説明

高速測定用の測定装置

高さ測定装置(1)は、垂直に移動可能な測定スライド(4)が、手動でも、クラッチ装置(15)を介した駆動モータ(14)を使用しても移動させることができるように取り付けられる測定コラム(3)を有する。測定スライド(4)は、駆動モータ(14)とクラッチ装置(15)とによって発生される一定の測定力を加工品の測定点に与える測定ヘッド(8)を有する。測定システム(19)は、測定ヘッド(8)の高さ座標を記録し、さらなる処理および評価のために、この高さ座標を制御装置(21)に送信する。制御装置(21)は、測定順序を自動化するための決定論理(33)を有する。上記決定論理は、ユーザが手動で行う特定の方向への測定ヘッド(8)の位置決めを自動的に検出し、次に、加工品を走査するために駆動モータ(14)を適切に駆動し、そして測定システム(19)からの信号を用いて、それぞれの測定に関連する一つまたは複数の測定値を決定する。オペレータが、所望の測定機能を独立して開始するために面でまたは孔でまたは軸で一方向にまたは逆方向に測定しようとすることを完全に自動的に検出するように、制御装置(21)を設定し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作しやすい1次元距離測定装置、特に高さ測定装置、および多次元座標測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような測定装置は、対象物の寸法、3次元形状等を測定するために使用される。このようにして、例えば機械的構成要素の製造時、種々の製造ステップ間に加工品の製造精度を検査することが必要となる。したがって、特定の例において、全面部の多数の単一測定またはさらに点毎の測定を行わなければならない。特に、加工品の全群を検査しなければならないときに、測定の時間および複雑さが増大することがある。
【0003】
特許文献1から、測定コラムを有するデジタル高さ測定装置が知られており、この測定コラムには、検査試料を走査するための走査素子を有する測定ヘッドを支持する測定スライドが高さを調節可能なように支持される。測定ヘッドの垂直位置決めのために、摩擦クラッチを介して一定の摩擦モーメントでプーリローラを駆動する電動モータが測定コラムのベースに配置され、この場合、測定スライドに接続される駆動ベルトは前記プーリローラの上方に設けられる。必要な場合に測定スライドを手でも位置決めできるようにするために、ハンドルが測定スライドに取り付けられる。
【0004】
動作中、測定コラムが安定測定板に配置され、この安定測定板に、オペレータが、それぞれ実行すべきである測定機能のために適切に測定される検査試料を位置決めする。例えば、上面を測定すべきである場合、検査試料は測定ヘッドの下方に配置される。その後、オペレータは、上記測定機能を開始するために、例えば「上方から表面を走査する」というコンピュータの関連する測定機能キーを作動させる。モータは、測定すべき点に対して測定スライドを駆動し、摩擦クラッチを介して一定の測定力を走査素子に与える。基準として用いられる測定板の表面に対して、測定点の高さ座標が測定されて表示される。
【0005】
高さ測定装置は実用化に有用であることが証明されている。上記高さ測定装置により、オペレータが、例えば、上方からのまたは下方からの表面、孔または軸の測定等の種々の測定機能を比較的簡単に実行することが可能になる。測定機能は、簡単なキーストロークによってまたはコンピュータの選択メニューによって選択される。しかし、このために、オペレータは一時的に加工品から目を離さなければならず、これにより作業の流れが妨げられる。
【0006】
他の種類の高さ測定装置では、走査素子は、機械的回転ホイールによってあるいは他の機械的または電子的制御機構によって測定すべき表面に接触するまでその表面に移動される。走査が接触センサにより検出され、その後、測定値が取られて表示される。接触信号センサと、関連する処理論理とを有する高さ測定装置に関する例を特許文献2から理解できる。
【0007】
接触信号センサによって測定の実行が容易になるが、高さ測定装置の複雑さが増大される。さらに、十分な経験なしには、制御機関(control organ)による走査ヘッドの微細位置決めが困難であり、そして例えばハンドクランクまたは回転ホイール等の機械的制御要素でこの位置決めを行わなければならない場合に、その位置決めが複雑になると認識される。このために、特許文献2では、回転ホイールに加えて、例えば、追加の回転ボタンが設けられ、この場合、前記回転ボタンは、走査素子の著しく減速された被駆動移動を容易にする。上記微細位置決めにより、測定時間が実質的に延びる。さらに、上記種類の高さ測定装置では、例えば軸または孔の測定等、いくつかの測定機能を実行できないかあるいは簡単には実行できない。
【0008】
特許文献3は、ハンドクランクによって垂直方向に手動で位置決めできる、走査ヘッドを支持するスライドと、走査ヘッドによって加工品に与えられた圧力を検出しかつ走査ヘッドの位置を検出する測定および表示システムとを有する同様の高さ測定装置を記載している。測定中、オペレータは、走査ヘッドを加工品に接触させるために、かつ制御された圧力を前記加工品に与えるためにハンドクランクを使用する。圧力の強度、方向および時間は測定システムによって検出されて、表示装置に表示される。圧力が所定の最小強度と非常に短い時間とを含んだ場合、走査ヘッドの位置を知らせる測定値が取られて表示装置に表示される。より長い時間にわたって圧力が維持された場合、測定システムは、軸または孔を測定するための動作モードに自動的に切り換わる。次に、オペレータは、クランクによって圧力の強度を制御でき、そして例えば上部反転点または下部反転点を決定するために軸または孔の一部を走査できる。動作モードを切り換えるために、位置センサあるいは圧力センサまたは力センサが使用される。
【0009】
さらに、実用的化から、測定ヘッドを空間内において2方向または3方向に並進移動させることができるか、あるいはこの測定ヘッドが一本または複数の軸を中心にさらに旋回可能であり得る座標測定装置が知られており、例えば、別の参考文献の特許文献4を参照されたい。測定を行うために、主として、装置を高価にしかつオペレータ側が利用に対してかなりの知識と経験を必要とするCNC制御システムが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE10215188B4号明細書
【特許文献2】DE3541043A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0103548A1号明細書
【特許文献4】DE19641720C2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この背景に基づいて、本発明の目的は、所望の測定機能に従った測定の実行を容易にする1次元座標測定装置または多次元座標測定装置を提供することである。所望の測定機能は、特に、迅速に、簡単にかつ高精度に実行可能であるべきである。このことは、簡単な手段によって達成されることが好ましい。
【0012】
本発明の他の目的は、オペレータが、測定を行っている間に、位置決めから測定値の決定を通して、加工品から全体的に注意をそらすことを可能にする処理論理および制御論理を有する座標測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の特徴構成を有する座標測定装置によって達成される。
【0014】
本発明によれば、オペレータにより選択可能な複数の測定機能の一つに従って、加工品の少なくとも1次元の座標測定を行うための測定装置が設けられ、この場合、前記測定装置は、走査ヘッドが長手方向に移動可能に支持されるベースを備える。オペレータは、走査ヘッドをそれぞれ所望の測定位置に位置決めできる。本発明による測定装置の測定システムは、走査ヘッドの移動を検出して、前記移動を特徴付ける測定信号を出力する。測定装置は、測定システムによって供給された測定信号を受信するように、そして走査ヘッド8の移動速度および移動方向を含む前記走査ヘッドの移動を特徴付ける移動測定値を決定するために、および測定ヘッドの位置または測定点の高さを特徴付ける測定値を提供するために所定の規則に従って前記信号を処理して評価するように構成される処理装置を備える。
【0015】
さらに、本発明によれば、論理規則は、圧力センサ、力センサまたは接触センサ等の追加の検出手段なしに、測定システムによって供給された測定信号から導出された移動測定値および位置測定値のみに基づいて、オペレータが行った位置決めを自動的に検出するように、そしてオペレータの追加の相互作用なしに、特に、キー等の作動なしに、前記移動測定値および前記位置測定値に基づいて、オペレータが所望する特定の測定機能を自動的に検出して開始するように構成される決定論理を含む。このために、決定論理は、測定機能の開始と測定方向とを検出するために、測定信号に基づいて、オペレータが行った走査ヘッドの移動を分析する。言い換えれば、オペレータが行ったある方向への位置決めは、ある測定を前記方向に行おうとするオペレータの意図として解釈される。
【0016】
最も簡単な例では、測定機能は、走査ヘッドの可能な移動方向への面の走査を含む。高さ測定装置では、決定論理は、例えば、測定機能「上方からの走査」と測定機能「下方からの走査」とを区別するために、走査ヘッドの下方移動を認識する。さらに可能な測定機能は、走査ヘッドの移動方向に沿った一方向へのまたは逆方向への孔のまたは軸の走査であることができる。
【0017】
本明細書に用いられる「測定機能を開始」という意味は、現在の安定した測定値を固定または捕捉し、それに続いて、前記測定値を記憶し、処理しおよび/または表示することを少なくとも含む。測定機能の開始は、引き続く工程、すなわち、走査ヘッド用のモータ駆動部が設けられた場合に、加工品のモータ駆動による走査を開始する工程、一定の測定力を走査ヘッドに与える工程、複数の連続測定値を取る工程、それらの測定値を記憶する工程、一つまたは複数の測定値を処理する工程および/または表示する工程の少なくとも一つの開始をさらに含むことが好ましい。
【0018】
本発明により、測定の迅速かつ簡単な実行が容易になる。オペレータは、好ましくは手で迅速かつ正確に走査ヘッドを所望の測定位置に位置決めできる。操作が困難な微細位置決め手段が不要である。オペレータは、測定機能を開始するためにキーまたは他の制御要素を作動させる必要がない。上記測定機能は、本発明による処理装置によって実行される。有利には、オペレータは、加工品から専ら注意をそらすことができ、単に位置決めを行えばよく、その一方で、処理装置は、関連するデータを自動的に収集し、処理し、記憶しおよび/または表示する。処理速度を著しく増大させることができ、かつ測定時間を著しく低減できる。このことは、特に、表面の複数の点または複数の加工品を検査しなければならない場合に当てはまる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、単に、測定システムによって供給される測定信号に基づいて、かつそれから導出された、走査ヘッドの移動または位置を特徴付ける変数に基づいて、測定機能の自動検出および開始が行われる。例えば、簡単な算術演算によって走査ヘッドの位置測定信号から移動方向、移動速度、移動距離および/または移動時間を決定するように、そして測定機能を検出するために所定の基準を前記変数に適用するように、処理装置を構成できる。接触センサ等のような別個の検出手段が不要である。
【0020】
特に簡単かつ有効な基準を用いる本発明の有利な実施形態では、決定論理は、検出および導出された変数を特定のパラメータ値と比較するための比較論理を含む。前記パラメータ値の中には、チェックすべき変数の最小閾値または最大閾値が存在する。このようにして、例えば、走査ヘッドが、最小移動速度による最小時間間隔の間に同方向に移動された場合に、オペレータが面をある方向に接触させようとする要求を自動的に検出できる。走査ヘッドが停止された場合、このことは、位置決めが終了したと解釈される。
【0021】
さらに、ある方向への孔のまたは軸の走査を検出するように、決定論理を構成できる。このことは、特に好ましい実施形態では、走査ヘッドを移動させるためのモータを有する駆動装置、または測定力発生装置がさらに設けられる場合に当てはまる。行われた走査ヘッド位置決めを検出した後、決定論理は、走査ヘッドを加工品に接触させるように、かつ一定の測定力をこの走査ヘッドに与えるように駆動装置または測定力発生装置に自動的に指示を出すことができる。それに続いて、決定論理は一連の測定信号を分析し続ける。信号値が安定した場合、面が走査されていることを決定する。また一方、移動速度が、一定の移動方向で常に連続して減少した場合、決定論理は、移動制御部の方向および走査ヘッドの移動方向から、孔のまたは軸の走査が行われているかどうかを導き出すことができる。それに続いて、決定論理は、それぞれの測定機能に関連するピーク値メモリを作動させ、そして走査ヘッドの現在位置がピーク値メモリの値から最小にずれ、その間に、ほぼゼロの移動速度が検出されると、例えば孔または軸の最大値測定または最小値測定を自動的に終了する。最小値または最大値を出力できる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、決定論理をパラメータ化できる。オペレータは、比較論理に必要なパラメータ値を指定できる。このようにして、必要な場合に、それぞれの動作条件、特に、ある測定の種類およびそれぞれの加工品への適合が可能である。有利な実施形態では、簡単にするために、予め規定されて最適化された複数のパラメータセットがオペレータに提供され、オペレータは自分の要求に従って前記パラメータセットの中から選択できる。オペレータが自分で任意に特定のパラメータ値を定義することもできる。
【0023】
好ましい改良では、処理装置は、既に実行された一つまたは複数の測定機能に応じてパラメータ値を自動的に適応させるように構成される。特定の測定対象物の間の距離が大きかった場合、誤認の危険性を低減するために、パラメータ「最小移動速度」および「移動速度の最小時間間隔」を自動的に増大させることができる。距離がより小さかった場合、上記パラメータが自動的に減少される。予め測定された孔の直径または軸の直径に基づいて、「最大移動速度の変更」等の追加のパラメータを自動的に適応させることができる。このように形成された自己学習適応処理装置は、測定機能のコマンドまたは意図の高精度の自動検出を容易にし、測定速度をさらに向上させることができる。
【0024】
さらに、本発明の好ましい実施形態では、決定論理は、測定装置の弾性による走査ヘッドの移動方向の短い反転を検出するための論理を含む。その上、決定論理は、走査ヘッドの移動方向の非常に急速な変化から、これらが、加工品への走査ヘッドの衝突によって発生される反発力であることを検出できる。このような事象は無視される。移動方向反転の最大時間および最大距離をパラメータとして予め規定でき、適応させることができる。
【0025】
なおさらに、決定論理は、進行中に測定機能の検出を解消するための論理と、開始された測定機能を終了するための論理とを含む。このために、オペレータは、キーを押す必要がなく、最小距離にわたってかつ最小移動速度で走査ヘッドの移動方向を変更するだけでよい。このことは決定論理によって解消または終了として検出される。
【0026】
本発明による測定装置は、好ましくは、例えば垂直測定コラムを有する高さ測定装置として構成され、垂直測定コラムには、測定スライドが高さを調節可能なように支持されかつ案内され、そして垂直測定コラムは走査素子が取り付けられた走査ヘッドを支持している。改良において、本発明による測定装置は、限定された2次元測定空間または3次元測定空間で測定を実行するために使用される座標測定装置をさらに備えることができる。このことは、特に、互いに垂直な二本または三本の軸に沿って走査ヘッドをオペレータの手で移動させることができる場合に当てはまる。さらに、走査ヘッドを支持でき、このようにして、それが一本または複数の軸を中心に旋回可能である。
【0027】
走査ヘッドは、測定中に加工品に接触する適切な形状、例えば球形状を有する走査点を有する触覚走査素子を備えることが好ましい。いくつかの測定および加工品について、例えば、単に面が接触する場合、接触なしに走査する走査素子、特に、光学走査素子または磁気走査素子または容量走査素子を設けることができる。
【0028】
走査ヘッドを駆動するために、駆動手段を走査ヘッドに動作可能に接続できる。この駆動手段は手動クランクまたは回転ホイールであることができる。また一方、好ましい実施形態では、モータ駆動部、特に電動モータが設けられる。
【0029】
駆動装置と測定ヘッドとの間の駆動系には、特定のトルクに達するまで駆動装置と測定ヘッドとの間で摩擦接続を行うために使用されるクラッチ装置が挿入されることが好ましい。このようにして、加工品が駆動走査されたときに、規定された測定力を走査素子に与えることができる。一定のおよび細かく調整可能な摩擦モーメントを含む摩擦クラッチが適切であり得る。また一方、他のもの、例えば磁気クラッチを使用することもできる。モータは、クラッチと共に、規定された一定の測定力を実現するように構成される測定力発生手段を形成する。測定スライドにまたは測定ヘッドに取り付けられたばね要素によって、ピストンシリンダユニットによってあるいは他の適切な予圧手段によって、測定力発生手段を構成することもできる。
【0030】
本発明による処理装置は、好ましくは、測定工程を制御および監視するための制御装置の一部であり、この制御装置は、例えば、測定装置に直接取り付けられるか、あるいは高さ測定装置の測定コラムに取り付けられるか、あるいはさらに有線通信リンクまたは無線通信リンクを介して遠隔に配置されて接続されるコンピュータの形態で構成されることができる。制御装置は、オペレータがコマンドまたはパラメータを入力することを可能にする入力手段、例えばキーフィールドを備える。さらに、自動測定機能コマンドの検出なしに、オペレータによる従来の取り扱いも可能にするために、オペレータが、必要な場合に、本発明による決定論理を作動状態または非作動状態にすることを可能にするキーまたは他の作動手段が設けられることが好ましい。その上、引き続く測定が面または孔または軸に関連することをオペレータが予め選択できるキーまたは他の作動手段が設けられることも好ましい。例えば、予め選択した後に、測定の間にキーを押す必要なしに、一つまたは複数の加工品の多数の孔を順次チェックできる。
【0031】
さらに、制御装置は、決定された測定値、例えば、現在実行されている測定機能の識別子を含む情報を出力するための出力手段を備える。出力は、決定論理によってそれぞれ検出された測定機能に従って適合されることが好ましい。入力されたパラメータまたは加工品の名称等のような追加のデータを出力できる。さらに、出力手段は、特に決定論理のいくつかの動作状態をオペレータに知らせる光学手段、音響手段または他の信号出力手段を備えることが好ましい。このような信号出力手段は、オペレータの視野内に、例えば測定スライドに配置されることが好ましい。
【0032】
オペレータが行った位置決めの結果としてオペレータの測定機能のコマンドまたは意図を自動的に検出するための本発明による方法および処理装置は、測定の快適さと測定の実行速度とを向上させ、動作エラーを実質的に低減する。オペレータは加工品からまたは他の試料から目を離す必要がない。ユニットの製造コストを増大させることなく、決定論理を有利に実行できる。決定論理は、測定装置を制御するために設けられたファームウェアまたはソフトウェアに含まれることが好ましい。さらに、このようにして、既存の高さ測定装置または座標測定装置を問題なく迅速に改良できる。また一方、ハードウェアとしての実現も可能である。
【0033】
本発明の有利な実施形態の他の詳細は図面、説明または従属請求項に開示される。
【0034】
図面は本発明の実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】高さ測定装置の簡略斜視図である。
【図2】整形部が取り外された図1による高さ測定装置の部分断面図である。
【図3】図1と図2による高さ測定装置の制御装置を示した簡略ブロック図である。
【図4】自動測定機能コマンドを検出するための本発明による論理の実施形態を示したフローチャートである。
【図5】軸または孔の走査時に自動コマンドを検出するための本発明による論理のフローチャートである。
【図6】本発明による複数の座標測定および検査ユニットの実施形態の非常に概略的な原理の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、この図には詳細に示されていない安定測定板に配置されるベースを備える高さ測定装置1の形態の本発明による測定装置を示している。測定装置1を水平方向(x−y面)に手動で移動させて位置決めすることができるようにするために、ベース2は、摺動軸受、ローラ軸受または空気軸受によって測定板に支持されることが好ましい。ベース2から、測定コラム3は垂直方向に上方に突出し、この垂直方向に測定スライド4が支持されて案内される。測定スライド4は、測定試料支持用の測定スライドのそれぞれの端部に二つのレシーバ6a、6bを備える。本例では、支持部7の一方の端部が下部レシーバ6bに取り付けられ、支持部7の他方の下方突出端部で測定ヘッドまたは測定インサート8を支持し、この場合、前記測定インサート8は本明細書において走査針の形態で構成される。したがって、レシーバ6a、6bのいずれに、そしてどの位置に、すなわち、この手段が上方または下方に突出するいずれの位置に、支持部7が取り付けられるかに応じて、4つの異なる測定領域を含むことができる。測定ヘッド8は、試料が走査される実際の走査素子を形成する球状の走査先端9を備える。走査先端9は、円筒形状、円錐形状、またはそれぞれの測定に適切な他の形状を取ることもできる。
【0037】
測定スライド4は、測定コラム3に支持され、このようにして垂直に位置決めされることができる。このために、駆動バンド11a、11bが設けられ、この駆動バンドは、特に図2から明らかなように、測定スライド4から垂直上方にプーリローラ12に延び、そこから垂直下方に、ベース2に設けられた駆動ローラ13に延び、そして駆動バンド11bとして前記駆動ローラの周囲に沿って測定スライド4の方に延びて戻る。さらに、図2の部分断面図に示したベースには、クラッチ装置15によって駆動ローラ13に動作可能に接続される電動モータ14の形態の駆動手段が設けられる。クラッチ装置15は、好ましくは、一定のおよび細かく調整可能な摩擦モーメントを有する摺動クラッチであり、この摺動クラッチは、試料の走査時に、規定された一定の測定力を接触子に与えることを実現する。摺動クラッチの代わりに、他の適切なクラッチ、例えば磁気クラッチを使用することもできる。
【0038】
測定スライドを案内するために、ガイド片16は、図2で取り外される整形部の下方に設けられ、この場合、測定スライド4は前記ガイド片に沿って動作する。前記測定スライドは整形部内に実質的に配置されるので、レシーバ6aと6bを備える細長いレシーバ本体17のみが、整形部に設けられた垂直溝を介して外側に突出する。レシーバ本体17にハンドル18が配置され、この場合、前記ハンドルにより、測定スライド4の高さを手で調整することが容易になる。
【0039】
z方向の走査素子9の高さ位置を検出するための適切な測定システム19が設けられる。図3に単に記号で示したような測定システム19は、好ましくは、測定スライド4の位置を検出し、かつその位置を特徴付けるアナログ測定信号またはデジタル測定信号を連続的に供給する距離測定システムである。高分解能の増分反射光測定システム19が使用されることが好ましい。また一方、光学的に、容量的にまたは誘導的に動作できる他の最新技術の測定システムも適切である。困難な環境条件については、汚れに対して比較的耐性がある磁気測定システムが有利である。さらに、ローラ12、13の一方の、またはモータ14の駆動軸の回転位置を検出することによって、走査ヘッド8の位置を間接的に決定することができる。
【0040】
検出された測定信号を受信して処理するために、かつ測定工程を制御および監視するために、測定ヘッド8とは反対側の測定コラム3の側面に制御装置が設けられ、この場合、前記制御装置はコンピュータ21として構成される。前記制御装置は、情報、特に測定値を表示するための表示装置22として構成された出力手段と、オペレータがコマンドまたはデータをコンピュータ21に手動で入力できる単一のキーとして構成された入力手段23とを備える。図3には、制御手段21が詳細に示されている。したがって、制御手段21の特定の機能ブロックが示されている。回路基板のハードウェアにおいておよび/またはソフトウェアまたはファームウェアにおいて、例えばマイクロプロセッサで実行できるプログラムの一部として、特定の機能ブロックを実現できる。さらに、特定の機能ユニットが、本図に詳細に示されている他の機能ブロックの部分であり得ることが理解される。したがって、制御手段21の論理規則または論理について引き続き説明する場合に、本発明の範囲はそれらの実施形態のいずれにも限定されない。
【0041】
図3に示したように、本発明による制御手段21は、測定工程と、測定信号の処理と、コマンド、データおよびパラメータの処理と、他の機能ユニットの機能とを制御する制御論理24を備える。制御論理24は、入力インターフェース26を介して測定システム19により出力された測定信号25を受信するために、適切な通信リンク25を介して測定システム19に接続される。さらに、制御論理24は、入力手段23に、表示装置または他の出力手段22に、そしてメモリ装置27にデータリンクされ、このプログラムにおいて、パラメータ、測定値または他のデータを記憶できる。その上、制御装置21は、制御論理24をリモートコンピュータ等に接続できる出力インターフェース28を備える。さらに、制御リンク29を介して、制御論理24は電動モータ14を制御する。制御論理24には、タイマ30によってタイミング信号が周期的に供給される。例えばエネルギー供給部等のおそらく必要とされる追加の装置または手段は、明確にするために図3では省略されている。
【0042】
さらに図3から明らかなように、制御装置21は処理装置または論理31を備え、この処理装置または論理は、測定システム19によって供給された測定信号を受信するように構成され、そして前記測定信号を処理して評価するために、またその測定信号から、走査ヘッドの位置を特徴付ける測定値を決定するために、論理規則32を含む。処理論理32を用いて、測定システム19によって供給されたアナログ信号をデジタル信号に変換するか、あるいはデジタル信号を、処理に適切なフォーマットに変換し、デジタル信号をフィルタリングし、デジタル信号を監視し、安定基準を測定値に適用し、測定点の間の距離、あるいは最大点、最小点または中央点、あるいは軸または孔の直径を決定し、そして決定された測定値または測定データを受信するかあるいはそれらを他のユニットに中継することができる。
【0043】
上記高さ測定装置1は、以下に説明するように通常動作モードで機能する。
【0044】
例えば、オペレータが、加工品の面の上方から走査測定機能を実行しようとすることが想定されている。このために、オペレータは測定板の加工品を位置決めし、この結果、走査素子9は、測定すべき点の上方の所望の位置にある。それに続いて、オペレータは、走査ヘッドを位置決めするために測定スライド4を垂直下方に移動させる。
【0045】
その後、オペレータは、面が上方から接触したことを制御装置21に知らせるために、キーパッド23の関連する一つまたは複数の測定機能キーを作動させる。それに続いて、走査ヘッド8を測定面に接触させるためにまたは走査ヘッド8を測定面に接触させ続けるために、そして一定の測定力を走査素子9に与えるために、制御装置21がモータ14を制御する。測定システム19によって供給された測定信号25は、測定点の高さ座標を示す安定した測定値を決定するために処理論理32によって適切に処理され、この場合、前記測定値は表示装置22に表示され、例えば記憶装置27に記憶される。測定値が取られた後、測定スライド4を再び垂直上方に移動させることができ、加工品を他の位置に移動させることができ、そして他の測定工程を行うことができる。
【0046】
オペレータが、例えば、孔の最下点(最小点)を決定しようとした場合、オペレータは、測定すべき、したがって、最小点に対して横方向にオフセットすべき孔切取り部の上方に偏心して走査素子8を位置決めし、そして前記測定機能を開始するために、関連する入力手段を作動させる。測定機能が実行された場合、走査素子9は一つまたは複数の最小回数にわたって動作しなければならない。このために、オペレータは加工品または高さ測定装置を水平方向に移動させる。処理論理31は、関連する測定値を決定してそれから最小点の高さ座標を決定する。さらに同様に、加工品を基準にして走査素子9を位置決めすることによって、かつ関連する入力手段23を作動させることによって、例えば、上部孔切取り部の測定、上方からのまたは下方からの軸の走査、軸または孔の直径および中心の決定、二つの表面の間の距離の計算等のような他の測定機能をそれぞれ開始して実行することができる。
【0047】
さらに、本発明による制御装置21は、より自動化されたおよびより高速の測定の実行を容易にする継続動作モードを含む。このために、処理装置31の論理規則は、オペレータが行った位置決めを自動的に検出するように、オペレータがそれぞれ意図した測定機能を自動的に検出するように、およびそれらを開始するように構成される決定論理33を含む。この検出は、このために追加のセンサ等を必要とすることなく、測定システム19によって供給された測定信号25のみに基づいて行われる。
【0048】
処理装置31の処理論理32は、特に、測定システム19によって供給された測定信号25から、関連する追加の変数を決定するように構成される論理規則を含む。これらの中において、変数は、少なくとも、測定スライド4の移動速度、移動方向、移動時間および/または移動加速度である。これらの変数は、オペレータの意図を自動的に検出して、ある測定機能を開始するために、決定論理33によって分析される。決定論理33は、好ましい実施形態において比較論理34を備え、この比較論理は、処理論理32によって決定された変数を所定のパラメータ値と比較し、そして決定された変数に適用される所定の基準規則36を含む。次に、ある方向への面または孔または軸の走査を開始するためのオペレータのコマンドまたは意図の自動検出工程を示している図4と図5に示したフローチャートを参照して、決定論理33の詳細について説明する。
【0049】
図4は、面の走査時の測定工程を示している。ブロック37において、オペレータが、加工品をベース板の適切な測定位置に配置して、測定スライド4を測定面に向かって移動させる測定工程が開始される。ブロック38において、比較論理34は、処理論理32によって決定された移動速度vを、最小移動速度を特徴付ける第1のパラメータVminと比較する。最小移動速度Vminを超えなかった場合、ブロック39において、経過タイマTがゼロになり、移動速度が連続的に監視される。最小移動速度Vminを超えた場合、ブロック41において、経過タイマTが閾値Tmaxと比較される。Tmaxに達しなかった場合、ブロック42において、経過タイマTが増分され、処理がブロック38に戻る。さもなければ、T=Tmaxであった場合、したがって、測定スライド4が最小移動距離の間に最小移動速度で移動した場合、測定スライド4の位置決めが検出される。引き続き、ブロック43において、接触方向が測定値から決定され、例えば、上方方向または下方方向が決定され、追加の経過タイマTとTが初期化されてゼロになる。
【0050】
それに続いて、決定論理33は、位置決め工程が終了したか、したがって測定スライドが停止されたかどうかを決定する。このようにして、ブロック44において、移動速度vが、停止速度を特徴付けるパラメータVmaxと比較され、v<Vmaxが当てはまった場合、ブロック46において、スライド4の停止の最小時間に達したか(T≧T2,maxであるか?)どうかがチェックされる。このことが当てはまらなかった場合、ブロック47において、経過タイマTが増分され、停止速度が監視され続ける。閾値がT2,maxに達した場合、ブロック48において、測定機能が制御装置21により開始され、走査素子9が電動モータ14によって測定面に接触し、そして現在の測定値を決定するために、一定の測定力がこの走査素子に与えられる。測定値が十分に安定すると、したがって、この測定値が今後実質的に変化しないことがブロック49によって決定されたとき、ブロック51において、測定値が取られて記憶され、測定機能に適合される表示装置22に表示される。次に、ルーチンは、測定スライド4の次の位置決めの検出を継続するために開始ブロック37に戻る。
【0051】
オペレータは、それぞれの測定点で測定スライド4を手動で位置決めすることによって、次の複数の点で面を測定でき、この場合、本発明による決定論理は、関連する測定機能を自動的に検出して実行する。オペレータは試料から目を離す必要がないので、オペレータの作業の流れは中断されない。自動検出により、測定の快適さと測定の実行速度とが向上され、オペレータのエラーが低減される。
【0052】
オペレータは、このためにコンピュータ21のキーを作動させる必要なしに、コマンドの検出、したがって、測定機能を開始する前の位置決めの検出を任意のときに解消できる。このために、オペレータは、十分な距離にわたって接触方向とは逆方向に測定スライド4を手動で移動させ、このことは、ブロック52と53の形態の決定論理33によりコマンドの解消として決定される。詳細には、ブロック52において、決定論理33は、逆方向の速度の絶対値が最小速度Vminよりも大きいかどうか、したがって、v<−Vminであるかどうかを決定する。このことが当てはまらなかった場合、ルーチンは、停止速度を監視するためにブロック44に戻る。さもなければ、走査とは逆方向の移動距離sが、測定スライド4の移動方向の非常に短い反転またはより長い反転であるかどうかを決定するために、この移動距離が閾値Smaxと比較される(ブロック53)。短い方向反転は、摩擦クラッチのおよび高さ測定装置1の機構の、あるヒステリシスを含む弾性によって可能であり、また一方、コマンド認識の解消をもたらさない。しかし、より長い方向反転が検出された場合、すなわち、s>Smaxであった場合、図4に示したように、コマンド認識が解消され、ルーチンが開始ステップ37に戻る。
【0053】
測定機能が既に開始されていた場合、キーを押すことなく、測定スライド4の移動方向を手で反転させることにより、このようにしてまたは同様にこの測定機能を終了できる。原則として、測定機能の認識を解消する場合のように、同一の論理を使用できる。図4に示した修正された基準では、最小時間間隔(ブロック56においてT>TH,max)の間の走査方向とは逆方向の最小移動速度(ブロック54においてv<−Vmin)は、測定を終了するために必要である。ブロック55において、ヒステリシス時間カウンタが周期的に増分される。両方の状態54と56が実現された場合、ブロック57において、開始された測定機能が終了する。
【0054】
さらに、本発明による決定論理は、軸のまたは孔の走査の場合に自動コマンド認識を容易にする。これに関するフローチャートが図5に示されている。モータ制御部が始動されるまで、面の走査を検出するように初期移動分析が行われる(ブロック48)。また一方、測定シリーズは、以下の基準に従ってさらに分析される。移動方向が非常に速く変化した場合、加工品への走査素子9の衝突によって発生されている反発力が生じる(ブロック58)。これらの反発力は無視される。移動速度が一定の移動方向で連続的に減少したときに、孔または軸が走査されている(ブロック59)。モータ制御部から、そして測定スライド4の移動方向から、どの種類の走査が行われているかを導き出すことができる(ブロック60)。モータ制御部が下方に動作し、測定スライドの移動方向がモータ制御部の移動方向と一致したときに、孔が測定されている。測定スライド4の移動方向がモータ制御部の移動方向とは逆であるときに、軸が測定されている。モータ制御部の方向が上方であるときに、基準が反転される。この場合、走査ヘッドの移動方向がモータ制御部の移動方向に一致したときに、軸の測定が所望される。
【0055】
オペレータが、ある方向への、上方または下方への孔の測定または軸の測定を行っていることを決定論理33が決定した場合、測定値を取るために、メモリ装置27のそれぞれのピーク値メモリが作動される(ブロック61)。測定スライド4の現在位置が閾値メモリの位置から最小にずれ、その間に、移動速度がほぼゼロであると決定された場合、測定が終了する。この場合、ピーク値メモリに記憶された測定値は孔または軸の最大点または最小点を特徴付ける。スライドの実際の位置がピーク値メモリの位置から大きくずれた場合、現在の測定は、移動速度の値に関係なく中断される。
【0056】
本発明によれば、比較論理34によって用いられる閾値および限界値は、現在の測定状態に応じて適切に指定される調整可能なパラメータであることが好ましい。例えば、オペレータが、自分の要求に従って、予め規定された複数のパラメータセットの中から選択できることが明らかであり得る。好ましい実施形態では、以下のパラメータ値は、本発明による決定論理33のために経験的に決定された。二つの測定値の決定の間の時間間隔は約10〜50msであるべきである。次に、2msのクロック速度で、非常に遅い移動をさらに検出できる。偶発的な反発力を測定しないようにするために、最小移動速度Vminは約5mm/sであることができる。摩擦クラッチの、および高さ測定装置の他の構成要素のヒステリシスを抑制するために、Smax=2mmの最大移動距離において、移動方向の短い反転が取られる。測定機能の検出が解消される移動方向のより長い反転は、少なくともSmax=50mmの移動距離から検出される。測定機能を解消するための最小移動速度Vminは50mm/sである。移動方向の変化が280ms未満継続した場合に、反発力が検出される。孔または軸の走査を決定するために、最大移動速度が約5mm/sであり、最大速度の変化が約1mm/sである。動作環境に応じて、パラメータは、本明細書に記載した典型的な値と大きく異なってもよい。
【0057】
予め規定されて最適化されたパラメータセットに加えて、オペレータがさらに自分で任意に入力手段23を介して特定のパラメータを入力できることを意図することができる。さらに、本発明の改良において、制御装置21が、既に実行された測定機能に応じて、パラメータ値を自動的に適応させることを意図することができる。測定計画の間の距離が例えば大きかった場合、誤認の危険性をさらに低減するために、移動方向の短い反転に対してまた移動方向のより長い反転に対してVminとSmaxを自動的に増大させることができる。さらに、予め測定された孔の直径および軸の直径に応じて、反発力または連続的な移動速度の減少を決定するために用いられるパラメータを自動的に適応させることができる。このようにして、測定の実行速度をなおさらに増大させることができる。
【0058】
本発明によれば、別の修正および改良が可能である。したがって、例えば回転ホイールまたはハンドクランクを手動駆動装置として設けることができる。さらに、走査のために、最新技術から知られている他の制御装置を使用できる。測定スライド4がオペレータの手で位置決めされ、そして駆動モータ14が、加工品を走査するためにそして一定の測定力を与えるために使用される本発明による手順が好ましいが、この理由は、本発明による手順により、走査素子9の迅速かつ正確な位置決めが容易になるからである。さらに、摩擦クラッチ15の代わりに、同様の機能を有する他のクラッチ、例えば磁気クラッチを使用することができる。測定力発生装置14、15をばねシステム等として構成することもできる。
【0059】
簡略化された実施形態では、測定コラム3のまたは測定スライド4の測定時にコンピュータ21にまたは好ましくはオペレータの視野内に設けられるキーがオペレータに提供され、このキーによって、オペレータは、開始すべき機能が面の測定、あるいは孔寸法のまたは軸寸法の測定であるかどうかを片手で選択できる。位置決めは制御装置21によって自動的に検出され、次に、この制御装置は、モータ駆動による走査を自動的に開始し、選択された測定機能を実行する。多数の孔または軸が順次交互に検査される2次元測定の場合、再びキーを作動させる必要なしに、全てのものを測定できる。
【0060】
他の実施形態は図1に示されている。この場合、自動コマンド認識および測定機能開始の状態をオペレータに知らせる追加の信号出力装置62が設けられる。このために、例えば、位置決め決定が進行し、位置決めが決定されたかまたは測定値が取られており、測定が終了したことを知らせるLEDを測定コラム3にまた測定スライド4に設けることができる。勿論、例えば、状態を知らせるためにオンまたはオフできるかまたは点滅できる単一の光源の形態の、あるいは音響信号出力装置の形態の信号出力装置の他の実装も可能である。
【0061】
位置決めと測定機能とを自動的に決定するための本発明による概念を多数の寸法測定装置に適用することもできる。図6には、3次元空間における測定の実行を容易にする3次元座標測定装置1’の非常に簡略化した原理図が示されている。このために、第1の測定スライド4aは門形63に支持されて案内され、このようにして水平方向に移動可能である。手動調整のために、ハンドル18aが測定スライド4aに設けられる。さらに、支持アーム64は測定スライド4aに取り付けられ、この場合、前記支持アームは、x方向に対して垂直の水平なy方向に前方に突出する。支持アーム64において、追加の測定スライド4bがy方向に移動可能に支持され、この場合、ハンドル18bが測定スライド4bに設けられる。さらに、測定スライド4bは、x−y面に対して垂直であるz方向に延びかつ他の測定スライド4cを前記方向に案内するガイド片66を支持する。測定スライド4cは、ハンドル18cを備え、その下端に走査素子9を支持する。より詳細には本図に示されていない測定システム19は各測定スライド4a、4bおよび4cに関連し、この場合、前記測定システムは走査素子9のそれぞれのx位置、y位置またはz位置を決定する。
【0062】
オペレータはハンドル18a、18b、18cによって走査素子を測定空間の任意の位置に移動させることができ、この場合、位置決めおよび所望の測定機能は、本発明による制御装置21によって検出され、そして意図された測定機能は、例えば、座標の測定値を取って、それらを表示することによって開始される。このようにして、最後の被駆動移動により走査方向が決定されることを確定できる。さらに、x軸、y軸およびz軸に沿った線形移動の代わりにまたはそれに加えて、少なくとも一本の旋回軸を中心とした走査素子9の旋回を行うことができる。
【0063】
高さ測定装置(1)は測定コラム(3)を備え、この測定コラムには、垂直に移動可能な測定スライド(4)が支持され、このようにして、それを手で、さらには、クラッチ装置(15)を介した駆動モータ(14)で移動させることができる。測定スライド(4)は、駆動モータ(14)とクラッチ装置(15)とによって発生される一定の測定力を加工品の測定位置に与える走査ヘッド(8)を支持する。測定システム(19)は、走査ヘッド(8)の高さ座標を検出して、さらなる処理および評価のために前記高さ座標を制御装置(21)に送信する。
【0064】
制御装置(21)は、測定工程を自動化するための論理(33)を備える。この論理は、オペレータが手動で行ったある方向への走査ヘッド(8)の位置決めを自動的に検出し、引き続き、加工品の走査を行うために駆動モータ(14)を適切に制御して、測定システム(19)の信号から、それぞれの測定に関連する測定値を決定する。面でまたは孔でまたは軸で一方向にまたは逆方向に測定しようとするオペレータの意図を完全に自動的に検出するように、また意図された測定機能を独立して開始するように、制御装置(21)を構成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータにより選択可能な複数の測定機能の一つに従って、加工品の少なくとも1次元の座標測定を行うための測定装置であって、
オペレータによりそれぞれの測定位置に位置決め可能にするために走査ヘッド(8)が長手方向に移動可能に支持されるベース片(3;63、64、66)を備え、
前記走査ヘッド(8)の移動を検出するための、および当該移動を特徴付ける測定信号(25)を出力するための測定システム(19)を備え、
前記測定システム(19)によって供給された測定信号(25)を受信するように、そして前記走査ヘッドの移動速度および移動方向を含む前記走査ヘッド(8)の移動を特徴付ける移動測定値を決定するために、および前記走査ヘッド(8)の位置を特徴付ける位置測定値を供給するために所定の論理規則に従って前記測定信号を処理して評価するように構成されている処理装置(31)を備える測定装置において、
前記論理規則が、前記移動測定値と前記位置測定値のみに基づいて、前記オペレータにより行われた位置決めを自動的に検出するように構成されている決定論理を含み、前記論理が、前記オペレータにより意図された測定機能を検出するようにかつ前記測定機能を開始するように構成されている、測定装置。
【請求項2】
前記測定機能が、前記走査ヘッド(8)の移動方向に沿って面、孔または軸を一方向にまたは逆方向に走査するステップを含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定機能の開始が、現在の測定値を取るステップを含み、そして、以下の工程、すなわち、前記加工品のモータ駆動による走査を開始する工程、一定の測定力を前記走査ヘッド(8)に与える工程、一連の連続測定値を取る工程、前記一つまたは複数の測定値を記憶する工程、処理する工程および/または表示する工程の少なくとも一つの開始をさらに含むことができる、請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記決定論理(33)により、前記走査ヘッド(8)の移動または位置を特徴付ける測定信号(25)とそれから導出された変数とに基づいて測定機能の自動検出と開始が行われ、前記導出された変数が、変数、すなわち、前記走査ヘッド(8)の移動方向、移動速度、移動距離および/または移動時間の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記決定論理(33)が、前記検出または導出された変数を、最小閾値および最大閾値を含む特定のパラメータ値と比較するための比較論理(34)を含む、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記パラメータ値が調整可能である、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記処理装置(31)が、既に実行された少なくとも一つの測定機能に応じて、前記パラメータ値を自動的に適応させるように構成されている、請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記決定論理(33)が、
・前記走査ヘッド(8)が移動される速度(v)を決定して、当該速度を、最小移動速度を特徴付ける第1の閾値(Vmin)と比較するように、
・少なくとも最小移動速度での移動の時間間隔(T)を決定して、当該時間間隔を、最小時間間隔を特徴付ける第2の閾値(Tmin)と比較するように、
・前記走査ヘッド(8)が移動される方向を決定するように、そして
・前記比較の結果に基づき前記測定ヘッドの位置決めを決定して、測定方向を含む適切な測定機能を選択して開始するように
構成されている論理を含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項9】
一定の測定力を前記測定ヘッド(8)に与えるための測定力発生装置(14、15)を備え、前記決定論理(33)がさらに、
・前記走査ヘッド(8)の移動方向を決定するように、
・一定の移動方向で移動速度の連続的な減少を検出するように、
・前記走査ヘッド(8)の移動方向を、前記測定力発生装置(14、15)の有効方向と比較するように、そして
・孔または軸が走査されており、どの方向にて前記走査が行われているかを前記比較に基づいて決定するように
構成されている論理を含む、請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記決定論理(33)が、前記測定装置(1)の弾性によって生じる前記走査ヘッド(8)の移動方向の短い反転を検出するための論理を含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項11】
前記決定論理(33)が、物理的原因による前記走査ヘッド(8)の反発力を検出するための論理を含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項12】
前記決定論理(33)が、進行中に測定機能の検出を解消するための論理を含み、そして開始された測定機能を終了するための論理を含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項13】
前記オペレータにより前記決定論理(33)を作動状態および非作動状態にすることができる、請求項1に記載の測定装置。
【請求項14】
前記走査ヘッド(8)が触覚走査素子(9)を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項15】
前記走査ヘッド(8)が、接触なしに走査する走査素子を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項16】
前記走査ヘッド(8)を手動で駆動するためのハンドル手段(18;18a、18b、18c)を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項17】
前記走査ヘッドを移動させるために前記走査ヘッド(8)に動作可能に接続されている駆動装置(14)を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項18】
前記駆動装置(14)がモータ、特に電動モータを備える、請求項17に記載の測定装置。
【請求項19】
特定のトルクに達するまで前記構成要素間で摩擦接続を行うために、前記駆動装置(14)と前記走査ヘッド(8)との間の駆動系にクラッチ装置(15)が設けられている、請求項17または18に記載の測定装置。
【請求項20】
前記クラッチ装置(14)がスリップクラッチとして構成されている、請求項19に記載の測定装置。
【請求項21】
加工品が走査されているときに、一定の測定力を前記走査ヘッド(8)に与えるように構成されている測定力発生装置(14、15)を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項22】
前記測定システム(19)が距離測定システムとして、特に、増分反射光測定システムとして構成されている、請求項1に記載の測定装置。
【請求項23】
前記処理装置(31)が、測定工程を制御するための制御装置(21)の構成要素であり、前記制御装置(21)が、コマンドまたはデータを入力するための入力手段(23)と情報を出力するための出力手段(22)とを備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項24】
前記決定論理(33)の現在の状態をオペレータに知らせる信号出力装置(62)を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項25】
測定スライド(4)が支持されて案内され、このようにして前記測定スライドを垂直方向に位置決めできる測定コラム(3)を有する高さ測定装置(1)を備え、前記走査ヘッド(8)が前記測定スライドに取り付けられている、請求項1〜24のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項26】
前記走査ヘッド(8)を2次元測定面にまたは3次元測定空間に位置決めできる座標測定装置(1’)を備える、請求項1に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−537796(P2009−537796A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510328(P2009−510328)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004194
【国際公開番号】WO2007/134733
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(506027848)カール マール ホールディング ゲーエムベーハー (11)
【Fターム(参考)】