説明

1−アザビシクロ[2.2.2]オクタンの薬剤としての使用及び不活性野生型p53を活性化する能力に関する化合物の試験方法

本発明は、野生型p53が本明細書に定義する不活性状態で存在する医学的組成、特に悪性黒色腫、及び望ましくない血管新生が関与する状態の治療に用いる薬剤組成物を調製するための、野生型p53を不活性非機能性構造から活性構造に転換することのできる1−アザビシクロ[2.2.2]オクタンの使用に関する。本発明はさらに、不活性野生型p53がモニター又は検出される、上述の能力に関してin vivo及びin vitroで化合物を試験する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野生型p53が本明細書に定義する不活性状態で存在する医学的症状、特に悪性黒色腫の治療に用いる薬剤組成物を調製するための、野生型p53を不活性非機能性構造から活性構造に転換することのできるある種の化合物の使用に関する。本発明はまた、不活性野生型p53のレベルをモニターする、上述の能力に関する化合物の試験方法に関する。この方法は、in vitro及びin vivoの両方で行うことができる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍サプレッサータンパク質p53は、ヒトのほとんどの腫瘍で突然変異しているが、野生型(wt)p53は、悪性黒色腫において顕性である(Hollstein等、Science、253:49〜53(1991)、Sparrow等、Melanoma Res.1995.5:93〜100(1995)、及びHartmann等、Int J cancer、67:313〜317(1996))。Petitclerc等、Cancer Res、59:2724〜2730(1999)は、Mab LM609、αβインテグリンに対する機能阻害モノクローナル抗体が、腫瘍アポトーシスを誘導することにより、M21黒色腫の増殖を遮断することを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
悪性黒色腫は典型的に、化学薬剤又は放射能によるアポトーシス誘導に治療抵抗性である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、悪性黒色腫細胞においてアポトーシスを誘導することのできるある種の化合物であって、式(I)の構造を有するものとして請求項1に定義される化合物、並びに薬剤として許容される式(I)の化合物の塩又はプロドラッグを見出した:
【化1】


[式中、
nは、0、1、又は2であり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−CH−R、−CH−O−R、−CH−S−R、−CH−NH−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CH−NH−CO−R、−CH−O−CO−R、−CH−NH−CO−NHR、−CH−NH−CO−OR、−CH−NH−CS−NHR、及び−CH−O−CO−NHRから選択されるか、或いは
及びRは、合わせて=CHであり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−OH、−SH、−NH、−NHR、及び−O−CO−Cから選択されるか、或いは
及びRは、合わせて=O、=S、=NH、又はNRであり、
は、H、置換又は非置換のC1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10のアルキニル、置換又は非置換のC3からC12のシクロアルキル、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のアリール、或いは1つ又は複数のヘテロ原子を有する単環、二環、又は三環式の非置換又は置換の芳香族複素環、及び非芳香族複素環から選択される同一であるか又は異なる基を表し(これらの置換された基の置換基は、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10のアルキニル、ハロゲン、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換の芳香族複素環化合物、非芳香族複素環、C1からC10のアルキルオキシ、C1からC10のアルキルアミノ、C2からC10のアルケニルアミノ、C2からC10のアルキニルアミノ、COR、CONR、及びCOORから選択される)、
は、H、非置換又は置換のC1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル又はアルキニル、ベンジル、アリール、1つ又は複数のヘテロ原子を有する非置換又は置換の芳香族複素環、及び非芳香族複素環から選択され、
及びRは、合わせて架橋CH−CH部分を形成するか、或いは
及びRは、共に水素である]。
【0005】
環式の場合、アルキル基は、好ましくはC5からC10であり、もっとも好ましくはC5からC7である。非環式の場合、アルキル基は、好ましくはC1からC6、より好ましくはメチル、エチル、プロピル(n−プロピル、イソプロピル)、ブチル(分枝又は非分枝)、又はペンチルであり、もっとも好ましくはメチルである。
【0006】
本明細書では、「アリール」という用語は、フェニル、又はナフチル、或いは好ましくはN、O、及びSから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有する単環、二環、又は三環式芳香族複素環、例えばピリジル、ピロリル、キノリニル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、インドリル、ピラジニル、インダゾリル、ピリミジニル、チオフェネチル、ピラニル、カルバゾリル、アクリジニル、キノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、アザプリニル、シンノリニル、プテリジニルなどの芳香族基を意味する。
【0007】
本明細書では、「官能基」という用語は、非保護基の場合、ヒドロキシ−、チオロ−、アミノ官能基、カルボン酸を意味し、保護基の場合、低級アルコキシ、N−、O−、S−、アセチル、カルボン酸エステルを意味する。
【0008】
本明細書では、「ヘテロアリール」という用語は、好ましくはN、O、及びSから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有する芳香族基、例えばピリジル、ピロリル、キノリニル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、インドリル、ピラジニル、又はインダゾリルなどを意味する。
【0009】
本明細書では、「非芳香族複素環」という用語は、好ましくはN、O、及びSから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有する非芳香族環基、例えばピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルなどの環式アミノ基、又はテトラヒドロフラニルなどの環状エーテル、単糖などを意味する。
【0010】
本明細書では、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味し、一般に塩素が好ましい。
【0011】
本明細書では、他に別段の指定のないかぎり、「置換」という用語は、対象となる基が、ヒドロキシル、アミン、スルフィド、シリル、カルボン酸、ハロゲン、アリールなどの官能基で置換されていることを意味する。
【0012】
本発明の化合物の好ましい基は、式IIによって表される基である:
【化2】


[式中、
及びRは、水素、ヒドロキシメチル、或いはアミン置換フェニル基の窒素原子、又はプリン、8−アザプリン、若しくはベンズイミダゾール残基の環構造に含有される窒素原子に結合したメチレン基から独立して選択されるか、或いはR及びRは、合わせて二重結合メチレン基を表すことができ、
及びRは、水素、ヒドロキシル、及びベンゾイルオキシから独立して選択されるか、又はR及びRは、合わせて二重結合である酸素原子を表すことができ、但し、R及びRのいずれかがベンゾイルオキシ基であるとき、R及びRは、共に水素である]。
【0013】
上記の式IIの化合物において、R1のフェニル基又は窒素含有環構造、並びにR及びRのいずれかのベンゾイルオキシ基は、場合によって、例えばハロゲン、メチル、メトキシ、アミノ、及び/又は1〜3個のハロゲン原子を含有するはハロメチルで置換することができる。
【0014】
本発明の化合物は、遊離形態、例えば両性形態、或いは塩、例えば酸付加塩又はアニオン塩の形態であることができる。遊離形態の化合物は、当分野で知られている方法で塩形態に転換することができ、その逆も同様である。
【0015】
本発明の化合物はさらに、血管新生中に血管新生血管細胞においてアポトーシスを誘導することができ、それによって血管新生血管の退化を誘導し、種々のヒト腫瘍の増殖及び転移;例えば糖尿病性網膜症又は黄斑変性に起因する成人性失明;乾癬;例えば関節リウマチなどの慢性炎症状態;血管腫;並びに肥満症を含む血管形成及び/又は血管細胞生存に依存する種々の疾患状態を遮断することができると考えられる。
【0016】
一態様において、本発明は、悪性黒色腫を治療し、且つ/又は望ましくない血管新生を阻害する方法であって、薬剤として有効な量の式Iの構造を有する化合物から選択される化合物を、それを必要としている哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明者等はさらに、腫瘍細胞において、これまで知られていない非常に予想外の不活性構造状態の野生型p53タンパク質を見出した。この不活性野生型p53構造が、悪性黒色腫細胞において見出された。さらに重要なことには、この不活性野生型p53構造は、アポトーシスを誘導可能な機能性活性構造に復帰することができる。これらの知見に基づいて、本発明は、他の態様において、不活性野生型p53構造を活性野生型p53構造に転換する能力に関して物質を試験することによって、悪性黒色腫を治療するのに適した物質を見出す方法を提供する。この方法は請求項6に定義する。この不活性野生型p53構造はまた、血管新生中に血管新生血管細胞に存在すると考えられているので、それらの物質はまた、血管新生が関与することが知られている病的状態において血管新生を阻害するのに有用であると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
p53はヒトのほとんどの腫瘍で突然変異しているが、不可解なことに悪性黒色腫ではp53突然変異の頻度は希少である。しかしながら、悪性黒色腫は、インテグリンαβを高レベルで発現し、このインテグリンは、黒色腫細胞の生存を促進し(Montgomery等、PNAS 91:8856〜8860(1994)、Petitclerc等、1999、Hsu等、Am J Pathol.153:1435〜1442(1998))、内皮細胞においてp53の活性を抑制する(Stromblad等、J.Clin.Invest.98:426〜433(1996)、Stromblad等、J.Biol.Chem.277:13371〜13374(2002))。本発明者等はここに、インテグリンαβが、これまで知られていなかった不活性アンフォールド野生型p53構造の誘導により黒色腫野生型p53の活性を抑制することを提唱する。腫瘍細胞において、当該インテグリンαβ調節性のp53活性は、黒色腫細胞生存及び腫瘍増殖を支配することが認められている。ドミナントネガティブp53(His175)並びにp53siRNAは、インテグリンαβを欠損している黒色腫細胞の細胞生存及び腫瘍増殖を回復させることが見出され、これはp53のインテグリン介在性不活性化が、黒色腫細胞生存を制御することを示唆する。PRIMA−1とも称され、WO0224692により突然変異p53構造を活性状態に復帰させる能力を有することがすでに知られている、化合物2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オンは、意外なことに黒色腫細胞において野生型p53の活性構造を回復させ、アポトーシスを誘導し、野生型p53に依存する方式で黒色腫腫瘍増殖を遮断した。これらの結果は、悪性黒色腫においてp53突然変異が必要でないことを説明し、黒色腫治療の新規な原理を提示する可能性がある。
【0019】
Stromblad,S.等(その全体を参照により本明細書の一部とする)は、上記で引用したJ.Clin.Invest.98:426〜433(1996)において、増殖内皮細胞がインテグリンαβのアンタゴニストに応答してアポトーシスとなり、血管新生血管の退行をもたらし、それによって種々のヒト腫瘍の増殖を遮断すること、及びインテグリンαβの遮断が、p53の活性化を引き起こすことを報告した。
【0020】
上述の文献に報告された知見、及び本出願に開示された知見に基づいて、本発明者等は、本発明の化合物が血管新生中に増殖内皮細胞においてアポトーシスを誘導することができ、それによって血管新生血管の退行を誘導し、種々のヒト腫瘍の増殖及び転移、例えば糖尿病性網膜症又は黄斑変性に起因する成人性失明、乾癬、例えば関節リウマチなどの慢性炎症状態、血管腫、並びに肥満症を含む血管形成及び/又は血管細胞生存に依存する種々の疾患状態を遮断することができると考える。したがって、本明細書に開示の不活性野生型p53構造は、血管新生中の増殖内皮細胞にも存在すると考えられる。
【0021】
黒色腫において、野生型p53の不活性構造はインテグリンαβによって誘導されると考えられるが、他の組織において類似した任意の不活性野生型p53状態を誘導する基礎的な機序は異なる可能性がある。しかしながら、本化合物の作用の実際の機序は完全には理解されていないため、この化合物はさらに、不活性野生型p53が存在する他の病的状態を治療するのに有用である可能性があると考えられる。
【0022】
不活性野生型p53が存在する他の病的状態の治療に有用な物質は、本発明の一般的な方法によって見出すことができる。
【0023】
本明細書では、「不活性野生型p53構造」という用語は、「不活性アンフォールド野生型p53構造」という用語と同じ意味で用いられ、モノクローナル抗体Pab240と反応するが、モノクローナル抗体Pab1260と反応しない野生型p53の構造を表す。さらに、この不活性構造はまた、PRIMA−1と称される上述の化合物を用いて活性野生型p53構造に転換される能力を有する。不活性野生型p53構造はさらに、DNAに結合することができず、アポトーシスを媒介することができないことを特徴とする。
【0024】
Pab240はこれまで、非変性条件下で突然変異p53と反応性であり、変性条件下では突然変異p53と野生型p53とに同様に反応性であることのみが知られていた。しかしながら、本発明者等はここに、Pab240はさらに、非変性条件下で、本明細書に定義する野生型p53の不活性状態にも反応することを見出した。
【0025】
インテグリンαβは、皮膚黒色腫の進行に重要な役割を果たし、より温和な放射増殖期病変(radical growth phase lesions)に比べて、垂直増殖期黒色腫病変(vertically grouth phase melanoma lesions)において発現増加を示す(Albeda等、Cancer Res.50:6757〜6764(1990))。実験モデルにおいて、インテグリンαβの発現は、黒色腫細胞生存、腫瘍増殖、及び放射増殖期から垂直増殖期への変換を促進し、一方インテグリンαβの遮断は、アポトーシスを誘導することによって腫瘍増殖を阻害した(Felding−Habermann J Clin Invest.89:2018〜22(1992)、Petitclerc等、1999、Hsu等、1998)。これはインテグリンαβが機能的に黒色腫細胞生存を調節することを含意する。実際、インテグリンαβは、in vitroの3次元環境において、黒色腫細胞生存を促進することも認められている(Montgomery等、1994)。しかしながら、インテグリンαβがどのように黒色腫細胞生存を制御し得るのかは依然として明らかでない。
【0026】
腫瘍サプレッサータンパク質p53は、種々のストレスに応答してアポトーシス細胞死を機能的に誘導する(Oren、Cancer Biol.5:221〜227(1994)、Ko及びPrives、Genes Dev.10:1054〜1072(1996)、Levine、Cell 88:323〜331(1997))。活性化p53は、2つの経路でアポトーシスを誘発し得る(Vousden、Cell 103:691〜694(2000))。それら経路の一方は、死受容体及びカスパーゼ8の活性化に関連し(Ashkenazi及びDixit、Science 281:1305〜8(1998))、他方のアポトーシス経路は、ミトコンドリアシトクロムcの放出、それに続くApaf1及びカスパーゼ9の活性化によって媒介される(Green及びReed、Science 281:1309〜12(1998))。さらに、p53は特定のDNA結合タンパク質として作用し、転写活性bax(Miyashita等、Cell 80:293(1995))、PIG3(p53誘導遺伝子3、Venot等、EMBO J.17:4668〜79(1998))、PUMA(p53アップレギュレートアポトーシス調節因子、Nakano及びVousden、Mol Cell.7:683〜694(2001))、及びApaf−1(アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1、Vousden及びLu、2002)、並びに転写抑制bcl−2(Zhan等、Oncogene 9:3743〜51(1994))を含む種々の遺伝子の発現を活性化又は抑制する。これらの下流標的は、ある種のp53媒介アポトーシス過程に機能的に関与する。
【0027】
近年、ミトコンドリア膜上で直接作用するp53誘導アポトーシスの新しい機序が、Mihara,A.等によって、「p53はミトコンドリアで直接的アポトーシス作用を有する(p53 has a direct apoptogenic role at the mitochondria)、2003年1月27日刊、Molecular Cellにおいて報告された。その文献によれば、p53は、迅速にミトコンドリアに移行することにより、効果的にjump startし、アポトーシスに対する開始の遅い転写依存性効果を増幅する。
【0028】
さらに、インテグリンαβのアンタゴニストは、増殖性内皮細胞のアポトーシスを誘導し、これはp53の活性化に関連する(Stromblad等、1996、Stromblad等、2002)。p53は、ほとんどのヒト腫瘍で突然変異しているが、野生型p53は、悪性黒色腫において顕性である(Hollstein等、1991、Sparrow等、1995、Hartmann等、1996)。さらに、悪性黒色腫は典型的に、化学薬剤又は放射能によるアポトーシス誘導に治療抵抗性である。
【0029】
実験
インテグリンαβに媒介されるp53の調節が、黒色腫細胞生存を調節することを実証するために、後で詳しく説明する次の実験を行った。まず、インテグリンαβを発現するM21ヒト黒色腫細胞、及びインテグリンαβを欠損しているM21L亜集団を、病態生理的皮膚環境を模倣する3次元コラーゲンで分析した。インテグリンαβは、不活性野生型p53構造を誘導することにより、p53活性を阻害することが見出された。さらに、ドミナントネガティブp53変異体(His175)又はp53siRNAの過剰発現は、M21L(αβ−)細胞生存及び腫瘍増殖を回復させ、これはp53が黒色腫細胞生存を促進するインテグリンαβの主要な標的であることを示唆する。重要なことに、PRIMA−1は、M21細胞において野生型p53の活性構造を回復させることができ、それによって黒色腫細胞アポトーシスを誘導し、黒色腫腫瘍増殖を抑制する。これらの結果は、野生型p53の再活性化による黒色腫の治療に関する新規な原理を明らかにする。
【0030】
インテグリンαβは黒色腫細胞の生存を促進する
図1Aに関連して、インテグリンαβを発現する母親ヒト黒色腫細胞M21、及びインテグリンαβを欠損しているM21Lを、3次元コラーゲンゲル(3Dコラーゲン)で培養した。指示された時間に、FITCアネキシンV染色によってアポトーシスを検出した。FACS分析は、αβを欠損するM21L細胞が、M21細胞(αβ+)に比べてはるかに高い割合でアポトーシスとなることを示し、インテグリンαβの発現が黒色腫細胞の生存に重要であることを示唆した。
【0031】
インテグリンαβを欠損している母親ヒト黒色腫細胞M0;M0−2baV、インテグリンαVサブユニットの細胞質尾部(cytoplasmic tail)を伴うインテグリンIIbサブユニットの細胞外ドメインのキメラ(chimer)を過剰発現するM0細胞;及び高レベルのインテグリンαVサブユニットを発現するM0−αV細胞を、3Dコラーゲンで培養した。指示された時間に、FITCアネキシンV染色によってアポトーシスを試験した。図1Bに示したとおり、M0αV細胞(αβ発現)は充分に生存するが、M0及びM02baV細胞はすべての時点で高い割合でアポトーシスとなることが、FACS分析によって示された。これはインテグリンαVサブユニット細胞外リガンド結合部が、黒色腫細胞の生存に重要であることを示している。
【0032】
インテグリンαβ及びインテグリンβサブユニットの細胞表面発現を、それぞれ抗αβMabLM609及び抗βMabAP3で染色したヒト黒色腫細胞系M21、M21L、M0、M0−αV、及びM0−2baVにおいて分析した。図1Cに示すように、FACS分析は、αβ及びβサブユニットは共にすべてのM21及びM0αV細胞で発現するが、M21L及びM0細胞ではめったに発現しないことを示した。インテグリンβは実質的にすべてのM0−2baV細胞で発現したが、インテグリンαβは存在しなかった。
【0033】
非連結型のインテグリンαβは、カスパーゼ8の開裂を直接誘導することによって、アポトーシスを引き起こす可能性のあることが示唆されている(Stupack等、J.Cell Biol.155:459〜470(2001))。したがって、3、5、及び7日後に、3Dコラーゲンから取り出したM21及びM21L細胞から調製された溶解産物を、カスパーゼ8及びカスパーゼ9の開裂に関してウエスタンブロットによって分析した。図1Dに関連し、これらの黒色腫細胞においてカスパーゼ8の開裂は認められないが、シクロヘキシミド処理Jurkate細胞を用いるコントロールは、カスパーゼ8の開裂を示した。しかしながら、カスパーゼ9は、M21(αβ+)細胞に比べてM21L細胞(αβ−)において高い割合で開裂し、インテグリンαβの欠損がM21L細胞でアポトーシスを引き起こすこと、及びこのアポトーシスは、カスパーゼ9を伴うが、検出可能なカスパーゼ8の活性化を伴わないミトコンドリアアポトーシス経路によって媒介される可能性のあることを示唆した。
【0034】
インテグリンαβは野生型p53のアンフォールド構造を誘導し、野生型p53活性を抑制する
Pab421を用いるp53スーパーシフトによる電気泳動ゲルシフト法(EMSA)を用いて、3Dコラーゲンから採取したM21及びM21L細胞において、特定のp53DNA結合活性を試験した。第0日では、p53活性はM21及びM21L細胞で類似していた。しかしながら、図2Aの上図に示すように、インテグリンαβを欠損するM21L細胞は、3Dコラーゲンで培養後、p53活性の増大を示したが、M21細胞(αβ+)は示さなかった。
【0035】
p53のタンパク質レベルを、抗p53Pabを用いるウエスタンブロットによって分析した。図2Aの下図に関連して、M21及びM21L細胞のp53タンパク質レベルは、3Dコラーゲンで7日以内に違いが認められなかった(試験は0、3、5、及び7日に行った)。負荷コントロールとしてアクチンレベルを試験した。これは、インテグリンαβがp53タンパク質レベルに影響を及ぼすことなくp53活性を調節することを示している。
【0036】
特定のp53DNA結合活性を、それぞれ3Dコラーゲンで5日及び7日間インキュベートした後、M0及びM0αV細胞で試験した。EMSA検定により、p53活性が、M0αV細胞(αβ+)に比べて、インテグリンαβを欠損するM0細胞で高いことが示された(図2Bを参照のこと)。これは、第2の細胞系において黒色腫細胞p53活性化状態を調節するインテグリンαβの役割を実証する。
【0037】
既知のp53活性化のアセチル化部位であるリシン382でのp53のアセチル化を、抗アセチル化p53−L382pabを用いて、ウエスタンブロットによって試験した。図2Cに示すように、アセチル化p53のレベルは、M21L細胞(αβ−)に比べてM21細胞(αβ+)において低減したが、p53総レベルは同じままであった。さらに、PUMAは、p53活性化と並行してM21L(αβ−)細胞でアップレギュレートされたが、M21(αβ+)細胞ではアップレギュレートされず、p53活性がPUMAの転写を活性化する可能性を示唆した。
【0038】
図2Dに関連して、p53の構造を、活性フォールドp53構造を認識するPab1620、不活性アンフォールドp53構造を認識するPab240、及びフォールド及びアンフォールド両方のp53構造を認識するDO1を用いて、ELISAによって分析した。図2Dに示すデータは、D01反応性(p53トータル)に対するPab1620及びPab240反応性の割合を示す。M21細胞(αβ+)及びM21L(αβ−)は通常の2次元培養(第0日)で活性p53構造を示すことが認められた。しかしながら、3DコラーゲンでインキュベートしたM21細胞(αβ+)は、インキュベート後、不活性アンフォールドp53構造に転換したが、M21L(αβ−)は、活性p53構造を維持した。これは、インテグリンαβが病態生理的3次元環境にある黒色腫細胞において野生型p53構造を調節すること、及びインテグリンαβを発現する細胞のp53活性の欠損は、アンフォールド不活性p53構造に起因することを示唆している。
【0039】
インテグリンαβ調節性p53は黒色腫細胞生存及び黒色腫腫瘍増殖を制御する
M21L(αβ−)細胞を、ドミナントネガティブp53−His175で安定にトランスフェクトし、M21Lp53His175−0、M21Lp53His175−1、M21Lp53His175−8、及びM21Lp53His175−32を含むいくつかのクローンを、5日間3Dコラーゲン中でインキュベートした後、EMSAを用いてp53活性を試験することにより同定した。これらのクローンのp53活性は、αβを発現するM21細胞と同様のレベルに低減した(図3Aの下図)。M21L−p53His175クローン、M21L及びM21細胞を3Dコラーゲン中でインキュベートし、図3Aに示した時点でFITCアネキシンV染色して、アポトーシスを試験した。FACS分析は、アポトーシス細胞数が、M21Lと比べてdnp53クローンを有するM21Lにおいて低く、M21L−dnp53クローンでのアポトーシスの割合はインテグリンαβを発現するM21細胞に類似していることを示し、ドミナントネガティブp53の過剰発現が、インテグリンαβ自体の発現と同程度にアポトーシスからM21L細胞を救出し得ることを示唆した。
【0040】
黒色腫腫瘍増殖におけるインテグリン調節性p53の役割をin vivoで調べた。結果を図3Bに示す。M21L、M21、並びにM21L−dnp53クローンM21Lp53His175−0及びM21Lp53His175−8を含む黒色腫細胞(1×10)を、6週齢C57/BLヌードマウスの背部の皮下に注射した。注射した各細胞種は、7匹のマウスを含んだ。腫瘍を25日間増殖させた。M21Lp53His175−0、M21Lp53His175−8、及びM21細胞(αβ+)では腫瘍の形成が認められたが、インテグリンαβを欠損するM21L細胞は典型的に、この期間内に腫瘍を形成しなかった。
【0041】
前パラグラフに記載する黒色腫増殖に関して腫瘍容積をモニターした。経時腫瘍容積を次式によって求めた。幅×長さ×0.52。図3Cにおいて、示した値は、各腫瘍細胞型の5〜7匹の動物による平均腫瘍容積である。この図で、◆はM21、□はM21L、▲はLp53His175−0、×はLp53His175−8を表す。M21Lp53His175−0及びM21Lp53His175−8は、M21の腫瘍と同様に大きな腫瘍を形成した。しかしながら、インテグリンαβを欠損するM21L細胞は典型的に、ごく小さく増殖するのみであるか、又は腫瘍を形成しない。
【0042】
図3Dは、M21、M21L、M21Lp53His175−0、及びM21Lp53His175−8の腫瘍湿重量の平均値±標準偏差を示す棒グラフである。図3Bに記載のとおり、ヌードマウスで皮下注射によって細胞は増殖した。
【0043】
M21L(αβ−)細胞を、p53−siRNAで安定にトランスフェクトし、M21Lp53siRNA16、M21Lp53siRNA17、M21Lp53siRNA18、M21Lp53siRNA19、M21Lp53siRNA21、及びM21Lp53siRNA22を含むいくつかのクローンを、ウエスタンブロットを用いて、p53タンパク質レベルを試験することによって同定した(図3Eの縦図)。M21Lp53siRNAクローン、M21L及びM21細胞を3Dコラーゲン中でインキュベートし、図3Eに示した時点でFITCアネキシンV染色して、アポトーシスを試験した。FACS分析は、アポトーシス細胞数が、M21Lと比べてdnp53クローンを有するM21Lにおいて低く、M21L−p53siRNAクローンでのアポトーシスの割合はインテグリンαβを発現するM21細胞に類似していることを示し、p53siRNAの過剰発現が、インテグリンαβ自体の発現と同程度にアポトーシスからM21L細胞を救出し得ることを示唆した。
【実施例】
【0044】
本実施例では、PRIMA−1がインテグリンαβ陽性黒色腫細胞における活性p53構造を誘導し、p53転写標的を誘導し、特定のカスパーゼ活性化を含む、黒色腫細胞アポトーシスを促進し、in vivoでの黒色腫腫瘍増殖を抑制することを実証する。
【0045】
PRIMA−1は、WO0224692により、変異p53タンパク質のアポトーシス誘導機能を再活性化できることが知られている物質である。PRIMA−1が、インテグリンαβによって強化された黒色腫細胞において野生型p53のアンフォールド不活性構造に影響を及ぼすことができるかどうかを試験するために、M21細胞(αβ+)及びM21L細胞(αβ−)を、7日間3Dコラーゲン中で100μMのPRIMA−1を用いて又は用いずにインキュベートした。p53構造を上に記載のとおり試験した。結果を図4Aに示す。図に示すように、PRIMA−1は、M21細胞(αβ+)においてアンフォールド不活性状態から活性p53構造を回復させることができたが、コントロールM21L細胞(αβ−)では、p53構造はPRIMA−1の影響を受けなかった。これは、黒色腫細胞の野生型p53がアンフォールド状態及びフォールド状態間を構造的に変化し得ることを単独に実証するものである。より重要なことに、これらの結果は意外にも、黒色腫細胞の野生型p53アンフォールド構造がPRIMA−1によって活性構造に復帰され得ることを示している。この目的のために、さらにp53構造を、3Dコラーゲンでインキュベートする前及び後に、インテグリンαβ及び野生型p53を発現するAAヒト黒色腫細胞において分析した(図4B)。上図の結果は、AA細胞のp53が2D培養条件下(0日)下で活性構造を有し、3Dコラーゲンでのインキュベートが不活性構造を誘導したことを示している。しかしながら、重要なことに、下図は、AA黒色腫細胞をPRIMA−1で処理することによって、p53が3Dコラーゲン中で活性構造に強化されたことを示している。これは、種々の黒色腫細胞において、PRIMA−1を用いて野生型p53を不活性構造から活性構造に転換できることを示している。
【0046】
16、24、36、及び48時間、PRIMA−1で処理した又は処理しない3Dコラーゲン中又は2D培養条件下で増殖させたM21細胞においてアポトーシスを分析した。結果を図4Cに示す。PRIMA−1は、3Dコラーゲン中のM21細胞(αβ+)において2D培養に比べてはるかに高度にアポートシスを促進し、p53活性化状態の調節が3D環境で選択的に黒色腫細胞の生存を制御することを示唆した。これはさらに、単独でdnp53及びp53−siRNAを用いた結果(図3)を実証する。
【0047】
図4Dは、すべてウエスタンブロットによって検出した、PRIMA−1単回投与24時間及び36時間後の、ヌードマウスで増殖したM21ヒト黒色腫細胞腫瘍における、p53−Lys382のアセチル化、p53−Ser15のリン酸化並びにApaf−1、PUMA、及びBaxのタンパク質レベルを示す。これらの結果は、PRIMA−1がin vivoで黒色腫腫瘍においてApaf−1及びPUMAタンパク質レベル、並びにp53アセチル化を誘導することを示している。したがって、p53−Lys382のアセチル化は、PRIMA−1によるp53活性化が関与している可能性があり、Apaf−1及びPUMAはin vivoでPRIMA−1及びp53誘導黒色腫細胞アポトーシスの潜在的な下流メディエータである。
【0048】
図4Eは、ウエスタンブロットによる検出で、PRIMA−1単回投与24時間及び36時間後、ヌードマウスで増殖したM21ヒト黒色腫細胞腫瘍においてカスパーゼ9は活性化したが、カスパーゼ8は活性化しなかったことを示している。これらの結果はPRIMA−1による誘導を示している。したがって、カスパーゼ9は、in vivo黒色腫細胞においてPRIMA−1及びp53誘導アポトーシスの潜在的な下流エフェクターである。
【0049】
図4Fは、カスパーゼ9阻害剤Z−LEHD−FMK×TFA(C1355)を用いた場合又は用いない場合、80μMのPRIMA−1を用いた場合又は用いない場合の3Dコラーゲン中36時間後のM21黒色腫細胞をアネキシンV染色してアポトーシスを検出した結果を示す。これらの結果は、PRIMA−1が3Dコラーゲンで黒色腫細胞アポトーシスを誘導し、これが下流メディエータとしての活性カスパーゼ9に依存する可能性があることを示している。
【0050】
PRIMA−1による活性野生型p53構造の回復がin vivoでも黒色腫細胞のアポトーシスを誘導し、それによって黒色腫腫瘍増殖を遮断し得るかどうかを試験するために、M21及びC8161黒色腫細胞(1.5×10)を、6週齢C57/BLヌードマウスの背部の皮下に注射した。マウスを、腫瘍摂取6日後から開始して6日間、PRIMA−1(100mg/kg)を用いて又は用いずに処理した。図4Gのグラフは、各群の4匹のマウスに関して上に記載のとおり算出した平均腫瘍容積を示す。PRIMA−1は、PBSコントロールと比べてM21黒色腫増殖を著しく阻害したが、C8161黒色腫増殖には影響を及ぼさなかった。C8161細胞は不完全な非機能性p53を有し、M21細胞は野生型p53を有することから考えると、これらの結果は、黒色腫増殖に対するPRIMA−1の影響が機能性p53に依存することを示している。
【0051】
図4Hは、図4Gに記載したとおりPRIMA−1で処置した場合、又は処置しない場合の、黒色腫腫瘍形成25日後の平均腫瘍湿重量±標準偏差を示している。PRIMA−1は野生型p53を有する黒色腫細胞の腫瘍増殖を抑制することができるという発見は、インテグリンαβで不活性のままであった野生型p53の不活性構造を再活性化することによって、悪性黒色腫を治療するための新規な原理を提示する。
【0052】
これらの予想外の発見に基づいて、本発明者等は、WO0224692に記載されているPRIMA−2及びPRIMA−3などのPRIMA−1構造類似体、並びに国際特許出願PCT/SE03/00206(非公開)に記載されているPRIMA−1の他の類似体も、PRIMA−1と同様の活性を示すと考える。
【0053】
本発明の薬剤組成物に用いる薬剤として許容される付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、及び硫酸などの鉱酸、並びに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、及びアリールスルホン酸などの有機酸由来の塩が含まれる。本明細書に記載の薬剤として許容される賦形剤、例えばビヒクル、補助剤、担体、又は希釈剤は、当分野の技術者によく知られており、容易に入手可能である。薬剤として許容される担体は、活性化合物に化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用及び毒性を持たないものであることができる。薬剤の処方は、例えばRemington、調剤の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)、第19版、Mack Printing Company、Easton、Pennsylvania(1995)に記載されている。
【0054】
本発明による化合物は、任意の投与形態、例えば経口、静脈内、皮内又は皮下、経鼻、筋肉内、或いは腹腔内投与用に調製することができる。担体又は他の材料の厳密な性質は、投与経路によって決まる。非経口投与の場合、発熱物質を含まず、必要とされるpH、等張性、及び安定性を有する、非経口的に許容される水溶液が用いられる。当分野の技術者は適切な溶液を調製することができ、多くの方法が文献に記載されている。薬剤送達方法の概説は、例えばLanger、Science 249:1527〜1533(1990)に記載されている。
【0055】
哺乳動物、特にヒトに投与される用量は、本発明においては、正当な期間にわたって哺乳動物に治療反応をもたらすのに充分な量であるべきである。当分野の技術者は、特定の化合物、患者の年齢、状態、及び体重、並びに疾患の病期/重症度を含む種々の要因によって用量が決まることを認識するであろう。用量は、経路(投与形態)、投与時期及び頻度によっても決まる。経口投与の場合、1日当たり式(I)の化合物約0.01mgから約1000mg、又は薬剤として許容されるその塩の相当量であることができる。
【0056】
本発明に従って用いることのできる化合物の好ましい特定の例は、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン(PRIMA−1とも称される)、9−(アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン)−6−クロロ−9H−プリン(PRIMA−2とも称される)、2−(ヒドロキシメチル)キヌクリジン−3,3−ジオール(PRIMA−3とも称される)、2−(アデニン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−メチレン−3−キヌクリジノン、2−(2−アミノ−3−クロロ−5−トリフルオロメチル−1−メチルアニリン)−3−キヌクリジノン、2−(6−トリフルオロメチル−4−クロロベンズイミダゾール−1−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(6−メトキシプリン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(8−アザアデニン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルベンゾアート、2−(5,6−ジメチル−ベンズイミダゾール−1−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(8−アザアデニン−7−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(7−メチレン−1,3−ジメチル尿酸)−3−キヌクリジノン、又は2−(2,6−ジクロロ−9−メチレンプリン)−3−キヌクリジノン、或いは薬剤として許容されるそれらの塩である。
【0057】
本発明によれば、より好ましい化合物群は、下記の式IIIによって定義される構造を有する化合物である:
【化3】


[式中、
及びRの一方は、水素であり、他方は、アミン置換フェニル基の窒素原子、プリン、8−アザプリン、又はベンズイミダゾール残基の環構造に含まれる窒素原子に結合したメチレン基であり、より好ましくは、メチレン基は、プリン、8−アザプリン、又はベンズイミダゾール残基の環構造に含まれる窒素原子に結合している]。
【0058】
より好ましくは、式II及びIIIのR及びRの一方は、水素であるか、或いはR及びRは共に、ヒドロキシメチル基である。
【0059】
以下の化合物は、PRIMA−1と同様の、又はPRIMA−1より高い活性を示すと考えられる:2−(5,6−ジメチル−ベンズイミダゾール−1−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(8−アザアデニン−7−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(7−メチレン−1,3−ジメチル尿酸)−3−キヌクリジノン、2−(2,6−ジクロロ−9−メチレンプリン)−3−キヌクリジノン、及び2−(6−メトキシプリン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン。
【0060】
野生型p53を不活性構造から活性構造に転換する能力に関して物質を試験するための一般的な手順
物質を試験するための本発明の方法は、以下に説明するとおり、直接又は間接的な方法で、不活性構造の野生型p53を検出することに基づく。
【0061】
本発明の方法では、野生型のみが存在し、変異p53が存在しないことが重要である。したがって、本方法に用いられる任意の細胞において、野生型p53のみを発現すべきである。すなわちp53遺伝子は突然変異されていてはならない。野生型p53の発現は、当分野の技術者によって、配列決定、質量分析、DNA結合試験などの適切な通常の方法を用いて容易に求めることができる。
【0062】
当然ながら、試験中に野生型p53の不活性形態が存在することも重要である。野生型p53の不活性形態の存在は、Pab240を用いる直接的な方法によって適切に確立することができる。
【0063】
より詳細には、本発明者等は、野生型p53が以下の条件下で不活性化されていることを見出した:3Dコラーゲンなどの3次元環境においてin vitroで培養された黒色腫細胞、紫外線又はγ線照射後の組織培養黒色腫細胞、及びマウスにおいてin vivoで増殖した黒色腫細胞である。本発明者等はさらに、野生型p53は血管新生中の血管新生血管細胞で不活性構造を取り、野生型p53不活性構造はさらなる細胞種及び組織にも存在でき、他の場合には他の処理手段によって誘導できることを予測する。
【0064】
試験中に不活性野生型p53のレベルに生じる任意の変化をモニターする方法は、本発明によれば、その方法が不活性野生型p53のレベルの実質的な低減及びその結果として生じる活性p53誘導のレベルを検出できるかぎり、重要でない。
【0065】
新しい不活性野生型p53状態の上述の定義、及び本発明の詳細な説明に基づいて、当分野の技術者は、一般的な知識を用いて不活性野生型p53のレベルを検出及び/又はモニターするための適切な方法を見出すことができるであろう。以下にさらに詳しく説明するとおり、そのような方法は一般に、野生型p53構造及び/又は活性状態を測定することに基づく。
【0066】
試験中、不活性野生型p53のレベルは、例えば上述のPab240などの不活性形態のみを認識する適切な構造特異抗体を用いて確立することができる。野生型p53の総細胞レベルは、それぞれ不活性p53と活性p53とを合わせたレベルによって形成されるので、活性p53構造の測定は、不活性p53の間接的な測定として用いることもでき、すなわち活性p53の不在は、p53が不活性であることを示す。活性p53構造の測定は、Pab1620などの適切な構造特異抗体を用いて行うこともできる。所望であれば、DO1などの野生型p53の不活性形態と活性形態とを識別しない適切な抗体を用いて、野生型p53の総レベルを測定することができる。
【0067】
当然ながら、野生型p53の活性状態を反映する他の直接又は間接パラメータも用いることができる。したがって、例えば野生型p53の活性状態は、例えばレポーターとしてGFP又はルシフェラーゼを用いて、レポーターコンストラクトの発現の不在により、DNAに対するp53の結合を測定することによって、並びに/或いはp53活性を示す特定のp53標的遺伝子又は遺伝子発現パターンを分析するマイクロアレイ関連技法を用いて、例えばPUMA−1、Apaf−1、PIG−3、GADD45、Mdm2、p21−CIP1、bax、bcl−2、及び/又はカスパーゼ−3など、図2C及び4Dに示したp53標的遺伝子を測定することによって、並びに/或いはアポトーシス、及び/又は増殖停止、及び/又は図4Eに示したカスパーゼ9及びカスパーゼ3の活性化など、p53の上流又は下流の経路に関与する分子の活性を誘導する野生型p53の能力を測定することによって、検出することができる。
【0068】
さらに、図2C及び4Dに示したとおり、特定のp53アセチル化も、p53活性の指標として用いることができる。同様に、p53のリン酸化も、p53活性の指標として考えられる。
【0069】
しかしながら、抗体の使用は、特にPab240が用いられるとき、不活性野生型p53を検出及びモニターする実用的でより直接的な方法として本発明において好ましい。
【0070】
本発明によって野生型p53を不活性構造から活性構造に転換する能力に関して物質を試験する一般的な方法は、したがって以下の一般的なステップを含むことになる。
A.不活性野生型p53構造が存在する、野生型p53を有する細胞を提供するステップ、
B.細胞を試験物質に暴露するステップ、及び
C.例えば上述の任意の方法によって、不活性野生型p53構造の細胞レベルを測定するステップである。
【0071】
上述の一般的な方法は、以下で容易に理解されるとおり、ステップBにおいて細胞を試験物質にin vivo又はin vitroのいずれかで暴露することによって、in vivo及びin vitro試験の両方に適応させることができる。
【0072】
ステップCは典型的に、ステップBで細胞を試験物質に暴露する前及び後の両方で行う。
【0073】
野生型p53を不活性構造から活性構造に転換する能力に関する物質のin vitro試験
不活性p53構造を活性構造に復帰することのできる物質のin vitro試験の場合、野生型p53を有する細胞を3次元環境で増殖し、それぞれ試験物質を添加するか又は添加せずに、例えば上述の任意の方法によって、p53の構造及び/又は活性状態を測定することができる。不活性野生型p53の構造及び/又は活性を変化し得ることが認められた場合、物質は機能性であると見なされる。別法として、不活性野生型p53構造を誘導するために、野生型p53を有する細胞を照射し、試験物質に暴露し、その後、p53構造及び/又は活性に関して分析することができる。別法として、天然に不活性野生型p53構造を示す細胞を用いるか、又は他の手段で不活性野生型p53構造を誘導し、その後、細胞を試験物質に暴露し、不活性p53状態に関して分析することができる。
【0074】
ヒト又は動物由来の組織、器官、又はそれらの一部を培養し、処理し、上述のin vitro細胞に関して記載したとおり、本発明の試験に用いることができる。そのようなモデルはex vivoモデルと呼ばれることもあるが、本発明の物質の試験方法に用いられるとき、そのような方法はin vitro試験の方法であると見なす。
【0075】
別法として、物質のin vitro試験は、血管新生モデルで行うことができる。in vitroの例には、これに限定されるものではないが、内皮細胞の管形成試験、幹細胞からの血管伸長、動物又はヒトから単離された脈管からの血管伸長、又は組織培養内皮細胞の分析が含まれる。
【0076】
したがって、in vitro試験手順は、例えば以下の一般的なステップを含む。
A.in vitroにおいて野生型p53を有する細胞を提供し、不活性野生型p53が存在しない場合、不活性野生型p53を誘導するステップ、
B.細胞を試験物質に暴露するステップ、及び
C.例えば上述の任意の方法によって、直接又は間接的に、不活性野生型p53構造の細胞レベルを測定するステップである。
【0077】
ステップCは典型的に、ステップBで細胞を試験物質に暴露する前及び後の両方で行う。
【0078】
野生型p53を不活性構造から活性構造に転換する能力に関する物質のin vivo試験
同様に、野生型p53構造及び/又は活性は、in vivoで評価することができる。例えば、黒色腫細胞異種移植片をin vivoで用いて、不活性p53構造を活性p53に復帰させる能力に関して物質を試験することができる。この場合、そのような腫瘍異種移植片を有する動物を試験物質で処理し、上述のとおり、野生型p53構造及び活性に対するこの物質の影響を測定する。別法として、物質の試験は、黒色腫が自然に発生しているか、又は例えば紫外線放射、及び/又は発癌性化学物質、及び/又は遺伝子修飾で処置することによって黒色腫を誘発させる、動物黒色腫モデルで行うことができる。動物への試験物質の投与は、静脈内、腹腔内、皮下、腫瘍内、又は別の方法で行うことができる。
【0079】
別法として、物質のin vivo試験は、血管新生モデルで行うことができる。in vivoモデルの例には、これに限定されるものではないが、ニワトリ胚絨毛尿膜の血管新生刺激、マウス又は他の動物への細胞外マトリクス又は比較物質の移植による血管新生刺激、血管新生化合物による角膜の血管新生刺激、低酸素による網膜の血管新生刺激、網膜又は他の場所での発生血管新生分析、及び腫瘍異種移植片又は他の異種移植片による血管新生の誘導が含まれる。血管新生の測定は、組織内の血管数の定量化、及び/又は血管細胞マーカーの定量化、及び/又は血管細胞アポトーシス及び/又は血管細胞増殖の測定、及び/又は類似の手段によって行う。
【0080】
in vivo試験手順は、例えば以下の一般的なステップを含む。
A.不活性野生型p53構造が存在する、その組織において野生型p53を発現する動物を提供するステップ、
B.in vivoで動物の組織の細胞を試験物質に暴露するステップ、及び
C.例えば上述の任意の方法によって、直接又は間接的に、不活性野生型p53構造の細胞レベルを測定するステップである。
【0081】
ステップCは典型的に、ステップBで細胞を試験物質に暴露する前及び後の両方で行う。
【0082】
別法として、図4Gに例示のとおり、化合物の陽性試験は、機能性p53を有する細胞又は組織における試験物質の影響と、p53を含まないか、又は非機能性p53を含む細胞又は組織に対する影響とを比較することによって確立することもできる。明らかに、観測可能な影響は、例えば図4に記載した腫瘍容積又は重量、又は腫瘍細胞数の減少、或いはアポトーシスの誘導、又はその兆候と関連し得る。したがって、上述のin vivo及びin vitroの方法において、ステップCの代わりに代替ステップC’を用いることができ、これは、ステップBの細胞又は組織(機能性p53を有する)に対する試験物質の影響を、p53を含まないか、又は非機能性p53を含む細胞又は組織に対する影響と比較するステップを含む。
【0083】
別法として、化合物の試験は、野生型p53構造が調節に積極的な役割を果たす、例えば上に挙げた血管新生など、他の生理学及び病理学的機序に対する試験物質の影響を比較することによって試験することもできる。そのような場合、観察可能な影響は、特定の生理学又は病理学的事象、例えば血管新生によって形成された新しく作られた血管の量及び/又は血管細胞におけるアポトーシス又はその兆候の量に対する試験物質の影響であることができる。
【0084】
これらの動物は典型的に、上述のin vivo物質試験の後、屠殺される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1A】インテグリンαβを発現するヒト黒色腫細胞M21及びインテグリンαβを欠損しているM21Lにおける、時間を関数としたアポトーシス細胞の割合を示す図である。
【図1B】インテグリンαβを欠損しているヒト黒色腫細胞M0、M0−2baV、インテグリンαVサブユニットの細胞質尾部を伴うインテグリンIIbサブユニットの細胞外ドメインのキメラ(chimer)を過剰発現するM0細胞、及び高レベルのインテグリンαVサブユニットを発現するM0−αV細胞における、時間を関数としたアポトーシス細胞の割合を示す図である。
【図1C】種々のヒト黒色腫細胞系における、インテグリンαβ及びインテグリンβサブユニットの細胞表面発現を例示する図である。
【図1D】カスパーゼ8及びカスパーゼ9の開裂に関する分析結果を示す図である。
【図2A】上図は、Pab421を用いるp53スーパーシフトによる電気泳動ゲルシフト法(EMSA)を用いて、3Dコラーゲンから採取したM21及びM21L細胞における特定のp53DNA結合活性を示す図であり、下図は、負荷コントロールとしてアクチンと比較したp53のタンパク質レベルを示す図である。
【図2B】図2Aの上図と同様であるが、M0及びM0αV細胞を用いた図である。
【図2C】ウエスタンブロットによって検出された、3Dコラーゲンに7日間まで培養した後の3Dコラーゲン中のM21(αv+)及びM21L(αv−)細胞のPUMA、Apaf1、Bax、及びBclのタンパク質レベル、並びにリシン382でのp53のアセチル化を示す図である。
【図2D】M21(αβ+)細胞及びM21L(αβ−)細胞における、D01反応性(p53トータル)に対するPab1620及びPab240の反応性の割合を示す図である。
【図3A】上図は、M21(αβ+)細胞、M21L(αβ−)細胞、並びにM21Lp53His175−0、M21Lp53His175−1、M21Lp53His175−8、及びM21Lp53His175−32を含む、ドミナントネガティブp53−His175で安定にトランスフェクトされたM21L細胞(αβ−)のいくつかのクローンにおける、アポトーシス細胞の割合を示す図である。下図は、3Dコラーゲン中5日後の、それらのクローンにおけるp53のDNA結合活性を示す図である。
【図3B】図3Aで用いた細胞のin vivoでの腫瘍増殖を例示する図である。
【図3C】この図に示した各腫瘍細胞型の、5〜7匹の動物による経時平均腫瘍容積の値を示すグラフである。
【図3D】マウスのM21、M21L、M21Lp53His175−0、及びM21Lp53His175−8における、腫瘍増殖25日後の腫瘍湿重量を示す棒グラフである。
【図3E】M21(αv+)、M21L(αv−)、及び6種の個々のM21Lp53siRNAクローン(Lp53siRNA)黒色腫細胞を、指示された期間、3Dコラーゲンで培養した。アネキシンV染色によって、アポトーシスを検出した。p53及びアクチンタンパク質レベルのブロットを、各レーンの直左に示した細胞に関して、縦向きに表示する。示した結果は、3回の独立した実験を代表する結果である。
【図4A】100μMのPRIMA−1を用いて又は用いずに、5日間インキュベートしたM21及びM21L黒色腫細胞における、Pab1620及びPab240によるp53構造の試験結果を示す図である。
【図4B】上図は、2D培養条件下(0日)及び3Dコラーゲン中5日後のAA黒色腫細胞における、Pab1620及びPab240によるp53構造の試験結果を示す図である。下図は、100μMのPRIMA1を用いた場合、又は用いない場合の3Dコラーゲン中5日後のp53構造の試験を示す図である。
【図4C】上図は、100μMのPRIMA−1で処理した場合、処理しない場合に、3Dコラーゲン中16、24、36、及び48時間後のM21黒色腫細胞において、アネキシンV染色によってアポトーシスを定量化した結果を示す図である。下図は、2次元培養条件下での同じ処理の結果を示す図である。
【図4D】PRIMA−1の単回投与によって処理したヌードマウスで皮下注射によって増殖したM21ヒト黒色腫腫瘍を、溶解し、PRIMA−1投与24及び36時間後にウエスタンブロットによって、リシン382のp53のアセチル化、Ser15のp53のリン酸化、並びにPUMA、Apaf1のタンパク質レベルに関して分析した結果を示す図である。
【図4E】図4Dに記載したとおりに処理したM21黒色腫腫瘍において、カスパーゼ9はPRIMA−1によって活性化され、カスパーゼ8は活性化されないことを示す図である。
【図4F】PRIMA−1誘導アポトーシスが3Dコラーゲン中カスパーゼ9阻害剤Z−LEHD−FMK×TFA(C1355)によって遮断されることを示す図である。
【図4G】上図は、PRIMA−1(100mg/kg)を用いて又は用いずに6日間処理されたC57/BLヌードマウスにおいて増殖したM21ヒト黒色腫細胞の経時平均腫瘍容積を示す図である。下図は、PRIMA−1(100mg/kg)を用いて又は用いずに6日間処理されたC57/BLヌードマウスにおいて増殖したC8161ヒト黒色腫細胞の経時平均腫瘍容積を示す図である。
【図4H】図4Gに記載したとおりPRIMA−1で処置した場合、又は処置しない場合の、M21黒色腫腫瘍形成25日後の腫瘍湿重量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪性黒色腫及び/又は望ましくない血管新生が関与する病的状態の治療に用いる薬剤を調製するための、野生型p53を、Pab240に反応性であるが、Pab1620に反応性でない不活性構造から、アポトーシスを誘導することのできる活性構造に転換することのできる化合物の使用であって、化合物が式I:
【化1】


[式中、
nは、0、1、又は2であり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−CH−R、−CH−O−R、−CH−S−R、−CH−NH−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CH−NH−CO−R、−CH−O−CO−R、−CH−NH−CO−NHR、−CH−NH−CO−OR、−CH−NH−CS−NHR、及び−CH−O−CO−NHRから選択されるか、或いは
及びRは、合わせて=CHであり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−OH、−SH、−NH、−NHR、及び−O−CO−Cから選択されるか、或いはR及びRは、合わせて=O、=S、=NH、又はNRであり、
は、H、置換又は非置換のC1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10アルキニル、置換又は非置換のC3からC12のシクロアルキル、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のアリール、或いは1つ又は複数のヘテロ原子を有する単環、二環、又は三環式の非置換又は置換の芳香族複素環及び非芳香族複素環から選択される同一であるか又は異なる基を表し(置換された基の置換基は、C1からC10アルキル、C2からC10アルケニル、C2からC10アルキニル、ハロゲン、置換又は非置換アリール、置換又は非置換芳香族複素環化合物、非芳香族複素環、C1からC10アルキルオキシ、C1からC10アルキルアミノ、C2からC10アルケニルアミノ、C2からC10アルキニルアミノ、COR、CONR、及びCOORから選択される)、
は、H、非置換又は置換のC1からC10のアルキル、C2からC10アルケニル又はアルキニル、ベンジル、アリール、1つ又は複数のヘテロ原子を有する非置換又は置換芳香族複素環、及び非芳香族複素環から選択され、
及びRは、合わせて架橋CH−CH部分を形成するか、或いはR及びRは、共に水素である化合物、或いは薬剤として許容されるその塩又はプロドラッグから選択される]
の構造を有する化合物の使用。
【請求項2】
前記化合物が、次の式(II):
【化2】


[式中、
及びRは、水素、ヒドロキシメチル、又はアミン置換フェニル基の窒素原子、プリン、8−アザプリン、若しくはベンズイミダゾール残基の環構造に含有される窒素原子に結合したメチレン基から独立して選択されるか、或いはR及びRは、合わせて二重結合メチレン基を表し、
及びRは、水素、ヒドロキシル、及びベンゾイルオキシから独立して選択されるか、又はR及びRは、合わせて二重結合である酸素原子を表すことができ、但し、R及びRのいずれかがベンゾイルオキシ基であるとき、R及びRは、共に水素である化合物である]
を有する化合物から選択されるか或いは薬剤として許容されるそれらの塩又はプロドラッグである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン、9−(アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン)−6−クロロ−9H−プリン、2−(ヒドロキシメチル)キヌクリジン−3,3−ジオール、2−(アデニン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−メチレン−3−キヌクリジノン、2−(2−アミノ−3−クロロ−5−トリフルオロメチル−1−メチルアニリン)−3−キヌクリジノン、2−(6−トリフルオロメチル−4−クロロベンズイミダゾール−1−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(6−メトキシプリン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(8−アザアデニン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルベンゾアート、2−(5,6−ジメチル−ベンズイミダゾール−1−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(8−アザアデニン−7−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(7−メチレン−1,3−ジメチル尿酸)−3−キヌクリジノン、又は2−(2,6−ジクロロ−9−メチレンプリン)−3−キヌクリジノン、或いは薬剤として許容されるそれらの塩から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
薬剤として許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と合わせた、請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
悪性黒色腫を治療し、且つ/又は望ましくない血管新生を阻害する方法であって、式I:
【化3】


[式中、
nは、0、1、又は2であり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−CH−R、−CH−O−R、−CH−S−R、−CH−NH−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CH−NH−CO−R、−CH−O−CO−R、−CH−NH−CO−NHR、−CH−NH−CO−OR、−CH−NH−CS−NHR、及び−CH−O−CO−NHRから選択されるか、或いはR及びRは、合わせて=CHであり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−OH、−SH、−NH、−NHR、及び−O−CO−Cから選択されるか、或いはR及びRは、合わせて=O、=S、=NH、又はNRであり、
は、H、置換又は非置換のC1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10のアルキニル、置換又は非置換のC3からC12のシクロアルキル、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のアリール、或いは1つ又は複数のヘテロ原子を有する単環、二環、又は三環式の非置換又は置換の芳香族複素環及び非芳香族複素環から選択された同一であるか又は異なる基を表し(置換された基の置換基は、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10のアルキニル、ハロゲン、置換又は非置換アリール、置換又は非置換芳香族複素環化合物、非芳香族複素環、C1からC10のアルキルオキシ、C1からC10のアルキルアミノ、C2からC10のアルケニルアミノ、C2からC10のアルキニルアミノ、COR、CONR、及びCOORから選択される)、
は、H、非置換又は置換のC1からC10アルキル、C2からC10のアルケニル又はアルキニル、ベンジル、アリール、1つ又は複数のヘテロ原子を有する非置換又は置換芳香族複素環、及び非芳香族複素環から選択され、
及びRは、合わせて架橋CH−CH部分を形成するか、或いはR及びRは、共に水素である]
の構造を有する化合物から選択される化合物或いは薬剤として許容されるその塩又はプロドラッグの薬剤として有効な量を、それを必要としている哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項6】
野生型p53を不活性構造から活性構造に転換する能力に関して化合物を試験する方法であって、
A.不活性野生型p53構造が存在する、野生型p53を有する細胞を提供するステップ、
B.細胞をin vitroで試験物質に暴露するステップ、及び
C.細胞不活性野生型p53構造を測定するステップ
を含む方法。
【請求項7】
ステップCに代え、ステップBにおける(機能性p53を有する)細胞に対する試験物質の影響を、p53を含まないか、又は非機能性p53を含む細胞又は組織に対する影響と比較するステップを含む、代替ステップC’を用いる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
インテグリンαβが細胞に存在する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
不活性構造の野生型p53を検出するためにPab240を用いる、請求項6から8までに記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物が試験される請求項6から9までのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップBで前記細胞がin vivoで動物において試験物質に暴露され、前記動物がその後屠殺される、請求項6から10までのいずれかに記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪性黒色腫及び/又は望ましくない血管新生が関与する病的状態の治療に用いる薬剤を調製するための、野生型p53を、Pab240に反応性であるが、Pab1620に反応性でない不活性構造から、アポトーシスを誘導することのできる活性構造に転換することのできる化合物の使用であって、化合物が式I:
【化1】


[式中、
nは、0、1、又は2であり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−CH−R、−CH−O−R、−CH−S−R、−CH−NH−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CH−NH−CO−R、−CH−O−CO−R、−CH−NH−CO−NHR、−CH−NH−CO−OR、−CH−NH−CS−NHR、及び−CH−O−CO−NHRから選択されるか、或いは
及びRは、合わせて=CHであり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−OH、−SH、−NH、−NHR、及び−O−CO−Cから選択されるか、或いはR及びRは、合わせて=O、=S、=NH、又はNRであり、
は、H、置換又は非置換のC1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10アルキニル、置換又は非置換のC3からC12のシクロアルキル、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のアリール、或いは1つ又は複数のヘテロ原子を有する単環、二環、又は三環式の非置換又は置換の芳香族複素環及び非芳香族複素環から選択される同一であるか又は異なる基を表し(置換された基の置換基は、C1からC10アルキル、C2からC10アルケニル、C2からC10アルキニル、ハロゲン、置換又は非置換アリール、置換又は非置換芳香族複素環化合物、非芳香族複素環、C1からC10アルキルオキシ、C1からC10アルキルアミノ、C2からC10アルケニルアミノ、C2からC10アルキニルアミノ、COR、CONR、及びCOORから選択される)、
は、H、非置換又は置換のC1からC10のアルキル、C2からC10アルケニル又はアルキニル、ベンジル、アリール、1つ又は複数のヘテロ原子を有する非置換又は置換芳香族複素環、及び非芳香族複素環から選択され、
及びRは、合わせて架橋CH−CH部分を形成するか、或いはR及びRは、共に水素である化合物、或いは薬剤として許容されるその塩又はプロドラッグから選択される]
の構造を有する化合物の使用。
【請求項2】
前記化合物が、次の式(II):
【化2】


[式中、
及びRは、水素、ヒドロキシメチル、又はアミン置換フェニル基の窒素原子、プリン、8−アザプリン、若しくはベンズイミダゾール残基の環構造に含有される窒素原子に結合したメチレン基から独立して選択されるか、或いはR及びRは、合わせて二重結合メチレン基を表し、
及びRは、水素、ヒドロキシル、及びベンゾイルオキシから独立して選択されるか、又はR及びRは、合わせて二重結合である酸素原子を表すことができ、但し、R及びRのいずれかがベンゾイルオキシ基であるとき、R及びRは、共に水素である化合物である]
を有する化合物から選択されるか或いは薬剤として許容されるそれらの塩又はプロドラッグである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン、9−(アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン)−6−クロロ−9H−プリン、2−(ヒドロキシメチル)キヌクリジン−3,3−ジオール、2−(アデニン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−メチレン−3−キヌクリジノン、2−(2−アミノ−3−クロロ−5−トリフルオロメチル−1−メチルアニリン)−3−キヌクリジノン、2−(6−トリフルオロメチル−4−クロロベンズイミダゾール−1−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(6−メトキシプリン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(8−アザアデニン−9−メチレン)−3−キヌクリジノン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルベンゾアート、2−(5,6−ジメチル−ベンズイミダゾール−1−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(8−アザアデニン−7−メチレン)−3−キヌクリジノン、2−(7−メチレン−1,3−ジメチル尿酸)−3−キヌクリジノン、又は2−(2,6−ジクロロ−9−メチレンプリン)−3−キヌクリジノン、或いは薬剤として許容されるそれらの塩から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
薬剤として許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤と合わせた、請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
悪性黒色腫を治療し、且つ/又は望ましくない血管新生を阻害する方法であって、式I:
【化3】


[式中、
nは、0、1、又は2であり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−CH−R、−CH−O−R、−CH−S−R、−CH−NH−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CH−NH−CO−R、−CH−O−CO−R、−CH−NH−CO−NHR、−CH−NH−CO−OR、−CH−NH−CS−NHR、及び−CH−O−CO−NHRから選択されるか、或いはR及びRは、合わせて=CHであり、
及びRは、同一であるか又は異なっており、−H、−OH、−SH、−NH、−NHR、及び−O−CO−Cから選択されるか、或いはR及びRは、合わせて=O、=S、=NH、又はNRであり、
は、H、置換又は非置換のC1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10のアルキニル、置換又は非置換のC3からC12のシクロアルキル、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のアリール、或いは1つ又は複数のヘテロ原子を有する単環、二環、又は三環式の非置換又は置換の芳香族複素環及び非芳香族複素環から選択された同一であるか又は異なる基を表し(置換された基の置換基は、C1からC10のアルキル、C2からC10のアルケニル、C2からC10のアルキニル、ハロゲン、置換又は非置換アリール、置換又は非置換芳香族複素環化合物、非芳香族複素環、C1からC10のアルキルオキシ、C1からC10のアルキルアミノ、C2からC10のアルケニルアミノ、C2からC10のアルキニルアミノ、COR、CONR、及びCOORから選択される)、
は、H、非置換又は置換のC1からC10アルキル、C2からC10のアルケニル又はアルキニル、ベンジル、アリール、1つ又は複数のヘテロ原子を有する非置換又は置換芳香族複素環、及び非芳香族複素環から選択され、
及びRは、合わせて架橋CH−CH部分を形成するか、或いはR及びRは、共に水素である]
の構造を有する化合物から選択される化合物或いは薬剤として許容されるその塩又はプロドラッグの薬剤として有効な量を、それを必要としている哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項6】
野生型p53を不活性構造から活性構造に転換する能力に関して化合物を試験する方法であって、
A.野生型p53のみを有し突然変異p53は有さない細胞であって、不活性野生型p53構造が存在する細胞を提供するステップと、
B.前記細胞をin vitroで試験物質に暴露するステップと、
C.細胞不活性野生型p53構造を測定するステップと
を含む方法。
【請求項7】
ステップCに代え、ステップBにおける(機能性p53を有する)細胞に対する試験物質の影響を、p53を含まないか、又は非機能性p53を含む細胞又は組織に対する影響と比較するステップを含む、代替ステップC’を用いる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
インテグリンαβが細胞に存在する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
不活性構造の野生型p53を検出するためにPab240を用いる、請求項6から8までに記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物が試験される請求項6から9までのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップBで前記細胞がin vivoで動物において試験物質に暴露され、前記動物がその後屠殺される、請求項6から10までのいずれかに記載の方法。

【図1A】
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【図1C−1】
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【図1C−2】
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【図2D】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図1B】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図4D】
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【図4E】
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【公表番号】特表2006−521375(P2006−521375A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507983(P2006−507983)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000452
【国際公開番号】WO2004/084893
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503361145)アプレア アクチボラゲット (3)
【Fターム(参考)】