断面を模式的に示す端面図である。
【符号の説明】
【0101】
10,30 高耐圧MOSトランジスタ装置
12,32 帯状層
14a,14b 遮蔽用配線
16,38 ガードリング配線
18 ゲート配線
20,20a,20b コンタクト
34a,34b,34c,34d 遮蔽用配線
36a,36b 第1遮蔽用配線
40a,40b 第2遮蔽用配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた一方の導電型のウエル領域中に形成された、20V以上のソース−ドレイン間耐圧を有する高耐圧MOSトランジスタ装置であって、
前記ウエル領域中のソース及びドレイン間の領域部分が、外部電界の影響を受けて導電型が他の導電型に反転するのを防止する導電性膜を備えており、
前記導電性膜は、ゲート電極と、該ゲート電極と連続的に形成された部分とを含み、全体的に帯状層として形成されており、及び
前記基板の表面を平面的に見たとき、該帯状層は、前記ソース及びドレインの一方又は双方を囲んで設けられている
ことを特徴とする高耐圧MOSトランジスタ装置。
【請求項2】
前記ゲート電極と連続的に形成された部分を、遮蔽用配線とすることを特徴とする請求項1に記載の高耐圧MOSトランジスタ装置。
【請求項3】
前記帯状層が、第1遮蔽用配線と第2遮蔽用配線とを備えており、
該第1遮蔽用配線は、前記ゲート電極と、該ゲート電極と一体に形成された遮蔽用配線とを含み、かつ、前記基板の表面を平面的に見たとき、C字形に前記ソース及びドレインの一方又は双方を囲んでおり、及び
前記第2遮蔽用配線は、前記基板の表面を平面的に見たとき、前記ウエル領域を囲むガードリング配線と、
前記第1遮蔽用配線とは異なる高さのメタルカバーであって、前記ガードリング配線から延びて、前記基板の表面を平面的に見たとき、前記第1遮蔽用配線と重複する当該メタルカバーと、
前記第1遮蔽用配線とは異なる高さであって、前記ゲート電極に電圧を供給するゲート配線とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の高耐圧MOSトランジスタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−130099(P2009−130099A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302966(P2007−302966)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(591089305)沖エンジニアリング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】